説明

盗難監視システム

【課題】 機器の電源がOFFとなった場合でも、確実に盗難を監視することができ、しかも、簡単な構成で製造コストを低減させることのできる盗難監視システムを提供する。
【解決手段】 コンピューター2に設けられ通信手段を介してプロジェクター1に確認信号を出力する監視制御部18と、プロジェクター1に設けられプロジェクター1の電源がONとなっている状態で確認信号を受信した場合にコンピューター2に応答信号を出力する送受信データ制御部13と、プロジェクター1の電源がOFFとなっている状態で、コンピューター2から送信される確認信号をそのままコンピューター2に返すように切り換えるリレー回路12と、を備え、監視制御部18により、プロジェクター1から応答信号または確認信号を受信したときにプロジェクター1が存在していると判断するとともに、応答信号または確認信号を受信しないときに、プロジェクター1が存在していないと判断するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は盗難監視システムに係り、特に、盗難監視機器の電源がOFFとなっている場合でも、盗難監視機器が存在するか否かを確実に判断することを可能とした盗難監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、企業内で、プロジェクターやプリンターなどコンピューターに接続して使用する周辺機器が普及しており、これら周辺機器の盗難の防止を図る必要性が高まってきている。
【0003】
そのため、従来から、送信データおよびリンクパルスの消失を検出し、機器のネットワークケーブルが取り外されたことを検知した場合に、警報を発するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、その他の技術として、ネットワークを介して映像信号の入力などを行うためのネットワークユニットを有効活用して振動アラーム装置からのアラーム作動を示す出力に基づいて、その旨を示す電子メールをネットワークユニットからあらかじめ設定された送信先に送信するようにして、ユーザなどが近くにいないときに盗難が発生してもユーザなどに通知することにより、盗難に早急に対応することができるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−330663号公報
【特許文献2】特開2007−249737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、停電などにより周辺機器の電源がOFFとなった場合にも、送信データが消失してしまい、実際には盗難されていないにもかかわらず、警報が発せられるおそれがあるという問題を有している。また、特許文献2に記載の技術においては、振動アラーム装置により、機器の振動を検知して機器が盗難されたことを検知するものであるため、誤動作が生じやすいという問題を有している。また、前記特許文献1および特許文献2に記載の技術では、いずれの場合も適正に盗難を監視することはできるが、システムが複雑になり、設置コストが高くなってしまうという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、機器の電源がOFFとなった場合でも、確実に盗難を監視することができ、しかも、簡単な構成で製造コストを低減させることのできる盗難監視システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る盗難監視システムは、コンピューターと、盗難監視機器とを備え、前記コンピューターと前記盗難監視機器とが、通信手段を介して通信可能な盗難監視システムであって、前記コンピューターは、前記通信手段を介して前記盗難監視機器に確認信号を出力する監視制御部を備え、前記盗難監視機器は、前記盗難監視機器の電源がONとなっている状態で前記確認信号を受信した場合に、前記コンピューターに応答信号を出力する送受信データ制御部と、前記盗難監視機器の電源がOFFとなっている状態で、前記コンピューターから送信される前記確認信号を、そのまま前記コンピューターに返すように切り換える切り換え手段と、を備え、前記監視制御部は、前記盗難監視機器に前記確認信号を出力した後、前記盗難監視機器から前記応答信号または前記確認信号を受信した場合に、前記盗難監視機器が存在していると判断するとともに、応答信号または確認信号を受信しない場合に、前記盗難監視機器が存在していないと判断することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、盗難監視機器の電源がONとなっている状態で、コンピューターからの確認信号を受信した場合には、送受信データ制御部によりコンピューターに応答信号を出力するとともに、盗難監視機器の電源がOFFとなっている状態で、コンピューターからの確認信号を受信した場合は、切り換え手段を切り換えることにより、確認信号をそのままコンピューターに返すようにしており、監視制御部は、盗難監視機器に確認信号を出力した後、盗難監視機器から応答信号または確認信号を受信したときに、盗難監視機器が存在していると判断するとともに、応答信号または確認信号を受信しないときに、盗難監視機器が存在していないと判断するようにしているので、盗難監視機器の電源がONの状態のみならず、例えば、停電などにより電源がOFFの状態でも、盗難鑑識が存在しているか否かを確実に判断することができる。しかも、構成が簡単で、大掛かりなシステムが不要となるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0010】
