説明

白熱ランプ

【課題】 封止部の温度上昇を抑制するために封止部を管軸と交差する方向に屈曲させた構造であっても、内部リード線が屈曲された封止部の屈曲部で切断されることがない白熱ランプを提供することにある。
【解決手段】 本発明の白熱ランプは、発光管1内に配置されたフィラメント2の両端に内部リード線3が接続され、発光管1の端部に形成された封止部5に、内部リード線3の一部と金属箔4が埋設された白熱ランプ10において、封止部5は発光管1の管軸と交差する方向に曲がる屈曲部51を有し、内部リード線3が屈曲部51で屈曲されており、封止部5内であって内部リード線3の周りに当該内部リード線3を取り囲む包囲部材7が配置されており、包囲部材7の発光管1側の端部が発光管1の内部空間に突出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板や合成樹脂シートなどを加熱するための熱源として利用される白熱ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス基板や合成樹脂シートなどを加熱する工程では、白熱ランプと、内部に電熱線が配置された平板状のプレートヒータを組み合わせて被加熱物を加熱するものである。
【0003】
これは、ガラス基板や合成樹脂シートなど四角形の被加熱物を加熱する際に、四隅においては放熱作用が高く、四隅を除いた部分では放熱作用が低いために、四隅とそれ以外の部分では加熱強度を変える必要がある。
このような場合、図5に示すように、四隅であるD領域に白熱ランプを複数並べ、それ以外の部分ではプレートヒータPを用いた加熱装置が知られている。なお、図5は、装置の概略説明図であり、図5において、点線は被加熱物の輪郭を示すものであり、D領域に配置された白熱ランプは省略して示しているが、図6で白熱ランプの配置構造を説明する。
なお、被加熱物の背面に、図示のプレートヒータPと白熱ランプが配置されているものであり、図5の紙面に対して手前側に被加熱物が配置されるものであり、被加熱物は、図面上描いていない。
【0004】
図6は、白熱ランプの配置構造を示す説明図であり、図5中、左下のD領域に配置される白熱ランプの配置構造を示すものである。
複数の白熱ランプ11は同一平面上に並べて配置されており、各白熱ランプ11は保持板Mによって保持され、各白熱ランプ11の両端の封止部5が保持板Mの後方側に折り曲げられた構造になっている。
なお、図6において、一つの白熱ランプのみ封止部5を押さえる一組の押え板M2を取り除いて、封止部5の構造と封止部5が挿入される開口M1を示すものである。
また、点線は被加熱物の輪郭を示すものであり、図5中、左下のD領域にかかる被加熱物の輪郭線を示すものである。
【0005】
このような加熱工程で使われる従来の白熱ランプを図7を用いて詳細に説明する。図7では、白熱ランプ以外に白熱ランプを保持する保持部材も合わせて記載しており、被加熱物は白熱ランプの上方に配置されるものである。
白熱ランプ11は、石英ガラス製の発光管1内にフィラメント2が配置されており、フィラメント2の両端に内部リード線3が接続され、この内部リード線3の端部が金属箔4に接続され、発光管1の端部に形成された封止部5に、内部リード線3の一部と金属箔4が埋設されている。
そして、封止部5は、図中点線で示す部分である屈曲部51を有しており、この屈曲部51で封止部5が発光管1の管軸Xと交差する方向に曲げられて、屈曲型の白熱ランプになっている。
【0006】
発光管と封止部が一直線上に存在する直線型の白熱ランプでは、白熱ランプの封止部が、複数の白熱ランプを含んで形成される面状の加熱エリアの中に存在してしまうため、封止部の温度が上がりすぎ、封止部に埋設された金属箔が酸化し、封止部にクラックが発生して白熱ランプが破損することがあった。
【0007】
このような問題を解決するために、図7に示す白熱ランプ11のように、封止部5を白熱ランプ11から放射される光によって加熱すべき矢印A方向とは反対方向に屈曲させ、封止部5をセラミック製の保持板Mの開口M1に挿入し、金属箔4が埋設された封止部5を保持板Mの後方側に逃がし、金属箔4が埋設された部分の封止部5を加熱エリア外に出し、金属箔4の酸化を防止するものである。
なお、白熱ランプ11と保持板Mの固定は適宜の手段を用いるものである。
【0008】
また、ガラスを溶融して封止した中実塊状となって発光管1より機械的強度が強い部分である封止部5を屈曲するものであり、屈曲してもランプの封止部が破損しないものである。
【0009】
【特許文献1】特開2003−7431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような屈曲型の白熱ランプの製造方法について、図8を用いて説明する。なお、図8は、白熱ランプの一方側の発光管と封止部の一部拡大断面図である。
