説明

目地補修材

【課題】水路の目地の補修時にウイープホールの機能を付与して補修材の耐久性を高める場合に、煩雑な作業を不要にして簡単に施工できるようにする。
【解決手段】目地補修材1は、目地の漏水部分を水路内側から覆うように形成されて水路構成部材Bの内面に固定される防水性シートからなる補修材本体10と、補修材本体10に貫通形成された通水孔11に接続される弁手段20とを備えている。弁手段20は、防水性シートからなるシート材21、22を厚み方向に重ねてなる。シート材21には通水孔11に連通する連通孔21aが貫通形成されている。シート材21は、補修材本体10に厚み方向に重ねられて固定されている。シート材22は、シート材21における連通孔21aよりも外周側の部分に固着された固着部22aと、シート材22における外周側の部位に対し接離可能に重ねられた可動排水部22bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設水路の目地を補修するための目地補修材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、農業用水を流す水路は地面を掘り下げ、そこにコンクリート製部材を複数並べて構成されている。そして、隣り合うコンクリート製部材の目地にシーリング材を埋め込んで漏水を防止するようにしている。このような水路では、農閑期等で水路内の水が減った状態で雨が降ったりすると、水路外側の土砂が大量の水を含んで水路外側の水位が上昇し、コンクリート製部材の側壁や底盤に大きな圧力が作用し、側壁は押し圧力を受けることにより押し倒されたり、また、底盤は揚圧力を受けることにより浮き上がったりすることがある。このような押し圧力や揚圧力を軽減するためにコンクリート製部材の側壁にウイープホールと呼ばれる排水部材を設けることがある(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2のウイープホールは、コンクリート製部材の側壁の所定高さに形成された貫通孔に挿入された状態で取り付けられている。ウイープホールには、逆止弁が内蔵されており、外部の土砂中の水位が所定高さに達すると土砂中の水が水路内へ流れる一方、水路内側の水は、水位が所定高さに達しても外部へ流れないようになっている。
【0004】
また、上記のように複数のコンクリート製部材で水路を形成した場合、地盤沈下や車両の走行振動、温度変化による膨張収縮等によって隣り合うコンクリート製部材が互いに異なる動きをして変位してしまい、このようなコンクリート製部材の変位にシーリング材が追従できずに目地から漏水することがある。また、シーリング材の劣化によっても目地から漏水することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−353249号公報
【特許文献2】特開2006−16862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水路の目地から漏水するようになった場合には、目地の補修が必要になるが、補修時には、コンクリート製部材はそのまま用い、目地をモルタルやコーキング剤で補修するのが一般的である。
【0007】
また、特許文献1、2のようなウイープホールは長期間の使用によって内部に異物が詰まって排水機能が低下することがあり、また、ウイープホールの土中側が地中に突出している場合には、地盤沈下等によりウイープホールの土中側に土圧が作用してウイープホールが破損する恐れがある。また、水路によってはウイープホールが設けられていないこともある。
【0008】
さらに、シート状の補修材によって目地を覆った場合を想定すると、水路外側の水位が上昇したとき、補修材に対して水路外側から内側へ向けて水圧が作用し、補修材に無理な力がかかって損傷する恐れがある。
【0009】
このことを回避するために、上記ウイープホールを補修時に新設することが考えられるが、ウイープホールを設けるには、コンクリート製部材の側壁に貫通孔を形成し、その貫通孔に埋め込むようにして取り付けなければならず、補修時に行う作業としてみたときには煩雑で困難な作業となる。
【0010】
また、ウイープホールが水路内側に突出していると、水路内側の水の流れの邪魔となってしまう。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水路の目地の補修時にウイープホールの機能を付与して補修材の耐久性を高める場合に、煩雑な作業を不要にして簡単に施工できるようにするとともに、コンパクトにまとめて水路内側の水の流れを邪魔しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、目地を覆うように形成された補修材本体に、防水性シートを組み合わせて構成した逆止弁を設けた。
