説明

直線接続クロージャ

【課題】スパイラルハンガー内に収納でき、簡単な構造でありかつ光ドロップケーブルの張替工事の作業性の向上を図ることができる直線接続クロージャを提供する。
【解決手段】直線接続クロージャ10は、メカニカルスプライス40を保持するための本体11と、第1および第2の光ドロップケーブル11,12の第1および第2の支持線31,32をそれぞれ支持して第1および第2の光ドロップケーブル11,12をそれぞれ固定するための第1および第2のアイボルト121,122とを具備する。本体11には、本体11の一端面側と他端面側とで互いに逆ネジの関係になるようにネジ溝が形成されたボルト穴11cが形成されている。また、第1のアイボルト121の第1のネジ部12a1と第2のアイボルト122の第2のネジ部12a2とには、互いに逆ネジの関係となるネジ溝がそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線接続クロージャに関し、特に、光ドロップケーブルのメンテナンスに用いるのに好適な直線接続クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
加入者宅(家庭)に引き込まれている光ドロップケーブルのメンテナンスにおいて、何らかの原因により光ドロップケーブルの不良が発生したり光ドロップケーブルの支障移転が必要になったりする場合がある。このような場合の対策として、光ドロップケーブルの不良部分や支障となる部分を新しい光ドロップケーブルに張り替えて、張り替えた光ドロップケーブルを残存の光ドロップケーブルと直線接続クロージャを用いて直線接続することが行われている。
【0003】
たとえば、図11に示すように、加入者宅Hに引き込んでいる光ドロップケーブル1を架空光ファイバケーブル(FTTHケーブル)から引き出すための引出クロージャ90が設置された第1の電柱P1と第1の電柱P1の隣りの第2の電柱P2との間の断線箇所(図11に×印で示す。)で光ドロップケーブル1が断線した場合には、一般に市販されている直線接続クロージャ91を用いて光ドロップケーブル1の張替工事をしているが、直線接続クロージャ91の寸法が大きい(たとえば、直径27mmおよび長さ350mm)ために直線接続クロージャ91をスパイラルハンガー92内に収納することができないので、加入者宅Hの最寄りの第3の電柱P3と加入者宅Hとの間の区間Aで光ドロップケーブル1を新しい光ドロップケーブル1に張り替えている。
【0004】
なお、小型化および軽量化を図った直線接続クロージャとしては、以下に示すものがある。
(1)下記の特許文献1には、光ファイバを本体部の外周面上の螺旋状の溝部に巻回し、この光ファイバの端部を本体部の端部側から解きほぐして取り出し、ドロップ光ファイバケーブルの光ファイバをふた部の孔に貫通させ、この貫通したドロップ光ファイバケーブルの光ファイバの端部を解きほぐして取り出した光ファイバの端部に融着接続またはメカニカルスプライス接続により接続し、解きほぐした光ファイバの余った部分を本体部の空洞部内に押し込めながら接続部を本体部の空洞部内に収納し、ふた部を本体部に固定的に取り付けることにより、ドロップ光ファイバケーブルがどこで断線したとしても簡単かつ適格に接続することができるようにした光ファイバケーブル接続補助器が開示されている。
(2)下記の特許文献2には、光ファイバ心線部分と支持線とを一体化した光ドロップケーブルの直線接続部構造であって、接続部材に取り付けた2本のボルトに両側の支持線の端部をそれぞれ巻き付け締付けることで接続部材に固定し、各支持線にスパイラルチューブを被せ、両側の光ファイバ同士を接続したメカニカルスプライスを接続部材の回りを回して各光ファイバをスパイラルチューブの外周に螺旋状に巻き付け、その状態でメカニカルスプライスを接続部材のメカニカルスプライス取付部に取り付け、これら全体を保護スリーブ内に収容し、両端に端面キャップを被せることにより、余長処理機能を持たせかつ支持線を樹脂被覆を被った状態のまま固定しても十分な張力が得られるようにした光ドロップケーブルの直線接続部構造が開示されている。
(3)下記の特許文献3には、双方の光ドロップケーブルの端末からそれぞれ露出された支持線が接続された支持線接続部と、双方の光ドロップケーブルの端末からそれぞれ露出された光ファイバの端末同士が余長を持って接続された光ファイバ接続部と、接続された支持線上に取り付けられた円筒型余長収納ガイドとを有し、円筒型余長収納ガイドの外周に光ファイバの接続余長が光ファイバの許容最小曲げ径を確保した状態で巻付けられるようにすることにより、小型・軽量でありかつ設置場所の制約が少ない光ドロップケーブルの接続部が開示されている。
【特許文献1】特開2005−031521号公報
【特許文献2】特開2005−070564号公報
