説明

直流変換器

【目的】 第1及び第2の負荷12、18に異なる電圧を供給するように構成された直流変換器の構成を簡単にする。
【構成】 直流電源端子3と第1の負荷(TV主回路)12との間にトランス6の1次巻線7を介してトランジスタQ1 を接続する。トランジスタQ1 の出力ラインとグランドとの間に平滑用コンデンサ13を接続する。トランスの2次巻線8に整流平滑回路16を介して第2の負荷(リモコン受信回路)18を接続する。トランス6の3次巻線9をトランジスタQ1 のベースに接続してトランジスタQ1 を正帰還駆動する。トランジスタQ1 のベースに第1及び第2の電圧制御回路19、20を接続する。第1の負荷12に電力を供給する時にはトランジスタQ1 をチョッパ動作させる。第1の負荷12に電力を供給しない時にはトランジスタQ1 のエミッタをグランドに接続してフライバック・コンバータ回路を形成して第2の負荷18のみに電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、テレビ受像機、ビデオ機器、オーディオ機器等の直流電源回路に使用するための直流変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】テレビ受像機の電源回路は、動作時の電圧を供給するための主電源回路と、リモコン用の補助電源回路とを有する。スタンバイ(待機)時には電力損失の低減及び安全性の確保のために主電源回路は実質的に非動作になる。なお、主電源回路はチョッパ回路又はフライバック・コンバータ回路等に構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、主電源回路と補助電源回路とを完全に独立して設けると、装置が大型になるのみならず、コスト高になる。この問題を解決するために主電源回路の一部を利用して補助電源回路を設けることもある。しかし、電圧制御や主電源を切離して安全性も確保するために複数の回路部品が必要になり、回路構成の十分な簡略化が達成されていない。
【0004】そこで、本発明の目的は第1及び第2の出力端子を有し、且つ第1の出力端子の電圧を実質的に零又は低くするように形成された直流変換器の構成の簡略化及び低コスト化を達成することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上目的を達成するための請求項1の発明は、直流電源端子と、第1及び第2の出力端子と、1次、2次、及び3次巻線を有するトランスと、トランジスタと、平滑用コンデンサと、補助整流平滑用回路と、電圧制御回路と、切替装置とを有し、前記直流電源端子と前記第1の出力端子との間に前記トランジスタと前記1次巻線との直列回路が接続され、前記平滑用コンデンサは前記第1の出力端子とグランド(共通端子)との間に接続され、前記補助整流平滑回路は前記2次巻線と前記第2の出力端子との間に接続され、前記3次巻線は前記トランジスタのベ−ス・エミッタ間に対して並列に接続され、前記電圧制御回路は前記第1の出力端子に第1の電圧を得、前記第2の出力端子に第2の電圧を得るように構成され、前記切替装置は前記第1の出力端子に前記第1の電圧を得る時に前記トランスの蓄積エネルギ−を前記平滑用コンテンサに対して放出するための蓄積エネルギ−放出回路を形成し、前記第1の出力端子の電圧を前記第1の電圧よりも低い値又は零にする時に前記平滑用コンデンサを直接又は抵抗を介して短絡すると共に前記蓄積エネルギ−放出回路を前記平滑用コンデンサから切り離すように形成されていることを特徴とする直流変換器に係わるものである。