説明

直管型発光ダイオード式照明灯

【課題】チョッパ式定電流回路を有する直流電源装置を内蔵した直管型発光ダイオード式照明灯を既存の蛍光灯設備に取り付けると故障のおそれがある。また、点灯が安定しない。
【解決手段】直管型発光ダイオード式照明灯1は、直流電源装置2と発光ダイオード素子3と一対のプラグ4とを含んでなる。直管型発光ダイオード式照明灯1は、直流電源装置2を内蔵する。直流電源装置2は、整流器5とチョッパ式定電流回路6とバイパス電路7とを含んでなる。チョッパ式電流回路6は、スイッチング素子TRを有する。チョッパ式電流回路6は、スイッチング素子TRと、発光ダイオード素子3に供給する電流が所定の電流値を超えないようにスイッチング素子TRを導通させるとともに電流が所定の電流値を超えたときに予め定められた一定時間スイッチング素子TRを非導通にすることを繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード式照明灯に関する。特に、本発明は、直流電源装置を内蔵した直管型発光ダイオード式照明灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から発光ダイオード素子は、信号灯、電光掲示板、モニタのバックライトのような表示装置の光源に広く利用されている。近年、発光ダイオード素子で白色光を得る技術が進歩したことによって、自動車のヘッドライトのように照明装置の光源に発光ダイオード素子が利用されるようになってきている。とりわけ、一般家庭向けに電球型発光ダイオード式照明灯が市販化されて注目を集めている。
【0003】
発光ダイオード式照明の最大の利点は、同一の光量における発光ダイオード素子の消費電力が白熱灯に比べて低いことである。また、発光ダイオード式照明は、いくつかの優れた点を有する。例えば、点灯と同時に最大光量を得ることができる。また、万一複数の発光ダイオード素子のいくつかが破損したとしても、発光ダイオード式照明灯は継続して使用することができ、維持管理の負担が大幅に軽減される。
【0004】
ところで、蛍光灯は、陰極に電流を流して加熱し放電を発生させ、交流の電流を供給してアーク放電を維持させながら放電にともなって発生する紫外線を蛍光体に当てて可視光線を得ている。そのため、白熱灯と異なって、直接電圧を印加しただけで蛍光灯を点灯させることができず、蛍光灯には始動器(スタータ)と安定器が設けられている。始動器がフィラメントを予熱して高電圧(キック電圧)を発生させ、安定器が放電が発生した後のアーク放電中の定電流を維持する。
【0005】
安定器として、一般家庭に普及しているグロー式安定器、インバータを含む電子式安定器、主に施設に普及しているラピッド式安定器がよく知られている。同一の方式の安定器であっても、チョークコイル形、磁気漏れ変圧器形、フリッカレス形、リードピーク形(ピーク進相形)、ハイブリッド形、共振形のような種々の形式がある。したがって、蛍光灯の安定器は、大小様々で何十種類にも及ぶ。
【0006】
一方、発光ダイオード式照明装置は、直列または並列に接続される半導体素子である複数の発光ダイオード素子に直流電流を供給し電力を光エネルギに変換して光を得ている。そのため、発光ダイオード式照明装置には直流電源として商用交流から直流電流を得る整流器が設けられている。また、発光ダイオード素子の光量を一定にして明るさを安定させるために発光ダイオード素子に定電流を供給する定電流回路が要求される。
【0007】
発光ダイオード式照明装置の直流電源装置の定電流回路として、整流器から出力される直流電圧を平滑コンデンサによって平滑化して定電流を供給するコンデンサ式定電流回路がよく知られている。コンデンサ式定電流回路は、定電流回路の構成が比較的簡単でありながら理想の直流電圧に近い電圧波形を得ることができる。
【0008】
しかしながら、コンデンサ式定電流回路では、要求される電流容量が大きいことから基本的に耐久性が低い電解コンデンサを平滑コンデンサとして適用せざるを得ない。電解コンデンサが壊れやすいために発光ダイオード式照明装置の耐用年数を短くしてしまい信頼性を損なわせる原因になっている。また、電解コンデンサの破損による事故のおそれがあるので、特別な安全対策が必要である。
【0009】
