説明

直列接続されたセルを含むエレクトロクロミックグレイジング、およびその製造方法

本発明は、少なくとも1つの基板と基板上に付着された層構造を有するエレクトロクロミックグレイジングに関するものであり、そこで、層構造には少なくとも2つの電極層があり、その間に、第1の電気化学的に活性な層と第2の電気化学的に活性な層が置かれており、それらは、それぞれイオンの可逆的取り込みに適しており、そこで、第1活性層はエレクトロクロミック材料で構成され、2つの活性層は互いに電解質層によって分離されている。ここで、層構造は1つまたは複数の移行帯によって直列に接続されたエレクトロクロミックセルにさらに分割され、そこで、各移行帯は、それによって第1電極層が互いに電気的に絶縁された第1電極セクションにさらに分割される第1トレンチ、それによって第2電極層が互いに電気的に絶縁された第2電極セクションにさらに分割される第2トレンチ、およびそれによって移行帯に隣接するセルの第1電極セクションと第2電極セクションが互いに電気的に接続される導電性のある材料で埋められた第3トレンチとを備え、第3トレンチが第1トレンチと第2トレンチの間に配置される。さらに本発明は、第1トレンチから第3トレンチが対応する層構造で基板に作成される製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性された構成部品の技術分野で、一般的な種類によれば、請求項1の前提部に従うエレクトロクロミックグレイジング、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過が電力の供給により変動されることが可能である、エレクトロクロミックグレイジングは、それ自体は知られており、既に特許文献でさまざまな説明が行われている。単に例示的な目的で、欧州特許第0338876号明細書、欧州特許第0408427号明細書、欧州特許第0628849号明細書、欧州特許第1859319号明細書、および米国特許第5,985,486号明細書を参照する。
【0003】
一般に、エレクトロクロミックグレイジングには、複数の機能的な層を備える一連の層が付着される、少なくとも1つの透明な基板が含まれる。これには通常、2つの電極層と、2つの電極層の間に配置され、互いに電解質層によって隔てられている2つの電気化学的に活性な層が含まれる。2つの活性な層はそれぞれ、可逆的にわずかなイオン(例えば、H、Liなど)を保存することができ、2つの層の少なくとも1つは、イオンの保存または解放した状態に対応し、異なる色を有する、異なる酸化状態を有するエレクトロクロミック材料から構成されている。異なる極性の電圧を印加することで、光の透過に選択的に影響を与えるため、イオンの保存または解放が制御されることができる。エレクトロクロミックグレイジングは、具体的には、入射光の量を無段階的に調整するため、建物や自動車で使用される。
【0004】
実際に実証されているように、光の透過を変えるために必要なエレクトロクロミックグレイジングのスイッチング時間は、グレイジング領域の拡大とともに大幅に増大する。このことは、あいにく、例えば、部屋の温度を調整するために使用される、エレクトロクロミックグレイジングの効果性が減少するという結果になる場合がある。さらに、グレイジングの光の透過の高速な変更は、例えば、光の状況が変化するときに、日光に対して効果的なアンチグレア保護を行うため、ユーザーにとっても重要な場合がある。
【0005】
当業者は、エレクトロクロミックグレイジングのスイッチング時間の表面領域による増大の主な理由が、透明な電極層の限られた導電性のみにあることを認識している。電極層の構成とその層厚さに応じて、透明な電極層の電気的シート抵抗は、通常、およそ5オームから80オームの範囲である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0338876号明細書
【特許文献2】欧州特許第0408427号明細書
【特許文献3】欧州特許第0628849号明細書
【特許文献4】欧州特許第1859319号明細書
【特許文献5】米国特許第5,985,486号明細書
【特許文献6】国際公開第00/57243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
国際公開第00/57243号では、電極層の伝導性を増大するために、導体ペーストのネットワークで透明な金属酸化物からなる電極層をコーティングすることが開示されている。そこで提示されている方法は、技術的に比較的複雑で、特に、導体ペーストを乾かす目的でより高温の処理温度を生成するための、追加の処理ステップが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それとは対照的に、本発明の目的は、エレクトロクロミックグレイジングのスイッチング時間の短縮化が得られるような方法で、代替の機能を使用可能にすることにある。
【0009】
これと他の目的は、独立請求項の特徴を伴ったエレクトロクロミックグレイジングによる本発明の提案により達成される。本発明の利点となる実施形態は従属請求項の特徴によって示される。
【0010】
エレクトロクロミックグレイジングは、一般的な種類によると、透明な材料からなる少なくとも1つの基板とその基板上に付着された層構造を備えており、その構造は複数の機能層から構成されている。グレイジングには、必ずしも1つまたは複数のガラス基板を含む必要はなく、非ガラス材料、例えばプラスチックなどからできている場合もあるということが理解されている。
【0011】
