説明

直線接続クロージャ

【課題】構造が複雑でなく、かつ、断線した光ドロップケーブルの補修を効率良く行うことができる直線接続クロージャを提供する。
【解決手段】幹線の光ファイバケーブルから加入者宅に引き込まれている光ドロップケーブル1が断線した際の補修に用いられる直線接続クロージャ10であって、断線した光ドロップケーブル1の一方および他方の吊線1cを両端部でそれぞれ固定するための吊線固定棒11と、断線した光ドロップケーブルの一方および他方の心線1a、心線1aと接続されたジャンパ心線2、並びに、心線1aとジャンパ心線2との接続部(左側および右側スリーブ3L,3R)を収納するためのホルダー12と、吊線固定棒11およびホルダー12を格納するための開閉可能なカバー13とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線接続クロージャに関し、特に、断線した光ドロップケーブル(引込ケーブル)を補修するのに好適な直線接続クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱(支持物)間に敷設された幹線の光ファイバケーブルから加入者宅へ引き込まれている光ドロップケーブル1が図8に示す断線箇所において断線し、かつ、断線した光ドロップケーブル1同士を融着接続するのに光ドロップケーブル1の長さが足りない場合には、以下に示す2つの方法のいずれかにより補修作業を行っている。
【0003】
(1)断線箇所からメディアコンバータ(M/C)までの張替え
図9(a)に示すように、断線箇所から加入者宅までの光ドロップケーブル1を新たな光ドロップケーブル1’に張り替えるとともに、加入者宅内に設置されたメディアコンバータ(M/C)5を新たなメディアコンバータ5’に取り替えている。
このとき、直線接続クロージャ100を用いて新たな光ドロップケーブル1’を元の光ドロップケーブル1と接続している。
【0004】
(2)断線箇所から成端箱までの張替え
図9(b)に示すように、断線箇所から加入者宅までの光ドロップケーブル1を新たな光ドロップケーブル1’に張り替えるとともに、加入者宅の壁面に成端箱110を新たに取り付けて、新たな光ドロップケーブル1’とメディアコンバータ5とを成端箱110を介して接続している。
【0005】
なお、小型化および軽量化を図った直線接続クロージャとしては、以下に示すものがある。
(1)下記の特許文献1には、光ファイバを本体部の外周面上の螺旋状の溝部に巻回し、この光ファイバの端部を本体部の端部側から解きほぐして取り出し、ドロップ光ファイバケーブルの光ファイバをふた部の孔に貫通させ、この貫通したドロップ光ファイバケーブルの光ファイバの端部を解きほぐして取り出した光ファイバの端部に融着接続またはメカニカルスプライス接続により接続し、解きほぐした光ファイバの余った部分を本体部の空洞部内に押し込めながら接続部を本体部の空洞部内に収納し、ふた部を本体部に固定的に取り付けることにより、ドロップ光ファイバケーブルがどこで断線したとしても簡単かつ適格に接続することができるようにした光ファイバケーブル接続補助器が開示されている。
(2)下記の特許文献2には、光ファイバ心線部分と支持線とを一体化した光ドロップケーブルの直線接続部構造であって、接続部材に取り付けた2本のボルトに両側の支持線の端部をそれぞれ巻き付け締付けることで接続部材に固定し、各支持線にスパイラルチューブを被せ、両側の光ファイバ同士を接続したメカニカルスプライスを接続部材の回りを回して各光ファイバをスパイラルチューブの外周に螺旋状に巻き付け、その状態でメカニカルスプライスを接続部材のメカニカルスプライス取付部に取り付け、これら全体を保護スリーブ内に収容し、両端に端面キャップを被せることにより、余長処理機能を持たせかつ支持線を樹脂被覆を被った状態のまま固定しても十分な張力が得られるようにした光ドロップケーブルの直線接続部構造が開示されている。
(3)下記の特許文献3には、双方の光ドロップケーブルの端末からそれぞれ露出された支持線が接続された支持線接続部と、双方の光ドロップケーブルの端末からそれぞれ露出された光ファイバの端末同士が余長を持って接続された光ファイバ接続部と、接続された支持線上に取り付けられた円筒型余長収納ガイドとを有し、円筒型余長収納ガイドの外周に光ファイバの接続余長が光ファイバの許容最小曲げ径を確保した状態で巻付けられるようにすることにより、小型・軽量でありかつ設置場所の制約が少ない光ドロップケーブルの接続部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−031521号公報
【特許文献2】特開2005−070564号公報
