説明

皮膚接着組成物

【課題】
皮膚刺激が少なく、皮膚への均一の塗布量を確保することにより、長時間(12時間以上)の皮膚接着保持力に優れるとともに、速接着性であるにも関わらず、中綿式のペン容器に内蔵し使用しても、長期間ペン先の乾燥固化を防止して、優れた塗布性能を有する皮膚接着組成物に関する技術を提供する。
【解決手段】
文具で使用されている描線用の中綿式ペン型容器であっても、内蔵して使用可能とすべく、アクリル系オリゴマーを配合重量比20〜70重量部含有する高分子化合物と、水,低級アルコール又は水・低級アルコール混合物のうちいずれか一の溶媒と、を成分として含むことを特徴した皮膚接着組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚接着組成物に関し、皮膚刺激が少なく、皮膚への均一の塗布量を確保することにより、長時間(12時間以上)の皮膚接着保持力に優れるとともに、速接着性であるにも関わらず、中綿式のペン容器に内蔵し使用しても、長期間ペン先の乾燥固化を防止して、優れた塗布性能を有する皮膚接着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚接着の一例としては、従来より、一重まぶたの上皮に接着液を塗布して、器具などで物理的にまぶたの皮膚を内側へと押し込み、折り込みシワを接着させて、二重まぶたに常習化させる接着液には、下記非特許文献1に示すように、高粘度の接着液をボトルタイプのマニュキュア型容器に内蔵し、ボトルキャップの内側に付属する刷毛先に、接着液を含ませて塗布するもの(リーズン ダブルエッジ/コスモプロダクツ社等)や、下記非特許文献2に示すように、さらに高粘度、高濃度の接着液を筆ペン型容器に内蔵し、前記接着液を刷毛先に押し出すことにより含ませて塗布するもの(コージーペンシルアイトーク/コージ本舗社製等)がある。
【0003】
【非特許文献1】商品名:リーズンダブルエッジ http://www.cosmoproducts.co.jp/site/page/cosmopro/catalog/eyecares/reason/
【非特許文献2】商品名:コージーペンシルアイトーク http://www.koji-honpo.co.jp/futae/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記マニュキュア型容器に内蔵する接着液には、ゴムラテックスエマルジョン系、アクリル系接着性樹脂エマルジョン、又は両者の混合系などがある。しかし 係る接着液には、以下の二つの問題があった。即ち第一に、マニュキュア容器に付属する刷毛先に含ませる接着液の量は限られているため、使用中に何回も接着液を付け直す必要があり、しかも、塗り始めから塗り終わりに至るまで刷毛先の接着液が徐々に減少することで、皮膚への塗布量が一定とならず最後はカスレが生じる等の塗りムラが生じ、接着力が均一にならない問題があった。第二に、ゴムラテックスエマルジョン系の接着液は、接着液を乾かすのに時間がかかり、かつ化学的、物理的にも安定性が悪いため、乾燥途中において指で触れると形成途中の皮膜がボロボロと落下する点から、簡便に皮膚の接着が出来ないという問題があった。
【0005】
一方、刷毛付き押し出し式の筆ペン型容器に貯留する接着液には、アクリル酸系高分子化合物等のアクリル系接着性樹脂成分のエタノール溶解液がある。しかし、係る接着液は、高濃度かつ高粘度であるため、使用を繰り返すうちにペン先が乾燥してくることによる以下の四つの問題を生じさせていた。
【0006】
即ち、第一に、高粘度、高固形分であるため、使い初めの数回は問題がないが、刷毛先に残った前記接着性樹脂成分が徐々に積層し、刷毛先が硬くなることにより皮膚を傷付け、又は傷付けなくとも皮膚へ強い違和感を生じさせる問題があった。第二に、刷毛先が硬化することで、塗布量、塗布厚、塗布幅が一定にならなくなり、ついには使用期間中に該接着性樹脂成分が刷毛先を完全に硬化させ、詰まらせることにより継続使用できなくなる問題があった。第三に、上記のいずれの接着液も、高粘度、高固形分であるため、皮膚を接着させるまでに数分の放置時間が必要となる問題があった。第四に、穂先に貯留出来る接着液の量は限られているため、塗り初めと塗り終わりの塗布量にバラツキが生じて接着力が均一にならない問題があった。
【0007】