エレクトロクロミックグレイジングの層構造は、以下で、それぞれ優れた電子伝導性を持つ材料から構成される、第1および第2電極層として言及されている2つの電極層を備えている。2つの電極層の間には、2つの電気化学的に活性な層が置かれており、以下で、イオンの可逆的取り込みに適した、第1および第2活性層として言及されている。ここで、第1活性層はエレクトロクロミック材料からなり、光の透過(透明性)での電気的に制御された変化の性能によって、カラーリング層として機能し、一方、第2活性層はイオン保存層または対電極として機能する。2つの活性層は互いに、少なくとも可逆的に2つの活性層に取り込まれることができるイオンに対して、非常に低い電子的伝導性、または事実上電子的伝導性がまったくないが、優れたイオン伝導性を有する材料からなる電解質層によって隔てられている。第1活性層の場合、特に光の透過が陰極的エレクトロクロミック材料の場合には陰極接続への接続、または陽極的エレクトロクロミック材料の場合には陽極接続への接続によって変化されることが可能である点で互いに異なる、陰極的または陽極的エレクトロクロミック材料をエレクトロクロミック材料として使用されることができる。イオン保存層または対電極は、光の透過が変わらず、第1活性層の着色が増強されるような変化もしない材料から作られることができる。後者の場合、イオン保存層は、例えば、第1活性層が陰極的エレクトロクロミック材料から構成される場合には、陽極的エレクトロクロミック材料から、第1活性層が陽極的エレクトロクロミック材料から構成される場合には、陰極的エレクトロクロミック材料で作られることができる。
【0012】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングは、層構造が1つまたは複数の移行帯によって直列に接続されたエレクトロクロミックセルにさらに分割されるという点で、実質上区別される。エレクトロクロミックグレイジングは、直列接続のキャパシタンス(セル)として解釈されることができる。ここ、および以下の部分で、「移行帯」という用語は、3つのトレンチから構成されるトレンチ構造を伴い提供される層構造の帯域であると理解されたい。したがって、各移行帯には、第1電極層が互いに電気的に絶縁された第1電極セクションにさらに分割される第1トレンチ、第2電極層が互いに電気的に絶縁された第2電極セクションにさらに分割される第2トレンチ、および移行帯に隣接した2つのセルの第1電極セクションと第2電極セクションが互いに電気的に接続される、導電性のある材料で埋められる第3トレンチが含まれる。トレンチ構造では、第3トレンチは第1と第2トレンチの間に配置される。直列接続のセル場合、トレンチの特定の順序が移行帯のそれぞれで保持され、第1トレンチは必ず第3トレンチの片側に置かれ、第2トレンチは第3トレンチのもう一方側に必ず置かれる。
【0013】
したがって、本発明によるエレクトロクロミックグレイジングには、特に高速なスイッチング時間が可能にされることにより、従来のエレクトロクロミックグレイジングの比較できる値より高速であることが可能な複数のエレクトロクロミックセルの中への層構造の再分割がある。セルのモノリシックに集積された直列接続によって、本発明によるエレクトロクロミックグレイジングは、従来の方法を使用する工業連続製造で、そのまま費用対効果を大きくして製造されることができる。
【0014】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの利点となる実施形態では、第2電極層が第1電極層の上に配置され、各移行帯の第3トレンチは第2電極層の導電性のある材料で埋められている。この方法によって、導電性のある材料で埋められた第3トレンチの技術的に特に単純で費用対効果の優れた製造が可能になる。
【0015】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、各移行帯の第1トレンチが2つの電気化学的に活性な層のいずれかの材料で埋められ、そこでは、第1トレンチが他のそれぞれの活性層の上に配置される活性層の材料で埋められる場合には利点となることがある。この方法により、通常はそうであるように、活性層の材料の電子的伝導性が非常に低く、実質上それがない場合には、電気的に絶縁された材料で埋められた第1トレンチの技術的に特に単純で費用対効果の優れた製造が可能になる。同様に、第1トレンチが電解質層の材料で埋められることも可能である。
【0016】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、各移行帯の第2トレンチは第1電極層まで層構造をさらに分割する。これは、隣接するエレクトロクロミックセルのとりわけ効果的な電気的絶縁が実現されることができることを意味する。
【0017】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、層構造には、第2電極層の上に配置された電気的に絶縁する材料からなる上層コーティングおよび層構造のカバーが含まれ、各移行帯の第2トレンチは上層コーティングの絶縁材料で埋められている。この方法により、電気的に絶縁する材料を使った、第2トレンチの技術的に特に単純で費用対効果の優れた充填が可能になる。代替方法として、または追加的に、例えばガラスなどの透明な基板からなる別の(第2の)基板も提供されることができる。この場合、層構造は第1基板と第2基板の間に配置される。
【0018】
直列に接続されたエレクトロクロミックセルはスイッチング処理の際に直ちに極性が反転する必要があるので、キャパシタンスの極わずかな違いが強力な過渡的な電圧および/または電流の原因になる場合があり、それによって、セルに致命的な損傷が起きる場合がある。したがって、本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、各エレクトロクロミックセルはセルに印加される電圧を制限するためのデバイスとともに提供され、そのデバイスは、例えば所定のブレークダウン電圧を持つ(電極層の接点のための電源(例えば、電圧源)の極性に基づく)逆並列に接続されたダイオードとして構成されることができる。ダイオードは、例えば、ツェナーダイオードとして構成されることができる。各セルに結合された電圧制限デバイスによって、過電圧保護が各セルで提供されることは利点となる。逆並列に接続されたダイオードを使用すると、必要なのはダイオードのブレークダウン電圧を実際に発生する電圧および/または電流のピークに適合させることのみである。