【特許文献3】特開2004−325998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した2つの補修方法では、光ドロップケーブル1の張替え作業が必要であるという問題のほかに、張替作業を行う際にお客様調整が必要であるために工期が縛られるという問題があった。
また、断線箇所からメディアコンバータまでの張替えを行う補修方法では、メディアコンバート5を新たなメディアコンバート5’に取り替えるため、新たなメディアコンバート5’とパーソナルコンピュータ(PC)6とを接続するコネクタケーブル7と新たなメディアコンバート5’とを接続する融着接続作業も必要であるという問題があった。
さらに、断線箇所から成端箱までの張替えを行う補修方法では、成端箱110を加入者宅の壁面に取り付けることの了解を加入者にもらう必要があるとともに、成端箱110の取付作業も必要であるという問題があった。
【0008】
なお、光ドロップケーブル1の張替えを行わないようにするために、所定の長さの接続用光ドロップケーブル1”と2個の直線接続クロージャ(第1および第2の直線接続クロージャ1001,1002)とを用意しておいて、図10に示すように接続用光ドロップケーブル1”を介して断線した光ドロップケーブル1同士を接続する補修方法も考えられる。
しかし、このような補修方法では、接続用光ドロップケーブル1”の長さを十分にとる必要があるため、施工時間を要するとともに作業性が悪いという問題が生じる。
また、風などによって第1および第2の直線接続クロージャ1001,1002が別々に振動すると光ドロップケーブル1および接続用光ドロップケーブル1”が断線し易くなるため、第1および第2の直線接続クロージャ1001,1002を1個のカバーで覆うことも考えられるが、カバーの長さが長くなるとともに施工時間を更に要するという問題が生じる。
【0009】
上記の特許文献1〜3に開示されている直線接続クロージャは、以下に示す理由により、直線接続クロージャの構造が複雑になったり、光ドロップケーブルの張替工事の作業手順が多くなったりするという問題がある。
(1)上記の特許文献1に開示されている光ファイバケーブル接続補助器では、光ファイバを本体部の外周面上の螺旋状の溝部に巻回したり、ドロップ光ファイバケーブルの光ファイバをふた部の孔に貫通させたり、ふた部を本体部に固定的に取り付けたりする必要がある。
(2)上記の特許文献2に開示されている光ドロップケーブルの直線接続部構造では、各支持線にスパイラルチューブを被せたり、両側の光ファイバ同士を接続したメカニカルスプライスを接続部材の回りを回して各光ファイバをスパイラルチューブの外周に螺旋状に巻き付けたりする必要がある。
(3)上記の特許文献3に開示されている光ドロップケーブルの接続部では、円筒型余長収納ガイドの外周に光ファイバの接続余長が光ファイバの許容最小曲げ径を確保した状態で巻付けられるようにする必要がある。
【0010】
本発明の目的は、構造が複雑でなく、かつ、断線した光ドロップケーブルの補修を効率良く行うことができる直線接続クロージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の直線接続クロージャは、幹線の光ファイバケーブルから加入者宅に引き込まれている光ドロップケーブル(1)が断線した際の補修に用いられる直線接続クロージャ(10;60;90)であって、前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方を両端部でそれぞれ固定するための棒状の光ドロップケーブル固定手段(11;61;70;80)と、前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方の心線(1a)、該心線と接続されたジャンパ心線(2)、並びに、該心線と該ジャンパ心線との接続部(3L,3R;4L,4R)を収納するためのホルダー(12;21;31;41;51)と、前記光ドロップケーブル固定手段および前記ホルダーを格納するための開閉可能なカバー(13;91)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記光ドロップケーブル固定手段が、前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方の吊線をそれぞれ固定するための吊線固定手段(11L1,11L2,11R1,11R2;71;81)が両端部にそれぞれ設けられた吊線固定棒(11;70;80)であってもよい。
前記光ドロップケーブル固定手段が、前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方をそれぞれ把持するための把持金具(61L,61R)が両端部にそれぞれ設けられた光ドロップケーブル固定棒(61)であってもよい。
前記ホルダー(12;51)内に、所定の深さの切れ目が該ホルダーの一方の端面から他方の端面まで該ホルダーの長手方向に沿ってまたは短冊状に形成されたスポンジ部材(12a;51a)が嵌め込まれていてもよい。