【特許文献3】特開2004−325998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に×印で示した断線箇所で光ドロップケーブル1が断線した場合に第3の電柱P3と加入者宅Hとの間の区間Aで光ドロップケーブル1を張り替えているので、光ドロップケーブル1の張替区間は引出クロージャ90と直線接続クロージャ91との間の区間Bとなり、健全区間(区間Bから区間Cを除いた区間)の光ドロップケーブル1までも張り替える必要が生じてしまい、張替工事費が高くなる一因となっている。
そこで、張替工事費を最小限に抑えるために、引出クロージャ90と断線箇所との間の区間Cでのみ光ドロップケーブル1を張り替えて、張り替えた光ドロップケーブル1と残存の光ドロップケーブル1とを断線箇所付近で接続できるようにすることが要請されている。
【0006】
なお、上記の特許文献1〜3に開示されている直線接続クロージャは、以下に示す理由により、直線接続クロージャの構造が複雑になったり、光ドロップケーブルの張替工事の作業手順が多くなったりするという問題がある。
(1)上記の特許文献1に開示されている光ファイバケーブル接続補助器では、光ファイバを本体部の外周面上の螺旋状の溝部に巻回したり、ドロップ光ファイバケーブルの光ファイバをふた部の孔に貫通させたり、ふた部を本体部に固定的に取り付けたりする必要がある。
(2)上記の特許文献2に開示されている光ドロップケーブルの直線接続部構造では、各支持線にスパイラルチューブを被せたり、両側の光ファイバ同士を接続したメカニカルスプライスを接続部材の回りを回して各光ファイバをスパイラルチューブの外周に螺旋状に巻き付けたりする必要がある。
(3)上記の特許文献3に開示されている光ドロップケーブルの接続部では、円筒型余長収納ガイドの外周に光ファイバの接続余長が光ファイバの許容最小曲げ径を確保した状態で巻付けられるようにする必要がある。
【0007】
本発明の目的は、スパイラルハンガー内に収納できる程度に小型化することができるとともに、簡単な構造でありかつ光ドロップケーブルの張替工事の作業性の向上を図ることができる直線接続クロージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の直線接続クロージャは、第1および第2の光ドロップケーブル(11,12)を直線接続するのに用いられる直線接続クロージャ(10)であって、前記第1および第2の光ドロップケーブルの第1および第2の心線(21,22)を接続する光ファイバ接続装置(40)を保持するための本体(11)と、前記第1および第2の光ドロップケーブルの第1および第2の支持線(31,32)をそれぞれ支持して前記第1および第2の光ドロップケーブルをそれぞれ固定するための第1および第2の光ドロップケーブル固定手段とを具備し、前記第1および第2の光ドロップケーブル固定手段が、前記本体を回転させることによって該第1の光ドロップケーブル固定手段の前記第1の支持線の支持部分と該第2の光ドロップケーブル固定手段の前記第2の支持線の支持部分との間隔(S)を調整することができるように該本体の両端にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする。
ここで、前記本体に、該本体の一端面側と他端面側とで互いに逆ネジの関係になるようにネジ溝が形成されたボルト穴(11c)が形成されており、前記第1および第2の光ドロップケーブル固定手段が第1および第2のアイボルト(121,122)であり、前記第1のアイボルトの第1のネジ部(12a1)と前記第2のアイボルトの第2のネジ頭部(12a2)とに、互いに逆ネジの関係となるネジ溝がそれぞれ形成されていてもよい。
前記本体が、四角柱状の形状を有し、前記光ファイバ接続装置を保持するための第1乃至第4の保持用凹部(11a1〜11a4)が、前記本体の長手方向に沿って該本体の上面、左側面、下面および右側面にそれぞれ形成されていてもよい。
前記第1および第2のアイボルトにそれぞれ螺合されて、該第1および第2のアイボルトの不用意な回転を防止するための第1および第2のロックナット(131,132)をさらに具備してもよい。
前記第1および第2の光ドロップケーブルをそれぞれ通して装着され、互いの対向する端部に形成されたネジ部同士を締め付けることによって該第1および第2の光ドロップケーブルを突出させた状態で前記本体と前記第1および第2のロックナットと前記第1および第2のアイボルトとを覆う第1および第2の保護カバー(141,142)をさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の直線接続クロージャは、以下に示す効果を奏する。
(1)直径12〜18mmおよび長さ120〜150mm程度の寸法にすることができるので、スパイラルハンガー内に収納できる程度に直線接続クロージャを小型化することができる。
