説明

皮膚包帯材に関する改良

プロトン源を含む第1の構成要素、亜硝酸塩を含む第2の構成要素を含み、第1および第2の構成要素が、一緒にされて皮膚部位に施用された際に、亜硝酸塩が反応して酸化窒素を発生し、皮膚と接する包帯材のpHを酸性値からより中性の値に増大させるように、非チオール還元剤を含む、皮膚包帯材が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(治療的または美容目的で)皮膚の処置のためにヒトまたは動物の体の部分に適用される皮膚包帯材に関し、特に(しかし排他的でなく)損傷した皮膚、特に皮膚病変、すなわち傷害または疾患に起因するかどうかに関わらず、皮膚潰瘍、火傷、切創、刺し傷、裂傷、鈍的外傷、座瘡病変、吹出物などをはじめとする、皮膚表面のあらゆる断絶を処置するための創傷包帯に関する。「皮膚包帯材」という用語は、薬剤の経皮送達との関わりで使用するためのパッチ、プラスター、絆創膏、およびガーゼなどの包帯材を包含する。本用語はまた、非晶質のまたは液体形態の材料を含む。本用語は、内部および外部組織をはじめとする身体表面一般、特に頭皮をはじめとする皮膚に適用される包帯材を包含する。本発明は酸化窒素(NO)の有益な特性に基づく。
【背景技術】
【0002】
通常の状態では、酸化窒素(NO)は短寿命の不安定なガス状物質である。その不安定性は窒素の不対電子に起因する。不対電子がある不安定な物質として、酸化窒素はフリーラジカルと表現できる。しかしその寿命がほぼミリ秒程度である典型的なフリーラジカル(例えばヒドロキシルラジカルまたは超酸化物)と比較して、酸化窒素は比較的安定している。典型的にその生成の数秒以内に、それはより安定した化学種に転化される。したがって例えばガス状酸化窒素が空気に接触すると、それは次のように酸素と迅速に反応して二酸化窒素を発生させる。
【0003】
【化1】

【0004】
条件によって、例えば純粋なガス状態では、NOは大量の損失なしに非常に長期間保存できる。NOは非常に疎水性が高い化合物であり、したがってその水への溶解度は限定的である。通常の状態で達成可能な水への最大溶解度はおよそ1.7mMであり、溶解度は酸素と同様である。溶解酸素による溶解酸化窒素の酸化は、水溶液中で起きる。それでもなお溶解したNOとOの速度定数および低濃度からして、この反応は酸素濃度が非常に高い気体状態におけるよりも迅速さにかなり劣る。
【0005】
酸化窒素は亜硝酸の化学的還元によって生成できる。多数の異なる還元剤が亜硝酸を還元するのに使用でき、生理学的に許容可能なこのような還元剤の例としては、ヨウ化物アニオン、アスコルビン酸、ブチル化キノン、トコフェロールなどが挙げられる。亜硝酸はpKが3.4の弱酸である。これはpH3.4で、亜硝酸が亜硝酸(HNO)と亜硝酸塩(NO)の等モル混合物として存在することを意味する。より高いpHでは平衡状態は亜硝酸アニオンの方にシフトし、より低いpHでは平衡状態は亜硝酸の方にシフトする。亜硝酸のみが酸化窒素を化学的に還元できるので、亜硝酸塩を酸化窒素に転化する効率はpHの低下と共に増大する。したがってpH6ではこのような転化の速度は微々たるものであるが、それはpH5では緩慢に進行し、pH<4、特にpH<3では非常に迅速に進行する。
【0006】
酸性環境において亜硝酸塩と反応する還元剤の特別な部類は、チオールである。酸性環境中でのチオールと亜硝酸塩との反応は、その他の還元剤の場合のように、亜硝酸還元および酸化窒素の即時発生をもたらさない。その代わりにチオールは、酸性条件下で亜硝酸塩から発生される別の化学種である、ニトロソニウムカチオン(NO)によってニトロシル化される。
【0007】
酸化窒素は生体組織中で多数の効果を有する。これらの効果の機序は、ほとんど常に酸化窒素と、鍵酵素およびその他のタンパク質の金属構成要素(典型的に鉄)、またはチオール基のどちらかとの相互作用に基づく。特定の酵素次第で、このような相互作用はタンパク質の活性化または阻害のどちらかをもたらすことができる。酵素活性化に基づく効果の例は、血管拡張効果である。酸化窒素はグアニル酸環化酵素のヘム鉄に結合し、それは立体構造変化をもたらして酵素の触媒部位が露出する。これはGTPのcGMPへの触媒転化をもたらす。この転化は、タンパク質のホスホリル化と筋肉弛緩(血管拡張)をもたらす、反応カスケード全体を惹起する。酸化窒素による酵素または成長因子の活性化に基づくその他の効果としては、細胞分裂(増殖)と細胞成熟の刺激、細胞分化と細胞受容体形成の刺激、血管新生、創傷中の線維芽細胞形成、そしてそれによるコラーゲン形成の増強などが挙げられる。
