説明

相同的組み換えを用いる牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクター

本発明は、(1)牛β−カゼイン遺伝子のプロモータを有し、このプロモータの前後に位置した牛β−カゼイン遺伝子のエクソン1、イントロン1およびエクソン2からなり、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同である5〜12kb長の核酸配列を有する第1領域と、(2)目的のタンパク質をコードする核酸クローニング部位と、(3)ポジティブ選別マーカー領域と、(4)牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8およびイントロン5、6、7からなり、牛β−カゼイン遺伝子核酸配列に相同である2.8〜3.5kb長の核酸配列を有する第2領域とを含み、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列の5’−3’配列において、第1領域が上流に該当し、第2領域が下流に該当することを特徴とする、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターに関する。また、前記ベクターを用いて牛β−カゼイン遺伝子に目的のタンパク質遺伝子がターゲッティングされた形質転換牛を製造する方法、および形質転換牛のミルクから目的のタンパク質を大量収得する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、相同的組み換えによる牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクター、前記ベクターで遺伝子ターゲッティングされた牛体細胞、および前記牛細胞を用いた核移植により得られた受精卵に関する。また、本発明は、前記受精欄を着床させて製造された形質転換牛のミルクから目的のタンパク質を大量収得する方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
遺伝子の存在および役割を究明するための動物遺伝学の持続的な努力は、形質転換動物の生産を可能にした。形質転換動物は、薬品や農業などの産業全般にわたって大きい経済的な利益を創出することができる。このような形質転換または遺伝子操作された動物を製造するために、マイクロインジェクション(microinjection)、ウィルス感染(viral transfection)、精子ベクター(sperm vector)、胚性幹細胞(ES)の利用、および体細胞核移植法(SNCT)などの様々な技術が開発されてきた。
【0003】
マイクロインジェクションは、DNAを受精卵の前核に挿入する方法であって(Harbers et al., Nature., 293(5833); 540-2, 1981; Brinster et al., Cell., 27;223-231, 1981; Gordon et al., Proc Natl Acad Sci USA., 77(12);7380-7384; Costantini et al., Nature., 294(5836);92-94)、現在まで、形質転換動物を生産するために広く用いられてきた(Hammer et al., Nature., 315(6021);680-683, 1985; van Berkel et al., Nat Biotechnol., 20(5);484-487, 2002; Damak et al., Biotechnology(NY), 14(2);185-186, 1996)。ところが、マイクロインジェクションによってDNAが挿入された受精卵からの形質転換産子の生産効率は2〜3%と非常に低い(Clark et al., Transgenic Res., 9;263-275, 2000)。よって、マイクロインジェクションによる形質転換動物の生産は、大きな労働力を要し、多くの動物および精巧な付帯私設を要するので、高い費用がかかる(Brink et al., Theriogenology, 53;139-148, 2000)。しかも、マイクロインジェクションは、発現させようとする外来遺伝子の挿入位置と数を決定することができないという短所もある。このため、無作為的な挿入により、形質転換動物における外来タンパク質は、発現が調節されないので不規則的に発現され、その量も少量である。その上、外来遺伝子の無作為的な発現は、胚の発達に致命的な問題を引き起こすと報告された(Wei et al., Annu Rev Pharmacol Toxicol., 37;119-141, 1997)。
【0004】
レトロウィルス媒介方法も、動物の遺伝子操作のために広く用いられている(Soriano et al., Genes Dev., 1(4);366-375, 1987; Hirata et al., Cloning Stem Cells., 6(1);31-36, 2004)。レトロウィルス媒介方法において、挿入しようとする遺伝子は、ウィルスベクターを介して動物の遺伝子に導入される。この方法は、マイクロインジェクションよりさらに効率的ではあるが、依然として外来遺伝子の無作為的な挿入とモザイク現象(mosaicism)が問題視される(Piedrahita et al., Theriogenology, 53(1);105-116, 2000)。しかも、挿入しようとする遺伝子の最大サイズが7kbに制限されるうえ、ウィルスによって発現されるタンパク質が問題になることもある(Wei et al., Annu Rev Pharmacol Toxicol., 37;119-141, 1997; Yanez et al., Gene Ther., 5(2);149-159, 1998)。
