説明

皮膚レプリカ作製用の組成物キット

【課題】
不具合を生じずに、極めて短時間に皮膚レプリカを作製するための組成物キットを提供する。
【解決手段】
皮膚上に塗布された水性組成物Aと、シート状皮膜組成物Bより構成される、レプリカ作製用の組成物キットであって、水性組成物A及び前記シート状皮膜組成物Bに、共通の水溶性高分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル等を含有し、水性組成物Aにシート状皮膜組成物Bを重ねて剥離して、極めて短時間に皮膚レプリカを作製する。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の表面の形状を写し取るレプリカを作製するための好適な組成物キットに関し、更に詳細には、その硬化速度及び皮膚立体形状の転写において極めて優れた皮膚レプリカ作製用の組成物キットに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚機能を非侵襲的に計測する手段として、高分子を皮膚の形状に即して変形硬化させて形状を転写する、所謂「レプリカ」を用いて観察を行うことは、非常に有用である。これを利用した種々の皮膚状態の鑑別法や、化粧料の選択法等が考案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。この「レプリカ」の基本技術は比較的古くから存するが、どの様に忠実に皮膚の立体形状を転写するかが技術的課題であり、当初のプラスチック板の溶剤による一部融解、再硬化を利用した方法から、粘ちょう性の被膜形成組成物を硬化させる方法に転じたことで大きな飛躍を見た。この様な方法の開発によって、手技が極めて容易になり、素人が手軽にレプリカの作製ができるようになった為である。現在では、販売現場に於けるカウンセリングツールにも使用されるようになっている。この様な状況の中で、かかるレプリカ剤において、重要な課題は、速やかにカウンセリングなどに生かせるように、作製に要する時間、言い換えれば固化・硬化時間(乾燥時間)を短縮化することである。その目的から、ポリビニルアルコールを被膜形成剤として用い、粉体を含有させることにより膜強度を補う技術(例えば、特許文献4、特許文献5参照)、ポリビニルアルコールに、部分的にアセチル化されても良いポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンとを含有して、固化・硬化時間をより短縮する技術(例えば、特許文献10参照)も開示されているが、販売現場に於けるカウンセリングツール等に使用するにはさらなる固化・硬化時間の短縮が望まれていた。
【0003】
一方、エポキシ樹脂を含む第一剤と有機アミンを含む第二剤を用時に混合し反応させて用いる方法(例えば、特許文献6参照)、アクリル酸エチル・メタクリル酸エチルコポリマーを被膜成分に使用する方法(例えば、特許文献7参照)、硬化性のシリコーンを用いる方法(例えば、特許文献8参照)、アルギン酸の塩を用いる方法(例えば、特許文献9参照)等の硬化時間を短縮する技術も開示されている。しかしこの様な方法においては、得られたレプリカ標本において多くの不具合箇所を有するようになるのが常であった。この原因の一つには、硬化が早すぎて形状を転写する前に硬化してしまうことが存するためであり、もう一つには、硬化時に急激な収縮などの現象が起こり、レプリカ用の組成物が皮膚上に残存してしまうことが存するためである。即ち、かかる不具合を生じずに、速やかに固化・硬化するレプリカ作製用の組成物の開発が望まれていた。
【0004】
他方、経口投与剤や粘着添付剤に於いては、服用コンプライアンスの低下防止を目的とした多層フィルム状製剤(例えば、特許文献11参照)や経皮吸収を目的とした粘着性薬効成分貼付剤(例えば、特許文献12参照)等が開示されている。このようなシート状皮膜組成物を用い、皮膚上に塗布された被膜形成剤を含む水性組成物に重ね合わせることによって、固化・硬化時間の驚愕すべき短縮を図り、皮膚立体形状が明瞭に転写され、皮膚に残存物がない優れた皮膚レプリカを得る技術を得た。かような皮膚に塗布された水性組成物に、シート状皮膜組成物を重ね合わせて、皮膚レプリカ用の組成物キットは全く知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−165777号公報
【特許文献2】特開2001−170028号公報
【特許文献3】特開2000−315257号公報
【特許文献4】特開平01−250223号公報
【特許文献5】特開平04−022340号公報
【特許文献6】特開2002−355235号公報
【特許文献7】特開平10−314146号公報
【特許文献8】特開平11−169453号公報
【特許文献9】特開2004−173801号公報
【特許文献10】特開2005−164517号公報
【特許文献11】再表2002/087622号公報
【特許文献12】再表2001/505211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、不具合を生じずに、極めて短時間に皮膚レプリカを作製するための組成物キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況に鑑みて、本発明者らは、皮膚上に塗布された水性組成物Aと、シート状皮膜組成物Bより構成されるレプリカ作製用の組成物キットであって、水性組成物Aにシート状皮膜組成物Bを重ねて剥離して、極めて短時間に皮膚レプリカを作製できることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す技術に関する。
(1)1)皮膚上に塗布された水性組成物Aと、2)シート状皮膜組成物Bより構成されるレプリカ作製用の組成物キットであって、水性組成物Aにシート状皮膜組成物Bを重ねて剥離して皮膚のレプリカを作製することを特徴とする、皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
