説明

登録位置検索装置、登録位置検索プログラム、アドレス管理装置及びアドレス管理プログラム

【課題】メモリ内に情報が登録されていない空きエントリの位置、最も古くエントリされた位置の検索を、処理負荷を軽減しながら実現することができるようにする。
【解決手段】本発明の登録位置検索装置は、メモリにエントリされる情報の位置情報と、その位置情報に情報がエントリされているか否かを示す登録状態情報と、登録又は更新されてからの経時情報とを対応付けて保持する情報保持手段と、この情報保持手段における登録状態情報と経時情報とを一体とした情報を、全ての位置情報の間で比較することにより、メモリ内において登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、登録位置検索装置、登録位置検索プログラム、アドレス管理装置及びアドレス管理プログラムに関するものである。例えば、本発明は、ブリッジ装置が、その機能としてMACアドレス学習を行なう際に、空きエントリ、最も古くエントリされた位置を検索する登録位置検索装置、登録位置検索プログラム、アドレス管理装置及びアドレス管理プログラムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
ブリッジ機能は、複数のネットワークに接続され、あるネットワークからのパケットを別のネットワークに中継する機能である。
【0003】
ネットワークでは、遅延の少ないデータ転送が求められるところ、送信元から宛先までの転送処理に係る遅延の増加を防ぐことが求められている。その遅延増加の原因の1つとして、例えばブリッジ装置等の中継装置による処理遅延がある。そのため、例えばブリッジ装置等の中継装置には、転送に係るアドレステーブルの検索等の処理遅延をより小さくすることが望まれている。
【0004】
図2は、従来のブリッジ装置の内部構成を示す内部構成図である。図2において、ブリッジ装置91は、複数のネットワークと接続するために、各ネットワークと接続するポートを持つ複数(図2では4個)の送受信部94(94−1〜94−4)を有する。
【0005】
送受信部94−1〜94−4は、受信したパケットに含まれている情報から、送信元アドレス、宛先アドレスを抽出し、これらをMAC(Media Access Control:媒体アクセス制御)アドレス学習機能部92に通知する。
【0006】
MACアドレス学習機能部92では、先ず受信パケットの宛先アドレスに基づいて、MACアドレステーブル用メモリ93に、受信パケットの宛先アドレスが登録されているか検索を実行する。このMACアドレステーブル用メモリ93は、MACアドレスに受信ポート番号等の情報を対応付けて登録されている。
【0007】
従って、受信パケットの宛先アドレスの登録が有り、かつ、アドレスに対応付けられたポート番号が受信ポートと異なれば、MACアドレス学習機能部92は、検索した結果に該当する送受信部94のポートに当該受信パケットを振り分ける。
【0008】
一方、MACアドレス学習機能部92は、検索した結果、宛先アドレスの登録が無い場合は、設定に応じて、受信したポート以外の全ての送受信部94のポートに受信パケットを振り分けるか、又は、当該受信パケットを廃棄するかの処理を行なう。
【0009】
次に、MACアドレス学習機能部92は、受信パケットから抽出された送信元アドレスに基づいて、MACアドレステーブル用メモリ93に、当該送信元アドレスが登録されているかを検索する。検索した結果、登録が有れば、MACアドレス学習機能部92は登録されている情報を更新する。登録が無ければ、MACアドレス学習機能部92は、受信した送信元アドレス等の情報を登録する。
【0010】
MACアドレステーブル用メモリ93に、受信したパケットの送信元アドレス、受信ポート番号などの情報を登録する際、MACアドレス学習機能部92は、MACアドレステーブル用メモリ93に空きがあるかを検索する。
【0011】
そして、MACアドレステーブル用メモリ93に空きがあれば、MACアドレス学習機能部92はその空きの位置に情報を登録する。
【0012】
しかし、MACアドレステーブル用メモリ93の容量は有限であるため、受信した全ての送信元アドレス等の情報を登録することはできない場合がある。そのときには、MACアドレステーブル用メモリ93内において、最も古くエントリされたものの位置を検索し、そのエントリを削除して、今回の新しい情報を当該位置に登録する。
【0013】
そこで、MACアドレステーブル用メモリ93内で最古のエントリを検索するために、MACアドレス学習機能部92はエージング機能を有する。エージング機能とは、設定時間が経過するまでの間に、登録されている情報の更新がないときに、当該情報を削除する機能である(非特許文献1参照)。
【0014】
