盲鋲素子
【課題】全円にわたって延びる膨出部を持つ閉鎖頭部の構成が原則的に必要でないか、他の物体と衝突するかも知れない場合、止め頭部として全円にわたって延びる膨出部の構成を必要としない盲鋲素子を提供する。
【解決手段】据込み頭部2及び軸部3を持つ盲鋲素子1であって、軸部3が、その据込み頭部2から遠い方の端部の範囲に雌ねじ4又はボルト用受入れ部を持ち、かつ雌ねじ4又はボルト用受入れ部と据込み頭部2との間に変形区域5を持ち、軸部3が変形区域5に穴7を持っている。
【解決手段】据込み頭部2及び軸部3を持つ盲鋲素子1であって、軸部3が、その据込み頭部2から遠い方の端部の範囲に雌ねじ4又はボルト用受入れ部を持ち、かつ雌ねじ4又はボルト用受入れ部と据込み頭部2との間に変形区域5を持ち、軸部3が変形区域5に穴7を持っている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、据込み頭部及び軸部を持つ盲鋲素子であって、軸部が、その据込み頭部から遠い方の端部の範囲に雌ねじ又はボルト用受入れ部を持ち、かつ雌ねじ又はボルト用受入れ部と据込み頭部との間に変形区域を持ち、据込み頭部が軸部及びその際形成される止め頭部の変形後、変形区域が膨出部を持ち、この膨出部が軸部の外側でその周方向に延びているものに関する。
【0002】
このような盲鋲素子は例えば盲鋲ナット又は盲鋲ボルトとして構成されている。
【背景技術】
【0003】
欧州特許第1918596号明細書には、最初にあげた種類の盲鋲素子が記載されている。
【0004】
盲鋲素子は取付け目的のために実績があり、この取付け目的では、薄壁材料例えば負荷可能なねじを切ることができない薄板の範囲におけるねじ結合が必要である。盲鋲素子は、膨出部形成従って材料折り目により、対向フランジ−止め頭部を形成する。所定寸法の盲鋲素子が結合される薄壁物体特に薄板の材料厚さが小さいほど、膨出部の外径は大きくなる。しかし膨出部の半径方向長さは、いずれにせよ盲鋲素子の軸部の外径に対して比較的小さい。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19808685号明細書には、盲鋲ナットとして構成されている盲鋲素子が記載されている。この盲鋲ナットでは、止め頭部が形成され始める変形区域の範囲が規定されておらず、特に取付け装置に関係している。盲鋲ナットの据込みの際、変形区域の範囲に囲繞膨出部が形成され、従って軸部の周方向に閉じられており、その結果円全体にわたって延びている。この囲繞する膨出部と据込み頭部との間に、薄壁の物体特に薄板が固定されている。
【0006】
囲繞する膨出部の所定の構成を得るために、欧州特許出願公開第1918596号明細書によれば、軸部が変形区域の中央周範囲に軸部壁の弱め部を持っている。この弱め部は、特に軸部にある複数の穴によって得られる。軸部壁の弱め部のため、盲鋲素子の変形後、囲繞膨出部の形の止め頭部が形成される。
【0007】
別の種類の盲鋲素子が米国特許出願公開第3789728号明細書に記載されている。そこでは盲鋲ナットとして構成される盲鋲素子の軸部が、軸部の縦中心軸線に対して平行に設けられる複数のスリットを備えている。その結果盲鋲素子を据込むと、膨出部状止め頭部が生じるのではなくて、膨出部に比べて著しく大きい半径方向長さを持つロゼットが曲げ出される。それぞれ隣接するロゼットの間にくさび状間隙が形成される。盲鋲ナットの変形される区域の大きい半径方向長さのため、薄板への半径方向外側支持部は、軸部の縦中心軸線から非常に大きく離れている。
【0008】
前述した盲鋲素子は、盲鋲素子がその変形区域の範囲で半径方向外方へ変形できるようにするため、盲鋲素子の据込みの際薄壁素子の後ろに充分な場所がある時にのみ、前述した盲鋲素子が薄壁物体特に薄板に結合可能である。これは、据込みの際ロゼットが形成される盲鋲素子の構成にますます当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、全円にわたって延びる膨出部を持つ閉鎖頭部の構成が原則的に必要でないか、他の物体と衝突するかも知れないので、全円にわたって延びる膨出部を持つ閉鎖頭部の構成が望まれていない、盲鋲素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、最初にあげた種類の盲鋲素子において、膨出部の形成を行わない軸部の範囲において、軸部の材料の除去により膨出部の形成が防止されるように、軸部が形成される。
【0011】
従って本発明による盲鋲素子は、2つの原則的な使用分野において使用される。即ち1つの場合従来の盲鋲素子は使用できないであろう。なぜならば、その据込みの際囲繞膨出部が生じるけれども、所定の形に形成不可能だからである。なぜならば、盲鋲素子の据込みの際軸部の拡張範囲に物体が存在するからである。この場合盲鋲素子のすぐ近くに存在する物体の方へ盲鋲素子が変形しないように形成されている時にのみ、盲鋲素子を据込みできる。別の場合盲鋲の据込みの際膨出部の囲繞構成のため、基本的に十分な場所が存在するであろう。しかし特定の理由から、この場所は完全には確保されないので、盲鋲素子の据込みの際部分円にわたってのみ延びる膨出部を形成すれば十分である。従って残っている部分円には膨出部は形成されない。盲鋲素子におけるこのような膨出部形成は、例えば盲鋲素子が著しい半径方向成分を持つ力を加えられる時有利である。この場合囲繞する膨出部にわたって膨出部を据込み頭部との間に最大締付け面が形成されることが必ずしも重要ではない。
【0012】
従って本発明による盲鋲素子では、膨出部の形成を行うべきでない軸部の範囲において、軸部の材料の除去によって膨出部の形成が防止される。
【0013】
軸部から材料の除去は、種々のやり方で行うことができ、軸部の関心のある範囲に膨出部が形成されないことが保証される限り、異なる量の材料を軸部から除去することができる。
【0014】