前記心線と前記ジャンパ心線とがメカニカルスプライス(4L,4R)を用いて接続されており、前記ホルダー(21;31)が、2つの側面に互いに対向するように取り付けられた、かつ、前記ジャンパ心線の長さに応じて保持位置を調整して前記メカニカルスプライスを保持するための複数個の保持用突起(21a;31a)を備えていてもよい。
前記複数個の保持用突起(21a)が、前記メカニカルスプライスの両端面を挟んで保持できる間隔で取り付けられていてもよい。
前記複数個の保持用突起(31a)が、前記メカニカルスプライスの両側面を2個以上でそれぞれ挟んで保持できる間隔で取り付けられていてもよい。
前記心線と前記ジャンパ心線とがメカニカルスプライス(4L,4R)を用いて接続されており、前記ホルダー(41)が、前記メカニカルスプライスを埋め込んで保持するためのスポンジ部材(41a)を備えていてもよい。
前記光ドロップケーブル固定手段、前記ホルダーおよび前記カバーが一体化されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の直線接続クロージャは、断線した光ドロップケーブルの一方および他方を棒状の光ドロップケーブル固定手段の両端部にそれぞれ固定し、断線した光ドロップケーブルの一方および他方の心線とジャンパ心線とを接続したのち、心線、ジャンパ心線および接続部をホルダーに収納するだけでよいため、構造を簡単化することができるとともに断線した光ドロップケーブルの補修を効率良く行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例による直線接続クロージャ10の構成について説明するための図である。
【図2】断線した光ドロップケーブル1を図1に示した直線接続クロージャ10を用いて補修する方法について説明するための図である。
【図3】断線した光ドロップケーブル1を図1に示した直線接続クロージャ10を用いて補修する方法について説明するための図である。
【図4】断線した光ドロップケーブル1の剥き出しにした心線1aとジャンパ心線2とをメカニカルスプライス接続する際に用いるホルダーの構成例を示す図であり、(a)はホルダー21の構成を示す図であり、(b)はホルダー31の構成を示す図であり、(c)はホルダー41の構成を示す図であり、(d)はホルダー51の構成を示す図である。
【図5】図1に示した第1および第2の左側突起11L1,11L2と第1および第2の右側突起11R1,11R2との代わりに使用する左側および右側把持金具61L,61Rについて説明するための図である。
【図6】図1に示した吊線固定棒11の代わりに使用する吊線固定棒70,80について説明するための図であり、(a)は吊線固定棒70の構成を示す図であり、(b)は吊線固定棒80の構成を示す図である。
【図7】両端面の第1の貫通孔91c1の下側に第2の貫通孔91c2が形成された直方体状のカバー91を具備した直線接続クロージャ90の構成を示す図であり、(a)は表面カバー91を開いた状態の正面図であり、(b)は表面カバー91を閉じた状態の側面図である。
【図8】光ドロップケーブル1が断線した場合の従来の補修作業について説明するための図である。
【図9】光ドロップケーブル1が断線した場合の従来の補修作業について説明するための図である。
【図10】光ドロップケーブル1の張替えを不要とするために接続用光ドロップケーブル1”と第1および第2の直線接続クロージャ1001,1002とを用いた補修方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の目的を、断線した光ドロップケーブルの一方および他方を両端部でそれぞれ固定するための棒状の光ドロップケーブル固定手段と、断線した光ドロップケーブルの一方および他方の心線、心線と接続されたジャンパ心線、並びに、心線とジャンパ心線との接続部を収納するためのホルダーとを具備することにより実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の直線接続クロージャの実施例について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、光ドロップケーブル1は、図5(b)に示すように、本体部(心線1aおよびテンションメンバ1bが収容されている部分)と吊線部(吊線1cが収容されている部分)とからなるものとする。
【0016】
本発明の一実施例による直線接続クロージャ10は、図1(a)に示す吊線固定棒11およびホルダー12と、同図(b)に示すカバー13とを具備する。
【0017】
