説明

目地材および目地構造

【課題】 安価にして簡単に施工でき、目立つのを防止しつつ色に深みを持たせることのできる目地材および目地構造を提供する。
【解決手段】 目地構造24は、仕上げ板材14どうしの継ぎ目Aに確保された凹状の隙間16に配設された線状の目地材10を備えており、目地材10は、隙間16を埋める透明または半透明の本体部18と、本体部18と一体に形成され、本体部18より隙間16の奥側に配置された着色部20とを有している。そして、着色部20の色が本体部18を通して外部から視認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、床または天井等を構成する仕上げ板材どうしの継ぎ目、または、仕上げ板材と他の部材との継ぎ目に適用される目地材および目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁、床または天井等を複数の仕上げ板材を継ぎ合わせて構成する際には、継ぎ目を目立たないように処理することが意匠性を高める観点から重要である。そのため、従来では、(a)仕上げ板材どうしを隙間なく付き合わせる方法、(b)継ぎ目に生じた隙間にコーキング剤を充填する方法、(c)継ぎ目に生じた隙間に線状の目地材を配設する方法(特許文献1参照)、などによって継ぎ目を目立たないように処理していた。
【特許文献1】特開2000−204740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来では、上述の様々な方法で仕上げ板材の継ぎ目を処理していたが、(a)の方法では、仕上げ板材の加工精度や施工精度を高める必要があるため、コスト高であるという問題があり、(b)の方法では、コーキング剤の色と仕上げ板材の色とを調和させるのが困難であるのみならず、コーキング剤の充填作業が面倒であるという問題があり、(c)の方法では、施工性に優れるものの、目地材の色と仕上げ板材の色とを調和させるのが困難であるという問題があった。
【0004】
また、(c)の方法に関しては、仕上げ板材の表面側に露出する部分を透明または半透明にすることによって、目地材を目立たなくすることも行われていたが(特許文献1参照)、この方法では、透明または半透明の部分の厚みを十分に確保することができないため、透明または半透明の部分を通して視認される色に深みを持たせることができないという問題があった。
【0005】
それゆえに、この発明の目的は、安価にして簡単に施工でき、目立つのを防止しつつ色に深みを持たせることのできる、目地材および目地構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「仕上げ板材14の端部側方に確保された凹状の隙間16に配設される線状の目地材10において、隙間16を埋める透明または半透明の本体部18と、本体部18と一体に形成され、本体部18より隙間16の奥側に配置される着色部20とを備えることを特徴とする、目地材10」である。
【0007】
この発明では、隙間16を埋める透明または半透明の本体部18を通して着色部20の色を外部から視認させることができるので、目地材10が目立つのを防止しつつ色に深みを持たせることができる。また、透明または半透明の本体部18に光を入り込ませることができるので、隙間16に黒い影線が生じるのを防止できる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「目地材10」において、「本体部18の隙間16から露出した側の端面には、光を散乱させる溝32が形成されている」ことを特徴とする。
【0009】
この発明では、本体部18の端面に形成された溝32で光を散乱させることができるので、本体部18の厚みが薄い場合でも、目地材10が目立つのを防止しつつ色に深みを持たせることができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、「仕上げ板材14の端部側方に確保された凹状の隙間16に配設された線状の目地材10を備える目地構造24において、目地材10は、隙間16を埋める透明または半透明の本体部18と、本体部18と一体に形成され、本体部18より隙間16の奥側に配置された着色部20とを有することを特徴とする、目地構造24」である。
【0011】
この発明は、請求項1に記載した目地材10を用いた目地構造24である。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した「目地構造24」において、「本体部18の隙間16から露出した側の端部は、仕上げ板材14の表面から突出している」ことを特徴とする。
【0013】
