説明

皮膚模様画像採取装置、採取方法、皮膚模様照合システム

【課題】本発明の目的は、コントラストが高く、歪みが小さい指紋画像を得ることができる皮膚模様画像採取装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の皮膚模様画像採取装置は、一方の面に複数の同一形状で単一方向の溝が形成されている透明シートを、2枚重ねた接触手段と、接触手段の溝が形成されている面からの光を受けるよう配置された撮像手段とを含み、前記接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、前記撮像手段に遠い透明シートから出射する光を、前記撮像手段に近い透明シートにより、略法線方向に屈折させ、前記撮像手段に遠い透明シートに接触させた皮膚の模様を採取する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸のある皮膚表面の模様を画像として採取する皮膚模様画像採取装置及び採取方法、採取した皮膚模様を照合する皮膚模様照合システムに関し、特に指紋や掌紋など皮膚表面の縞状の模様を画像として採取する皮膚模様画像採取装置及び採取方法、採取した縞状の皮膚模様を照合する皮膚模様照合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学的に皮膚表面の凹凸の模様を採取する装置には、三角柱型のプリズムを用いたものがある。皮膚表面の凹凸には、例えば指紋や掌紋がある。以下、プリズムを用いた指紋画像採取装置について述べる。
【0003】
図22はプリズムを用いた指紋画像採取装置の構成を示す図である。プリズム2の一つの面(上面とする)に対し、空気中における臨界角以上の角度で、他の面を介して光源3から光を照射する。照射した光が上面で全反射した先に画像センサ4を設置すると、画像センサ4は、プリズム2の更に別の面を介して、上面で全反射した光を受光する。プリズム2の上面に指1を接触させた場合、指紋の谷部ではプリズム2に指の皮膚の表面が接触しておらず、指紋の谷部に照射された光はプリズム2の上面で全反射する。一方、指紋の山部ではプリズム2に指の皮膚の表面が接触しているので、指紋の山部に照射された光は反射せずに接触部分で散乱される。従って、プリズム2の上面に指を接触させると、画像センサ4では、光が全反射する指紋の谷部が明るく、光が散乱する山部が暗い指紋画像が得られる。
【0004】
また、特許文献1には、複数の同一形状のV字型の溝が形成されているフィルムすなわちプリズムシートを、前記のプリズムの代わりに使用した身体的特徴入力装置の例が記載されている。特許文献1における身体的特徴とは、指紋、掌紋、掌型及び足形等である。
【0005】
図23は、本文献の身体特徴入力装置の構成を表す図である。
【0006】
本身体特徴入力装置は、図22に示す前記の指紋画像採取装置のプリズム2をプリズムシート5で置き換えたものである。プリズムシート5の平坦な面(上面とする)に対し、空気中における臨界角以上の角度で、V字型の溝が形成されている面を介して、光源3から光を照射する。照射した光が上面で全反射した先に画像センサ4を設置すると、画像センサ4は、上面で全反射した光を受光する。プリズムシート5の上面に指1を接触させた場合、指紋の谷部ではプリズムシート5に指の皮膚の表面が接触しておらず、指紋の谷部に照射された光はプリズムシート5の上面で全反射する。一方、指紋の山部ではプリズムシート5に指の皮膚の表面が接触しているので、指紋の山部に照射された光は反射せずに接触部分で散乱される。従って、プリズムシート5の上面に指を接触させると、画像センサ4では、光が全反射する指紋の谷部が明るく、光が散乱する山部が暗い指紋画像が得られる。
【0007】
一方、特許文献1には、指紋画像採取装置が、反射光ではなく、フィルムと指との接触面の散乱光によって指紋画像を得るように構成することが示唆されている。散乱光によって指紋画像を得る場合、指がフィルムに接触している部分をセンサ4により撮影して、フィルムと指の接触面の散乱光と、フィルムに接触していない指の皮膚の散乱光がフィルムを透過した光との強さの差による模様が指紋画像として得る。(指の皮膚の凸部で、フィルムに接触する部分、及び指紋画像で該部分に対応する部分は隆線と呼ばれる。また、指の皮膚の凹部で、フィルムに接触しない部分、及び指紋画像で該部分に対応する部分は谷線と呼ばれる。)この場合、センサ4の位置は、プリズムシートの上面で全反射した照明光を観測できる位置に限られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2568310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プリズムを用いた指紋画像採取装置は、厚みのある三角柱型のプリズムを用いるので、装置のサイズが大きくなると言う問題があった。
【0010】
一方、特許文献1に記載の身体特徴入力装置では、厚みのある三角柱型のプリズムを用いるために装置のサイズが大きくなるという問題は解決されている。しかし、前記の指紋画像採取装置と同様に、指紋画像を撮影できる角度が、センサ面に照射した光が全反射する場合の反射光を撮影できる臨界角以上の角度に限られるという問題があった。
【0011】
さらに、センサ面で全反射した光を観測できる方向とセンサ面の法線との間の角度は臨界角以上の角度であり大きくなるので、画像センサの光軸方向とセンサ面の法線方向とのなす角度は同様に大きくしなければならない。画像センサはセンサ面上の反射光と散乱光のコントラストとして現れる指紋を臨界角以上の角度で撮影するので、得られる指紋画像は、センサ面の法線方向から撮影したものと比較して、大きく変形したものとなる。従って、撮影した指紋画像の指紋がセンサ面の法線方向から見た指紋の形になるよう補正しようとすると、指紋の変形が大きいために誤差が大きくなるという問題があった。
【0012】
また、特許文献1に記載の指紋画像採取装置で散乱光によって指紋画像を採取する方法が考えられる。この場合、センサ4を設置する位置を、フィルムの正面方向から撮影する位置に設定することにより、あるいは、反射光により指紋画像を採取する場合と同じ位置に設定することにより、指紋画像を得ることができる。しかし、フィルムの正面方向(フィルムの面の略法線方向)から見た、フィルムと指の接触面の散乱光の強さと、フィルムに接触していない谷線における指の皮膚の散乱光がフィルムを透過した光と強さとは、差が少ない。そのため、特許文献1の指紋画像採取装置で、フィルムの正面(フィルムの面の略法線方向)から撮影すると、コントラストが得られず、隆線がはっきりしないため、良好な指紋画像が得られないという問題があった。
【0013】
ところで、フィルムの透過光の臨界角を超えた角度から撮影した場合は、臨界角を超えているためフィルムに接触していない谷線の指の皮膚における散乱光がフィルムを透過した光は観測されない。一方、フィルムに指の皮膚が接触している部分には、一般的に汗や皮脂が存在する。指の皮膚、汗や皮脂の屈折率は、空気の屈折率より、フィルムの屈折率に近い。そのため、センサ面に接触している隆線部の散乱光は、接触部における臨界角を超えない限り、谷線における臨界角を超えた位置においても観測される。従って、谷線における臨界角を超え、センサ面に接触している隆線部の臨界角を超えない場合、隆線がはっきりした指紋が得られる。
【0014】
しかし、フィルムの法線となす角度が大きい方向から撮影するので、得られる指紋画像は、フィルムの略法線方向から撮影した画像と比較して大きく歪むと言う問題があった。また、この場合、得られた指紋画像を指紋画像をセンサ面の法線方向から見た形に補正しようとすると、歪みが大きいために誤差が生じるという問題があった。
【0015】
さらに、前記指紋画像採取装置のセンサ面は平面状で堅い一方、指は柔らかいが立体的な形状をしているので、指紋画像採取の際センサ面に指を押しつけても、センサ面に接触させることができるのは指の表面の一部に限られる。そのため、センサ面に接触させることができる狭い範囲の指紋しか採取できないという問題があった。また、指が接触する面積を大きくしようとすると、指を強く押しつける必要があり、指紋の変形が大きくなると言う問題があった。
【0016】
