説明

相乗作用性混合物

トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールならびに公知の殺虫剤をベースとする、新規な相乗作用的効果を有する混合物が、工業材料、特に木材および材木製品、さらには木材/プラスチック複合材料を、有害生物による攻撃、損傷、および/または破壊から保護するのに極めて好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一成分としてトリアジメホンおよび/またはトリアジメノール、第二成分として公知の殺虫剤を含む新規な相乗作用的効果を有する混合物、それらの混合物をベースとする組成物、ならびに工業材料、特に木材および材木製品、さらには木材/プラスチック複合材料を、有害生物による攻撃、損傷、および/または破壊から保護するための、それらの混合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
原理的には、当業者は、担子菌および(木材が高湿度もしくは土壌と接触のある環境に暴露された場合には)糸状菌による木材の構造的破壊と、木材を破壊する昆虫およびシロアリによる木材の損傷ならびに木材変色菌による木材の外観的な損傷とは、区別している。これら木材の破壊および損傷は、とりわけ強度の低下と、一般的にはその木材の有用性の低下をもたらす。そのため、殺菌剤、そして必要に応じて殺虫剤を用いて、有害生物による攻撃から木材および材木製品を保護して、木材および材木製品の有用性および実用寿命を延長させる。
【0003】
トリアゾール、たとえば、テブコナゾール((特許文献1)参照)およびシプロコナゾール((特許文献2)参照)が、木材破壊性の担子菌から木材を保護するのに有用であることは、すでに公知である。それらの活性は、実験室試験だけで判断すれば有望ではあるが、実際の条件下においては、木材が常に充分に保護される訳ではなく、そのため、実際に適用する場合には、それらの活性化合物は、金属または金属塩、特に銅塩と組み合わせなければならない。したがって実際には、トリアゾール殺菌剤は多くの場合、重金属含有化合物、たとえば、銅化合物と組み合わせることによって、殺菌効果に加えて昆虫からの保護が得られる。
【0004】
しかしながら、木材を保護するために重金属含有組成物を使用することは、エコロジーの面からは好ましいことではないと考えられる。したがって、重金属を添加せずに、木材に充分な保護を与えることが可能な活性化合物をベースとする、木材を保護するための改良された組成物が依然として必要とされていた。
【0005】
トリアジメホン((±)−1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾル−1−イル)ブタン−2−オン)およびトリアジメノール((±)−1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾル−1−イル)ブタン−2−オール)は、菌類による攻撃から植物を保護するための公知の殺菌剤である((特許文献3)参照)。しかしながら、それらは、それら自体で木材保護に用いることは不可能であるが、その理由は、木材保護に関連する微生物に対する活性スペクトルにギャップが存在するためである((特許文献1)参照)。昆虫に対する活性は、未だに報告されていない。
【0006】
いくつかの文献(たとえば(特許文献4)参照)においては、トリアジメホンまたはトリアジメノールが、木材保護のための各種の活性化合物のための混合パートナーとして使用可能であることが指摘されているが、それら従来技術の混合物は依然として、多くの面で改良が必要とされており、また上述の活性のギャップのために、木材保護の面においてこれまで何の役割も果たしていない。
【特許文献1】EP−A 254857号明細書
【特許文献2】EP−A 554833号明細書
【特許文献3】DE−A 2552967号明細書
【特許文献4】国際公開第00/71314号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールをベースとする、改良された活性化合物の混合物が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外なことには、それら自体では効果のない、トリアジメホンまたはトリアジメノールをある種の殺虫剤と組み合わせると、木材保護に関連する有害生物に対しての、相乗作用的に向上された活性を示すことが見出された。
【0009】
本発明は、相乗作用的に有効な量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノールと、好ましくはリン酸エステル、カルバメート、尿素、ピレスロイド、ピロール、フェニルピラゾール、ジフェニルエーテル、ジアシルヒドラジン、およびニトロメチレンからなる群からの少なくとも1種の殺虫剤とを含む混合物を提供する。
