説明

盛土密度の管理方法

【課題】 盛土の形状に拘らず、締固め程度を高精度、且つリアルタイムに管理することができる盛土密度の管理方法を提供する。
【解決手段】 盛土密度の管理方法は、盛土材料の含水比を測定し、含水比を用いて、締固め層を形成するために必要な盛土材料の質量を演算で求める質量演算工程と、盛土材料を敷き均す以前の地表面形状を基面形状として計測する基面形状計測工程と、前記質量の盛土材料を所定範囲に敷均し、締固め機械により所定程度まで締固めた後に、立体計測手段により締固め層の表面形状を締固め形状として計測する締固め形状計測工程と、締固め形状、表面形状、及び質量演算工程で求めた盛土材料の質量を用いて締固め層の密度を演算し、締固められた盛土が所定密度に達したか否かを評価する盛土密度評価工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土密度の管理方法に関し、さらに詳細には、所定量の盛土材料を所定範囲に敷均して締固めることにより所定密度の締固め層が得られるように盛土密度を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土密度を計測するための慣用方法としては、締固め層から試験体を採取して密度を計測する方法、締固め層に形成した穴に砂を充填して密度を計測する砂置換による方法、RIによる密度測定方法、平板載荷試験、打撃による密度管理等がある。
しかしながら、上述の慣用方法では、仕上がり盛土面を破壊しないと計測できなかったり、また抜取り試験となるため盛土量にあわせて数箇所の計測が必要となり時間が掛かり過ぎたり、さらには、斜面上や凹凸のある仕上がり面では密度計測が困難であるといった欠点がある。
【0003】
また盛土密度をリアルタイムに計測する慣用技術としては、締固め機械の沈下量を計測することによる現状密度の確認方法や、レーザーレベル計測器により沈下量を測定する方法がある。しかしながら、上述した従来のリアルタイム計測技術では、予備転圧試験によるデータを使用した盛土沈下量による密度算定であるため、現場条件により計測結果の正確性に欠け、仕上がり目標程度にしか使用することができないといった欠点がある。
【0004】
上述したもの以外では、特許文献1に、GPSシステムを用いた盛土の締固め管理方法が記載されている。これは、GPS受信機を備えた基準局と、基準局にデータリンクするGPS受信機を備えた転圧作業車と、締固め作業車からの情報を受信する受信局とからなり、締固め作業車には締固め密度センサを含む密度測定装置が設けられる。この密度測定装置による計測結果を位置データと共に受信局に送信し、計測結果及び位置データをデータ処理することにより、締固め度合いを求めるものである。
そして、特許文献1には、密度測定装置として採用可能な手段が、RI式水分・密度測定装置、電磁波式締固め度測定装置、及び加速度計により計測した波形から締固め程度を推定する手法である旨が記載されている。
しかしながら、何れの密度測定装置を締固め作業車に設けたとしても、これらによって得られるデータにはバラツキが多く、そのようなデータから推定される締固め程度の精度も悪く、実用化が困難であるという欠点がある。
【0005】
また特許文献2には、締固め施工機械における振動ローラの振動加速度の時間変化を示す加速度波形を用いて地盤応答値を演算し、この演算値から締固め施工エリアの締固め程度の実測値を推定する手法が記載されているが、この場合にも、締固め密度は振動ローラの振動加速度により間接的に求められるものであるため、信頼性に関して課題が残るものであった。
【特許文献1】特許第3500905号公報
【特許文献2】特許第3542780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような現状を鑑みて提案されたものであり、盛土の形状に拘らず、締固め程度を高精度、且つリアルタイムに管理することができる盛土密度の管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、以下に記載する(1)乃至(3)の手段により上記課題が解決される。
【0008】