【0005】
かかる問題点を克服して、特定の遺伝子を除去または挿入することが可能な遺伝子ターゲッティング技術が開発された。遺伝子ターゲッティング技術は、マウス胚性幹細胞を用いた遺伝子機能研究で最初に使用された。マウス胚性幹細胞は、胚芽への所定の遺伝子操作に使用される。マウス胚性幹細胞に遺伝子ターゲッティング法を用いることにより、多数の特定の遺伝子ターゲッティングされたマウスが生産された(Brandon et al., Curr Biol., 5(6);625-634, 1995; Capecchi et al., Science, 244(4910);1288-1292, 1989; Thompson et al., Cell, 56(2);313-321, 1989; Hamanaka et al., Hum Mol Genet., 9(3);353-361, 2000; Thomas et al, Cell, 51(3);503-512, 1987; te Riele et al., Proc Natl Acad Sci USA, 89(11);5182-5132, 1992; Mansour et al., Nature, 336(6197), 348-352, 1988; Luo et al., Oncogene, 20(3);320-328, 2001)。遺伝子ターゲッティング法が他の哺乳類、特に家畜に適用されるとき、治療タンパク質および疾病モデル動物の大量生産といった大きい生物医学的な利益をもたらす。
【0006】
今まで、組み換え治療タンパク質は、酵素、バクテリア、動物細胞などの細胞を用いた細胞培養システムによって生産されてきた。ところが、細胞培養システムは、特性上、大量生産が不可能なので、非常に高価である。また、幾つかのタンパク質は、適切な翻訳修飾(posttranslational modification)、例えばグリコシル化(glycosylation)、γ−カルボキシル化(γ-carboxylation)、ヒドロキシル化(hydroxylation)などを導入するために付加的な実験が要求される(Houdebine et al., Transgenic Res., 9(4-5);305-320, 2000; Lubo et al., Transgenic Res., 9(4-5);301-304, 2000)。
【0007】
しかしながら、形質転換動物から治療タンパク質などを生産する動物生体反応器(animal bioreactor)システムは、非常に経済的で効率の良い発現システムとして評価される。特に、形質転換牛からの組み換え治療タンパク質の大量生産は、細胞培養システムと比較して非常に効率的である(van Berkel et al., Nat Biotechnol., 20(5);484-487, 2002)。その中でも、動物のミルクから生産される組み換えタンパク質は、ヒトタンパク質とほぼ同様に、翻訳後修飾されるものと知られている(Edmunds et al., Blood, 91(12);4561-4571, 1998; Velander et al., Proc Natl Acad Sci USA., 89(24);12003-12007, 1992; van Berkel et al, Nat Biotechnol., 20(5);484-487, 2002)。
【0008】
牛のミルクは、約88%の水分、3.3%のタンパク質を含有し、残部が炭水化物と脂質からなっている。カゼインは、乳タンパク質の80%を占めるが、アルファS1、アルファS2、ベータ、およびカッパカゼインがあり、特にβ−カゼインは、牛のミルクにおいて10mg/mLの濃度で発現される最も豊かな乳タンパク質である(Brophy et al., Nat Biotechnology., 21(2);157-162, 2003)。
【0009】
体細胞核移植法(SCNT)が形質転換動物の製造においてマイクロインジェクションよりさらに効率的であるが、これは、形質転換された体細胞から由来した複製動物の殆どが形質転換動物であるからである(Brink et al., Theriogenology, 53;139-148, 2000)。また、体細胞核移植法を用いる場合、生産しようとする動物の性別を決定することができ、遺伝的に同じ動物の生産が可能であるという利点がある(Lubo et al., Transgenic Res., 9(4-5);301-304, 2000; van Berkel et al., Nat Biotechnol., 20(5);484- 487, 2002)。
【0010】
最近まで、遺伝子ターゲッティングされた動物を生産するために、胚性幹細胞と遺伝子ターゲッティングベクターが必須的な要素として考えられてきた。豚と牛において胚性幹細胞とほぼ同様の細胞株が報告されたにも拘わらず、家畜からの胚性幹細胞の使用は制限される(Doetschman et al., Dev Biol., 127(1);224-227, 1988; Stice et al., Biol Reprod., 54(1);100-110, 1996; Sukoyan et al., Mol Reprod Dev., 36(2);148-158, 1993; Iannaccone et al., Dev Biol., 163(1);288-292, 1994; Pain et al., Development, 122(8);2339-2348, 1996; Thomson et al., Proc Natl Acad Sci USA., 92(17);7844-7848, 1995; Wheeler et al., Reprod Fertil Dev., 6(5);563-568, 1994)。