ここで、吊線固定棒11の図1(a)図示左側の端部には第1および第2の左側突起11L1,11L2が吊線固定棒11の長手方向と垂直な方向に所定の間隔をもって吊線固定棒11の左端側から第1の左側突起11L1および第2の左側突起11L2の順番で取り付けられており、また、吊線固定棒11の同図図示右側の端部には第1および第2の右側突起11R1,11R2が吊線固定棒11の長手方向と垂直な方向に所定の間隔をもって吊線固定棒11の右端側から第1の右側突起11R1および第2の右側突起11R2の順番で取り付けられている。
【0018】
ホルダー12は、底面と2つの側面とを備えた横断面形状(ホルダー12の長手方向と垂直な方向に切断したときにホルダー12の長手方向に沿って見た断面形状)がコの字状をしている。また、ホルダー12は、心線1aの保護および余長の有効活用のためにホルダー12の上面上に第1および第2の左側突起11L1,11L2と第1および第2の右側突起11R1,11R2とが位置するように吊線固定棒11に取り付けられている。
また、ホルダー12内には、所定の深さの切れ目が左側端面から右側端面までホルダー12の長手方向に沿って形成されたスポンジ部材12aが嵌め込まれている。
【0019】
カバー13は、直線接続クロージャ10の第1および第2の左側突起11L1,11L2と第1および第2の右側突起11R1,11R2とホルダー12とを格納するためのものであり、両端面を備えた半円筒状の表面カバー13aおよび裏面カバー13bを備える。カバー13の長手方向の長さは、吊線固定部11の両端部がカバー13から突出する長さとされている(図1(b)参照)。
表面カバー13aは、カバー13を開閉可能とするために、カバー13の上端線を中心軸として裏面カバー13bに対して回動可能とされている。
また、表面カバー13aおよび裏面カバー13bの両端面には、カバー13を閉じたときに直線接続クロージャ10の吊線固定棒11を貫通させるための第1の貫通孔13c1を形成するための半円状の切欠きが上部に形成されているとともに、カバー13を閉じたときに光ドロップケーブル1の本体部を貫通させる第2の貫通孔13c2を形成するための半円状の切欠きが中心部付近に形成されている。
【0020】
なお、後述するジャンパ心線2と左側および右側スリーブ3L,3Rとを事前にホルダー12のスポンジ部材12a内に切れ目から押し込んで収納しておくことにより、作業員はジャンパ心線2と左側および右側スリーブ3L,3Rとを別途用意する必要をなく吊線固定棒1とホルダー12とがカバー13内に格納されたものを補修箇所に持参すれば、断線した光ドロップケーブル1の心線1aおよび吊線1cを再利用して補修することができるので、補修作業を効率良く行うことができる。
【0021】
次に、断線した光ドロップケーブル1を本実施例による直線接続クロージャ10を用いて補修する方法について、図2および図3を参照して説明する。
【0022】
作業員は、光ドロップケーブル1の断線箇所(図2(a)参照)において、断線した光ドロップケーブル1の両方の端部を先端から所定の長さ(たとえば、1〜2cm)だけ切断したのち、切断した光ドロップケーブル1の端部の吊線部および本体部を所定の長さだけ分離する(図2(b)参照)。
【0023】
続いて、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の一方の分離した吊線部の外被を先端から所定の長さだけ剥いて吊線1cを剥き出しにしたのち(図2(c)参照)、剥き出しにした吊線1cを直線接続クロージャ10の第1の左側突起11L1および第2の左側突起11L2にこの順番で巻き付ける(図2(d)参照)。このとき、第1および第2の左側突起11L1,11L2の図2(d)図示手前側だけでなく図示背後側にも吊線1cを巻き付けることにより、異なる方向からの外力に対しても吊線1cが外れにくくするようにする。
同様にして、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の他方の分離した吊線部の外被を先端から所定の長さだけ剥いて吊線1cを剥き出しにしたのち(図2(c)参照)、剥き出しにした吊線1cを直線接続クロージャ10の第1の右側突起11R1および第2の右側突起11R2にこの順番で巻き付ける(図2(d)参照)。
なお、作業員は、剥き出しにした吊線1cの長さによっては、第1の左側突起11L1および第1の右側突起11R1にのみ剥き出しにした吊線1cを巻き付ける。
【0024】
続いて、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の一方の分離した本体部の外被を先端から所定の長さ(たとえば、4〜5cm)だけ剥いて心線1aを剥き出しにし(図3(a)参照)、剥き出しにした心線1aとホルダー12内から取り出したジャンパ心線2とを融着接続したのち、融着接続部にホルダー12内から取り出した左側スリーブ3Lを取り付ける(図3(b)参照)。
