説明

白色ポリエステルフィルム

【課題】隠蔽性、製膜安定性、加工性に優れた白色ポリエスエルフィルムを提供すること。
【解決手段】フィルム中の酸化チタン平均濃度が10〜50重量%であって、酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数が45以下であることを特徴とする白色ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白色ポリエステルフィルムに関するものである。詳しくは金属板等に貼合せた後に、フィルムが容器等の外面となるように加工するのに好適な白色ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属缶の内面及び外面は腐食防止を目的として、エポキシ系、フェノール系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に融解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながらこのような熱硬化性樹脂による被覆方法は、乾燥に長時間要することによる生産性の低下や、大量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題がある。
【0003】
最近これらの問題を解決する方法として、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板、あるいは該金属板にめっき等各種の表面処理を施した金属板に、フィルムを被覆(ラミネート)することが試みられている。フィルムラミネート金属板を絞り成形やしごき成形加工して金属缶を製造する場合、フィルムには次のような特性が要求される。
(1)金属板へのラミネート性が優れていること。
(2)金属板との密着性に優れていること。
(3)成形性に優れ、成形後にピンホールなどの欠陥を生じないこと。
(4)金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフィルムが剥離したり、クラックやピンホールが発生しないこと。
【0004】
また、特に金属缶外面に用いるフィルムについては、従来使用されている白色塗料の下塗りを省略するために、上記に加えて次のような特性が要求される。
(5)白色性及び金属の隠蔽性に優れ、美麗感があり印刷に適していること。
【0005】
近年ラミネート、製缶速度の向上に伴い、一層のラミネート性、成形性、フィルムと鋼板の密着性の向上が望まれており、特に缶外面用に使用される白色フィルムにおいては、より高白色で隠蔽度が高く、厳しい成形加工にも使用できる外面用フィルムが求められている。しかしながら例えば隠蔽度向上のため、単に白色顔料粒子を高濃度に添加した白色フィルムでは、隠蔽度は向上するものの、フィルム自体が脆くなり、延伸時の破断が多発し、製膜安定性が大きく低下し、また例えばラミネートや製缶等の加工時に、フィルムが成形に耐えることができずに、割れやひび等のトラブルが問題となる。
【0006】
また缶用途以外にも、他のフィルムへのラミネート、加工が施される様な包装材料として隠蔽性、薄膜性に優れる白色フィルムのラミネート性、加工性、成形性を改良することは重要な課題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することにあり、白色ポリエステルフィルム、特に容器成形外面用白色ポリエステルフィルムとして高い隠蔽性を有し、製膜安定性、加工性に優れた白色ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した本発明の目的は、フィルム中の酸化チタン平均濃度が10〜50重量%であって、酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数が45以下であり、酸化チタン粒子周りのポリエステルが共重合したポリエステルであり、酸化チタン粒子周りのポリエステルのモル共重合量がバルクを構成するポリエステルのモル共重合量より高く、長手方向と巾方向の破断伸度の平均が80%以上であることを特徴とする白色ポリエステルフィルムによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、フィルム中の酸化チタン平均濃度と酸化チタン粒子周りの結晶化指数を制御することにより、高い隠蔽性、製膜安定性、加工性を兼ね備えたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称であり、ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。一方、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
【0011】
さらに本発明では、上記ポリエステルを2種以上ブレンドして使用してもかまわない。
【0012】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、ポリエステルにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
【0013】