(1)所定量の盛土材料を保管場所から締固め施工エリアに搬送し、締固め施工エリアの所定範囲に盛土材料を敷均した後に、盛土材料を締固めることにより所定密度の締固め層が得られるように盛土密度を管理する方法であって、前記保管場所において盛土材料の含水比を測定し、当該含水比を用いて、前記所定範囲に前記締固め層を形成するために必要な盛土材料の質量を演算で求める質量演算工程と、盛土材料を敷き均す以前に、三次元レーザースキャナ等の立体計測手段により前記締固め施工エリアの所定範囲の地表面形状を基面形状として計測する基面形状計測工程と、前記質量の盛土材料を前記所定範囲に敷均し、締固め機械により所定程度まで締固めた後に、前記立体計測手段により締固め層の表面形状を締固め形状として計測する締固め形状計測工程と、当該締固め形状、前記表面形状、及び前記質量演算工程で求めた盛土材料の質量を用いて締固め層の密度を演算し、締固められた盛土が所定密度に達したか否かを評価する盛土密度評価工程とを含み、締固められた盛土が所定密度に達した場合には、他の締固め層を形成する工程に進み、所定密度に達していない場合には、所定密度に達するまで締固め工程と前記盛土密度評価工程とを繰り返すことを特徴とする盛土密度の管理方法。
【0009】
(2)締固め施工エリアの所定範囲に締固め層を形成するのに先立って、試験施工として、前記盛土材料を締固め施工エリアに敷き均して締固めることにより締固め層を形成し、当該締固め層から採取した試験体を測定して実測値としての密度を求め、且つ、立体計測手段により求めた締固め層を形成する前後の表面形状と盛土材料の質量とから演算値としての密度を求め、これら実測値と演算値とから補正係数を求め、前記盛土密度評価工程における締固め層の密度の演算に補正係数を使用することを特徴とする前記(1)に記載の盛土密度の管理方法。
【0010】
(3)前記質量演算工程において求めた質量の盛土材料を前記所定範囲に敷均すことにより敷均し層を形成した後、且つ敷均し層を締固める以前に、敷均した盛土材料の表面形状を立体計測手段により敷均し形状として計測する敷均し形状計測工程を実施し、当該敷均し形状、前記表面形状、及び前記質量演算工程で求めた盛土材料の質量を用いて敷均し層の密度を演算して求め、当該敷均し層の演算密度を用いて、他の締固め層を形成する工程における盛土材料の敷均し高さの目標値を算出することを特徴とする前記(1)に記載の盛土密度の管理方法。
【0011】
前記(1)〜(3)の盛土密度の管理方法において、立体計測手段として例示した三次元レーザースキャナは慣用の装置であり、これは、計測対象物とセンサーの間をレーザパルスが往復する時間を計測して距離を計測すると共に、レーザービームを発射した方向を計測して計測対象点の3次元座標を得るものである。
したがって、本発明では、施工エリアの所定範囲において、盛土材料を搬入する以前の地表面形状である基面形状と、敷均した盛土材料の表面形状である敷均し形状と、締固めた後の盛土材料の表面形状である締固め形状とは、それぞれ多数の計測点の3次元座標から構成されるものである。そして、敷均した盛土材料の体積は、基面形状と敷均し形状とを構成する多数の3次元座標データより、仮想平面との間で体積を計算し、敷均し面から仮想平面までの体積Vaと、基面から仮想平面までの体積Vbとの間で、Va−Vbのように計算処理すれば求められる。また締固めた盛土材料の体積も同様な計算手法により、基面形状と締固め形状とを構成する多数の3次元座標データから求めることができる。これら表面形状データから体積を算出する工程は、三次元レーザースキャナ自体に組み込まれた機能、又は、別のコンピュータにより実行される。
【0012】
前記(1)の質量演算工程において、含水比は、例えば、保管場所の盛土材料(湿潤状態)からサンプリングした試料を乾燥炉により乾燥させ、水分量を計測すれば求めることができる。
また施工エリアにおいて一度に締固め工程が実施される範囲、すなわち、面積及び締固め高さは、施工計画や設計データにより予め設定されており、さらに、締固め層の設計乾燥密度も予め設定されている。したがって、一回の締固め工程に使用される盛土材料(湿潤状態)の質量は下記の式(1)により求めることができる。
M=V×γd0×(1+w/100)・・・・・・・・・式(1)
M:一回の締固め工程に使用される盛土材料の質量
V:一回の締固め工程で形成される締固め層の体積
γd0:締固め層の設計乾燥密度
w:含水比
ここで、締固め層の体積Vは、締固め層の面積A及び締固め高さhとから、V=A×h
のような計算により求められる。
【0013】
前記(1)の盛土密度評価工程において、締固め層の乾燥密度は下記の式(2)によって求めることができる。
γd1=γt1/(1+w/100)・・・・・・・・・式(2)
γd1:締固め層の乾燥密度
γt1:締固め層の湿潤密度
