説明

皮膚洗浄用シート

【課題】 泡立ちがきめ細かく、良好な洗浄性を発揮し、形態安定性にも優れた皮膚洗浄用シートを提供すること。
【解決手段】 複数枚の不織布2が重ね合わされ、これらの不織布(2−1,2−2)を連結する連結部3が設けられていると共に、この連結部以外では、隣接する不織布同士が摺動可能(4)に構成されていることを特徴とする皮膚洗浄用シート1aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立ちが良く物理的刺激の少ない皮膚洗浄用シートに関するものであり、例えば、ファンデーションや口紅等を顔面から除去するため、あるいは、創傷面やその周辺の皮膚等を洗浄するために、好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
起泡性洗浄剤は、良く泡立てて使うと、きめ細かな泡を形成するが、この微細な泡が汚れ付着部(例えば顔の毛穴の内部にまで)へ浸透するため洗浄効果が高まるといわれている。また、微細な泡の方が泡切れがよく、すすぎやすいため、肌への負担も避けられることからも、きめ細かな弾力性の泡ができるまで、充分に泡立てることが推奨されている。しかし、掌や指だけできれいに細かく泡立てるには時間がかかるため、泡立て用のスポンジ、パフ、ネット、クロス等が市販されている。これらの泡立て用商品に洗浄剤を染み込ませ、手で良く揉むことにより、空気と水と洗浄剤が混合・撹拌されて、きめ細かなメレンゲ状の泡が立つように構成されている。泡が立った後は、その泡を手に取って、手指を用いて洗顔するが、泡立て用商品自体(例えば、スポンジ等)で、顔や体を洗浄することも可能である。通常、これらの泡立て用商品は使い捨てではなく、使用後、泡立て用商品を水でよく洗浄することで、繰り返し使用が可能である。しかし、油性汚れであるファンデーション等が泡立て用商品に吸着されると、洗浄しても落ちにくいことから、使い捨ての泡立て用商品が所望されるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、親水性繊維、疎水性繊維および疎水性の接着性繊維を水流交絡法で交絡させた不織布が提案されている。この皮膚洗浄用不織布は、親水性繊維によって水系洗浄剤の保持性を確保すると共に、疎水性繊維によって湿潤時の形態安定性や不織布の反発性を確保して泡立ち性を高めるというものである。しかし、この皮膚洗浄用不織布は、両手で揉んだり、片手の中に不織布を入れて、掌を握ったり開いたりすることで、泡立たせようとするものであり、指だけできめ細かな泡を素早く作ることは難しく、洗浄効果に改善の余地があった。
【0004】
一方で、褥瘡等の創傷面やその周辺の皮膚を清拭するためにも、従来の医療用の綿製ガーゼ等より肌触りの柔らかい不織布が用いられるようになってきた。これらのガーゼや不織布には清拭時に雑菌等が付着するため、使い捨てが便利である。そして、水系洗浄剤を用いて清拭する際に利用可能な使い捨ての皮膚洗浄用シートが求められている。この場合、皮膚洗浄用シートには、きめ細かな泡を素早く作れること、片手の指だけで泡を作れること(両手を泡だらけにすると、清拭作業がやりにくい)、小面積の皮膚や皺の間等に入り込める柔軟性を有していること、等が必要である。しかし、上記特許文献1に記載の皮膚洗浄用不織布は、きめ細かな泡を片手の指だけで作れるようには構成されていないため、充分な泡立ちを得るには大面積の不織布と大きな労力が必要であった。
【特許文献1】特開2003−38381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、きめ細かな泡を素早く片手の指だけで作れ、泡立ちと同時に片手だけで皮膚の洗浄・清拭を行うことができ、かつ、小面積の皮膚や皺の間等の細かい部位も確実に拭き取ることのできる皮膚洗浄用シートの提供を課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の皮膚洗浄用シートは、複数枚の不織布が重ね合わされ、これらの不織布を連結する連結部が設けられていると共に、この連結部以外では、隣接する不織布同士が摺動可能に構成されているところに特徴を有している。上記連結部は、線状、点状、面状、格子状、あるいはこれらが組み合わされた形状をしていることが好ましい。また、皮膚洗浄用シートが、幅20〜100mm、長さ50〜200mmの略矩形状である構成は、本発明の一実施態様である。
【0007】
上記連結部は、重なり合う2枚の不織布における幅方向または長手方向の端縁のうちのを一端縁を連結するものであってもよい。上記連結部が、皮膚洗浄用シートの長さと略同一であると、側面視が略V字状となるように折り畳まれている皮膚洗浄用シートや、側面視が略W字状となるように折り畳まれている皮膚洗浄用シートを、簡単に得ることができる。
【0008】
上記連結部は、重ね合わされた全ての不織布を厚み方向に連結するものであってもよい。この構成であれば、積層された不織布が連結部でしっかりと固定されるため、泡立て中の形態保持性に優れている。
【0009】