【0008】
酸化窒素の局所送達は、創傷治癒、皮膚または爪感染症の処置、性的機能不全などをはじめとする、様々な治療的または美容用途において、非常に有用な特徴となることができる。
【0009】
米国特許第6,103,275号明細書は酸化窒素を治療的に適用する方法を開示し、この方法は、身体部位において亜硝酸塩、還元剤、およびpKが1〜4の酸を一緒にするステップを含む。
【0010】
この方法を使用すべきpH範囲は規定されていない。しかし緩衝液構成要素が酸と称されるという事実は、これらの化合物が主にプロトン化形態で存在することを示唆するかもしれず、したがって組成物のpHは実質的に4よりも低くあるべきである。pKが1〜4である酸の存在は、必要なpHにおける調合物の良好な緩衝能力を確実にする。このような酸の組み込みは、亜硝酸塩から酸化窒素への転化の連続的効率が維持されるようなレベルにpHが維持されることを確実にするのに便利な方法ではあるものの、系にこれらの酸を導入することには不都合がある。pH1〜4に強力に緩衝化されるあらゆる局所適用に対する皮膚の長期曝露は潜在的に有害であり、回避されるべきである。
【0011】
その他の酸化窒素放出系についても開示されている。例えば米国特許第6,709,681号明細書は微生物感染症を処置する方法を開示し、この方法は酸性化剤と亜硝酸塩源とを混合するステップを含む。原理上はこの方法は、米国特許第6,103,275号明細書で開示されるもの、すなわち亜硝酸塩源とpKが1〜4の酸とを混合する方法と、非常に良く似ている。重要なことには、米国特許第6,709,681号明細書で開示される調合物中の強力還元剤の不在は、調合物中の十分な還元力を確実にしない。したがって酸化窒素の発生は、次の機序に従った二酸化窒素の直接的発生を伴う。
【0012】
【化2】

【0013】
二酸化窒素は良好な抗微生物性を発揮するかもしれないが、血管拡張性を有さず、また細胞増殖を活性化することもできない。したがって還元剤を組み込むことで、二酸化窒素の直接的発生を停止させることが一般に望ましい。
【0014】
米国特許出願公開第2003012816号明細書は、酸化窒素または酸化窒素調節化合物がマクロマーから放出され、マクロマーが水溶性領域、細胞接着性リガンド、および重合性領域からなる群から選択される1つ以上の領域をさらに含む、少なくとも1つの酸化窒素保有領域または酸化窒素調節化合物を有するマクロマーを含む、生体適合性の重合可能なマクロマー組成物を開示する。開示されるマクロマーには、アクリロイル−PEG−Cys−NOマクロマー、アクリロイル−PEG−Lys5−NOマクロマー、PEG−DETA−NOマクロマー、PVA−NH2−NOマクロマー、PVA−Cys−NOマクロマー、およびPVA−NO−bFGFマクロマーが含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、プロトン源を含む第1の構成要素、亜硝酸塩を含む第2の構成要素を含み、第1および第2の構成要素が、一緒にされて皮膚部位に適用された際に、亜硝酸塩が反応して酸化窒素を発生し、皮膚と接する包帯材のpHを酸性値からより中性の値に増大させるように、非チオール還元剤を含む、皮膚包帯材に関する。
【0016】
亜硝酸塩が3.4のpK(25℃)を有する化合物であることは、理解されるであろう。したがって亜硝酸塩は系内で緩衝液の役割を果たすことができ、pHを約3〜4の範囲内に維持できる。
【0017】
2つの構成要素を一緒にして皮膚部位に適用した後、亜硝酸塩は酸性環境に入って酸化窒素発生が開始する。重要なことには、酸性pHは亜硝酸塩それ自体によって維持される。酸化窒素の発生が進行して亜硝酸塩濃度が低下するにつれて、系内の緩衝能力は低下する。同時にプロトンは、亜硝酸塩の酸化窒素への転化中に消費される。したがって亜硝酸塩転化が完了に向けて進行するにつれて、活性化系のpHは中性値近くに増大する。したがって系はpHの自己調節を示し、ひとたび酸化窒素の十分な蓄積が達成されたら、局所適用のより穏やかなpHを確実にする。