例えば、エージング時間を5分間とした場合、送信元アドレス#1が、MACアドレステーブル用メモリ93に登録されてから、5分以内に再び送信元アドレス#1のパケットを受信しなかったとき、MACアドレス学習機能部92は、MACアドレステーブル用メモリ93から、送信元アドレス#1の情報を削除する。一方、5分以内に送信元アドレス#1のパケットを受信したとき、MACアドレス学習機能部92は、MACアドレステーブル用メモリ93から当該情報の削除を行なわず、当該情報のエージング時間の更新(すなわち、再度、5分間のエージング時間の設定)を行なう。
【0015】
上述したように、MACアドレス学習機能部92は、MACアドレステーブル用メモリ93に空きエントリが有るか否かの検索や、空きエントリがない場合には最古のエントリを検索することがなされる。
【0016】
従来、上述したような空きエントリ、最古のエントリを見つけて、新しい送信元アドレスを登録する処理について具体的手段が示されていないが、例えば、以下のような方法が考えられる。
【0017】
例えば、MACアドレステーブル用メモリ93に登録された情報の順番を、時間の古い順に並べ替える方法がある。この方法によれば、エントリが古いものから順に並んでいるので、最も古いエントリを検索することができる。
【0018】
また、特許文献1には、空きエントリや最も古いエントリを検索する方法について記載されていないが、MACアドレステーブル用メモリに、受信パケットの送信元アドレスと、パケットの受信時刻(エージング時間)とを対応付けて登録し、エージング時間経過後に、そのエントリを削除することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−107376号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Rich Seifert著,間宮あきら訳,“LANスイッチング徹底解説”,日経BP社,2001年8月6日発行,P.78〜P.89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上述した前者の従来技術は、テーブル項目の追加や削除等を行なうと、MACアドレステーブル用メモリ内の全ての情報の書き換えが必要となるので、非常に高い処理負荷がかかってしまうという問題が生じ得る。
【0022】
また、特許文献1に記載の技術を用いて、MACアドレステーブル用メモリに対して、宛先アドレス用検索、送信元アドレス用検索、エージング時間経過用検索を行ない得る。特許文献1では、エージング時間としてパケットの受信時刻を用いているので、このままでは直接的にエージング時間の経過を求めることができず、最古のエントリを判定するためには、MACアドレステーブル用メモリからエージング時間(受信時刻)の読み出す動作が必要と考えられる。従って、特許文献1の技術を利用する場合、MACアドレステーブル用メモリに対する処理遅延が大きくなり、受信パケットの転送スループット低下の要因となり得る。
【0023】
そのため、処理遅延の低減を図るため、メモリ内の空きエントリ、最も古いエントリの位置を検索することができる登録位置検索装置、登録位置検索プログラム、アドレス管理装置及びアドレス管理プログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、(1)メモリ内の複数の位置情報と、各位置情報の登録状態情報と、登録又は更新してからの経時情報とを対応付けて保持する情報保持手段と、(2)登録状態情報及び経時情報を一体とした情報を、全ての位置情報の間で比較することにより、メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段とを備えることを特徴とする登録位置検索装置である。
【0025】
第2の本発明は、コンピュータを、(1)メモリ内の複数の位置情報と、各位置情報の登録状態情報と、登録又は更新してからの経時情報とを対応付けて保持させる情報保持手段、(2)情報保持手段に保持される登録状態情報及び経時情報を一体とした情報を、全ての位置情報の間で比較することにより、メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段として機能させることを特徴とする登録位置検索プログラムである。
【0026】
第3の本発明は、(1)アドレステーブル用メモリと、(2)アドレステーブル用メモリ内の複数の位置情報と、各位置情報の登録状態情報と、経時情報とを保持する情報保持手段と、(3)受信された信号に含まれるアドレス情報に基づいて、アドレステーブル用メモリから一致するアドレスを検索するアドレス検索手段と、(4)アドレスが一致する場合、アドレステーブル用メモリの当該位置情報に対応する経時情報を更新する経時情報更新手段と、アドレスが一致しない場合、(5)情報保持手段に保持される登録状態情報及び経時情報を一体とした情報を、全ての位置情報の間で比較することにより、アドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段と、(6)登録位置判定手段で求められたアドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報に、受信信号のアドレス情報を登録すると共に、情報保持手段の当該位置情報に対応する登録状態情報及び経時情報の設定を行なう設定手段とを備えることを特徴とするアドレス管理装置である。