本発明のポリエステルは耐熱性の点から、フィルムを構成するポリエステルの75モル%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位を主構成成分とするポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上である。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルムの融点は、耐熱性、成形性の点から180〜270℃であることが好ましく、より好ましくは200〜265℃、特に好ましくは210〜260℃である。ここでポリエステルフィルムの融点とは、フィルムを示差走査熱量測定(DSC)した際に検出される主融解ピーク温度のことである。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムの何れにも限定されないが、耐熱性、寸法安定性の点から二軸延伸フィルムであることが望ましい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
【0016】
本発明において白色ポリエスエルフィルムは、隠蔽性、加工性の点からフィルム中の酸化チタン平均濃度が10〜50重量%であることが必要であり、好ましくは20〜45重量%、更に好ましくは25〜40重量%である。フィルム中の酸化チタン平均濃度が10重量%未満の場合、白さや隠蔽性が低下し、目的の隠蔽性を得るためには、フィルム厚みを厚くすることが必要になり、非効率であるばかりでなく、フィルム厚みの増大によりラミネート性、加工性が悪化する。一方、フィルム中の酸化チタン平均濃度が50重量%を越えると、フィルムが大きく脆化し、製膜性、加工性が悪化する等の問題となる。
【0017】
本発明においては、酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数が45以下であることが必要であり、好ましくは40以下である。また耐熱性の点から酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数は10以上であることが好ましく、より好ましくは15以上である。酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数を45以下とすることにより、製膜性、加工性を飛躍的に向上させることができる。我々は、外力が負荷される製膜、加工時等にフィルムが破れたり切れやすくなる現象を詳細に調査した結果、酸化チタン粒子周りを起点とするクラックの発生が主原因であることを解明し、更に検討を突き進めたところ、この原因が粒子周りのポリマーが過度に結晶化しているために起こる事を突き止めた。そして鋭意検討した結果、酸化チタン周りのポリエステルの結晶化指数を上記範囲とすることにより、クラックの発生を抑制でき、製膜安定性、加工性の向上に至ることを発見したものである。すなわち、酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数が45を越えると、製膜時や加工時にフィルムが破れたり切れたりしやすくなる。ここで、酸化チタン周りのポリエステルの結晶化指数は、加工前あるいは加工後のフィルムを溶解後、遠心分離して得られた酸化チタン周りのポリエステルを赤外分光法測定することにより求める。
【0018】
本発明では接着性、機械特性をより向上させるためにフィルムの固有粘度(IV)は、0.58〜0.7dl/gであることが好ましい。IVが0.58dl/g未満では、金属板との接着性が低下するのみならず、伸度などの機械特性が低下し、製膜安定性、加工性が悪化するため好ましくない。一方IVが0.7dl/gを越えるものは、原料ポリマー溶融押出時の分解物や未溶融物の発生量が多くなるなどの問題が発生する。
【0019】
本発明においては、酸化チタン粒子周りのポリエステルは、粒子周りの結晶化指数が45以下であれば特に限定されるものではないが、製膜性、加工性をより向上させる点から、酸化チタン粒子周りのポリエステルのモル共重合量が、バルクを構成するポリエステルのモル共重合量より高くすることが非常に有効であり、また酸化チタン粒子周りのポリエステルは10〜50モル%の共重合ポリエステルであることが好ましく、より好ましくは13〜40モル%の共重合ポリエステルである。10モル%以上とするとポリエステルを低結晶化させる効果が高くなる。一方50モル%を超えると、結晶性が低下し過ぎる場合があり、耐熱性が劣ったり、生産効率が低下する場合がある。両者を両立させるという意味で13〜40モル%であることが好ましい。さらに生産性、取扱い性、低結晶化の点からイソフタル酸10〜50モルの共重合ポリエステルが好ましく、より好ましくはイソフタル酸15〜40モルの共重合ポリエスエルである。10モル%未満では低結晶化の効果が不十分な場合があり、また50モル%を超えると生産性や取り扱い性が低下する。両者を両立させるという意味で15〜40モル%であることが好ましい。
【0020】
本発明においては、ロール等の摩耗低減の点から、少なくとも片面に酸化チタン濃度が1〜10重量%である層を積層することが好ましく、より好ましくは酸化チタン濃度が3〜7重量%である。また積層する層に含有される酸化チタン粒子周りのポリエステルは、結晶化指数が45以下であることが好ましく、特に好ましくは40以下であるが、特に限定されるものではない。積層構成はA/Bの2層、B/A/B、B/A/Cの3層などが例示されるが、特に限定されるものでない。積層厚みは摩耗性の点から、好ましくは0.2〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmであり、片面、両面でも良く、更には積層面の上に積層しても良い。