そこで、センサ面上に指を押しつけながら回転させ、複数枚の指紋画像を撮影して合成することで、広い範囲の指紋画像を採取することも行われてきた。しかし、センサ面に指を押しつけて回転させることで指の部位によりセンサ面に押しつけられる強さが異なるため、指の部位によりセンサ面に押しつけられた時の歪み方も異なる。そのため、複数枚の指紋画像を合成して1枚の指紋画像にする際、画像がうまくつながらないという問題があった。
【0017】
本発明の目的は、コントラストが高く、歪みが小さい指紋画像を得ることができる皮膚模様画像採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の皮膚模様画像採取装置は、一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう重ねた接触手段と、前記接触手段の溝が形成されている面から出射される光を受けるよう配置された撮像手段とを含み、前記接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、前記撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、屈折した前記光を撮像装置が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取する。
【0019】
本発明の皮膚模様照合システムは、一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう重ねた接触手段と、前記接触手段の溝が形成されている面から出射される光を受けるよう配置された撮像手段とを含み、前記接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、前記撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、屈折した前記光を撮像装置が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取する、皮膚模様画像採取装置と、前記皮膚模様画像採取装置を制御し、該皮膚模様画像採取装置が採取した皮膚模様画像を該皮膚模様画像採取装置から読み出す制御手段と、前記制御手段が読み出した前記皮膚模様画像の補正を行う画像補正手段と、前記皮膚模様画像から、照合のための特徴を抽出して特徴データを生成する特徴抽出手段と、前記特徴抽出手段が生成した特徴データに基づき、皮膚模様の照合を行う照合手段とを含む皮膚模様照合装置と、を含む。
【0020】
本発明の皮膚模様採取方法は、一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう重ねた接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、屈折した前記光を前記撮像手段が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取する。
【0021】
本発明の照合方法は、一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう向きで重ねた接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、屈折した前記光を前記撮像手段が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取し、採取した皮膚模様画像を皮膚模様画像採取装置によって読み取り、読み取った前記皮膚模様画像を補正し、前記皮膚模様画像から、照合のための特徴を抽出して特徴データを生成し、生成した特徴データに基づき、皮膚模様の照合を行う。
【発明の効果】
【0022】
本発明には、コントラストが高く、歪みが小さい指紋画像を得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による第1の実施形態に対応する皮膚模様画像採取装置の構成を表す正面図である。
【図2】プリズムシートの一例を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態の、皮膚模様画像を採取する際の配置を表す正面図である。
【図4】本発明による第2の実施形態に対応する指紋画像照合システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明による第2、第3、第4、第5、第6の実施形態の動作を表すフローチャートである。
【図6】本発明による第3の実施形態に対応する指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。
【図7】第3の実施形態における皮膚模様画像取得装置の構成を表す正面図である。
【図8】第3の実施形態における皮膚模様画像取得装置を表す斜視図である。
【図9】第3の実施形態における皮膚模様画像取得装置の、皮膚模様画像を採取する際の状態を表す正面図である。
【図10】第3の実施形態における皮膚模様画像取得装置の、皮膚模様画像を採取する際の状態を表す斜視図である。
【図11】本発明による第4の実施形態に対応する指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。
【図12】第4の実施形態における皮膚模様画像取得装置の構成を表す正面図である。
【図13】第4の実施形態における皮膚模様画像取得装置の状態を表す斜視図である。
【図14】第4の実施形態で使用するシートの一例を表す平面図である。
【図15】第4の実施形態における皮膚模様画像取得装置の、皮膚模様画像を採取する際のシートと指の状態を表す斜視図である。
【図16】本発明による第5の実施形態に対応する指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。
【図17】第5の実施形態における皮膚模様画像取得装置の構成を表す正面図である。
【図18】第5の実施形態における皮膚模様画像取得装置の、皮膚模様画像を採取する際の状態を表す正面図である。
【図19】本発明による第6の実施形態に対応する指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。
【図20】第6の実施形態における皮膚模様画像取得装置の構成を表す正面図である。
【図21】第6の実施形態における皮膚模様画像取得装置の、皮膚模様画像を採取する際の状態を表す正面図である。
【図22】三角柱型のプリズムを用いた指紋採取装置の構成の一例を表す図である。
【図23】プリズムシートを用いた指紋採取装置の構成の一例を表す図である。
【図24】第1の実施形態における、谷線部分で全反射する光の光路の例を表す図である。
【図25】第1の実施形態における、隆線部分での散乱光の光路の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
次に本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施形態に対応する皮膚模様画像採取装置の構成を示す正面図である。
【0026】
図1を参照すると、本実施形態に係る皮膚模様画像採取装置100は、指等の皮膚に接触する接触手段である2枚のシートのシート11及びシート12と、撮像手段20とを含む。
【0027】
シート11及びシート12は、一方の面は略平坦であり、他方の面に同一形状で直線状の多数の溝が、略平行に形成されている透明なシートである。このようなシートとしては、例えば、片側の面にV字型の多数の溝が、略平行に形成されているプリズムシートがある。プリズムシートには、ある範囲の角度の広がりを持つ入射光を、より狭い範囲の角度で出射する集光特性を持つものがある。そのようなプリズムシートは、例えば液晶表示装置で、液晶の正面方向から見た輝度を向上させるために、バックライトに用いられる。また、前記プリズムシートは、太陽電池セルの受光面上で集光効率を向上させるためにも用いられる。
【0028】
プリズムシートを太陽電池セルの集光効率を向上させるために利用する例が、特許文献2に記載されている。また、バックライトに利用されるプリズムシートの例が特許文献3に記載されている。
[特許文献2]特開2007−73774号公報
[特許文献3]特開2009−266792号公報
図2は本発明の第1の実施形態に使用するプリズムシートの例を表す斜視図である。図2では、プリズムシートの溝が形成されている面が上になるように記載している。
【0029】