【0010】
本発明による混合物は、木材保護に関連する有害生物に対する相乗作用的活性を示す、すなわちその相乗作用性混合物の活性は、予想外にも、問題としている活性化合物自体の活性を合計したものより高い。したがって、活性を単に合計しただけではなく、予見不能である相乗作用的効果が存在している。
【0011】
本発明はさらに、木材保護に関連する有害生物、特に木材破壊性のキクイムシおよびシロアリに対して、木材、材木製品および木材/プラスチック複合材料を保護するための、本発明による相乗作用性混合物の使用もまた提供する。
【0012】
その相乗作用的に活性が向上されたことによって、本発明による木材保護のための組成物において使用される殺菌剤の量がより少なくなることで、経済的な利点が得られるばかりではなく、環境安全に対する危険性もまた低下するという、さらなる利点がある。
【0013】
好ましいのは、トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールと、以下のものからなる群からの少なくとも1種の殺虫剤とを含む混合物である:
アセタミプリド、アレトリン、アルファ−シペルメトリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−[(6−ヨード−3−ピリジニル)メトキシ]−3(2H)−ピリダジノン(CAS−RN:120955−77−3)、クロルフェナピル、クロルピリホス、クロチアニジン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フェノキシカルブ、フィプロニル、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、イミダクロプリド、ニテンピラム、ペルメトリン、ピリプロキシフェン、シラフルオフェン、テブフェノジド、チアクロプリド、チアメトキサム、トラロメトリン、トリフルムロン。
【0014】
極めて好ましいのは、トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールと、以下のものからなる群からの少なくとも1種の殺虫剤とを含む混合物である:
ビフェントリン、クロルフェナピル、クロルピリホス、クロチアニジン、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フィプロニル、フルフェノクスロン、イミダクロプリド、ペルメトリン、チアクロプリド、チアメトキサム。
【0015】
特に好ましいのは、トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールと、以下のものからなる群からの少なくとも1種の殺虫剤とを含む混合物である:
ビフェントリン、クロルフェナピル、クロチアニジン、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、イミダクロプリド、ペルメトリン、チアクロプリド。
【0016】
活性化合物混合物中の活性化合物の重量比は、比較的広い範囲で変化させることが可能である。トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールの、上述の殺虫剤の少なくとも1種に対する重量比は、好ましくは1000:1から1:1まで、特に好ましくは100:1から2:1までの範囲である。
【0017】
特に好ましいのは、トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールと、上述の殺虫剤の少なくとも1種とを、50:1から5:1までの重量比で含む本発明による活性化合物混合物である。
【0018】
本発明による相乗作用性混合物は、材料の保護に関連して有害な生物に対して、広汎な活性スペクトルと組み合わせて、特に高い殺生物性、特に殺菌性および殺虫性、さらには殺シロアリ性の効果をもたらす。それらは、木材破壊性の担子菌および昆虫類、特に木材破壊性の甲虫類およびシロアリに対しては、特に有効である。
【0019】
以下のような微生物を例として挙げることができるが、これらによって限定を受ける訳ではない:
カエトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、グレノスポラ・グラフィイ(Glenospora graphii)、フミコーラ・ギセア(Humicola gisea)、ペトリエラ・セティフェラ(Petriella setifera)、トリクルス・スピラリス(Trichurus spiralis)およびレシトフォラ・ムタビリス(Lecythophora mutabilis)、ならびにトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、スタキボトリス・カルタルム(Stachybotrys cartarum)、セファロスポリウム属(Chephalosporium sp.)およびアクレモニウム属(Acremonium sp.)、コニオホラ・プテアナ(Coniophora puteana)、コリオロズ・ベルシカラー(Coriolus versicolor)、グロエオフィルム・アビエチヌム(Gloeophyllum abietinum)、グロエオフィルム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、レンチヌス・チグリヌス(Lentinus tigrinus)、ポリア・モンチコラ(Poria monticola)、ポリア・プラセンタ(Poria placenta)、セルプラ・ラクリマンス(Serpula lacrymans)、ステレウム・サンギノレンツム(Stereum sanguinolentum)、チロミセス・パルストリス(Tyromyces palustris)。
【0020】
以下のような木材破壊性昆虫を例として挙げることができるが、これらによって限定を受ける訳ではない:
甲虫類、たとえば、ヒロトルペス・バユルス(Hylotrupes bajulus)、クロロホルス・ピロシス(Chlorophorus pilosis)、アホビウム・プンクタツム(Ahobium punctatum)、ゼストビウム・ルホビロスム(Xestobium rufovillosum)、プチリヌス・ペクチコルニス(Ptilinus pecticornis)、デンドロビウム・ペルチネクス(Dendrobium pertinex)、エルノビウス・モリス(Ernobius mollis)、プリオビウム・カルピニ(Priobium carpini)、リクツス・ブルンネウス(Lyctus brunneus)、リクツス・アフリカヌス(Lyctus africanus)、リクツス・プラニコリス(Lyctus planicollis)、リクツス・リネアリス(Lyctus linearis)、リクツス・プベセンス(Lyctus pubescens)、トロゴキシロン・アエクアレ(Trogoxylon aequale)、ミンテス・ルギコリス(Minthes rugicollis)、キシレボルス属(Xyleborus spec.)、トリプトデンドロン属(Tryptodendron spec.)、アパテ・モナクス(Apate monachus)、ボストリクス・カプシンス(Bostrychus capucins)、ヘテロボストリクス・ブルンネウス(Heterobostrychus brunneus)、シノキシロン属(Sinoxylon spec.)、ディノデルス・ミヌツス(Dinoderus minutus);
膜翅類、たとえば、シレックス・ジュベンクス(Sirex juvencus)、ウロセルス・ギガス(Urocerus gigas)、ウロセルス・ギガス・タイグヌス(Urocerus gigas taignus)、ウロセルス・アウグル(Urocerus augur);
シロアリ類、たとえば、カロテルメス・フラビコリス(Kalotermes flavicollis)、クリプトテルメス・ブレビス(Crypotermes brevis)、ヘテロテルメス・インディコラ(Heterotermes indicola)、レチクリテルメス・フラビペス(Reticulitermes flavipes)、レチクリテルメス・サントネンシス(Reticulitermes santonensis)、レチクリテルメス・ルシルグス(Reticulitermes lucilugus)、マストテルメス・ダーウィニエンシス(Mastotermes darwiniensis)、ズーテルモプシス・ネバデンシス(Zootermopsis nevadensis)、コプトテルメス・フォルモサヌス(Coptotermes formosanus)。
【0021】
湿潤条件下においては、糸状菌に加えて、細菌、たとえば、カルドセルロシルプトル属(Caldocellulosiruptor sp.)、アナエロセルム属(Anaerocellum sp.)、クロストリジウム属(Clostridium species)たとえば、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・アルドリチイ(Clostridium aldrichii)、セルロモナス属(Cellulomonas species)、ストレプトマイセテス(streptomycetes)、ミクロモノスポラ属(Micromonospora sp.)、テルモモノスポラ属(Thermomonospora sp.)、ミクロビスポラ属(Microbispora sp.)、およびさらにはサイトファガ属およびスポロサイトファガ属(Cytophaga and Sporocytophaga species)もまた、セルロースの分解には決定的に寄与することができる。