ダイオードなどによる半導体式定電流回路は、コンデンサ式定電流回路に比べて安全性が高いが、発光ダイオード素子を安定して点灯させるにはリップルを十分に取り除くことができない。そのため、発光ダイオード式照明装置の直流電源装置の定電流回路として、チョッパ式定電流回路が主流になりつつある。チョッパ式定電流回路は、高周波でオンオフする高速スイッチング素子を使用することによってリップルを可能な限り小さく抑えて、少なくとも人が感知し得る範囲でちらつきをなくすことに成功している。
【0010】
このように、発光ダイオード式照明装置は、商用交流を入力して発光ダイオードに直流電流を供給する固有の直流電源装置を備えているため、始動器を含む安定器を有する蛍光灯設備の蛍光管だけを外して直管型発光ダイオード式照明灯を付け替えるようにすることは簡単なことではない。特定の形式の安定器を有する蛍光灯設備に限定的に蛍光管だけを直管型発光ダイオード照明灯に換装するようにすることは比較的容易であるかも知れない。しかしながら、安定器の種類が多いため、適用できる範囲は極めて限られる。
【0011】
既存の蛍光灯設備に代えて直管型発光ダイオード式照明装置を新しく設置するためには取付工事が必要である。そのため、直管型発光ダイオード照明装置の設備には、取付工事に要する時間と初期費用の負担がある。しかも、直流電源装置には本質的に方式が異なる複数の種類が存在するので、一度直管型発光ダイオード式照明装置の取付工事をすると、蛍光灯設備に戻すことも、別の種類の直流電源装置を備えた直管型発光ダイオード式照明装置に変更することも容易ではない。
【0012】
もともと電球型発光ダイオード式照明灯に比べて相当多くの発光ダイオード素子が必要である直管型発光ダイオード式照明灯は、既存の蛍光管との価格差が大きい。そのため、省エネルギであることから将来が期待されているにも関わらず、直管型発光ダイオード式照明装置の導入が躊躇されてしまい、普及が遅れているのが実情である。
【0013】
例えば、特許文献1は、取付方向に関わらず既存の蛍光灯設備の安定器を通して発光ダイオード素子に直流電流を供給できる直流電源装置を内蔵した直管型発光ダイオード式照明灯のアイデアを提案している。特許文献1の発明によると、取付工事が不要であり、詳しい電気的知識がなくても既存の蛍光灯設備に直管型発光ダイオード式照明灯を取り付けることができる。そのため、直管型発光ダイオード式照明装置の導入時の負担を軽減できる。また、直管型発光ダイオード式照明装置の構造を簡単にして製造をより容易にすることができ、コストが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−192833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、チョッパ式定電流回路を有する直流電源装置を内臓した直管型発光ダイオード式照明灯を既存の蛍光灯設備に取り付けると、点灯直後に供給される直流電源が不安定であるため、チョッパ式定電流回路が正しく動作しなくなり、故障の原因になる。特に、既存の蛍光灯設備に2本の直管型発光ダイオード式照明灯を直列に装着した場合に、2本の直管型発光ダイオード式照明灯の直流電源装置が競合して均等な明るさを得ることができなくなる。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みて、安定器から電力を入力して発光ダイオード素子に直流電流を供給できる直流電源装置を内蔵した発光ダイオード式照明灯であって、より安定して点灯できる改良された直管型発光ダイオード式照明灯を提供することを主たる目的とする。本発明の直管型発光ダイオード式照明灯によって達成されるいくつかの有利な点は、具体的な実施の形態の説明において詳細に記述される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の直管型発光ダイオード式照明灯は、上記課題を解決するために、直流電源装置(2)を内蔵した直管型発光ダイオード式照明灯(1)において、直流電源装置(2)が、整流器(5)と発光ダイオード素子(3)との間に直列に設けられるスイッチング素子(TR)を有し発光ダイオード素子(3)に供給する電流が所定の電流値を超えないようにスイッチング素子(TR)を導通させるとともに電流が所定の電流値を超えたときに予め定められた一定時間スイッチング素子(TR)を非導通にすることを繰り返すようにスイッチング素子(TR)を導通制御するチョッパ式定電流回路(6)を含んでなるようにする。