【0013】
第1の発明は、少なくとも下側が地面に埋め込まれて所定方向に延びる水路を構成するように並べられた既設の水路構成部材の目地からの漏水を防止する目地補修材において、目地の漏水部分を水路内側から覆うように形成されて上記水路構成部材の内面に固定される防水性シートからなる補修材本体と、上記補修材本体に貫通形成された通水孔に接続される弁手段とを備え、上記弁手段は、防水性シートからなる第1及び第2部材を厚み方向に重ねてなり、上記第1部材には上記通水孔に連通する連通孔が貫通形成され、上記第1部材は、上記連通孔が上記通水孔に接続された状態で上記補修材本体に厚み方向に重ねられて固定され、上記第2部材は、上記第1部材における上記連通孔よりも外周側の部分に固着された固着部と、該第1部材における外周側の部位に対し接離可能に重ねられた可動排水部とを有していることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、水路内側の水位が弁手段に達すると、水圧によって弁手段の第2部材が第1部材に押し付けられて第2部材の可動排水部が第1部材に接して閉状態となる。これにより、水路内側の水が弁手段から流出するのが抑制される。
【0015】
一方、水路内側の水位が弁手段よりも低く、かつ、水路外側の土砂に含まれる水位が弁手段よりも高い場合には、土砂に含まれる水が目地を通って補修材本体の裏側に達し、補修材本体の通水孔を通って弁手段の第1部材の連通孔に流れ込む。このとき、水路内側の水位は弁手段よりも低いので、弁手段には水路内からの水圧が作用していない。従って、連通孔に流れ込んだ水圧によって第2部材が第1部材から離れる方向に押されるので、第2部材の可動排水部が第1部材から離れて弁手段が開状態となり、連通孔から流れ込んだ水が水路内へ排水される。これにより、補修材本体に無理な力が作用するのが回避される。
【0016】
つまり、シート状の第1及び第2部材を重ねて一部を固着するという簡単な構造で、水路内側の水の流出を防止しながら、必要な時に水路外側の水を水路内側に流すことが可能な逆止弁を構成することができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、上記弁手段を水路内側から覆う防水性シートからなるカバー部材を備え、上記弁手段の可動排水部は、該弁手段の上部に配置されており、上記カバー部材は、上記補修材本体に固着されて上記弁手段の可動排水部に対応して密閉部分を形成する一方、上記可動排水部よりも下側に出水部を形成することを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、水路内側の水位が弁手段よりも高いとき、カバー部材によって弁手段の可動排水部に対応する部分が密閉されることになるので、可動排水部の周りに空気溜まりができやすくなる。この空気溜まりにより、水路内側の水が可動排水部に逆流するのが防止される。よって、水路内側の水が可動排水部から流出するのが確実に防止される。
【0019】
一方、水路の外側の土砂に含まれる水を水路内へ流す場合には、弁手段の可動排水部から排水された水が、カバー部材の出水部から水路内側に流出することになる。
【0020】
第3の発明は、第2の発明において、上記カバー部材と上記補修材本体との間には、水路内の水に含まれる異物が該カバー部材の弁手段側へ入るのを抑制するストレーナが設けられ、上記カバー部材には、該カバー部材と上記補修材本体との間の上記ストレーナの取り出し、及び上記カバー部材と上記補修材本体との間への上記ストレーナの挿入を行うための開放部分を覆う蓋部と、該蓋部を閉状態で保持する保持部材とが設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、ストレーナの交換を行う際に、カバー部材の着脱を行うことなく、蓋部を開放することでストレーナの取り出し及び挿入が簡単に行える。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、防水性シートからなる補修材本体に形成した通水孔に連通する弁手段を設け、弁手段は、防水性シートからなる第1及び第2部材を厚み方向に重ねてなるものとし、第1部材には通水孔に連通する連通孔を形成し、第2部材は、第1部材における連通孔よりも外周側の部分に固着された固着部と、第1部材における外周側の部位に対し接離可能に重ねられた可動排水部とを有しているので、水路の目地の補修時にウイープホールの機能を付与して補修材の耐久性を高める場合に、煩雑な作業を不要にして簡単に施工できるとともに、コンパクトにまとめることができて水路内側の水の流れの邪魔にならないようにすることができる。
【0023】