図8(a)に示すように、先ず初めに、発光管1の端部をピンチシールして封止部5を形成する。その後、封止部5を自然冷却することにより、封止部5が発光管1の管軸Xと一致した状態になり、発光管1と封止部5が一直線上に位置する構造になる。
【0011】
その後、図8(b)に示すように、封止部5を屈曲するために、封止部5の一部をバーナーで加熱し、バーナーによって加熱された封止部5の一部のガラスが軟化状態となる。
ガラスの軟化状態は、軟化したガラスが重量よって自然に垂れ下がるほど軟化しているものではなく、封止部5の形状を保ちながらも応力によって曲がる程度に軟化している。
【0012】
この状態で、発光管1を固定しておきながら、封止部5の先端側を適宜の手段で挟み持ち、管軸と交差する方向に曲げて、図8(c)に示すように、封止部を屈曲させるものである。
【0013】
このような製造方法では、図8(b)に示すように、図中Bで示す領域の封止部は、バーナーで加熱されておらず、封止部5が軟化していない状態であり、図中Cで示す破線領域部分に埋設された内部リード線3は、依然として封止部5に強固に固定されている。
そして、図8(c)に示すように、封止部5を屈曲すると、屈曲部51の両側に位置する図中C領域の内部リード線が封止部5を構成するガラスに固着して固定されているので、この状態で内部リード線3が軟化したガラスよって押さえられながら曲がるので、内部リード線に引張り応力が働き、引張り応力に耐え切れずに、屈曲部51で内部リード線3が切断されることがあった。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、封止部の温度上昇を抑制するために封止部を管軸と交差する方向に屈曲させた構造であっても、内部リード線が屈曲された封止部の屈曲部で切断されることがない白熱ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の白熱ランプは、発光管内に配置されたフィラメントの両端に内部リード線が接続され、当該内部リード線の端部が金属箔に接続され、発光管の端部に形成された封止部に、前記内部リード線の一部と金属箔が埋設された白熱ランプにおいて、前記封止部は前記発光管の管軸と交差する方向に曲がる屈曲部を有し、前記封止部内であって前記内部リード線の周りに当該内部リード線を取り囲む包囲部材が配置されており、前記包囲部材の発光管側の端部が前記発光管の内部空間に突出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の白熱ランプによれば、封止部の温度上昇を抑制するために封止部を管軸と交差する方向に屈曲させた構造であっても、内部リード線が屈曲された封止部の屈曲部で切断されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願発明の白熱ランプを説明する。
図1は、本願発明の白熱ランプであり、図1では、白熱ランプ以外に白熱ランプを保持する保持部材も合わせて記載しており、被加熱物であるガラス基板は白熱ランプの上方に配置されるものである。
白熱ランプ10は、石英ガラス製の発光管1内にタングステンのフィラメント2が配置されており、フィラメント2の両端にタングステン製の内部リード線3が接続されている。
フィラメント2は直径0.2mmのタングステン線をコイリングしたものであり、このコイルの両端に直径0.4mmの直線状の内部リード線3を接続した構造である。なお、内部リード線3は、フィラメント2の両側のタングステン線を引き伸ばして内部リード線3としてもよい。
【0018】
内部リード線3のフィラメント2とは反対側の端部はモリブデン製の金属箔4に溶接により接続されており、金属箔4の他端には直径0.8mmのモリブデン製の外部リード棒6が接続されている。
【0019】
発光管1の端部には、発光管1の端部を加熱してピンチシールした封止部5が形成されており、この封止部5には内部リード線3の一部と金属箔4が埋設されており、封止部5から外部リード棒6が外部に突出している。
【0020】
そして、封止部5は、図中点線で示す部分である屈曲部51を有しており、この屈曲部51で封止部5が発光管1の管軸Xと交差する方向に曲げられている。
【0021】
内部リード線3の一部は、この屈曲部51で屈曲されており、封止部5内であって屈曲された内部リード線3の周りに内部リード線3を取り囲む包囲部材である金属線をコイリングしたコイル部材7が配置されている。
【0022】