上記目的を達成するための請求項2の発明は、直流電源端子と、第1及び第2の出力端子と、1次、2次、3次及び4次巻線を有するトランスと、トランジスタと、平滑用コンデンサと、補助整流平滑回路と、起動抵抗と、第1及び第2の電圧制御回路と、逆流阻止用ダイオードと、切替装置とを有し、前記トランジスタのコレクタが前記1次巻線を介して前記電源端子に接続され、前記トランジスタのエミッタは前記第1の出力端子に接続され、前記平滑用コンデンサは前記トランジスタのエミッタとグランドとの間に接続され、前記補助整流平滑回路は前記2次巻線と前記第2の出力端子との間に接続され、前記起動抵抗は前記電源端子と前記トランジスタのベースとの間に接続され、前記3次巻線は前記トランジスタのベース・エミッタ間に対して並列に接続され、前記4次巻線は前記逆流阻止用ダイオードと前記切替装置とを介して前記トランジスタのエミッタとグランドとの間に接続され、前記第1の電圧制御回路は前記第1の出力端子とグランドとの間の第1の出力電圧を検出する回路と前記第1の電圧を一定に制御する手段とを有して前記トランジスタのベースに接続され且つ前記第1の出力端子に前記第1の出力電圧を得る時に電圧制御動作が生じるように形成され、前記第2の電圧制御回路は前記第2の出力端子の第2の出力電圧を一定に制御する手段を有して前記トランジスタのベースに接続され且つ前記第1の出力端子の電圧を零又は低くする時に前記第2の出力電圧を一定にするための制御動作が生じるように形成され、前記切替装置は前記第1の出力端子に前記第1の出力電圧を得る時に前記4次巻線を前記トランジスタのエミッタとグランドとの間に接続し、前記第1の出力端子の電圧を実質的に零又は低い値にする時に前記4次巻線を前記トランジスタのエミッタとグランドとの間から切り離すと共に前記トランジスタのエミッタをグランドに接続するように構成されていることを特徴とする直流変換器に係わるものである。
【0006】
【発明の作用及び効果】本発明においては、第1の出力端子が第1の出力電圧を要求している時にチョッパ回路の動作になり、第1の出力端子が第1の出力電圧を要求していない時にはフライバックコンバ−タの動作になる。従って、1つのトランジスタによって2種類の回路動作が可能になる。第2の出力端子のみに所望の出力電圧が要求されている時にトランジスタのチョッパ動作をそのまま継続させると、比較的大きな電力損失が生じるのみでなく、安全性の上からも好ましくない。本発明では第2の出力端子のみに出力電圧が要求されている時には第1の出力端子がグランドに接続され、トランジスタがフライバックコンバ−タとして動作する。従って、1つのトランジスタによってチョッパ動作とフランバックコンバ−タ動作との両方を行うことが可能になり、装置の小型化及び低コスト化が達成される。される。請求項2に示すように構成すると、チョッパ−動作とフライバックコンバ−タ動作とがより確実に得られる。
【0007】
【第1の実施例】次に、図1〜図3を参照して本発明の第1の実施例に係わるテレビ受像機の電源回路の直流変換器を説明する。図1において、交流電源端子1には整流平滑回路から成る直流電源2が接続されている。直流電源2は例えば300Vの電源端子3とグランド端子4とを有する。電源端子3にはトランス6の1次巻線7の一端が接続されている。トランス6は相互に電磁結合された補助電源用の2次巻線8と、トランジスタ駆動用の3次巻線9と、蓄積エネルギー放出用の4次巻線10とを有する。1次巻線7の他端はNPN型の第1のトランジスタQ1 のコレクタに接続され、この第1のトランジスタQ1 のエミッタは第1の出力端子11に接続されている。第1の出力端子11とグランド端子4との間にはTV受像機の主回路から成る第1の負荷(主負荷)が接続されている。トランジスタQ1 のエミッタとグランド端子4との間には平滑用コンデンサ13が接続されている。
【0008】2次巻線8にはダイオード14とコンデンサ15とから成る整流平滑回路16を介して第2の出力端子17が接続されている。第2の出力端子17とグランドとの間にはTV受像機のリモコン受信回路から成る第2の負荷(補助負荷)18が接続されている。従って、第2の出力端子17の電圧は第1の出力端子11の電圧よりも大幅に低い。