【0011】
その代わりに、核供与細胞として一般体細胞が遺伝子ターゲッティングに使用できるという可能性が提示されることにより、形質転換牛の生産のための実質的かつ効率的な方法として提案された(Brophy et al., Nat Biotechnol., 21(2);157-162, 2003; Cibelli et al., Science, 280(5367);1256-1258, 1998; Campbell et al., Nature, 380(6569);64-66, 1996; Wilmut et al., Experientia, 47(9);905-912, 1997; Denning et al., Cloning stem cells, 3(4);221-231, 2001)。
【0012】
体細胞核移植法を利用しながら、乳タンパク質遺伝子のプロモータ部分は、形質転換大動物のミルクにおける組み換えタンパク質の発現を誘導するために使用されてきた(Schnieke et al. Science, 278(5346);2130-2133, 1997; Baguisi et al., Nat Biotechnol., 17(5);456-461, 1999; Brophy et al., Nat Biotechnol., 21(2);157-162, 2003)。ところが、外来遺伝子の無作為な挿入により引き起こされる組み換えタンパク質の少量発現や正規場所外の発現といった問題点が解決されない限り、体細胞核移植法による形質転換家畜の生産は依然として現実性がない。外来遺伝子の正規場所外の発現は、胚の発達に致命的な障害を起こし、胚芽発達の後期と出生後の初期に大部分が発達する神経システムにも非常に致命的である(Gao et al., Neurochem Res., 24(9);1181-1188, 1999)。このような副作用を無くすために、外来遺伝子を授乳期中に乳腺組織のみで特異的に発現させる新規方法が開発された(Houdebine et al., Transgenic Res., 9(4-5);305-320, 2000)。相同的組み換え(homologous recombination)によってゲノム遺伝子の特定の部位を操作するものと知られている遺伝子ターゲッティング方法は、組み換えタンパク質の組織特異的な発現のための最適の手段である(Muller et al., Mech Dev., 82(1-2);3-21, 1999; Clark et al., J Mammary Gland Biol Neoplasia., 3(3);337-350, 1998)。
【0013】
外来遺伝子がターゲッティングされた複製羊の初生産は、治療タンパク質遺伝子がターゲッティングされた大動物の生産の可能性を開いた(McCreath et al., Nature, 405(6790);1066-1069, 2000)。線維芽細胞で多く発現されるCOL1A1遺伝子ターゲッティングのためのCOLT−2ターゲッティングベクターが製作された。このベクターは、遺伝子ターゲッティングを誘導するために、プロモータ−トラップエンリッチメント(promoter-trap enrichment)を利用した。外来遺伝子AATC2は、羊β−ラクトグロブリン発現ベクター内にヒトα1−抗トリプシン(AAT)を持っており、独立的な転写単位を有し、乳腺における発現を誘導するために製作された。遺伝子ターゲッティングされた羊から分泌されるAATの量は、無作為的に外来遺伝子が挿入された羊と比較して約37倍も多かった(McCreath et al., Nature, 405(6790);1066-1069, 2000)。したがって、遺伝子ターゲッティング方法は、治療タンパク質の大量生産のための最上の手段として考えられている。ところが、プロモータ−トラップ(promoter-trap)を利用した遺伝子ターゲッティングベクターの使用は、遺伝子の導入される体細胞で活発に転写される遺伝子に制限される。一般に、活発に転写される遺伝子は、全く転写が起こらない遺伝子と比較して、相同的組み換えがより頻繁に起こるものと知られている(Kuroiwa et al., Nat Genet., 36(7);775-780, 2004)。
【0014】
乳腺組織は、乳タンパク質が組織特異的に過量発現される組織である。したがって、このような乳タンパク質をコードする遺伝子の操作によって、胚の発達または出生後の発達に障害を起こすことなく、外来タンパク質を大量発現させることができる。その中でも、最も高い濃度で発現されるβ−カゼインが好ましい。牛のβ−カゼイン遺伝子は、全体ゲノムのDNA上に1つ存在し、乳腺組織以外の一般体細胞では全く発現されない遺伝子である。体細胞で全く発現されないゲノムβ−カゼイン遺伝子に外来の目的タンパク質をターゲティングするために、プロモータ−トラップを用いる遺伝子ターゲッティングベクターが利用できない。
【0015】
そこで、本発明者らは、牛β−カゼイン遺伝子特異的なターゲッティングベクターカセットを製造し、前記ベクターが牛体細胞の牛β−カゼイン遺伝子に正確にターゲッティングされて遺伝子ターゲッティング効率が非常に高いことを見い出し、牛におけるβ−カゼイン遺伝子特異的にターゲッティングされるベクターシステム、およびこれを用いて目的のタンパク質を大量生産する形質転換牛を製造するシステムを完成した。