【0022】
活性スペクトルを拡大するか、または特定の効果を得たい場合には、本発明による相乗作用性混合物を、少なくとも1種のさらなる殺菌活性化合物と組み合わせることもできる。具体的には、その相乗作用性混合物には、殺菌剤および抗菌活性化合物の群からの少なくとも1種のさらなる活性化合物が含まれていてよい。
【0023】
好ましいのは、特に1種または複数の下記の殺菌成分を含む混合物である:ジクロフルアニド、トリルフルアニド、カルベンダジム、フェンプロピモルフ、ベトキサジン、チオシアナト−メチルチオベンゾチアゾール、n−ブチルカルバミン酸3−ヨード−2−プロピニル、ピリチオン亜鉛、ピリチオン銅、N−(3−アミノプロピル)−N−ドデシルプロパン−1,3−ジアミン、テブコナゾール、プロピコナゾール、シプロコナゾールおよび銅塩。
【0024】
特に好ましいのは、さらなる成分として、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、ベトキサジン、ブチルカルバミン酸3−ヨード−2−プロピニル、ピリチオン亜鉛またはピリチオン銅、テブコナゾール、プロピコナゾール、シプロコナゾール、それらの成分の銅塩もしくは混合物、を含む本発明による混合物である。
【0025】
好ましいものとしてはさらに、以下の1種または複数の殺菌成分を含む混合物が挙げられる:
ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、エチレングリコールヘミホルマール、N−(2−ヒドロキシプロピル)アミノ−メタノール、N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ベンズイソチアゾリノン、ホルムアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ベンザルコニウムクロリド、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、3−メチル−4−クロロフェノールおよび2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにそれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、ならびに、o−フェニルフェノールおよびそれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、ブロノポール、2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド、および銀化合物。
【0026】
好ましいのは、以下の殺菌剤を含む本発明による活性化合物の組合せである:
ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ベンズイソチアゾリノン、グルタルジアルデヒド、ベンザルコニウムクロリド、ブロノポール、3−メチル−4−クロロフェノールおよび2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、o−フェニルフェノールならびにそれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、ならびに銀化合物。
【0027】
極めて特に好ましいのは、以下の殺菌剤を含む活性化合物の組合せである:
ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、4,5−ベンズイソチアゾリノン、ベンザルコニウムクロリド、ブロノポール、3−メチル−4−クロロフェノールおよびさらに2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにそれらのナトリウムおよびカリウム塩、o−フェニルフェノールならびにそのナトリウムおよびカリウム塩、ならびに銀(I)化合物。
【0028】
本発明による混合物には一般に、0.01〜85重量パーセントのトリアジメホンおよび/またはトリアジメノール、0.001〜15重量パーセントの少なくとも1種の上述の殺虫剤、そして必要に応じて、0.01〜80重量パーセントの少なくとも1種のさらなる殺菌活性化合物、特に上述の活性化合物の群からのものが含まれる。
【0029】
本発明による混合物に、0.1〜40重量パーセントのトリアジメホンおよび/またはトリアジメノール、0.01〜5重量パーセントの少なくとも1種の上述の殺虫剤、そして必要に応じて、0.05〜30重量パーセントの少なくとも1種のさらなる殺菌活性化合物、特に上述の活性化合物の群からのものが含まれているのが好ましい。
【0030】