(2)前記水性組成物A及び前記シート状皮膜組成物Bに、共通の水溶性高分子を含有することを特徴とする、(1)に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
(3)前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、又は、部分的にアセチル化されたポリビニルアルコールから選ばれる1種又は2種以上の組合せであるであることを特徴とする、(2)に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
(4)前記シート状皮膜組成物Bにアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有することを特徴とする、(2)又は(3)に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
(5)前記シート状皮膜組成物Bに、さらにアルギン酸及び/又はその水可溶性塩を含有することを特徴とする、(2)〜(4)に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不具合を生じずに、極めて短時間に皮膚のレプリカ作製用の組成物キットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<皮膚上に塗布された水性組成物Aとシート状皮膜組成物Bより構成されるレプリカ作製用の組成物キット>
本願発明は、前記皮膚上に塗布された水性組成物Aは皮膚上に塗布された後に、前記シート状皮膜組成物Bをその上に重ね合わせるように塗布し、固化・硬化後、重ね合わされて剥離され、極めて短時間に皮膚のレプリカを作製しうることを特徴とする、皮膚レプリカ作製用の組成物キットである。従来、前述したような、2液混合反応型、硬化性シリコーンタイプ及びアルギン酸塩タイプ等を除いた、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子によって被膜を形成する水性組成物タイプのレプリカの固化・硬化時間は、塗布する部位の皮膚温や採取するレプリカの厚さにより異なるが、10〜30分程度の固化・硬化時間を要する。しかしながら、本願発明は、水性組成物Aにシート状皮膜組成物Bを重ね合わせて塗布した後、一体化して剥離する。かような方法においては、水性組成物A中の水分は、急激にシート状皮膜組成物Bへの層間移動を起こし、水性組成物A中の水分は急激に減少し、固化・硬化時間の少なくとも半分以下という驚愕すべき時間短縮を可能にし、極めて短時間に精度の高いレプリカ標本を得るという効果を有する。
【0010】
<水性組成物A及びシート状皮膜組成物Bに共通の水溶性高分子>
前記水性組成物A及び前記シート状皮膜組成物Bには、必須成分として共通の水溶性高分子を各々含有し、該水溶性高分子は被膜形成能を持つことが好ましい。かような水溶性合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン系(可溶性デンプン、メチルデンプン等)、アルギン酸プロピレングリコール、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガンド、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、プルラン、デンプン(トウモロコシデンプン等)等が例示できる。かような水溶性高分子の中でも、特に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、又は、部分的にアセチル化されたポリビニルアルコールから選ばれる1種又は2種以上の組合せであるであることを好ましい。これは水性組成物Aとシート状皮膜組成物Bの各々に含有される該水溶性高分子間の相互作用により、より一体化して剥離しやすくなる為である。
【0011】
前記ポリビニルアルコール至はその一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコールは化粧料の汎用原料のものを使用することができる。この内、特に好ましいものは一部の水酸基がアセチル化したポリビニルアルコールであり、該一部の水酸基がアセチル化したポリビニルアルコールとしては、全水酸基の5〜20%がアセチル化されているものが好ましい。この様なポリビニルアルコール乃至はその一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコールは、唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもできる。かかるポリビニルアルコール乃至はその一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコール等の水性組成物A及びシート状皮膜組成物Bに共通の水溶性高分子の好ましい含有量は、総量で、各組成物全量に対して、1〜20質量%であり、更に好ましくは、3〜15質量%である。この様な水酸基の一部がアセチル化されたポリビニルアルコールとしては、既に市販されているものが存し、それを購入して利用することができる。かかる市販品としては、例えば、日本合成株式会社製の「ゴーセノールEG−30」(登録商標)が好ましく例示できる。また、前記ポリビニルピロリドンとしては、化粧料などで使用されているものであれば、特段の限定無く使用することができる。ポリビニルピロリドンと前述のポリビニルアルコール至はその一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコールと組み合わせて使用することで、より固化・硬化時間の短縮を得られることがあり、より好ましい。この様なポリビニルピロリドンとしては、既に市販のものが存し、かかる市販品を購入して利用することができる。好ましい市販品としては、例えば、BASF社製の「ルビスコールK−90」などが例示できる。
