説明

発電設備

【課題】従来よりも発電効率が高い発電設備を提供する。
【解決手段】発電設備10は、蒸気Sによって蒸気タービンを駆動させて発電を行う発電設備において、蒸気Sを供給して仕事をさせる蒸気タービンのうち、最後尾に設置される蒸気タービン15以前であって蒸気Sが流動する経路を構成する構造物60の外部に取り付けた電磁波発生装置27から構造物60に電磁波28を照射して構造物60の内部を流動する蒸気Sを加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも発電効率を高めた発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、原子力発電設備では、沸騰水型原子炉(BWR)では原子炉圧力容器、加圧水型原子炉(PWR)では蒸気発生器(SG)内で発生させた蒸気を、高圧タービンおよび低圧タービンへ流し、タービン翼を回転させることにより発電している。その際、原子炉圧力容器または蒸気発生器では、炉心あるいは伝熱管で水(冷却材)を加熱することで蒸気が発生し、水と蒸気の二相流となって上昇する。
【0003】
炉心または伝熱管の上部には気水分離器が設置してあり、さらにその上部には蒸気乾燥器が設置してある。まず、気水分離器では、遠心力を利用して蒸気と水が分離され、水は重力落下し、蒸気は上昇して蒸気乾燥器へ導かれる。蒸気乾燥器は、波板が並列して配置され、波板の間にスペーサを挟んで締め付けることによってジグザグの蛇行流路が形成されており、この蛇行流路に気水分離器で遠心分離された蒸気を導入する。蒸気乾燥器では、蒸気が蛇行する際に質量の大きい水が慣性力で外側に飛ばされ、上流に向いて開口したポケット(ドレンポケット)に捕集される。
【0004】
このように、水と蒸気の二相流は、気水分離器および蒸気乾燥器等の蒸気から湿分を分離する装置を通過させることによって、原子炉圧力容器または蒸気発生器の出口では、ほぼ水滴の混じっていない蒸気(例えば、湿り度0.1%以下)となり、後段の高圧タービン側へ導かれる。
【0005】
一般に、高圧タービンや低圧タービンは、静翼(ノズル)と動翼の組み合わせで1段となっており、多数段に構成される。タービン入口から流入した蒸気はノズルを通り噴流となって動翼に当たり、動翼を回転させる。このとき蒸気の持つ熱エネルギはノズルを通して運動エネルギに変換され、その噴流を動翼に衝突させて仕事に変換される。
【0006】
仕事をした蒸気はエネルギを失い、飽和温度以下に低下する。そのため凝縮し水滴が発生する。これを湿りと呼んでいる。湿りはタービンの効率を低下させる損失となるため、これを湿り損失と呼んでいる。湿り損失には、水滴が動翼に衝突することで回転力を低減させる「制動損失」と、水滴の速度を加速させるために蒸気の運動エネルギが使われる「加速損失」、動翼表面に付着した水滴がポンプ作用により外周側へ移動する際に動翼が水滴になす仕事分の損失である「ポンプ作用による損失」などがある。
【0007】
また、水滴が翼表面に衝突することで侵食(エロージョン)が発生してしまう問題がある。そこで、例えば、特開平11−159302号公報(特許文献1)に記載されるように、タービンの動翼に湿分分離溝を設け、そこに付着した水滴を捕獲、除去するという工夫が施されている。
【0008】
一方、高圧タービンから流出した蒸気は低圧タービンに流入する前に、高圧タービンで発生した水滴(湿り)を除去し、さらに高圧タービンあるいは原子炉から圧力と温度の高い蒸気を抽気し、その熱を利用して温度を高められる。水滴除去のみを行う場合は湿分分離器、水滴除去に加えて加熱まで行う場合は湿分分離加熱器(MSR)で行われる。これはプラントによって異なる。湿分分離器または湿分分離加熱器における蒸気の水滴除去は蒸気乾燥器と同様に、波板の間に湿り蒸気を流し、水滴を板へ衝突させることで行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−159302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、タービンの動翼に設けた湿分分離溝では、全ての水滴を除去することは困難である。蒸気中の湿り(水滴)はタービンでは湿り損失となり、効率を低下させている。効率を上昇させるためには、蒸気中の湿り(水滴)を除去することが重要である。また、湿分分離器または湿分分離加熱器を通った蒸気は低圧タービン側へ流入するため、湿分分離器または湿分分離加熱器における蒸気中の水滴除去も効率を上昇させるためには有効である。