【0019】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、各移行帯には100μmから500μmの範囲、好適には150μmから250μmの範囲の最大幅がある。移行帯の幅は、それぞれ、それに含まれるトレンチのパスとは垂直に測定される。同様にトレンチのパスに垂直に測定される、同じ移行帯の隣接するトレンチ間の距離が少なくとも50μmおよび/または同様にそのパスに垂直に測定されるそれぞれのトレンチの幅が30μmから100μmの範囲であることはさらに利点となる場合がある。これらの測定により、一方でエレクトロクロミックグレイジングの光学活性領域の損失がほとんどないこと、および他方で、エレクトロクロミックセルの信頼できる安全な直列接続が従来の構造化技術の使用で取得されることができる。さらに、エレクトロクロミックグレイジングの魅力的な外観が、観察者に細い線として認識されるトレンチによって取得されることができる。基板は、例えば0.5mから3mの範囲の長さと幅をそれぞれ有することができる。
【0020】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、さらに魅力的な外観は、基板が、それぞれ、移行帯に結合され、完全にカバーする、1つまたは複数の不透明(透明ではない)カバー要素を、層構造とは別の側に備える場合に取得されることができる。その間に層構造が置かれる2つの基板を持つエレクトロクロミックグレイジングでは、不透明な細片が1つの基板および/またはもう一方の基板上に備えられることができる。
【0021】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、直列に接続されたセルの接点のための電源(例えば、電圧源)を含み、そこで、電源の電圧は、電源による印加時に、各セルに対して、0.5ボルトから3ボルト、好適には1.2ボルトから1.8ボルトの範囲の電圧が印加されるように、セルの数に応じて選択される。この方法によって、エレクトロクロミックセルは特に実用の場合に利点となる低スイッチング電圧で動作されることが可能になる。さらに、2つの電極層の接点のための電源が最大1000ボルト、好適には最大120ボルトの電圧を有することも利点となる場合がある。電圧は、特に、例えば一部の国で法規制されているファサード要素の最大供給電圧が超過されないように、30ボルトから50ボルトの範囲にすることができる。一般に、電源により提供される供給電圧がVでセルの指定されたスイッチング電圧がVの場合、セルの数nはn=V/Vという式で決定されることができる。
【0022】
本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の利点となる実施形態では、層構造は、第1から第3トレンチを横切る1つまたは複数の第4トレンチにより互いに電気的に絶縁された複数のセルの領域にさらに分割される。そこで、各セル領域には複数の直列に接続されたエレクトロクロミックセルが含まれ、セル領域は、例えば、2つの共通の接点要素で並列接続されている。セル領域は、モノリシックに集積されるか、ケーブル配線により並列接続されることができる。並列接続されたセル領域は、対応する方式で供給電圧を増やす必要なく、エレクトロクロミックグレイジングのある比較的大きな領域を対象とすることができるので特に利点となる。セル領域が自立的構成部品またはエレクトロクロミックモジュールとして構成されるということも考えられる。
【0023】
本発明はさらに、エレクトロクロミックグレイジングの製造の方法にも拡大されており、以下のステップが含まれる:
基板上に付着される層構造を持つ基板の準備、そこで、層構造には少なくとも2つの電極層があり、その間に、第1の電気化学的に活性な層と第2の電気化学的に活性な層が置かれており、それらは、それぞれイオンの可逆的取り込みに適しており、そこで、第1活性層はエレクトロクロミック材料で構成され、カラーリング層として機能し、第2活性層はイオン保存層として機能し、さらに2つの活性層は互いに電解質層によって絶縁されている。
第1トレンチの製造、それによって、2つの電極層の第1のものが互いに電気的に絶縁された第1電極セクションにさらに分割される。
第2トレンチの製造、それによって、2つの電極層の第2のものが互いに電気的に絶縁された第2電極セクションにさらに分割される。
導電性のある材料で埋められた第3トレンチの製造、それはそれぞれ、第1トレンチと第2トレンチの間に配置され、そこでそれぞれ、第1電極セクションと(隣接する)第2電極セクションが第3トレンチを介して互いに電気的に接続されている。
【0024】
さらに本発明は、例えばビルディング、家、およびアパートなどの建築施設ならびに/あるいは、例えば自動車などの車両ならびに/あるいは、例えば航空機、貨物航空機、およびスポーツ飛行の航空機などの航空機ならびに/あるいは、クルーズ船、コンテナ船、およびスポーツ航海のためのボートなどの船舶のスペースを少なくとも部分的に区切る方法としての上述のエレクトロクロミックグレイジングの使用に拡大されている。
【0025】
本発明はさらに、少なくとも1つの基板と基板上に付着される層構造を持つエレクトロクロミックグレイジングにも関しており、そこで、層構造には少なくとも2つの電極層があり、その間に、第1の電気化学的に活性な層と第2の電気化学的に活性な層が置かれており、そこで、第1活性層はエレクトロクロミック材料で構成され、2つの活性層は互いに電解質層によって分離されている。ここで重要なのは、層構造が1つまたは複数の移行帯によって直列に接続されたエレクトロクロミックセルにさらに分割されることで、ここで、各移行帯は次を備えている:
第1トレンチ、それによって、2つの電極層の第1のものが互いに電気的に絶縁された第1電極セクションにさらに分割され、
第2トレンチ、それによって、2つの電極層の第2のものが互いに電気的に絶縁された第2電極セクションにさらに分割され、
導電性のある材料で埋められた第3トレンチ、それによって、移行帯に隣接するセルの第1電極セクションと第2電極セクションが互いに電気的に接続されており、
そこで、第3トレンチは第1トレンチと第2トレンチの間に配置されている。
【0026】
そのようなエレクトロクロミックグレイジングは上述の実施形態に従って構成されることが可能である。
【0027】
本発明はさらに、次のステップを含むエレクトロクロミックグレイジングの製造のための方法にも関する:
基板上に付着された層構造を持つ基板の提供、そこで、層構造には少なくとも2つの電極層があり、その間に、第1の電気化学的に活性な層と第2の電気化学的に活性な層が置かれており、そこで、第1活性層はエレクトロクロミック材料で構成され、2つの活性層は互いに電解質層によって分離されており、
第1トレンチの製造、それによって、2つの電極層の第1のものが互いに電気的に絶縁された第1電極セクションにさらに分割され、
第2トレンチの製造、それによって、2つの電極層の第2のものが互いに電気的に絶縁された第2電極セクションにさらに分割され、
導電性のある材料で埋められた第3トレンチの製造、それは、それぞれ第1トレンチと第2トレンチの間に配置され、そこでそれぞれ、第1電極セクションと第2電極セクションは第3トレンチを介して互いに電気的に接続されている。
【0028】
本発明の種々の実施形態が個別またはいずれかの組み合わせで実現されることができることは理解されている。特に、上述の特徴および以下で説明される特徴は、例示されている組み合わせでだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたは単独でも使用されることが可能である。
【0029】
次に、本発明は添付図面を参照しながら、例示的な実施形態に関連して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの例示的な実施形態の概略横断面図である。
【図2】図1のエレクトロクロミックグレイジングの概略上面図である。
【図3】本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の例示的な実施形態の概略上面図である。
【図4】本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の例示的な実施形態の概略横断面図である。
【図5】本発明によるエレクトロクロミックグレイジングの別の例示的な実施形態の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の例示的な実施形態として、全般に参照番号1で指定されたエレクトロクロミックグレイジングを示しており、ここでは、複合的な層構造として実装されている。エレクトロクロミックグレイジング1の光の透過は、適切な大きさと極性の直流電圧および/または直流を印加することで変化させることができる。このために、電圧源または電源(図示せず)が備えられており、その陽極接続3と陰極接続4も図1に図示されている。
【0032】
エレクトロクロミックグレイジング1には、少なくとも1つの透明な基板2およびその基板2の第1表面6上に付着される層構造5が含まれる。透明な基板は、例えば0.7mmから10mmの範囲で、特に、2mmの厚さで、例えば、ソーダ石灰ガラスまたはボロフロートガラスなどの、ガラスまたは非ガラス材料から作られることができる。基板2は、例えば、約1000mmの長さと約500mmの幅を有することができる。
【0033】
層構造5には、基板2の第1表面6上に付着される第1電極層7、第1電極層7上に付着される第2活性層8、第2活性層8上に付着される電解質層9、電解質層9上に付着される第1活性層10、および第1活性層10上に付着され第2電極層11という、示されている順序で、基板6上に付着される少なくとも5つの機能層が含まれる。したがって、層構造5は2つの電極層7、11を含み、その間に、2つの電気化学的に活性な層8、11が置かれ、それらに限れば、電解質層9によって互いに分離されている。このことは図には示されていないが、層構造5には、基板2の第1表面6と第1電極層7の間に不活性化層などの、追加の層を含めることができる。
【0034】
一般的に言えば、2つの電極層7、11は、例えば、透明導電性金属酸化物(TCO)から作られることが可能で、それは、例えば前書きで言及した引用から、当業者にはよく知られている。具体的には、電極層7、11に、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、フッ素をドープしたスズ酸化物(SnO:F)、またはアルミニウムをドープした亜鉛酸化物(ZnO:Al)を含めることができる。同様に、電極層7、11には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)またはその混合物などの、金属または金属合金を含めることも可能である。2つの電極層7、11が、例えば、ドープした金属酸化物の層と金属層から構成される、導体層のスタックから作られることも考えられる。電極層7、11には、NiCr/金属/NiCrの層スタックを含めることができ、そこで、金属には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)またはその混合物などが含まれる。具体的には、2つの電極層7、11は、銀(Ag)ベースの透明な導体層スタックから作られることができる。2つの電極層7、11は、いずれかと同じ材料か、互いに異なる材料のいずれかから作られることができる。第1電極層7には、例えば、8オームのシート抵抗があり、一方、第2電極層11には、例えば、80オームのシート抵抗がある。
【0035】
2つの活性層8、10は、それぞれイオンの可逆的取り込みに適した材料から作られており、そこで、第1活性層10は、ここで、例えば、陰極的エレクトロクロミック材料から構成され、カラーリング層として機能し、その光の透過はイオンの保存と解放および酸化状態の同時変化により変わることが可能である。第2活性層8はイオン保存層または対電極として機能し、イオンの保存と解放で光の透過が変わることはない。
【0036】