第2の発明によれば、弁手段を覆うカバー部材を備え、カバー部材は、補修材本体に固着され、弁手段の上部に配置された可動排水部に対応して密閉部分を形成する一方、可動排水部よりも下側に出水部を形成しているので、水路内側の水位が高い場合に弁手段の可動排水部に空気溜まりを作ることができ、水路内側の水が弁手段から水路外へ逆流するのを防止することができる。
【0024】
第3の発明によれば、カバー部材と補修材本体との間にストレーナを設け、カバー部材に、ストレーナの取り出し及び挿入を行うための開放部分を覆う蓋部と、蓋部を閉状態で保持する保持部材とを設けたので、カバー部材を着脱することなく、ストレーナを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態にかかる目地補修材を用いて補修した水路の一部を示す図である。
【図2】目地補修材のカバー部材近傍を拡大して示す正面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】補修材本体の正面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線断面図である。
【図7】補修材本体及び逆止弁の平面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】目地補修材で補修された水路の目地部分の断面図である。
【図10】水路内側の水位が逆止弁よりも上に位置している場合の図9相当図である。
【図11】水路外側の水位が逆止弁よりも上に位置している場合の図9相当図である。
【図12】水路外側の水位が逆止弁よりも上に位置している場合の図4相当図である。
【図13】実施形態の変形例1にかかる逆止弁の正面図である。
【図14】図13におけるXIV−XIV線断面図である。
【図15】図13におけるXV−XV線断面図である。
【図16】変形例2にかかる図2相当図である。
【図17】図16におけるXVII−XVII線断面図である。
【図18】変形例2にかかる逆止弁の正面図である。
【図19】図18におけるXIX−XIX線断面図である。
【図20】変形例2にかかる逆止弁及び補修材本体の正面図である。
【図21】図20におけるXXI−XXI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態にかかる目地補修材1を用いて補修された水路Aの一部を示す図である。水路Aは、上方に開放する略コ字状断面を有する複数のコンクリート製部材(水路構成部材)B、B、…を水平方向に並べて構成されている。これらコンクリート製部材Bは、下部から上部近傍までが地面に埋め込まれており、外部には土砂G(仮想線で示す)が存在している。また、隣り合うコンクリート製部材B、Bの間には、コンクリート製部材B、Bの間をシールするためのシーリング材Cが設けられている。本実施形態では、水路Aが農業用水を流すため水路である場合について説明するが、本発明は、他の用途で用いられる水路に適用することも可能である。
【0028】
目地補修材1は、水路Aの目地、即ち、コンクリート製部材B、Bの間からの漏水を防止するためのものである。目地からの漏水の原因としては、シーリング材Cの劣化や、地盤沈下及び車両の走行振動、温度変化による膨張収縮等によって隣り合うコンクリート製部材B、Bが互いに異なる動きをして変位してしまい、このようなコンクリート製部材B、Bの変位にシーリング材Cが追従できない場合等が挙げられる。
【0029】
図2〜図4に示すように、目地補修材1は、目地を水路A内側から覆う補修材本体10と、補修材本体10を水路Aに固定するための鋼板材15、15(図4等に示す)及び固定プラグ16、16、…(図1に示す)と、目地補修材1にウイープホールの機能を持たせるための逆止弁(弁手段)20と、逆止弁20を水路A内側から覆うカバー部材30と、一次及び二次ストレーナ40、41とを備えている。
【0030】
補修材本体10は、塩化ビニルに補強繊維を埋め込んだ防水性シートからなるものであり、図1に示すように、水路Aの一方の側面から底面、他方の側面に亘って延びる帯状に形成されている。補修材本体10の幅は、目地の幅よりも広く設定されており、補修材本体10の幅方向(水路A長手方向)両側は、隣り合うコンクリート製部材B、Bの内面の一部を覆うようになっている。
【0031】
補修材本体10の幅方向中央部には、目地が位置しており、水路Aの一方の側面に対向する部位と、他方の側面に対向する部位とに、それぞれ、通水孔11(図2及び図3等に示す)が貫通形成されている。通水孔11の高さは、水路Aの底部近傍とされているが、深さ方向中央部近傍であってもよい。また、図5に示すように、通水孔11は略円形である。
【0032】
図3に示すように、補修材本体10の水路A内側と反対側の面(裏面)には、通水孔11を覆うように一次ストレーナ40が配設されている。この一次ストレーナ40は、水路A外側から内側へ流入する水をろ過するためのものであり、例えば、不織布等で構成されている。