そして、本願発明の白熱ランプは、封止部5をセラミック製の保持板Mの開口M1に挿入し、金属箔4が埋設された封止部5を保持板Mの後方側に逃がし、金属箔4が埋設された部分の封止部5を加熱エリア外に出し、金属箔4の酸化を防止するものである。
なお、白熱ランプ10と保持板Mの固定は適宜の手段を用いるものである。
【0023】
図2は、封止部5の屈曲部51の拡大一部断面図である。
コイル部材7は、線径0.08mmのタングステン線を密にコイリングしたものであり、屈曲している内部リード線3の周りに存在し、このコイル部材7の発光管側の端部71は発光管1の内部空間に突出した状態になっており、発光管とは反対側の金属箔4側の端部72は屈曲部51に続く直線状の封止部5に埋設された金属箔4の近傍まで伸びた状態になっている。
【0024】
このコイル部材7は、内部リード線3の端部に金属箔4を溶接する前に、予め内部リード線3にコイル部材7を通したものであり、コイル部材7は内部リード線3に対して固定されておらず、摺動自在に動くものである。
【0025】
このような屈曲型の白熱ランプの製造方法について、図3を用いて説明する。なお、図3は、白熱ランプの一方側の発光管と封止部の一部拡大断面図である。
図3(a)に示すように、先ず初めに、発光管1の端部をピンチシールして封止部5を形成する。このピンチシール工程において、コイル部材7の発光管側の端部71は発光管1の内部空間に突出した状態になっており、発光管とは反対側の金属箔4側の端部72は封止部5に埋設されている。
その後、封止部5を自然冷却することにより、封止部5が発光管1の管軸Xと一致した状態になり、発光管1と封止部5が一直線上に位置する構造になる。
【0026】
その後、図3(b)に示すように、封止部5を屈曲するために、封止部5の一部をバーナーで加熱し、バーナーによって加熱された封止部5の一部のガラスが軟化状態となる。
ガラスの軟化状態は、軟化したガラスが重量よって自然に垂れ下がるほど軟化しているものではなく、封止部5の形状を保ちながらも応力によって曲がる程度に軟化している。
【0027】
この状態で、発光管1を固定しておきながら、封止部5の先端側を適宜の手段で挟み持ち、管軸と交差する方向に曲げて、図3(c)に示すように、封止部を屈曲させるものである。
【0028】
このような製造方法では、図3(b)に示すように、図中Bで示す領域の封止部は、バーナーで加熱されておらず、封止部5が軟化していない状態であり、図中Cで示す破線領域部分に埋設されたコイル部材7と内部リード線3は、依然として封止部5に強固に固定されている。
このように内部リード線3を取り囲むようにコイル部材7が配置された状態で封止部5を形成すると、封止部5を構成するガラスとコイル部材7が溶着された状態になるが、コイル部材7の内部に位置する内部リード線3はコイル部材7が隔壁となって封止部5を構成するガラスとは溶着されていない構造となる。
【0029】
そして、図3(c)に示すように、封止部5を屈曲させて屈曲部51を形成すると、屈曲部51内のコイル部材7は、ガラスと溶着された状態で屈曲されるものであり、また、溶融したガラスは、屈曲してピッチが広がったってもコイル部材7の内部までに流れ込まない程度の溶融状態である。
【0030】
このような製造方法によれば、内部リード線3の金属箔側の端部31は、封止部5を構成するガラスと溶着された状態で固定されているが、屈曲部51部分に存在する内部リード線3はコイル部材7内に位置するためにガラスとは溶着されていない状態であり、内部リード線3のフィラメント側の端部32は封止部5に埋設され発光管1の内部空間に伸び出したコイル部材7の端部71から発光管1の内部空間に伸びだしており、封止部5を構成するガラスと溶着されていない状態になっている。
【0031】
この結果、屈曲部51を形成する工程において、内部リード線3が図2中矢印方向である封止部5が伸びる方向に引っ張られても、内部リード線3は封止部5を構成するガラスと接触することなく矢印方向に動くことができ、内部リード線3が切断されることがない。
【0032】
なお、内部リード線3が矢印方向に動くことにより、内部リード線3と接続されたフィラメント2を引っ張ることになり、フィラメント2の端のピッチが多少広がるが、ピッチの広がり程度は極めて僅かであり、配光特性には影響を与えるものではない。
【0033】
また、屈曲部51に位置するコイル部材7は、コイル状であるために、屈曲すると屈曲状態に沿ってピンチが変化するだけであり、屈曲部51の形成が容易になる。
【0034】
図4は、本願発明の他の実施例の白熱ランプであって、発明の構成部分である封止部の屈曲部の拡大一部断面図である。
内部リード線3を取り囲む包囲部材は、肉薄の金属パイプ8である。