本発明による混合物は、公知の方法、たとえば、適切な装置の中で活性化合物を摩砕および/または混合および/または顆粒化することにより調製することができる。適切な溶媒の中に、必要に応じてさらなる助剤および添加物、たとえば乳化剤などと共に、それらの活性化合物を個別または一緒に、溶解、分散、あるいは乳化させることも可能であり、また、必要に応じて、さらなる溶媒を用いてその溶液から沈殿させ、あるいは必要に応じて、蒸留によって溶媒を除去して乾固させることもできる。
【0031】
本発明はさらに、工業材料、特に木材、材木製品および木材/プラスチック複合材料を、有害生物による、特に菌類および昆虫による攻撃、損傷、および/または破壊から保護するための、本発明による活性化合物の混合物の使用も提供する。
【0032】
具体的な物理的および/または化学的性質に応じて、それらの活性化合物および活性化合物の混合物を、通常使用される配合物、たとえば、溶液、エマルション、懸濁液、粉体、発泡体、ペースト、顆粒、エアロゾル、ポリマー物質中のマイクロカプセルなどの形態にすることができる。
【0033】
本発明はさらに、相乗作用的有効量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノールならびに少なくとも1種の上述の殺虫剤、ならびに少なくとも1種の希釈剤または溶媒、必要に応じてさらなる助剤および添加剤、さらに、必要に応じて、少なくとも1種の上述のさらなる活性化合物を含む殺菌性組成物を提供する。
【0034】
それらの配合物は、公知の方法で調製することが可能であり、それにはたとえば、活性化合物をエキステンダー、すなわち液状溶媒、加圧液化ガスおよび/または固体状キャリアと共に混合し、必要に応じて界面活性剤、すなわち、乳化剤および/または分散剤および/または泡形成剤を用いる。使用されるエキステンダーが水である場合には、補助的な溶媒として、たとえば有機溶媒を使用することも可能である。適切な液状溶媒としては基本的には以下のものが挙げられる:芳香族化合物、たとえば、キシレン、トルエンまたはアルキルナフタレン、脂肪族炭化水素、たとえば、シクロヘキサンまたはパラフィン、たとえば鉱油留分、アルコール類、たとえば、ブタノールまたはグリコール、さらにはそれらのエーテルおよびエステル、ケトン類、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノン、強極性溶媒、たとえば、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシド、さらには水。液状化ガスエキステンダーまたはキャリアとは、周囲温度かつ大気圧下ではガス状であるような液状物を意味すると理解されたい。そのようなものとしては、たとえば、エアロゾル噴射剤、たとえばハロゲン化炭化水素、さらにはブタン、プロパン、窒素および二酸化炭素などが挙げられる。好適な固体状キャリアとしては、たとえば以下のものが挙げられる:天然の摩砕鉱物質、たとえば、カオリン、クレー、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイトまたは珪藻土、ならびに合成物質、たとえば、微粉砕シリカ、アルミナおよびシリケート。粒状物のための適切な固体状キャリアとしては、たとえば以下のものが挙げられる:破砕し篩別した天然鉱物、たとえば方解石、大理石、軽石、セピオライト、ドロマイト、ならびに無機および有機の粗びき粉の合成粒状化物、ならびに、有機物質、たとえば、おがくず、やしがら、トウモロコシの穂軸、およびタバコの茎などの粒状化物。好適な乳化剤および/または泡形成剤として、たとえば以下のものが挙げられる:ノニオン性およびアニオン性乳化剤、たとえば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、たとえばアルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホン酸エステル、アルキル硫酸エステル、アリールスルホン酸エステル、およびタンパク質加水分解物。好適な分散剤としては、たとえばリグノサルファイトの廃液、およびメチルセルロースが挙げられる。
【0035】
粘着性付与剤、たとえばカルボキシメチルセルロース、ならびに粉体、粒状体、および格子(lattice)の形態の天然および合成ポリマー、たとえばアラビアゴム、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル、さらには、天然のリン脂質、たとえばセファリンおよびレシチンおよび合成のリン脂質を配合物の中に使用することができる。その他、使用可能な添加剤は、鉱物性および植物性の油である。
【0036】
着色剤、たとえば、無機顔料、たとえば酸化鉄、酸化チタンおよびプロシアンブルー、ならびに有機染料、たとえば、アリザリン染料、アゾ染料および金属フタロシアニン染料、ならびに微量の栄養素、たとえば、鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデンおよび亜鉛の塩を使用することも可能である。