(2)直線接続クロージャをスパイラルハンガー内に収納できるので、直線接続クロージャの取付け箇所の自由度が向上し、光ドロップケーブルのメンテナンス上も有利になる。
(3)直線接続クロージャの主要部分をたとえば本体と第1および第2のアイボルトと第1および第2のロックナットとで構成することができるので、簡単な構造にすることができる。
(4)光ドロップケーブルの支持線を支持して光ドロップケーブルを固定したのちに本体を回転させることによって光ドロップケーブルの張替えを行うことができるので、光ドロップケーブルの張替工事の作業性が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記の目的を、本体を回転させることによって第1のアイボルトの第1の頭部と第2のアイボルトの第2の頭部との間隔を調整することができるように第1および第2のアイボルトを本体の両端にそれぞれ取り付けることにより実現した。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の直線接続クロージャの実施例について図面を参照して説明する。
本発明の一実施例による直線接続クロージャ10は、図1に示すように、本体11と、第1および第2のアイボルト121,122と、第1および第2のロックナット131,132と、第1および第2の保護カバー141,142とを具備する。
【0012】
ここで、本体11は四角柱状の部材であり、図2(a),(b)に示すように、メカニカルスプライス40(図4(b)に示すように第1の光ドロップケーブル11の第1の心線21と第2の光ドロップケーブル12の第2の心線22とを光学的に接続する光ファイバ接続装置)を保持するための第1乃至第4の保持用凹部11a1〜11a4が、本体11の長手方向に沿って本体11の上面、左側面、下面および右側面にそれぞれ形成されている。
本体11の上面、左側面、下面および右側面の長手方向の中央部には、メカニカルスプライス40を本体11に固定するための結束バンド30(図8参照)を巻くための結束バンド用凹部11bが形成されている。
【0013】
本体11には、本体11の長手方向に沿って貫通するボルト穴11cが形成されている。ただし、ボルト穴11cは、本体11の一端面(表面)から他端面(裏面)まで連続したネジ溝が形成されているのではなく、たとえば本体11の一端面から長手方向中央部までは右ネジのネジ溝が形成されているとともに本体11の長手方向中央部から他端面までは左ネジのネジ溝が形成されているというように、本体11の一端面側と他端面側とで互いに逆ネジの関係になるようにネジ溝が形成されている。
第1のアイボルト121は、図3(a)に示すように、第1のネジ部12a1と、リング状の第1の頭部12b1とを備える。同様に、第2のアイボルト122は、図3(b)に示すように、第2のネジ部12a2と、リング状の第2の頭部12b2とを備える。第1のアイボルト121の第1のネジ部12a1と第2のアイボルト122の第2のネジ部12a2とには、互いに逆ネジの関係となるネジ溝がそれぞれ形成されている。
これにより、本体11の両端に第1および第2のアイボルト121,122をそれぞれ取り付けた状態で本体11をその長さ方向に沿った中心軸を回転軸として回転させると、本体11の回転方向に応じて第1および第2のアイボルト121,122は共に本体11から突出するか本体11に引き込まれる向きに移動するので、本体11の回転によって第1のアイボルト121の第1の頭部12b1と第2のアイボルト122の第2の頭部12b2との間隔(以下、「スパンS」と称する。)を調整することができる(図6参照)。
【0014】
第1および第2のロックナット131,132は、第1および第2のアイボルト121,122にそれぞれ螺合され、本体11と第1および第2のアイボルト121,122との間で引張力を作用させることによって第1および第2のアイボルト121,122の不用意な回転を防止する。第1および第2のロックナット131,132の内面には、第1および第2のアイボルト121,122にそれぞれ螺合するように、互いに逆ネジの関係となるネジ溝がそれぞれ形成されている。
【0015】
なお、第1および第2のアイボルト121,122は、第1および第2の光ドロップケーブル11,12の第1および第2の支持線31,32をそれぞれ支持して第1および第2の光ドロップケーブル11,12をそれぞれ固定するための第1および第2の光ドロップケーブル固定手段として機能する。
【0016】
第1および第2の保護カバー141,142は、第1および第2の光ドロップケーブル11,12接続後の直線接続クロージャ10を保護するためのものであり、第1および第2の光ドロップケーブル11,12をそれぞれ通して装着され、互いの対向する端部に形成されたネジ部同士を締め付けることによって第1および第2の光ドロップケーブル11,12を突出させた状態で本体11と第1および第2のロックナット131,132と第1および第2のアイボルト121,122とを覆う(図9参照)。第1および第2の保護カバー141,142は、たとえばプラスチック成形品などによって構成することができる。