また、前記盗難監視システムにおいて、前記コンピューターは、前記監視制御部によって前記盗難監視機器が存在しないと判断された場合に、その旨を報知する報知手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、報知手段を備えているので、監視制御部により盗難監視機器が存在しないと判断した場合に、コンピューターの周辺の利用者に対して確実に盗難があった旨を報知することができる。
【0012】
また、前記盗難監視システムにおいて、前記盗難監視機器は、プロジェクターであることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、盗難監視機器がプロジェクターであるので、コンピューターから離れた位置に設置されたプロジェクターの盗難を確実に監視することができる。
【0014】
また、前記盗難監視システムにおいて、前記切り換え手段は、リレー回路であることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、切り換え手段をリレー回路としているので、盗難監視機器の電源のON、OFF動作に連動してリレー回路の通電および通電解除を行うことにより、盗難監視機器の電源がOFFになった場合でも、確実に通信手段の切り換えを行うことが可能となる。
【0016】
また、前記盗難監視システムにおいて、前記通信手段は、LANによる通信手段またはRS−232Cによる通信手段であることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、通信手段を、LANによる通信手段またはRS−232Cによる通信手段としているので、既存の通信手段を用いて盗難監視機器の盗難監視を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る盗難監視システムの実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る盗難監視システムの実施形態におけるプロジェクターの電源がONの状態を示す接続部部分の構成図である。
【図3】本発明に係る盗難監視システムの実施形態におけるプロジェクターの電源がOFFの状態を示す接続部部分の構成図である。
【図4】本発明に係る盗難監視システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る盗難監視システムの実施形態を示す概略構成図であり、本実施形態においては、盗難監視機器としてプロジェクターを用いた場合について説明する。
【0021】
本実施形態においては、プロジェクター1には、コンピューター2が通信手段として機能するケーブル3を介して接続されており、プロジェクター1には、コンピューター2と接続するための接続部4が設けられている。図2および図3に示すように、この接続部4には、コンピューター2からの信号を受信する受信用ポート5およびコンピューター2に信号を送信する送信用ポート6がそれぞれ設けられている。
【0022】
また、受信用ポート5には、受信用接続配線7が接続されており、送信用ポート6には、送信用接続配線8が接続されている。また、接続部4には、本実施形態においては、3つの端子9が設けられており、受信用接続配線7および送信用接続配線8は、2つの端子9にそれぞれ接続されている。他の1つの端子9には、送信データ配線10が接続されており、受信用接続配線7の中途部には、受信データ配線11が接続されている。
【0023】
また、端子9には、切り換え手段としてのリレー回路12が設けられており、リレー回路12は、送信用接続配線8と受信用接続配線7とを接続する状態と、送信用接続配線8と送信データ配線10とを接続する状態とを切り換えるように構成されている。そして、本実施形態においては、リレー回路12は、リレー回路12に通電している状態では、図2に示すように、送信用接続配線8と送信データ配線10とを接続する状態に保持されるとともに、リレー回路12への通電を解除した状態では、図3に示すように、送信用接続配線8と受信用接続配線7とを接続する状態に保持するように構成されている。
【0024】
プロジェクター1には、送受信データ制御部13が設けられており、送受信データ制御部13には、受信データ配線11および送信データ配線10がそれぞれ接続されている。送受信データ制御部13は、受信データ配線11を介してコンピューター2から送られる受信データを受信するとともに、送信データ配線10を介して送信データをコンピューター2に送信するように構成されている。