【0021】
本発明において、ポリエステルに添加する酸化チタンは、平均粒径0.1〜0.5μmであり、好ましくは平均粒径0.2〜0.35μmである。平均粒径0.1μm未満では、ポリエステル中への分散性が低下し、斑が発生する等の問題となる。酸化チタンは、純度として95%以上のものが好ましく、95%未満であると分散性に劣るものとなる。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型の何れにも限定されないが、隠蔽性向上の点からルチル型酸化チタンが好ましい。
【0022】
また本発明において、酸化チタン無機系表面処理剤としては特に限定されるものではないが、アルミ成分を含有する表面処理剤が好ましく、その添加量は0.01〜1.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%である。ここでアルミ成分の割合(重量%)は、酸化チタンに対する重量比であり、蛍光X線分析等により定量できる。酸化チタンの無機系表面処理剤としては、この他にシリカ化合物、チタニヤ化合物等を例示できるが、特にポリエステルに酸化チタンを添加する場合、アルミ成分を含有することが分散性の点から好ましい。アルミ成分は酸化チタン表面処理剤として酸化アルミ化合物、水酸化アルミ化合物として処理されることが好ましく、アルミ量について言えば酸化アルミや水酸化アルミ中に含まれるアルミ成分が、好ましくは0.01〜1.5重量%存在することにより、分散性、ポリエステルとの親和性が向上し、白色度、隠蔽性に優れ、かつポリエステル中に均一分散するために、白色斑等が激減し美麗性も向上したものとなる。さらに粗大粒子も低減されるため、製膜延伸時のロール摩耗や、ラミネート、製缶加工時のトラブルも解消される。
【0023】
本発明における酸化チタンの有機表面処理剤としては、アミン系化合物、多価アルコール系化合物、シリコ−ン系化合物などをあげることができるが、分散性の点から多価アルコール系化合物、シリコ−ン系化合物が好ましく、特に耐熱性、アルミ成分含有の表面処理剤との組合せにおける分散性の一層の向上からシリコ−ン系化合物がより好ましい。酸化チタン重量に対してシリコ−ン系化合物は0.02〜2重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1重量%である。また多価アルコール系化合物では酸化チタン重量に対して、0.01〜1.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8重量%である。上記化合物を表面処理剤とすることで、分散性悪化による溶融押出時での異物発生や、酸化チタンの凝集を大幅に抑制することが可能となる。ここでシリコ−ン系化合物量、多価アルコール系化合物量は、酸化チタン重量に対する重量比(重量%)である。シリコ−ン系化合物量は、は熱重量−質量同時分析法及び熱重量−ガスクロ/質量同時分析法を用い、ヘリウム流下、室温から50℃/分の昇温速度で300℃まで加熱後、60分保持した際のシリコーン化合物に帰属される発生気体の合計量の酸化チタンに対する重量%であり、例えば、シリコーン化合物に帰属される発生気体は、(CHSi、[(CHSiO]、[(CHSiO]等が例示されるが、測定時上記以外にシリコーン化合物に帰属される気体を検出した場合、それも合わせたものとする。また多価アルコール系化合物量は、熱重量−質量同時分析法及び熱重量−ガスクロ/質量同時分析法を用い、ヘリウム流下、室温から50℃/分の昇温速度で300℃まで加熱後、60分保持した際の多価アルコールに帰属される発生気体合計量の酸化チタンに対する重量%であり、例えば多価アルコールに帰属される発生気体は、Butanal、Methylpropenal、Methyldihydropyranが例示されるが、測定時上記以外に多価アルコール化合物に帰属される気体を検出した場合、それも合わせたものとする。
【0024】
本発明においては、分散性を一層向上させる点から、押出時、溶融ポリマーをフィルターに通すことが好ましく、特に多段フィルターであると良い。フィルターの濾過特性としては、30μm以上の不溶物や異物等を除去するものが好ましく、特に好ましくは10μm以上の不溶物や異物等を除去するものである。
【0025】
本発明においては、酸化チタン粒子以外に、平均粒子径0.01〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子、増白剤を含有させることができる。10μmを越える平均粒子径を有する粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなるので好ましくない。粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、カオリン、クレー等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができるが、特に耐摩耗性、取扱性向上、隠蔽性の点から凝集型無機粒子が0.01〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.105〜1重量%である。