説明

直接鋳込アルミノテルミット溶接用の鋳型

金属レール(2)のアルミノテルミット溶接用の鋳型(6)は、同一の硬い耐熱性を有する材料からなり、レールの2つの端部(3)の周囲に取り付けるために配置された2つの構成要素(19,22)を備えている。各構成要素は、下方部分と上方部分とを備えている。下方部分は、レールの端部の足(8)と中心部(12)とを囲むのに適したキャビティ(25)を区画する面(21)、及び、底部でキャビティの下方領域に通じ且つ上部に開口部(39)を有するチャンネル(38)を有する。上方部分は、キャビティに接続された冷却室(32)を有し、冷却室(32)がレール端部の頭部(14)を囲むことができる。冷却室は、非区分化された容積を形成する。この冷却室に、チャンネル(38)は、開口部(39)を介して接続される。この冷却室は、各鋳型構成要素の外壁(27)に境を接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに長手方向に整列されたビーム及び/又は金属レールのアルミノテルミット溶接用の鋳型であって、溶接しようとするビーム/レールの2つの横向きの端部の周囲に一時的に組み立てられる硬い耐熱性を有する材料からなる複数の構成要素を含む鋳型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、このような鋳型が記載され、この鋳型の構成要素は、上向きに開き、鋳込まれる液状の溶接金属を受け入れるように配置され、各レールの間隔の開いた2つの端部と、対応する端部の直ぐ隣りの第1ゾーンとを取り囲み、溶接金属にその凝固中に所定の形を伝えるキャビティと、前記第1ゾーンに関して対応する端部に対向して、その第1ゾーンの直ぐ隣りの各レールの第2ゾーンに支持されるように配置された2つの連続的な幅木とをまとめて定義している。
【0003】
特に、特許文献1では、一実施形態において、一度使用した後に簡単に破壊されるように、固められた砂からなる構成要素は、主に数が3つであり、2つの略同一の鋳型の上半部分と、鋳型の下のすなわち底の構成要素とからなる、ということが記載されている。
【0004】
なお、上半部分は、組み立てようとする2つのレールに共通の中央縦断面に関して互いの鏡像を構成し、これら2つのレールのそれぞれ一方の側から、2つのレールと2つのレール間に形成された間隔とのゾーンを取り囲む。これらのゾーンは、レールの足の先端、頭部の中心部、底、側部並びに先端に対応している。
【0005】
また、下のすなわち底の構成要素は、レールの足及びレール間に形成された間隔に対応するゾーンの下方で2つの上方部分と組み合わされる、一般的なプレート形状を有している。
【0006】
これらの3つの構成要素は、組み立てようとするレールの周囲に、一般的には金属ケーシングを使用してまとめて保持される。なお、ケーシング自体は、ある鋳型から次の鋳型へと再利用することができる。
【0007】
上が開いているキャビティは、この方向において供給軸に連通する。なお、供給軸の一方の端は、取り付けられたストッパによって部分的に塞がれている。
【0008】
また、供給軸の上端は、アルミノテルミット溶接用のるつぼが装備されている堰鉢に合流する。
【0009】
よって、液状の溶接金属が、るつぼから流出すると、液体溶接金属の噴流は、供給軸を部分的に塞いでいるストッパに衝突し、その後、上記ストッパの両側を、減速された速度で供給軸へと流入し、その後、キャビティを徐々に満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2890668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような鋳型は、溶接の品質に関しては十分であるが、最適には程遠い。
【0012】
実際、この鋳型は、先に説明したように、頭部のゾーンからの溶鋼を横向けに設けられた開口部(補給部)を介して溝の上方部分に含まれる溶鋼に結合させるのみであり、開口部の低減された寸法は、溝から頭部へ向かう制限された熱伝達のみを可能にする。熱源は、溝の上方部分に見出される溶鋼によるものなので、開口部の低減された寸法は、頭部のゾーンにおける溶接の凝固速度を遅くすることにほんの僅かしか寄与しない。
【0013】