盲鋲素子の製造の際、関心のある範囲において、例えば盲鋲素子の素材のプレスの際、軸部に穴又は切欠きを入れることによって、軸部から材料を除去することができる。他方盲鋲素子を製造する際、例えば機械加工により、関心のある範囲において軸部から材料を除去することができる。軸部の関心のある範囲における材料の除去がしばしば行われ、その際材料の除去により、本発明による目的を実現する貫通孔が軸部に形成される。この方策によっても、この範囲における軸部が、盲鋲素子の据込みの際膨出部が形成されないほど僅かな材料を持っているようにすることができる。それは好ましいものとみなされる。なぜならば、軸部が穴特に盲鋲素子の据込み前に円断面を持つ穴を持っていることによって、軸部の材料の除去により膨出部の形成を防止するための最も簡単なやり方を示しているからである。前述したように、この穴特に盲鋲素子の据込み前に円断面を持つ穴によって、盲鋲素子の据込みの際膨出部の形成に寄与できる材料が十分に利用可能でないようにすることができる。従って軸部のこの範囲には膨出部は形成されていない。
【0015】
軸部の範囲における材料除去により、従って軸部壁の厚さを減少されない隣接範囲に比べて軸部壁の壁厚を減少することによって、所定の軸部範囲において膨出部形成が防止され、具体的に軸部の材料が減少されている範囲において防止される。これは、軸部の1つの個所又は2つの個所における軸部の材料の除去によって、盲鋲の据込みの際膨出部が形成されない1つ又は2つの軸部範囲を規定するのを可能にする。軸部の1個所の範囲における材料の除去の際、軸部の1つの側に膨出部が形成されない。軸部の材料が除去されている2つの範囲、特に軸部の互いに反対側にある範囲が設けられていると、軸部のこれらの反対側に、膨出部が形成されない2つの範囲が構成されている。
【0016】
盲鋲素子のこの形成は、例えば溝状部材の底にある穴に盲鋲素子が差通された後、この盲鋲素子を取付けようとする時、盲鋲素子の使用を可能にし、その際溝状部材は、軸部の縦範囲に対して平行に区画壁を持っている。区画壁の範囲では軸部の材料が除去されており、盲鋲素子の据込みの際、軸部は区画壁の方向へ全く又は僅かしか変形しないので、区画壁の範囲における盲鋲素子の据込みが可能である。区画壁のこの範囲にのみ、膨出部が形成されておらず、軸部の残りの周範囲には、盲鋲の据込み後に膨出部が存在する。従って盲鋲素子は、一方では薄壁の部材により固定的に、従って溝状部材の底の範囲に取付けられ、他方では区画壁の近くに位置している。
【0017】
溝状部材の幅が非常に狭く、従って2つの区画壁が比較的僅かな相互間隔で設けられている場合、盲鋲素子が互いに反対の側に材料太さを減少された軸部を持っている。従って軸部のこれらの側で、材料が除去されている。これにより、軸部のこれらの互いに反対の側における膨出部形成が防止される。軸部が穴を持ち、盲鋲素子の据込み前における穴の長さが、軸部の軸線方向において、盲鋲素子の据込み後における軸部の軸線方向範囲における変形区域の長さに少なくとも一致していることによって、膨出部の形成が防止される。特にこれにより、軸部のこの範囲に膨出部が形成不可能であることが保証されている。なぜならば、穴の形成による材料除去のため、膨出部の形成に寄与する材料が利用不可能だからである。
【0018】
本発明のそれ以外の特徴は、従属請求項、図の説明及び図自体に示されており、ここで注意すべきことは、個々の特徴及びこれら個々の特徴のすべての組合わせが本発明にとって重要である、ということである。
【0019】
図には、異なる使用のための複数の実施例により本発明が示されているが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の第1実施例のために、盲鋲ナットとして形成される盲鋲素子を正面図(右半分)及び縦断面図(左半分)で示す。
【図2】 図1による盲鋲ナットを正面図及び縦中心断面図で示すが、図1の表示に対し縦軸線の周りに90°回されている。
【図3】 盲鋲ナットの据込み後における薄壁物体(薄板)及び図1及び2に記載の実施例による盲鋲ナットの装置を縦中心断面図で示す。
【図4】 図3の矢印IVの方向に見た図3による装置の図を示す。
【図5】 空所を規定するL字状物体の脚辺に使用される図1及び2の実施例による盲鋲を示す。
【図6】 図5の矢印VIの方向に見た図5による装置を示す。
【図7】 盲鋲ナットとして構成される盲鋲素子の第2実施例を図1による図で示す。
【図8】 盲鋲ナットとして構成される盲鋲素子の第2実施例を図2による図で示す。
【図9】 盲鋲ナット及び薄壁物体(薄板)の装置を図3に相当する図で示す。
【図10】 盲鋲ナット及び薄壁物体(薄板)の装置を図4に相当する図で示し、図10は図9のX方向に見た図である。
【図11】 図7及び8の実施例による盲鋲素子及びこれと共同作用する部材の装置を示し、部材は底と2つの平行な区画壁を持っている。
【図12】 図11による装置を矢印XIIの方向に見た図を示す。
【図13】 図7の実施例に相当する盲鋲ナットを示す。
【図14】 図13の孔を通る断面を示す。
【図15】 図9に相当する盲鋲ナットを示す。
【図16】 図15における膨出部の断面図を示す。
【図17】 図16とは異なる膨出部の断面図を示す。
【図18】 盲鋲ナットの穴を持たない軸部の断面図を示す。
【図19】 盲鋲ナットの2つの穴を持つ軸部の断面図を示す。
【図20】 図7による盲鋲ナットを示す。
【図21】 厚壁の部材に鋲止めされる盲鋲ナットを示す。
【図22】 図21のXXII線に沿う断面図を示す。
【図23】 盲鋲ボルトの正面図を示す。
【図24】 盲鋲ボルトの側面図を示す。
【図25】 板状部材に関連して使用される盲鋲ボルトを示す。
【図26】 図25による盲鋲ボルトを矢印XXVIの方向に見た図を示す。
【図27】 別の部材に関連して使用される盲鋲ボルトを示す。
【図28】 図27による盲鋲ボルトを矢印XXVIIIの方向に見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1実施例として、据込みされる前の盲鋲ナット1を示す。盲鋲ナット1は据込み頭部2と軸部3を持っている。軸部3は、据込み頭部2から遠い方の端部の範囲に雌ねじ4を持ち、雌ねじ4と据込み頭部2との間に変形区域5を持っている。原則的にこの変形区域5は据込み頭部2の所まで達している。なぜならば、盲鋲ナット1は、この範囲において、雌ねじ4へ引張り力を導入すると、変形することがあるからである。実際には、盲鋲ナットが板状部材6特に薄板6に結合されるので、この変形区域5が、雌ねじ4の範囲から、板状部材6の据込み頭部2から遠い方の側までしか達していないからである。