【0018】
具体的に、上記一定時間は、発光ダイオード素子(3)の光量が安定する程度十分にスイッチング素子(TR)が導通する反応を遅らせることができる時間よりも長い時間で発光ダイオード素子(3)に供給される直流電流のリップルが発光ダイオード素子(3)の明るさの変動を発生させない時間よりも短い時間に設定される。
【0019】
また、直流電源装置(2)は、チョッパ式定電流回路(6)よりも整流器(5)側に整流器(5)に直列かつ発光ダイオード素子(3)に並列に接続され整流器(5)に電流を直接還流するバイパス電路(7)と、バイパス電路(7)に設けられ整流器(5)に還流する電流を整流器(5)が破損しない小さい電流に制限する電流制限抵抗(RA)と、を含んでなるようにされる。
【0020】
また、整流器(5)は、一対のプラグの一対の入出力端子(TM)の一方の端子と一対の空端子(TS)の一方の端子とに接続する第1整流器(5A)と一対の入出力端子(TM)の他方の端子と一対の空端子(TS)の他方の端子とに接続する第2整流器(5B)と、を含んでなるようにされる。
【0021】
上記符号は、説明の便宜上付されたものである。上記符号は、本発明を具体的に図面に示されている直管型発光ダイオード式照明灯と同一の構成に限定するものではない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の直管型発光ダイオード式照明灯は、電流が所定値を超えたときに十分に長い一定時間スイッチング素子を非導通にするので、スイッチング素子のスイッチング動作が安定し、チョッパ式定電流回路が起動時から正しく作動する。そのため、直流電源装置の故障が発生しにくくなる。また、光量を安定させることができる。とりわけ、2本の直管型発光ダイオード式照明灯を直列に装着した場合に、各直流電源装置が協調するので、各直管型発光ダイオード式照明灯の発光ダイオード素子にそれぞれ安定して所要の電流が供給される。そのため、各直管型発光ダイオード式照明灯の間で光量のばらつきが発生しない。
【0023】
大きい抵抗値の電流制限抵抗を含む整流器に電流を直接還流するバイパス電路を設けた場合は、点灯直後から定電流で安定するまでの不安定な直流電流をバイパス電路に流入させて発光ダイオード素子に振動的な電流が供給されないようにすることができる。また、整流器が第1整流器と第2整流器を有する場合は、取付方向に関係なく、直管型発光ダイオード式照明灯を安定して点灯させることができる。とりわけ、2本の直管型発光ダイオード式照明灯を直列に装着した場合に、各直管型発光ダイオード式照明灯にそれぞれ安定した所要の電流が供給され、各直管型発光ダイオード式照明灯の間で光量のばらつきが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の直管型発光ダイオード式照明灯の基本的な構成を示す電気回路ブロック図である。
【図2】グロー式蛍光灯の蛍光管を直管型発光ダイオード式照明灯に換装したときの基本の構成を示す電気回路ブロック図である。
【図3】2灯型ラピッド式蛍光灯の蛍光管を直管型発光ダイオード式照明灯に換装したときの基本の構成を示す電気回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、直管型発光ダイオード式照明灯の直流電源装置の構成を模式的に示す。図1では、本発明の技術思想に直接関係しない部品素子と電路が省略されている。図1は、本発明の一例を示すので、本発明を実施するための実際の直流電源装置を図1に示される直流電源装置の構成と全く同一にすることが要求されず、必要に応じて設計変更をすることが許容される。
【0026】
直管型発光ダイオード式照明灯1は、直流電源装置2と、複数の発光ダイオード素子3と、一対のプラグ4とを含んでなる。直流電源装置2は、直管型発光ダイオード式照明灯1に内臓されている。直流電源装置2は、整流器5と、電子式定電流回路であるチョッパ式定電流回路6と、バイパス電路7とを含んでなる。直管型発光ダイオード式照明灯1は、直流電源装置2を内蔵するので、図2または図3に示されるように、安定器10を含む既存の蛍光灯設備の蛍光管と換装することができる。