従って、上記各問題を解決するためには、薄く塗り広げられ、接着に時間のかからない接着液を、従来より文具で使用されている、描線用の中綿式のペン型容器であって、常時液供給が成されるペン先を備えたものに内蔵させ皮膚接着に使用することが考えられる。しかし、現存する接着液を上記文具用で使用されている中綿式のペン容器に使用した場合には、中綿及びペン先が詰まる問題、接着液の濃度が高いためペン先への充分な浸透性を得られない問題、又は皮膚の接着に必要な接着力が得られない問題がある。従って、上記ペン先を備えた文具で使用されている中綿式のペン型容器に現存の接着液を貯留して皮膚の接着に使用することは、技術的に難しく、未だ商品化されていないのが実情である。
【0008】
本発明は、前記従来技術の問題について、これを解消しようとするものであり、従来より文具で使用されている描線用の中綿式ペン型容器に内蔵して使用することが出来、極少量の接着液を皮膚へ均等に塗布することにより、皮膚に塗布された直後(数秒以内)に、皮膚どうしを接着する速接着性を備えつつも、皮膚同士を接着するのに十分な接着力が発現する皮膚接着組成物の提供を目的とする。さらに、長期間使用してもペン先の乾燥固化を防止して優れた塗布性能を発揮し、皮膚刺激が低い皮膚接着組成物の提供を目的とする。特に、二重まぶたを形成するために充分な接着性能を有し、優れた二重まぶた接着形成組成物として使用可能な皮膚接着組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に各請求項に係る課題解決手段を説明する。
【0010】
本発明に係る皮膚接着組成物は、前記従来技術の課題等について鋭意研究を重ねた結果、高分子化合物に対して、アクリル系オリゴマーを特定の配合比で含有させることにより、接着性能を向上させ、ペン先の乾き、即ち接着成分の固化による詰まりを防止し、使用した中綿式ペン型容器に対し、長期間に渡り、優れた塗布性能を発揮することを見出したものである。
【0011】
さらに、水,低級アルコール水又は・低級アルコール混合物のうちいずれか一の溶媒で溶解した高分子化合物にアクリル系オリゴマーを配合することで、低級アルコールの皮膚への接触刺激緩和作用、低級アルコール臭気の緩和作用及び皮膚摩擦抵抗に対する著しい緩和作用等が図られる。また、高分子化合物のみの調整接着液に比べて、アクリル系オリゴマーを配合することにより、皮膚に対する初期接着力、及び皮膚接着持続力が増大する。
【0012】
また、アクリル系オリゴマーを本発明の請求項の範囲内、すなわち高分子化合物に対してアクリル系オリゴマーを配合重量比20〜70重量部で含有させることにより、本発明に係る皮膚接着組成物を二重まぶた接着形成組成物として使用した場合、延伸性、速接着力及び形成持続力が発揮され、更には、描線用の中綿式ペン型容器に使用した場合でも、ペン先の固化を防止することにより、長期間の継続使用が可能になる。
【0013】
このように優れた接着持続力を発現するため、特に、二重まぶたの皮膚接着においては、従来の技術による接着液の1/5〜1/10の塗布量で速接着性の二重まぶた形成効果が期待できる接着組成物を見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は以下のようなものとなる。
【0014】
請求項1の発明は、皮膚接着組成物であって、アクリル系オリゴマーを配合重量比20〜70重量部含有する高分子化合物と、水,低級アルコール又は水・低級アルコール混合物のうちいずれか一の溶媒と、を含むこと特徴としている。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の皮膚接着組成物であって、中綿式ペン型容器に内蔵してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以下に請求項1及び2に記載された発明の効果をそれぞれ説明する。
上記配合により、請求項1の発明においては、皮膚同士の接着、とりわけ二重まぶたの形成において接着液を中綿式ペン容器に長期間使用した場合であっても、ペン先及び中綿の乾燥固化及びそれに伴う詰まりを防止することにより、優れた塗布性能を発揮する。また、接着液の使用量が極少量で済むため経済性に富み、均一に塗り広げられる塗布性等により皮膚同士の接着に充分な接着力を発揮する。更に、速接着性と皮膚への優れた摩擦低減効果を発揮する。以上の効果により上記各問題が解決される。
【0017】