同様にして、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の他方の分離した本体部の外被を先端から所定の長さ(たとえば、4〜5cm)だけ剥いて心線1aを剥き出しにし(図3(a)参照)、剥き出しにした心線1aとホルダー12内から取り出したジャンパ心線2とを融着接続したのち、融着接続部にホルダー12内から取り出した右側スリーブ3Rを取り付ける(図3(b)参照)。
なお、このときの融着接続作業により、剥き出しにした心線1aは先端から所定の長さ(たとえば、1〜2cm)だけ切断される。
【0025】
続いて、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の一方の剥き出しにされたままの心線1a、左側スリーブ3L、ジャンパ心線2、右側スリーブ3Rおよび断線した光ドロップケーブル1の他方の剥き出しにされたままの心線1aをスポンジ部材12aの切れ目から押し込んで、これらをホルダー12内に収納する(図3(c)参照)。
【0026】
続いて、作業員は、ホルダー12にカバー13を装着する(図1(b)参照)。
【0027】
以上の説明では、心線1aとジャンパ心線2とを融着接続したが、メカニカルスプライス接続してもよい。
この場合には、図1(a)に示したホルダー12の代わりに、以下に示すホルダー21,31,41を用いる。
【0028】
(1)ホルダー21
ホルダー21は、図4(a)に示すように、2つの側面に互いに対向するように取り付けられた複数個の保持用突起21aを備える。
ここで、保持用突起21aは、底面がホルダー21の側面に取り付けられた半円柱状の形状を有し、左側および右側メカニカルスプライス4L,4Rをホルダー21の上面から押し込めるようにゴムなどの弾性部材からなる。
また、保持用突起21aは、ジャンパ心線2の長さに応じて左側または右側メカニカルスプライス4L,4Rの保持位置を調整できるようにするために、左側および右側メカニカルスプライス4L,4Rの両端面を挟んで保持できる間隔で取り付けられている。
【0029】
(2)ホルダー31
ホルダー31は、図4(b)に示すように、2つの側面に互いに対向するように取り付けられた複数個の保持用突起31aを備える。
ここで、保持用突起31aは、底面がホルダー31の側面に取り付けられた半円柱状の形状を有し、左側および右側メカニカルスプライス4L,4Rをホルダー31の上面から押し込めるようにゴムなどの弾性部材からなる。
また、保持用突起31aは、ジャンパ心線2の長さに応じて左側または右側メカニカルスプライス4L,4Rの保持位置を調整できるようにするために、左側または右側メカニカルスプライス4L,4Rの両側面を2個以上でそれぞれ挟んで保持できる間隔(すなわち、図4(a)に示した保持用突起21aの間隔よりも狭い間隔)で取り付けられている。
【0030】
(3)ホルダー41
ホルダー41は、図4(c)に示すように、左側または右側メカニカルスプライス4L,4Rを埋め込んで保持するためのスポンジ部材41aを備える。
ここで、スポンジ部材41aは、ホルダー41の左側端面から右側端面まで嵌め込まれている。また、スポンジ部材41aには、左側および右側メカニカルスプライス4L,4Rとジャンパ心線2とをホルダー41の上面から押し込めるように、所定の幅を有する切れ目が左側端面から右側端面までホルダー41の長手方向に沿って形成されている。
【0031】
また、長いジャンパ心線2を用意する必要がある場合には、図(d)に示すホルダー51のようにスポンジ部材51aの切れ目を碁盤の目状(短冊状)にすることにより、ジャンパ心線2を蛇行させてスポンジ部材51aに押し込めてジャンパ心線2の余長処理ができるようにしてもよい。
【0032】
以上の説明では、断線した光ドロップケーブル1の吊線1cを直線接続クロージャ10の第1および第2の左側突起11L1,11L2と第1および第2の右側突起11R1,11R2とに巻き付けたが、図5(a)に示す直線接続クロージャ60のように、左側把持金具61Lおよび右側把持金具61Rを光ドロップケーブル固定棒61の両端部に取り付けて、断線した光ドロップケーブル1の一方を左側把持金具61Lで把持して固定するとともに断線した光ドロップケーブル1の他方を右側把持金具61Rで把持して固定するようにしてもよい。
【0033】
ここで、左側把持金具61Lは、図5(b)に示すように、光ドロップケーブル固定棒61に取り付けられる取付部61aと、光ドロップケーブル1の本体部(心線1aおよびテンションメンバ1bが収容されている部分)を左右から挟んで把持するための本体部把持部61bと、光ドロップケーブル1の吊線部(吊線線1cが収容されている部分)を左右から挟んで把持するための吊線部把持部61cとを備える。また、左側把持金具61Lの取付部61aは吊線部把持部61c側に設けられている。
右側把持金具61Rは左側把持金具61Lと同様に構成されている。
【0034】