w:盛土材料の含水比
【0014】
ここで、締固め層の湿潤密度(γt1)は下記の式(3)により求められる。
γt1=M/V・・・・・・・・・式(3)
γt1:締固め層の湿潤密度
M:締固め層を形成する際に用いた盛土材料の質量
V:締固め層の体積(基面形状と締固め形状とから算出される)
【0015】
前記(2)の盛土密度の管理方法では、試験施工により形成した締固め層から試験体を採取し、当該試験体の体積及び重量を計測することにより、実測値としての密度を算出することができる。
ここで、立体計測手段による基面形状及び締固め形状と、盛土材料の質量と、から求めた演算値が乾燥密度である場合、試験体からも乾燥重量により乾燥密度を求めて実測値とし、下記の式(4)により補正係数(α)を求める。
補正係数(α)=実測値/演算値・・・・・・・・・式(4)
【0016】
前記(3)の盛土密度の管理方法では、試験施工又は他の締固め層を形成する工程において、所定範囲に敷均した盛土材料から求めた乾燥密度(γd2)、すなわち敷均し乾燥密度を使用し、これから敷均し湿潤密度(γt2)を求め、この湿潤密度(γt2)から新たな締固め層を形成する工程における盛土材料の敷均し高さの目標値(ΔH)を演算により求めるものである。
ここで、敷均し湿潤密度(γt2)は、下記の式(5)により求められる。
γt2=γd2×(1+w/100)・・・・・・・・・式(5)
γd2:敷均し層の乾燥密度
γt2:敷均し層の湿潤密度
w:締固め工程に使用される盛土材料の含水比
そして、敷均し高さの目標値(ΔH)は、敷均す盛土材料の質量(M)を、敷均し湿潤密度(γt2)により除し、さらに盛土材料を敷均す範囲の面積(A)で除すると、下記の式(6)のようにしてΔHを求めることができる。
ΔH=M/γt2/A・・・・・・・・・式(6)
M:一回の締固め工程に使用される盛土材料の質量
γt2:敷均し層の湿潤密度
A:一回の締固め工程が実施される範囲の面積
【発明の効果】
【0017】
本発明の盛土密度の管理方法では、締固めに使用する盛土材料の含水比及び質量を求め、締固め施工エリアにおける盛土材料を敷均す前後の表面形状や、盛土材料を締固めた後の表面形状を三次元レーザースキャナ等の立体計測手段を用いて求め、これらデータから締固め層の密度を算出して締固め程度を管理するものであるため、盛土の形状に拘らず、締固め程度をリアルタイムに管理することが可能になった。したがって、締固め層の密度をリアルタイムに把握しながら、締固め回数を調整することにより、たとえ、締固め層の密度管理の上限値と下限値が比較的狭い幅で設定されている場合であっても、これを高精度で達成することが可能になった。
【0018】
また本発明では、必要に応じて予め試験施工を実施し、締固め層から試験体を採取して密度を測定し、この実測値から補正係数を求めても良い。
すなわち、本発明では、本施工において、三次元レーザースキャナ等の立体計測手段を使用して締固め層の体積を求め、盛土材料の質量により締固め密度を算出し、これにより盛土密度の管理を行うものであるため、試験施工では、実際に締固め層から採取した試験体により締固め密度及び補正係数を求め、これにより立体計測手段による締固め密度を補正して盛土密度の管理を実施すれば、盛土の締固め程度を高精度に管理することが可能になる。
【0019】
本発明の盛土密度の管理方法では、敷均した盛土材料の表面形状を立体計測手段で計測することにより、敷均し層の演算密度を求めることが好ましく、この敷均し密度を用いれば、他の締固め層を形成する工程における盛土材料の敷均し高さの目標値を算出することができる。この敷均し高さの目標値を用いて施工管理を実施すれば、盛土材料の敷均し作業を効率良く且つ高精度に行うことができ、これに続く盛土の締固め工程も円滑に進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
[試験施工]
本発明の盛土密度の管理方法では、最初に、試験施工を実施することが好ましく、試験施工は、立体計測により敷均し層の密度及び締固め層の密度を求め、試験体の実測により締固め層の密度を求め、これら締固め層の密度から補正係数を求めるものである。
この試験施工について、図1のフローチャートにしたがって説明すれば、最初に、STEP1により盛土材料の含水比を測定し、STEP2により初期設定値を入力し、STEP3により試験施工を実施する地表面の表面形状を立体計測する。これらSTEP1〜3の各工程は同時に実行しても良く、または適宜順番を入れ替えて実行しても良い。