また、請求項2に係る発明においては、低濃度かつ低粘度で、ペン先や中綿の詰まりが発生しない請求項1に係る接着液を用いることにより、従来は技術的に実現が困難であった、文具で使用されている描線用の中綿式ペン型容器へ内蔵し、かつ優れた塗布性能を発揮させつつ皮膚接着用の接着液を皮膚へ塗布することが可能となる。特に、請求項1に係る接着液を内蔵した、前記描線用の中綿式ペン型容器を二重まぶたを形成する際における接着液の塗布具として使用した場合において優れた性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、発明の実施の形態を詳しく説明する。本発明の皮膚接着組成物は、(高分子化合物中において、アクリル系オリゴマーを請求項1の割合で処方してなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に用いるアクリル系オリゴマーには、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体など、乾燥しても半固形状を呈する平均分子量約1000〜5000以内の低分子樹脂が使用できる。通常、少量添加(0.05〜0.3%)する場合には高分子化合物の可塑剤として機能するが、本発明のように、皮膚どうしを接着する機能で多量に配合して、高分子化合物の皮膚への速接着力、接着持続力増大とペン先の詰まり防止、低級アルコールの皮膚接触刺激の緩和作用、低級アルコール臭気の緩和作用、または、ペン先の皮膚摩擦抵抗を減じる効果などを考慮して処方されるのは皆無である。
【0020】
高分子化合物としては、皮膚に安全で、接着性能があるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂アルカノールアミン液(互応化学工業社製)、ビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体、ビニルメチルエーテルマレイン酸ブチル共重合体(ISP社製)、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体(BASF社)などの低級アルコール可溶性高分子化合物。アクリル酸アルキルエステル共重合体(日本カーバイト社製)、アクリル酸アルキルスチレン共重合体(ガンツ化成社製)、SBRラテックスエマルジョンNSK−400(日本イーアンドエル社製)などの水性エマルジョン系高分子化合物、又は、アクリル酸アルキル共重合体(日本純薬社製)、ポリビニル系樹脂(BASF社製)などの水・低級アルコール可溶性高分子化合物の一種あるいは二種以上の組み合わせによる、高分子化合物である。
【0021】
アクリル系オリゴマーを含有することにより、速接着性でありながら、ペン先で詰まらず、塗布延伸性があるのか、さらに、低級アルコールの皮膚接触刺激、低級アルコール臭気の低減効果があるのか、の検討を重ねた結果、以下の(1)〜(3)ように考えられる。まず、本発明に用いるアクリル系オリゴマーは、低分子量のため、水・低級アルコール、あるいは低級アルコール溶媒に易可溶性で、僅かの溶媒の添加量で低粘度を呈する。そのために、(1)中綿式構造容器から毛細菅作用で吸上げられてペン先に液供給される液供給経路であり、本発明のアクリル系オリゴマーの配合された高分子化合物がペン先から皮膚に転着された時に、平滑に塗布された高分子化合物中のアクリル系オリゴマーが、皮膚温によって微量の溶媒が蒸発する際に急激に粘度が上がり、半固形状になることによって皮膚に固着するため。(2)ペン先に含まれているときには、容器内の中綿式貯留層と直結しているため、溶媒の影響を強く受けて、低粘性の液状化の状態で安定していることから、ペン先への浸透性向上及びペン先での高分子化合物の目詰まりの防止効果を発揮し、さらには、皮膚上での接着液の塗布性能が向上する。(3)アクリル系オリゴマーは乾燥しても半固形状を呈するため、乾燥途中での性状は明らかに液状物として考えられる。そのため、アクリル系オリゴマーが溶媒を希釈していることになり、低級アルコールを多量に使用しているにも拘らず、低級アルコールの影響を小さくしている。このように、低級アルコール皮膚接触刺激、低級アルコール臭気の緩和作用、皮膚上に転着されるときに、ペン先でゲル状に変化するためにペン先の優れた摩擦低減効果などを発揮させる。通常、速接着性の高分子化合物の皮膜の上から重ね塗りすることはペン先が接着してしまい困難であるが、本発明の接着組成物を内蔵したペン容器は、潤滑性に優れて、簡単にペン先を移動しながら重ね塗りが出来る。アクリル系オリゴマーは主に、水・低級アルコール可溶性の高分子化合物に添加するのに適している。
【0022】
高分子化合物中に含有されるアクリル系オリゴマーの最適配合重量比は、皮膚初期接着力、接着持続力を考慮すると、配合重量比が20〜70重量部の範囲であり、望ましくは、30〜70の配合重量部である。
【0023】