カラーリングのエレクトロクロミック材料、第1活性層10は、例えば、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモン、および酸化チタンから構成されるグループから選択された材料または材料の混合物を含むことができる。上述の材料の材料または混合物にはさらに、チタン、タンタル、またはレニウムも含むことができる。対電極として機能する第2活性層8は、例えば、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモン、および酸化チタンから構成されるグループから選択された材料または材料の混合物を含むことができる。上述の材料の材料または混合物にはさらに、チタン、タンタル、またはレニウムも含むことができる。同様に、対電極として適したほかのあらゆる材料も使用されることができる。2つの活性層8、10は、10mmの層構造5の周囲エッジデコーティングに対応して、例えば480mmの幅と980mmの長さを有することができる。
【0037】
高分子層または無機物層は、例えば、イオンの移送に適した電解質層9の材料として使用されることができる。電解質層9は、例えば、酸化ケイ素、タンタル酸化物、酸化ハフニウム、窒化ケイ素、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化クロム、酸化コバルト、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物、スズ亜鉛酸化物、酸化バナジウム、またはそれらの混合物を含み、そこで、少なくとも酸化物の1つが水和させたり、硝酸で処理されたりすることができる。層構造5の種々の機能層で使用可能な材料は、例えば前書きで言及した引用から、当業者にはよく知られている。ここでは、全体としての機能的な層についてそこで言及されている材料が参照されているので、この説明の一部となる。
【0038】
エレクトロクロミックグレイジング1で、層構造5は複数の移行帯13により、直列に接続されたエレクトロクロミックセル12にさらに分割される。図1では、4つのセル12と3つの移行帯13が図示されているが、エレクトロクロミックグレイジング1はさらに、より多数またはより少数のセル12を有することができることが理解されている。例えば、エレクトロクロミックグレイジングに接続された電源の供給電圧Vが48ボルトでセル12の指定されたスイッチング電圧がV=1.6ボルトの場合、セル12の数nは例えば30である(n=48/1.6=30)。
【0039】
エレクトロクロミックグレイジング1を種々のセル12にさらに分割するに、各移行帯13は、互いに平行して進行する一連のトレンチ14〜16とともに備えられている。図2で識別されることができるように、トレンチ14〜16にはここでは、例えば、層構造5全体にわたり、基板2の第1表面6に平行な進行および走行を有する。トレンチ14〜16は、基板2の第1表面6に対してそれぞれ直角な、垂直トレンチとしてエンボス加工される。このことは図面に図示されていないが、トレンチ14〜16が、例えば、曲がりくねった、波形、のこぎり歯状などの非線形または他のタイプの多角形状の進行を有することも同様に可能なはずで、それによって、例えば、セル12の帯状の直列接続が可能になる。各移行帯には、第1トレンチ14、第2トレンチ15、および第3トレンチ16が含まれ、そこで、トレンチ14〜16の順序はすべての移行帯13で同じである。図示されている例示的実施形態では、第3トレンチ16は第1トレンチ14と第2トレンチ15の間に置かれており、第1トレンチ14は必ず一方の側に配置され、第2トレンチ15は必ず第3トレンチ16のもう一方側に配置される。
【0040】
各移行帯13では、第1トレンチ14が電解質層9、第2活性層8、および第1電極層7で形成され、第1活性層10の材料で埋められる。特に、第1電極層7は第1トレンチ14によって複数の第1電極セクション17にさらに分割され、そのセクションは互いに電気的に絶縁され、そこで、第1電極層10の陰極的エレクトロクロミック材料は通常、電子伝導性が非常にわずかのみか、まったくない。他方、第2トレンチ15は、第2トレンチ15が第2電極層11、第1活性層10、電解質層9、および第2活性層8で形成されるように、第2電極層11から第1電極層7まで延長される。特に、第2電極層11は第2トレンチ15によって複数の第2電極セクション18にさらに分割され、そのセクションは互いに電気的に絶縁されている。このことは図面に図示されていないが、エレクトロクロミックグレイジング1は層構造5をカバーする電子伝導性が非常にわずかか、まったくない材料から作られる上層コーティングとともに提供されることができ、それは、第2トレンチ15が上層コーティングの材料で埋められるように、付着時に第2トレンチ15に浸透する。それに加えて、第3トレンチ16は、第3トレンチ16が第1活性層10、電解質層9、および第2活性層8で形成されるように、第1活性層10から第1電極層7まで延長される。このプロセスで、第3トレンチ16は第2電極層11の材料で埋められる。移行帯13に隣接した一方のセル12の第2電極セクション18と移行帯13に隣接したもう一方のセル12の第1電極セクション18は第3トレンチ16により生成され、それによって、セル12は互いに直列接続される。図1で、例えば、各第2電極セクション18はそれぞれ右側に隣接する第1電極セクション17と電気的に接続されている。エレクトロクロミックグレイジング1は、ここで、例えば移行帯13によって30のセル12にさらに分割され、そのセルはそれぞれ、1.58mmの幅と980mmの長さを有し、互いに平行かつ帯状の形で基板2上に配置されている。
【0041】
エレクトロクロミックグレイジング1では、直列に接続された電極セクション17、18は、例えば、金属材料から作られている2つの接点帯19、20に電気的に接続されており、第1接点帯19は周辺部の第1電極セクション17に接続されており、第2接点帯20は周辺部の第2電極セクション18に接続されている。エレクトロクロミックグレイジング1は、電荷保存デバイスとしての役割で、電気容量を有しており、2つの接点帯19、20に接続された電源を介して、帯電および放電されることが可能である。それに関する限り、電荷保存の役割のある直列に接続されたエレクトロクロミックセル12は、容量の直列接続として見なされることができる。図1では、これは実線で図示されている。電源の陽極および陰極接続3、4への接続によって、エレクトロクロミックグレイジング1のカラーリング(光の発光の減少)またはカラーリング解除(光の透過の増大)が必要に応じて、達成されることができる。図1では、陰極的エレクトロクロミック材料から作られている第1活性層10の光の透過が電気的に変化されることができるように、第1接点帯19が例えば、陽極接続3と接続され、第2接点帯20が電源の陰極接続4に接続されている。例えば、48ボルトの電圧が印加されると、エレクトロクロミックグレイジング1は暗くなり、電源を切断した状態では、それは透明になる。電荷保存の役割に関しては、エレクトロクロミックグレイジング1のカラーリングで、直列に接続された容量またはセル12が電気的帯電し、一方、エレクトロクロミックグレイジング1のカラーリング解除では放電する結果となる。単に例示的な方法であるが、20のコントラストで、グレイジング1のキャパシタンスは、約300F/mとなる場合があることが示されている。