【0016】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、(1)牛β−カゼイン遺伝子のプロモータを有し、このプロモータの前後に位置した牛ベータ−カゼイン遺伝子のエクソン1、イントロン1およびエクソン2からなり、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同である5〜12kb長の核酸配列を有する第1領域と、(2)目的のタンパク質をコードする核酸クローニング部位と、(3)ポジティブ選別マーカー領域と、(4)牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8およびイントロン5、6、7からなり、牛β−カゼイン遺伝子核酸配列に相同である2.8〜3.5kb長の核酸配列を有する第2領域とを含み、β−カゼイン遺伝子の核酸配列の5’−3’配列において、第1領域が上流(upstream)に該当し、第2領域が下流(downstream)に該当することを特徴とする、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターを提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、前記ベクターで遺伝子ターゲッティングされた牛の体細胞を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、前記体細胞を用いた核移植により得られた受精卵を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、(1)牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターで牛の体細胞を形質転換させる段階と、(2)牛の体細胞を培養して相同的組み換えを誘導する段階と、(3)相同的組み換えによって、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を選別する段階とを含む、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を製造する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、(1)前記牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターで牛の体細胞を形質転換させる段階と、(2)牛の体細胞を培養して相同的組み換えを誘導する段階と、(3)相同的組み換えによって、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を選別する段階と、(4)牛の卵子の核を除去し、遺伝子ターゲッティングされた細胞を導入して、体細胞核移植による受精卵を製造する段階と、(5)前記受精卵を着床させる段階とを含む、形質転換牛を製造する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、前記方法によって製造された形質転換牛のミルクから目的のタンパク質を大量収得する方法を提供することにある。
【0022】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、バイオ医薬品として作用する様々な目的のタンパク質を牛のミルクから大量生産し得るようにするために、遺伝子ターゲッティングされた形質転換牛の生産に用いられる牛β−カゼインターゲッティングベクターを提供する。山羊と羊の年間乳量がそれぞれ約300L、約200Lであるが、これに対し、牛は年間6,300L以上のミルクを生産するため、生体反応器として最適の動物である。ところが、今まで、牛の乳タンパク質遺伝子に目的の遺伝子をターゲッティングしようとする試みがなかった。そこで、本発明者らは、牛の乳タンパク質遺伝子である牛β−カゼイン遺伝子を効率よくターゲッティングすることが可能なベクターを提供し、これを用いて目的のタンパク質を大量生産する、β−カゼイン遺伝子ターゲッティングされた形質転換牛を製造する方法を提供する。
【0023】
一様態において、本発明は、(1)牛β−カゼイン遺伝子のプロモータを有し、このプロモータの前後に位置した牛ベータ−カゼイン遺伝子のエクソン1、イントロン1およびエクソン2からなり、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同である5〜12kb長の核酸配列を有する第1領域と、(2)目的のタンパク質をコードする核酸クローニング部位と、(3)ポジティブ選別マーカー領域と、(4)牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8およびイントロン5、6、7からなり、牛β−カゼイン遺伝子核酸配列に相同である2.8〜3.5kb長の核酸配列を有する第2領域とを含み、β−カゼイン遺伝子の核酸配列の5’−3’配列において、第1領域が上流(upstream)に該当し、第2領域が下流(downstream)に該当することを特徴とする、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターに関する。
【0024】