ペン先の乾燥、固化防止、流動性及び粘度等、使いやすさを考慮した場合にも、高分子化合物中に含有されるアクリル系オリゴマーの配合重量比は20〜70重量部であり、20重量部以下になると、ペン先での乾燥、固化防止効果が低下して使用中に詰まりが生じる。70重量部を超えると接着機能が低下してしまい好ましくない。
【0024】
さらに、低級アルコールの皮膚接触刺激の緩和作用、又は、低級アルコール臭気の緩和作用を考慮すると、高分子化合物中に含有されるアクリル系オリゴマーの最適配合重量比は30〜70重量部である。20重量部以下になると、緩和作用が発揮できなくなる。
【0025】
ペン先の皮膚抵抗の緩和、接着皮膜上での重ね塗りなどを考慮すると、高分子化合物中に含有されるアクリル系オリゴマーの最適重量比は40〜70重量部が好ましい。
【0026】
又、中綿式ペン型容器に内蔵して毛細菅作用でペン先に液供給する場合には、アクリル系オリゴマーを含有する高分子化合物により構成される接着組成物の固形分は40重量部以下で、接着組成物の粘度が500cps(BH型、25℃)以下が望ましく、好ましくは接着組成物は35重量部以下であり、接着組成物粘度が300cps(BH型、25℃)以下である。
【0027】
本発明の皮膚接着組成物には、前記必須成分の他に、化粧料などに用いられる任意成分などが配合できる。例えば、防腐殺菌剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、PH調整剤、ゲル剤、粘着付与剤、保湿成分、グリコール類、植物エキス類、顔料等を請求項1に係る配合を損なわない範囲で配合することができる。
【0028】
このように構成される本発明の皮膚接着組成物では、ペン先の乾燥及び固化防止の目的を果たし、接着性能を向上させ、更に水・低級アルコール,低級アルコールによる接触皮膚刺激及び臭気の緩和作用などの相乗効果が発現する優れた皮膚接着組成物が提供されることとなる。本発明は、高分子化合物中に、アクリル系オリゴマーを配合することにより、従来にない、優れた特性を有する。弾力性のある皮膚どうしを接着する接着機能向上と、あるいは又ペン先の乾燥、固化防止、皮膚接触刺激、臭気の緩和などの優れた相乗効果が発現する。
【0029】
又、本発明の皮膚接着組成物の塗布具は、本発明の皮膚接着組成物を塗布できるものであれば、特に限定されないが、皮膚上で使用されるものであるから、ペン先が皮膚を傷つけないことが重要である。さらに、皮膚接着組成物の塗布量を考慮すると、柔軟性があるペン先で、0.8ミリ以上(直径)あることが好ましい。塗布手段として中綿式ペン型容器は、従来より、薄く、均一な描線や図形を描くために、広く使用されているが、使用性、簡便性に優れて、最適なものであり、これらの塗布具に接着組成物が内蔵された形態で使用されることが特に好ましい。
【0030】
[実施例]
次に、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0031】
[実施例1・2及び比較例1〜3]
皮膚接着組成物の使用例として、前記皮膚接着組成物を下記表−1(図1参照)中、実施例1・2及び比較例1〜3に示す処方により、二重まぶた接着形成組成物として調整(配合単位:重量%、全量100重量%)した上で、中綿式ペン型容器(中綿式ペン型容器:ぺんてる社製ホワイトボードマーカー用容器/MW5F−AT、PS芯ペン先0.9ミリ(直径))に内蔵し、下記の方法により評価を行った。
【0032】
ここで、上記表−1(図1参照)について説明する。各実施例及び比較例に係る皮膚接着組成物(二重まぶた接着形成用)は、(アクリル系オリゴマーを含有する高分子化合物):(水・エタノールの溶媒)=20重量部:80重量部の割合で配合し構成されている。各実施例及び比較例において、組成物全体の20%を占める高分子化合物(アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体)及び該高分子化合物中に含まれるアクリル系オリゴマー(アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体オリゴマー)の配合割合を変えて実験を行った。
【0033】
実施例1と比較例1は対応し、実施例1及び比較例1は、高分子化合物中においてアクリル系オリゴマーを配合重量比20重量部含有する場合と、配合重量比19重量部含有する場合について比較するものである。また、実施例2及び比較例2は、高分子化合物中においてアクリル系オリゴマーを配合重量比70重量部含有する場合と、配合重量比71重量部含有する場合について比較するものである。尚、比較例3は参考として、アクリル系オリゴマーを全く含有しない場合の実験結果を記載したものである。