【0042】
エレクトロクロミックグレイジング1で、各移行帯13は、同じ方向で測定された同じ移行帯13の隣接する2つのトレンチ14〜16間の距離が好適には少なくとも50μmで、好適には100μmから500μmの範囲、さらにもっと好適には150μmから250μmの範囲の、基板2上の第1表面6に平行で、トレンチ14〜16のパスには垂直に測定される最大幅を有している。さらに、これも同じ方向で測定される、それぞれにトレンチの幅は、好適には30μmから100μmの範囲である。
【0043】
以下の表1では、エレクトロクロミックグレイジング1のトレンチ14〜16と移行帯13の寸法の例示的値が示されている。
【0044】
【表1】

【0045】
出願人の実験で実証されたとおり、表1の例2に従って実装された、図1と図2で図示されたエレクトロクロミック装置1の例示的実施形態が、30のセル12にさらに分割されることによって、60秒から5秒へのスイッチング時間の減少化が可能であった。
【0046】
次に図3を参照すると、本発明によるエレクトロクロミックグレイジング1の別の例示的実施形態が図示されている。不必要な反復を避けるために、図1と図2に図示されている例示的実施形態との相違点のみが説明され、その他の点に関しては、そこで行われた陳述を参照する。それによると、エレクトロクロミックグレイジング1は、例えば、所定のブレークダウン電圧を持つツェナーダイオードとして構成される、複数のダイオード21を備えている。各ダイオード21はセル12と結合されている。図3から認識できるように、ダイオード21は共通の第1導体22を介して直列に接続されており、2つの接点帯19、20に接続されている。第1導体22から、それぞれ第2導体23が分岐しており、それらはそれぞれ、セル12の第1電極セクション17に接続されており、それによって、各セル12は逆バイアス(すなわち、逆並列)ダイオード21に接続されている。ダイオード21のブレークダウン電圧は、セル12が、特にスイッチング手順の際に発生する場合がある過渡的な過電圧に対して保護されるように選択される。本例では、ダイオード21のブレークダウン電圧は、例えば1.8ボルトである。図3では、ダイオード21はハイブリッド、すなわち、電気的導体を介してセル12に接続されている。代替形態では、ダイオード21がセル12に対応してモノリシックに集積されて構成されることも可能なはずである。
【0047】
図4では、本発明によるエレクトロクロミックグレイジング1の別の例示的実施形態を図示しており、そこでは再度、図1と図2に図示されている例示的実施形態との相違点のみが説明され、その他の点に関しては、そこで行われた陳述を参照する。それによると、エレクトロクロミックグレイジング1は、第1表面6の反対側の基板2の第2表面25に付着された複数の不透明(非透明)帯24を備えている。帯24は、それぞれ、移行帯13の領域に置かれ、移行帯13がこの側の観察者からまったく認識できないように移行帯を完全にカバーしている。こうして、エレクトロクロミックグレイジング1の美観的外観が改善されることができる。
【0048】
図5では、本発明によるエレクトロクロミックグレイジング1の別の例示的実施形態を図示しており、そこでは、図1と図2に図示されている例示的実施形態との相違点のみが説明され、その他の点に関しては、そこで行われた陳述を参照する。それによると、エレクトロクロミックグレイジング1の層構造5は、第1から第3トレンチ14〜16に垂直に走る第4トレンチ26によって、それぞれ、4つの直列に接続されたエレクトロクロミックセルを含む、互いに電気的に絶縁された2つのセル領域27、28にさらに分割される。2つのセル領域27、28は2つの接点帯19、20により並列に接続されている。このため、第1接点帯19は周辺部の2つの第1電極セクション17に接続され、第2接点帯20は周辺部の2つの第2電極セクション18に接続されている。さらに、2つのセル領域27、28がそれ自体に(サブ)モジュールを含み、そのそれぞれがそれ自体で第1および第2接点帯19、20を有し、それらがハイブリッドとして並列に接続されたり、モノリシックに集積されるように構成することも考えられるはずである。それに加えて、各セル領域はそれ自体の基板2を有することができるはずである。このことは図5に示されていないが、複数の第4トレンチ26が提供されることができ、それによって、層構造5は2つのセル領域27、28より多くにさらに分割される。
【0049】
図面に図示されているエレクトロクロミックグレイジング1は、例えば、以下の方式で製造されることができる:
基板2上への第1電極層7、そしてその次に、第2活性層8のほか電極層9の付着、
第1トレンチ14の形成、それによって、特に第1電極層7が構造化される、
第1活性層10の付着、そのプロセスで、第1トレンチ14を埋める、
第3トレンチ16の形成、それによって、特に2つの活性層8、10が構造化される、
第2電極層11の付着、そのプロセスで、第3トレンチ16を埋める、
第2トレンチ15の形成、それによって、特に第2電極層11が構造化される、
2つの接点帯19、20の作成、そこで、第1接点帯19が電源の陽極接続3に接続され、第2接点帯20が電源の陰極接続4に接続される、
基板2上への帯24のオプションとしての付着、
上層コーティングまたは積層のオプションとしての付着、そのプロセスで、第2トレンチ15を埋める、
層構造5が2つの基板の間に配置されるように別の(透明な)基板へのオプションとしての接続。