【0033】
図6に示すように、補修材本体10の裏面には、幅方向両側に鋼板材15、15がそれぞれ取り付けられている。これら鋼板材15、15は同じものであり、補修材本体10の幅方向の縁部に沿って延びている。鋼板材15は、ステンレス鋼板の両面に塩化ビニルを積層してなるものであり、補修材本体10の裏面に接着されている。各鋼板材15の幅方向両側は、補修材本体10側とは反対へ向けて折り曲げられて二重構造となっている。この鋼板材15と補修材本体10とに固定プラグ16が貫通し、該固定プラグ16をコンクリート製部材Bにねじ込むことによって補修材本体10の幅方向両側がコンクリート製部材B、Bに固定されるようになっている。
【0034】
尚、図示しないが、コンクリート製部材Bの内面と補修材本体10の裏面との間には、シーリング材が設けられている。
【0035】
図3及び図4に示すように、逆止弁20は、2枚の防水性シート材を組み合わせてなるものであり、補修材本体10側に位置する本体側シート材(第1部材)21と、水路A内側に位置する水路側シート材(第2部材)22とを備えている。これらシート材21、22を構成する部材は、上記補修材本体10を構成する部材と同じものである。
【0036】
図7に示すように、本体側シート材21と水路側シート材22とは、上下方向に長い長方形状で、互いに同じ大きさとされ、補修材本体10の表面(水路A内側の面)に厚み方向に重なっている。図3に示すように、本体側シート材21には、通水孔11に連通する連通孔21aが形成されている。連通孔21aは、本体側シート材21の下半分の領域内に位置付けられており、通水孔11と略同じ形状及び大きさとされている。尚、連通孔21a及び通水孔11の形状、大きさは互いに異なっていてもよい。
【0037】
本体側シート材21の連通孔21a周りは、全周に亘って補修材本体10の表面に固着されている。これにより、通水孔11から連通孔21aへ流入する水が補修材本体10と本体側シート材21との間から洩れないようになっている。本体側シート材21を補修材本体10に固着する方法としては、例えば溶剤による溶着や熱融着等が挙げられる。固着されている部分を各図において太い波線で示す。
【0038】
図7及び図8等に示すように、水路側シート材22の下縁部及び両側縁部(図7においてクロスハッチが入った部分)は、本体側シート材21の下縁部及び両側縁部に固着された固着部22aとされている。一方、水路側シート材22の上縁部は、本体側シート材21の上縁部に対し接離可能に重ねられているだけで固着されておらず、可動排水部22bを構成している。従って、水路側シート材22の可動排水部22bは、該水路側シート材22に加えられる力により、本体側シート材21に接触して閉じた状態(図3、図9、図10に示す)と、本体側シート材21から厚み方向に離れて開いた状態(図11、図12に示す)とに切り替えられる。また、可動排水部22bは、逆止弁20の上部に位置している。
【0039】
カバー部材30は、上記補修材本体10を構成する部材と同じものからなり、図2に示すように、上下方向に長い略長方形状とされている。カバー部材30の大きさは、逆止弁20の全体を水路A内側から覆うことができるように、水路側シート材22よりも大きくなっている。
【0040】
カバー部材30の周縁部は、全周に亘って補修材本体10の内面に固着される取付部30aとされている。取付部30aが補修材本体10に固着されることで、可動排水部22bに対応して、該可動排水部22bの周りに密閉空間が形成される。
【0041】
図3及び図4に示すように、カバー部材30の取付部30aよりも内側は、水路A内側へ膨出するように形成された膨出部30bとされており、この膨出部30b内に逆止弁20が収容されるようになっている。膨出部30bの水路A内側への膨出量は、上記逆止弁20の水路側シート材22の可動排水部22bが本体側シート材21から離れることができるように、シート材21、22を合わせた厚み寸法よりも大きくなるように設定されている。
【0042】
図2に示すように、カバー部材30の膨出部30bの下半部には、複数の円形の出水孔(出水部)30cが上下方向及びカバー部材30の幅方向に並んで形成されている。これら出水孔30cは、逆止弁20の下部よりも下方に位置している。また、カバー部材30の膨出部30bにおける出水孔30cよりも下方には、後述する金具32が係合する係合孔30dが形成されている。係合孔30dは、カバー部材30の幅方向に長いスリット形状である。
【0043】
図3に示すように、カバー部材30と補修材本体10との間には、二次ストレーナ41が出水孔30cを覆うように設けられている。この二次ストレーナ41は、水路A内の水に含まれる泥等の異物がカバー部材30内に入るのを抑制するためのものであり、一次ストレーナ40と同様な部材で構成されている。