図2に示す前記プリズムシートは、プリズムシートの法線となす角度が大きい方向から、プリズムシートの溝が無い方の面に入射して該プリズムシートを透過する光を、該プリズムシートの法線方向すなわち厚み方向に、より近い角度になるよう屈折させる効果がある。プリズムシートがこのような効果を持つためには、空気より屈折率が高く、光を透過する材質で作られていればよい。以下、シートの前記溝が形成されている方の面をプリズム面、前記溝が形成されていない平坦な面を平坦面と呼ぶことにする。また、以下の記載において、シートの法線は、シートの平坦面の法線を指すものとする。
【0030】
以下、シート11及びシート12である前記透明なシートがプリズムシートである例を記載する。ただし、該シートの法線方向と大きな角度をなす方向から該シートに入射して該シートを透過する光線を、該シートの法線方向により近い角度に屈折させて出射させる効果があるシートであれば、シートに形成されている溝の形状は問わない。また、シートがプリズムシートである場合であっても、該シートの法線方向と大きな角度をなす方向から該シートに入射して該シートを透過する光線を、シートの法線方向により近い角度に屈折させて出射させる効果があるプリズムシートであれば、V字型の溝の形状は問わない。
【0031】
図1に示すように、互いに接するように重ねたシート11及びシート12の一方の側に、シート11及びシート12に向けて撮像手段20が設置されている。シート11及びシート12は、双方のシートのプリズム面が、ともに撮像手段20側に向くよう重ねる。シート11及びシート12は、互いに接触していても、接触していなくてもよく、また、部分的に接触していてもよい。図1以下の図面では、シートが2枚重ねであることを分かりやすくするため、2枚のシートを少し離した形で記載する。
【0032】
撮像手段20は、例えば、画像を得ることができるCCDやCMOSセンサ等のセンサや、該センサを備えたカメラである。撮像手段20は、重ねられたシート11及びシート12を、双方のシートのプリズム面側から撮影する。
【0033】
詳細は後述するが、反射光により皮膚模様画像を得る場合、図示しない照明を、シート12のプリズム面側で、シート11の平坦面で全反射した光が撮像手段20に入射する位置に設置する。また、散乱光により皮膚模様画像を得る場合、図示しない照明をシート11の平坦面側のいずれかの位置に設置してもよいし、特別な照明は設置しなくてもよい。散乱光により皮膚模様画像を得る場合、照明を設置した場合は照明からの光が指や掌等を通過して皮膚の表面で散乱する。特別な照明を設置しない場合は、環境光が指や掌等を通過して皮膚の表面で散乱する。散乱光により指紋画像を得る場合は、シートに接する側の皮膚の表面における散乱光が撮像手段20に入射するようにする。
【0034】
次に、本実施形態の皮膚模様画像採取装置100の動作について図面を参照して詳細に説明する。以下、皮膚模様画像を採取する身体の部位が指であるとして説明を行う。しかし、例えば掌や足裏など、皮膚表面に凹凸があり模様を採取できる部位であれば、皮膚模様画像を採取する身体の部位は指に限らない。皮膚模様画像を採取する身体の部位が指である場合、皮膚模様画像は指紋画像である。
【0035】
図3は、本実施形態の、皮膚模様画像を採取する際の状態を表す図である。模様を採取する指1の皮膚は、シート11の平坦面に接触している。撮像手段20は、シート12から出射する光を像として撮影し、皮膚模様画像として出力する。
【0036】
皮膚模様画像採取の際、重ねたシート11及びシート12の平坦面に、指や掌と言った皮膚表面に凹凸がある部位が接触すると、皮膚の凸部が平坦面に接触する。一方、皮膚の凹部は平坦面に接触しないので、凹部に対応する、凸部が接触する部位の間の平坦面は空気に接する。
【0037】
撮像手段20は、皮膚が平坦面に接している凸部と、空気が接している凹部との明るさの差を、皮膚の模様として撮影する。
【0038】
前述のように、特許文献1には、指を接触させる部分に1枚のプリズムシートのみを使用した身体的特徴入力装置が記載されている。特許文献1に記載の身体的特徴入力装置で反射光によって指紋画像を得る場合、プリズムシートのプリズム面側に設置された光源からの光が、プリズムシートの空気が接する平坦面で全反射し、撮影装置に入射するような構成とする。この場合の配置で皮膚模様画像を撮影すると、皮膚が接しない平坦面の領域で光源からの光が全反射した光と、皮膚の凸部が接する平坦面の領域において光源からの光が皮膚の凸部で散乱した散乱光の強さの差が指紋の模様になるので、コントラストのはっきりした指紋画像が得られる。
【0039】
一方、散乱光によって指紋画像を得る場合、光源、プリズムシート、及び撮影装置を、プリズムシートで全反射した光源からの光が撮影装置に到達しないような配置にして、皮膚模様画像を撮影する。この場合、皮膚の凸部の散乱光と、皮膚の凹部の散乱光がプリズムシートを透過した光との強さの差が、指紋として現れる。特許文献1に記載の身体的特徴入力装置で散乱光によって指紋画像を得る場合、画像センサは、皮膚の凸部の散乱光及び皮膚の凹部の散乱光の少なくともいずれか一方が届く角度から撮影すればよい。
【0040】
プリズムシートの法線となす角度が臨界角より小さい方向から見た場合、皮膚模様画像の歪みは小さい。しかし、皮膚の凸部の散乱光の強さと、皮膚の凹部の散乱光がプリズムシートを透過した光の強さとの差は小さいので、得られる皮膚模様画像のコントラストは小さくなる。
【0041】
一方、プリズムシートのプリズム面から入射した光がプリズムシートの平坦面で全反射する臨界角以上の角度から見た場合、臨界角を超えているため、皮膚の凹部からの散乱光がプリズムシートを透過した光は届かないので、反射光が無い限り該皮膚の凹部に対応する平坦面からの光は届かない。
【0042】
ところで、指の凸部がプリズムシートに接する部分には、プリズムシートには皮膚表面あるいは汗や皮脂が付着している。皮膚、汗や皮脂の屈折率は空気より大きいので、皮膚の凸部に対応する部分の臨界角は、皮膚の凹部に対応する部分における臨界角より大きくなる。(なお、プリズムシートの屈折率が皮膚、汗や皮脂の屈折率より小さい場合、臨界角は存在しない。)
従って、皮膚の凹部に対応する部分における臨界角以上の角度から見た場合でも、該角度が皮膚の凸部が接触している部分の臨界角を超えていない限り、皮膚の凸部の散乱光は届く。よって、前記皮膚の凹部に対応する部分における臨界角以上の角度から撮影した場合、コントラストの高い皮膚模様画像が得られる。
【0043】
上述した特許文献1に記載の身体特徴入力装置のように、プリズムシートが1枚の場合、プリズムシートの皮膚が接触していない部分の臨界角以上の角度から撮影すれば、反射光及び透過光のどちらによっても、コントラストの高い皮膚模様画像を得られた。
【0044】
本実施形態の皮膚模様画像採取装置100は、引用文献1の身体特徴入力装置のプリズムシートに、もう1枚のプリズムシートを重ねたものに相当する。前述のように、プリズムシートには該プリズムシートの法線となす角の大きい方向の光線を、屈折により該法線の方向に近づける作用がある。図24及び図25に、屈折により前記法線の方向に近づく光の光路の模式図を示す。
【0045】
図24は、本実施形態において、谷線部分で全反射する光の光路の例を表す図である。
【0046】
図24に示すように、シート11の平坦面が空気と接する谷線部分に臨界角以上の角度で入射した光は、シート11の平坦面で全反射する。全反射した光は、シート12により、シート11及びシート12の法線方向に近い角度に屈折する。
【0047】
従って、シート11の全反射した光が到達するシート11及びシート12の略法線方向から、指を接触させたシート11及びシート12を撮影することで、反射光によるコントラストの高い指紋画像を得ることができる。
【0048】
図25は、本実施形態において、隆線部分での散乱光の光路の例を表す図である。
【0049】
図25に示すように、シート11の平坦面に皮膚の表面が接する隆線部分では、シート11のプリズム面から入射し指の皮膚内で散乱された光又は指の上部に当たり指内を透過した散乱光が放射される。前述のプリズムシートと同様、指がシート11に接する部分には、シート11には皮膚表面あるいは汗や皮脂が付着している。皮膚、汗や皮脂の屈折率は空気より大きいので、隆線部分の臨界角は谷線部分における臨界角より大きくなる。ただし、シート11の屈折率が皮膚、汗や皮脂の屈折率より小さい場合、臨界角は存在しない。いずれにしても、隆線部分の散乱光で、谷線部分の臨界角より大きい角度でシート11の平坦面から出射する光が存在する。