この発明では、本体部18の端部(表面部)が仕上げ板材14の表面から突出しているので、仕上げ板材14の継ぎ目A,Bに凹部が生じることはなく、仕上げ板材14またはその表面に形成された化粧層14bがめくれたりするのを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および2に係る「目地材」によれば、仕上げ板材の端部側方に確保された凹状の隙間に接着等によって簡単に取り付けることができる。また、透明または半透明の本体部に光を取り込むことができるので、隙間に黒い影線が生じるのを防止できる。したがって、仕上げ板材の加工精度や施工精度を高める必要はなく、加工および施工のコストを大幅に低減できる。さらに、透明または半透明の本体部が隙間を埋めるため、隙間の内側空間の全体において光が本体部内を伝播することとなり、外部から視認される着色部の色にむらが生じるのを防止できるとともに、その色に深みを持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明が適用された目地材10を示す斜視図であり、図2は、目地材10を示す断面図である。この目地材10は、壁、床または天井等を構成する仕上げ板材どうしの継ぎ目に適用可能なものであるが、以下には、図3および図4に示すように、壁12を構成する仕上げ板材14どうしの継ぎ目Aに適用する場合を例に挙げて説明する。
【0016】
ここで、仕上げ板材14(図3、図4)は、合板,MDF,火山性ガラス複合板(商品名:ダイライト)またはこれらの複合材等からなる基材14aを有しており、基材14aの表面には、化粧単板,化粧紙,化粧シートまたは塗料等からなる化粧層14bが形成されている。また、仕上げ板材14の端面は、その表面および裏面に対して垂直に形成されている。したがって、仕上げ板材14どうしの継ぎ目Aに「目透かし」によって隙間16を確保すると、その隙間16の断面形状は、図3に示すような凹状の四角形となる。なお、仕上げ板材14は、表面積の大きいボード状であってもよいし、表面積の小さいタイル状であってもよい。
【0017】
目地材10は、図1および図2に示すように、仕上げ板材14どうしの継ぎ目Aに確保された凹状の隙間16(図3、図4)に配設される線状部材であり、隙間16を埋める透明または半透明の本体部18と、本体部18と一体に形成され、本体部18より隙間16の奥側に配置される着色部20とを備えている。
【0018】
本体部18は、PVC(塩化ビニル),アクリル,ABS,AS(アクリロニトリル・スチレン),PP(ポリプロピレン),PE(ポリエチレン),ポリカーボネート等の透明または半透明の合成樹脂材料からなり、本体部18の断面形状は、隙間16の内面に沿うように略四角形に設定されている。また、本体部18の幅は、隙間16から露出する側の端部(以下、「表面部」という。)からその反対側の端部(以下、「裏面部」という。)へ向かうにつれて徐々に狭くなるように設定されており、表面部の幅L1と裏面部の幅L2と隙間16の幅L3との間には、L1>L3>L2の関係が成り立っている。なお、本体部18は、必ずしも無色である必要はなく、透光性を損わない限りにおいて有色であってもよい。
【0019】
着色部20は、PVC(塩化ビニル),アクリル,ABS,AS(アクリロニトリル・スチレン),PP(ポリプロピレン),PE(ポリエチレン),ポリカーボネート等の有色の合成樹脂材料や、むく材,合板,MDF等の有色の木質材料や、アルミニウム,スチール等の有色の金属材料等からなり、着色部20の底面は、隙間16の底面との間に接着剤収容空間22を確保できるように凹状に湾曲されている。また、着色部20の幅は、本体部18の裏面部の幅L2とほぼ同じに設定されている。なお、着色部20は、その色を外部から忠実に視認させることのできるように不透明であることが望ましいが、隙間16の底面色の影響を考慮する必要がない場合には、有色である限りにおいて透明または半透明であってもよい。
【0020】
着色部20が合成樹脂材料で形成される場合には、着色部20と本体部18とを2層押出しによって同時に形成することも可能であるが、材料の如何に拘わらず、着色部20と本体部18とを別々に形成し、その後、接着,融着,かしめ,嵌合等の方法で両者を一体化させるようにしてもよい。さらに、本体部18の裏面に有色塗料を塗布したり、シートや突板を貼ることによって着色部20を形成してもよい。
【0021】
本体部18と着色部20とを合わせた目地材10の全高は、隙間16の深さよりもやや高く設定されている。これは、仕上げ板材14の継ぎ目Aに凹部が生じることによる弊害(仕上げ板材14または化粧層14bの「めくれ」やゴミの溜り等)を防止するためである。ただし、本体部18の表面部が仕上げ板材14の表面から大きく突出すると、目地材10が目立って意匠性が損われるため、その突出量L4は、1mm程度であることが望ましい。また、目地材10の幅は、特に限定さるものではないが、本体部18内へ光を十分に取り込むために、最大幅が3mm以上であることが望ましい。さらに、本体部18の厚さは、外部から視認される着色部18の色に深みを持たせるために、3mm以上であることが望ましい。