【0022】
据込み頭部2は軸部3より大きい外径を持っている。軸部3の外径は一定である。変形区域5の範囲における軸部3の内径も一定であり、据込み頭部2の内径に等しい。雌ねじ4の内径は変形区域5の範囲における軸部3の内径より小さい。前記の表示は盲鋲1の変形しない状態に関するものである。
【0023】
盲鋲ナット1は、その変形区域5の範囲に、軸部3を貫通する円形断面の穴7を備えている。例えば盲鋲ナット1において、軸部3の外径は9mmであり、穴7の直径は4mmである。穴7の回転軸線は、据込みされない盲鋲ナット1に関して、軸部3の変形区域5の縦中心軸線と交差している。
【0024】
盲鋲ナット1は、その軸部3を薄板6にある円形断面の穴9に通される。盲鋲ナット1の軸部3の外径は穴9の直径より少し小さい。盲鋲ナット1の据込み頭部2は薄板6に当接している。それから図示しないねじ付き心金が据込み頭部2の範囲で盲鋲ナット1へ導入され、そこから雌ねじ4へねじ込まれる。ねじ付き心金を持ちかつ据込み頭部2に支持される盲鋲据込み装置により、盲鋲ナット1の据込まれた状態について図3に示されていれるように、盲鋲ナット1が取付けられる。盲鋲ナット1の据込みの際、据込み頭部2が軸線方向に固定されている場合、雌ねじ4を介して力が盲鋲ナット1へ導入されるので、盲鋲ナット1が変形区域5の範囲で変形される。膨出部10が形成されるけれども、図4からわかるように、この膨出部は囲繞しておらず、従って全円にわたって延びているのではなく、中断されている。穴7の形成により軸部3の材料を除去するため、軸部3のこの範囲では、盲鋲ナット1の据込みの際、この穴9の範囲に膨出部を形成するために、材料が全く又は非常に僅かしか利用可能でない。膨出部10は、その半径方向外側輪郭に関して、盲鋲ナット1の縦中心軸線8に関して約270°の角にわたって延びている。
【0025】
膨出部10が形成されない変形区域5の側は、盲鋲ナットの据込み後、図4の表示からわかるように、薄板6に対して直角に設けられかつ雌ねじ4から遠い方にある軸部3の外側輪郭の範囲で軸部3に対して接線方向に延びる区画面として示されている。これは、特に図5及び6からわかるように、図1及び2の実施例による盲鋲ナット1を、板状部材6及びこれに対して直角に延びる区画壁11を持つ物体に取付けるのを可能にする。この区画壁11、板状部材6及び図示しない別の部材は、特に空所12を形成する。盲鋲ナット1はその軸部3を板状部材6の穴9へ差込まれ、部材6から突出する軸部3が空所12内へ延びている。穴7は区画壁11の内面13に隣接してそのすぐ近くに設けられている。盲鋲ナット1を据込む際、従って変形区域5を部材6へ向かって変形する際、区画壁11に近い方にある範囲15は変形に関与しない。なぜならば、穴7を持つ軸部3の構成のため、区画壁11に隣接して膨出部10を形成するのに十分な材料がそこには存在しないからである。
【0026】
これに関連して、盲鋲ナット1の変形の際膨出部10の端部範囲に僅かな突起14が生じても、無害である。これらの突起14の範囲で盲鋲ナット1が区画壁11に接触するか、又は突起14が区画壁11へ少し食い込む。区画壁11及び板状部材6は、なるべくアルミニウム又はプラスチックから成っている。
【0027】
図7及び8の実施例による盲鋲ナット1は、図1及び2の実施例とは、1つの穴7の代わりに同じ寸法及び同じ配置の2つの穴7が変形区域5の範囲において軸部3の互いに反対の側に設けられているという点でのみ、相違している。従って両方の穴7の縦中心軸線は、据込みされない盲鋲ナット1に関して、直角をなして変形区域5の縦中心軸線と交差している。その結果盲鋲ナット1の据込みの際、膨出部10は、図1〜6の実施例におけるように1回でなく、2回中断されている。従って軸部3の互いに反対の側に設けられる2つの範囲15が形成され、これらの範囲の間に膨出部10がある。膨出部の形成を防止するため、軸部3の材料が穴7の形成により除去されている両方の範囲15を持つ盲鋲ナット1の構成は、空所を形成する溝状部材に盲鋲ナット1を取付けるのを可能にし、この溝状部材は、板状の部材6とこの板状部材6に対して直角にかつ互いに平行に設けられる区画壁11とにより形成されている。変形された変形区域5の範囲における盲鋲1の直径より著しく小さい両方の区画壁11の小さい間隔にもかかわらず、盲鋲ナット1を両方の区画壁11の間に設け、そこで据込みすることができる。この場合盲鋲1の変形は、区画壁11の間に形成される溝の縦範囲においてのみ行われる。
【0028】
図1及び3又は図7及び9の実施例では、それぞれの穴7が次のような直径を持っている。即ち盲鋲素子1の据込み前に軸部3の軸線方向における直径の寸法が盲鋲素子1の据込み後に軸部3の軸線方向における変形区域5の寸法に少なくとも等しい。
【0029】
盲鋲素子を盲鋲ナット1として構成する代わりに、盲鋲素子を全く盲鋲ボルトとして構成することができる。盲鋲ボルトでは、軸部が、据込み頭部から遠い方の端部の範囲に、ボルト用受入れ部を持ち、ボルト用受入れ部と据込み頭部との間に変形区域を持っている。
【0030】
図13及び14は、図7及び8の実施例に従って構成されている盲鋲ナットを示す。具体的な実験装置では、この盲鋲ナット1は2つの対向する穴7を持ち、穴の直径はそれぞれ4.2mmである。軸部3は9mmの外径を持っている。これが図13からわかる。図14からわかるように、この幾何学的条件に基いて、変形されない盲鋲ナット1の変形区域5の範囲における軸部3の円弧について考えて、計算により4.2mmの開口寸法及び両方の穴7の間の変形区域5の7.96mmの寸法が生じる。それぞれの穴7の範囲における開き角は55.64°である。
【0031】