【0011】
また、タービンの出力は入口と出口の蒸気のエンタルピー差によって決まるため、出力増加には入口蒸気温度が高いことが望まれている。例えば、原子力発電設備では燃料被覆管表面のドライアウトが許容されていないため、過熱蒸気にすることができず、過熱蒸気にすることでプラント出力増加することはできない。もし、燃料被覆管表面以降で蒸気を過熱蒸気にすることができれば、高圧タービン入口の蒸気温度を高くすることができ、出力増加に有効である。
【0012】
本発明は、上述した課題を考慮してなされたものであり、従来よりも発電効率が高い発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態に係る発電設備は、上述した課題を解決するため、蒸気によって蒸気タービンを駆動させて発電を行う発電設備において、前記蒸気を供給して仕事をさせる蒸気タービンのうち、最後尾に設置される蒸気タービン以前であって蒸気が流動する経路を構成する構造物の外部に取り付けた電磁波発生装置から前記構造物に電磁波を照射して、前記構造物内の蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも発電効率が高い発電設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る発電設備の一例である原子力発電設備の主蒸気系を示した概略図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る発電設備の蒸気タービンを示した説明図であって、(a)は蒸気タービンの縦断面図、(b)は(a)に示されるI−I線での断面を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る発電設備の蒸気タービンの横断面図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る発電設備の蒸気タービンの横断面図。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る発電設備の湿分分離加熱器の縦断面図。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る発電設備の蒸気乾燥器を示した概略図。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る発電設備の被加熱対象(主蒸気系配管内の蒸気)を説明する説明図。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る発電設備の被加熱対象(主蒸気系配管内の水滴)を説明する説明図。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る発電設備の被加熱対象(構造物)を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る発電設備について、添付の図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る発電設備の一例である原子力発電設備10の主蒸気系を示した概略図である。
【0018】
原子力発電設備の一例として図1に示される原子力発電設備10は、原子炉圧力容器12内において、核分裂反応により生じた熱エネルギによって蒸気を生成し、生成した蒸気を原子炉格納容器から主蒸気系配管13を通して、例えば、高圧タービン14と低圧タービン15とを備えるタービン側へ供給する。
【0019】
高圧タービン14と低圧タービン15との間には、湿分分離加熱器(MSR)16が設けられており、湿分分離加熱器16は、高圧タービン14で蒸気が仕事をした際に生じた水滴(湿り)を除去し、高圧タービン14または原子炉から圧力と温度の高い蒸気の熱を利用して蒸気を加熱する。高圧タービン14および低圧タービン15で仕事をした蒸気は復水器17で水に戻され、この水は原子炉格納容器と接続される給水管18に設置された給水ポンプ19によって原子炉格納容器へ送られる。
【0020】
原子力発電設備10は、蒸気、蒸気(水と蒸気の二相流)中の水および原子力発電設備10の主蒸気系を構成する構造物(蒸気が流動する経路を構成する構造物)の少なくとも何れかを直接的または間接的に加熱することによって、水滴の発生を防止するまたは蒸気(水と蒸気の二相流)中に含まれる水滴を蒸発させ、高圧タービン14および低圧タービン15等の蒸気タービンでの損失低減および出力増大の少なくとも何れかを生じさせて発電効率を上昇させる。