【0022】
このような目地材10は、図3および図4に示すように、仕上げ板材14どうしの継ぎ目Aにおいて目地構造24を構成するのに用いられる。目地構造24を構成する際には、図4に示すように、下地材26の上面に複数の仕上げ板材14が並べて配設され、継ぎ目Aには、目地材10を収容する凹状の隙間16が確保される。そして、この隙間16に目地材10が配設され、目地材10の裏面と隙間16の底面とが接着剤28を用いて接合される。
【0023】
目地材10における本体部18の裏面部および着色部20の幅L2は、隙間18の幅L3よりも狭い(L3>L2)ため、目地材10を隙間18に配設した状態において、本体部18の裏面部および着色部20の側方には、空間30が確保される。したがって、接着剤収容空間22に納まりきらなかった接着剤28は、接着剤収容空間22からはみ出して空間30へ逃がされることとなり、接着剤28によって目地材10が嵩上げされるのを防止でき、仕上げ板材14の表面から突出する本体部18の突出量L4(図3)を適正範囲に納めることができる。
【0024】
このような目地構造24においては、目地材10を構成する本体部18の表面部が仕上げ板材14の上面から突出されており、しかも、この表面部の幅L1が隙間16の幅L3よりも広く(L1>L3)設定されているので、隙間16の開口部内面と目地材10の外側面との間に隙間が生じた場合でも、この隙間を目地材10の表面部で隠すことができる。
【0025】
なお、上述の目地材10では、本体部18の隙間16から露出した側の端面を平坦に形成しているが、この端面には、図5に示すような光を散乱させる溝32を形成してもよい。このような溝32を形成すると、この溝32で光を散乱させることができるので、本体部18の厚みが薄い場合でも、目地材10が目立つのを防止しつつ色に深みを持たせることが可能となる。したがって、図6に示す「実はぎ」や、図7に示す「相じゃくり」等のような隙間16の深さを十分に確保できない継ぎ目Bにも適用範囲を広げることができる。
【0026】
さらに、上述の実施例では、目地材10および目地構造24を仕上げ板材14どうしの継ぎ目AまたはBに確保された隙間16に適用した場合を示したが、目地材10および目地構造24は、仕上げ板材14の端部側方に確保された凹状の隙間16に幅広く適用可能なものであり、たとえば図8に示すように、仕上げ板材14と床材34との間に確保された隙間16にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】目地材を示す斜視図
【図2】目地材を示す断面図
【図3】目地材を用いた目地構造を示す断面図
【図4】目地材を用いた目地構造を示す分解斜視図
【図5】他の目地材を用いた目地構造(目透かし)を示す断面図
【図6】他の目地材を用いた目地構造(実はぎ)を示す断面図
【図7】他の目地材を用いた目地構造(相じゃくり)を示す断面図
【図8】目地材を用いた他の目地構造を示す斜視図
【符号の説明】
【0028】
10… 目地材
14… 仕上げ板材
16… 隙間
18… 本体部
20… 着色部
24… 目地構造
22… 接着剤収容空間
30… 空間
28… 接着剤
32… 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ板材の端部側方に確保された凹状の隙間に配設される線状の目地材において、前記隙間を埋める透明または半透明の本体部と、前記本体部と一体に形成され、前記本体部より前記隙間の奥側に配置される着色部とを備えることを特徴とする、目地材。
【請求項2】
前記本体部の前記隙間から露出した側の端面には、光を散乱させる溝が形成されている、請求項1に記載の目地材。
【請求項3】
仕上げ板材の端部側方に確保された凹状の隙間に配設された線状の目地材を備える目地構造において、
前記目地材は、前記隙間を埋める透明または半透明の本体部と、前記本体部と一体に形成され、前記本体部より前記隙間の奥側に配置された着色部とを有することを特徴とする、目地構造。
【請求項4】
前記本体部の前記隙間から露出した側の端部は、前記仕上げ板材の表面から突出している、請求項3に記載の目地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−144396(P2006−144396A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336421(P2004−336421)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】