ここで、STEP1は、保管倉庫やストックヤードにおいて所定量の盛土材料を採取し、その湿潤状態における質量を測定した後に、この盛土材料を、例えば、乾燥炉に入れて乾燥状態にした後に再び質量を測定することにより、湿潤状態の盛土材料の含水比を算出するものである。このように求められた含水比は、盛土の締固め施工に用いるコンピュータ等の制御装置に入力される。
STEP2では、試験施工により形成する締固め層の面積、高さ、乾燥密度のそれぞれ目標値を前記コンピュータ等の制御装置に管理データとして入力する。
STEP3では、試験施工により締固め層を形成する地表面の形状を、三次元レーザースキャナ等の立体計測装置により測定し、この地表面における多数の計測点の3次元座標データを基面形状データとして求め、この基面形状データを前記コンピュータ等の制御装置に入力する。
【0022】
STEP1〜3の各工程が終了したら、STEP4として、前記コンピュータ等の制御装置により、試験施工として締固め層を形成するために必要な盛土材料の質量(M)を、上述の式(1)を用いて演算する。
M=V×γd0×(1+w/100)・・・・・・・・・式(1)
V:試験施工で形成される締固め層の体積
γd0:STEP2で入力された締固め層の乾燥密度の目標値
w:STEP1で求められた含水比
ここで、締固め層の体積Vは、STEP2で入力された締固め層の面積A及び高さhの目
標値から、V=A×hのように計算して求められる。
【0023】
STEP4において算出された質量(M)の盛土材料を、保管倉庫やストックヤードからトラックやベルトコンベア等の搬送手段により施工エリアまで搬送し、この盛土材料をSTEP5として施工エリアに敷き均し、この敷均し層の表面形状を、STEP6として三次元レーザースキャナ等の立体計測装置により測定し、この敷均し表面における多数の計測点の3次元座標データを敷均し形状データとして求め、この敷均し形状データを前記コンピュータ等の制御装置に入力する。
【0024】
次に、STEP7として敷均し層の乾燥密度(γd2)を演算により求める。
敷均し層の乾燥密度(γd2)は、下記の式(7)により求められる。
γd2=γt2/(1+w/100)・・・・・・・・・式(7)
γd2:敷均し層の乾燥密度
γt2:敷均し層の湿潤密度
w:STEP1により求めた盛土材料の含水比
ここで、敷均し層の湿潤密度(γt2)は、STEP3で計測された基面形状データと、STEP6で計測された敷均し形状データとから、敷均し層の体積(V)が求められ、敷均した盛土材料の質量(M)を敷均し層の体積(V)により除すれば、式(5)のように敷均し層の湿潤密度(γt2)が求められる。
γt2=M/V・・・・・・・・・・・・・式(5)
γt2:敷均し層の湿潤密度
M:STEP4において算出された盛土材料の質量
V:敷均し層の体積
【0025】
次に、STEP8として、敷均し層の乾燥密度(γd2)と、STEP2で入力された締固め層の乾燥密度の目標値(γd0)と比較し、γd2≦γd0である場合には次のSTEP9に進み、γd2≦γd0でない場合には、敷均し層の乾燥密度が既に締固め層の乾燥密度の目標値に達しているため、STEP13に進む。
【0026】
次に、STEP9として、例えば、転圧ローラーなどの締固め装置により敷均し層を一回締固めて締固め層を形成し、STEP10として、この締固め層の表面形状を三次元レーザースキャナ等の立体計測装置により測定し、この締固め層における多数の計測点の3次元座標データを締固め形状データとして求め、この締固め形状データが前記コンピュータ等の制御装置に入力される。そして、これらのデータから、STEP11として、締固め層の乾燥密度(γd1)が演算により求められる。
この締固め層の乾燥密度(γd1)は、式(2)に示したように求められる。
γd1=γt1/(1+w/100)・・・・・・・・・式(2)
γd1:締固め層の乾燥密度
γt1:締固め層の湿潤密度
w:STEP1により求めた盛土材料の含水比
ここで、締固め層の湿潤密度(γt1)は式(3)により求められる
γt1=M/V・・・・・・・・・式(3)
γt1:締固め層の湿潤密度
M:STEP4で算出された盛土材料の質量
V:締固め層の体積(STEP3により求めた基面形状データと、STEP10により求めた締固め形状データとから算出される)
【0027】
次に、STEP12では、締固め装置により一回締固められた締固め層の乾燥密度(γd1)と、STEP2で入力された締固め層の乾燥密度の目標値(γd0)とを比較する。