本発明において、「遺伝子ターゲッティングベクター(gene targeting vector)」とは、ゲノムの特定の遺伝子座に対して目的の遺伝子を除去または挿入することが可能なベクターであって、相同的組み換え(homologous recombination)が起こるようにターゲッティングしようとする特定の遺伝子に相同な塩基配列を含む。本発明の遺伝子ターゲッティングベクターは、目的のタンパク質をコードする核酸配列がゲノム上のβ−カゼイン遺伝子に5’−3’配列で挿入されるβ−カゼインターゲッティングベクターである。「ベクター」と「ベクターカセット」は、同一の意味で使用されており、円形または線形である。本発明の遺伝子ターゲッティングベクターは、牛のβ−カゼイン遺伝子をターゲッティングするベクターである。
【0025】
本発明の「β−カゼインターゲッティングベクター」は、目的のタンパク質をコードする核酸クローニング部位の左右にβ−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同な配列を有する第1領域と第2領域を含む。第1領域はロングアームに該当し、第2領域はショットアームに該当する。
【0026】
本発明のβ−カゼインターゲッティングベクターの構成要素、特に第1領域と第2領域の選定は、ベクターシステムの効率を決定する重要な要素であって、本発明のベクターは、次の特徴を持つ。
【0027】
本発明の「第1領域」は、牛β−カゼイン遺伝子のプロモータを有し、このプロモータの前後に位置した牛β−カゼイン遺伝子のエクソン1、2およびイントロン1を含み、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同である5〜12kb長の核酸配列を持つ。牛β−カゼイン遺伝子プロモータは、外来タンパク質の発現を効果的に発現させるものと知られており(Kim et al., J Biochem(Tokyo)., 126(2);320-325, 1999)、これは、外来の目的タンパク質を大量生産しようとする本発明の目的に適する。より好ましくは5.5kb〜10kbの長さを持つ。
【0028】
本発明の「第2領域」は、牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8およびイントロン5、6、7からなり、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同である2.8〜3.5kb長の核酸配列を有する第2領域を含む。より好ましくは3.0〜3.2kb長の核酸配列を持つ。
【0029】
この際、β−カゼイン遺伝子の核酸配列の5’−3’配列において、第1領域が上流に該当し、第2領域が下流に該当する。
【0030】
本発明において、「相同(homologous)」とは、第1領域または第2領域とこれに相当するβ−カゼイン遺伝子の核酸配列との同一性の程度を示すもので、少なくとも90%以上同一であり、好ましくは95%以上同一である。
【0031】
本発明の「目的のタンパク質をコードする核酸クローニング部位」とは、特定の制限酵素と認知されて切断される部位であって、切断された部位に、目的のタンパク質をコードする核酸配列が簡便に挿入できる。
【0032】
前記ベクターのクローニング部位に挿入可能な医学・産業的に有用な目的タンパク質の例には、ホルモン、サイトカイン、酵素、凝固因子、輸送タンパク質、受容体、調節タンパク質、構造タンパク質、転写因子、抗原、抗体などがある。
【0033】
目的のタンパク質の具体的な例としては、トロンボポエチン、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類、インターフェロン受容体類、コロニー刺激因子類、グルカゴン様ペプチド類(GLP−1など)、Gタンパク連結型受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体類、酵素類、インターロイキン結合タンパク質類、サイトカイン結合タンパク質類、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α−1抗トリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンギオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IXおよびXIII、プラスミノゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血素板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、インシュリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状線ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インシュリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、甲状線刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウィルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および抗体断片などがあり、これらに制限されるものではない。
【0034】
本発明において、「選別マーカー(selection marker)」は、遺伝子ターゲッティングベクターで形質転換された細胞を選別するためのものであって、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現などの選択可能表現型を与えるマーカーが使用でき、ポジティブ選別マーカーとネガティブ選別マーカーがある。
【0035】