【0050】
一方、指の谷線部分から放射される散乱光は、指の皮膚とシートとの間の空気を介してシート11の平坦面に入射し、谷線部分における臨界角以下の角度で出射する。シート11の平坦面の谷線部分から、谷線部分における臨界角以上の角度で出射する、皮膚の谷線部分からの散乱光は存在しない。
【0051】
よって、シート11の谷線部分における臨界角以上で隆線部分における臨界角未満の角度で、シート11の平坦面の隆線部分から出射する光を撮影することで、コントラストの高い皮膚模様画像を得ることができる。
【0052】
図25に記載の矢印付きの線は、谷線部分の臨界角より大きい角度で出射する光の光路の例である。図25に示す例のように、シート11から出射し、大きい角度でシート12に入射する光は、屈折により、入射角よりシート12の法線方向に近い角度で出射する。シート11の谷線部分における臨界角以上で隆線部分における臨界角未満の角度で、シート11の平坦面の隆線部分から出射する光は、シート12の作用により、屈折してシート12の法線方向に近い角度でシート12のプリズム面から出射する。従って、シート11及びシート12の略法線方向から撮像手段20でシート11及びシート12を撮影することで、コントラストの高い皮膚模様画像を得ることができる。
【0053】
よって、本実施形態のようにプリズムシートを2枚重ねた場合、平坦面に皮膚が接触しているプリズムシートを、該プリズムシートの略法線方向から撮影することで、コントラストの高い皮膚模様画像を得ることができる。また、プリズムシートの略法線方向から撮影するので、得られる皮膚模様画像の歪みも少なくなる。
【0054】
以上のように、本実施形態には、コントラストが高く、歪みが小さい皮膚模様画像を得られるという効果がある。
【0055】
その理由は、重ねた2枚のプリズムシートを構成に持つからである。重ねた2枚のプリズムシートを構成に持つことで、前述のようにコントラストの高い皮膚模様画像を、プリズムシートの略法線方向から撮影することが可能になる。プリズムシート略法線方向から撮影することで、1枚のプリズムシートにプリズム面側から入射する照明光が、該プリズムシートの平坦面で全反射する角度から撮影した皮膚模様画像と比較して、歪みの少ない皮膚模様画像が得られる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0056】
図4は、本実施形態の指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。
【0057】
図4を参照すると、本実施形態の指紋画像照合システムは、皮膚模様画像採取装置100と、皮膚模様照合装置200とを含む。
【0058】
皮膚模様画像採取装置100は、図1に示す第1の実施形態の皮膚模様画像採取装置100と同じであるので、説明を省略する。
【0059】
皮膚模様照合装置200は、制御手段50と、画像補正手段60と、特徴抽出手段70と、照合手段80と、記憶手段90とを含む。
【0060】
制御手段50は、皮膚模様画像採取装置100を制御して皮膚模様画像を採取させ、皮膚模様画像採取装置100が採取した皮膚模様画像を皮膚模様画像採取装置100から読み出す。
【0061】
画像補正手段60は、制御手段50から受け取った皮膚模様画像を、特徴抽出に適した画像になるように、画像処理により補正する。
【0062】
特徴抽出手段70は、画像補正手段60から受け取った皮膚模様画像から、照合を行うための特徴を抽出する。
【0063】
照合手段80は、2つの特徴データが、同じ皮膚から採取した皮膚模様画像から抽出したものであるか否かを判断する照合を行う。
【0064】
次に、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0065】
図5は本実施形態の指紋画像照合システムの動作の一例を表す図である。
【0066】
まず、制御手段50は、皮膚模様画像採取装置100を制御して皮膚模様画像を採取させ、皮膚模様画像採取装置100が採取した皮膚模様画像を皮膚模様画像採取装置100から読み出す(ステップA1)。制御手段50は、読み出した皮膚模様画像を画像補正手段60に送る。読み出した皮膚模様画像を保存する場合、制御手段50は、読み出した皮膚模様画像を記憶手段90に格納する。制御手段50が画像補正手段60に送る皮膚模様画像あるいは記憶手段90に格納する皮膚模様画像は、コンピュータ等で扱えるようデジタル化された画像データである。デジタル化は、皮膚模様画像採取装置100が行ってもよく、制御手段50が行ってもよい。
【0067】
次に、画像補正手段60は、制御手段50から受け取った皮膚模様画像を、特徴抽出に適した画像になるように、画像処理により補正する(ステップA2)。画像補正手段60が行う画像処理は、例えば、ノイズ除去や平滑化、コントラスト補正、歪みの補正等のような既存の画像処理である。また、画像補正手段60は、皮膚模様画像を制御手段50から受け取らずに、記憶手段90に格納されている皮膚模様画像を記憶手段90から読み出す構成にしてもよい。
【0068】
画像補正手段60は、補正を行った皮膚模様画像を特徴抽出手段に送る。皮膚模様画像を保存する場合、画像補正手段60は、補正を行った皮膚模様画像を記憶手段90に格納する。
【0069】
次に、特徴抽出手段70は、画像補正手段60から受け取った皮膚模様画像から、照合を行うための特徴を抽出する(ステップA3)。特徴抽出手段70は、既存の特徴抽出方法により特徴抽出を行う。また、特徴抽出を行う皮膚模様画像は、記憶手段90から読み出す構成にしてもよい。
【0070】
特徴抽出手段70は、皮膚模様画像から抽出した特徴データを、照合手段80に送る。また、特徴抽出手段70は、必要に応じて、皮膚模様画像から抽出した特徴データを、記憶手段90に格納する。
【0071】
次に、照合手段80は、既存の照合方法によって、特徴抽出手段70から受け取った2つの特徴データが、同じ皮膚から採取した皮膚模様画像から抽出したものであるか否かを判断する照合を行う(ステップA4)。照合手段80は、照合を行う2つの特徴データを、特徴抽出手段70から受け取らずに、記憶手段90から読み出してもよい。また、照合手段80は、特徴抽出手段70から受け取った特徴データと、記憶手段90から読み出した特徴データの照合を行ってもよい。
【0072】
照合手段80が照合を行う2つの特徴データの組み合わせは、目的に応じて選択する。例えば、本人同定を行いたい場合、照合手段80は、例えば、皮膚模様画像採取装置100が採取し照合手段80が特徴抽出を行った特徴データと、記憶手段90に、同定を行いたい個人に結び付けられて格納されている特徴データとの照合を行う。個人識別を行いたい場合、照合手段80は、例えば、皮膚模様画像採取装置100が採取し照合手段80が特徴抽出を行った特徴データと、記憶手段90に格納されている全ての特徴データとの照合を行う。照合の結果、最も同じ皮膚から採取した皮膚模様画像から抽出したものらしい特徴データに関連付けられている個人を、前記の皮膚模様画像採取装置100が採取し照合手段80が特徴抽出を行った特徴データを採取した個人であるとする。照合手段80は、記憶手段90に格納されている特徴データ同士の照合を行ってもよく、また、他の組み合わせの特徴データの照合を行ってもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態には、コントラストが高く、歪みが小さい縞模様画像に基づき照合を行うために、照合精度が向上するという効果がある。
【0074】
その理由は、皮膚模様画像採取装置100が、重ねた2枚のプリズムシートを構成に持つからである。重ねた2枚のプリズムシートを構成に持つことで、前述のようにコントラストの高い皮膚模様画像を、プリズムシートの略法線方向から撮影することが可能になる。プリズムシート略法線方向から撮影することで、1枚のプリズムシートにプリズム面側から入射する照明光が、該プリズムシートの平坦面で全反射する角度から撮影した皮膚模様画像と比較して、歪みの少ない皮膚模様画像が得られる。
【0075】