【0027】
複数の発光ダイオード素子3は、整流器5を直流電源として直流電源に直列に接続される。複数の発光ダイオード素子3は、互いに直列に接続される。複数の発光ダイオード素子3は、整流器5の出力する直流電流に相応する光量で発光する。したがって、整流器5から出力される直流電流が同じとき、直列に接続されている発光ダイオード素子3の数によって各発光ダイオード素子3にかかる負荷と光量が決まる。なお、複数のダイオード素子3の直列回路を複数並列に設けることができる。
【0028】
直管型発光ダイオード式照明灯1の外形は、取り付ける蛍光灯設備の蛍光管の全長と最大の外径が同じである。直管型発光ダイオード式照明灯1の両端に規格サイズの蛍光灯の口金と同一規格の2つの端子ピンを有する一対のプラグ4が設けられている。例えば、図1に示される直管型発光ダイオード式照明灯1には、蛍光灯の口金の規格G13と同一規格の4つの端子ピンが設けられている。
【0029】
したがって、直管型発光ダイオード式照明灯1は、既存の規格サイズの蛍光管と互換性を有する。もちろん、蛍光管を直管型発光ダイオード式照明灯1に換装する障害がない範囲で直管型発光ダイオード式照明灯1の外形が蛍光管と全く同一であることは要求されない。
【0030】
一対のプラグ4の一端側のプラグ4Aの入出力端子TMと他端側のプラグ4Bの入出力端子TMとが対になっている。また、プラグ4Aとプラグ4Bの空端子TSが対になっている。蛍光管を直管型発光ダイオード式照明灯1に換装した場合、一対の入出力端子TMは、安定器10から交流電流を入出力する両端子を形成する。また、一対の空端子TSは、予熱回路20に接続する端子を形成する。本発明において空端子とは、文字通りに全く回路に接続しないことを意味するものではなく、発光ダイオード素子に電力を供給する回路に接続しない端子を意味し、閉じられている予熱回路20に接続する端子も空端子という。
【0031】
整流器5は、ダイオードブリッジ回路で単相全波整流を行なうシリコン整流器である。整流器5は、交流電流を入力して整流し、直流電流を出力する直流電源である。整流器5は、一対のプラグ4の一対の入出力端子TMの一方の端子と一対の空端子TSの一方の端子とに接続する第1整流器5Aと、一対の入出力端子TMの他方の端子と一対の空端子TSの他方の端子とに接続する第2整流器5Bと、を含んでなる。
【0032】
具体的に、整流器5Aは、図1に示されるように、一対のプラグ4の一端側のプラグ4Aの入出力端子TMと他端側のプラグ4Bの空端子TSとを接続端子とする。また、整流器5Bは、他端側のプラグ4Aの空端子TSと他端側のプラグ4Bの主入出力端子TMとを接続端子とする。
【0033】
したがって、両端のソケットに直管型発光ダイオード式照明灯1の一対のプラグ4が結合されると、一対の入出力端子TMから直流電源装置2の整流器5の入力端子に正しく接続して電力が供給され、取付方向に関係なく直管型発光ダイオード照明灯1を安定して点灯できるとともに内蔵する直流電源装置2が損傷を受けないようにすることができる。
【0034】
例えば、図2に示されるグロー式蛍光灯設備に直管型発光ダイオード式照明灯1を装着した場合、第1整流器5Aの一端子と第2整流器5Bの一端子とで1組の入力端子を形成し、安定器10から供給される交流電流が入力される。ただし、グロー式蛍光灯設備の場合は、予熱回路10に常に電流が流れないようにするためにグローランプGLを予め取り外して予熱回路20そのものを開いておくことが望ましい。
【0035】
チョッパ式定電流回路6は、複数の発光ダイオード素子3に定電流を供給する。チョッパ式定電流回路6は、整流器5と発光ダイオード素子3との間に設けられる。チョッパ式定電流回路6は、バイパス電路7よりも発光ダイオード素子3側に設けられる。チョッパ式定電流回路6は、コンデンサ式定電流回路に比べて耐久性に優れているので、直管型発光ダイオード式照明灯1を長寿命にする。チョッパ式定電流回路6では、人が感知できる範囲で明るさの変動はない。
【0036】