【0027】
第4の本発明は、アドレステーブル用メモリを備えるコンピュータを、(1)アドレステーブル用メモリ内の複数の位置情報と、各位置情報の登録状態情報と、経時情報とを保持させる情報保持手段、(2)受信された信号に含まれるアドレス情報に基づいて、アドレステーブル用メモリから一致するアドレスを検索するアドレス検索手段、アドレスが一致する場合、(3)アドレステーブル用メモリの当該位置情報に対応する上記経時情報を更新する経時情報更新手段、アドレスが一致しない場合、(4)情報保持手段に保持される登録状態情報及び経時情報を一体とした情報を、全ての位置情報の間で比較することにより、アドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段、(5)登録位置判定手段で求められたアドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報に、受信信号のアドレス情報を登録すると共に、情報保持手段の当該位置情報に対応する登録状態情報及び経時情報の設定を行なう設定手段として機能させることを特徴とするアドレス管理プログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、メモリ内の空きのエントリの位置、最も古くエントリされた位置の検索処理の負荷を軽減することができる。また、本発明によれば、転送装置のアドレス管理処理負荷を軽減することができるので、転送スループットの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態のMACアドレス学習機能部の内部構成を示す内部構成図である。
【図2】ブリッジ装置の内部構成を示す内部構成図である。
【図3】実施形態の登録位置判定部の内部構成を示す内部構成図である。
【図4】実施形態のMACアドレス学習処理の動作を説明するフローチャートである。
【図5】実施形態の登録位置判定部による登録位置判定方法を説明する説明図である(その1)。
【図6】実施形態の登録位置判定部による登録位置判定方法を説明する説明図である(その2)。
【図7】変形実施形態の登録位置判定方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(A)実施形態
以下では、本発明の登録位置検索装置、登録位置検索プログラム、アドレス管理装置及びアドレス管理プログラムの実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
この実施形態では、ネットワークを構成する中継装置のブリッジ機能に、本発明を適用する場合の実施形態を例示して説明する。
【0032】
(A−1)実施形態の構成
この実施形態のブリッジ装置の主な内部構成は、基本的には、従来のものと同じ構成であるため、この実施形態でも図2を用いて説明する。
【0033】
すなわち、図2に示すように、この実施形態のブリッジ装置91は、MACアドレス学習機能部92、MACアドレステーブル用メモリ93、複数(図2では4個)の送受信部94−1〜94−4を有する。なお、送受信部94−1〜94−4の数、ポートの数は、特に限定されるものではない。
【0034】
MACアドレス学習機能部92は、送受信部94−1〜94−4が受信した受信パケットを受け取り、受信パケットに含まれるアドレス情報及び受信ポート番号に基づいて、MACアドレステーブル用メモリ93の登録及び更新を行ない、MACアドレスの学習処理を行なうものである。
【0035】
MACアドレス学習機能部92は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インタフェース等を有して構成される回路装置等からなるものであり、MACアドレス学習機能部92の機能は、CPUが、ROMに記憶された処理プログラムを、必要データを用いて実行することにより実現される。
【0036】
図1は、この実施形態のMACアドレス学習機能部92の内部構成を示す内部構成図である。図1に示すように、MACアドレス学習機能部92は、MACアドレステーブル用メモリ93、MAC学習登録情報部11、登録位置判定部12、エージング処理部13、MACアドレステーブル制御部14を少なくとも有する。
【0037】