また、従来技術のストッパは噴流を停止する機能を果すので、噴流は、鋳型の底を形成する底構成要素に直接衝突せず、それゆえ、その侵食を促進しない。しかしながら、これには、流速の低減により鋳型の充填時間が長くなるという大きな欠点があり、このことは、大きな熱損失につながり、最終的に、溶接の溶鋼の対流によってレール端部の再溶融の品質が低くなる。
【0014】
本発明の目的は、使用時に、溶接の品質を最適化し、より好適にすることのできる鋳型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのため、本発明に基づいて提供されるのは、金属のビーム/レールのアルミノテルミット溶接用の鋳型であって、この鋳型は、溶接しようとするビーム/レールの2つの端部の周囲に互いに対向して一時的に取り付けられる硬い耐熱性を有する材料からなる少なくとも2つの実質的に同一の構成要素を備え、各構成要素は、第1下方部分と、第2上方部分とを有している。
【0016】
第1下方部分は、キャビティを区画する面と、ガス及び液状の溶接金属用の回収チャンネルとを有している。このキャビティは、上向きの上開口部を有し、鋳込まれる液状の溶接金属を受け入れるように設けられている。キャビティを区画する面は、前記ビーム/レールの足及び中心部のレベルにおいて端部を取り囲むことができる。また、回収チャンネルは、キャビティの下部ゾーンに下向きに繋がると共に、上向きの開口部を有している。
【0017】
また、第2上方部分は、第1下方部分に隣接し、且つ、第1下方部分上にあり、上向きに開口するキャビティの上開口部に、その底で連通する室(チャンバー)を備え、この室は、鋳込まれる液状の溶接金属を受け入れるように設けられ、ビーム/レールの頭部のレベルにおいて端部を囲むことができる。前記室は、チャンネルの開口部が繋がる非区分化された容積を形成する徐冷室であり、鋳型の構成要素の各々の外壁と、頭部の下に位置し得る下開口部とに境を接している。
【0018】
よって、前記の室が、溶接しようとするビーム/レールの頭部を受け入れることのできる、構成要素の各々の外壁に境を接する非区分化された容積を形成する徐冷室である、という事実により、一方では、るつぼから来る液状の溶接金属の溶解物の噴流は、出来る限り熱損失を低減して直接且つ迅速にキャビティに入ることが可能となり、それゆえ、キャビティの充填の際に溶接しようとするビーム/レールの端部のより良好な再溶解が確実となる。また、他方では、冷却をより遅くできると共に十分な量の液状の溶接金属を頭部の周囲に設けることが可能となり、それゆえ、ビーム/レールの上方部分における溶接の品質を上げることができる。このため、この室は、従来技術の堰鉢とは逆に機能する。よって、先に説明した従来技術に対し、チャンネルの上方部分と頭部のゾーンとの間に壁を無くすことで、このゾーンがチャンネルの上方部分に貯蔵された熱の利益を得ることができ、その場所において鋼鉄をゆっくりと凝固させることができる。
【0019】
任意ではあるが有利には、本発明の鋳型は、以下の構成の少なくとも1つを備えている。
【0020】
冷却室によって形成される容積は、幾何学的に凸状の容積である。
【0021】
面は、実質的に凹状であり、足及び中心部のレベルにおいて、液状の溶接金属が漏れないようキャビティをシールするために、ビーム/レールのゾーンに接触し得るエッジを備えている。
【0022】
冷却室は、頭部において、液状の前記溶接金属が漏れないよう冷却室をシールするために、ビーム/レールのゾーンに接触し得る表面に境を接する開口部を備えている。
【0023】
鋳型の各構成要素は、前記第2上方部分に隣接し、且つ、前記第2上方部分上にある第3部分を備え、前記第3部分は、アルミノテルミット溶接用のるつぼの鋳込手段を受け入れることのできる溢流槽を備え、前記冷却室に対する前記溢流槽の連結手段を介して前記冷却室の前記上開口部の拡張部に位置している。
【0024】
鋳型は、第3の構成要素を備え、この第3の構成要素は、硬い耐熱性を有する材料からなり、各ビーム/レールの端部のレベルにおいて前記足の下に配置されて、前記キャビティの底を区画する上面を有している。
【0025】
第3の構成要素の上面は、実質的に平坦であり、足の下面に接触することができる。
【0026】