【0021】
続いて、本発明の実施形態に係る発電設備の一例である原子力発電設備10(10A〜10G)について説明する。なお、図2乃至図9に示される原子力発電設備10A〜10Gは、一例を提示したものであり、各実施の形態に係る原子力発電設備10A〜10Gは、必ずしも図示される例に限定されるものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る発電設備の一例である第1の原子力発電設備10Aの蒸気タービン(高圧タービンおよび低圧タービン)14,15を示した説明図であって、図2(a)は蒸気タービン14,15の回転軸21に対して片側(上部)の縦断面を示す部分縦断面図、図2(b)は図2(a)に示されるI−I線での断面(I−I断面)を示す断面図(I−I断面図)である。
【0023】
第1の原子力発電設備10Aの蒸気タービン14,15は、動翼22および静翼(ノズル)23の組み合わせを1段とする段が、例えば3段等の複数段に構成されており、タービン入口24から流入した蒸気Sは膨張しながら下流へ進み、タービン軸25に取り付けられた各段落の動翼22を回転させる。そのため、蒸気Sは動翼22の回転にエネルギを奪われて温度が低下し、凝縮して水滴が発生する。タービン入口24では過熱蒸気としているプラントもあるが、飽和蒸気、すなわち湿りを含んだ蒸気(湿り蒸気)としているプラントもある。
【0024】
そこで、第1の原子力発電設備10Aでは、ケーシング26の外側に、例えば複数個設置した電磁波発生装置27で電磁波28を発生させ、発生させた電磁波28をケーシング26に設けた窓29から蒸気タービン14,15の内部へ透過させて蒸気タービン14,15の内部を流れる蒸気Sを非接触で加熱する。蒸気Sを加熱することにより、蒸気Sが凝縮するのを防止する、または凝縮した蒸気Sを膨張させて発生した水滴を蒸発させる。
【0025】
電磁波28による非接触の加熱方式は、幾つかの方法が考えられ、採用する加熱方式によって、電磁波28の種類(波長)は異なる。例えば、誘電加熱により蒸気Sを加熱する誘電加熱方式を採用するのであれば、誘電加熱可能な周波数帯(マイクロ波等のいわゆる高周波帯)の電磁波28となるし、遠赤外線による遠赤外線加熱方式を採用するのであれば、遠赤外線の電磁波28となる。
【0026】
このように構成される第1の原子力発電設備10Aでは、蒸気タービン14,15の内部を流れる蒸気Sが凝縮するのを防止する、または凝縮した蒸気を膨張させて発生した水滴を蒸発させるので、水滴を従来よりも減少させることができる。このことは、水滴が動翼22に衝突することで回転力を低減させる制動損失や水滴の速度を加速させるために蒸気Sの運動エネルギが使われる加速損失などの湿り損失が減少し、発電効率の上昇につながる。
【0027】
また、第1の原子力発電設備10Aでは、従来の原子力発電設備では水滴となっている分の少なくとも一部を蒸気として蒸気タービン14,15で利用することができるため、蒸気流量が増加する。さらに、蒸気タービン14,15内の蒸気Sを加熱するということで蒸気自体の温度も上がる。タービン出力は、タービン入口24とタービン出口のエンタルピー差によって決まるため、蒸気流量および蒸気温度の少なくとも一方が増加すれば、タービン出力が増加し発電効率の上昇につながる。
【0028】
一方、第1の原子力発電設備10Aは、蒸気タービン14,15の内部を流れる蒸気Sが凝縮するのを防止する、または凝縮した蒸気を膨張させて発生した水滴を蒸発させる結果、蒸気タービン14,15内の水滴が従来よりも少ないので、エロージョン(侵食)を抑制することができる。
【0029】
第1の原子力発電設備10Aによれば、従来の発電設備よりも蒸気タービン14,15における湿り損失が低減し、より高い発電効率を実現することができる。また、従来の発電設備よりも蒸気タービン14,15内の蒸気Sの流量増加および温度上昇を生じるので、タービン出力が増加し、より高い発電効率を実現することができる。
【0030】
なお、図2に示した第1の原子力発電設備10Aは、一構成例であって、例えば、高圧タービン14と低圧タービン15を具備する構成を図1に示したが、少なくとも一台を具備していれば良い。また、電磁波28の照射は、必ずしも複数の蒸気タービン14,15で行う必要はなく、少なくとも何れかの蒸気タービン14,15で行えば良い。さらに、電磁波発生装置27は、図2(b)に示されるI−I断面において、周方向に少なくとも一台以上が設置されていれば良く、必ずしも三台である必要はない。