【0044】
上記二次ストレーナ41は、全ての係合孔30dを覆うことができるように大型となっている。
【0045】
また、カバー部材30の膨出部30bの下半部には、出水孔30cの形成範囲を下方から及び両側方から囲むように上方に開放したコ字状をなす切れ込み部30fが形成されている。この切れ込み部30fで囲まれた部位は、略矩形の蓋部30gとなっている。蓋部30gは、カバー部材30と補修材本体10との間の二次ストレーナ41の取り出し及びカバー部材30と補修材本体10との間への二次ストレーナ41の挿入を行うための開放部分を覆うためのものである。図3に仮想線で示すように、蓋部30gは、その上縁部近傍を起点として下側部分が上に向けてめくれ上がるように変形して開状態となる。
【0046】
また、カバー部材30には、蓋部30gを閉状態で保持するための金具(保持部材)32が設けられている。金具32は、上記鋼板材15と同様にステンレス板を塩化ビニルでコーティングしてなるものであり、図2に示すように、全体としてカバー部材30の幅方向に長い略矩形の板状をなしている。金具32の上縁部には、上記係合孔30dに嵌入する爪部32aが設けられている。金具32の爪部32aよりも下側は、カバー部材30の表面において切れ込み部30fよりも下に固着されている。
【0047】
尚、切れ込み部30fは、二次ストレーナ41によりカバー部材30の裏側から覆われている。
【0048】
次に、上記のように構成された目地補修材1を使用して目地の補修を行う要領について説明する。まず、補修する水路Aの形状の対応するように防水シートを切断して補修材本体10を得るとともに、補修材本体10に鋼板材15、15を取り付ける。そして、補修材本体10に、水路Aの所定深さに開口するように通水孔11を形成する。通水孔11の形成位置は、水路Aの大きさや、周囲の土砂の状況に応じて設定すればよい。また、補修材本体10の裏面には、一次ストレーナ40を取り付けておく。
【0049】
そして、補修材本体10を水路Aの目地を覆うように配置して水路A内面に固定する。固定前に、固定プラグ16を嵌入するための嵌入孔(図示せず)をコンクリート製部材Bに形成しておく。また、コンクリート製部材Bの表面には、シーリング材を塗布しておく。その後、固定プラグ16を、補修材本体10及び鋼板材15を貫通させてコンクリート製部材Bの嵌入孔に嵌入する。
【0050】
次いで、逆止弁20の本体側シート材21を補修材本体10に固着して通水孔11と連通孔21aを連通させる。
【0051】
しかる後、水路側シート材22の固着部22aを本体側シート材21に固着する。これにより、逆止弁20が形成される。このように逆止弁20は、補修材本体10に、本体側シート材21及び水路側シート材22を厚み方向に重ねて固着するだけで簡単に形成することができ、しかも、逆止弁20は薄型でコンパクトにまとまり、水路A内への突出量が少なくなる。
【0052】
逆止弁20を形成した後、カバー部材30を取り付ける。カバー部材30には、膨出部30b、出水孔30c、係合孔30d及び切れ込み部30fを予め形成しておき、また、金具32をカバー部材30に取り付ける。そして、カバー部材30を、逆止弁20を覆うように配置した後、カバー部材30の取付部30aを補修材本体10に固着する。
【0053】
カバー部材30を取り付けた後、図3に仮想線で示すように蓋部30gを開いて二次ストレーナ41をカバー部材30と補修材本体10との間に挿入し、その後、同図に実線で示すように蓋部30gを閉じて金具32により保持する。補修完了状態を図9に示す。
【0054】
尚、補修材本体10におけるカバー部材30の周囲に相当する部分を切り抜いてシート材を形成し、このシート材と逆止弁20とカバー部材30とを予め工場で一体化しておき、施工現場において補修材本体10に通水孔11を形成し、上記シート材の周囲を補修材本体10に固着して逆止弁20及びカバー部材30を補修材本体10に取り付け、通水孔11と連通孔21aとを連通させるようにしてもよい。
【0055】
次に、上記のようにして補修された水路Aの機能について説明する。図10に示すように、水路A内側を流れている水の水位が逆止弁20よりも高い場合には、カバー部材30の出水孔30c等からカバー部材30内に水が入っていく。水圧が逆止弁20の水路側シート材22に作用し、該シート材22を本体側シート材21側へ押し付ける。これにより、水路側シート材22の可動排水部22bが本体側シート材21の上縁部に密着して逆止弁20が閉状態となる(図3や図4に示す)。
【0056】
このとき、カバー部材30の上部は可動排水部22bの周りに密閉空間を構成しており、逃げ場を失った空気が溜まって空気溜まりRができる。この空気溜まりRの存在により、水が水路側シート材22の上縁部にまで達しなくなり、水が水路A外へ流出してしまうのを確実に防止できる。