上記不織布は、親水性繊維製の中間層と、疎水性繊維製の表層および裏層を有する少なくとも3層構造であることが好ましい。中央の親水性繊維製中間層により水分や水系洗浄剤が良好に保持され、そして疎水性繊維製の表層および裏層により湿潤時でもしっかりと反発して丸まりが防止される。また、泡立て中は、親水性繊維製中間層に含まれた水系洗浄剤が、疎水性繊維製の表層および裏層を通過する際に、疎水性繊維間の空気と混合されるため、泡立ち性が一層良好となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る皮膚洗浄用シートは、不織布が摺動可能に積層されており、かつ、連結部においては重ね合わされた不織布同士が連結されているため、洗浄剤を染みこませ、重なり合った不織布を摺り合わせて泡立て操作(摺動操作)を行うだけで、きめ細かな泡を素早く作ることができる。また、連結部の存在により、洗浄・清拭中、各層の不織布がバラバラになることがなく、シートの形態安定性にも優れるものである。摺動操作は片手の指だけで可能なため、泡立て作業をしない手の方を濡らさずに済み、自由に他の作業を行うことができる。さらに、安価な不織布製であるので、使い捨てが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る皮膚洗浄用シートに関して、例を示す図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0012】
図1(a)は本発明の一実施例である皮膚洗浄用シート1aを示す斜視説明図であり、図1(b)は、他の実施例である皮膚洗浄用シート1bを示す斜視説明図である。皮膚洗浄用シート1aは、上層の不織布2−1と下層の不織布2−2が積層されており、重なり合う上下2枚の不織布2−1および2−2における長手方向の右端縁が連結部3である。すなわち、この皮膚洗浄用シート1aは、平面視が、幅L1、長さL2の略矩形状で、側面視が略V字状となっている。連結部3以外の上下に隣接する不織布2−1および2−2は、摺動可能に構成されている(摺動可能部4)。この連結部3は、1枚の不織布を折り返したときに形成される折返し線として、あるいは、別体の2枚の不織布の長手方向一端縁を接合して形成することができる。一方、皮膚洗浄用シート1bは不織布2−1、2−2、2−3、2−4が4層積層されてなり、平面視が、幅L1、長さL2の略矩形状で、側面視が略W字状に形成されている。連結部3は、上下に重なり合う不織布2同士の長手方向の一端縁を左右交互に接合するように構成されている。すなわち、最上層の不織布2−1とその下層の不織布2−2では、右端縁が連結部3となり、不織布2−2と2−3では左端縁が連結部3となり、不織布2−3と2−4では右端縁が連結部3である。この連結部3は、1枚の不織布を折り返したときに形成される折返し部であってもよく、4枚の不織布のうちの重なり合う上下2枚の不織布の一端縁を左右交互に接合して形成されたものでもよい。
【0013】
上記皮膚洗浄用シート1aまたは1bでは、連結部3が不織布の一端にのみ形成されているため、不織布の摺動可能部4の面積が広く取れ、泡立て作業が楽にできるという利点がある。また、製造も容易である。上記の各皮膚洗浄用シート1aまたは1bにおいては、その幅L1は20〜100mm程度、長さL2は50〜200mm程度が、片手でも扱いやすい点で好ましい。
【0014】
本発明の皮膚洗浄用シートでは、連結部は、重ね合わされた全ての不織布をその厚み方向に連結するものであってもよい。例えば、図2(a)には、両側縁部に点線状の連結部3が設けられた皮膚洗浄用シート1cの平面図を、図2(b)にはその斜視図を示した。斜視図からわかるように、この皮膚洗浄用シート1cは、3枚の不織布2−1,2−2,2−3が重ね合わされ、その左右両側縁近傍に、点線状の連結部3、3が設けられている。この連結部3は、3枚の不織布をその厚み方向に連結するものであり、左右の連結部3の間の不織布は、摺動可能部4となっている。もちろん積層される不織布は、何枚でも構わない。
【0015】
また、図3(a)には、点状の連結部3を有する皮膚洗浄用シート1dを、(b)には、粗い碁盤目状の連結部3を有する皮膚洗浄用シート1eを示した。これらの連結部3も、積層された全ての不織布をその厚み方向に連結するものであることが好ましい。皮膚洗浄用シート1dでは、点状の連結部3で拘束されている以外の不織布は摺動可能部4であり、皮膚洗浄用シート1eでは、碁盤目状の連結部3の碁盤目(格子)の中や碁盤目周囲が摺動可能部4である。
【0016】
積層された全ての不織布をその厚み方向に連結する連結部を有する皮膚洗浄用シート1c〜1eでは、連結部が各層の不織布をしっかりと拘束するため、不織布を摺動させて泡立てている間に、各層の不織布がバラバラになることがなく、シートとしての形態安定性に優れている。
【0017】
上記各皮膚洗浄用シート1c〜1eにおいても、その幅は20〜100mm程度、長さは50〜200mm程度が好ましい。なお、皮膚洗浄用シートの形状は特に矩形状または正方形状に限定されるものではなく、円形、楕円形、砂時計型、羽子板型等、用途に応じて適宜変形することができる。また、不織布の積層枚数も2枚以上であれば特に限定されないが、皮膚洗浄用シートの厚みが厚くなりすぎると摺動操作がしづらくなるため、10枚程度以下、より好ましくは5枚程度以下に抑えるとよい。
【0018】