チョッパ式定電流回路6は、整流器5と発光ダイオード素子3との間に直列に設けられるスイッチング素子TRを有する。新規なチョッパ式定電流回路6は、発光ダイオード素子3に供給する電流が所定の電流値を超えないようにスイッチング素子TRを導通させるとともに電流が所定の電流値を超えたときに予め定められた一定時間スイッチング素子TRを非導通にすることを繰り返すようにスイッチング素子TRを導通制御する。
【0037】
チョッパ式定電流回路6は、発光ダイオード素子3に供給される電流に相当する検出電流が要求される光量に対応して予め設定されている所定の電流値を超えるとスイッチング素子TRを所定の一定時間非導通にする。したがって、スイッチング素子TRのオン時間は検出電流に依存し、オフ時間は一定である。
【0038】
実施の形態の直管型発光ダイオード式照明灯1の新規なチョッパ式定電流回路6は、起動時に安定器10から振動的な突入電流が直流電源装置2に供給されてくるとき、電流が所定の電流値を超えると、十分に長い一定時間スイッチング素子TRを非導通にする。そのため、スイッチング素子TRがバタつくように煩雑にスイッチング動作をすることがなく、スイッチング動作が安定する。そのため、チョッパ式定電流回路6が起動時から正しく作動して、直流電源装置2の故障が発生しにくくなる。また、光量を安定させることができる。
【0039】
実施の形態のチョッパ式定電流回路6は、とりわけ2灯型ラピッド式蛍光灯設備において蛍光管を直管型発光ダイオード式照明灯1に取り替える場合に大変有益である。図3に示されるように、2灯型ラピッド式蛍光灯設備で直管型発光ダイオード式照明灯1に換装した場合、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1が“直列”に接続される。したがって、安定器10を通して2本の直管型発光ダイオード式照明灯1に交流電流が供給されてくるとき、交流電流は最初に何れか一方の直管型発光ダイオード式照明灯1に入力されてから他方の直管型発光ダイオード式照明灯1に入力される。
【0040】
そのため、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の各チョッパ式定電流回路6の間でスイッチング素子TRのオンオフのタイミングにずれが発生する。このとき、スイッチング素子TRのオンオフ繰返し周波数が高いと、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1どうしで入力されてくる交流電流を巡って競合する。その結果、何れか一方の直管型発光ダイオード式照明灯1が勝って2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の光量が異なってしまい、不安定な明るさの不釣合いが発生する。
【0041】
チョッパ式定電流回路6は、スイッチング素子TRを予め定められた一定時間非導通にするので、スイッチング素子TRが供給される直流電流に対して反応の速度が低下して煩雑にスイッチング動作しない。言い換えると、スイッチング素子TRが検出電流に対して導通する“感度”が低くなる。そのため、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の各直流電源装置2においてそれぞれ直流電流を流す反応が遅くなる。その結果、2本直列の直管型発光ダイオード式照明灯1に交流電流を供給しても各直流電源装置2が競合しないため、直流電流の大きさに差が発生せず、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1が同じ光量で点灯する。
【0042】
スイッチング素子TRを非導通にする一定時間(以下、オフ時間という)の下限(最短)は、発光ダイオード素子3の光量が安定する程度十分にスイッチング素子TRが導通する反応を遅らせることができる時間よりも長い時間である。特に、直列に接続される各直流電源装置2を内蔵した同型の2本の直管型発光ダイオード式照明灯1がそれぞれ入力する交流電流を競合しない程度十分にスイッチング素子TRが導通する反応を遅らせることができる時間である。
【0043】
一方、オフ時間の上限(最長)は、発光ダイオード素子3に供給される直流電流のリップルが一般に人が感知できる範囲での発光ダイオード素子3の明るさの変動を発生させない時間よりも短い時間である。例えば、実施の形態のチョッパ式定電流回路6では、スイッチング素子TRのオンオフの繰返し周波数が200kHzのときでオフ時間は数μs程度に設定される。