【0057】
また、逆止弁20は薄型、かつ、コンパクトであるため、水路A内側の水の流れの邪魔になりにくく、また、異物等の堆積も起こりにくい。
【0058】
一方、図11に示すように、水路A内側に水が流れていないか、水路A内側の水の水位が逆止弁20よりも低い場合に、水路A外側の土砂に含まれる水位が逆止弁20よりも高くなると、外側の水が目地の漏水部分を通って補修材本体10の裏側に達する。補修材本体10の裏側に達した水は、一次ストレーナ40でろ過された後、通水孔11及び逆止弁20の本体側シート材21の連通孔21aを通って本体側シート材21と水路側シート材22との間に流入する。
【0059】
本体側シート材21と水路側シート材22との間に流入した水の水圧は水路側シート材22を水路A内側へ変形させるように作用し、これにより、水路側シート材22の可動排水部22bが本体側シート材21の上縁部から離れ、逆止弁20が開状態(図12に示す)となり、水がカバー部材30の内部に流入する。カバー部材30の内部に流入した水は、二次ストレーナ41を通過した後、出水孔30cから水路A内側に流入する。従って、水路Aの外部で水位が上昇しても、その水を水路A内側に排水することができるので、補修材本体10に無理な力がかかるのを抑制することができる。
【0060】
二次ストレーナ41を設けていることで、水路A内の水に含まれる異物がカバー部材30内に入るのを抑制することが可能になる。これにより、逆止弁20の機能を長期間に亘って正常に保つことが可能になる。
【0061】
長期間の使用によって二次ストレーナ41に水路A内の異物が詰まった場合には、二次ストレーナ41を交換することが可能である。交換要領について説明すると、まず、金具32の爪部32aを係合孔30dから抜いて蓋部30gをフリーな状態にする。その後、図3に仮想線で示すように、蓋部30gの下側を持って上方へめくり上げて開状態とし、二次ストレーナ41を露出させる。しかる後、二次ストレーナ41を変形させながらカバー部材30内から取り出す。次いで、新しい二次ストレーナ41を変形させながらカバー部材30の開放部分からカバー部材30と補修材本体10との間に挿入し、蓋部30gを閉状態にする。そして、金具32の爪部32aを係合孔30dに嵌入して蓋部30gを閉状態で保持する。
【0062】
以上説明したように、この実施形態によれば、防水性シートからなる補修材本体10に形成した通水孔11に連通する逆止弁20を設け、逆止弁20は、防水性シートからなる本体側シート材21及び水路側シート材22を厚み方向に重ねてなるものとしている。そして、本体側シート材21には通水孔11に連通する連通孔21aを形成し、水路側シート材22は、本体側シート材21の外周側に固着する固着部22aと、外周側に対し接離可能に重ねられた可動排水部22bとを有している。これにより、水路Aの目地の補修時にウイープホールの機能を付与することができ、この場合に、煩雑な作業を不要にして簡単に施工できるとともに、コンパクトにまとめることができて水路A内側の水の流れの邪魔にならないようにすることができる。
【0063】
また、逆止弁20を覆うカバー部材30を備え、カバー部材30は、補修材本体10に固着され、逆止弁20の上部に配置された可動排水部22bに対応して密閉部分を形成する一方、可動排水部22bよりも下側に出水孔30cを形成している。これにより、水路A内側の水位が高い場合に逆止弁20の可動排水部22b周りに空気溜まりRを作ることができ、水路A内側の水が逆止弁20から水路A外へ逆流するのを防止することができる。
【0064】
また、カバー部材30と補修材本体10との間に、二次ストレーナ41を設け、カバー部材30に、二次ストレーナ41の取り出し及び挿入を行うための開放部分を覆う蓋部30gと、蓋部30gを閉状態で保持する金具32とを設けたので、カバー部材30を着脱することなく、二次ストレーナ41を容易に交換することができる。
【0065】
上記実施形態では、カバー部材30で逆止弁20を覆うようにしているので、逆止弁20の損傷を防止できる。尚、カバー部材30を省略してもよい。
【0066】
尚、上記実施形態では、逆止弁20の可動排水部22bを水路A内側の水圧のみを利用して閉状態とするようにしているが、これに限らず、図13〜図15に示す変形例1のように、磁力を併用して閉状態とするようにしてもよい。すなわち、図14及び図15に示すように、逆止弁20の本体側シート材21の上縁部において水路側シート材22と反対側の面に本体側磁石45を取り付け、水路側シート材22の上縁部において本体側シート材21と反対側の面に水路側磁石46を取り付ける。本体側磁石45及び水路側磁石46の極性は、互いに吸引するようにしておく。本体側磁石45及び水路側磁石46の吸引力により、逆止弁20が閉状態となるので、水路A内側の水が外部に洩れるのを確実に防止することができる。本体側磁石45及び水路側磁石46の磁力は、図11に示すように水路A外側の水圧を受けた際に逆止弁20が開くように設定しておけばよい。