更に凝集型無機粒子の中でも、平均粒径0.5〜5μmの凝集シリカ粒子が好ましく、特に湿式凝集シリカが特に好ましく、その添加量は特に0.105〜0.5重量%が好ましい。これら凝集型無機粒子は、積層の場合、各層に添加するとより効果的である。また上記粒子は、二種以上を特性を損ねない範囲で併用してもよい。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムは、ラミネート性、成形加工性の点から、長手方向と巾方向の破断伸度の平均が80%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上、特に好ましくは120%以上である。白色度向上のためにチタン濃度増加すると、伸度低下を招く傾向にあり、80%未満の破断伸度では、ラミネート時の破れや成形加工の斑、製缶後のフィルムの剥離が生じるなどの問題を引き起こす原因となることがある。
【0027】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来公知の反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては、例えばリン化合物等を挙げることができる。ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが望ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコール成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウムβ−ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、特に限定されないが例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが挙げられる。チタン化合物としては、特に限定されないがテトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0028】
例えばポリエチレンテレフタレートを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコールをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において、減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0029】
ポリエステルに酸化チタンを含有させるには、例えばポリエステル合成時の何れかに酸化チタンを添加する方法や、ポリエステルに酸化チタンを添加し溶融混練する方法や、酸化チタンを多量に含有した高濃度マスターペレットを製造し、酸化チタンを含有しないポリエステルと混練し所定量の酸化チタンを含有させる方法等がある。本発明においてもポリエステルに酸化チタン粒子を添加させる方法としては、特に限定するものではないが、一旦45〜70重量%の高濃度酸化チタン含有マスターペレットを製造し、酸化チタン未添加のポリエステルからなる希釈用ペレットと適切な比で均一に混合し、押出機に供給する方法が、ポリエステル中での粒子の分散性を向上させる点から、好ましく用いることがことができる。
【0030】
本発明では、フィルムと鋼板の接着性を向上させる点から、鋼板側層を構成するポリエステルAのカルボキシル末端基量が、25〜60当量/トンであることが好ましく、特に好ましくは30〜55当量/トンである。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムの全厚みは、金属にラミネートした後の成形性、金属に対する被覆性、耐衝撃性の点で、3〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜35μmであり、特に好ましくは10〜30μmである。
【0032】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、所望のフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸フィルムを得る。該未延伸フィルムをフィルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする配向度のフィルムを得る。延伸方式としては、フィルムの品質の点で、テンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式や、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としては、それぞれの方向に1.2〜4.5倍、好ましくは1.5〜4.0倍である。逐次二軸延伸によりフィルムを得る場合、長手方向の延伸は多段延伸が好ましいが、特に限定されるものではない。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+100℃以下であれば、任意の温度とすることができるが、通常は70〜150℃が好ましい。更に延伸の後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120〜245℃の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
【0033】