MACアドレステーブル用メモリ93は、各送受信部94−1〜94−4で送受信されるパケットの送信元アドレス情報を、受信ポート番号に対応付けて格納するものである。MACアドレステーブル用メモリ93は、アドレス情報と受信ポート番号とを対応付けた情報を、表形式のMACアドレステーブルで管理する。
【0038】
例えば、図1では、MACアドレステーブル用メモリ93が格納するMACアドレステーブルの構成の一例を示す。例えば、MACアドレステーブル用メモリ93のMACアドレステーブルは、「登録番号」、「MACアドレス」、「ポート番号」を項目とする。
【0039】
「登録番号」には、MACアドレステーブル用メモリ93の位置情報(すなわちメモリアドレス)を示す番号が格納される。「MACアドレス」には、各送受信部94−1〜94−4からの受信パケットの送信元MACアドレスが格納される。「ポート番号」には、各送受信部94−1〜94−4のポート番号が格納される。
【0040】
MACアドレステーブル用メモリ93は、後述する宛先アドレス又は送信元アドレスの検索の際、受信パケットの送信元アドレスと一致する「MACアドレス」が検索されると、その一致した登録番号をMAC学習登録情報部11に通知するものである。
【0041】
MAC学習登録情報部11は、MACアドレステーブル用メモリ93の格納状況に関する情報を保持するものである。図1には、MAC学習登録情報部11が保持する情報の一例を示す。
【0042】
例えば、図1に示すように、MAC学習登録情報部11は、「登録番号」、「登録状態」、「エージング時間」を項目とする情報を保持する。
【0043】
「登録番号」には、MACアドレステーブル用メモリ93のMACアドレステーブルの登録番号(位置情報)と対応する情報が格納される。
【0044】
「登録状態」には、MACアドレステーブル用メモリ93のMACアドレステーブルにおける登録番号の示す位置に登録情報がエントリ(登録)されているか否かを示す情報が格納される。登録状態を示す方法は、特に限定されることなく、種々の方法を用いることができるが、例えば、「登録状態」は、1ビットの情報で示し、未登録の場合には「0(未登録)」、登録されている場合には「1(登録)」とするようにしてもよい。
【0045】
「エージング時間」には、MACアドレステーブル用メモリ93における登録番号に示す位置に、情報が登録又は更新されてからの経時情報が格納される。ここで、エージング時間は、予め設定されたエージング時間までの残時間を示すものとする。
【0046】
例えば、エージング時間が「5分」と設定されている場合に、ある登録番号に情報が登録されたことを、MACアドレステーブル用メモリ93から通知を受けると、その登録番号に対応する「エージング時間」に「5分」を設定する。そして、後述するエージング処理部13からの更新タイミングに基づいて、エージング時間の値がデクリメントされる。これにより、エージング時間の残時間を格納することができる。
【0047】
ここで、MAC学習登録情報部11は、エージング処理部13からの更新タイミングに基づいて、全ての登録番号のエージング時間の値をデクリメントするものである。また、MAC学習登録情報部11は、全ての登録番号のエージング時間をエージング処理部13に与える。
【0048】
登録位置判定部12は、MAC学習登録情報部11から、全ての登録番号についての、登録番号、登録状態及びエージング時間を受け取り、MACアドレステーブル用メモリ93における空きエントリの位置、最古のエントリの位置を判定するものである。また、登録位置判定部12は、上記判定結果に基づいてMACアドレステーブル用メモリ93における登録可能な登録番号を、MACアドレステーブル制御部14に通知するものである。
【0049】
ここで、登録位置判定部12による登録位置の判定方法は、登録状態の情報及びエージング時間の情報を一体とした情報を、全ての登録番号の間で比較して、空きエントリ、最古エントリの位置を求めることができれば、種々の方法を広く適用することができる。
【0050】
例えば、登録位置判定部12の方法の一例を、図3を用いて説明する。図3において、登録位置判定部12は、比較回路部121、選択回路部122を有して構成される。
【0051】
比較回路部121は、MAC学習登録情報部11から、それぞれの登録番号に対応付けられた、登録状態の情報及びエージング時間の情報を受け取り、全ての登録番号の間で、登録情報の情報及びエージング時間の情報を一体とした情報の比較を行なうものである。
【0052】
ここで、比較回路部121は、登録状態の情報とエージング時間の情報とを結合させ、一続きの値として取り込み、それぞれの登録番号の一続きの値をカウンタ値として、全ての登録番号の間で、カウンタ値の大小比較を行なう。例えば、比較回路部121に入力される値の例として、登録状態を示すビットを最上位ビットとし、エージング時間を示すビットを結合させたものとする。