【0009】第1のトランジスタQ1 は、第1及び第2の負荷12、18の両方に電力を供給する場合にチョッパ動作する。一方、第2の負荷18のみに電力を供給する場合には、トランスを有するフライバックコンバータとして動作する。上記2つの動作を行うために、第1及び第2の電圧制御回路19、20が設けられている。また、第1のトランジスタQ1 を正帰還駆動するために、3次巻線9の一端がコンデンサ21と抵抗22を介して第1のトランジスタQ1 のベースに接続され、この3次巻線9の他端が第1のトランジスタQ1 のエミッタに接続されている。
【0010】トランス6の4次巻線10は第1のトランジスタQ1 のオン期間にトランス6に蓄積されたエネルギーを第1の負荷12及び平滑用コンデンサ13に放出するために、逆流阻止用ダイオード23と切替装置24の接点aとを介して第1のトランジスタQ1 のエミッタとグランド端子4との間に接続されている。
【0011】切替装置24は第1及び第2の固定接点a、bと可動接点cとリレーコイル25とから成り、駆動回路26によってコイル25に電流を流した時に接点aと接点bが切替わるように構成されている。第1の固定接点aは4次巻線10に接続され、第2の固定接点bは電流制限用抵抗27を介してグランド端子4に接続され、可動接点cは第1のトランジスタQ1 のエミッタに接続されている。なお、トランジスタQ1 の電流制限が不要の時には抵抗27は省くことができる。駆動回路26は接点a、bをオン・オフ制御するためのスイッチ回路を含み、リモートコントロール装置等の指令に応答して接点a、bをオン・オフ制御する。
【0012】この直流変換器は自励型に構成されているので、電源端子3と第1のトランジスタQ1 のベースとの間に起動抵抗28が接続されている。
【0013】第1の電圧制御回路19は第1の出力端子11の電圧を一定に制御するためのものであるから、第1の出力端子11とグランド端子4との間に接続され、この出力ライン29が制御用の第2のトランジスタQ2 のベースに接続されている。PNP型の第2のトランジスタQ2 のエミッタは第1のトランジスタQ1 のベースに接続され、このコレクタは第1のトランジスタQ1 のエミッタに接続されている。従って、第2のトランジスタQ2 は第1のトランジスタQ1 のベース電流のバイパスとして働く。第1の電圧制御回路19は図2に具体的に示すように、電圧検出用抵抗30、31と、NPN型の誤差増幅用トランジスタ32と、定電圧源を形成するためのツエナーダイオード33及び抵抗34と、電流制限用抵抗35とから成る。電圧検出回路を形成する抵抗30、31は第1の出力端子11とグランド端子4との間に接続され、これ等の分圧点がトランジスタ32のベースに接続されている。トランジスタ32のエミッタはツエナーダイオード33のカソードに接続され、コレクタは抵抗29を介して第2のトランジスタQ2 のベースに接続されている。ツエナーダイオード33のアノードはグランド端子4に接続され、カソードは抵抗34を介して第1の出力端子11に接続されている。
【0014】第2の電圧制御回路20はコンデンサ36とダイオード37とツエナーダイオード38と抵抗39とから成る。コンデンサ36の一端はダイオード37を介して3次巻線9の一端に接続され、コンデンサ36の他端は3次巻線9の他端に接続されている。コンデンサ36とダイオード37の接続点40とトランジスタQ2 のベースとの間にツエナーダイオード38が接続されている。抵抗39はコンデンサ36に並列に接続されている。
【0015】
【動作】リモートコントローラ(図示せず)によってTV受像機の第1の負荷12をオンにするための信号を発生させると、リモコン回路から成る第2の負荷18がこれに応答し、リレー駆動回路26は可動接点cを第1の固定接点aに接続する。図2は第1の固定接点aをオンにした場合の動作に関係する部分を図1から抽出して示す。まず、起動抵抗28を介して第1のトランジスタQ1 のベース電流が流れ、これにより、トランスの1次巻線7にも電流が流れ、2次巻線9に黒丸で示す極性に電圧が発生する。