図15は、板状部材6に鋲止めされて膨出部10を形成される盲鋲ナット1を示す。この場合実際には、図15に示されているように、13mmの膨出部外径が生じる。図16は、ナットの据込みの際膨出部10の範囲において本来予想される大きさの状態を示す。ナットの据込みの際、膨出部10の範囲においても55.64°の穴開き角が維持されることを期待できるので、膨出部10の周囲に、6.7mmの変形された穴7の開口寸法が生じなければならず、従ってそれぞれの膨出部10の外側円弧に対して11.5mmの寸法が生じるであろう。しかし実際には驚くべきことにこれは事実とは異なり、図17に示すような状態が生じる。即ち開き角(55.64°)は著しく増大されており、図16による11.5mmの寸法の代わりに、図17による僅か9.8mmの寸法が生じる。従って図10の膨出部に相当する図17の両方の膨出部10は、大体において盲鋲ナット1の互いに反対の側に設けられている。
【0032】
図18及び19は、図17による膨出部10の予想されない変形に対する可能な説明として役立つ。
【0033】
図18は、軸部3が穴7を持たない盲鋲ナット1において、変形区域5に周囲にわたる膨出部形成の際、均一な変形力が作用することを示している。これらの力は前周にわたって示されている。その際このような盲鋲1の変形の際、周囲に正確に均一に囲繞する膨出部が生じる。図19は、2つの穴7(1つの穴7のみを設けることもできる)を持つ軸部3を形成する際、変形力が直径方向に著しく強く作用し、両方の穴7の方向に僅かな力しか作用できないことを示している。これにより、図17による膨出部10の構成が生じるものと思われる。
【0034】
図20は図7及び8の実施例による盲鋲ナット1を示す。図21及び22からわかるように、この盲鋲ナット1は、圧縮可能な材料例えば木材から成る厚壁の部材6に鋲止めされている。盲鋲ナット1の変形区域5は部材6の範囲にあるので、盲鋲ナット1の据込みの際、形成される両方の膨出部10が圧縮可能な材料の中へ伸びることになる。図22からわかるように、両方の膨出部10の構成により、盲鋲ナット1の回り止めが行われる。もちろんこの回り止めは、図1による盲鋲ナット1の実施例におけるように、ただ1つの膨出部10が形成される時にも保証される。
【0035】
図23〜28は、盲鋲ボルト1としての盲鋲素子の構成と、図25及び26に示されているような板状部材6又は図27及び28に示されているような平行区画壁11を持つ部材6に関連するその使用を示す。図7〜12による実施例と一致する部材は、図23〜28に同じ符号を付けられている。図26は図25において矢印XXVIの方向に見た図であり、図28は図27において矢印XXVIIIの方向に見た図である。
【0036】
盲鋲ボルトとして形成される盲鋲素子1の表示のように、図23〜28の表示によりわかるように、盲鋲ボルトの軸部3は、据込み頭部2から遠い方の端部の範囲にボルト17用受入れ部16を持ち、受入れ部16と据込み頭部2との間に変形区域5を持っている。図23〜28によるこれらの実施例に対するそれ以上の説明のために、図7〜12の実施例に関する前述の説明が参照される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、据込み頭部及び軸部を持つ盲鋲素子であって、軸部が、その据込み頭部から遠い方の端部の範囲に雌ねじ又はボルト用受入れ部を持ち、かつ雌ねじ又はボルト用受入れ部と据込み頭部との間に変形区域を持ち、据込み頭部が軸部及びその際形成される止め頭部の変形後、変形区域が膨出部を持ち、この膨出部が軸部の外側でその周方向に延びているものに関する。
【0002】
このような盲鋲素子は例えば盲鋲ナット又は盲鋲ボルトとして構成されている。
【背景技術】
【0003】
欧州特許第1918596号明細書には、最初にあげた種類の盲鋲素子が記載されている。
【0004】
盲鋲素子は取付け目的のために実績があり、この取付け目的では、薄壁材料例えば負荷可能なねじを切ることができない薄板の範囲におけるねじ結合が必要である。盲鋲素子は、膨出部形成従って材料折り目により、対向フランジ−止め頭部を形成する。所定寸法の盲鋲素子が結合される薄壁物体特に薄板の材料厚さが小さいほど、膨出部の外径は大きくなる。しかし膨出部の半径方向長さは、いずれにせよ盲鋲素子の軸部の外径に対して比較的小さい。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19808685号明細書には、盲鋲ナットとして構成されている盲鋲素子が記載されている。この盲鋲ナットでは、止め頭部が形成され始める変形区域の範囲が規定されておらず、特に取付け装置に関係している。盲鋲ナットの据込みの際、変形区域の範囲に囲繞膨出部が形成され、従って軸部の周方向に閉じられており、その結果円全体にわたって延びている。この囲繞する膨出部と据込み頭部との間に、薄壁の物体特に薄板が固定されている。
【0006】
囲繞する膨出部の所定の構成を得るために、欧州特許出願公開第1918596号明細書によれば、軸部が変形区域の中央周範囲に軸部壁の弱め部を持っている。この弱め部は、特に軸部にある複数の穴によって得られる。軸部壁の弱め部のため、盲鋲素子の変形後、囲繞膨出部の形の止め頭部が形成される。
【0007】
別の種類の盲鋲素子が米国特許出願公開第3789728号明細書に記載されている。そこでは盲鋲ナットとして構成される盲鋲素子の軸部が、軸部の縦中心軸線に対して平行に設けられる複数のスリットを備えている。その結果盲鋲素子を据込むと、膨出部状止め頭部が生じるのではなくて、膨出部に比べて著しく大きい半径方向長さを持つロゼットが曲げ出される。それぞれ隣接するロゼットの間にくさび状間隙が形成される。盲鋲ナットの変形される区域の大きい半径方向長さのため、薄板への半径方向外側支持部は、軸部の縦中心軸線から非常に大きく離れている。
【0008】