皮膚模様画像によって皮膚模様の照合を行うためには、撮影して得られた皮膚模様画像から、該皮膚模様画像の皮膚模様をプリズムシートの法線方向から見た皮膚模様画像を、画像処理により生成した後、生成した皮膚模様画像から特徴抽出を行う必要がある。プリズムシートの平坦面で全反射する角度から撮影した皮膚模様画像の場合、歪みが大きいために、画像処理により生成した、プリズムシートの法線方向から見た皮膚模様画像の誤差は、大きくなる。一方、プリズムシートの略法線方向から撮影した皮膚模様画像の場合、歪みが小さいため、該皮膚模様画像から生成した、プリズムシートの法線方向から見た皮膚模様画像の誤差は、小さくなる。誤差の小さい皮膚模様画像から特徴データを抽出することで、同じ皮膚から採取した皮膚模様画像から抽出した特徴データ同士の差異が減少し、照合精度を向上させることができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0076】
図6は、本実施形態の指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。以下、本実施形態と、第2の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0077】
図6を参照すると、本実施形態の指紋画像照合システムは、皮膚模様画像採取装置101と、皮膚模様照合装置200とを含む。
【0078】
本実施形態の皮膚模様照合装置200の構成は、第2の実施形態に係る皮膚模様照合装置200の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0079】
本実施形態と、第2の実施形態とを比較すると、皮膚模様画像採取装置101の構成が異なる。
【0080】
図7は、本実施形態における皮膚模様画像採取装置101の構成を表す図である。以下、皮膚模様画像採取装置101と第1の実施形態における皮膚模様画像採取装置100との相違点を中心に説明する。また、皮膚模様を採取する部位が指であり、採取した画像が指紋画像であるとして説明を行う。しかし、前述のように、皮膚に凹凸があり皮膚の模様を採取できる部位であれば、皮膚模様を採取する部位は指に限られない。
【0081】
図7を参照すると、本実施形態における皮膚模様採取装置101は、2枚重ねのシート13と、撮像手段20と、シート13を保持する保持手段30と、反射手段40とを含む。
【0082】
シート13は、第1の実施形態のシート11及びシート12を重ねたものと同じである。従って、シート13の詳細な説明は省略する。シート13の平坦面はシート11の平坦面である。また、シート13のプリズム面は、シート12のプリズム面である。ただし、シート13は可撓性を有するものとする。
【0083】
保持手段30は、シート13の周囲を、シート13が可動な形で保持する。可動な形で保持するとは、保持手段30がシート13の周囲を、シート13が一定範囲で動くよう固定しないで支えることを意味する。シート13の可動範囲は、シート13が、後述のように撓んで指に接触するのに十分な範囲であればよい。シート13及び保持手段30のいずれか一方又は双方に、シート13が保持手段30から脱落しないような機構を設けることが好ましい。そのような機構としては、例えば、シート13の端及び保持手段30に突起を設け、該2つの突起によりシート13の保持手段30からの脱落を防止するものが考えられる。前記突起は、シート13が変形するなどして動いた時に、シート13に設けられた前記突起が保持手段30に設けた突起に掛かり、シート13の保持手段30からの脱落を防止するようにするものである。保持手段30が保持するのは、シート13の相対する2辺であっても、いずれか3辺であっても、4辺であってもよい。また、保持手段30がシート13の角を保持するようにしてもよい。シート13の形が四角形以外の場合でも同様である。その場合、保持手段30はシート13を5箇所以上で保持しても構わない。
【0084】
シート13に、例えばシート13の法線方向に力を加えた場合、シート13の周囲は固定されていないので、シート13は周囲を固定してある場合より大きく撓む。従って、指等をシート13に接触させて押した場合、シート13は、例えば、シートが撓まない堅いものであったり、シートの周囲を固定して撓みにくくしてある場合より、広い範囲で指等の表面に接触する。
【0085】
反射手段40は、皮膚が接触するシート13のうち、シート13に力を加えた時に撓みのために撮像手段20に写りにくい部分の模様を、反射させることで撮像手段20に写るようにするものである。反射手段40として、例えば、鏡を用いることができる。図7の例では、2箇所で画像を反射する構成になっているが、シート13の撓み方により、3箇所以上で反射するように構成してもよい。また、反射手段40を取り付ける位置は、変形時のシート13の略法線方向の像を、撮像手段に向けて反射する位置にすればよい。変形時のシート13の形状は、撓んだ場合のシート13の典型的な変形を既存の手段で測定するなどして推定すればよい。
【0086】
撮像手段20は、シート13と、反射手段40とを同時に撮影する。反射手段40を撮影することにより、シート13に力を加えた時に撓みのために撮像手段20に写りにくい部分の、シート13の略法線方向から見た模様を、反射手段40により反射した像を撮影する。
【0087】
図8は本実施形態における皮膚模様採取装置の一例の、シート13と、撮像手段20と、保持手段30と、反射手段40の配置を、斜め上方から見たものを表す図である。
【0088】
次に、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0089】
図9は、指1でシート13を撓ませて指紋を撮影する場合の、反射手段40による反射の例を表す正面図である。
【0090】
図10は、指1でシート13を撓ませた状態の本実施形態を斜め上方から見たものを表す図である。本実施形態における皮膚模様採取装置は撮像手段20を含むが、図10の目的は指1とシート13の撓みとの関係を示すことであるため、図10には、撮像手段20は記載していない。以下、図9に基づいて説明を行う。
【0091】
図9を参照すると、指をシート13に接触させ、図9の下方に力を加えると、シート13は撓む。撓んだシート13の中央付近は、撮像手段20が直接撮影する。撓んだシート13の端部分の法線と撮像手段20の光軸のなす角が大きいので、該端部分を撮像手段20が直接撮影した場合、該部分を、該部分の略法線方向から撮影した場合と比較して、歪みが大きくなる。
【0092】
シート13の歪みが大きい部分の指紋を、正面から見た指紋に補正する方法には、例えば、撮像手段20で撮影した画像からシート13の歪みを推定し、補正を行う方法がある。しかし、前記は支部分の歪みは大きいので、補正を行った画像の誤差は大きくなる。
【0093】
一方、図9に示すように、シート13の、撮像手段20で直接撮影した場合に歪みが大きくなる部分を、反射手段40によって反射し、該反射した像を撮像手段20で撮影することで、歪みの少ない指紋画像を得ることができる。シート13を直接撮影した指紋画像と、反射手段40によって反射された像とによって1枚の指紋画像を生成するには、シート13を直接撮影した部分と、反射手段40を撮影した部分とを、既存の画像合成方法でつなぎ合わせればよい。例えば、シート13と反射手段40を同時に撮影し、該撮影した画像から、シート13を直接撮影した部分と反射手段40を撮影した部分とをそれぞれ切り出してつなぎ合わせることで、一度の撮影で歪みの少ない指紋画像を得ることができる。このような指紋画像の合成やつなぎ合わせは、図6に示す皮膚模様照合装置200の画像補正手段60で行えばよい。
【0094】
本実施形態の指紋画像照合システム全体の動作は、図5に示す第2の実施形態紋画像照合システム全体の動作と同じであるので、説明を省略する。
【0095】
以上のように、本実施形態には、第2の実施形態の効果に加えて、指の広い範囲の指紋を採取して照合を行うことで、照合精度が向上するという顕著な効果がある。
【0096】
その理由は、保持手段30が可撓性のあるシート13を可動な形で保持する構成を持つことにより、シート13が撓まない場合や撓みにくい場合より広い範囲で、指がシート13に接触するからである。採取する指紋の範囲が狭い場合、該範囲に含まれる特徴が少ないため、照合精度が低下する。また、採取する指紋の範囲が狭い場合、照合を行う2つの指紋に、共通領域が無いか、あるいは少ない場合がある。この場合、同一指の指紋であっても異なる指であると判定される場合が多くなる。一方、採取される指紋の範囲が広い場合は、照合を行う2つの指紋画像の共通領域が広くなり、さらに、抽出される指紋の特徴が増加するので、照合の精度が向上する。また、指ではなく、掌など曲面を有する皮膚表面の模様を採取する際も同様な効果がある。