【0031】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る発電設備の一例である第2の原子力発電設備10Bの蒸気タービン14,15の横断面図、すなわち、図2(b)に相当する図である。
【0032】
第2の原子力発電設備10Bは、第1の原子力発電設備10Aに対して、蒸気タービン14,15のタービン軸25の表面およびケーシング26の内表面に、電磁波発生装置27から蒸気タービン14,15の内部へ照射した電磁波28を反射させる電磁波反射板31をさらに設置した点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
第2の原子力発電設備10Bでは、ケーシング26の外部に設置された電磁波発生装置27から蒸気タービン14,15の内部に照射される電磁波28が、蒸気タービン14,15(ケーシング26)の内部で反射を繰り返して蒸気タービン14,15の周方向へ進行可能なように、蒸気タービン14,15のタービン軸25の表面およびケーシング26の内表面に、例えば、金、銀、銅、アルミニウムおよびニッケル等の金属や電磁波28を反射する性質を有するセラミクスやフィルム等の材料で構成された電磁波反射体の一例であり板状に構成された電磁波反射板31を設置する。
【0034】
電磁波発生装置27から蒸気タービン14,15の内部に照射された電磁波28は、まず、タービン軸25の表面に設置された電磁波反射板31で反射し、続いて、ケーシング26の内表面に設置された電磁波反射板31で反射し、さらに続いて、タービン軸25の表面に設置された電磁波反射板31で反射するという具合に電磁波反射板31での反射を繰り返して蒸気タービン14,15の内部で広がる。従って、第2の原子力発電設備10Bでは、第1の原子力発電設備10Aよりも発生させた電磁波28のエネルギを有効に使うことができ、効率良く蒸気タービン14,15内の蒸気Sを加熱することができる。
【0035】
第2の原子力発電設備10Bによれば、第1の原子力発電設備10Aと同様の効果を奏することができることに加えて、電磁波発生装置27から蒸気タービン14,15の内部に照射された電磁波28が、蒸気タービン14,15の内部に設置された電磁波反射板31で反射を繰り返しながら周方向に移動して広範囲に広がるため、第1の原子力発電設備10Aの電磁波発生装置27よりも少ない台数の電磁波発生装置27であっても、第1の原子力発電設備10Aと同様に蒸気Sを加熱することができる。換言すれば、第2の原子力発電設備10Bは、第1の原子力発電設備10Aよりも効率良く蒸気タービン14,15内の蒸気Sを加熱することができる。
【0036】
なお、第2の原子力発電設備10Bにおいて、図3に示される第2の原子力発電設備10Bでは、設置される電磁波発生装置27は一台であるが、必ずしも一台に限られるものではなく二台以上設置しても構わない。また、電磁波反射板31は平板状として図示しているが、取り付け面を取り付け箇所に応じた曲率の曲面にする、取り付け箇所に応じた曲率の湾曲した板として形成する等してもよい。当然ながら、電磁波の反射面が曲面であってもよい。また、取り付け箇所を削って電磁反射体をはめ込むことで配置する、あるいは金や銀等であれば取り付け箇所にメッキにより配置することで、蒸気の流路を変えることなく電磁波反射体を設置することも可能である。
【0037】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係る発電設備の一例である第3の原子力発電設備10Cの蒸気タービン14,15の横断面図、すなわち、図2(b)に相当する図である。
【0038】
第3の原子力発電設備10Cは、第1の原子力発電設備10Aに対して、電磁波発生装置27からみて蒸気タービン14,15に設けた窓29の先、すなわち、ケーシング26の内表面であって窓29の位置に電磁波吸収体35をさらに設置した点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
第3の原子力発電設備10Cでは、ケーシング26の内表面であって窓29の位置に、例えば、セラミクス、耐熱ガラス、耐熱樹脂等で構成される耐熱特性に優れた電磁波吸収体35がさらに設置されており、ケーシング26の外部に設置された電磁波発生装置27から蒸気タービン14,15の内部に電磁波28を照射して電磁波吸収体35に電磁波28のエネルギを吸収させる。電磁波吸収体35に入射した電磁波28のエネルギは、熱エネルギ(ジュール熱)に変換されて吸収されるため、電磁波吸収体35は加熱され、周囲を流動する蒸気Sを加熱する。