【0018】
このような自己調節は、系の2つの構成要素中の活性物質の濃度次第で、比較的迅速に、またはよりゆっくりと起きることができる。重要なことには、このような自己調節の速度は、亜硝酸塩の酸化窒素への転化速度に比例する。
【0019】
したがって典型的に皮膚上で使用される包帯材は酸化窒素供与体として機能し、処置される皮膚上またはその近傍に酸化窒素が放出される。これは、酸性で強力に緩衝化される包帯材適用に身体部位(皮膚、創傷など)が長期曝露するのを回避しながら、達成できる。
【0020】
迅速な酸化窒素のバーストが必要ならば、活性化直後の組成物のpHは恐らく3.5前後と比較的低いが、低pHのために亜硝酸塩は酸化窒素に迅速に転化されて、迅速なpH増大がもたらされる。亜硝酸塩のより漸進的な転化が必要ならば、活性化直後の組成物のpHは過度に酸性である必要はなく(恐らく4〜4.5の間)、より中性のpH値に向けたシフトはより漸進的である。
【0021】
例えば局在的な血管拡張および結果的な血流量増大を達成するために、酸化窒素の迅速な発生が必要とされる場合、活性化直後の調合物のpHは、亜硝酸塩が酸化窒素に効率的に転化するようでなくてはならない。この反応が迅速に進行するにつれて、pHは中性値近くに上昇する。このようなpHの増大は亜硝酸塩の酸化窒素への転化を減速または停止させるが、ほとんどの亜硝酸塩は既に転化されているので、このような反応はもはや必要でない。したがって包帯材は自己調節機能を発揮する。
【0022】
したがって亜硝酸塩が反応して酸化窒素を形成するにつれて、包帯材のpHは増大する。したがって包帯材のpHは、亜硝酸が反応するにつれて5未満から5超に増大してもよく、好ましくはそれは4未満から6超に増大する。
【0023】
亜硝酸塩が1〜4のpKを有する唯一の構成要素であることもまた望ましい。したがって好ましくは包帯材は、1〜4のpKを有するいかなる追加的材料も含まない。
【0024】
典型的に第1の構成要素は酸性であり、好ましくは2〜5、より好ましくは3〜4の範囲のpHを有する。第2の構成要素は5〜12、好ましくは6〜11、より好ましくは7〜10の範囲のpHを有してもよい。例えば7〜12の範囲のpKを有する少量の緩衝液が、包帯材を基準にして例えば0.01%〜0.2%の濃度で任意に第2の構成要素中に存在してpHを維持する。
【0025】
必要とされる酸化窒素生成速度および必要とされるpHプロフィールを達成するのに要する亜硝酸塩、還元剤、およびプロトン源緩衝液の適切な量は、実験によって容易に判定できる。
【0026】
プロトン源は、比較的低濃度の強酸に由来することができ、第1の構成要素にpH2.0〜3.5を提供する。例えば塩酸を第1の構成要素に組み込むことができ、0.5mM〜10mMの濃度で使用できる。
【0027】
プロトン源として強酸を使用することの1つの不都合は、その中にこのような強酸が含有される構成要素の比較的低いpHである(例えば10mM塩酸が使用される場合はpHが約2)。活性化に続いて組成物のpHは中性値に増大するが、亜硝酸塩の緩衝能力のために、活性化前の構成要素の1つのpHが非常に低いことは、用途によってはなおも潜在的問題になり得る。
【0028】
したがって、好ましくはプロトン源は、pKが4.5〜7.0、好ましくは5〜6、最も好ましくは約5.5の緩衝液を含む。このような緩衝液が、包帯材の第1の構成要素に導入される。上で考察したように第1の構成要素のpHは、好ましくは3〜4の値を有する。このpHでは非常に高比率の緩衝液がプロトン化形態で存在し、したがって有用なプロトン源(またはレザバー)の役割を果たすことができる。
【0029】
この緩衝液の緩衝能力は、約3〜4のpHでは最小であるので、活性化に続いて、組成物中では亜硝酸塩が優勢な緩衝液である。プロトンの消費を伴う、亜硝酸塩の酸化窒素への転化が進行するにつれて、亜硝酸塩の緩衝能力は減少しpHが増大する。プロトン源緩衝液(例えばpK約5.5)の緩衝への寄与は初期段階では最小であるが、それはpHが亜硝酸塩の酸化窒素への転化がかなり非効率的になる4.5を超えて、あまりにも激しく上昇するのを防止する。pHはほとんどの亜硝酸塩が転化された場合にのみこれらのレベルに達し、その時点では酸化窒素の蓄積が達成されるので、低いpHはもはや必要でない。