また、フィルムにコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより、接着性を向上させることは、さらに特性を向上させる上で好ましい。
【0034】
また本発明のフィルム上には、各種コーティングを施してもよく、その塗布化合物、方法、厚みは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されない。
【0035】
本発明の容器は特に限定されないが、例えば金属板では、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とするものが好ましい。さらに、鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。特に金属クロム換算値で、クロムとして6.5〜150mg/mのクロム水和酸化物が好ましく、さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどを設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/mのメッキ量を有するものが好ましい。
【0036】
本発明の容器用成形外面用白色フィルムは、熱ラミネートもしくはフィルムに接着剤をコーティングすることにより金属板等に貼合わせた後、絞り成形やしごき成形によって製造される飲料缶、食缶などのツーピース金属缶の外面被覆用に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても、良好な金属接着性、成形性を有するため、好ましく使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお特性は、以下の方法により測定、評価した。
【0038】
(1)製膜性
フィルムの製膜性について、下記の基準で評価した。
○:フィルム破れの発生がほとんどなく、安定製膜が可能である。
×:フィルム破断が多数発生し、製膜安定性が低い。
【0039】
(2)加工性
フィルムの伸度を測定(引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度300mm/min、幅10mm、試料長100mmとして破断伸度を測定)し、長手方向と巾方向の平均伸度を下記の基準で評価した。
◎:150%以上
○:120%以上150%未満
△:80%以上120%未満
×:80%未満
(◎○△を合格とする)。
【0040】
(3)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し,遠心分離により酸化チタン粒子を除去した後、25℃において測定した。
【0041】
(4)融点
フィルムを真空中で40℃×60時間処理し、水分を十分取り除いた後、5mgサンプリングし、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC2型)により、10℃/分の昇温速度で測定し、主融解のピーク温度を融点とした。積層フィルムの各層の融点は、各層を片刃で削りとり、上記と同様の測定手法により融点を測定した。
【0042】
(5)酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数
実施例及び比較例で得られたフィルムをオルソクロロフェノール(OCP)に対して10重量%の割合で温度60℃、4時間溶解させる。これを濾過後、該溶液を遠心分離によりポリマーを除去、洗浄後、40℃、10時間真空乾燥し、得られた酸化チタン及び酸化チタン付着ポリエステル混合物を赤外分光測定し、結晶化指数を測定した。この時得られた酸化チタンに付着しているポリエステルの重量が、フィルム中のポリエステルの3重量%以上である場合は、上記溶解時間を延長して3重量%未満となるように新たに処理し直したものを使用する。
【0043】
赤外分光法測定:顕微赤外分光器により透過吸収スペクトルを測定し(装置:IRμs(SPECTRATECH社製)、積算回数:〜1024、分解能:4 cm−1)、1389cm−1付近のトランス体に帰属される吸収の強度を、1410cm−1付近のベンゼン環に帰属される吸収の強度で規格化し、吸光度比Abs (1389cm−1 / 1410cm−1) を求め、Abs×100を結晶化指数とした。
【0044】
(6)酸化チタン粒子周りのポリエステル組成
上記分離酸化チタン及び酸化チタン付着ポリエステル混合物をFT−IR測定、DSC測定、NMR、Naメチラート前処理による液体クロマト測定などにより、ポリエステル組成を決定した。
【0045】
(7)光学濃度
光学濃度計(Macbeth TR−927)にてフィルムの光学濃度を測定した。光学濃度は厚みにもよるが、フィルム単体(13μm基準)で0.4以上あることが好ましく、さらには0.45以上あると好ましく、より好ましくは0.5以上あることが隠蔽効率の点から好ましい。
【0046】
(8)成形性
260℃に加熱した板厚0.22mmのティンフリーフチール鋼板にラミネートし、水冷した。該ラミネート鋼板をしごき成形機、絞り成形機で成形(成形比(最大厚み/最小厚み)=3.2,成形可能温度領域で成形)し、缶を得た。この缶のラミネートフィルムを目視により下の基準で評価した。
○:微小クラックや破断などが認められない。
×:微小クラックや破断などが認められる。
(○:合格、×:不合格)。
【0047】
実施例1