【0040】
電磁波吸収体35は、ケーシング26の内部に設置するため、蒸気Sの温度に耐え得る耐熱性が要求される。また、電磁波吸収体35での発熱量は主に誘電損に起因するものであり、誘電損は誘電率に比例することから誘電率の高い材料を選定すれば、電磁波28による発熱量を増大させることができる。これらを考慮すれば、電磁波吸収体35は、例えば、セラミクス、耐熱ガラス、耐熱樹脂等の耐熱性に優れた材料で構成されることが好ましく、特に誘電率がより高い材料で構成されるものを選択する方が蒸気Sを効率良く加熱することができる点で好ましい。
【0041】
第3の原子力発電設備10Cによれば、第1の原子力発電設備10Aと同様の効果を奏することができることに加えて、第3の原子力発電設備10Cは、第1の原子力発電設備10Aよりも、電磁波発生装置27で発生させた電磁波28のエネルギを有効に使うことができ、第1の原子力発電設備10Aよりも効率良く蒸気タービン14,15内の蒸気Sを加熱することができる。これは、誘電体が蒸気Sや液滴(水滴)と比較すると、電磁波28のエネルギ吸収効率が良く、熱エネルギに変換され誘電体の温度をより高くすることができるためである。
【0042】
なお、第3の原子力発電設備10Cにおいて、図4に示される第3の原子力発電設備10Cでは、設置される電磁波発生装置27は三台であるが、必ずしも三台に限られるものではなく少なくとも一台が設置されていれば良い。また、電磁波吸収体35の設置位置は、ケーシング26の内表面であって窓29の位置として説明したが、必ずしも電磁波吸収体35の設置位置は、ケーシング26の内表面であって窓29の位置でなくても良い。例えば、タービン軸25の表面等の蒸気タービン14,15の内部であって窓29から透過した電磁波28を吸収可能な位置であれば設置場所は任意である。また、例えば、電磁波反射板31をタービン軸25に配置し、電磁波28が反射される先に電磁波吸収体35を配置した構成とすることも可能である。
【0043】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態に係る発電設備の一例である第4の原子力発電設備10Dの湿分分離加熱器16の縦断面図である。
【0044】
第4の原子力発電設備10Dは、第1の原子力発電設備10Aに対して、湿分分離加熱器16の内部を流動する蒸気Sを加熱するように構成されている点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
第4の原子力発電設備10Dは、湿分分離加熱器(MSR)16の入口から流入した蒸気Sが高圧タービン14で仕事をした後の蒸気Sであるため、水滴が存在する湿り蒸気となっている点を考慮し、この蒸気Sを電磁波28によって非接触で加熱し、蒸気Sに含まれる湿分を低減して、より高い発電効率を実現するものである。
【0046】
図5に示されるように、第4の原子力発電設備10Dの湿分分離加熱器(MSR)16は、胴体41内の下半領域に湿分分離器43が、上半領域に加熱器の伝熱管45がそれぞれ配置され、胴体41の底部に蒸気入口配管46が複数設置され、胴体41の頂部に蒸気出口配管47が設置されて構成される。さらに、胴体41の底部内側には、蒸気入口配管46が設置される近傍に蒸気入口板48が設置される。
【0047】
一方、湿分分離加熱器16の外表面には、蒸気入口配管46から胴体41内に流入した蒸気Sを非接触で加熱するための電磁波28を胴体41内へ照射する電磁波発生装置27が設置されており、電磁波発生装置27から照射され窓29を透過して胴体41内へ導かれた電磁波28によって、蒸気入口配管46から蒸気入口板48により湿分分離器43と胴体41との間の空間内に導かれた蒸気Sは非接触で加熱される。その後、加熱された蒸気Sは、湿分分離器43、伝熱管45の外側へ順次導かれ、湿分分離器43によりさらに湿分が分離され、伝熱管45により加熱される。
【0048】
第4の原子力発電設備10Dによれば、従来の発電設備よりも湿分が少なく温度が高い蒸気Sを湿分分離加熱器16の後段側に供給することができるので、湿分分離加熱器16の後段に設置される蒸気タービン内における湿り損失が低減し、より高い発電効率を実現することができる。また、従来の発電設備よりも蒸気タービン14内の蒸気Sの流量増加および温度上昇を生じるので、タービン出力が増加し、より高い発電効率を実現することができる。