第3の構成要素の、硬い耐熱性を有する材料は、第1の2つの構成要素の耐熱性を有する材料よりも高い耐熱性を有している。
【0027】
第3の構成要素の硬い耐熱性を有する材料は、主にアルミナで構成されている。
【0028】
硬い耐熱性を有する材料は、固められた砂である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、3つの構成要素を備える本発明に係る鋳型を、互いに溶接しようとする2つの鉄道レールの端部に組み立てられた状態で、且つ、図2のI−Iに示すようなこれら2つの端部間の横方向の対称面について断面で示す図である。
【図2】図2は、図1のII−IIで見た、立面図で示された2つのレールに共通の長手方向の対称面での図1の鋳型の断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る鋳型の構成要素の1つを三次元で示す図である。
【図4】図4は、図3の鋳型の構成要素の平面図である。
【図5】図5は、図3の鋳型の構成要素の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明に係る鋳型の一実施形態の以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【0031】
種々の添付の図に示す本発明に係る鋳型6の実施形態において、説明される鋳型6は、2つの鉄道レール2の溶接を可能にするためのものである。
【0032】
ここで、長手方向とされるのは、方向1であり、この方向1に沿って、溶接によって互いに組み立てられる2つのレール2が互いに溶接しようとする端部3を少なくとも近接させて設けられている。そのため、端部3は互いに対向し、所定の長手方向の値(例えば、35mm前後)の連続的な間隔4を間に形成し、間隔4には、るつぼ5の内部のアルミノテルミット反応によって液状で供給される溶接金属が充填される。るつぼ5の性質は本発明には無関係であるが、るつぼ5は、例えば使い捨てタイプであり、本発明に係る鋳型6上に、欧州特許出願公開第0407240号明細書に記載の、それ自体知られている方法で直接置くことができる。欧州特許出願公開第0407240号明細書を、この主題についてのより豊富な情報のために参照してもよい。
【0033】
以下の説明において、本発明に係る鋳型6は、端部3の付近に少なくとも位置させて、切断面II−IIを兼ねる長手方向の面7に関してそれぞれ対称性を有するビグノールス型(Vignoles type)のレール2の相互溶接に適合されている。本発明によれば、他の型のレール(溝付きすなわち「ブロカ(Broca)」型、双頭など)又はいかなる型のビーム、限定はされないが特にIPNビーム(IPN beams)の溶接のための鋳型を当然実現することができる。
【0034】
いずれの場合も、このようなビーム/レールは、3つの長手方向に延びる部分を備え、これら部分は、面7に関して(添付の図に示すように)それぞれ対称でもよく、1つの部品に構成されていてもよい。3つの部分とはすなわち、
面7を垂直に切断する平坦な下面すなわち底9に境を接する、面7に対して、一般的には垂直な向きを有する平坦な足8、
足8の上方に面7に沿って位置する平坦な中心部12、及び
面7に対して垂直な、略矩形(長方形)断面の頭部14である。
【0035】
上下の記載は、ここでは、レール2の常用位置を参照して使用される。常用位置において、面7は、略垂直な向きを有し、溶接が行われる向きを構成している。
【0036】
レール2の端部3は、それらの相互溶接のために、例えば、平坦、且つ、面7に対して垂直になるように横引き鋸によって端面が形成され、るつぼ5から来る液状の溶接金属を凝固させて溶接を実施する前に、この溶接金属が鋳込まれる上述の間隔4について、切断面I−Iを兼ねる横断面18に関して相互並行且つ相互対称の関係で対向配置されてもよい。本発明の鋳型6は、このように鋳込まれる金属を、それが液状であるうちは保持する機能を果し、そして、その凝固中に、それを所望の形状に形成する機能を果す。
【0037】