【0025】
また、プロジェクター1には、電源部14が設けられており、この電源部14は、プロジェクター1に入力される画像情報の台形補正、画質調整、拡大・縮小調整、シャープネス調整などを行う画像処理装置15、液晶パネル16、液晶パネル16を照明するための照明装置17などに電源を供給するものである。さらに、本実施形態においては、電源部14は、リレー回路12に電源を供給するように構成されている。そして、本実施形態においては、リレー回路12は、リレー回路12に通電した状態では、送信用接続配線8と送信データ配線10とを接続する状態に保持されるとともに、リレー回路12への通電を解除した状態では、送信用接続配線8と受信用接続配線7とを接続する状態に保持するように構成されている。
【0026】
なお、リレー回路12に電源部14からリレー回路12に通電されない状態としては、例えば、メイン電源がOFFとなっている状態およびメイン電源はONとなっているが他の機器への通電がOFFとなっているスタンバイ状態がある。
【0027】
また、コンピューター2には、監視制御部18が設けられており、監視制御部18は、プロジェクター1に対して確認信号を送信するとともに、プロジェクター1から送信される応答信号を受信するように構成されている。監視制御部18は、プロジェクター1から送信される応答信号または確認信号を受信した場合に、正常にプロジェクター1が接続されているものと判断し、応答信号または確認信号のいずれも受信しない場合は、プロジェクター1が接続されていないものと判断するように構成されている。
【0028】
すなわち、プロジェクター1のリレー回路12に電源部14から通電されており、送信用接続配線8と送信データ配線10とが接続されている状態で、コンピューター2の監視制御部18からプロジェクター1に確認信号が送信されると、確認信号が受信データ配線11を介して送受信データ制御部13に送られるものである。そして、確認信号が受信されると、送受信データ制御部13は、一定時間内に応答信号を送信し、この応答信号は、送信データ配線10および送信用接続配線8を介してコンピューター2に送信され、コンピューター2により受信されるように構成されている。
【0029】
また、プロジェクター1のリレー回路12に電源部14から通電されておらず、送信用接続配線8と受信用接続配線7とが接続されている状態で、コンピューター2の監視制御部18からプロジェクター1に確認信号が送信されると、確認信号が受信データ配線11を介して送られ、この確認信号は、送信用接続配線8を介してそのままの状態で、コンピューター2に送信され、コンピューター2により受信されるように構成されている。
【0030】
また、コンピューター2には、監視制御部18により確認信号または応答信号が受信されず、プロジェクター1が接続されていないものと判断された場合に、音声あるいはディスプレイへの表示によりプロジェクター1が接続されていない旨の報知を行う報知部19が設けられている。
【0031】
なお、コンピューター2とプロジェクター1とを接続するケーブル3を介した通信としては、例えば、LANによる通信、RS−232Cによる通信などが考えられる。
【0032】
次に、前述の盗難監視システムの作用について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、コンピューター2の監視制御部18から確認信号をプロジェクター1に送信する(ステップS1)。このとき、プロジェクター1のリレー回路12に電源部14から通電されており、送信用接続配線8と送信データ配線10とが接続されている状態では、コンピューター2の監視制御部18からプロジェクター1に確認信号が送信されると、確認信号が送受信データ制御部13に送られ、送受信データ制御部13により、一定時間内に応答信号がコンピューター2に送信される。そして、コンピューター2の監視制御部18により設定時間内にプロジェクター1からの送信があったか否か判断し(ステップS2)、この受信した信号が応答信号か否か判断する(ステップS3)。そして、応答信号が受信された場合には(ステップS3:YES)、プロジェクター1が接続されていると判断する(ステップS4)。
【0034】
また、プロジェクター1のリレー回路12に電源部14から通電されておらず、送信用接続配線8と受信用接続配線7とが接続されている状態では、コンピューター2の監視制御部18からプロジェクター1に確認信号が送信されると、確認信号は、送信用接続配線8を介してそのままの状態で、コンピューター2に送信される。そして、コンピューター2の監視制御部18により、応答信号が受信されず(ステップS3:NO)、確認信号を受信したか否か判断し(ステップS5)、確認信号が受信された場合には(ステップS5:YES)、プロジェクター1が接続されていると判断する(ステップS4)。
【0035】
一方、設定時間内に応答信号を受信しなかった場合(ステップS2:NO)、および確認信号を受信しなかった場合には(ステップS5:NO)、プロジェクター1が接続されていないものと判断し(ステップS6)、報知部19によりその旨報知する(ステップS7)。