【0049】
なお、図5に示される第4の原子力発電設備10Dでは、湿分分離加熱器16の外表面に設置した電磁波発生装置27は一台であるが、必ずしも一台である必要はなく少なくとも一台以上が設置されていれば良い。また、必要に応じて、湿分分離加熱器16の胴体41の内部に電磁波反射板31または電磁波吸収体35を設けても良い。
【0050】
[第5の実施形態]
図6は、本発明の第5の実施形態に係る発電設備の一例である第5の原子力発電設備10Eの蒸気乾燥器52を示した概略図である。
【0051】
第5の原子力発電設備10Eは、第1の原子力発電設備10Aに対して、蒸気乾燥器52の内部を流動する蒸気Sを加熱するように構成されている点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
一般に、原子炉では、発生させた蒸気(水と蒸気の二相流)から蒸気と水とを分離する気水分離器51と、気水分離器51から流出した蒸気を導入して蒸気から湿分を除去する蒸気乾燥器52が設けられており、蒸気乾燥器52で湿分が除去された蒸気がと高圧タービン14へ送られる。例えば、図6に一例として示される第5の原子力発電設備10Eの原子炉は、気水分離器51および蒸気乾燥器52を内部に収容した原子炉圧力容器12を蒸気発生部とする沸騰水型原子炉(BWR)である。
【0053】
第5の原子力発電設備10Eは、気水分離器51から流出する蒸気が水滴の混じった湿り蒸気Sであることから、この湿り蒸気Sに原子炉圧力容器12の外側に設置した電磁波発生装置27で発生させた電磁波28を照射して蒸気Sを加熱する。
【0054】
第5の原子力発電設備10Eでは、例えば、原子炉圧力容器12の上面の一部と蒸気乾燥器52の上面に窓29を設け、原子炉圧力容器12に設けられた窓29から電磁波28を透過させて原子炉圧力容器12の内部へ供給する。また、原子炉圧力容器12の内部へ供給された電磁波28は、蒸気乾燥器52の上面に設けられた窓29から透過し、蒸気乾燥器52の内部を流動する蒸気Sを加熱する。
【0055】
第5の原子力発電設備10Eによれば、気水分離器51から流出する湿り蒸気Sを加熱することによって、蒸気Sに含まれる水滴を蒸発させることができ、また、蒸気Sの温度を上昇させることができる。従って、蒸気タービン入口の蒸気温度を従来よりも高くすることができ、従来の発電設備よりも高い発電効率を実現することができる。
【0056】
なお、第5の原子力発電設備10Eでは、電磁波28を上方から照射する構成を採用したが、必ずしも上方から照射する必要はなく、例えば、気水分離器51から流出し、蒸気乾燥器52に流入する前または流入直後の蒸気Sを加熱できるように、電磁波28を側方から照射する構成としても良い。また、必要に応じて、原子炉圧力容器12や蒸気乾燥器52の内部に電磁波反射板31または電磁波吸収体35を設けても良い。
【0057】
さらに、図6に示される第5の原子力発電設備10Eの原子炉の構成は、BWRの例であるが、第5の原子力発電設備10Eは、BWRに限定されるものではなく、蒸気生成部を備える発電設備全般に適用できる。例えば、加圧水型原子炉(PWR)に適用する場合、BWRの蒸気生成部としての原子炉圧力容器12の代わりにPWRの蒸気生成部としての蒸気発生器に適用すれば、蒸気発生器内の蒸気Sを加熱するように構成することができる。
【0058】
[第6の実施形態]
図7および図8は、本発明の第6の実施形態に係る発電設備の一例である第6の原子力発電設備10Fの被加熱対象を説明する説明図であり、図7は被加熱対象が主蒸気配管13を流動する蒸気Sである場合を示す説明図、図8は被加熱対象が主蒸気配管13を流動する蒸気Sに含まれる水滴54である場合を示す説明図である。
【0059】
第6の原子力発電設備10Fは、第1の原子力発電設備10Aに対して、主蒸気配管13を流動する蒸気Sを加熱するように構成されている点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
一般に、原子力発電設備10は、原子炉圧力容器12または蒸気発生器から低圧タービン15の入口までにある蒸気配管、すなわち、主蒸気配管13があり、この主蒸気配管13は、大別すると、原子炉あるいは蒸気発生器原子炉圧力容器12または蒸気発生器の出口から高圧タービン14の入口までの配管、高圧タービン14の出口から湿分分離加熱器16の入口までの配管、そして、湿分分離加熱器16の出口から低圧タービン15の入口までの配管に分けられる。第6の原子力発電設備10Fは、これらの配管の何れかにおいて、内部を流動する蒸気Sおよび蒸気Sに含まれる水滴54の少なくとも一方を被加熱対象として加熱するように構成されている。