【0050】
代替の手順では、第1電極層7が第1トレンチ14の形成による付着直後に構造化され、その次に、他の層が付着および構造化される。そのプロセスで、第1トレンチ14が第2活性層8の材料で埋められる。
【0051】
トレンチ14〜16は従来の種々の技術で形成されることができ、そこでは、特にこのために、レーザー書き込みまたはレーザー切断、機械的切断、リフトオフ技術、あるいはエッチングペーストを使用したエッチング技術が使用されることができる。レーザー切断では、第1トレンチ14が紫外線(UV)波長範囲の波長のレーザーにより形成され、第2トレンチ15が532nmまたは1064nmで形成され、そして第3トレンチ16が532nmの波長で形成されることが好適である場合がある。帯24は、例えばカバースクリーン印刷によって基板2上に付着され、そこでは、適した他のいずれかの技術も使用されることができる。
【0052】
本発明は、特に広い表面領域のグレイジングの場合に、エレクトロクロミックセルにさらに分割することによって、比較可能な従来のグレイジングに比べ、そのスイッチング時間が低減化されるエレクトロクロミックグレイジングを使用可能にするものである。セルのモノリシックに集積された、直列接続により、従来の技術による工業連続製造で費用対効果が優れたものとして実現されることができる。光学不活性な移行帯に含まれるトレンチは観察者に細い線として視認可能で、外観を改善するために、不透明な帯によってカバーされることができる。それらは、特に、エレクトロクロミックグレイジングの高速なスイッチングの特徴的な特性としても機能する。各エレクトロクロミックセルは、逆並列接続ダイオードによって過渡的な電圧のピークから保護されることができる。スイッチングプロセスのためにエレクトロクロミックグレイジングに印加される電圧の合計は、例えば法的要件に適合するために、必要に応じて、最大値が超過されないように選択されることができる。スイッチング手順の際に各セルに印加される電圧は、セルの数により決定されることができる。複数のセル領域の並列接続によって、必要なスイッチング電圧の望ましくない増大が発生することなく、特に、広い領域のエレクトロクロミックグレイジングの製造が可能になる。
【0053】
本発明の一態様では、少なくとも1つの基板2と基板2上に付着された層構造5を備え、そこでは、層構造が少なくとも2つの電極層7、11を有し、その間に、第1の電気化学的に活性な層10と第2の電気化学的に活性な層8が置かれ、それらは、それぞれイオンの可逆的取り込みに適しており、そこで、第1活性層10はエレクトロクロミック材料から構成され、カラーリング層として機能し、第2活性層8はイオン保存層として機能し、2つの活性層8、10は電解質層9によって互いに分離されている。層構造5は1つまたは複数の移行帯13によって直列に接続されたエレクトロクロミックセル12にさらに分割され、各移行帯13は次を備えている:
第1トレンチ14、それによって、2つの電極層の第1のもの7が互いに電気的に絶縁された第1電極セクション17にさらに分割され、
第2トレンチ15、それによって、2つの電極層の第2のもの11が互いに電気的に絶縁された第2電極セクション18にさらに分割され、
導電性のある材料で埋められた第3トレンチ16、それによって、移行帯13に隣接するセル12の第1電極セクション17と第2電極セクション18が互いに電気的に接続されており、
そこで、第3トレンチ16は第1トレンチ14と第2トレンチ15の間に配置されている。
【0054】
本発明の別の態様は以下のステップを含むエレクトロクロミックグレイジング1の製造のための方法を含んでいる:
基板2上に付着された層構造5を持つ基板2の提供、そこで、層構造5には少なくとも2つの電極層7、11があり、その間に、第1の電気化学的に活性な層10と第2の電気化学的に活性な層8が置かれており、それらは、それぞれイオンの可逆的取り込みに適しており、そこで、第1活性層10はエレクトロクロミック材料から構成され、カラーリング層として機能し、第2活性層8はイオン保存層として機能し、2つの活性層8、10は電解質層9によって互いに分離されている、
第1トレンチ14の製造、それによって、2つの電極層の第1のもの7が互いに電気的に絶縁された第1電極セクション17にさらに分割され、
第2トレンチ15の製造、それによって、2つの電極層の第2のもの11が互いに電気的に絶縁された第2電極セクション18にさらに分割され、
導電性のある材料で埋められた第3トレンチ16の製造、それは、それぞれ第1トレンチ14と第2トレンチ15の間に配置され、そこでそれぞれ、第1電極セクション17と第2電極セクション18は第3トレンチ16を介して互いに電気的に接続されている。
【符号の説明】
【0055】
1 エレクトロクロミックグレイジング
2 基板
3 陽極接続
4 陰極接続
5 層構造
6 第1表面
7 第1電極層
8 第2活性層
9 電解質層
10 第1活性層
11 第2電極層
12 セル
13 移行帯
14 第1トレンチ
15 第2トレンチ
16 第3トレンチ
17 第1電極セクション
18 第2電極セクション
19 第1接点帯
20 第2接点帯
21 ダイオード
22 第1導体
23 第2導体
24 帯
25 第2表面
26 第4トレンチ
27 第1セル領域
28 第2セル領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板(2)と基板(2)上に付着された層構造(5)を備え、そこでは、層構造(5)が少なくとも2つの電極層(7、11)を有し、その間に、第1の電気化学的に活性な層(10)と第2の電気化学的に活性な層(8)が置かれ、それらは、それぞれイオンの可逆的取り込みに適しており、そこで、第1活性層(10)はエレクトロクロミック材料から構成され、2つの活性層(8、10)は電解質層(9)によって互いに分離されているエレクトロクロミックグレイジングであって、
層構造(5)は1つまたは複数の移行帯(13)によって直列に接続されたエレクトロクロミックセル(12)にさらに分割され、各移行帯(13)は、
それによって2つの電極層の第1のもの(7)が互いに電気的に絶縁された第1電極セクション(17)にさらに分割される第1トレンチ(14)と、