【0030】
したがってプロトン交換の観点から亜硝酸塩(pK3.4)とプロトン源緩衝液(pK約5.5)の間に協調があり、穏やかなpH環境を維持しながら亜硝酸塩の効率的な転化を確実にする。
【0031】
プロトン源緩衝液は、添加剤の形態で調合物に添加できる。好都合には、それはポリマー支持体の一部として組み込むことができる。好ましいポリマー支持体は、pK5〜6の解離基を含有するポリアクリル酸ベースのポリマーを含む。
【0032】
さらなる可能性として、活性化に際して包帯材中で、例えばオキシダーゼ酵素/基質系からプロトンを発生させてもよい。オキシダーゼ酵素は適切な基質と酸素との反応を触媒して過酸化水素および酸を生成し、それは解離してプロトンを生じる。好ましいオキシダーゼ/基質系は、グルコースオキシダーゼおよびグルコースである。グルコースオキシダーゼは酸素によるグルコースの酸化を触媒して、過酸化水素およびグルコン酸を生成する。グルコン酸は解離してグルコン酸アニオンおよびプロトンを生じ、したがってプロトン源の役割を果たすことができる。
【0033】
【化3】

【0034】
酵素および対応する基質は、包帯材の活性化前に接触しないように、好都合には(上で論じた第1および第2の構成要素に相当するまたは異なる)別々の包帯材構成要素中に組み込まれる。しかし包帯材の活性化に際して、酵素および基質は連絡して接触しプロトンの発生がもたらされる。
【0035】
pKが約1〜4の酸ではない非チオール還元剤が、好ましくは本発明の還元剤として使用される。還元剤は、第1の構成要素、第2の構成要素、および/または第3の構成要素中に存在してもよい。適切な還元剤の例としては、ヨウ化物アニオン、ブチル化ヒドロキノン、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびβ−カロテンが挙げられる。
【0036】
還元剤は、包帯材を基準にして典型的に0.1%〜5%(w/w)の濃度で存在する。
各包帯材構成要素は、好都合にはモノマーマトリックスの形態またはポリマーマトリックスの形態のどちらかである、キャリアまたは支持体を含む。各包帯材構成要素は、液体、非晶質ゲルの形態、または例えばシート、スラブまたは乾燥フィルムの形態などの層の形態であることができる。
【0037】
上で考察したように特に都合よい支持体は、5〜6の間のpKを有する解離基を含有するポリアクリル酸ベースのポリマーである。
【0038】
キャリアまたは支持体は、好都合には水和ヒドロゲルを含む。水和ヒドロゲルは、水和形態にある1つ以上の水ベースのまたは水性のゲルを意味する。水和ヒドロゲルはまた、創傷部位から滲出する水およびその他の物質を吸収する役割を果たすことができ、創傷部位からこのような物質を除去することで、包帯材が有益で有用な機能を果たせるようにする。水和ヒドロゲルはまた、使用時に機能して創傷部位を湿潤に保ち治癒を助ける、水分源も提供する。
【0039】
適切な水和ヒドロゲルは、国際公開第03/090800号パンフレットで開示されている。水和ヒドロゲルは、好都合には親水性ポリマー材料を含む。適切な親水性ポリマー材料としては、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(poly−AMPS)および/またはそれらの塩類(例えば国際公開第01/96422号パンフレットで述べられているような)と、例えば多糖類ガムのような多糖類、特にキサンタンガム(例えばKeltrolの商標の下に入手できる)と、様々な糖類と、ポリカルボン酸(例えばISP EuropeからGantrez AN−169 BFの商標の下に入手できる)と、ポリ(メチルビニルエーテル−co−マレイン酸無水物)(例えばGantrez AN 139の商標の下に入手でき20,000〜40,000の範囲の分子量を有する)と、ポリビニルピロリドン(例えばPVP K−30およびPVP K−90として知られている市販等級の形態の)と、ポリエチレンオキシド(例えばPolyox