【0053】
また、比較回路部121は、各カウンタ値の入力位置と、選択回路部122の各登録番号の入力位置とが対応関係になっている。そして、比較回路部121は、全ての登録番号の間で、カウンタ値の大小比較を行ない、最小値を検出し、当該最小値に対応する選択回路122の入力位置情報を選択回路部122に与える。この入力位置情報が、空きエントリ又は最古エントリを示すものとなる。なお、比較回路121は複数個の最小値が入力された場合、そのうち何れの入力位置情報(例えば、若番の登録番号に該当する位置)を選択回路部122に与えるようにしてもよい。または、そのうち何れの入力位置情報をランダムに選択し選択回路部122に与えるようにしてもよい。
【0054】
選択回路部122は、比較回路部121から入力位置情報を受け取ると、その入力位置情報に該当する登録番号を選択し、その選択した登録番号をMACアドレステーブル制御部14に与えるものである。
【0055】
なお、複数個の最小値が与えられた場合、選択回路部122は、それぞれ対応する登録番号を選択し、そのうちいずれの登録番号(例えば、若番の登録番号など)を出力するようにしてもよいし、又はランダムに選択したものを出力するようにしてもよい。
【0056】
エージング処理部13は、MAC学習登録情報部11に情報が登録又は更新されたときに、MAC学習登録情報部11にエージング設定時間を与えたり、又は、エージング時間カウント用の更新パルスを生成して、MAC学習登録情報部11に与えたりするものである。また、エージング処理部13は、MAC学習登録情報部11からのエージング時間情報を受け取り、エージング時間が完了しているものについて、その登録番号をMACアドレステーブル制御部14に通知する。
【0057】
MACアドレステーブル制御部14は、登録位置判定部12から受け取った登録可能な登録番号に基づいて、受信したパケットの送信元アドレス情報等の情報を、MACアドレステーブル用メモリ93に登録するものである。
【0058】
また、MACアドレステーブル用メモリ93に情報を登録する際、MACアドレステーブル制御部14は、MAC学習登録情報部11に対して、MACアドレステーブルの登録番号及び登録状態の設定を行なうと共に、エージング処理部13に対して登録番号に対応するエージング時間の設定を指示制御する。
【0059】
(A−2)実施形態の動作
次に、この実施形態におけるブリッジ装置91におけるMACアドレス学習処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0060】
図4は、ブリッジ装置91におけるMACアドレス学習処理の動作を示すフローチャートである。
【0061】
まず、ブリッジ装置91において、送受信部94がパケットを受信されると、MACアドレステーブル制御部14が、MACアドレステーブル用メモリ93を用いて、受信パケットの宛先MACアドレスの検索を行ない、当該パケットの振り分けを行なう。
【0062】
このとき、MACアドレステーブル制御部14は、宛先MACアドレスに基づいて、MACアドレステーブルを検索して、当該宛先MACアドレスに関する登録情報が登録されているか否かを判断する。
【0063】
そして、対応する登録情報が登録されている場合、当該登録情報のポート番号が、当該パケットの受信ポート番号と異なれば、ブリッジ装置91は、その登録情報のポート番号の送受信部94に当該パケットを与えるようにする。
【0064】
一方、対応する登録情報が登録されていない場合、又は登録情報が登録されているが、当該登録情報のポート番号が受信ポート番号と同じである場合、ブリッジ装置91は、受信ポート以外のポートを持つ送受信部94に対して振り分ける。
【0065】
次に、図4に示すように、MACアドレステーブル制御部14は、MACアドレステーブル用メモリ93から、当該受信パケットの送信元MACアドレスに対応する登録情報の検索を行なう(S101)。
【0066】
そして、送信元MACアドレスと一致する登録情報の有無を判定し(S102)、一致する場合、MACアドレステーブル用メモリ93は、MAC学習登録情報部11に、一致する登録番号の情報を通知する(S103)。
【0067】
そして、MAC学習登録情報部11は、MACアドレステーブル用メモリ93からの情報に基づいて、当該登録番号は登録済みであることを確認し、更に当該登録番号のエージング時間を設定された時間にリセットする(S104)。例えば、エージング時間が5分間であるとすると、MAC学習登録情報部11は、エージング時間を5分にリセットする。
【0068】
一方、S102において、送信元MACアドレスと一致する登録情報がない場合、登録位置判定部12は、MAC学習登録情報部11に登録されている全ての登録番号の、登録情報及びエージング時間に基づいて、空きエントリ又は最古エントリの位置を判定する(S105)。