【0036】
以上述べたように、本実施形態においては、プロジェクター1の電源部14がONとなっている状態で、コンピューター2からの確認信号を受信した場合には、送受信データ制御部13によりコンピューター2に応答信号を出力するとともに、プロジェクター1の電源部14がOFFとなっている状態で、コンピューター2からの確認信号を受信した場合は、リレー回路12を切り換えることにより、確認信号をそのままコンピューター2に返すようにしており、監視制御部18は、プロジェクター1から応答信号または確認信号を受信したときに、プロジェクター1が存在していると判断するとともに、応答信号または確認信号を受信しないときに、プロジェクター1が存在していないと判断するようにしているので、プロジェクター1の電源部14がONの状態のみならず、例えば、停電などにより電源がOFFの状態でも、プロジェクター1が存在しているか否かを確実に判断することができる。しかも、構成が簡単で、大掛かりなシステムが不要となるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
なお、前記実施形態においては、コンピューター2に対して1台のプロジェクター1が接続されている場合について説明したが、例えば、LANによる通信でコンピューター2に対して複数のプロジェクター1が接続されている場合には、各プロジェクター1に対してTCP/IPアドレスを指定しておき、このTCP/IPアドレスを用いて各プロジェクター1に対して監視制御部18から確認信号を出力するようにすれば、電源部14がONとなっている状態であれば、複数のプロジェクター1の監視を行うことが可能となる。
【0038】
また、前記実施形態においては、本発明を盗難監視機器としてプロジェクターに適用した場合について説明したが、その他、LANによる通信、RS−232Cによる通信により通信することができる機器であれば、例えば、ノート型パソコン、プリンター、スキャナーなどいずれの機器に適用することができる。
【0039】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 プロジェクター、2 コンピューター、3 ケーブル、4 接続部、5 受信用ポート、6 送信用ポート、7 受信用接続配線、8 送信用接続配線、10 送信データ配線、11 受信データ配線、12 リレー回路、13 送受信データ制御部、14 電源部、15 画像処理装置、16 液晶パネル、17 照明装置、18 監視制御部、19 報知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターと、盗難監視機器とを備え、前記コンピューターと前記盗難監視機器とが、通信手段を介して通信可能な盗難監視システムであって、
前記コンピューターは、
前記通信手段を介して前記盗難監視機器に確認信号を出力する監視制御部を備え、
前記盗難監視機器は、
前記盗難監視機器の電源がONとなっている状態で前記確認信号を受信した場合に、前記コンピューターに応答信号を出力する送受信データ制御部と、
前記盗難監視機器の電源がOFFとなっている状態で、前記コンピューターから送信される前記確認信号を、そのまま前記コンピューターに返すように切り換える切り換え手段と、
を備え、
前記監視制御部は、前記盗難監視機器に前記確認信号を出力した後、前記盗難監視機器から前記応答信号または前記確認信号を受信した場合に、前記盗難監視機器が存在していると判断するとともに、応答信号または確認信号を受信しない場合に、前記盗難監視機器が存在していないと判断することを特徴とする盗難監視システム。
【請求項2】
前記コンピューターは、前記監視制御部によって前記盗難監視機器が存在しないと判断された場合に、その旨を報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の盗難監視システム。
【請求項3】
前記盗難監視機器は、プロジェクターであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の盗難監視システム。
【請求項4】
前記切り換え手段は、リレー回路であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の盗難監視システム。
【請求項5】
前記通信手段は、LANによる通信手段またはRS−232Cによる通信手段であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の盗難監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203767(P2011−203767A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67506(P2010−67506)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】