断線した光ドロップケーブル1の一方は、図5(b)に示すように本体部把持部61bを開いた状態で吊線部から左側把持金具61Lに挿入され、同図(c)に示すように本体部全体が本体部把持部61bに挿入されるまで左側把持金具61Lに押し込まれる。その後、断線した光ドロップケーブル1の一方は、同図(d)に示すように光ドロップケーブル1の形状に合わせて本体部把持部61bおよび吊線部把持部61cが工具または手でつぶされて本体部および吊線部が本体部把持部61bおよび吊線部把持部61cで左右から挟まれて把持されることにより、左側把持金具61Lによって把持される。
断線した光ドロップケーブル1の他方は、同様にして右側把持金具61Rによって把持される。
【0035】
さらに、図1に示した第1および第2の左側突起11L1,11L2と第1および第2の右側突起11R1,11R2とを取り付けた吊線固定棒11の代わりに、図6(a)に示す吊線固定棒70または同図(b)に示す吊線固定棒80を用いてもよい。
【0036】
ここで、吊線固定棒70は、両端部に光ドロップケーブル1の吊線1cを挿入するための挿入孔が形成されているとともに、両端部に固定ネジ71と螺合するネジ溝が形成されたものである。
この場合には、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の一方の吊線1cを吊線固定棒70の左端部の挿入孔に挿入したのちに、挿入した吊線1cの上面を固定ネジ71の先端で押し付けて固定するとともに、断線した光ドロップケーブル1の他方の吊線1cを吊線固定棒70の右端部の挿入孔に挿入したのちに、挿入した吊線1cの上面を固定ネジ71で押し付けて固定する。
【0037】
吊線固定棒80は、両端部に光ドロップケーブル1の吊線1cを挿入するための挿入孔が形成されているとともに、両端面部の外面にテーパ加工されたネジ溝が所定の長さだけ形成されたものである。
この場合には、作業員は、断線した光ドロップケーブル1の一方の吊線1cを吊線固定棒80の左端部の挿入孔に挿入したのちに、ナット81を吊線固定棒80の左端面部のネジ溝に螺合していくことにより吊線1cを吊線固定棒80で締め付けて固定するとともに、断線した光ドロップケーブル1の他方の吊線1cを吊線固定棒80の右端部の挿入孔に挿入したのちに、ナット81を吊線固定棒80の右端面部のネジ溝に螺合していくことにより吊線1cを吊線固定棒80で締め付けて固定する。
【0038】
なお、図示しないが、図1に示した第1および第2の左側突起11L1,11L2と第1および第2の右側突起11R1,11R2とを取り付けた吊線固定棒11の代わりに、少なくとも1個の左側アイ金具と少なくとも1個の右側アイ金具とを取り付けた吊線固定棒を用いてもよい。
この場合には、作業者は、断線した光ドロップケーブル1の一方の吊線1cを左側アイ金具に通したのち巻き付けて固定するとともに、断線した光ドロップケーブル1の他方の吊線1cを右側アイ金具に通したのち巻き付けて固定する。
【0039】
以上の説明では、図1(b)に示したように両端面の中央部に第2の貫通孔13c2が形成された円筒状のカバー13を用いたが、コンパクト化を図るために、図7(a),(b)に示す直線接続クロージャ90のように両端面の第1の貫通孔91c1の下側に第2の貫通孔91c2が形成された直方体状のカバー91を用いてもよい。
なお、直線接続クロージャ90では、断線した光ドロップケーブル1の本体部は第2の貫通孔91c2を通してカバー91内に格納される。
また、表面カバー91aおよび裏面カバー91bの下端部は底面に対して垂直に突出しているとともに複数の孔が設けられており、同図(b)に示すようにボルト92を孔に通したのちにボルト92とナット93とで表面カバー91aおよび裏面カバー91bの下端部を挟み込むことにより、表面カバー91aを閉じた状態で表面カバー91aと裏面カバー91bとを固定するようにされている。
さらに、吊線固定棒11とホルダー12とカバー91とを一体化して構成することにより、同図(a)に示すように表面カバー91aを開いた状態で補修作業を行えるようにしてもよい。これにより、作業員は断線した光ドロップケーブル1の接続作業後に表面カバー91aを閉じることで補修作業をすべて終了することができるので、補修作業の更なる効率化を図ることができる。
【0040】
また、直線状のジャンパ心線2を用いたが、カール状のジャンパ心線を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
・ 1’ 光ドロップケーブル
1” 接続用光ドロップケーブル
1a 心線
1b テンションメンバ
1c 吊線
2 ジャンパ心線
L,3R 左側および右側スリーブ
L,4R 左側および右側メカニカルスプライス
5,5’ メディアコンバータ
6 パーソナルコンピュータ
7 コネクタケーブル
10,60,90,100 直線接続クロージャ