このため、ここに示す鋳型6は、3つの主要構成要素を備えている。3つの主要構成要素とはすなわち、略同一で、面18に関してそれぞれ略対称、且つ、面7に関して互いに対称な2つの上部構成要素すなわち上半部分19である。本発明に係る鋳型6をレール2の周囲に装着する際、上半部分19は、上部構成要素すなわち上半部分19の一上方部分のレベルにおいて、レール2の頭部14の上方で各平坦面20で面7に沿って互いに結合される。その一方で、上半部分19の各々は、この頭部14の下方に、主に面7へ向けて方向付けられて、上部構成要素すなわち上半部分19の上方部分に隣接する下側のレベルにおいて、2つのレールの各々を取り囲むように構成された面21を、端部3及び間隔4の付近、溶接しようとするレールの足及び中心部に対応するゾーンにおいて、足8の下面9を除き、面7の両側にそれぞれ有している。面21は、面7に関して互いに対称である。上部構成要素すなわち上半部分19の各々は、面20と面21との間に、2つのレールの各々を取り囲むように構成された表面30に境を接する開口部を、溶接しようとするレール2の頭部14に対応するゾーンにおける端部3の近傍において、面7の両側にそれぞれ備えている。表面30は、面7に関して互いに対称である。
【0038】
足8の下面9の向かい側において、上部構成要素すなわち上半部分19は、第3の構成要素すなわち底構成要素22によって完成される。この底構成要素22は、面7に対して垂直な、一般的なプレート形状を有し、上側が上面23によって境界付けされている。上面23は、後に説明するような方法で、端部3の付近及び間隔4の対応するゾーンの向かい側で2つのレールの足8の下面9に支持され、且つ、面7から離れる方向において、面21の各々の下境界に接続するように構成されている。これらの面21は、間隔4と中心部12及び足8のレベルにおける各レール2のそれぞれのゾーン24との周りに、レール2の端部3に直接隣接して、キャビティ25を区画する。このキャビティ25は、キャビティ25内部に収容される、レール2の各ゾーン26において、一方では、面21の実質的に凹形の表面210に境を接するエッジ211の連続的な支持により、他方では、上述のゾーン24に関して、2つのレールの長手方向に向かい合う端部3に接触する面23の連続的な支持により、液状の溶接金属が漏れないようシール可能に閉じられる。
【0039】
構成要素19及び22の各々の形状も、本発明には無関係であり、この形状は、例えば、各矩形菱形に適合しているが、上部構成要素すなわち上半部分19の各々の各平坦な上面28によって、面18に対して垂直且つ面7に対して略垂直な、上述の欧州特許出願公開第0407240号明細書の教示にしたがって、るつぼ5を直接担持することのできる鋳型6の上面を定義していることが好ましい。2つの面28は、面28の間に、相補的に形成されたるつぼ5の自動調心を目的として180°とは異なる値の角度を有する上反角を形成する。鋳型6の上半部分19の各々の上方部分のレベルにおいて、上半部分19は、上半部分19の面20及び28と、レール2の頭部14の上側の上面及び間隔4に対応するゾーンの向かい側の表面30とにおいて、キャビティ25へ向かって、るつぼ5から来る液状の溶接金属の冷却室32の各半割部分により、中空である。冷却室の各半割部分は、面18に関して略対称であり、これら2つの半割部分は、面7に関して互いに対称であり、冷却室32は、これらの面18及び7の交点により定義される軸に関して全般的に対称性を有し、それゆえ、この軸に沿って、一方では、上へ向かって上面28に、他方では、下へ向かってキャビティ25に、キャビティ25の上開口部に対応する、双方とも上述の軸を有する、上供給口34及び下供給口320をそれぞれ介して通じている。この下供給口320は、ここでは、図1において破線で表されている。
【0040】
また、冷却室32は、鋳型6の上部構成要素すなわち上半部分19の各々の外壁27に境を接している。この壁27は、上部構成要素すなわち上半部分19の結合性を、上半部分19の製造、搬送、使用中、及び、液状の溶接金属の鋳込み中に維持することのできる最小の厚みを有している。実際に、及び、例えば、この厚みは、約1cmから1.5cm前後である。これにより、冷却室32は、鋳型6の上部構成要素すなわち上半部分19の各々の一般的な形状に関して最適化された容積を有することができる。さらに、この容積は、区分化されていない。すなわち、冷却室の内部に突出して延びる耐熱性を有する材料でできた壁は無い、又は、前記特許文献1に示された従来技術において説明されたような、ストッパなどの硬い耐熱性を有する材料からなる障害物は存在しない。