この2次巻線9の電圧によってコンデンサ21と抵抗22とトランジスタQ1 のベース・エミッタ間とを通って2次巻線9に戻る閉回路に正帰還動作で電流が流れ、トランジスタQ1 のオンが維持される。トランジスタQ1 のコレクタ電流はトランスの1次巻線7がインダクタンスを有するので傾斜を有して徐々に増大する。第1のトランジスタQ1 のコレクタ電流IC はこのベース電流IB に第1のトランジスタQ1 の増幅率hFEを乗算した値である。ベース電流IB はほぼ一定とみなされるので、コレクタ電流IC がIB ×hFEに達した後は第1のトランジスタQ1 の飽和オン動作状態を維持することができなくなり、第1のトランジスタQ1 のコレクタ・エミッタ間の電圧が増大し、逆に1次巻線7の電圧は減少し、同時に3次巻線9の電圧も減少し、第1のトランジスタQ1 は急速にオフになる。
【0016】第1のトランジスタQ1 のオン期間には平滑用コンデンサ13及び第1の負荷12に第1のトランジスタQ1 を通って電流が流れると共に、トランス6にもエネルギーが蓄積される。第1のトランジスタQ1 がオフになると、トランス6の蓄積エネルギーが2次巻線8から整流平滑回路16及び第2の負荷18に放出されると共に、4次巻線10から平滑用コンデンサ13及び第1の負荷12に放出される。なお、第1のトランジスタQ1 のオフ期間には3次巻線9の電圧によって第1のトランジスタQ1 のベース・エミッタ間が逆バイアスされている。
【0017】トランス6の磁気エネルギーの放出が終了すると、トランス6の漏れインダクタンスにより3次巻線9に第1のトランジスタQ1 のベース・エミッタ間を順バイアスする向きの電圧が発生して駆動電流(ベース電流)が第1のトランジスタQ1 に供給され、同時に抵抗28を通して起動電流が供給され、第1のトランジスタQ1 は急速にオンになる。その後は同一の動作が繰返され、第1のトランジスタQ1 がオン・オフする。
【0018】図2の状態において、第1の出力端子11の電圧が所定値よりも高くなると、この分圧値とツエナーダイオード33で与えられる基準電圧との差に対応する電流がトランジスタ32のコレクタに流れる。即ち、第2のトランジスタQ2 のベース電流が大きくなり、第2のトランジスタQ2 のエミッタ・コレクタ間の抵抗が小さくなり、3次巻線9及び抵抗28から第1のトランジスタQ1 のベースに流れる電流の第2のトランジスタQ2 へのバイパス量が増大し、第1のトランジスタQ1 ののこぎり波又は三角波状に流れるコレクタ電流のピーク値が小さくなり、且つオン時間幅が狭くなり、第1の出力端子11の電圧が所定値に向って低下する。第1の出力端子11の電圧が所定値よりも低くなった時には上述と逆の動作が生じる。
【0019】第2の負荷18に対する電力供給回路には特別な定電圧制限回路が設けられていない。しかし、整流平滑回路16のダイオード14が第1のトランジスタQ1のオフ期間にオンになる極性に決定され、且つ第1のトランジスタQ1 のオフ期間にトランス6の各巻線8、9、10に一定の電圧が得られるように構成されているので、第2の出力端子17に一定の電圧を得ることができる。即ち、第1の固定接点aがオンになつているため、第1のトランジスタQ1 のオフ期間には定電圧化された平滑用コンデンサ13の電圧が4次巻線10に印加され、2次巻線8に定電圧化された電圧が誘起し、第2の負荷18に定電圧を供給することができる。
【0020】なお、第1のトランジスタQ1 のオフ期間に第2の電圧制御回路20のコンデンサ36が3次巻線9の電圧によってほぼ一定値に充電される。ツエナーダイオード38のツエナー電圧をコンデンサ36の充電電圧よりも1〜2V高く設定すると、第1のトランジスタQ1 のオン期間にツエナーダイオード38が非導通に保たれ、第2の電圧制御回路20は電圧制御に無関係になる。