【0097】
また、本実施形態には、指の変形による歪みの少ない指紋を採取して照合を行うことで照合の精度が向上するという顕著な効果がある。
【0098】
その理由は、保持手段30が可撓性のあるシート13を可動な形で保持する構成を持つことにより、指紋採取の際指紋を採取する指をシート13に接触させてシート13に力を加えると、シート13は弱い力でも指の形に近い曲面になるよう撓むからである。一般的な指紋センサである平面上で変形しないセンサで指紋を採取する場合は、立体である指を平面である指紋センサに押しつけることによる変形が発生する。また、できるだけ広い範囲の指紋を採取しようとした場合、指をセンサに強く押しつける必要があるので、指の変形は大きくなる。また、指は同じ形に変形するわけではなく、力のかけ方によって変形の仕方が異なるので、指紋の変形は指紋画像毎にばらつく。従って、前記一般的な指紋センサで採取される指紋画像の場合、指の変形による指紋の変形のばらつきが大きくなる。一方、本実施形態の皮膚模様画像採取装置では、強い力でシート13に指を押しつける必要が無く、また、シート13が撓んで曲面状になる。従って、本実施形態の皮膚模様画像採取装置では、前記平面センサで指紋を採取する場合に発生する指の大きな変形は発生しない。よって、指の変形による変形の少ない指紋画像を採取することができる。指紋採取時の指の変形が少ない場合、同一指の指紋画像であれば、採取した指紋画像の差異が小さくなるので、照合精度が向上する。
【0099】
さらに、本実施形態には、シート13が曲面であっても、採取した指紋画像をセンサの正面から見た画像に補正する際の誤差が小さくなるので、照合精度が向上するという効果がある。
【0100】
その理由は、本実施形態は、シート13の像を反射させる反射手段40と、シート13と反射手段40の像を撮影する撮影手段20を構成に持つからである。シート13の、撮像手段20が直接撮影した場合にシート13の法線と撮像手段20の光軸のなす角が大きくなる部分を、反射手段40により反射させてから撮像手段20で撮影することにより、該部分の略法線方向からの像を取得することが可能になる。また、シート13の、撮像手段20が直接撮影した場合にシート13の略法線方向となる部分は、撮像手段20が直接撮影することで、該部分の略法線方向からの像を取得する。よって、反射手段40を構成に持つことで、シート13が曲面であっても、シート13の全ての部分で、シート13の略法線方向からの像を取得することができる。従って、採取した指紋画像をセンサの正面から見た画像に補正する際の誤差を小さくすることができるので、該指紋画像を使用した照合の照合精度が向上する。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0101】
図11は、本実施形態の指紋画像照合システムの構成を表す図である。以下、本実施形態と、第2の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0102】
図11を参照すると、本実施形態の指紋画像照合システムは、皮膚模様画像採取装置102と、皮膚模様照合装置200とを含む。
【0103】
本実施形態における皮膚模様照合装置200の構成は、第2の実施形態における皮膚模様照合装置200の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0104】
本実施形態と、第2及び第3の実施形態とを比較すると、皮膚模様画像採取装置102の構成が異なる。
【0105】
図12は、本実施形態における皮膚模様画像採取装置102の構成を表す正面図である。以下、本実施形態における皮膚模様画像採取装置102と第3の実施形態における皮膚模様画像採取装置101との相違点を中心に説明する。
【0106】
図12を参照すると、本実施形態は、切れ込みの入った2枚重ねのシート14と、撮像手段20と、シート14を保持する保持手段31と、反射手段40とを含む。
【0107】
撮像手段20と、反射手段40は、第3の実施形態と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0108】
シート14は、シート13に切り込みを入れて撓みやすくしたものである。
【0109】
図14はシート14の一例を表す平面図である。シート14は、図14に示すシート14の上辺付近の部分142で、縦方向の曲率が大きくなるように撓む。また、シート14の左辺付近の部分141及び右辺付近の部分143で、横方向の曲率が大きくなるように撓む。シート14は、上辺付近の部分と、左辺付近の部分で、前記のように撓むものであれば、図14に示す形状のものでなくてもよい。
【0110】
図13は、斜め上方から見た、皮膚模様画像採取装置102の一例であり、シート14、撮像手段20、保持手段30、反射手段40の配置関係を示す図である。
【0111】
図13に示す保持手段31は、3箇所でシート14を保持する保持手段の一例である。保持手段31の図13の形状に限られるものではない。保持手段31は、シート14が前記のように撓むようにシート14を保持するものであれば、保持手段31の形状や保持手段31がシート14を保持する場所の数は問わない。
【0112】
図14に示すシート14の例では、保持手段31は、シート14の左辺付近の部分141、上辺付近の部分142、右辺付近の部分143の部分を、可動な形で保持する。
【0113】
次に本実施形態の皮膚模様画像採取装置102の動作について説明する。
【0114】
図15は、本実施形態で指紋の撮影を行う場合の、シート14の変形を示す例である。シート14の形をわかりやすく表すため、図15には、撮像手段20、保持手段31、及び反射手段40を記載していない。
【0115】
図15を参照すると、指でシート14を押すと、左辺付近の部分141及び右辺付近の部分143の部分で、シート14は指に巻き付く方向に撓み、指の横側に接触する。一方、上辺付近の部分142の部分では、シート14は指の先端付近に接触するよう撓む。
【0116】
本実施形態の指紋画像照合システム全体の動作は、図5に示す第2の実施形態紋画像照合システム全体の動作と同じであるので、説明を省略する。
【0117】
以上のように、本実施形態には、第3の実施形態の効果に加えて、より広い範囲の指の先端部分の指紋を採取できるので、照合精度が向上するという効果がある。
【0118】
その理由は、シート14の上部と、シート14の左右の端部分で、撓みやすい方向が異なる構成を持つからである。そのため、図15のように、指の横部分の皮膚が広い範囲でシート14に接触するのと同時に、指の先端部分の皮膚が広い範囲でシート14に接触する。よって、本実施形態では、より広い範囲の指紋画像を採取することができ、照合を行う2つの指紋画像の共通領域が広くなり、さらに、抽出される指紋の特徴が増加するので、照合精度が向上する。
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0119】
図16は、本実施形態の指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。以下、本実施形態と、第2の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0120】
図16を参照すると、本実施形態の指紋画像照合システムは、皮膚模様画像採取装置103と、皮膚模様照合装置200とを含む。
【0121】
本実施形態の皮膚模様照合装置200の構成は、第3の実施形態に係る皮膚模様照合装置200の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0122】
本実施形態と、第3の実施形態とを比較すると、皮膚模様画像採取装置103の構成が異なる。
【0123】
図17は、本実施形態における皮膚模様画像採取装置103の構成を表す正面図である。以下、本実施形態における皮膚模様画像採取装置103と第3の実施形態における皮膚模様画像採取装置101との相違点を中心に説明する。
【0124】
図17を参照すると、皮膚模様画像採取装置103は、シート13と、撮像手段21と、シート13を保持する保持手段30とを含む。以下、本実施形態と第3の実施形態との差を中心に説明する。シート13及び保持手段30は、それぞれ、第4の実施形態におけるシート14及び保持手段31に置き換えてもよい。その場合は、以下の説明は本実施形態と第4の実施形態との差を中心にしたものとなる。