この金属パイプ8は、厚み0.02mmのモリブデン箔をパイプ状にしたものであり、屈曲している内部リード線3の周りに存在し、発光管側の端部81は封止部5には埋設されておらず発光管1の内部空間に伸び出した状態になっており、発光管とは反対側の金属箔側の端部82は屈曲部51に続く直線状の封止部5に埋設された金属箔4の近傍まで伸びた状態になっている。
【0035】
この金属パイプ8は、内部リード線3の端部に金属箔4を溶接する前に、予め内部リード線3に金属パイプ8を通したものであり、金属パイプ8は内部リード線3に対して固定されておらず、摺動自在に動くものである。
【0036】
このように内部リード線3を取り囲むように金属パイプ8が配置された状態で封止部5を形成すると、封止部5を構成するガラスと金属パイプ8が溶着された状態になるが、金属パイプ8の内部に位置する内部リード線3は金属パイプ8が隔壁となって封止部5を構成するガラスとは完全に溶着されていない構造になる。
【0037】
そして、図4に示すように、封止部5を屈曲させて屈曲部51を形成すると、屈曲部51内の金属パイプ8は、ガラスと溶着された状態で屈曲されるものである。
【0038】
一方、内部リード線3の金属箔側の端部31は、封止部5を構成するガラスと溶着された状態で固定されているが、屈曲部51部分に存在する内部リード線3は金属パイプ8内に位置するためにガラスとは溶着されていない状態であり、内部リード線3のフィラメント側の端部32は封止部5に埋設され発光管1の内部空間に伸び出した金属パイプ8の端部81から発光管1の内部空間に伸びだしており、封止部5を構成するガラスと溶着されていない状態になっている。
【0039】
この結果、屈曲部51を形成する工程において、内部リード線3が図4中矢印方向である封止部5が伸びる方向に引っ張られても、内部リード線3は封止部5を構成するガラスと接触することなく矢印方向に動くことができ、内部リード線3が切断されることがない。
【0040】
なお、内部リード線3が矢印方向に動くことにより、内部リード線3と接続されたフィラメント2を引っ張ることになり、フィラメント2の端のピッチが多少広がるが、ピッチの広がり程度は極めて僅かであり、配光特性には影響を与えるものではない。
【0041】
この結果、封止部の温度上昇を抑制するために封止部5を管軸と交差する方向に屈曲させても、内部リード線3が屈曲された封止部5の屈曲部51で切断されることがない白熱ランプとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る白熱ランプの説明図である。
【図2】図1に示す白熱ランプの封止部に形成された屈曲部の拡大断面図である。
【図3】本発明の白熱ランプの封止部を屈曲させる工程の説明図である。
【図4】本発明の他の実施例である白熱ランプの封止部に形成された屈曲部の拡大断面図である。
【図5】加熱装置の概略説明図である。
【図6】図5に示す加熱装置の白熱ランプの配置構造図である。
【図7】従来の白熱ランプの説明図である。
【図8】従来の白熱ランプの封止部を屈曲させる工程の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 発光管
2 フィラメント
3 内部リード線
4 金属箔
5 封止部
51 屈曲部
6 外部リード棒
7 コイル部材
8 金属パイプ
10 白熱ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内に配置されたフィラメントの両端に内部リード線が接続され、当該内部リード線の端部が金属箔に接続され、発光管の端部に形成された封止部に、前記内部リード線の一部と金属箔が埋設された白熱ランプにおいて、
前記封止部は前記発光管の管軸と交差する方向に曲がる屈曲部を有し、
前記内部リード線が前記屈曲部で屈曲されており、
前記封止部内であって前記内部リード線の周りに当該内部リード線を取り囲む包囲部材が配置されており、
前記包囲部材の発光管側の端部が前記発光管の内部空間に突出していることを特徴とする白熱ランプ。
【請求項2】
前記包囲部材は金属線をコイリングしたコイル部材であり、
前記コイル部材の内部に、内部リード線が挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の白熱ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−269957(P2008−269957A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111433(P2007−111433)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)