【0021】TV受像機の主回路から成る第1の負荷12をオフにし、リモコン受信回路から成る第2の負荷18のみに電力を供給するスタンバイモード時には、例えばリモコン制御によって切替装置24における第2の固定接点bに可動接点cを投入する。これにより、第1の負荷12、平滑用コンデンサ13、4次巻線10、及び第1の電圧制御回路19が図1の回路から切離されたと等価な図3の回路になる。図3の回路はフライバックコンバータ回路であり、以下に説明するように動作する。第1のトランジスタQ1 のエミッタは比較的小さい抵抗27を介してグランド端子4に接続されるので、エミッタの電位はグランドに近い値又は極めて低い値になり、図2に示した第1の電圧制御回路19における検出電圧値が低下するので、第1の電圧制御回路19は実質的に切離された状態になる。
【0022】第1の電圧制御回路19による第1のトランジスタQ1 の制御が行われない状態では、第1のトランジスタQ1 のオン期間が第1の電圧制御回路19が動作していた時のオン期間よりも長くなり、2次巻線8及び3次巻線9の第1のトランジスタQ1 のオン期間の電圧(以下、オン電圧と言う)及び第1のトランジスタQ1 のオフ期間の電圧(以下、オフ電圧と言う)の平均値が図2のチョッパ回路の時のそれ等よりも上昇する。この結果、図3のフライバックコンバータ動作時における第2の電圧制御回路20のコンデンサ36の充電電圧が図2のチョッパ動作時のそれよりも高くなる。コンデンサ36の電圧VC が上昇し、このコンデンサ電圧VC がツエナーダイオード38のツエナー電圧VZ と第2のトランジスタQ2 のベース・コレクタ間順方向電圧VBCとの和よりも大きくなると、ツエナーダイオード38が導通し、コンデンサ36と第2のトランジスタQ2 のコレクタ・ベース間とツエナーダイオード38とから成る閉回路に電流が流れ、第2のトランジスタQ2 がオン状態になる。
【0023】第1のトランジスタQ1 のオン期間に蓄えられたトランス6のエネルギーの放出が終了すると、3次巻線9に反対の極性の電圧が発生し、3次巻線9とコンデンサ21と抵抗22とトランジスタQ1 のベース・エミッタ間とから成る閉回路で第1のトランジスタQ1 のベース電流が流れる。この時、第2のトランジスタQ2 がオンしているので、3次巻線9とコンデンサ21と抵抗22と第2のトランジスタQ2 のエミッタ・ベース間とツエナーダイオード38とコンデンサ36とから成る閉回路で第2のトランジスタQ2 のベース電流が流れる。第2のトランジスタQ2 にベース電流が流れると、このベース電流に電流増幅率を乗算した値のコレクタ電流が第2のトランジスタQ2 に流れる。この第2のトランジスタQ2 は第1のトランジスタQ1 の駆動電流のバイパスとして働き、この第2のトランジスタQ2 にバイパスした分だけ第1のトランジスタQ1 のベース電流が減少し、第1のトランジスタQ1 ののこぎり波状のコレクタ電流のピーク値が低くなり、且つオン時間幅も狭くなる。
【0024】第1のトランジスタQ1 のオン時間幅が狭くなると、2次巻線8及び3次巻線9のオン電圧及びオフ電圧の平均値が低下する。コンデンサ36の電圧が基準値よりも低下すると、第2のトランジスタQ2 のベース電流が低下し、第1のトランジスタQ1 の駆動電流のバイパス量が少なくなり、第1のトランジスタQ1 のコレクタ電流のピーク値及びオン時間幅が大きくなり、第2の出力端子17の電圧及びコンデンサ36の電圧を上昇させる動作が生じる。第2の電圧制御回路20のコンデンサ36の電圧は、第2の負荷18のための整流平滑回路16のコンデンサ15の電圧に対応している。即ち、第1のトランジスタQ1 のオフ期間にはダイオード14がオンであるからコンデンサ15の電圧が2次巻線8に印加され、これに対応した電圧が3次巻線9に得られ、これがコンデンサ36に充電される。従って、コンデンサ36の電圧は第2の出力端子17の電圧を示していることになる。これはコンデンサ36の電圧が一定になるように制御すれば。スタンバイ時において第2の出力端子17の電圧を一定にすることができることを意味する。