前述した盲鋲素子は、盲鋲素子がその変形区域の範囲で半径方向外方へ変形できるようにするため、盲鋲素子の据込みの際薄壁素子の後ろに充分な場所がある時にのみ、前述した盲鋲素子が薄壁物体特に薄板に結合可能である。これは、据込みの際ロゼットが形成される盲鋲素子の構成にますます当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、全円にわたって延びる膨出部を持つ閉鎖頭部の構成が原則的に必要でないか、他の物体と衝突するかも知れないので、全円にわたって延びる膨出部を持つ閉鎖頭部の構成が望まれていない、盲鋲素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、最初にあげた種類の盲鋲素子において、膨出部の形成を行わない軸部の範囲において、軸部の材料の除去により膨出部の形成が防止されるように、軸部が形成される。
【0011】
従って本発明による盲鋲素子は、2つの原則的な使用分野において使用される。即ち1つの場合従来の盲鋲素子は使用できないであろう。なぜならば、その据込みの際囲繞膨出部が生じるけれども、所定の形に形成不可能だからである。なぜならば、盲鋲素子の据込みの際軸部の拡張範囲に物体が存在するからである。この場合盲鋲素子のすぐ近くに存在する物体の方へ盲鋲素子が変形しないように形成されている時にのみ、盲鋲素子を据込みできる。別の場合盲鋲の据込みの際膨出部の囲繞構成のため、基本的に十分な場所が存在するであろう。しかし特定の理由から、この場所は完全には確保されないので、盲鋲素子の据込みの際部分円にわたってのみ延びる膨出部を形成すれば十分である。従って残っている部分円には膨出部は形成されない。盲鋲素子におけるこのような膨出部形成は、例えば盲鋲素子が著しい半径方向成分を持つ力を加えられる時有利である。この場合囲繞する膨出部にわたって膨出部を据込み頭部との間に最大締付け面が形成されることが必ずしも重要ではない。
【0012】
従って本発明による盲鋲素子では、膨出部の形成を行うべきでない軸部の範囲において、軸部の材料の除去によって膨出部の形成が防止される。
【0013】
軸部から材料の除去は、種々のやり方で行うことができ、軸部の関心のある範囲に膨出部が形成されないことが保証される限り、異なる量の材料を軸部から除去することができる。
【0014】
盲鋲素子の製造の際、関心のある範囲において、例えば盲鋲素子の素材のプレスの際、軸部に穴又は切欠きを入れることによって、軸部から材料を除去することができる。他方盲鋲素子を製造する際、例えば機械加工により、関心のある範囲において軸部から材料を除去することができる。軸部の関心のある範囲における材料の除去がしばしば行われ、その際材料の除去により、本発明による目的を実現する貫通孔が軸部に形成される。この方策によっても、この範囲における軸部が、盲鋲素子の据込みの際膨出部が形成されないほど僅かな材料を持っているようにすることができる。それは好ましいものとみなされる。なぜならば、軸部が穴特に盲鋲素子の据込み前に円断面を持つ穴を持っていることによって、軸部の材料の除去により膨出部の形成を防止するための最も簡単なやり方を示しているからである。前述したように、この穴特に盲鋲素子の据込み前に円断面を持つ穴によって、盲鋲素子の据込みの際膨出部の形成に寄与できる材料が十分に利用可能でないようにすることができる。従って軸部のこの範囲には膨出部は形成されていない。
【0015】
軸部の範囲における材料除去により、従って軸部壁の厚さを減少されない隣接範囲に比べて軸部壁の壁厚を減少することによって、所定の軸部範囲において膨出部形成が防止され、具体的に軸部の材料が減少されている範囲において防止される。これは、軸部の1つの個所又は2つの個所における軸部の材料の除去によって、盲鋲の据込みの際膨出部が形成されない1つ又は2つの軸部範囲を規定するのを可能にする。軸部の1個所の範囲における材料の除去の際、軸部の1つの側に膨出部が形成されない。軸部の材料が除去されている2つの範囲、特に軸部の互いに反対側にある範囲が設けられていると、軸部のこれらの反対側に、膨出部が形成されない2つの範囲が構成されている。
【0016】
盲鋲素子のこの形成は、例えば溝状部材の底にある穴に盲鋲素子が差通された後、この盲鋲素子を取付けようとする時、盲鋲素子の使用を可能にし、その際溝状部材は、軸部の縦範囲に対して平行に区画壁を持っている。区画壁の範囲では軸部の材料が除去されており、盲鋲素子の据込みの際、軸部は区画壁の方向へ全く又は僅かしか変形しないので、区画壁の範囲における盲鋲素子の据込みが可能である。区画壁のこの範囲にのみ、膨出部が形成されておらず、軸部の残りの周範囲には、盲鋲の据込み後に膨出部が存在する。従って盲鋲素子は、一方では薄壁の部材により固定的に、従って溝状部材の底の範囲に取付けられ、他方では区画壁の近くに位置している。
【0017】
溝状部材の幅が非常に狭く、従って2つの区画壁が比較的僅かな相互間隔で設けられている場合、盲鋲素子が互いに反対の側に材料太さを減少された軸部を持っている。従って軸部のこれらの側で、材料が除去されている。これにより、軸部のこれらの互いに反対の側における膨出部形成が防止される。軸部が穴を持ち、盲鋲素子の据込み前における穴の長さが、軸部の軸線方向において、盲鋲素子の据込み後における軸部の軸線方向範囲における変形区域の長さに少なくとも一致していることによって、膨出部の形成が防止される。特にこれにより、軸部のこの範囲に膨出部が形成不可能であることが保証されている。なぜならば、穴の形成による材料除去のため、膨出部の形成に寄与する材料が利用不可能だからである。
【0018】
本発明のそれ以外の特徴は、従属請求項、図の説明及び図自体に示されており、ここで注意すべきことは、個々の特徴及びこれら個々の特徴のすべての組合わせが本発明にとって重要である、ということである。
【0019】
図には、異なる使用のための複数の実施例により本発明が示されているが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の第1実施例のために、盲鋲ナットとして形成される盲鋲素子を正面図(右半分)及び縦断面図(左半分)で示す。
【図2】 図1による盲鋲ナットを正面図及び縦中心断面図で示すが、図1の表示に対し縦軸線の周りに90°回されている。
【図3】 盲鋲ナットの据込み後における薄壁物体(薄板)及び図1及び2に記載の実施例による盲鋲ナットの装置を縦中心断面図で示す。