【0037】
それらの配合物は一般に、0.1〜95重量パーセントの間、好ましくは0.5〜50重量パーセントの間の活性化合物の組合せを含む。
【0038】
工業材料を保護するために使用される殺菌性組成物または濃縮物には、0.005〜95重量パーセント、特には0.1〜50重量パーセントの濃度で活性化合物または活性化合物の組合せが含まれる。
【0039】
使用される活性化合物または活性化合物の組合せの適用濃度は、防除すべき微生物の性質と発生程度、ならびに保護すべき材料の組成に依存する。使用すべき最適な量は、一連の試験によって求めることができる。一般的には、その適用濃度は、保護すべき材料を規準にして、0.001〜10重量パーセント、好ましくは0.01〜5重量パーセントの範囲である。
【0040】
本発明による活性化合物の組合せまたは組成物を使用することによって、従来使用されてきた殺菌性組成物を、より効果の高い組成物によって有利に置き換えることが可能となる。本発明による組成物は、良好な安定性と、有利なことには、広い活性スペクトルとを有している。
【0041】
本発明による活性化合物混合物またはそれらを含む組成物により保護することが可能な木材、材木製品および木材/プラスチック複合材料の例としては以下のものが挙げられる:建築用材木、木材の梁、鉄道の枕木、橋の構成要素、桟橋、木材製の車両、箱、パレット、コンテナー、電話線用電柱、木材型桟、木材製の窓およびドア、積層木材、中密度ファイバーボード(MDF)、チップボード、配向ストランドボード(OSB)、ウェーハボード、積層ベニヤ材(LVL)、またはごく一般的な家屋の建築またはビル造作、さらには木材/プラスチック複合材料において使用される材木製品。
【0042】
それらの活性化合物は、個別に適用してもよく、あるいは、それらの配合物の形態、またはそれから調製される使用形態、たとえば、すぐ使用することが可能な溶液、懸濁液、ペースト、可用性粉体などのような仕上がり混合物として適用してもよい。その適用は、個々の活性化合物もしくは仕上がり混合物を用いるか、または配合物もしくはそれから調製される使用形態を用いて工業材料を処理することによる、通常用いられる方法で実施される。保護するべき材料が木材、材木製品または木材/プラスチック複合材料である場合には、それを適用するには、通常用いられる方法、たとえば、スプレー法、塗装法、浸漬法、工業的含浸プロセス、たとえば真空、二重真空(double vacuum)もしくは加圧プロセスによるか、あるいは、にかわに添加するか、あるいは、コンパウンダーまたはミキサーを用いて添加するか、あるいは、マスターバッチを利用して添加する。
【0043】
工業的含浸プロセス、たとえば真空、二重真空または加圧プロセスによれば、特に効果的な木材保護が達成される。
【0044】
本発明はさらに、木材および材木製品を保護するための方法を提供するが、この場合、その木材または材木製品を、相乗作用的有効量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノールならびに少なくとも1種の上述の殺虫剤、ならびに少なくとも1種の希釈剤または溶媒、必要に応じてさらなる助剤および添加剤、およびさらに、必要に応じて、少なくとも1種の上述のさらなる活性化合物を用いて含浸させるが、それには、塗装法、スプレー法、真空法、二重真空法、加圧法、または浸漬プロセスが使用される。この場合、活性化合物のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノールならびに少なくとも1種の上述の殺虫剤は、個別に用いてもよく、あるいは仕上がり混合物として用いてもよい。
【実施例】
【0045】
生物学的実施例
次いで、クル(Kull)らにより記述された方法を使用して相乗効果を求めた(F.C.クル(F.C.Kull)、P.C.アイスマン(P.C.Eismann)、H.D.シルベストロビッツ(H.D.Sylvestrowicz)、R.L.マイヤー(R.L.Mayer)、アプライド・マイクロバイオロジー(Applied Microbiology)、9、538〜541、1961)。この場合、次式の関係を適用する:
QA/Qa+QB/Qb=SI
Qa=MICに相当する物質Aの濃度
Qb=MICに相当する物質Bの濃度
QA=微生物の生育を抑制するA/Bの濃度中の物質Aの濃度
QB=微生物の生育を抑制するA/Bの濃度中の物質Bの濃度
SI=相乗作用指数
SI=1:加成性を意味する。
SI>1:拮抗性を意味する。
SI<1:相乗性を意味する。
【0046】
実施例1