【0061】
第6の原子力発電設備10Fでは、主蒸気配管13の外側に設置した電磁波発生装置27によって発生させた電磁波28を主蒸気配管13に設けた窓29から主蒸気配管13の内部へ透過させて、例えば、図7に示されるように、主蒸気配管13の内部を流動する蒸気Sを加熱する。このように、主蒸気配管13の内部を流動する蒸気Sを加熱することによって蒸気Sの蒸気温度を上昇させることができる。また、蒸気Sの温度が飽和温度以上となれば、蒸気Sに混在している水滴54を蒸発させることもできる。
【0062】
一方、図8に示されるように、主蒸気配管13の内部を流動する蒸気Sに含まれる水滴54を被加熱対象として加熱するようにすることもできる。何れを被加熱対象とするかは、被加熱対象が吸収しやすい電磁波28の周波数を選択することによって調整することができる。
【0063】
水滴54を被加熱対象とした場合、水滴54の密度が蒸気Sの密度と比べて格段に大きくなるため、被加熱対象を蒸気Sとする場合と比べて電磁波エネルギの吸収率が高くなり、電磁波28の発生に必要なエネルギは少なくて済む。すなわち、水滴54を被加熱対象とすると、被加熱対象を蒸気Sとする場合と比べて効率良く水滴54を蒸発除去させることができる。このように、主蒸気配管13の内部を流動する蒸気Sに含まれる水滴54を加熱することによって、蒸気Sに混在している水滴54を蒸発させることができる。
【0064】
第6の原子力発電設備10Fによれば、主蒸気配管13の内部を流動する蒸気Sおよび蒸気Sに含まれる水滴54を加熱することによって、主蒸気配管13の内部の蒸気Sの蒸気温度を上昇させることができる。また、蒸気Sの温度が飽和温度以上となれば、蒸気Sに混在している水滴54を蒸発させることもできる。故に、従来の発電設備よりも蒸気タービン14,15における湿り損失が低減し、より高い発電効率を実現することができる。また、従来の発電設備よりも蒸気タービン14,15内の蒸気Sの流量増加および温度上昇を生じるので、タービン出力が増加し、より高い発電効率を実現することができる。
【0065】
なお、必要に応じて、主蒸気配管13の内部に電磁波反射板31または電磁波吸収体35を設けても良い。
【0066】
[第7の実施形態]
図9は、本発明の第7の実施形態に係る発電設備の一例である第7の原子力発電設備10Gの被加熱対象(構造物)を説明する説明図である。
【0067】
第7の原子力発電設備10Gは、原子力発電設備の主蒸気系を構成する、例えば、原子炉圧力容器12、主蒸気系配管13、蒸気タービン14,15および湿分分離加熱器(または湿分分離器)16等の構造物60を被加熱対象とすることで、構造物60およびその周囲を流動する蒸気Sまたは蒸気Sに含まれる水滴54を間接的に加熱する。
【0068】
構造物60は、上述した実施形態に係る蒸気Sや水滴54等の被加熱対象と比較して密度が高いため、電磁波28のエネルギ吸収率が高い。従って、効率良く電磁波エネルギを吸収して構造物60を加熱することができる。第7の原子力発電設備10Gにおける被加熱対象は、既存の構造物60に限らず、別の構造物を新設しても良い。
【0069】
なお、構造物60を被加熱対象とする場合、蒸気Sや蒸気Sに含まれる水滴54とは異なり、必ずしも非接触で加熱する必要はないので、熱源に直接接触させて加熱する方法を採用することもできる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態に係る原子力発電設備10(10A〜10G)によれば、主蒸気系の蒸気S、蒸気S(水と蒸気の二相流)に含まれる水滴54および原子力発電設備10(10A〜10G)の主蒸気系を構成する構造物60の少なくとも何れかを直接的または間接的に加熱することによって、蒸気Sにおける水滴54の発生を防止するまたは蒸気S(水と蒸気の二相流)中に含まれる水滴54を蒸発させ、従来の発電設備に対してより高い発電効率を実現することができる。
【0071】
なお、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、図1に示される原子炉は沸騰水型原子炉(BWR)の例を示したが、沸騰水型原子炉(BWR)に限定されるものではなく、加圧水型原子炉(PWR)にも適用できる。また、図1に示される発電設備10は原子力発電設備であるが、原子力発電設備に限らず、水蒸気でタービンを回転させて発電させる(いわゆる汽力発電)各種の発電設備についても適用できる。