【図4】 図3の矢印IVの方向に見た図3による装置の図を示す。
【図5】 空所を規定するL字状物体の脚辺に使用される図1及び2の実施例による盲鋲を示す。
【図6】 図5の矢印VIの方向に見た図5による装置を示す。
【図7】 盲鋲ナットとして構成される盲鋲素子の第2実施例を図1による図で示す。
【図8】 盲鋲ナットとして構成される盲鋲素子の第2実施例を図2による図で示す。
【図9】 盲鋲ナット及び薄壁物体(薄板)の装置を図3に相当する図で示す。
【図10】 盲鋲ナット及び薄壁物体(薄板)の装置を図4に相当する図で示し、図10は図9のX方向に見た図である。
【図11】 図7及び8の実施例による盲鋲素子及びこれと共同作用する部材の装置を示し、部材は底と2つの平行な区画壁を持っている。
【図12】 図11による装置を矢印XIIの方向に見た図を示す。
【図13】 図7の実施例に相当する盲鋲ナットを示す。
【図14】 図13の孔を通る断面を示す。
【図15】 図9に相当する盲鋲ナットを示す。
【図16】 図15における膨出部の断面図を示す。
【図17】 図16とは異なる膨出部の断面図を示す。
【図18】 盲鋲ナットの穴を持たない軸部の断面図を示す。
【図19】 盲鋲ナットの2つの穴を持つ軸部の断面図を示す。
【図20】 図7による盲鋲ナットを示す。
【図21】 厚壁の部材に鋲止めされる盲鋲ナットを示す。
【図22】 図21のXXII線に沿う断面図を示す。
【図23】 盲鋲ボルトの正面図を示す。
【図24】 盲鋲ボルトの側面図を示す。
【図25】 板状部材に関連して使用される盲鋲ボルトを示す。
【図26】 図25による盲鋲ボルトを矢印XXVIの方向に見た図を示す。
【図27】 別の部材に関連して使用される盲鋲ボルトを示す。
【図28】 図27による盲鋲ボルトを矢印XXVIIIの方向に見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1実施例として、据込みされる前の盲鋲ナット1を示す。盲鋲ナット1は据込み頭部2と軸部3を持っている。軸部3は、据込み頭部2から遠い方の端部の範囲に雌ねじ4を持ち、雌ねじ4と据込み頭部2との間に変形区域5を持っている。原則的にこの変形区域5は据込み頭部2の所まで達している。なぜならば、盲鋲ナット1は、この範囲において、雌ねじ4へ引張り力を導入すると、変形することがあるからである。実際には、盲鋲ナットが板状部材6特に薄板6に結合されるので、この変形区域5が、雌ねじ4の範囲から、板状部材6の据込み頭部2から遠い方の側までしか達していないからである。
【0022】
据込み頭部2は軸部3より大きい外径を持っている。軸部3の外径は一定である。変形区域5の範囲における軸部3の内径も一定であり、据込み頭部2の内径に等しい。雌ねじ4の内径は変形区域5の範囲における軸部3の内径より小さい。前記の表示は盲鋲1の変形しない状態に関するものである。
【0023】
盲鋲ナット1は、その変形区域5の範囲に、軸部3を貫通する円形断面の穴7を備えている。例えば盲鋲ナット1において、軸部3の外径は9mmであり、穴7の直径は4mmである。穴7の回転軸線は、据込みされない盲鋲ナット1に関して、軸部3の変形区域5の縦中心軸線と交差している。
【0024】
盲鋲ナット1は、その軸部3を薄板6にある円形断面の穴9に通される。盲鋲ナット1の軸部3の外径は穴9の直径より少し小さい。盲鋲ナット1の据込み頭部2は薄板6に当接している。それから図示しないねじ付き心金が据込み頭部2の範囲で盲鋲ナット1へ導入され、そこから雌ねじ4へねじ込まれる。ねじ付き心金を持ちかつ据込み頭部2に支持される盲鋲据込み装置により、盲鋲ナット1の据込まれた状態について図3に示されていれるように、盲鋲ナット1が取付けられる。盲鋲ナット1の据込みの際、据込み頭部2が軸線方向に固定されている場合、雌ねじ4を介して力が盲鋲ナット1へ導入されるので、盲鋲ナット1が変形区域5の範囲で変形される。膨出部10が形成されるけれども、図4からわかるように、この膨出部は囲繞しておらず、従って全円にわたって延びているのではなく、中断されている。穴7の形成により軸部3の材料を除去するため、軸部3のこの範囲では、盲鋲ナット1の据込みの際、この穴9の範囲に膨出部を形成するために、材料が全く又は非常に僅かしか利用可能でない。膨出部10は、その半径方向外側輪郭に関して、盲鋲ナット1の縦中心軸線8に関して約270°の角にわたって延びている。
【0025】
膨出部10が形成されない変形区域5の側は、盲鋲ナットの据込み後、図4の表示からわかるように、薄板6に対して直角に設けられかつ雌ねじ4から遠い方にある軸部3の外側輪郭の範囲で軸部3に対して接線方向に延びる区画面として示されている。これは、特に図5及び6からわかるように、図1及び2の実施例による盲鋲ナット1を、板状部材6及びこれに対して直角に延びる区画壁11を持つ物体に取付けるのを可能にする。この区画壁11、板状部材6及び図示しない別の部材は、特に空所12を形成する。盲鋲ナット1はその軸部3を板状部材6の穴9へ差込まれ、部材6から突出する軸部3が空所12内へ延びている。穴7は区画壁11の内面13に隣接してそのすぐ近くに設けられている。盲鋲ナット1を据込む際、従って変形区域5を部材6へ向かって変形する際、区画壁11に近い方にある範囲15は変形に関与しない。なぜならば、穴7を持つ軸部3の構成のため、区画壁11に隣接して膨出部10を形成するのに十分な材料がそこには存在しないからである。
【0026】
これに関連して、盲鋲ナット1の変形の際膨出部10の端部範囲に僅かな突起14が生じても、無害である。これらの突起14の範囲で盲鋲ナット1が区画壁11に接触するか、又は突起14が区画壁11へ少し食い込む。区画壁11及び板状部材6は、なるべくアルミニウム又はプラスチックから成っている。
【0027】