各種の濃度のクロルフェナピル(A)、トリアジメホン(B)および上述のそれらの2種の活性化合物の混合物について、木材破壊性担子菌のグロエオフィルム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)に対する試験を行った。木材破壊性微生物のコロニーから菌糸を採取し、菌抽出物とペプトンを含む栄養寒天上、26℃でインキュベートした。次いで、活性化合物を添加した場合と無添加の場合とについて、その菌糸の水平方向の生育を比較した。記載した最小発育阻止濃度は、連続して水平方向の生育が完全に抑制される、最低の活性化合物濃度である。
【0047】
【表1】

【0048】
得られた指数データから、トリアジメホンとクロルフェナピルとの本発明による組合せが、広い範囲にわたって顕著な相乗作用を有していることが判る。
【0049】
実施例2
各種の濃度のペルメトリン(A)、トリアジメホン(B)および上述のそれらの2種の活性化合物の混合物について、木材破壊性担子菌のレンチヌス・チグリヌス(Lentinus tigrinus)に対する試験を行った。木材破壊性微生物のコロニーから菌糸を採取し、菌抽出物とペプトンを含む栄養寒天上、26℃でインキュベートした。次いで、活性化合物を添加した場合と無添加の場合とについて、その菌糸の水平方向の生育を比較した。記載した最小発育阻止濃度は、連続して水平方向の生育が完全に抑制される、最低の活性化合物濃度である。
【0050】
【表2】

【0051】
得られた指数データから、ペルメトリンとトリアジメホンとの本発明による組合せが、広い範囲にわたって顕著な相乗作用を有していることが判る。
【0052】
実施例3
各種の濃度のチアクロプリド(A)、トリアジメホン(B)および上述のそれらの2種の活性化合物の混合物について、木材破壊性担子菌のポリア・プラセンタ(Poria placenta)に対する試験を行った。木材破壊性微生物のコロニーから菌糸を採取し、菌抽出物とペプトンを含む栄養寒天上、26℃でインキュベートした。次いで、活性化合物を添加した場合と無添加の場合とについて、その菌糸の水平方向の生育を比較した。記載した最小発育阻止濃度は、連続して水平方向の生育が完全に抑制される、最低の活性化合物濃度である。
【0053】
【表3】

【0054】
得られた指数データから、チアクロプリドとトリアジメホンとの組合せが、広い範囲にわたって顕著な相乗作用を有していることが判る。
【0055】
配合実施例
実施例1(工業用グレード濃縮物)
10%のトリアジメホン、0.5%のペルメトリン、24.5%のテクサノール(Texanol)、15%のエトキシル化ヒマシ油、15%のリジノール酸ナトリウム/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム配合物、35%のジメチル脂肪酸アミド
【0056】
実施例2(工業用グレード濃縮物)
15%のトリアジメホン、0.5%のクロルフェナピル、22.5%のテクサノール(Texanol)、13%のリジノール酸ナトリウム/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム配合物、14%の脂肪酸ポリエチレングリコールエーテルエステル、35%のジメチル脂肪酸アミド
【0057】
実施例3(工業用グレード濃縮物)
7.5%のトリアジメノール、0.25%のビフェントリン、16.25%のリジノール酸ナトリウム/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム配合物、27%のエトキシル化ヒマシ油、49%のテクサノール(Texanol)
【0058】
実施例4(乳化可能な濃縮物)
5.0%のトリアジメホン、0.1%のチアクロプリド、2.9%のリジノール酸ナトリウム/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム配合物、27%の脂肪酸ポリエチレングリコールエーテルエステル、65%のテクサノール(Texanol)
【0059】
実施例5(含浸のための組成物)
0.3%のトリアジメノール、0.01%のデルタメトリン、15%のワーリーゾル(Worleesol)31A(バインダー濃縮物)、0.8%のアディトール(Additol)VXW4940、3.0%のエトキシル化ヒマシ油、3.0%のテクサノール(Texanol)、77.89%の水
【0060】
実施例6(含浸のための組成物)
0.4%のトリアジメホン、0.01%のシフルトリン、4.0%のアルキド樹脂、4.0%のダウアノール(Dowanol)DPM、91.59%のホワイトスピリット
【0061】
実施例7(プライマー)
0.2%のトリアジメホン、0.2%のテブコナゾール、0.4%のトリルフルアニド、0.05%のシペルメトリン、6%のダウアノール(Dowanol)DPM、10%のアルキド樹脂、83.2%のホワイトスピリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相乗作用的に有効な量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノールならびに少なくとも1種の殺虫活性化合物を含む、混合物。