【0069】
このとき、登録位置判定部12では、それぞれの登録番号の、登録状態及びエージング時間の情報を結合した一続きの値がカウンタ値として入力される。そして、これらのカウンタ値の間で最小となる値が選択される。
【0070】
図5及び図6は、登録位置判定部12による登録位置判定方法を説明する説明図である。
【0071】
図5の例では、MAC学習登録情報部11が、図5(A)に示すように、「登録番号:1」については情報が登録されているものとし、「登録状態:1」、「エージング時間:0010」であるとする、同様に、「登録番号:2」についても、情報が登録されており、「登録状態:1」、「エージング時間:0005」である。また、「登録番号:3」については、情報が登録されておらず、「登録状態:0」、「エージング時間:0000」であるとする。
【0072】
そして、登録状態を示す値を最上位ビットとして、登録状態及びエージング時間を一続きとした値が、カウンタ値として登録位置判定部11に入力される(図5(B)及び図5(C)参照)。例えば、図5の例では、「登録番号:1」については「10010」が入力され、「登録番号:2」については「10005」が入力され、「登録番号:3」については「00000」が入力される。なお、カウンタ値の桁数については、同じ桁数となるように補正をしてから入力されるようにしてもよい。
【0073】
登録位置判定部11では、図3に示す比較回路部121が、各登録番号のカウンタ値の大小比較を行ない、最小値を検出する。例えば、図5の例の場合、「00000」が最小となるので、これを検出する。
【0074】
そして、図3の選択回路部122が、比較回路部121が検出した値に対応する登録番号を選択する。例えば、図5の例では、「00000」は、「登録番号:3」に対応するものであるから、選択回路部122は、「登録番号:3」を出力する。
【0075】
図6の例では、MAC学習登録情報部11が、図6(A)に示すように、「登録番号:1」及び「登録番号:2」は、図5の例と同じであるが、「登録番号:3」については、情報が登録されており、「登録状態:1」、「エージング時間:0007」であるとする。すなわち、図6は、空きエントリがない場合を例示する。
【0076】
この場合も、図5の例と同様にして、「登録番号:1」については「10010」が入力され、「登録番号:2」については「10005」が入力され、「登録番号:3」については「10007」が入力される。
【0077】
登録位置判定部11では、図3に示す比較回路部121が、各登録番号のカウンタ値の大小比較を行ない、最小値「10005」を検出する。そして、図3の選択回路部122が、比較回路部121が検出した値「10005」に対応する「登録番号:2」を出力する。
【0078】
ここで、この実施形態では、「登録状態」は、登録を「1」とし、未登録を「0」として、登録状態の値を最上位ビットにし、またこれに続ける「エージング時間」は、設定時間の残時間を示すものとしているから、登録位置判定部11が最小値を検出することで、空きエントリを優先的に検出することができる。また、空きエントリがない場合でも、エージング時間の残時間が最小のもの、すなわち最も古くエントリされたものを検出することができる。
【0079】
上記のようにして、登録位置判定部12が、空きエントリ又は最古エントリの登録番号を判定し、この登録番号をMACアドレステーブル制御部14に与える。
【0080】
MACアドレステーブル制御部14は、登録位置判定部12からの登録可能な登録番号の位置を受け取ると、その登録番号の位置に、今回受信したパケットの送信元アドレス及び受信ポート番号を登録する(S106)。
【0081】
さらに、MACアドレステーブル制御部14は、新たな登録情報を登録すると、MAC学習登録情報部11に、当該該当する登録番号の登録情報及びエージング時間を設定する(S107)。
【0082】
以上のようにして、受信したパケットの送信元アドレスの登録又は更新を行なうことができる。
【0083】
MACアドレステーブル用メモリ93及びMAC学習登録情報部11に登録される情報の削除は、例えば、次のようにして行なうことができる。
【0084】
エージング処理部13は、MAC学習登録情報11を監視しており、各登録番号のエージング時間を確認する。このとき、エージング処理部13は、例えば、周期的に監視するようにしてもよい。
【0085】
エージング処理部13が、エージング時間が「0」となったことを検出すると、当該エージング時間「0」に対応する登録番号を、MACアドレステーブル制御部14に通知する。
【0086】
これを受けて、MACアドレステーブル制御部14は、エージング処理部13からの当該登録番号に基づいて、MACアドレステーブル用メモリ93の当該登録番号の情報を削除する。
【0087】