【0072】
これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10 原子力発電設備(発電設備)
12 原子炉圧力容器
13 主蒸気系配管
14 高圧タービン
15 低圧タービン
16 湿分分離加熱器(MSR)
17 復水器
18 給水管
19 給水ポンプ
21 回転軸
22 動翼
23 静翼(ノズル)
24 タービン入口
25 タービン軸
26 ケーシング
27 電磁波発生装置
28 電磁波
29 窓
31 電磁波反射板(電磁波反射体)
35 電磁波吸収体
41 胴体
43 湿分分離器
45 伝熱管
46 蒸気入口配管
47 蒸気出口配管
48 蒸気入口板
51 気水分離器
52 蒸気乾燥器
54 水滴
60 構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気によって蒸気タービンを駆動させて発電を行う発電設備において、
前記蒸気を供給して仕事をさせる蒸気タービンのうち、最後尾に設置される蒸気タービン以前であって蒸気が流動する経路を構成する構造物の外部に取り付けた電磁波発生装置から前記構造物に電磁波を照射して、前記構造物内の蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする発電設備。
【請求項2】
前記構造物の内部へ前記電磁波を透過させる窓を設け、前記構造物に照射された電磁波を前記窓から前記構造物の内部へ透過させて前記構造物内の蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする請求項1記載の発電設備。
【請求項3】
前記構造物は、前記蒸気タービンであり、前記蒸気タービンの少なくとも一台以上に設けた窓から前記蒸気タービンに照射された電磁波を前記蒸気タービンの内部へ透過させて前記蒸気タービン内を流れる蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする請求項2記載の発電設備。
【請求項4】
前記構造物は、主蒸気配管であり、前記主蒸気配管の少なくとも一部に設けた窓から前記主蒸気配管に照射された電磁波を前記主蒸気配管の内部へ透過させて前記主蒸気配管内を流れる蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする請求項2記載の発電設備。
【請求項5】
前記構造物は、湿分分離器または湿分分離加熱器であって、前記湿分分離器または湿分分離加熱器の少なくとも一部に設けた窓から前記湿分分離器または湿分分離加熱器に照射された電磁波を前記湿分分離器または湿分分離加熱器の内部へ透過させて前記湿分分離器または湿分分離加熱器内を流れる蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする請求項2記載の発電設備。
【請求項6】
前記構造物は、前記蒸気を生成する蒸気生成部であって、前記蒸気生成部の少なくとも一部に設けた窓から前記蒸気生成部に照射された電磁波を前記蒸気生成部の内部へ透過させて前記蒸気生成部内を流れる蒸気を加熱するように構成したことを特徴とする請求項2記載の発電設備。
【請求項7】
前記構造物に照射され前記窓から前記構造物の内部へ透過させた電磁波を前記構造物の内部で反射させる電磁波反射体をさらに設けたことを特徴とする請求項3乃至請求項6の何れか1項に記載の発電設備。
【請求項8】
前記構造物に照射され前記窓から前記構造物の内部へ透過させた電磁波を前記構造物の内部で吸収させる電磁波吸収体をさらに設けたことを特徴とする請求項3乃至請求項7の何れか1項に記載の発電設備。
【請求項9】
前記蒸気は蒸気と水滴とが混在する二相流である場合、前記二相流の水滴を被加熱対象とすることを特徴とする請求項2記載の発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180761(P2012−180761A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42934(P2011−42934)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)