【0012】
<シート状皮膜組成物Bに含有されるアルキル変性カルボキシビニルポリマー>
前記アルキル変性カルボキシビニルポリマー は、特に限定されないが、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などが例示できる。かかる市販品としては、例えば、日光ケミカルズ株式会社製のカーボポール1342、カーボポールETD2020、グッドリッチ社製のペミュレンTR−1、ペミュレンTR−2社製、等を利用できる。これらは必要に応じて一種、又は二種以上を組み合わせて用いればよい。かようなアルキル変性カルボキシビニルポリマーの好ましい含有量は、総量で、組成物全量に対して、0.5〜20質量%である。これが多すぎても少なすぎても、被膜シートの均一性が損なわれやすい為である。
【0013】
<シート状皮膜組成物Bに含有されるアルギン酸及び/又はその水可溶性塩>
前記アルギン酸の水可溶性塩としては、水に溶けて液状を呈するものであれば、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が例示できるが、水溶性及び安定性の面でナトリウム塩が好ましい。かかるアルギン酸及び/又はその水可溶性塩は、表面のなめらかで均一な皮膜を形成する働きを有する。かような作用を発揮するためには、アルギン酸及び/又はその水可溶性塩の好ましい含有量は、総量で、組成物全量に対して、0.1〜2質量%含有することが好ましい。これが多すぎても少なすぎても、表面のなめらかさや均一性が損なわれやすい為である。
【0014】
<水性組成物A及びシート状皮膜組成物Bにおけるその他の成分>
水性組成物A及びシート状皮膜組成物Bにおける、上記以外の成分として、通常化粧料などで使用される任意の成分を含有することができる。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、等が例示できる。
【0015】
また、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキシレングリコール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアーガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、等が例示できる。
【0016】
さらに、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。これらの内、特に好ましいものとしては、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類等の粉体類が好ましく例示できる。
【0017】
<シート状皮膜組成物Bの作製方法>
前記シート状皮膜組成物Bは、一般的に実施されている方法に従って予め作製しておく。かような作製方法として、例えば、スラリーキャスト法やドクターブレード法などが例示できる。スラリーキャスト法では、加熱混合した処方成分をアクリルシート等の枠型に流し込み、余剰分を除去、乾燥させた後に成形して作製する。ドクターブレード法では、加熱処方成分を加熱混合した後、アクリル板などの平板に流し込み、ブレードを用いて被膜を所定の厚さにして乾燥して作製する。かようにして作製された被膜の厚さは、好ましくは10〜500μm、更に好ましくは50〜200μmである。これは薄すぎると水性組成物Aよりの水分移動を十分に行えないため固化・硬化時間の短縮を損ない、厚すぎても操作性やコストでの難が生じる為である。
【0018】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、これにより本発明の範囲が限定を受けないことは言うまでもない。
【実施例】
【0019】
<実施例1、比較例1,2>
以下に示す処方・方法に従って、本発明の皮膚のレプリカ作製用の水性組成物A及びシート状被膜組成物Bを作製し、女性被験者の右頬部に水性組成物Aを塗布した後、続けてシート状皮膜組成物Bを水性組成物Aの上から重ね合わせ、固化・硬化が確認できた約4分後に剥離して皮膚のレプリカ(実施例1)を作製した。同時に従来の技術として、水性組成物Aを同被験者左頬部に同様の厚さに塗布し、固化・硬化が確認できた約12分後に剥離して皮膚のレプリカ(比較例1)を作製した。この比較例において、固化・硬化が十分に確認できない10分後に剥離した場合での皮膚のレプリカ(比較例2)も作製した。
【0020】
図1に、実施例1のレプリカ画像を示す。従来の約1/3の短時間で皮膚レプリカを採取でき、且つ、その拡大画像も皮膚レプリカ(比較例1)と同等以上に鮮明な微細構造を示し良好であった(表1参照)。また、図2に、比較例2のレプリカ画像を示す。実施例1よりもかなりの時間を経過しているが、固化・硬化時間が十分でない場合は、かようにベタベタして微細構造が不明確で、全く使用に耐えられないことが分かる。
【0021】
(本発明の水性組成物A)
ポリビニルアルコール 5.0 質量%
1,3−ブタンジオール 2.0 質量%
エタノール 5.0 質量%
コハク酸ジエトキシエチル 2.0 質量%
流動パラフィン 6.0 質量%
フェノキシエタノール 0.5 質量%
ポリビニルピロリドン 7.0 質量%
ポリ酢酸ビニル 0.7 質量%
カオリン 2 0.0 質量%
二酸化チタン 5.0 質量%
POE(20)ソルビタンモノステアレート 0.5 質量%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.2 質量%
ステアリン酸 0.1 質量%
水 4 6 .0 質量%
(製法)