【0067】
また、上記実施形態では、逆止弁20の可動排水部22bを該逆止弁20の上部に配置しているが、これに限らず、例えば、可動排水部22bを逆止弁20の側方に配置してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、逆止弁20の水の出口が該逆止弁20の上部に位置しているが、これに限らず、例えば、図16〜図21に示す変形例2のように、逆止弁20の下部に配置してもよいし、また、図示しないが逆止弁20の側部に配置してもよい。
【0069】
変形例2では、図18及び図20に示すように、逆止弁20の本体側シート材21及び水路側シート材22の形状が上記実施形態のものと相違しており、本体側シート材21及び水路側シート材22の上縁部は幅方向中央部が最も上に位置するように緩やかに湾曲している。このように湾曲形成したことで、水路A外側から水圧が作用した際に水路側シート材22が水路A内側へ膨らみ易くなる。これにより、水路側シート材22の可動排水部22bが本体側シート材21から離れ易くなり、水路A外の水が水路A内へ流れ込み易くなる。また、本体側シート材21及び水路側シート材22の下側は、下縁に近づくに従って幅が狭くなるように形成されている。さらに、図16及び図17に示すように、変形例2のカバー部材30の下部には、出水孔30kが幅方向に延びるスリット状に形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明にかかる目地補修材は、例えば農業用水路等を補修する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 目地補修材
10 補修材本体
11 通水孔
15 鋼板材
16 固定プラグ
20 逆止弁
21 本体側シート材(第1部材)
21a 連通孔
22 水路側シート材(第2部材)
22a 固着部
22b 可動排水部
30 カバー部材
30c 出水孔(出水部)
30d 係合孔
30g 蓋部
32 金具(保持部材)
40 一次ストレーナ
41 二次ストレーナ
A 水路
B コンクリート製部材(水路構成部材)
C シーリング
G 土砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下側が地面に埋め込まれて所定方向に延びる水路を構成するように並べられた既設の水路構成部材の目地からの漏水を防止する目地補修材において、
目地の漏水部分を水路内側から覆うように形成されて上記水路構成部材の内面に固定される防水性シートからなる補修材本体と、
上記補修材本体に貫通形成された通水孔に接続される弁手段とを備え、
上記弁手段は、防水性シートからなる第1及び第2部材を厚み方向に重ねてなり、
上記第1部材には上記通水孔に連通する連通孔が貫通形成され、
上記第1部材は、上記連通孔が上記通水孔に接続された状態で上記補修材本体に厚み方向に重ねられて固定され、
上記第2部材は、上記第1部材における上記連通孔よりも外周側の部分に固着された固着部と、該第1部材における外周側の部位に対し接離可能に重ねられた可動排水部とを有していることを特徴とする目地補修材。
【請求項2】
請求項1に記載の目地補修材において、
上記弁手段を水路内側から覆う防水性シートからなるカバー部材を備え、
上記弁手段の可動排水部は、該弁手段の上部に配置されており、
上記カバー部材は、上記補修材本体に固着されて上記弁手段の可動排水部に対応して密閉部分を形成する一方、上記可動排水部よりも下側に出水部を形成することを特徴とする目地補修材。
【請求項3】
請求項2に記載の目地補修材において、
上記カバー部材と上記補修材本体との間には、水路内の水に含まれる異物が該カバー部材の弁手段側へ入るのを抑制するストレーナが設けられ、
上記カバー部材には、該カバー部材と上記補修材本体との間の上記ストレーナの取り出し、及び上記カバー部材と上記補修材本体との間への上記ストレーナの挿入を行うための開放部分を覆う蓋部と、該蓋部を閉状態で保持する保持部材とが設けられていることを特徴とする目地補修材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−11092(P2013−11092A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143925(P2011−143925)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)