【0025】上述から明らかなように、本実施例によれば、1つのトランジスタQ1 を使用して第1及び第2の出力端子11、17の電圧を安定化させることができる。また、スタンバイ時に、第1の負荷12に対して高い電圧が印加されることを阻止して安全性を高め且つ電力損失を低減することができる。また、簡単な回路で第1の電圧制御回路19に基づくチョッパ動作と第2の電圧制御回路20によるフライバックコンバータ動作との両方を行うことができる。
【0026】
【第2の実施例】次に、図4を参照して第2の実施例の直流変換器を説明する。但し、図4において図1と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図4の直流変換器は図1の切替装置24を変形した他は図1と同一に構成されている。図4の切替装置では、エネルギー放出用の4次巻線10の一端と第1のトランジスタQ1 のエミッタとの間にはスイッチを設けずに、この他端とグランド端子4との間に切替装置24aを設けている。この切替装置24aの可動接点cは固定接点aに対してチョッパ動作の時にのみ接触する。また、図1の切替装置24の第2の固定接点bの代りに図4ではトランジスタQ3 が第1のトランジスタQ1 のエミッタとグランド端子4との間に設けられ、このベースがダイオード41と抵抗42を介して電源端子3に接続されている。またトランジスタQ3 をオン・オフするためにこのベースとグランド端子4との間に切替装置24aが接続されている。
【0027】図4の回路で第1及び第2の負荷12、18に電力を供給する時には、切替装置24aをオンにする。これにより、4次巻線10によってエネルギーを放出するための回路が形成され、また第3のトランジスタQ3 がオフになるために第1のトランジスタQ1 のエミッタがグランドから開放される。図4の第1の負荷12に対する電力供給を停止し、第2の負荷18のみに電力を供給する時には切替装置24aをオフにする。これにより、第3のトランジスタQ3 がオンになり、第1のトランジスタQ1 のエミッタがグランド端子4に実質的に接続され、第1の負荷12が切離される。上記以外の動作は図1と同一であるので、同一の作用効果が得られる。
【0028】
【第3の実施例】次に、図5を参照して第3の実施例の直流変換器を説明する。但し、図5において図1と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図5では図1の第2のトランジスタQ2 に相当するものが設けられていない。従って、第1の電圧制御回路19の出力ライン29が第1のトランジスタQ1 のベースに直接に接続されている。また、ツエナーダイオード38のカソードも第1のトランジスタQ1 のベースに直接に接続されている。従って、図5ではフライバック・コンバータ動作時にコンデンサ36の電圧がツエナーダイオード38の電圧になるように第1のトランジスタQ1 が制御される。また、図5ではフライバック・コンバータ動作時に第1のトランジスタQ1 のベース電流のバイパスが3次巻線9とコンデンサ21と抵抗22とツエナーダイオード38とコンデンサ36の閉回路で生じる。なお、第1のトランジスタQ1 のエミッタの出力ラインにダイオードD1 が接続されている。その他は図1と同一であるので、同一の作用効果を有する。
【0029】
【第4の実施例】次に、図6を参照して第4の実施例の直流変換器を説明する。但し、この直流変換器の大部分は図1と同一であるので、図6には図1の回路を変形した部分とこれに直接に関係する部分のみを示す。図6の回路は図1の切替装置24を電子化切替装置24bに変形したものであり、その他は図1と同一に構成されている。電子化切替装置24bは第3、第4及び第5のトランジスタQ3 、Q4 、Q5と第1、第2及び第3の抵抗R1 、R2 、R3 とから成る。第3のトランジスタQ3 は抵抗R1 を介して第1のトランジスタQ1 のエミッタとグランド端子4との間に接続されている。4次巻線10は第4のトランジスタQ4 を介して第1のトランジスタQ1 のエミッタに接続されている。