【0041】
また、冷却室32は、一旦鋳型6が溶接しようとする2つのレール2の周囲に取り付けられると、2つのレールの頭部14によって形成される上方部分を囲む。よって、液状の溶接金属が鋳型6に一旦鋳込まれると、著しい量のこの金属が冷却室32を満たす頭部の周囲に存在する。
【0042】
この著しい量により、鋳込みに続いて、こうして溶接される2つのレールの上方部分すなわち頭部14のレベルにおいて品質が最適化された溶接が可能となるように冷却を遅くすることができるであろう。また、このゾーンにおける冷却の遅さは、したがって、一方では、鋼鉄のより長い注ぎ移しによる鋼鉄の向上、他方では、中心部のゾーンが凝固された後、頭部における凝固だけをさらに可能にし、これにより、中心部における収縮空洞の形成が回避される。
【0043】
一代替形態では、冷却室32によって形成される容積が鋳型6の一般的な形状において最大であるように、前記冷却室32によって形成される容積は、数学的又は幾何学的に凸状の容積である。幾何学においては、容積は、もしその容積の点(A,B)の全ての対について、それらを結ぶ線分[AB]が容積に完全に含まれているならば、凸状である、ということが理解される。
【0044】
一代替形態では、上部構成要素すなわち上半部分19の各々は、上部構成要素すなわち上半部分19の上方部分に隣接し且つ上方部分上にある第3部分を有し、第3部分において、冷却室32は中空になっている。この第3部分は、冷却室32の上方部分に繋がる下開口部33を有する溢流槽34を備えている。よって、溢流槽34によって形成される容積は、冷却室32によって形成される容積の拡張部にある。この開口部33は、溢流槽34を冷却室32に接続するための手段を形成する。したがって、溢流槽34は、上面28から冷却室32の上開口部へ延びる。また、溢流槽34は、上面28の付近において、壁27を通って形成された開口部47を備えている。上部構成要素すなわち上半部分19の各々は、ここでは、面18に関して対称的に壁27に設けられた開口部47を備え、この開口部47は、上面28において上向きに開いている。これらの開口部47により、鋳型へ液状の溶接金属を鋳込む際にガスの排気、及び、鋳込みが完了した時の鋼玉の排出が可能となる。なお、鋼玉は、るつぼ5内のアルミノテルミット反応に起因するものである。溢流槽34は、るつぼ5と共に鋳型6を使用する際、液状の溶接金属を噴流の形状で冷却室32へ流入させるるつぼ5から鋳込手段を受け取る。
【0045】
上部構成要素すなわち上半部分19の各々の下方部分は、キャビティ25に境を接する面21の他に、円筒形のチャンネル38を備えている。特に、チャンネル38は、円柱形である。チャンネル38は、上部構成要素すなわち上半部分19の各々の下方部分の面21と外面50との間に位置する硬い耐熱性を有する材料の厚みの部分において実質的に垂直に延びている。チャンネル38の主軸は、実質的には面18にある。チャンネル38は、その下方部分に、供給口40を有し、供給口40は、一旦、鋳型が溶接しようとするレールの周囲に取り付けられると、これらのレールの各々の足8の上方でキャビティ25の下部ゾーンに通じる。
【0046】
また、チャンネル38は、チャンネル38のもう一方の反対側の端部に、鋳型6の上部構成要素すなわち上半部分19の各々の上方部分の冷却室32にチャンネル38を直接接続する上開口部39を備えている。この開口部39は、レールの中心部12と頭部14との間の接続部のレベルに位置し、前記頭部の側部に対して実質的に平行に対向して延びる。
【0047】
本発明に係る鋳型6の第3の構成要素22に関して、この構成要素22は、一般的には矩形菱形であり、ここでは実質的に平坦な上面23を有している。溶接しようとするレール2に鋳型を装着する際、構成要素22の上面23は、溶接しようとするレールの各々の足8の下面9に支持される。なお、ここでは、下面9自体も実質的に平坦である。より一般的には、構成要素22の上面23は、上面23が相互作用するように設計された足8の下面9に対して相補的である。このような構成により、キャビティ25に導入された溶接金属の凝固中に、足8の面9の底へ向けて突出するビードができないようにすることができる。このことにより、レールの使用時にレールを連続的な基盤によって支持しようとする際に従来技術ではこれらビードがあったことに起因した疲労の問題を回避することができる。このことは、鋳込みの際にるつぼ5から溶接しようとするレール2の足8におけるキャビティ25の下方部分へ液状の溶接金属が直接且つ迅速に到達できるようにする本発明に係る鋳型6の構成によって可能になる。あるいは、上面は、実質的には凹状又は複雑な面を有している。