γd1≧γd0である場合には、締固め層の乾燥密度が既に目標値に達しているため、次のSTEP13に進み、γd1≧γd0でない場合には、締固め層の乾燥密度が目標値に達していないため、STEP9に戻り、もう一回、締固め装置による締固め工程を実行してSTEP10〜12を繰り返す。
【0028】
STEP13では、乾燥密度の目標値(γd0)まで締固められた締固め層から試験体を採取し、この試験体から実測値としての乾燥密度(γd3)を求める。ここで、試験体からは、体積を求めた後に、乾燥炉を用いて乾燥重量を求め、この乾燥重量を体積で除することにより、締固め層の実測値として乾燥密度を求める。
そして、STEP14では、この実測値としての乾燥密度(γd3)を、STEP11により演算により求めた締固め層の乾燥密度(γd1)で除することにより、式(4)に示したように補正係数(α)を求める。
補正係数(α)=実測値/演算値=γd3/γd1・・・・・・・・・・式(4)
【0029】
[本施工]
以上のように、STEP1からSTEP14までの試験施工が終了したら、次に、本施工として、盛土材料を所定範囲に締め固める工事を実施する。
本施工について、図2のフローチャートにしたがって説明すれば、最初に、STEP20により盛土材料の含水比を測定し、STEP21により初期設定値を入力し、STEP22により本施工を実施する地表面の表面形状を立体計測する。これらSTEP20〜22の各工程は同時に実行しても良く、または適宜順番を入れ替えて実行しても良い。
ここで、STEP20では、試験施工のSTEP1と同様に、保管倉庫やストックヤードの盛土材料の含水比を求め、これがコンピュータ等の制御装置に入力される。
STEP21では、施工エリアにおいて一度に締固め工程が実施される範囲の締固め層の面積、高さ及び乾燥密度のそれぞれ目標値、敷均し層の乾燥密度(γd2)をコンピュータ等の制御装置に管理データとして入力する。ここで、敷均し層の乾燥密度(γd2)は、試験施工のSTEP7で求めたものを使用するか、又は他の締固め層を形成する際に求められたものを使用することができる。なお、締固め層の面積、高さ及び乾燥密度の目標値が、施工計画や設計データにより複数回にわたり施工される全ての締固め層に関して予め設定されている場合、これらを一度に入力し、これ以降、他の締固め層を形成する際には省略しても良い。
STEP22では、これらから締固め工程が実施される範囲における地表面の形状を、試験施工におけるSTEP3と同様に立体計測装置により測定し、基面形状データをコンピュータ等の制御装置に入力する。
【0030】
STEP20〜22の各工程が終了したら、STEP23として、これから形成する締固め層に必要な盛土材料の質量(M)を、試験施工のSTEP4と同様に演算して求め、さらに、STEP24として盛土材料の敷均し高さの目標値(ΔH)を算出する。
【0031】
敷均し高さの目標値(ΔH)は、STEP23で求めた盛土材料の質量(M)を、敷均し湿潤密度(γt2)により除し、さらに盛土材料を敷均す範囲の面積(A)で除すると、下記の式(6)のようにΔHを求めることができる。
ΔH=M/γt2/A・・・・・・・・・式(6)
M:一回の締固め工程に使用される盛土材料の質量
γt2:敷均し層の湿潤密度
A:一回の締固め工程が実施される範囲の面積
ここで、敷均し湿潤密度(γt2)は、試験施工時又は他の締固め層を形成する工程において、所定範囲に敷均した盛土材料から求めた乾燥密度(γd2)、すなわち敷均し乾燥密度を使用し、下記の式(5)により求められる。
γt2=γd2×(1+w/100)・・・・・・・・・式(5)
γd2:敷均し層の乾燥密度
γt2:敷均し層の湿潤密度
w:締固め工程に使用される盛土材料の含水比
【0032】
次に、STEP25では、STEP23で求めた質量(M)をの盛土材料を施工エリアまで搬送し、この盛土材料を施工エリアに敷き均し、この敷均し層の表面形状を、STEP26として三次元レーザースキャナ等の立体計測装置により測定し、この敷均し形状データを前記コンピュータ等の制御装置に入力し、STEP27では、敷均し層の乾燥密度(γd2)を求める。
以上のSTEP25からSTEP27では、試験施工のSTEP5からSTEP7と同様な工程が実施される。
【0033】