第3のトランジスタQ3 と第4のトランジスタQ4 とを互いに反対動作させるために第4のトランジスタQ4 のベースとグランドとの間に抵抗R3 を介して第5のトランジスタQ5 が接続され、このベースと第3のトランジスタQ3 のコレクタとの間に抵抗R2 が接続されている。図1の第1の負荷12を駆動する時には図6の第3のトランジスタQ3がオフ、第4のトランジスタQ4 がオンになる。図1の第1の負荷12が非駆動の時には第3のトランジスタQ3 をオン、第4のトランジスタQ4 をオフにする。この動作は第3のトランジスタQ3 のベースに制御されたリモートコントロールにするオン・オフ駆動回路26aによって達成される。
【0030】
【第5の実施例】次に、図7の第5の実施例の直流変換器を説明する。但し、図7及び後述する図8において図1R>1と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。この実施例ではトランス6の1次巻線7がトランジスタQ1 の第1の出力端子11との間に接続されている。従って、1次巻線7は平滑用リアクトルとして働いている。1次巻線7がトランジスタQ1 の出力側であるので、図1のエネルギ−放出用の4次巻線10は省かれている。
【0031】電圧制御を行うために1次巻線7に対してダイオ−ドD1 を介して並列にコンデンサC1 が接続されている。このコンデンサC1 は出力電圧の情報を保持する。コンデンサC1 の電圧に基づいてトランジスタQ1 を制御するための電圧制御回路100は、抵抗R11〜R14とトランジスタQ11、Q12とツェナ−ダイオ−ドZD1 とから成る。抵抗R11、R12はコンデンサC1 の電圧を分圧してトランジスタQ11のベ−スに与える。トランジスタQ11はツェナ−ダイオ−ドZD1 の基準電圧と検出電圧との差に対応する出力を発生する。トランジスタQ12は主トランジスタQ1 のベ−ス・エミッタ間に接続され、前段のトランジスタQ11から得られる誤差出力に応答して主トランジスタQ1のベ−ス電流をバイパス制御する。
【0032】図7の回路も図1と同様な作用効果を有する。また、この回路は電圧制御回路100をチョッパ動作とフライバックコンバ−タ動作の両方に兼用できる利点を有する。
【0033】
【第6の実施例】図8の第6の実施例の直流変換器は、図7と同様にトランス6の1次巻線7が主トランジスタQ1 と第1の出力端子11との間に接続されている。電圧制御回路19は図2の電圧制御回路19のトランジスタ32のコレクタに発光ダイオ−ドLEDを付加した構成に成っている。LEDに光結合されたホトトランジスタQ22はツェナ−ダイオ−ド38に並列に接続されている。図8の回路も図1と同様の作用効果を有する。
【0034】
【変形例】本発明は上述の実施例に限定されるものでなく、例えば次の変形が可能なものである。
(1) 図6の電子化された切替装置24bを図9及び図10に示す回路に変形することができる。図9及び図1010においてもチョッパ動作時には第3のトランジスタQ3 がオフに制御され、第4のトランジスタQ4 がオンになる。フライバック・コンバータ動作時には第4のトランジスタQ4 がオンになり、第3のトランジスタQ3 がオフになる。
(2) 第1及び第2の電圧制御回路19、20を種々変形することができる。例えば、第2の電圧制御回路20を第2の出力端子17の電圧を検出し、これが一定になるようにトランジスタQ1 のベース電流を制御する回路にすることができる。
(3) ビデオ機器、オーディオ機器の電源回路にも本発明を適用できる。
(4) 切替装置24は、リレ−やトランジスタのほかにサイリスタ等のスイッチ素子でも構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係わる直流変換器を示す回路図である。
【図2】図1の直流変換器のチョッパ動作に関係する部分を示す回路図である
【図3】図1の直流変換器のフライバック・コンバータ動作に関係する部分を示す回路図である。