さらに、MACアドレステーブル制御部14は、当該登録番号に基づいて、MAC学習登録情報部11における当該登録番号に対応する登録状態情報を「0(未登録)」とする。このようにすることで、MAC学習登録情報部11において、登録状態情報が「0」であれば、エージング時間も「0」とすることができる。
【0088】
なお、MAC学習登録情報部11における、登録状態情報及びエージング時間の設定方法は、上記のような方法以外であってもよい。
【0089】
例えば、通信端末の帰属の切り替え等により、MACアドレステーブル制御部14が、MACアドレステーブル用メモリ93内のある登録番号の情報を削除した場合、MACアドレステーブル制御部14が、MAC学習登録情報部11における当該登録番号の登録状態情報を「0」に切り替えるようにしてもよい。このとき、登録状態情報のみを「0」としてもよいし、又は、登録状態情報及びエージング時間の双方を「0」とするようにしてもよい。
【0090】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、MAC学習登録情報部が、MACアドレステーブル用メモリの登録番号に対応する情報として、登録番号、登録状態、エージング時間を保持し、登録位置判定部が、MAC学習登録情報に保持される情報に基づいて、MACアドレステーブル用メモリにおける空きエントリ又は最も古いエントリを判定することができる。
【0091】
その結果、この実施形態によれば、従来のように、MACアドレステーブル用メモリからのエージング時間の読み出しを行なうことなく、空きエントリ又は最も古いエントリを特定し、その位置を求めることができるので、MACアドレステーブル用メモリへの処理を軽減させることができる。このことは、受信パケットの転送スループットの向上にも繋がる。
【0092】
(B)他の実施形態
(B−1)上述した実施形態では、ブリッジ機能に本発明を適用する場合を例示したものであり、MAC学習登録情報部が、MACアドレステーブルに登録される登録状態及びそのエージング時間を保持する場合を例示した。
【0093】
しかし、例えば、ARPテーブル等ように表形式で情報を登録するメモリの登録位置を検索する場合にも本発明を適用することができる。すなわち、対象とするテーブルの種類は、特に限定されるものではなく、広く適用することができる。さらには、ブリッジ機能に限定されることなく、表形式のメモリを有する他の装置に広く適用することができる。
【0094】
(B−2)上述した実施形態では、登録位置判定部が、MAC学習登録情報部からのカウンタ値の最小値を求める場合を例示したが、次のようにして最大値を検索するようにしてエントリ位置を求めるようにしてもよい。
【0095】
例えば、登録状態については、「登録」を0とし「未登録」を1とし、エージング時間については、「0」から「設定時間」までインクリメント方式でサイクリックに保持するようにする。この場合に、登録位置判定部は、最大値を空きエントリ又は最も古いエントリとして検出することができる。
【0096】
(B−3)上述した実施形態において、登録位置判定部は、登録状態の値を最上位ビットとし、それにエージング時間を結合させたものをカウンタ値として取り込む場合を例示したが、エージング時間の値の後に、登録状態の値を結合させるようにしてもよい。ただし、エージング時間の値が0とならず、登録状態の値のみが「0」となる場合には適用することができない。
【0097】
図7は、この場合の登録位置判定方法を説明する説明図である。図7(A)に示すように、エージング時間の値を「0」とし、登録状態の値も「0」とする場合、図7(A)のように、空き又は最古のエントリとして「登録番号:3」のエントリを選択することができる。
【0098】
また、上述した実施形態では、エージング時間の値が0とならず、登録状態の値のみが「0」となる例も述べた。この例の場合には、図7(B)に示すように、エージング時間の値の後に、登録状態の値を結合させてしまうと、最下位ビットが「0」であるが、それより上位のビットが「0」でないため、「登録番号:3」が未登録であるにも拘らず、正しく「登録番号:3」のエントリが選出できない場合もある。
【0099】
従って、この変形実施形態の場合には、エージング時間の値を「0」とし、登録状態の値も「0」とする場合に、特に有効である。
【0100】
(B−4)上述した実施形態では、MACアドレステーブル用メモリのMACアドレステーブルが登録番号を設ける場合を例示したが、MACアドレスを登録番号とする場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
11…MAC学習登録情報部、12…登録位置判定部、13…エージング処理部、
14…MACアドレステーブル制御部、
91…ブリッジ装置、92…MACアドレス学習機能部、