WSR−301の商標の下に入手できる)と、ポリビニルアルコール(例えばElvanolの商標の下に入手できる)と、架橋ポリアクリルポリマー(例えばCarbopol EZ−1の商標の下に入手できる)と、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばKlucel EEFの商標の下に入手できる)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばCellulose Gum 7LFの商標の下に入手できる)およびヒドロキシエチルセルロース(例えばNatrosol 250 LRの商標の下に入手できる)をはじめとするセルロースおよび変性セルロースをはじめとする、例えばFirst Water Ltd.から独自仕様のヒドロゲルの形態で提供されるようなポリアクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。
【0040】
親水性ポリマー材料の混合物をゲル中で使用してもよい。
親水性ポリマー材料の水和ヒドロゲル中では、親水性ポリマー材料は、ゲル総重量を基準として、望ましくは少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%、なおもより好ましくは少なくとも10%、または少なくとも20%、望ましくは少なくとも25%、そしてなおもより望ましくは少なくとも30重量%の濃度で存在する。ゲル総重量を基準として約40重量%までのさらに多くの量を使用してもよい。
【0041】
ゲル総重量の約30重量%の量のpoly−AMPSおよび/またはそれらの塩類の水和ヒドロゲルの使用によって、良好な結果が得られている。
【0042】
比較的高濃度(少なくとも2重量%)の親水性ポリマー材料を含むゲルを使用することにより、ゲルは包帯材の使用において特に効果的に機能でき、例えば創傷との接触中に血清浸出液からの水を吸収する。ゲルは水性系であるので、包帯材の使用は、創傷の望ましくない全体的乾燥を誘発する効果を有さない。これは包帯材の使用中に、皮膚周囲の閉鎖環境内で水蒸気圧が保たれるためである。したがってゲルは、例えば創傷浸出液である水分除去のための吸収材として機能し、それはまた有益な過剰な水分の基礎濃度も提供する。
【0043】
高濃度ゲルをはじめとする水和ヒドロゲルの水取り込み能力は、相当量の浸出液を除去することによって、包帯材が創傷治癒を助けることができるようにし、その過程で膨張する。注意深く調合された即座に水和するゲルを使用することで、助けにならない乾燥状態に創傷が至るのを防止する。即座の水和はまた、包帯材と創傷の間の水性液界面の迅速な形成を確実にし、したがってさもなければ包帯材を取り替るべき時に、それを容易に持ち上げるのを妨げる接着を防止する。創傷と包帯材の間の良好な水性液界面はまた、ゲルで運ばれる有益な製品が、全ての利用できる表面を通じて創傷中に入れるようにするのにも重要である。
【0044】
水和ヒドロゲル材料は典型的に材料の固体層、シートまたはフィルムの形態であり、典型的に架橋されており、機械的強化構造物に組み込まれてもよい。層、シートまたはフィルムのサイズと形状は、意図される包帯材の使用に適合するように選択できる。0.05〜5mm、好ましくは0.5〜3mmの範囲の厚さが特に適切である。
【0045】
あるいは、水和ヒドロゲルは、いかなる固定形態または形状も有さず、ノズルを通して絞り出すことをはじめとして、三次元に変形および成形できる、固定された形態または形状を有さない非晶質ゲルの形態であってもよい。非晶質ゲルは典型的に架橋されておらず、または低い架橋レベルを有する。剪断減粘性非晶質ゲルを使用してもよい。このようなゲルは剪断応力をかけると(例えばノズルを通して注ぎ出すまたは絞り出すと)液体であるが、静止時には固化する。したがってゲルは、例えば典型的に約3mm径のノズルがあるピストンおよびシリンダーを含む圧縮管またはシリンジ様計量分配装置から分注されてもよい、注入できるまたは絞れる構成要素の形態であってもよい。このようなゲルは表層の形態で、または利用可能空間を充填して創面に接触する完全に順応性のゲルとして創腔内に適用されてもよい。
【0046】