【0017】
次に、直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続する作業手順について、図4乃至図9を参照して説明する。
作業員は、熱圧縮チューブ16を第1または第2の光ドロップケーブル11,12に予めそれぞれ通しておくとともに、第1および第2の光ドロップケーブル11,12に第1および第2の保護カバー141,142を予めそれぞれ通しておく。
なお、図11に示したように光ドロップケーブル1の張替作業を行う場合には、第1の光ドロップケーブル11は引出クロージャ90からの新しい光ドロップケーブルとなり、第2の光ドロップケーブル12は加入者宅H側の残存の光ドロップケーブル1となる。
【0018】
また、作業員は、第1および第2のロックナット131,132がそれぞれ螺合された第1および第2のアイボルト121,122を本体11のボルト穴11cに螺合させて、第1および第2のアイボルト121,122を本体11に予め取り付けておく。このとき、図4(a)に示すように、スパンS(第1のアイボルト121の第1の頭部12b1と第2のアイボルト122の第2の頭部12b2との間隔)が最小となるまで、第1および第2のアイボルト121,122を本体11のボルト穴11cに螺合させておく。
【0019】
直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続する際には、作業員は、まず、第1および第2の光ドロップケーブル11,12の被覆をカット処理して第1および第2の支持線31,32を所定の長さ(たとえば、150mm)だけそれぞれ分離する。
【0020】
続いて、作業員は、第1および第2の光ドロップケーブル11,12の被覆を所定の長さ(たとえば、85mm)剥いで、第1および第2の心線21,22を露出させる。
【0021】
続いて、作業員は、第1および第2の心線21,22の被覆を所定の長さ(たとえば、45mm程度)剥いで光ファイバの素線を露出させたのち、メカニカルスプライス40で接続する規定長さ(たとえば、12.5mm)に光ファイバの素線を切断する。
【0022】
続いて、作業員は、第1および第2の心線21,22をメカニカルスプライス40で接続する。
【0023】
続いて、作業員は、図4(b)に示すように、第1および第2の光ドロップケーブル11,12と分離した第1および第2の支持線31,32を第1および第2のアイボルト121,122の第1および第2の頭部12b1,12b2にそれぞれ通して折り返したのち、第1および第2の支持線31,32が不用意に開いて第1および第2のアイボルト121,122から外れないように第1および第2の支持線31,32を第1および第2の押さえスリーブ41,42でそれぞれ固定する。これにより、第1および第2の支持線31,32は第1および第2のアイボルト121,122の第1および第2の頭部12b1,12b2にそれぞれ支持される。
その後、作業員は、第1および第2の光ドロップケーブル11,12と第1および第2の支持線31,32とがばらけないように、第1および第2の光ドロップケーブル11,12と第1および第2の支持線31,32とに第1および第2のばらけ防止用ビニールテープ151,152をそれぞれ巻く。
【0024】
このようにして第1および第2の支持線31,32を第1および第2のアイボルト121,122の第1および第2の頭部12b1,12b2にそれぞれ支持したときにはスパンS(第1のアイボルト121の第1の頭部12b1と第2のアイボルト122の第2の頭部12b2との間隔)は最小とされているため(図4(a)参照)、第1および第2の心線21,22は最大限弛んだ状態となっている(図5(a)参照)。
そこで、第1および第2の心線21,22の弛みの調整(余長処理)をするために、作業員は、図6に矢印で示すように第1および第2のアイボルト121,122の第1および第2の頭部12b1,12b2が本体11から突出する方向に本体11を回転させる。これにより、スパンS(第1のアイボルト121の第1の頭部12b1と第2のアイボルト122の第2の頭部12b2との間隔)は次第に大きくなると同時に、第1および第2の心線21,22の緩み量が次第に小さくなる。
図5(b)に示すように第1および第2の心線21,22に張力がかからない程度まで第1および第2の心線21,22の弛みを調整すると、作業員は、第1および第2のロックナット131,132を本体11の両端面にそれぞれ締め付けて、本体11が不用意に回転しないようにする。
【0025】