【0048】
実際に、この迅速且つ直接の到着により、液状の溶接金属の熱損失は最良に低減される。よって、液状の溶接金属は、一旦キャビティ25の底において、足のレベルにおいてレール端部を最適に再溶解させるのに十分な温度を有している。これにより、前記足のレベルにおける溶接の品質を向上し、従来技術の鋳型では生じたビードにより表される過剰な量を無くすことができる。あるいは、さらに、この第3の構成要素22は、液状の鋳込溶接金属の直接の噴流の影響下での、第3の構成要素22の侵食を回避するため、硬い耐熱性を有する材料でできており、この材料は、上部構成要素すなわち上半部分19を構成する硬い耐熱性を有する材料よりも高い耐熱性を有する。特に、第3の構成要素22の、硬い耐熱性を有する材料は、主にアルミナで構成され、アルミナの含有量は、約90%を上回り100%未満である。上部構成要素すなわち上半部分19の硬い耐熱性を有する材料は、固められた砂である。また、面23から延びる第3の構成要素22も、上部構成要素すなわち上半部分19の周囲に噛み合うことで3つの構成要素19及び22の相互の位置決定を簡単化するために、面18から離れる方向の両側にそれぞれ突起49を備えている。
【0049】
実際には、本発明に係る鋳型6は、従来技術の鋳型、特に、前記特許文献1に記載の鋳型よりも寸法が小さい。これにより、より少量の硬い耐熱性を有する材料を使用して鋳型を形成することが可能となり、2つのレールの溶接用の使用の際に、溶接のための最適な品質を保持すると共に、鋳込みを実施するために使用するアルミノテルミット合剤をより少なくすることが可能となる。よって、本発明に係る鋳型は、使い捨てを目的とした場合、発生する廃棄物はより少ない。実際に、双方とも同じ種類の溶接を実施することを意図した従来技術の鋳型と本発明に係る鋳型との間で、本発明に係る鋳型は、従来技術に係る鋳型よりも重さが約30%少なく、一方、アルミノテルミット合剤の量は、約10%低減され得るということが観察された。
【0050】
最後に、本発明に係る鋳型は、その実施、及び、得られる溶接の品質に影響を及ぼさずに、鉄道軌道のためのカーブにおいて生じ得るような、溶接しようとする2つのレールが傾いた状態で使用可能である。実際に、るつぼの鋳込手段から来る噴流の力は、この噴流が本発明に係る鋳型の底の第3の構成要素に達する時、重力の影響下で、いつの間にかこの噴流が完全に偏向されるようになっている。鉄道軌道の実現の際に、この傾斜は約10%に達することがある。
【0051】
当然、本発明の範囲内で本発明の種々の変更は可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接しようとするビーム/レールの2つの端部(3)の周囲に互いに対向して一時的に取り付けられる硬い耐熱性を有する材料からなる少なくとも2つの、実質的に同一の構成要素(19,22)を備える、金属のビーム/レール(2)のアルミノテルミット溶接用の鋳型(6)であって、
前記各構成要素は、第1下方部分と、第2上方部分とを備え、
前記第1下方部分は、キャビティ(25)を区画する面(21)と、ガス及び液状の溶接金属用の回収チャンネル(38)とを有し、前記キャビティ(25)は、上向きの上開口部を有し、鋳込まれる液状の溶接金属を受け入れるように設けられ、前記面(21)は、少なくとも前記ビーム/レール(2)の足(8)及び中心部(12)のレベルにおいて前記端部(3)を取り囲むことができ、前記回収チャンネル(38)は、前記キャビティ(25)の下部ゾーンに下向きに連通すると共に、上向きの開口部(39)を有し、
前記第2上方部分は、前記第1下部構成要素に隣接し且つ、前記第1下部構成要素の上に位置し、上向きに開口する前記キャビティ(25)の前記上開口部に、下向きに連通する室(32)を備え、前記室(32)は、鋳込まれる液状の溶接金属を受け入れるように設けられ、前記ビーム/レール(2)の頭部(14)のレベルにおいて前記端部(3)を囲むことができ、