本発明のベクターは、ポジティブ選別マーカーを含む。「ポジティブ選別マーカー」は、選択剤(selective agent)が処理された環境で選択マーカーを発現する細胞のみが生存するようにしてポジティブ選択を可能にするマーカーであって、ネオマイシン(Neo)、ハイグロマイシン(Hyg)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(hisD)またはグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Gpt)などがあるが、これらに制限されるものではない。本発明では、ネオマイシンをポジティブ選別マーカーとして使用した。
【0036】
また、本発明のベクターは、ネガティブ選別マーカーをさらに含むことができる。「ネガティブ選別マーカー」は、無作為的挿入(random insertion)の行われた細胞を選別して除去するネガティブ選択を可能にするマーカーであって、単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV−tk)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt)、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素などがあるが、これらに制限されるものではない。ネガティブ選別マーカーは、第1領域の5’末端側または第2領域の3’末端側に位置する。本発明では、ジフテリア毒素をネガティブ選別マーカーとして使用した。ジフテリア毒素は、チミジンキナーゼと比較していろいろの利点がある。第一に、チミジンキナーゼはgancyclovir(GANC)処理を要求するが、これに対し、ジフテリア毒素はいずれの処理も要求しないという点で便利である。第二に、チミジンキナーゼ/gancyclovir(GANC)システムは、チミジンキナーゼ遺伝子のない細胞も死滅する可能性が高いということが既に報告されたことがある(Yoshiyasu Kaneko et al., Cancer Letters, 96;105-110, 1995)。このような点において、ネガティブ選別マーカーとしてジフテリア毒素が有利である。
【0037】
この際、ポジティブおよびネガティブ選別マーカーは、別個のプロモータ、polyAなどを持つことを特徴とする。使用されるプロモータは、例えば猿ウィルス40(SV40)、マウス乳房腫瘍ウィルス(MMTV)プロモータ、HIVの長い末端反復部(LTR)プロモータ、モロニーウィルス、シトメガロウィルス(CMV)プロモータ、エプスタインバーウィルス(EBV)プロモータ、RSウィルス(Respiratory Syncytical Virus、RSV)プロモータ、RNAポリメラーゼIIプロモータ、β−アクチンプロモータ、ヒトヘモグロビンプロモータ、ヒト筋肉クレアチンプロモータなどがあるが、これらに制限されるものではない。
【0038】
前記ベクターとゲノム上のβ−カゼイン遺伝子の相同的組み換えが起こると、ベクター上の目的のタンパク質をコードする核酸が宿主細胞のβ−カゼインゲノム遺伝子に統合(integration)され、宿主細胞のβ−カゼインプロモータによってβ−カゼインタンパク質の代わりに発現される。
【0039】
本発明の牛β−カゼインベクターは、細胞内で相同的組み換えの効率を高めるために、次の特徴を持つ。
【0040】
ゲノム上の特定の遺伝子と目的のタンパク質をコードする核酸配列が相同的組み換えによって統合される効率は、ターゲッティングベクターシステム、特に2つの組み換え配列間の同一程度と相同標的配列の長さに多く左右される(Scheerer et al., Mol Cell Biol., 14(10)6663-6673, 1994; Thomas et al., Cell, 51(3);503-512, 1987; Hasty et al., Mol Cell Biol., 11(11);5586-5591, 1991; Lu et al., Blood, 102(4);1531-1533, 2003)。本発明は、このような点を考慮し、第1領域と第2領域の相同標的部位と長さを最適化した。また、本発明のベクターは、ゲノムの牛β−カゼイン遺伝子と本発明のベクターを整列したとき、ポジティブ選別マーカー位置に該当する領域、例えばエクソン3〜4、イントロン2〜4に該当する部分がベクターに含まれないように操作して、相同的組み換えの際にゲノムとベクターの整列時の空間的な妨害を最小化した。また、第1領域が終わる部位に目的のタンパク質を挿入するMCSを置くようにして、目的のタンパク質を第1領域の任意の位置に挿入させる既存の方法に比べて遺伝的操作を便利にした。また、本発明のベクターは、相同領域が目的の遺伝子およびポジティブ選別マーカーを中心として左右にのみ存在するようにして交差地点が2つのみ生成されるようにした。これに反し、第2領域の任意の位置に目的のタンパク質を挿入させる既存の方法(SHEN Wei et al., Chinese Journal of Biotechnology, 20(3);361-365, 2004)によれば、交差地点が3つ発生するので、ターゲッティングされたクローンの選別に難しさが伴って効率も減少する。
【0041】
上述した特徴を有する本発明のベクターシステムを利用する場合、β−カゼイン遺伝子が全く発現されない牛の体細胞においても効率よく相同的組み換えが誘導され、牛ゲノム上のβ−カゼイン遺伝子と目的のタンパク質をコードする核酸を安定的に統合させた。
【0042】
本発明の具体的な様態において、β−カゼインターゲッティングベクターとして、pBCKII、pBCKIIIベクター、および前記ベクターにネガティブ選別マーカーをさらに含むpBCKIDTI、pBCKIDTIIベクターを製造した。