続いて、作業員は、図7に示すように、本体11に形成された第1乃至第4の保持用凹部11a1〜11a4(図2参照)のうち最も挿入し易い位置にある保持用凹部にメカニカルスプライス40を挿入する。その後、作業員は、図8に示すように、本体11に形成された結束バンド用凹部11bに沿って結束バンド30を巻いて結束バンド30を留めることにより、メカニカルスプライス40を本体11に保持する。
【0026】
続いて、作業員は、第1および第2の保護カバー141,142を互いに接近させて本体11を覆う位置まで移動させたのち、第1および第2の保護カバー141,142のネジ部同士を締め付けて、図9に示すように本体11と第1および第2のロックナット131,132と第1および第2のアイボルト121,122とを覆う。
【0027】
続いて、作業員は、直線接続クロージャ10全体を熱収縮チューブ16で覆ったのち、防水処理を施すために、熱収縮チューブ16の両端部に第1および第2の防水用ビニールテープ171,172を、第1および第2の光ドロップケーブル11,12と、第1および第2の支持線31,32を分離した箇所までそれぞれ巻く。これにより、防水処理され、熱収縮チューブ16の両端部が第1および第2の光ドロップケーブル11,12にそれぞれ固定される。
【0028】
以上説明したように、直線接続クロージャ10は、本体11と第1および第2のアイボルト121,122と第1および第2のロックナット131,132と第1および第2の保護カバー141,142とで構成することができるため、非常にコンパクトにすることができる。
たとえば、図5(a)に示したような長さが約40mmのメカニカルスプライス50を保持するためには本体11の長さは50mm程度でよいので、本体11は、横断面形状が約10mm×約10mmで長さが50mm程度の四角柱状とすれば十分である。その結果、直線接続クロージャ10は、第1および第2の保護カバー141,142を装着した状態でも、直径が約12〜18mmで全長(長さ)L(図10参照)が約120mm〜150mm程度で両端部が小径とされた円筒状にすることができるので、スパイラルハンガー92(図11参照)内にも収納することができる。
これにより、光ドロップケーブルの接続位置の制約がなくなるので、たとえば図11に示した例では断線箇所で光ドロップケーブル1の張替作業を行うことができるようになる。また、直線接続クロージャ10は非常にコンパクトであるので、光ドロップケーブル1の接続箇所の見栄えも良くなる。
【0029】
以上の説明では、直線接続クロージャ10の本体11の形状を四角柱としたが、メカニカルスプライス40を保持できる形状であれば任意の形状とすることができる。なお、本体11は板状や柱状であることが好ましい。特に、本体11の形状を円柱や角柱(三角柱、四角柱、五角柱など)とすることにより、メカニカルスプライス40を保持するための保持用凹部(図2(b)に示した第1乃至第4の保持用凹部11a1〜11a4参照)を本体11の周方向において複数個所に形成することができるので、スパンSの調整の自由度を増すことができる。
【0030】
また、図2(a)に示したように本体11を貫通するようにボルト穴11cを形成したが、ボルト穴12は本体11を貫通している必要はなく、本体11の両端部にそれぞれ形成してもよい。この場合には、本体11の端面からのボルト穴の深さは、スパンSの調整可能な範囲に応じて適宜定めることができる。なお、本体11の両端に形成する2つのボルト穴は、本体11を回転することによりスパンSを調整することができるように、互いに逆ネジの関係になるように形成する。
【0031】
さらに、単心の光ドロップケーブルの張替工事について説明したが、本発明の直線接続クロージャは多心の光ドロップケーブルの張替工事においても用いることができる。
さらにまた、光ファイバ接続装置としてメカニカルスプライス40を用いて説明したが、融着接続によるものを光ファイバ接続装置として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例による直線接続クロージャ10の分解斜視図である。
【図2】図1に示した直線接続クロージャ10の本体11の構造を示す図であり、(a)は本体11の側面図であり、(b)は本体11の正面図である。
【図3】図1に示した第1および第2のアイボルト121,122の構造を説明するための図である。
【図4】図1に示した直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続する作業手順について説明するための図である。
【図5】図1に示した直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続するときの余長処理について説明するための図である。
【図6】図1に示した直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続する作業手順について説明するための図である。