図7及び8の実施例による盲鋲ナット1は、図1及び2の実施例とは、1つの穴7の代わりに同じ寸法及び同じ配置の2つの穴7が変形区域5の範囲において軸部3の互いに反対の側に設けられているという点でのみ、相違している。従って両方の穴7の縦中心軸線は、据込みされない盲鋲ナット1に関して、直角をなして変形区域5の縦中心軸線と交差している。その結果盲鋲ナット1の据込みの際、膨出部10は、図1〜6の実施例におけるように1回でなく、2回中断されている。従って軸部3の互いに反対の側に設けられる2つの範囲15が形成され、これらの範囲の間に膨出部10がある。膨出部の形成を防止するため、軸部3の材料が穴7の形成により除去されている両方の範囲15を持つ盲鋲ナット1の構成は、空所を形成する溝状部材に盲鋲ナット1を取付けるのを可能にし、この溝状部材は、板状の部材6とこの板状部材6に対して直角にかつ互いに平行に設けられる区画壁11とにより形成されている。変形された変形区域5の範囲における盲鋲1の直径より著しく小さい両方の区画壁11の小さい間隔にもかかわらず、盲鋲ナット1を両方の区画壁11の間に設け、そこで据込みすることができる。この場合盲鋲1の変形は、区画壁11の間に形成される溝の縦範囲においてのみ行われる。
【0028】
図1及び3又は図7及び9の実施例では、それぞれの穴7が次のような直径を持っている。即ち盲鋲素子1の据込み前に軸部3の軸線方向における直径の寸法が盲鋲素子1の据込み後に軸部3の軸線方向における変形区域5の寸法に少なくとも等しい。
【0029】
盲鋲素子を盲鋲ナット1として構成する代わりに、盲鋲素子を全く盲鋲ボルトとして構成することができる。盲鋲ボルトでは、軸部が、据込み頭部から遠い方の端部の範囲に、ボルト用受入れ部を持ち、ボルト用受入れ部と据込み頭部との間に変形区域を持っている。
【0030】
図13及び14は、図7及び8の実施例に従って構成されている盲鋲ナットを示す。具体的な実験装置では、この盲鋲ナット1は2つの対向する穴7を持ち、穴の直径はそれぞれ4.2mmである。軸部3は9mmの外径を持っている。これが図13からわかる。図14からわかるように、この幾何学的条件に基いて、変形されない盲鋲ナット1の変形区域5の範囲における軸部3の円弧について考えて、計算により4.2mmの開口寸法及び両方の穴7の間の変形区域5の7.96mmの寸法が生じる。それぞれの穴7の範囲における開き角は55.64°である。
【0031】
図15は、板状部材6に鋲止めされて膨出部10を形成される盲鋲ナット1を示す。この場合実際には、図15に示されているように、13mmの膨出部外径が生じる。図16は、ナットの据込みの際膨出部10の範囲において本来予想される大きさの状態を示す。ナットの据込みの際、膨出部10の範囲においても55.64°の穴開き角が維持されることを期待できるので、膨出部10の周囲に、6.7mmの変形された穴7の開口寸法が生じなければならず、従ってそれぞれの膨出部10の外側円弧に対して11.5mmの寸法が生じるであろう。しかし実際には驚くべきことにこれは事実とは異なり、図17に示すような状態が生じる。即ち開き角(55.64°)は著しく増大されており、図16による11.5mmの寸法の代わりに、図17による僅か9.8mmの寸法が生じる。従って図10の膨出部に相当する図17の両方の膨出部10は、大体において盲鋲ナット1の互いに反対の側に設けられている。
【0032】
図18及び19は、図17による膨出部10の予想されない変形に対する可能な説明として役立つ。
【0033】
図18は、軸部3が穴7を持たない盲鋲ナット1において、変形区域5に周囲にわたる膨出部形成の際、均一な変形力が作用することを示している。これらの力は前周にわたって示されている。その際このような盲鋲1の変形の際、周囲に正確に均一に囲繞する膨出部が生じる。図19は、2つの穴7(1つの穴7のみを設けることもできる)を持つ軸部3を形成する際、変形力が直径方向に著しく強く作用し、両方の穴7の方向に僅かな力しか作用できないことを示している。これにより、図17による膨出部10の構成が生じるものと思われる。
【0034】
図20は図7及び8の実施例による盲鋲ナット1を示す。図21及び22からわかるように、この盲鋲ナット1は、圧縮可能な材料例えば木材から成る厚壁の部材6に鋲止めされている。盲鋲ナット1の変形区域5は部材6の範囲にあるので、盲鋲ナット1の据込みの際、形成される両方の膨出部10が圧縮可能な材料の中へ伸びることになる。図22からわかるように、両方の膨出部10の構成により、盲鋲ナット1の回り止めが行われる。もちろんこの回り止めは、図1による盲鋲ナット1の実施例におけるように、ただ1つの膨出部10が形成される時にも保証される。
【0035】
図23〜28は、盲鋲ボルト1としての盲鋲素子の構成と、図25及び26に示されているような板状部材6又は図27及び28に示されているような平行区画壁11を持つ部材6に関連するその使用を示す。図7〜12による実施例と一致する部材は、図23〜28に同じ符号を付けられている。図26は図25において矢印XXVIの方向に見た図であり、図28は図27において矢印XXVIIIの方向に見た図である。
【0036】
盲鋲ボルトとして形成される盲鋲素子1の表示のように、図23〜28の表示によりわかるように、盲鋲ボルトの軸部3は、据込み頭部2から遠い方の端部の範囲にボルト17用受入れ部16を持ち、受入れ部16と据込み頭部2との間に変形区域5を持っている。図23〜28によるこれらの実施例に対するそれ以上の説明のために、図7〜12の実施例に関する前述の説明が参照される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
据込み頭部(2)及び軸部(3)を持つ盲鋲素子(1)であって、軸部(3)が、その据込み頭部(2)から遠い方の端部の範囲に雌ねじ(4)又はボルト(17)用受入れ部(16)を持ち、かつ雌ねじ(4)又はボルト(17)用受入れ部(16)と据込み頭部(2)との間に変形区域(5)を持ち、据込み頭部(2)が軸部(3)及びその際形成される止め頭部の変形後、変形区域(5)が膨出部(10)を持ち、この膨出部(10)が軸部(3)の外側でその周方向に延びているものにおいて、膨出部の形成を行わない軸部(3)の範囲において、軸部(3)の材料の除去により膨出部(10)の形成が防止されるように、軸部(3)が形成されていることを特徴とする、盲鋲素子。
【請求項2】