【0043】
pBCKIIは、pBluescriptIISK(+)プラスミド骨格の18.8kb長を有するベクターであって、牛β−カゼイン遺伝子プロモータを含む8kbとエクソン1、イントロン1およびエクソン2を有する合計10kb程度の第1領域を有する。第2領域は、3.1kb程度の長さを有し、牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8、イントロン5、6、7、8およびイントロン断片4、8を含む。また、pBCKIIはneo選別マーカー領域を持つ。pBCKIIベクターは、SacII、NotIおよびBamHIの3つの制限酵素部位を有し、この制限酵素部位に目的のタンパク質をコードする遺伝子を簡便に挿入することができる(図1)。
【0044】
pBCKIIIは、pGEM7Zf(+)プラスミド骨格の14.8kb長さを有するベクターであって、牛β−カゼイン遺伝子プロモータを含む4kb、エクソン1、イントロン1およびエクソン2を有する合計6kb程度の第1領域を持つ。第2領域は、3.1kb程度の長さを有し、牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8とイントロン5、6、7とイントロン断片4、8を含む。また、pBCKIIは、neo選別マーカー領域を持つ。pBCKIIベクターは、SacII、NotIおよびBamHIの3つの制限酵素部位を有し、この制限酵素部位に、目的のタンパク質をコードする遺伝子を簡便に挿入することができる(図2)。
【0045】
pBCKIDTI、pBCKIDTIIベクターは、それぞれpBCKII、pBCKIIIベクターのXhoIおよびSalI部位に1.3bkb DT遺伝子を挿入して製作した。
【0046】
前記ベクター製作は、当該技術分野でよく知られている遺伝子組み換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNAの切断および連結は、当該技術分野で一般に知られている酵素などを使用する。
【0047】
前記製作したベクターにヒトトロンボポエチン(TPO)遺伝子を挿入した(図17、図18、図19)。0.3kb牛成長ホルモン(bGH)の付いた1kbヒトトロンボポエチン(TPO)遺伝子cDNAを製作した(Sohn et al., DNA Cell Biol., 18(11);845-852, 1999)。牛成長ホルモンは、mRNAを安定的に発現させるために挿入された。ヒトトロンボポエチンは、血素板の生産に関与する巨核細胞(megakaryocyte)の増殖と分化のような巨核細胞発生の重要な調節因子中の一つである。血素板生産の主要な調節因子として、巨核細胞の分化と成熟を促進させる中枢的な役割をする。過度な化学療法と骨髄利殖手術を経た患者は、激しい好中球減少症(neutropenia)と血素板減少症を示す(Lok et al., Stem Cells, 12(6);586-598, 1994; Kaushansky et al., Stem Cells, 15(1);97-102, 102-103, 1997; Kaushansky et al., Ann Intern Med., 126(9);731-733, 1997; Kaushansky et al., Leukemia, 11(3);426-427, 1997; Kaushansky et al., Annu Rev Med., 48;1-11, 1997)。実験動物モデルにおいて、組み換えトロンボポエチン(TPO)タンパク質は、血素板減少症を軽減させるものと確認され、治療の目的として使用できる明確な可能性を示した。トロンボポエチン(TPO)遺伝子は、phase1臨床実験で安定性と効能が検定された(Fanucchi et al., N Engl J Med., 336(6);404-409, 1997; Basser et al., Lancet., 348(9037);1279-1281, 1996; O'Malley et al., Blood, 88(9);3288-3298, 1996)。また、トロンボポエチン遺伝子は、抗癌化学療法を受けている骨髄抑制(myelosuppressed)患者の血素板生産能力を回復させるために使用できるということが明らかになった。
【0048】
その中でも、pBCTPOKIDTIIを大腸菌(Escherichia coli)に導入し、2005年10月17日にKCTC(Korea collection for Type Cultures)(韓国大田市儒城區魚隠洞52番地の韓国生命工学研究院)に寄託番号第KCTC 10864BP号で寄託した。
【0049】
前記ベクターのうち、第1領域が約6kb長さを有するpBCKIIIがpBCKIIベクターよりゲノムのβ−カゼイン遺伝子にターゲッティングされる効率が高かった。そして、ネガティブ選別マーカーを有するpBCKIDTIIベクターがpBCKIIIより約4倍〜5倍程度増加したターゲッティング効率を持つ。pBCTPOKIDTIIベクターは、牛胚芽線維芽細胞(bovine fetal fibroblasts)を36.6%、牛耳組織線維芽細胞(bovine ear skin fibroblasts)を41.4%の効率で遺伝子ターゲッティングさせたが、これは、既存のGoat fetal fibroblasts(SHEN Wei et al., Chinese Journal of Biotechnology, 20(3);361-365, 2004)における12.7%遺伝子ターゲッティング効率より約3.3倍(41.4%/12.7%)程度優れた。これにより、本発明のベクターシステムは、牛体細胞のβ−カゼイン遺伝子に目的の遺伝子を高効率で打ち込むことが可能な高効率のベクターであることを証明した。