【図7】図1に示した直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続する作業手順について説明するための図である。
【図8】図1に示した直線接続クロージャ10を用いて第1および第2の光ドロップケーブル11,12を直線接続する作業手順について説明するための図である。
【図9】図1に示した直線接続クロージャ10に第1および第2の保護カバー141,142を装着した状態を示す斜視図である。
【図10】図1に示した直線接続クロージャ10の寸法について説明するための図である。
【図11】従来の直線接続クロージャ91を用いて光ドロップケーブルの張替作業を行う方法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 光ドロップケーブル
1,12 第1および第2の光ドロップケーブル
1,22 第1および第2の心線
1,32 第1および第2の支持線
1,42 第1および第2の押さえスリーブ
10 直線接続クロージャ
11 本体
11a1〜11a4 第1乃至第4の保持用凹部
11b 結束バンド用凹部
11c ボルト穴
121,122 第1および第2のアイボルト
12a1,12a2 第1および第2のネジ部
12b1,12b2 第1および第2の頭部
131,132 第1および第2のロックナット
141,142 第1および第2の保護カバー
151,152 第1および第2のばらけ止め用ビニールテープ
16 熱収縮チューブ
171,172 第1および第2の防水用ビニールテープ
30 結束バンド
40 メカニカルスプライス
90 引出クロージャ
91 直線接続クロージャ
92 スパイラルハンガー
A,B,C 区間
H 加入者宅
1〜P3 第1乃至第3の電柱
S スパン
L 全長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の光ドロップケーブル(11,12)を直線接続するのに用いられる直線接続クロージャ(10)であって、
前記第1および第2の光ドロップケーブルの第1および第2の心線(21,22)を接続する光ファイバ接続装置(40)を保持するための本体(11)と、
前記第1および第2の光ドロップケーブルの第1および第2の支持線(31,32)をそれぞれ支持して前記第1および第2の光ドロップケーブルをそれぞれ固定するための第1および第2の光ドロップケーブル固定手段とを具備し、
前記第1および第2の光ドロップケーブル固定手段が、前記本体を回転させることによって該第1の光ドロップケーブル固定手段の前記第1の支持線の支持部分と該第2の光ドロップケーブル固定手段の前記第2の支持線の支持部分との間隔(S)を調整することができるように該本体の両端にそれぞれ取り付けられている、
ことを特徴とする、直線接続クロージャ。
【請求項2】
前記本体に、該本体の一端面側と他端面側とで互いに逆ネジの関係になるようにネジ溝が形成されたボルト穴(11c)が形成されており、
前記第1および第2の光ドロップケーブル固定手段が第1および第2のアイボルト(121,122)であり、
前記第1のアイボルトの第1のネジ部(12a1)と前記第2のアイボルトの第2のネジ部(12a2)とに、互いに逆ネジの関係となるネジ溝がそれぞれ形成されている、
ことを特徴とする、請求項1記載の直線接続クロージャ。
【請求項3】
前記本体が、四角柱状の形状を有し、
前記光ファイバ接続装置を保持するための第1乃至第4の保持用凹部(11a1〜11a4)が、前記本体の長手方向に沿って該本体の上面、左側面、下面および右側面にそれぞれ形成されている、
ことを特徴とする、請求項1または2記載の直線接続クロージャ。
【請求項4】
前記第1および第2のアイボルトにそれぞれ螺合されて、該第1および第2のアイボルトの不用意な回転を防止するための第1および第2のロックナット(131,132)をさらに具備することを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の直線接続クロージャ。
【請求項5】
前記第1および第2の光ドロップケーブルをそれぞれ通して装着され、互いの対向する端部に形成されたネジ部同士を締め付けることによって該第1および第2の光ドロップケーブルを突出させた状態で前記本体と前記第1および第2のロックナットと前記第1および第2のアイボルトとを覆う第1および第2の保護カバー(141,142)をさらに具備することを特徴とする、請求項4記載の直線接続クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−75199(P2009−75199A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242054(P2007−242054)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】