それによって2つの電極層の第2のもの(11)が互いに電気的に絶縁された第2電極セクション(18)にさらに分割される第2トレンチ(15)と、
それによって移行帯(13)に隣接するセル(12)の第1電極セクション(17)と第2電極セクション(18)が互いに電気的に接続される、導電性のある材料で埋められた第3トレンチ(16)とを備え、
第3トレンチ(16)が第1トレンチ(14)と第2トレンチ(15)の間に配置されることを特徴とする、エレクトロクロミックグレイジング。
【請求項2】
第2電極層(11)が第1電極層(7)の上に配置され、各移行帯(13)の第3トレンチ(16)が第2電極層(11)の導電性のある材料で埋められることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項3】
各移行帯(13)の第1トレンチ(14)が2つの活性層(8、10)のいずれか、または電解質層(9)の材料で埋められることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項4】
各移行帯(13)の第1トレンチ(14)がほかのそれぞれの活性層(8)の上に配置された活性層(10)の材料で埋められることを特徴とする、請求項3に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項5】
各移行帯(13)の第2トレンチ(15)が第1電極セクション(17)まで層構造(5)をさらに分割することを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項6】
層構造(5)が第2電極層(11)の上に配置された電気的に絶縁する材料から作られる上層コーティングを含み、各移行帯(13)の第2トレンチ(15)が上層コーティングの絶縁する材料で埋められていることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項7】
各セル(12)が電圧制限のためのデバイスを伴って提供され、それは特に、所定のブレークダウン電圧を持つ逆並列接続ダイオード(21)の形で形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項8】
各移行帯(13)が100μmから500μmの範囲、好適には150μmから250μmの範囲の最大幅を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項9】
同じ移行帯(13)の隣接したトレンチ(14〜16)の間の距離が少なくとも50μmであることを特徴とする、請求項8に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項10】
それぞれのトレンチ(14〜16)の幅が30μmから100μmの範囲であることを特徴とする、請求項8または9のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項11】
基板(5)が、それぞれ移行帯(13)に結合され、完全にカバーする、1つまたは複数の不透明カバー要素(24)を、層構造とは別の側(25)に備えることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項12】
層構造(5)が第1基板(2)と第2基板の間に配置されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項13】
層構造(5)が、1つまたは複数の第4トレンチ(26)によって、互いに電気的に絶縁された複数のセル領域(27、28)にさらに分割され、それぞれ複数の直列に接続されたエレクトロクロミックセル(12)を含み、セル領域(27、28)が並列に接続されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジング(1)。
【請求項14】
基板(2)上に付着された層構造(5)を持つ基板(2)を提供するステップであって、層構造(5)には少なくとも2つの電極層(7、11)があり、その間に、第1の電気化学的に活性な層(10)と第2の電気化学的に活性な層(8)が置かれており、それらは、それぞれイオンの可逆的取り込みに適しており、そこで、第1活性層(10)はエレクトロクロミック材料から構成され、2つの活性層(8、10)は電解質層(9)によって互いに分離されるステップと、
それによって2つの電極層の第1のもの(7)が互いに電気的に絶縁された第1電極セクション(17)にさらに分割される第1トレンチ(14)を製造するステップと、
それによって2つの電極層の第2のもの(11)が互いに電気的に絶縁された第2電極セクション(18)にさらに分割される第2トレンチ(15)を製造するステップと、
導電性のある材料で埋められた第3トレンチ(16)を製造するステップであって、そのトレンチは、それぞれ第1トレンチ(14)と第2トレンチ(15)の間に配置され、そこでそれぞれ、第1電極セクション(17)と第2電極セクション(18)は第3トレンチ(16)を介して互いに電気的に接続されるステップとを含む、エレクトロクロミックグレイジング(1)の製造の方法。
【請求項15】
建築施設および/または自動車および/または航空機および/または船舶のスペースを少なくとも部分的に区切る方法としての、請求項1から13のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックグレイジングの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−519925(P2013−519925A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553324(P2012−553324)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052381
【国際公開番号】WO2011/101427
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】