非晶質ゲル調合物の典型的な例は、15%w/w AMPS(ナトリウム塩)、0.19%ポリエチレングリコールジアクリレート、および0.01%ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを分析等級DI水で100%容積に満たしたものである。試薬を完全に混合して溶解し、次におよそ100mW/cmを送達するUV−A灯を使用して30〜60秒間重合し、必要なヒドロゲルを形成する。これはプラスチックシリンジ内に収容されてもよく、次にそれから表層として、または創腔を充填するために、シリンジから標的部位に非晶質ゲルを分注してもよい。
【0047】
好ましい実施態様では、包帯材は非晶質である2つの構成要素を含む。構成要素は、例えばゲル、半固体、クリーム、ローション、または例えば水溶液などの液体の形態であることができる。水和ヒドロゲルは、上で考察したように好都合に用いられてもよい。
【0048】
2つの非晶質構成要素は、身体表面に包帯材を適用することが所望されるまで離しておかれる。好都合にはそれらは、それを通じて非晶質構成要素を送達できるノズルを有する容器内に包装される。好ましくは2つの構成要素は、好ましくは双方の構成要素を同時に送達するように作動可能である、2区画計量分配装置内に包装される。
【0049】
包帯材は任意に、既知の様式で包帯材をヒトまたは動物の皮膚に接着するための被覆または外層を含み、またはそれと共に使用される。
【0050】
本発明に係る包帯材は様々な異なるサイズと形状で製造でき、身体部位上への効率的な適用を可能にする。
【0051】
包帯材構成要素は、例えば二重チャンバープラスチック管またはラミネートアルミ箔包装などの無菌密封水不浸透性包装内に、使用前に適切に保存される。
【0052】
使用時には、1つまたは複数の包帯材構成要素をそれらの包装から取り出して、例えば美容または治療的目的で処置される皮膚領域上などのヒトまたは動物の皮膚の上で例えば適切に混合する。包帯材は、皮膚への適用前にまたは適用中に活性化されてもよい。包帯材はまた、経皮送達のためのアジュバントとして使用されてもよい。
【0053】
例示として以下の実施例で、添付図面を参照して本発明についてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】酸性化された亜硝酸塩(30mM)のpHに対するヒドロキノン(30mM)の効果を示すpH対時間(分)のグラフである。亜硝酸塩は塩酸の添加(最終濃度10mM)によって酸性化された。pHはヒドロキノンの添加前、およびヒドロキノンの添加に続く指定の時点で測定された。
【図2】酸性化された亜硝酸塩(30mM)のpHに対するヒドロキノン(30mM)の効果を示すpH対時間(分)のグラフである。亜硝酸塩は塩酸の添加(最終濃度4mM)によって酸性化された。pHはヒドロキノンの添加前、およびヒドロキノンの添加に続く指定の時点で測定された。
【実施例】
【0055】
材料と方法
化学薬品およびその他の材料
水(導電率<10μScm−1;分析試薬等級、FisherまたはSanyo Fistreem MultiPureのどちらか)
亜硝酸ナトリウム、Sigma製(S2252)
チオグリセロール、Fluka製(88641)
ヒドロキノン、Sigma製(H9003)
塩酸、Fisher製(J/4310/17)
水溶液中のS−ニトロソチオール濃度の測定
次の試薬を調製した。
試薬1:Na−リン酸緩衝液(pH7.4、0.1M)
試薬2:Griess試薬:2mLのDMSOに溶解された20mgのN−(1−ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩(NADD)+500mgのスルファニルアミド(注記:この溶液は感光性であり、できる限り暗所に保存すること)
試薬3:DMSO中の塩化第二水銀(10mM)(5mLのDMSO中に13.58mgのHgCl
次に下述の通りである6段階の手順が続いた。
1.5mLの試薬1をプラスチックキュベットに分注する。
200μLのサンプル(すなわちその中でGSNO濃度を判定するサンプル)を添加する。
1.17mLのDI水を添加する。
100μLの試薬2を添加する。