次に、STEP28では、敷均し層の乾燥密度(γd2)と、STEP21で入力された締固め層の乾燥密度の目標値(γd0)と比較し、γd2≦γd0である場合には、次のSTEP29からSTEP31までを実行し、STEP32に進み、STEP31で得られた締固め層の乾燥密度(γd2)に補正係数(α)を乗じて補正値を求める。ここで、STEP29からSTEP31は、試験施工のSTEP9からSTEP11までと同じ工程が実施される。補正係数(α)は、試験施工のSTEP14で求めたものが使用される。
一方、STEP28において、γd2≦γd0でない場合には、敷均し層の乾燥密度が既に締固め層の乾燥密度の目標値に達しているため、STEP32に進み、ここでは敷均し層の乾燥密度(γd2)を締固め層の乾燥密度(γd1)と見なして、このγd2に補正係数(α)を乗じて補正値を求める。
【0034】
STEP33では、STEP32において求めた補正値と、締固め層の乾燥密度の目標値(γd0)とを比較し、補正値≧目標値(γd0)である場合には、STEP20からSTEP33までの締固め層形成工程は終了し、次の締固め層を形成する工程に進む。
一方、STEP33において、補正値≧目標値(γd0)でない場合には、締固め層の乾燥密度が未だ目標値に達していないと見なして、STEP29に戻り、補正値≧目標値(γd0)を満たすまで、STEP29〜33を繰り返し実行する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の盛土密度の管理方法において、選択的に実施される試験施工を示したフローチャートである。
【図2】本発明の盛土密度の管理方法を示したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の盛土材料を保管場所から締固め施工エリアに搬送し、締固め施工エリアの所定範囲に盛土材料を敷均した後に、盛土材料を締固めることにより所定密度の締固め層が得られるように盛土密度を管理する方法であって、
前記保管場所において盛土材料の含水比を測定し、当該含水比を用いて、前記所定範囲に前記締固め層を形成するために必要な盛土材料の質量を演算で求める質量演算工程と、
盛土材料を敷き均す以前に、三次元レーザースキャナ等の立体計測手段により前記締固め施工エリアの所定範囲の地表面形状を基面形状として計測する基面形状計測工程と、
前記質量の盛土材料を前記所定範囲に敷均し、締固め機械により所定程度まで締固めた後に、前記立体計測手段により締固め層の表面形状を締固め形状として計測する締固め形状計測工程と、
当該締固め形状、前記表面形状、及び前記質量演算工程で求めた盛土材料の質量を用いて締固め層の密度を演算し、締固められた盛土が所定密度に達したか否かを評価する盛土密度評価工程とを含み、
締固められた盛土が所定密度に達した場合には、他の締固め層を形成する工程に進み、所定密度に達していない場合には、所定密度に達するまで締固め工程と前記盛土密度評価工程とを繰り返すことを特徴とする盛土密度の管理方法。
【請求項2】
締固め施工エリアの所定範囲に締固め層を形成するのに先立って、試験施工として、前記盛土材料を締固め施工エリアに敷き均して締固めることにより締固め層を形成し、当該締固め層から採取した試験体を測定して実測値としての密度を求め、且つ、立体計測手段により求めた締固め層を形成する前後の表面形状と盛土材料の質量とから演算値として密度を求め、これら実測値と演算値とから補正係数を求め、前記盛土密度評価工程における締固め層の密度の演算に前記補正係数を使用することを特徴とする請求項1に記載の盛土密度の管理方法。
【請求項3】
前記質量演算工程において求めた質量の盛土材料を前記所定範囲に敷均すことにより敷均し層を形成した後、且つ敷均し層を締固める以前に、敷均した盛土材料の表面形状を立体計測手段により敷均し形状として計測する敷均し形状計測工程を実施し、当該敷均し形状、前記表面形状、及び前記質量演算工程で求めた盛土材料の質量を用いて敷均し層の密度を演算して求め、当該敷均し層の演算密度を用いて、他の締固め層を形成する工程における盛土材料の敷均し高さの目標値を算出することを特徴とする請求項1に記載の盛土密度の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−114691(P2009−114691A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287088(P2007−287088)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】