【0125】
シート13、保持手段30は、第3の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0126】
撮像手段21は、複数の方向からシート13を撮影する複数の撮像手段を含む。撮像手段21は、第3の実施形態において、シート13の、撮像手段20が撮影していた部分と、反射手段40が反射した像を撮像手段20が撮影していた部分を、それぞれ複数の撮像手段で直接撮影する。
【0127】
次に本実施形態の皮膚模様画像採取装置103の動作について図面を参照して説明する。
【0128】
図18は、指紋を採取する際の本実施形態における皮膚模様画像採取装置の構成を表す正面図である。
【0129】
図18を参照すると、撮像手段21のそれぞれの撮像手段は、指が接触することで撓んだシート13を、それぞれ異なる方方向から撮影する。撮像手段21のそれぞれの撮像手段は、できるだけ、撓んだシート13の法線方向からシート13を撮影できるよう設置する。撮像手段21のそれぞれの撮像手段を設置する位置は、あらかじめ、撓んだ場合のシート13の典型的な変形を測定して求めた、該変形時のシート13を略法線方向から撮影できる位置から選択して決めておけばよい。
【0130】
撮像手段21が含む複数の撮像手段で撮影したそれぞれの指紋画像は、既存の任意の画像合成方法で合成すればよい。
【0131】
本実施形態の指紋画像照合システム全体の動作は、図5に示す第2の実施形態の紋画像照合システム全体の動作と同じであるので、説明を省略する。
【0132】
以上のように、本実施形態には、第2の実施形態の効果に加えて、第3の実施形態と同様、指の変形による歪みの少ない指紋画像を採取して照合を行うことで、照合の精度が向上するという顕著な効果がある。
【0133】
その理由は、保持手段30が可撓性のあるシート13を可動な形で保持する構成を持つからである。シート13が可撓性を持ち撓むことで、指の変形が少なくなる。指の変形が少なくなると、得られる指紋画像では、指の変形による画像毎の指紋の差異も小さくなる。従って、本実施形態では、照合精度が向上する。
【0134】
本実施形態には、さらに、シート13が曲面であっても、採取した指紋画像をセンサの正面から見た画像に補正する際の誤差を小さくすることができるので、照合精度が向上するという効果がある。また、本実施形態には、指の広い範囲の指紋を採取して照合を行うことで照合の精度が向上するという顕著な効果がある。
【0135】
その理由は、撮像手段21の複数の撮像手段が、それぞれシート13の異なる部分の略法線方向から、シート13を撮影する構成を持つからである。略法線方向から撮影した複数の画像を合成することで、法線方向となす角の大きい方向から撮影した画像を略法線方向から撮影した画像に変換する際の誤差を小さくすることができる。本実施形態では、誤差の少ない指紋画像をもとに照合を行うので、照合の対象となる指紋画像同士の差異が少なくなり、照合精度が向上する。また、複数の撮像手段により、撓んだシート13の異なる部位を撮影することで、広い範囲の指紋画像を得ることができる。
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0136】
図19は、本実施形態の指紋画像照合システムの構成を表すブロック図である。以下、本実施形態と、第2の実施形態の相違点を中心に説明する。
【0137】
図19を参照すると、本実施形態の指紋画像照合システムは、皮膚模様画像採取装置104と、皮膚模様照合装置200とを含む。
【0138】
本実施形態における皮膚模様照合装置200の構成は、第3の実施形態に係る皮膚模様照合装置200の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0139】
本実施形態と、第3の実施形態とを比較すると、皮膚模様画像採取装置104の構成が異なる。
【0140】
図20は、本実施形態における皮膚模様画像採取装置104の構成の一例を表す図である。
【0141】
図20を参照すると、皮膚模様画像採取装置104は、シート13と、撮像手段22と、シート13を保持する保持手段30と、撮像手段が移動するための移動手段221とを含む。以下、本実施形態の皮膚模様画像採取装置104と第3の実施形態の皮膚模様画像採取装置101との相違点を中心に説明する。シート13及び保持手段30は、第4の実施形態におけるシート14及び保持手段31に置き換えてもよい。その場合は、以下の説明は本実施形態と第4の実施形態との差を中心にしたものとなる。
【0142】
シート13及び保持手段30は第3の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0143】
撮像手段22は、移動手段221によって、移動しながらシート13を様々な角度で撮影することが可能な撮像手段である。
【0144】
移動手段221は、撮像手段22が移動するためのものである。移動手段221は、例えばレールである。
【0145】
次に、本実施形態の皮膚模様撮影装置104の動作について図面を参照して説明する。
【0146】
図21は本実施形態における皮膚模様撮影装置で指紋画像を撮影する場合の構成の一例を表す正面図である。
【0147】
図21を参照すると、皮膚模様撮影装置104の撮像手段22は、移動手段221上を移動する。撮像手段22は移動手段221上を移動しながら、様々な角度からシート13を撮影する。図21ではレールである移動手段221上を撮像手段22が移動する場合の例を記載しているが、移動の方法はレールに限られない。また、移動の方向は一方向でなく、例えば直交する2方向でも、あるいは多方向でもよい。また、例えばロボットアーム等で撮像手段22を移動させてもよい。
【0148】
ただし、いずれの場合でも、撮像手段22は、異なる複数の位置から、シート13の略法線方向からシート13を撮影するよう移動できるものとする。撮像手段22は、曲面上に撓んだシート13の部分で、ある位置から撮影した場合に法線方向と撮像手段の光軸の方向とのなす角が大きくなる部分を、該部分を略法線方向から撮影できる場所に移動して、該部分を撮影するよう移動可能である。
【0149】
移動手段221によって移動する撮像手段22の制御は、皮膚模様照合装置の制御手段50が行えばよい。
【0150】
図21のように、指がシート13に接触して力を加えることで、シート13は撓んでいる。撮像手段22は移動しながら、指が接触し撓んだ状態のシート13の略法線方向から複数回撮影を行う。撮像手段22が撮影を行う位置は、あらかじめ、撓んだ場合のシート13の典型的な変形を測定して求めた、該変形時のシート13を略法線方向から撮影できる位置から選択して決めておけばよい。
【0151】
得られた複数の指紋画像から1枚の指紋画像を合成する場合、既存の方法でつなぎ合わせて1枚の画像を生成すればよい。つなぎ合わせた画像の生成は、縞模様画像照合装置の画像補正手段が行えばよい。
【0152】
撮影は静止画を複数回撮影してもよいし、動画として撮影してもよい。また、撮像手段には、面センサではなく、短冊形やライン型のセンサを用いて、撮影した短冊形あるいはライン型の画像あるいは動画から、既存の方法で指紋画像を合成する方法を用いてもよい。
【0153】
本実施形態の指紋画像照合システム全体の動作は、図5に示す第2の実施形態紋画像照合システム全体の動作と同じであるので、説明を省略する。
【0154】
以上のように、本実施形態には、第2の実施形態の効果に加えて、第3の実施形態と同様、指の変形による歪みの少ない指紋画像を採取して照合を行うことで、照合の精度が向上するという顕著な効果がある。
【0155】
その理由は、保持手段30が可撓性のあるシート13を可動な形で保持する構成を持つからである。シート13が可撓性を持ち撓むことで、指の変形が少なくなる。指の変形が少なくなると、得られる指紋画像では、指の変形による画像毎の指紋の差異も小さくなる。従って、本実施形態では、照合精度が向上する。
【0156】
さらに、本実施形態には、シート13が曲面であっても、採取した指紋画像をセンサの正面から見た画像に補正する際の誤差を小さくするので、照合精度が向上するという効果がある。また、本実施形態には、指の広い範囲の指紋を採取して照合を行うことで照合の精度が向上するという顕著な効果がある。
【0157】