ポリエステルとして表1に示す様に、ルチル型酸化チタン粒子(表面処理:アルミ化合物、シリコーン系化合物、平均粒子径:0.21μm)を60重量%含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートペレット(共重合量16.5モル%)と、酸化チタン粒子を含有しないイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートペレット(共重合量10.5モル%)とを各々160℃5時間真空乾燥後、重量比4.2:5.8の割合で混合し押出機に供給した。押出機から溶融押出しされたポリエステルを、多段フィルターで濾過した後、口金から吐出させ、静電印加しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度101℃にて長手方向に3.1倍多段延伸し、予熱温度95℃、延伸温度120℃で幅方向に3.2倍延伸した後、168℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、表3に示す厚さ13μmの二軸延伸白色ポリエステルフィルムを得た。フィルム特性は表3に示した通り、良好であった。
【0048】
実施例2
表1、2に示すポリエステル、酸化チタン、無機粒子により、実施例1と同等の条件にて表3に示すフィルムを得た。フィルム特性は表3に示す通り、良好であった。
【0049】
実施例3
表1、2に示すポリエステル、酸化チタン、無機粒子により、実施例1と同様の手順にて別々に乾燥、混合、溶融、多段フィルターにより濾過を行い、互いに隣接したダイからA層、B層のポリマーを共押出して積層、融着させ、静電印加しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを同時二軸法により、温度106℃で長手方向に3.1倍、横方向に3.15倍延伸し、170℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、表3に示す厚さ15μmの二軸延伸白色ポリエステルフィルムを得た。フィルム特性は表3に示す通り、優れたものであった。
【0050】
実施例4
表1、2に示すポリエステル、酸化チタン、無機粒子により、幅方向の延伸倍率を3.2倍として、実施例3と同様に表3に示す厚さ15μmの二軸延伸白色ポリエステルフィルムを得た。フィルム特性は表3に示す通り、良好であった。
【0051】
実施例5
表1、2に示すポリエステル、酸化チタン、無機粒子により、長手方向の延伸倍率を3.2倍として、実施例3と同様に表3に示す厚さ15μmの二軸延伸白色ポリエステルフィルムを得た。フィルム特性は表3に示す通り、良好であった。
【0052】
比較例1
表1、2に示すポリエステル、酸化チタン、無機粒子により、実施例1と同等の条件にて表3に示すフィルムを得た。フィルム特性は表3に示す通り、劣るものであった。
【0053】
比較例2
表1、2に示すポリエステル、酸化チタンにより、延伸倍率を長手方向に3.2倍、幅方向に3.3倍として、比較例1と同様にして表3に示すフィルムを得た。フィルム特性は表3に示す通り、かなり劣るものであった。
【0054】
なお、表中の略号は以下の通りである。
PET/I:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム中の酸化チタン平均濃度が10〜50重量%であって、酸化チタン粒子周りのポリエステルの結晶化指数が45以下であり、酸化チタン粒子周りのポリエステルが共重合したポリエステルであり、酸化チタン粒子周りのポリエステルのモル共重合量がバルクを構成するポリエステルのモル共重合量より高く、長手方向と巾方向の破断伸度の平均が80%以上であることを特徴とする白色ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルムの固有粘度が0.58〜0.7dl/gである請求項1に記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項3】
酸化チタン粒子周りのポリエステルが10〜50モル%の共重合ポリエステルである請求項1または2のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
酸化チタン粒子周りのポリエステルがイソフタル酸10〜50モル%の共重合ポリエステルである請求項1〜3のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項5】
少なくとも片面に酸化チタン濃度が1〜10重量%である層を積層してなる請求項1〜4のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項6】
金属板に貼合せた後に容器に成形する請求項1〜5のいずれかに記載の白色ポリエスエルフィルム。

【公開番号】特開2007−308720(P2007−308720A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207523(P2007−207523)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【分割の表示】特願平11−182956の分割
【原出願日】平成11年6月29日(1999.6.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】