【0044】
チョッパ式定電流回路6は、具体的に、高速スイッチング素子TRと検出抵抗RSとの直列回路6Aと、ゲート回路を含む高周波パルス発生装置6Bとを有する。直列回路6Aは、整流器5と発光ダイオード素子3との間に直列に設けられる。特に、直列回路6Aは、バイパス電路7よりも複数の発光ダイオード素子3側に設けられる。直列回路6Aは、複数直列または互いに並列に設けることができる。
【0045】
高周波パルス発生装置6Bは、100kHz以上の高周波パルスを発生する。高周波パルス発生装置6Bは、スイッチング素子TRを導通するオン信号と非導通するオフ信号とでなるゲート信号をスイッチング素子TRに出力する。高周波パルス発生装置6Bは、検出電流が所定の電流値を超えない間はスイッチング素子TRにオン信号を出力する。高周波パルス発生装置6Aは、制御装置を含んでなる。高周波パルス発生装置6Bには、少なくとも所要の光量に対応する所定の電流値とスイッチング素子TRのオンオフ周波数およびオフ時間とが予め設定されている。
【0046】
バイパス電路7は、整流器5に直列に接続され、発光ダイオード素子3に並列に接続される。また、バイパス電路7は、チョッパ式定電流回路6の直列回路6Aよりも整流器5側に設けられている。したがって、バイパス電路7は、起動時に整流器5のプラス極から供給される振動的な突入電流を流入させて整流器5のマイナス極に直接還流する。
【0047】
点灯直後に整流器5から直流電流が供給されるとき、立上がりから必要な電流値に到達して電流値が安定するまでの間の許容値を超える直流電流は、発光ダイオード素子3とチョッパ式定電流回路6に供給されずに整流器5に戻される。そのため、起動時の振動的な電流でスイッチング素子TRが不安定なスイッチング動作をしない。
【0048】
バイパス電路7にバイパス電路7を切り離す接点スイッチSWが設けられている場合は、バイパス電路7が必要ではない照明設備に直管型発光ダイオード式照明灯1を取り付けるときに、選択的にバイパス電路7を整流器5から物理的に切り離しておくようにすることができる。例えば、直管型発光ダイオード式照明灯1を安定器を通さずに直接商用交流電源に接続する場合は、スイッチSWを開放してバイパス電路7を切り離すことができる。
【0049】
整流器5から供給される直流電流は、インダクタンス素子LAを通って十分に立ち上がって安定した状態になってから発光ダイオード素子3とチョッパ式定電流回路6に実質的に供給されてくる。その結果、スイッチング素子TRの動作が安定し、チョッパ式定電流回路6が起動時から正しく作動することによって点灯直後から光量が安定する。特に、2灯型ラピッド式蛍光灯設備において蛍光管を直流電源装置2を内蔵した直管型発光ダイオード式照明灯1に取り替える場合に、点灯直後から2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の光量にばらつきが発生せず、明るさに不釣合いが生じない。
【0050】
新規な直管型発光ダイオード式照明灯1の直流電源装置2には、バイパス電路7に直列にバイパス電路7に流入する電流を制限する電流制限抵抗RAが設けられている。電流制限抵抗RAの抵抗値は、例えば、整流器5の出力電圧が50V〜150Vでチョッパ式定電流回路6の設定電流(所定の電流値)が数百mAのときで1MΩ程度である。電流制限抵抗RAは、整流器5に還流する電流を整流器5が破損しない小さい電流に制限する。電流制限抵抗RAが避けることができない起動時の高電圧と突入電流を受け止めるので、直流電流を整流器5に直接還流させるときに整流器5の損傷を防止する。
【0051】
発光ダイオード素子3に供給される直流電流は、インダクタンス素子LAを通るので緩やかに立ち上がる。抵抗値が大きい電流制限抵抗RAは、電流が立ち上がって安定している間は、バイパス電路7に流入する電流を小さく制限し、発光ダイオード素子3に供給されるべき許容値を超えない安定した直流電流がバイパス電路7に流入するのを阻止する。そのため、電流の損失が小さく、光量が安定する。特に、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1に電流が均等に分配されるときでも電流の損失が小さく、十分な光量を得ることができる。