11,70,80 吊線固定棒
11L1,11L2 第1および第2の左側突起
11R1,11R2 第1および第2の右側突起
12,21,31,41,51 ホルダー
12a,41a,51a スポンジ部材
13,91 カバー
13a,91a 表面カバー
13b,91b 裏面カバー
13c1,13c2,91c1,91c2 第1および第2の貫通孔
21a,31a 保持用突起
61 光ドロップケーブル固定棒
61L,61R 左側および右側把持金具
61a 取付部
61b 本体部把持部
61c 吊線部把持部
71 固定ネジ
81,93 ナット
92 ボルト
1001,1002 第1および第2の直線接続クロージャ
110 成端箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線の光ファイバケーブルから加入者宅に引き込まれている光ドロップケーブル(1)が断線した際の補修に用いられる直線接続クロージャ(10;60;90)であって、
前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方を両端部でそれぞれ固定するための棒状の光ドロップケーブル固定手段(11;61;70;80)と、
前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方の心線(1a)、該心線と接続されたジャンパ心線(2)、並びに、該心線と該ジャンパ心線との接続部(3L,3R;4L,4R)を収納するためのホルダー(12;21;31;41;51)と、
前記光ドロップケーブル固定手段および前記ホルダーを格納するための開閉可能なカバー(13;91)と、
を具備することを特徴とする、直線接続クロージャ。
【請求項2】
前記光ドロップケーブル固定手段が、前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方の吊線をそれぞれ固定するための吊線固定手段(11L1,11L2,11R1,11R2;71;81)が両端部にそれぞれ設けられた吊線固定棒(11;70;80)であることを特徴とする、請求項1記載の直線接続クロージャ。
【請求項3】
前記光ドロップケーブル固定手段が、前記断線した光ドロップケーブルの一方および他方をそれぞれ把持するための把持金具(61L,61R)が両端部にそれぞれ設けられた光ドロップケーブル固定棒(61)であることを特徴とする、請求項1記載の直線接続クロージャ。
【請求項4】
前記ホルダー(12;51)内に、所定の深さの切れ目が該ホルダーの一方の端面から他方の端面まで該ホルダーの長手方向に沿ってまたは短冊状に形成されたスポンジ部材(12a;51a)が嵌め込まれていることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の直線接続クロージャ。
【請求項5】
前記心線と前記ジャンパ心線とがメカニカルスプライス(4L,4R)を用いて接続されており、
前記ホルダー(21;31)が、2つの側面に互いに対向するように取り付けられた、かつ、前記ジャンパ心線の長さに応じて保持位置を調整して前記メカニカルスプライスを保持するための複数個の保持用突起(21a;31a)を備えている、
ことを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の直線接続クロージャ。
【請求項6】
前記複数個の保持用突起(21a)が、前記メカニカルスプライスの両端面を挟んで保持できる間隔で取り付けられていることを特徴とする、請求項5記載の直線接続クロージャ。
【請求項7】
前記複数個の保持用突起(31a)が、前記メカニカルスプライスの両側面を2個以上でそれぞれ挟んで保持できる間隔で取り付けられていることを特徴とする、請求項5記載の直線接続クロージャ。
【請求項8】
前記心線と前記ジャンパ心線とがメカニカルスプライス(4L,4R)を用いて接続されており、
前記ホルダー(41)が、前記メカニカルスプライスを埋め込んで保持するためのスポンジ部材(41a)を備えている、
ことを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の直線接続クロージャ。
【請求項9】
前記光ドロップケーブル固定手段、前記ホルダーおよび前記カバーが一体化されていることを特徴とする、請求項1乃至8いずれかに記載の直線接続クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−197691(P2010−197691A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42219(P2009−42219)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】