具体的な泡立て方法としては、洗浄剤および必要により水を皮膚洗浄用シートの摺動可能部4に染みこませ、シートの下に人差し指(必要により中指、薬指、小指も)を、シートの上に親指をあてがい、これらの指の腹同士をこすり合わせるようにして、上下の不織布同士を摺動させ、洗浄剤と空気とを不織布の繊維間の空隙を利用して混合すればよい。本発明の皮膚洗浄用シートは、洗浄に適した形状と形態安定性を有しているので、充分泡立った後は、すぐに皮膚の洗浄・清拭に取りかかることができる。
【0019】
本発明の皮膚洗浄用シートに用いることのできる不織布は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、アクリル等の疎水性繊維や、レーヨン、綿、アセテート等の親水性繊維からなる不織布が利用可能である。これらの複合繊維を用いたものや、混繊不織布等も利用可能である。製法的には、スパンボンド、メルトブロー、SMS、サーマルボンド、スパンレース(水流絡合)等の各製法で得られる不織布が挙げられる。よりきめ細やかな泡を立てるには、不織布の構成繊維が細い方が望ましく、分割繊維を用いることがより好ましい。
【0020】
上記不織布は1層構造のものも用い得るが、上記親水性繊維製の中間層を疎水性繊維製の表層と裏層で挟んだ3層構造の不織布を、皮膚洗浄用シートの構成素材の一部または全部として用いることが好ましい。皮膚洗浄用シートに滴下された洗浄剤が親水性繊維からなる中間層に速やかに染みこみ、摺動作業(泡立て作業)のときに、疎水性繊維性の表層や裏層を通過しながら繊維間の空隙において空気と混合されて、きめ細かな泡が速やかに形成されるからである。
【0021】
上記3層構造の中間層の親水性繊維として特にレーヨン繊維を用いた場合には皮膚洗浄用シートがしなやかとなるので好ましい。また表層や裏層の疎水性繊維としては、上記ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維が好ましい。
【0022】
不織布は、1層構造や複層構造のいずれの不織布においても、目付10〜60g/m2(より好ましくは20〜50g/m2)程度が好ましい。なお、皮膚洗浄用シートにおける各層の不織布は、同じ素材・構成のもの、異なる素材・構成のもの、いずれでもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の皮膚洗浄用シートは、きめ細かな泡を速やかに立てることができ、化粧落としに用いることができる。また、片手で簡単に泡立てることができ、使い捨て可能なことから、褥瘡等の創傷面やその周辺の皮膚を清拭するための医療用の皮膚洗浄用シートとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の皮膚洗浄用シートの一実施例を示す斜視説明図、(b)は他の実施例を示す斜視説明図である。
【図2】(a)は、本発明の皮膚洗浄用シートの他の実施例を示す平面図で、(b)はその斜視説明図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の皮膚洗浄用シートの他の実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1a〜1e 皮膚洗浄用シート
2 不織布
3 連結部
4 摺動可能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の不織布が重ね合わされ、これらの不織布を連結する連結部が設けられていると共に、この連結部以外では、隣接する不織布同士が摺動可能に構成されていることを特徴とする皮膚洗浄用シート。
【請求項2】
上記連結部が、線状、点状、面状、格子状、あるいはこれらが組み合わされた形状をしているものである請求項1に記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項3】
幅20〜100mm、長さ50〜200mmの略矩形状である請求項1または2に記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項4】
上記連結部は、重なり合う2枚の不織布における幅方向または長手方向の端縁のうちの一端縁を連結するものである請求項3に記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項5】
上記連結部が、皮膚洗浄用シートの長さと略同一である請求項4に記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項6】
側面視が略V字状となるように折り畳まれている請求項5に記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項7】
側面視が略W字状となるように折り畳まれている請求項5に記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項8】
上記連結部が、重ね合わされた全ての不織布を厚み方向に連結するものである請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚洗浄用シート。
【請求項9】
上記不織布は、親水性繊維製の中間層と、疎水性繊維製の表層および裏層を有する少なくとも3層構造である請求項1〜8のいずれかに記載の皮膚洗浄用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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