【請求項2】
前記殺虫活性化合物が、リン酸エステル、カルバメート、尿素、ピレスロイド、ピロール、フェニルピラゾール、ジフェニルエーテル、ジアシルヒドラジン、およびニトロメチレンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記殺虫活性化合物が、アセタミプリド、アレトリン、アルファ−シペルメトリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−[(6−ヨード−3−ピリジニル)メトキシ]−3(2H)−ピリダジノン(CAS−RN:120955−77−3)、クロルフェナピル、クロルピリホス、クロチアニジン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フェノキシカルブ、フィプロニル、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、イミダクロプリド、ニテンピラム、ペルメトリン、ピリプロキシフェン、シラフルオフェン、テブフェノジド、チアクロプリド、チアメトキサム、トラロメトリン、トリフルムロンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
前記殺虫活性化合物が、ビフェントリン、クロルフェナピル、クロルピリホス、クロチアニジン、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フィプロニル、フルフェノクスロン、イミダクロプリド、ペルメトリン、チアクロプリド、チアメトキサムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
トリアジメホンおよび/またはトリアジメノールの殺虫活性化合物に対する重量比が、1000:1から1:1までであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
殺菌剤および抗菌活性化合物の群からの少なくとも1種のさらなる活性化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
0.01〜85重量パーセントのトリアジメホンおよび/またはトリアジメノール、0.001〜15重量パーセントの少なくとも1種の殺虫活性化合物、ならびに、必要に応じて、0.01〜80重量パーセントの、殺菌剤および抗菌活性化合物の群からの少なくとも1種のさらなる殺菌活性化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
相乗作用的に有効な量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノール、および少なくとも1種の殺虫活性化合物、および少なくとも1種の希釈剤または溶媒、必要に応じてさらなる助剤および添加剤、およびさらに、必要に応じて、殺菌剤および抗菌活性化合物の群からの少なくとも1種のさらなる活性化合物を含む、殺菌性組成物。
【請求項9】
工業材料、特に木材、材木製品および木材/プラスチック複合材料を有害生物による攻撃、損傷、および/または破壊から保護するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の活性化合物混合物、または請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
木材または材木製品を、相乗作用的に有効な量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノール、および少なくとも1種の殺虫活性化合物、およびさらに少なくとも1種の希釈剤または溶媒、必要に応じてさらに助剤および添加剤、およびさらに、必要に応じて、殺菌剤および抗菌活性化合物の群からの少なくとも1種のさらなる活性化合物を用い、塗装法、スプレー法、真空法、二重真空法、加圧法、または浸漬法により含浸させることを特徴とする、木材および材木製品を保護するための方法。
【請求項11】
相乗作用的に有効な量のトリアジメホンおよび/またはトリアジメノールならびに少なくとも1種の殺虫活性化合物を含む、工業材料。

【公表番号】特表2009−507057(P2009−507057A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529509(P2008−529509)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008443
【国際公開番号】WO2007/028528
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】