30μLの試薬3を添加して溶液をよく混合する。
得られた混合物の吸光度を496nmで10分間読み取る。
【0056】
ニトロソチオールの濃度は、ニトロソチオールのモル吸収係数=およそ10,000M−1cm−1を使用して、吸光度の読み取りから推定できる。
実施例1:ヒドロキノンおよび緩衝されていない亜硝酸ナトリウムの酸性化溶液を含有する混合物中の酸化窒素発生に起因するpHの変化
pHは、ヒドロキノン(すなわちモデル非チオール還元性化合物)の不在下および存在下の双方において、酸性化された亜硝酸塩溶液中で測定された。亜硝酸塩を塩酸の添加によって酸性化し、10mM(図1)または4mM(図2)の最終濃度を得た。反応混合物を酸性化するのに10mM塩酸を使用した場合、pHは還元剤の不在下でおよそ3.8に保たれた。対照的にヒドロキノンの存在はpHの約5.0への迅速な増大をもたらし、さらなる緩慢な増大がそれに続いた。混合物を酸性化するのに4mM塩酸を使用した場合は、最初のpHがより高かった(約4.2)こと以外は、同様のpHプロフィールが観察された(図2)。どちらの場合もpHの増大は、混合物中の酸化窒素の形成を反映する混合物中の気泡形成を伴った。還元剤の不在下では、気泡形成は観察されなかった。
【0057】
本実施例は、pKが約1〜4の緩衝液の不在下で、酸化窒素発生系がそのpHを調節する能力を実証する。実際の酸化窒素発生速度は、系の酸性化の度合いによって調節できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン源を含む第1の構成要素、亜硝酸塩を含む第2の構成要素を含み、前記第1および第2の構成要素が、一緒にされて皮膚部位に適用された際に、亜硝酸塩が反応して酸化窒素を発生し、皮膚と接する包帯材のpHを酸性値からより中性の値に増大させるように、非チオール還元剤を含む、皮膚包帯材。
【請求項2】
前記第1の構成要素のpHが2.0〜5.0である、請求項1に記載の皮膚包帯材。
【請求項3】
1.0〜4.0のpKを有するいかなる追加的材料も含まない、請求項1または請求項2に記載の皮膚包帯材。
【請求項4】
前記プロトン源が4.5〜7.0のpKを有する緩衝液を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の皮膚包帯材。
【請求項5】
亜硝酸塩が反応して酸化窒素または酸化窒素供与体を発生するにつれて、皮膚と接する包帯材のpHが5.0未満から5.0超に増大する請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮膚包帯材。
【請求項6】
前記第2の構成要素のpHが5.0〜12.0である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の皮膚包帯材。
【請求項7】
前記第1および第2の構成要素が非晶質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の皮膚包帯材。
【請求項8】
前記第1の構成要素および/または第2の構成要素がポリマー支持体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の皮膚包帯材。
【請求項9】
前記第1の構成要素がポリアクリル酸ベースのポリマー支持体を含む、請求項8に記載の皮膚包帯材。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−535565(P2010−535565A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519525(P2010−519525)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050564
【国際公開番号】WO2009/019498
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(504394847)インセンス・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】INSENSE LIMITED
【Fターム(参考)】