【0052】
以下に、本発明の直管型発光ダイオード式照明灯の動作を図3に示される2灯型ラピッド式蛍光灯設備に図1に示される実施の形態の直管型発光ダイオード式照明灯1を2本装着した場合で説明する。
【0053】
2灯型ラピッド式蛍光灯の電源スイッチをオンすると商用交流が安定器10に供給される。安定器10は、本来蛍光管に設けられているフィラメントを予熱するための電流を始動器から供給する。安定器10から供給される交流電圧は、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の1本に印加され、その後に残りの1本に印加される。
【0054】
初めに交流電圧が供給される1本の直管型発光ダイオード式照明灯1では、交流電圧が印加される方向に対応する整流器5のうちの一方の整流器5Aまたは整流器5Bから直流電流を供給し始める。次いで残りの1本の直管型発光ダイオード式照明灯1の整流器5の対応する整流器5Aまたは整流器5Bから直流電流が供給される。
【0055】
したがって、各直管型発光ダイオード式照明灯1の直流電源装置2において、それぞれ所定の電流値に達するまでに直列に接続されている各直管型発光ダイオード式照明灯1の整流器5に交互に交流電圧が供給されるので、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1が競合するようになる。
【0056】
ここで、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1は、それぞれバイパス電路7を有しているので、直流電流が所定の電流値に十分に達して安定するまで起動時の振動的な突入電流を整流器5に直接還流する。そのため、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1において、共に発光ダイオード素子3に供給される直流電流が必要な所定の電流値に到達して安定した状態になる。その結果、各直管型発光ダイオード式照明灯1の発光ダイオード素子3が予定された所要の光量で発光するために要求される電力を得ることができる。
【0057】
所定の電流値の直流電流を得ている発光ダイオード素子3が所要の明るさで点灯している間は、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の各チョッパ式定電流回路6では、それぞれ高周波パルス発生装置6Bが直列回路6Aの検出抵抗RSの両端の電圧と所定の電流値に相応する基準電圧との差電圧に応答してスイッチング素子TRを導通制御し、発光ダイオード素子3に供給する電流が所定の電流値を超えないようにする。その結果、発光ダイオード素子3に一定の電流が供給され、光量が安定する。
【0058】
点灯中常時、チョッパ式定電流回路6は、発光ダイオード素子3に供給する電流が所定の電流値を超えたときスイッチング素子TRを非導通にする。そして、チョッパ式定電流回路6は、予め定められた必要十分な長さの一定のオフ時間スイッチング素子TRを非導通にした後で再びスイッチング素子TRを導通する。
【0059】
スイッチング素子TRが非導通の間は直流電源装置2が安定器から供給される交流電流を要求しないとみなすと、あたかもスイッチング素子TRが検出電流に対して導通する反応を鈍くするようにスイッチング素子TRを導通制御することによって、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の各チョッパ式定電流回路6の高周波パルス発生装置6Bが同期制御されていないにも関わらず、2本の直管型発光ダイオード式照明灯1の間で交流電流を奪い合うような競合が発生しない。その結果、点灯中に2本の発光ダイオード式照明灯1の光量に差が生じることがない。
【0060】
実施の形態の直管型発光ダイオード式照明灯1は、直流電源装置2を内臓しているので、取付工事なしに既存の安定器10を含む蛍光灯設備に装着することができる。そのため、直管型発光ダイオード式照明装置の導入時の作業負担と経済的負担が軽減される。また、直流電源装置2は、チョッパ式定電流回路6を含んでなるので、明るさが安定しているとともに信頼性が高い。そして、グロー式蛍光灯設備、1灯型ラピッド式蛍光灯設備、2灯型ラピッド式蛍光灯設備に装着することができるので、取付作業に高度な電気的知識が要求されず、作業負担が軽減される。