軸部(3)が変形区域(5)穴(7)を持ち、盲鋲素子(1)の据込み前に軸部(3)の軸線方向における穴(7)の長さが、盲鋲素子(1)の据込み後軸部(3)の軸線方向における変形区域(5)の長さに少なくとも一致していることによって、膨出部(10)の形成が防止されていることを特徴とする、請求項1に記載の盲鋲素子。
【請求項3】
穴(7)が、盲鋲素子(1)の据込み前に、円断面を持っていることを特徴とする、請求項2に記載の盲鋲素子。
【請求項4】
軸部(3)が、盲鋲素子(1)の据込み前に、除去される材料の範囲に、軸部(3)を貫通する穴(7)を持ち、特に円形断面を持つ穴(7)が軸部(3)を貫通していることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項5】
軸部(3)から、ただ1つの側の範囲で、軸部(3)のこの側で膨出部(10)の形成を防止するため、材料が除去されていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項6】
軸部(3)から、2つの互いに反対の側の範囲で、軸部(3)のこれら両方の側で膨出部の形成を防止するため、材料が除去されていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項7】
軸部(3)の縦中心軸線(8)に関して対称に、軸部(3)の両方の側における膨出部形成を防止するため、軸部から材料が除去されていることを特徴とする、請求項6に記載の盲鋲素子。
【請求項8】
盲鋲素子(1)の据込み後2つの膨出部(10,10)が形成され、これらの膨出部の間に膨出部を持たない範囲(15,15)が設けられ、形成されるこれらの膨出部(10,10)が盲鋲素子(1)の縦中心軸線(8)に対して対称に設けられていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の盲鋲素子。
【請求項9】
膨出部の形成を防止されている軸部(3)の範囲に隣接する膨出部(10)の両方の端部が、軸部(3)の変形されない範囲にある軸部の外側輪郭に対してほぼ接線をなして設けられていることを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項1】
据込み頭部(2)及び軸部(3)を持つ盲鋲素子(1)であって、軸部(3)が、その据込み頭部(2)から遠い方の端部の範囲に雌ねじ(4)又はボルト(17)用受入れ部(16)を持ち、かつ雌ねじ(4)又はボルト(17)用受入れ部(16)と据込み頭部(2)との間に変形区域(5)を持ち、据込み頭部(2)が軸部(3)及びその際形成される止め頭部の変形後、変形区域(5)が膨出部(10)を持ち、この膨出部(10)が軸部(3)の外側でその周方向に延びているものにおいて、膨出部の形成を行わない軸部(3)の範囲において、軸部(3)の材料の除去により膨出部(10)の形成が防止されるように、軸部(3)が形成されていることを特徴とする、盲鋲素子。
【請求項2】
軸部(3)が変形区域(5)穴(7)を持ち、盲鋲素子(1)の据込み前に軸部(3)の軸線方向における穴(7)の長さが、盲鋲素子(1)の据込み後軸部(3)の軸線方向における変形区域(5)の長さに少なくとも一致していることによって、膨出部(10)の形成が防止されていることを特徴とする、請求項1に記載の盲鋲素子。
【請求項3】
穴(7)が、盲鋲素子(1)の据込み前に、円断面を持っていることを特徴とする、請求項2に記載の盲鋲素子。
【請求項4】
軸部(3)が、盲鋲素子(1)の据込み前に、除去される材料の範囲に、軸部(3)を貫通する穴(7)を持ち、特に円形断面を持つ穴(7)が軸部(3)を貫通していることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項5】
軸部(3)から、ただ1つの側の範囲で、軸部(3)のこの側で膨出部(10)の形成を防止するため、材料が除去されていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項6】
軸部(3)から、2つの互いに反対の側の範囲で、軸部(3)のこれら両方の側で膨出部の形成を防止するため、材料が除去されていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の盲鋲素子。
【請求項7】
軸部(3)の縦中心軸線(8)に関して対称に、軸部(3)の両方の側における膨出部形成を防止するため、軸部から材料が除去されていることを特徴とする、請求項6に記載の盲鋲素子。
【請求項8】
盲鋲素子(1)の据込み後2つの膨出部(10,10)が形成され、これらの膨出部の間に膨出部を持たない範囲(15,15)が設けられ、形成されるこれらの膨出部(10,10)が盲鋲素子(1)の縦中心軸線(8)に対して対称に設けられていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の盲鋲素子。
【請求項9】
膨出部の形成を防止されている軸部(3)の範囲に隣接する膨出部(10)の両方の端部が、軸部(3)の変形されない範囲にある軸部の外側輪郭に対してほぼ接線をなして設けられていることを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の盲鋲素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−108618(P2013−108618A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210110(P2012−210110)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(507388111)
【氏名又は名称原語表記】Herbert Schruff
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(507388111)
【氏名又は名称原語表記】Herbert Schruff
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