【0034】
[皮膚接着組成物の二重まぶた接着形成持続性能]
一重まぶたの被験者12名(成人女性)に、上まぶたの皮膚に中綿式ペン型容器により皮膚接着組成物(二重まぶた形成接着用)を塗布してもらい、時間を置かずにスティック状の棒で強制的に皮膚を折り込んで二重まぶたを形成させ、下記評価基準(12名による平均、以下同様)で評価した。
【0035】
[二重まぶた持続接着性]
○:12h以上持続した。
△:6h以内で元に戻った。
×:3h以内で元に戻った。
【0036】
[皮膚接触試験及び塗布官能試験]
前記被験者12名に、(1)使いやすさ、(2)ペン先の違和感、(3)低級アルコール(エタノール)の皮膚刺激、(4)皮膚に赤みや発疹の有無。
(1) 使いやすさ
○:使いやすい
×:使いにくい
(2) ペン先又は筆先の違和感
○:まったく無し
×:ある
(3) エタノールの皮膚刺激
○:まったく無し
×:ある
(4) 赤み発疹の有無
○:なし
×:あり。
【0037】
[皮膚接着組成物(二重まぶた接着形成用)の処方によるペン先の乾き、又は詰まり]
前記被験者12名に毎日1回、1ヶ月間に渡り使用してもらい、ペン先の乾き、又は詰まりの有無を調べた。さらに、研究室の恒温槽(45度)で6ヶ月間、常温で6ヶ月間の使用実施試験も行った。
(1) 被験者実施試験
○:問題なし
△:出が悪い
×:詰まり有り
(2) 研究室実施試験
○:問題なし
△:出が悪い
×:詰まり有り。
【0038】
上記表―1の結果から、明らかなように、本発明の範囲となる実施例1及び2は、対応する比較例1及び2に比べ、二重まぶた接着持続性に優れ、ペン先の乾き、詰まり等も無く、安全性及び使用感においても優れることが判明した。
【0039】
比較例1は、本発明のアクリル系オリゴマーの含有率が少なく、塗布官能試験及び皮膚接触刺激試験においてはいずれの項目もNGとなっており、ペン先の違和感及びエタノールによる皮膚刺激があったと回答したモニターが多かった。また、1名であるものの赤み・発疹の発生を訴えたモニターがいたためカウントした。更に、使用が進むにつれペン先に詰まりの問題が発生することが判る。また、比較例2は、本発明のアクリル系オリゴマーの含有率が過剰であり、皮膚トラブル等は皆無であって、塗布官能試験及び皮膚接触刺激試験におけるいずれの項目も良好であるものの、二重まぶたの形成に必要な接着性能が低下する問題が発生していることが判る。
【0040】
尚、比較例3の結果から、二重まぶたの接着持続性、使用感、ペン先の詰まり等の問題解決において、高分子化合物へアクリル系オリゴマーの含有させることが重要な効果を奏していることが判る。
【0041】
このように、高分子化合物に含有させるアクリル系オリゴマーを特定の範囲内にすることにより、ペン先における詰まりが防止され、接着組成物の塗布時における皮膚接触抵抗を減じる効果があり、エタノールを多く配合しているにも関わらず、違和感などが生じないのもアクリル系オリゴマーの作用と考えられる。
【0042】
このように、本願発明に係る皮膚接着組成物は、二重まぶた接着形成組成物等として皮膚どうしを接着させる場合において、肌に優しく、従来より文具で使用されるペン容器などが使用できる等の点で簡便さを備え、安全で、使用感が優れる点において意義の大きなものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】皮膚接着化合物の適切な配合を表す実施例1・2を比較例1〜3と対比した表−1を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系オリゴマーを配合重量比20〜70重量部含有する高分子化合物と、水,低級アルコール又は水・低級アルコール混合物のうちいずれか一の溶媒と、を含むことを特徴とする皮膚接着組成物。
【請求項2】
塗布手段として、請求項1に記載の皮膚接着組成物を中綿式ペン型容器に内蔵してなることを特徴とする皮膚接着組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−84507(P2007−84507A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277819(P2005−277819)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(390002727)ケン・プロダクツ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】