その理由は、撮像手段22が移動することで、撮像手段22が、シート13の異なる複数の部分を、該部分の略法線方向から撮影する構成を有するからである。撮像手段22がある位置からシート13を撮影した場合に、法線方向と撮像手段の光軸の方向とのなす角が大きい部分があっても、撮像手段22は、移動することで該部分の略法線方向から撮影することができる。そのため、撮影した画像から生成した、指紋をシートの法線方向から見た時の指紋画像の小さくなる。また、撮像手段22を移動させて、撓んだシート13の異なる部位を撮影することで、広い範囲の指紋画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0158】
1 指
2 プリズム
3 光源
4 画像センサ
5 プリズムシート
11、12 シート
13 2枚重ねのシート
14 切れ込みの入った2枚重ねのシート
20、21、22 撮像手段
30、31 保持手段
40 反射手段
50 制御手段
60 画像補正手段
70 特徴抽出手段
80 照合手段
90 記憶手段
100、101、102、103 皮膚模様画像採取装置
141 左辺付近の部分
142 上辺付近の部分
143 右辺付近の部分
200 皮膚模様照合装置
221 移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう重ねた接触手段と、
前記接触手段の溝が形成されている面から出射される光を受けるよう配置された撮像手段と
を含み、
前記接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、前記撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、
屈折した前記光を撮像装置が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取する、
皮膚模様画像採取装置。
【請求項2】
前記接触手段の2枚の透明シートが可撓性を持ち、該接触手段に皮膚を接触させると、該皮膚を接触させる力と該皮膚の丸みとに応じて、該皮膚に接触したまま前記接触手段が撓むことを特徴とする
請求項1に記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項3】
固定せず可動な状態で、前記接触手段の端部を複数の位置で保持する保持手段
を含む請求項2に記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項4】
前記接触手段の、前記保持手段が保持する複数の位置の近傍の部分が、それぞれ独立して撓み、
前記接触手段は、少なくとも該接触手段の中央部分ではつながっている
ことを特徴とする請求項3に記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項5】
前記撮影手段と正対しない部分における、皮膚の凹凸による像を、前記撮像手段の方向に反射する反射手段
を含む請求項2乃至4のいずれかに記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項6】
前記撮像手段が、
前記接触手段と、前記反射手段により反射された前記接触手段の像とを同時に撮影する
請求項5に記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項7】
複数の前記撮像手段が、前記接触手段の異なる場所を、該場所の略法線方向から撮影する
請求項2乃至4のいずれかに記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項8】
前記撮像手段が、前記接触手段の複数の異なる場所を、該場所の略法線方向から撮影するように、前記撮像手段を動かす移動手段
を含む請求項2乃至4のいずれかに記載の皮膚模様画像採取装置。
【請求項9】
一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう重ねた接触手段と、
前記接触手段の溝が形成されている面から出射される光を受けるよう配置された撮像手段と
を含み、
前記接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、前記撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、
屈折した前記光を撮像装置が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取する、
皮膚模様画像採取装置と、
前記皮膚模様画像採取装置を制御し、該皮膚模様画像採取装置が採取した皮膚模様画像を該皮膚模様画像採取装置から読み出す制御手段と、
前記制御手段が読み出した前記皮膚模様画像の補正を行う画像補正手段と、
前記皮膚模様画像から、照合のための特徴を抽出して特徴データを生成する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段が生成した特徴データに基づき、皮膚模様の照合を行う照合手段と
を含む皮膚模様照合装置と、
を含む皮膚模様照合システム。
【請求項10】
一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう重ねた接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、
屈折した前記光を前記撮像手段が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取する、
皮膚模様採取方法。
【請求項11】
前記シートが可撓性を持ち、該シートに皮膚を接触させると、該皮膚を接触させる力と該皮膚の丸みとに応じて、該皮膚に接触したまま前記接触手段が撓むことを特徴とする
請求項10に記載の皮膚模様採取方法。
【請求項12】
保持手段により、固定せず可動な状態で、前記シートの端部を複数の位置で保持する
請求項11に記載の皮膚模様採取方法。
【請求項13】
前記シートの、前記保持手段が保持する複数の位置の近傍の部分が、それぞれ独立して撓み、
前記シートは、少なくとも該シートの中央部分ではつながっている
ことを特徴とする請求項12に記載の皮膚模様採取方法。
【請求項14】
前記シートの、前記撮影手段と正対しない部分における、前記シートの略法線方向の像を、反射手段により、前記撮像手段の方向に反射させる
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の皮膚模様採取方法。
【請求項15】
前記撮像手段により、
前記シートと、前記反射手段により反射された前記シートの像とを同時に撮影する
請求項14に記載の皮膚模様採取方法。
【請求項16】
複数の前記撮像手段により、前記シートの異なる場所を、該場所の略法線方向から撮影する
請求項11乃至13のいずれかに記載の皮膚模様採取方法。
【請求項17】
移動手段により、前記撮像手段が、前記シートの異なる場所を、該場所の略法線方向から撮影するように、前記撮像手段を動かす
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の皮膚模様採取方法。
【請求項18】
一方の面が略平坦であり、他方の面に略同一形状で略単一方向の複数の溝が形成されている2枚の透明シートを含み、一方の透明シートの略平坦な面と他方の透明シートの前記溝が形成されている面とが向き合うよう向きで重ねた接触手段が、該接触手段の2枚の透明シートのうち、撮像手段から遠い方の透明シートの、溝が形成されている面から出射する光を、前記撮像手段に近い方の透明シートにより、該透明シートの略法線方向に屈折させ、
屈折した前記光を前記撮像手段が撮影することで、前記撮像手段から遠い方の透明シートに接触させた皮膚の凹凸の模様を採取し、
採取した皮膚模様画像を皮膚模様画像採取装置によって読み取り、
読み取った前記皮膚模様画像を補正し、
前記皮膚模様画像から、照合のための特徴を抽出して特徴データを生成し、
生成した特徴データに基づき、皮膚模様の照合を行う照合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−150451(P2011−150451A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9747(P2010−9747)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】