93…MACアドレステーブル用メモリ、94−1〜94−4…送受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ内の複数の位置情報と、上記各位置情報の登録状態情報と、登録又は更新してからの経時情報とを対応付けて保持する情報保持手段と、
上記登録状態情報及び上記経時情報を一体とした情報を、全ての上記位置情報の間で比較することにより、上記メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段と
を備えることを特徴とする登録位置検索装置。
【請求項2】
上記登録位置判定手段が、
上記登録状態情報と上記経時情報とを結合させた値をカウンタ値として取り込み、全ての上記位置情報のカウンタ値の間で大小比較を行なう比較部と、
上記比較部による大小比較結果で選択されたカウンタ値に対応する上記位置情報を、上記メモリの登録可能な位置情報として選択する位置情報選択部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の登録位置検索装置。
【請求項3】
上記メモリ内の上記位置情報の位置に、情報が登録されている場合、上記登録状態情報を1とし、情報が未登録の場合、上記登録状態情報を0とし、上記登録状態情報に続けてエージング時間の残時間である上記経時情報を結合した値を上記カウンタ値とするとき、
上記比較部は上記カウンタ値の最小値を検出し、上記位置情報選択部は、上記最小値に対応する上記位置情報を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の登録位置検索装置。
【請求項4】
コンピュータを
メモリ内の複数の位置情報と、上記各位置情報の登録状態情報と、登録又は更新してからの経時情報とを対応付けて保持させる情報保持手段、
上記情報保持手段に保持される上記登録状態情報及び上記経時情報を一体とした情報を、全ての上記位置情報の間で比較することにより、上記メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段
として機能させることを特徴とする登録位置検索プログラム。
【請求項5】
アドレステーブル用メモリと、
上記アドレステーブル用メモリ内の複数の位置情報と、上記各位置情報の登録状態情報と、経時情報とを保持する情報保持手段と、
受信された信号に含まれるアドレス情報に基づいて、上記アドレステーブル用メモリから一致するアドレスを検索するアドレス検索手段と、
アドレスが一致する場合、上記アドレステーブル用メモリの当該位置情報に対応する上記経時情報を更新する経時情報更新手段と、
アドレスが一致しない場合、
上記情報保持手段に保持される上記登録状態情報及び上記経時情報を一体とした情報を、全ての上記位置情報の間で比較することにより、上記アドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段と、
上記登録位置判定手段で求められた上記アドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報に、受信信号のアドレス情報を登録すると共に、上記情報保持手段の当該位置情報に対応する上記登録状態情報及び上記経時情報の設定を行なう設定手段と
を備えることを特徴とするアドレス管理装置。
【請求項6】
アドレステーブル用メモリを備えるコンピュータを、
上記アドレステーブル用メモリ内の複数の位置情報と、上記各位置情報の登録状態情報と、経時情報とを保持させる情報保持手段と、
受信された信号に含まれるアドレス情報に基づいて、上記アドレステーブル用メモリから一致するアドレスを検索するアドレス検索手段、
アドレスが一致する場合、上記アドレステーブル用メモリの当該位置情報に対応する上記経時情報を更新する経時情報更新手段、
アドレスが一致しない場合、
上記情報保持手段に保持される上記登録状態情報及び上記経時情報を一体とした情報を、全ての上記位置情報の間で比較することにより、上記アドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報を求める登録位置判定手段、
上記登録位置判定手段で求められた上記アドレステーブル用メモリの登録可能な位置情報に、受信信号のアドレス情報を登録すると共に、上記情報保持手段の当該位置情報に対応する上記登録状態情報及び上記経時情報の設定を行なう設定手段
として機能させることを特徴とするアドレス管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−5398(P2013−5398A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137665(P2011−137665)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】