【0061】
実施の形態の直管型発光ダイオード式照明灯1は、バイパス電路7を開閉するスイッチSWを有する。スイッチSWは、例えば、直管型発光ダイオード式照明灯1を安定器を通さずに商用交流に直結させて取り付けて点灯させることを可能にする。
【0062】
本発明の直管型発光ダイオード式照明灯では、実施に当たって実施の形態と全く同一にすることが要求されない。直管型発光ダイオード式照明灯は、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で本発明の作用効果を得ることができる限りにおいて任意に構成を変更することが可能である。例えば、発光ダイオード素子3と整流器5の間に設けられているコイルを異なる位置に配置することができる。
【0063】
また、本発明の技術思想を利用して環状型のような直管型以外の発光ダイオード式照明灯に本発明の直管型発光ダイオード式照明灯と共通するパーツを適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、照明器具の技術分野で広く利用できる。本発明は、蛍光灯を直管型発光ダイオード式照明灯に換装するだけで直管型発光ダイオード式照明灯に変更できるので、省エネルギが期待される直管型発光ダイオード式照明灯への転換を促進する。
【符号の説明】
【0065】
1 直管型発光ダイオード式照明灯
2 直流電源装置
3 発光ダイオード素子
4 プラグ
5 整流器
6 チョッパ式定電流回路
6A 直列回路
6B 高周波パルス発生装置
7 バイパス電路
10 安定器
20 予熱回路
RA 電流制限抵抗
RS 電流制限抵抗
TR スイッチング素子
LA インダクタンス素子
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源装置を内蔵した直管型発光ダイオード式照明灯において、前記直流電源装置が、整流器と発光ダイオード素子との間に直列に設けられるスイッチング素子を有し前記発光ダイオード素子に供給する電流が所定の電流値を超えないように前記スイッチング素子を導通させるとともに前記電流が前記所定の電流値を超えたときに予め定められた一定時間前記スイッチング素子を非導通にすることを繰り返すように前記スイッチング素子を導通制御するチョッパ式定電流回路を含んでなる直管型発光ダイオード式照明灯。
【請求項2】
前記一定時間が前記発光ダイオード素子の光量が安定する程度十分に前記スイッチング素子が導通する反応を遅らせることができる時間よりも長い時間で前記発光ダイオード素子に供給される直流電流のリップルが前記発光ダイオード素子の明るさの変動を発生させない時間よりも短い時間に設定されることを特徴とする請求項1に記載の直管型発光ダイオード式照明灯。
【請求項3】
前記直流電源装置が、前記チョッパ式定電流回路よりも整流器側に前記整流器に直列かつ前記発光ダイオード素子に並列に接続され前記整流器に電流を直接還流するバイパス電路と、前記バイパス電路に設けられ前記整流器に還流する電流を前記整流器が破損しない小さい電流に制限する電流制限抵抗と、を含んでなる請求項1に記載の直管型発光ダイオード式照明灯。
【請求項4】
前記整流器が、一対のプラグの一対の入出力端子の一方の端子と一対の空端子の一方の端子とに接続する第1整流器と前記一対の入出力端子の他方の端子と一対の空端子の他方の端子とに接続する第2整流器と、を含んでなる前記請求項1に記載の直管型発光ダイオード式照明灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−212650(P2012−212650A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234784(P2011−234784)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【特許番号】特許第5051862号(P5051862)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】