前記室(32)は、前記チャンネル(38)の前記開口部(39)が繋がる非区分化された容積を形成する徐冷室であり、前記鋳型の前記構成要素(19)の各々の外壁(27)と、前記頭部(14)の下に位置し得る下開口部(320)とに境を接することを特徴とする鋳型。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳型において、
前記冷却室(32)を形成する前記容積は、幾何学的に凸状の容積であることを特徴とする鋳型。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項に記載の鋳型において、
前記面(21)は、実質的に凹状であると共に、足(8)及び前記中心部(12)のレベルにおいて、液状の前記溶接金属が漏れないよう前記キャビティ(25)をシールするために前記ビーム/レール(2)のゾーン(26)に接触し得るエッジ(211)を備えることを特徴とする鋳型。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鋳型において、
前記冷却室は、前記頭部(14)のレベルにおいて、液状の前記溶接金属が漏れないよう前記冷却室(32)をシールするために前記ビーム/レール(2)のゾーン(26)に接触し得る表面(30)に境を接する開口部を備えることを特徴とする鋳型。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の鋳型において、
前記各構成要素は、前記第2上部部分に隣接し且つ、前記第2上部部分の上に位置する第3部分をさらに備え、
前記第3部分は、アルミノテルミット溶接用のるつぼ(5)の鋳込手段を受け入れることのできる溢流槽(34)を備え、前記冷却室(32)に前記溢流槽(34)を接続する手段(33)を介して前記冷却室(32)の前記上開口部の拡張部に位置していることを特徴とする鋳型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の鋳型において、
第3の構成要素(22)をさらに備え、
前記第3の構成要素(22)は、硬い耐熱性を有する材料からなり、各ビーム/レール(2)の前記端部のレベルにおいて前記足(8)の下に配置され且つ、前記キャビティ(25)の底に境を接する上面(23)を有していることを特徴とする鋳型。
【請求項7】
請求項6に記載の鋳型において、
前記第3の構成要素(22)の前記上面(23)は、実質的に平坦であり、前記足(8)の下面(9)に接触し得ることを特徴とする鋳型。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の鋳型において、
前記第3の構成要素(22)の、前記硬い耐熱性を有する材料(18)は、前記第1の、2つの構成要素(19)の硬い耐熱性を有する材料よりも耐熱性が高いことを特徴とする鋳型。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の鋳型において、
前記第3の構成要素(22)の、前記硬い耐熱性を有する材料は、主にアルミナで構成されていることを特徴とする鋳型。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の鋳型において、
前記硬い耐熱性を有する材料は、固められた砂であることを特徴とする鋳型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−502799(P2011−502799A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534465(P2010−534465)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065851
【国際公開番号】WO2009/065864
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(502308169)レイルテック アンテルナショナル (3)
【氏名又は名称原語表記】RAILTECH INTERNATIONAL