処方に従って、本発明の皮膚のレプリカ作製用の水性組成物A を作製した。即ち処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却、減圧下脱泡し、本発明の皮膚のレプリカ作製用の水性組成物Aを得た。
【0022】
(本発明のシート状被膜組成物B)
ポリビニルアルコール 5.0 質量%
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
エタノール 2.5 質量%
流動パラフィン 0.5 質量%
フェノキシエタノール 0.5 質量%
ポリビニルピロリドン 0.5 質量%
ポリ酢酸ビニル 0.5 質量%
カオリン 3.0 質量%
二酸化チタン 3.0 質量%
POE(20)ソルビタンモノステアレート 0.1 質量%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.1 質量%
ステアリン酸 0.1 質量%
アルキル変性カルボキシビニルポリマー※1) 2.0 質量%
アルギン酸ナトリウム 0.2 質量%
水 77.0 質量%
※1)ペミュレンTR−1(登録商標)
(製法)
処方に従って、本発明の皮膚のレプリカ作成用のシート状皮膜組成物Bを作成した。即ち、処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却し、減圧下脱泡した後、得られた組成物をアクリル板などの平板に適量置き、ドクターブレードを用いて均一な皮膜を作成した後、乾燥させてシート状皮膜組成物Bを得た。
【0023】
<実施例2〜6>
実施例1における、シート状被膜組成物Bのポリビニルアルコールを、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、可溶性デンプン、グアーガムに置き換えたシート状被膜組成物を作製しておき、実施例1と同様に皮膚レプリカ(実施例2〜6)を作製した。皮膚レプリカの評価は、専門の評価者3名にて、以下の評価項目を基準に従って実施した。結果を表1に示す。
固化硬化時間(5=5分未満、4=5〜8分、3=8〜11分、2=11〜15分、1=15分以上)
剥がれ易さ(5=非常に容易、4=容易、3=使用できるレベル、2=剥がれにくい、1=肌にレプリカが残り使用不可)
微細構造(5=非常に明瞭、4=明瞭、3=使用上できるレベル、2=部分的に不明瞭、1=不明瞭・使用不可)
被膜強度・均一性(5=非常に強く均一、4=強く均一、3=使用上問題なし、2=部分的に弱く不均一な部分あり、1=使用不可)
【0024】
表1より、本願発明である、水性組成物Aにシート状皮膜組成物Bを重ねて剥離して皮膚のレプリカを作製したものが極めて優れていることが分かる。また、水性組成物Aとシート状皮膜組成物Bに、共通の水溶性高分子を各々含有することがより好ましいことが分かる。
【0025】
【表1】

【0026】
<実施例7,8>
実施例1におけるシート状被膜組成物Bにおける、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを水に置換したシート状被膜組成物Bと、アルギン酸ナトリウムを水に置換したシート状被膜組成物Bを同様に作製し、実施例1〜6と同様に、皮膚レプリカ(実施例7と8)の作製及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0027】
表2より、シート状皮膜組成物Bに、アルキル変性カルボキシビニルポリマーや、アルギン酸及び/又はその水可溶性塩を含有することがより好ましいことが分かる。
【0028】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によって、不具合を生じずに、誰でも極めて短時間に皮膚レプリカを作製することができる。販売現場においては、これを用いて肌分析などを行って、肌のカウンセリング、手入れや化粧料の選択等、適切で有用な情報をお客様に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1の皮膚レプリカ画像を示す図である(図面代用写真)。
【図2】比較例2の皮膚レプリカ画像を示す図である(図面代用写真)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)皮膚上に塗布された水性組成物Aと、2)シート状皮膜組成物Bより構成されるレプリカ作製用の組成物キットであって、水性組成物Aにシート状皮膜組成物Bを重ねて剥離して皮膚のレプリカを作製することを特徴とする、皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
【請求項2】
前記水性組成物A及び前記シート状皮膜組成物Bに、共通の水溶性高分子を含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、又は、部分的にアセチル化されたポリビニルアルコールから選ばれる1種又は2種以上の組合せであるであることを特徴とする、請求項2に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
【請求項4】
前記シート状皮膜組成物Bにアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。
【請求項5】
前記シート状皮膜組成物Bに、さらにアルギン酸及び/又はその水可溶性塩を含有することを特徴とする、請求項2〜4に記載の皮膚レプリカ作製用の組成物キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−219533(P2009−219533A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64191(P2008−64191)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】