【図4】第2の実施例の直流変換器を示す回路図である。
【図5】第3の実施例の直流変換器を示す回路図である。
【図6】第4の実施例の直流変換器の一部を示す回路図である。
【図7】第5の実施例の直流変換器を示す回路図である。
【図8】第6の実施例の直流変換器を示す回路図である。
【図9】変形例の切替装置を示す回路図である。
【図10】別の変形例の切替装置を示す回路図である。
【符号の説明】
12 第1の負荷
16 補助整流平滑回路
18 第2の負荷
19 第1の電圧制御回路
20 第2の電圧制御回路
24 切替装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 直流電源端子と、第1及び第2の出力端子と、1次、2次、及び3次巻線を有するトランスと、トランジスタと、平滑用コンデンサと、補助整流平滑用回路と、電圧制御回路と、切替装置とを有し、前記直流電源端子と前記第1の出力端子との間に前記トランジスタと前記1次巻線との直列回路が接続され、前記平滑用コンデンサは前記第1の出力端子とグランド(共通端子)との間に接続され、前記補助整流平滑回路は前記2次巻線と前記第2の出力端子との間に接続され、 前記3次巻線は前記トランジスタのベ−ス・エミッタ間に対して並列に接続され、前記電圧制御回路は前記第1の出力端子に第1の電圧を得、前記第2の出力端子に第2の電圧を得るように構成され、前記切替装置は前記第1の出力端子に前記第1の電圧を得る時に前記トランスの蓄積エネルギ−を前記平滑用コンテンサに対して放出するための蓄積エネルギ−放出回路を形成し、前記第1の出力端子の電圧を前記第1の電圧よりも低い値又は零にする時に前記平滑用コンデンサを直接又は抵抗を介して短絡すると共に前記蓄積エネルギ−放出回路を前記平滑用コンデンサから切り離すように形成されていることを特徴とする直流変換器。
【請求項2】 直流電源端子と、第1及び第2の出力端子と、1次、2次、3次及び4次巻線を有するトランスと、トランジスタと、平滑用コンデンサと、補助整流平滑回路と、起動抵抗と、第1及び第2の電圧制御回路と、逆流阻止用ダイオードと、切替装置とを有し、前記トランジスタのコレクタが前記1次巻線を介して前記電源端子に接続され、前記トランジスタのエミッタは前記第1の出力端子に接続され、前記平滑用コンデンサは前記トランジスタのエミッタとグランドとの間に接続され、前記補助整流平滑回路は前記2次巻線と前記第2の出力端子との間に接続され、前記起動抵抗は前記電源端子と前記トランジスタのベースとの間に接続され、前記3次巻線は前記トランジスタのベース・エミッタ間に対して並列に接続され、前記4次巻線は前記逆流阻止用ダイオードと前記切替装置とを介して前記トランジスタのエミッタとグランドとの間に接続され、前記第1の電圧制御回路は前記第1の出力端子とグランドとの間の第1の出力電圧を検出する回路と前記第1の電圧を一定に制御する手段とを有して前記トランジスタのベースに接続され且つ前記第1の出力端子に前記第1の出力電圧を得る時に電圧制御動作が生じるように形成され、前記第2の電圧制御回路は前記第2の出力端子の第2の出力電圧を一定に制御する手段を有して前記トランジスタのベースに接続され且つ前記第1の出力端子の電圧を零又は低くする時に前記第2の出力電圧を一定にするための制御動作が生じるように形成され、前記切替装置は前記第1の出力端子に前記第1の出力電圧を得る時に前記4次巻線を前記トランジスタのエミッタとグランドとの間に接続し、前記第1の出力端子の電圧を実質的に零又は低い値にする時に前記4次巻線を前記トランジスタのエミッタとグランドとの間から切り離すと共に前記トランジスタのエミッタをグランドに接続するように構成されていることを特徴とする直流変換器。

【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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