【0050】
別の様態において、本発明は、前記ベクターで遺伝子ターゲッティングされた牛の体細胞に関する。
【0051】
本発明のベクターでターゲッティングされる細胞は、牛から由来する1次、2次または永久細胞である。好ましくは、前記細胞は、牛、羊、山羊、豚、馬、ウサギ、犬、猿などから由来するが、これらに制限されるものではない。細胞を分離または活性化し得る有用な組織としては、肝、腎臓、脾臓、骨、骨髄、胸腺、心臓、筋肉、肺臓、脳、精素、卵巣、膵島(islet)、内臓、骨髄、耳、皮膚、胆汁組織、前立腺、膀胱、胚芽(embryo)、免疫系および造血系などがあるが、これらに制限されるものではない。細胞タイプは、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、胚芽細胞、肝細胞、および濾胞細胞などがあるが、これらに制限されるものではない。好ましくは、線維亜細胞または耳組織細胞である。本発明の具体的な実施例によって、胚芽線維芽細胞より耳組織線維芽細胞においてベクターの遺伝子ターゲッティング効率がさらに高かった。
【0052】
前記細胞内に本発明のベクターを導入する方法は、核酸を細胞内に導入するいずれの方法も含み、当該分野で公知になっているように、適切な標準技術を選択して行うことができる。エレクトロポレーション(electroporation)、リン酸カルシウム共沈(calcium phosphate co-precipitaion)、レトロウィルス感染(retroviral infection)、マイクロインジェクション(microinjection)、DEAE−デキストラン(DEAE-dextran)、陽イオンリポソーム(cationic liposome)法などがあり、これらに制限されるものではない。この際、円形のベクターを適切な制限酵素で切断し、線形のベクターの形態またはプラスミドを除去した線形のベクターの形態で導入することが好ましい。
【0053】
本発明の具体的な実施では、牛胚芽線維芽細胞(bET)と牛耳組織線維芽細胞(bESF)に、ヒトトロンボポエチン(hTPO)遺伝子が挿入されたβ−カゼインターゲッティングベクターを、リポフェクタミンTM2000試薬(Invitrogen)(登録商標)を使用する陽イオンリポソーム法を用いてターゲッティングした。陽イオンリポソームは、(−)電荷を有するDNAと効率よく結合して細胞膜に結合することによりDNAの中性化を成し、結局DNAは細胞内に導入される。そして、ベクターがゲノムのβ−カゼイン遺伝子に正確にターゲッティングされたか否かは、抗生剤に抵抗性を持って生き残った細胞のゲノムDNAをlong range PCRとサザンブロットによって確認した。このような過程により、牛の体細胞から、ヒトトロンボポエチン(hTPO)遺伝子がゲノムのβ−カゼイン遺伝子に正確にターゲッティングされた細胞株を製造することができた。その中でも、牛耳組織線維芽細胞にpBCTPOKIIIベクターがターゲッティングされた81番の細胞株をBCTPOKIbESF81と命名し、KCTC(韓国大田市儒城區魚隠洞52番地)に2004年11月10日付で第KCTC 10720BP号で寄託した。
【0054】
別の様態において、本発明は、牛体細胞を用いた核移植により得られた受精卵に関する。
【0055】
本発明において、「核移植(nuclear transfer)」とは、細胞の核を、既に核を除去した卵子に入れて移植させることを意味し、このように核移植された受精卵を着床させて生まれた個体は、核供与細胞の遺伝的物質がレシピエント細胞質にそのまま伝達されたため、遺伝的に全く同一の複製個体である。
【0056】
別の様態において、本発明は、(1)牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターで牛の体細胞を形質転換させる段階と、(2)牛の体細胞を培養して相同的組み換えを誘導する段階と、(3)相同的組み換えによって、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を選別する段階とを含む、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を製造する方法に関する。
【0057】
本発明の牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクター、具体的にpBCKII、pBCKIII、pBCKIDTIおよびpBCKIDTIIは、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングに最適化されたベクターなので、前記ベクターを用いる場合、β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞製造効率を高めることができる。
【0058】
また、β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を製造する際に効率を増加させるために、(1)段階で円形のベクターの形で形質転換させるのではなく、制限酵素でベクターを切断して線形のベクターの形で形質転換させ、或いは本発明のベクター骨格からプラスミド骨格を除去した線形のベクターの形で形質転換させた。
【0059】
別の様態において、本発明は、(1)前記牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターで牛の体細胞を形質転換させる段階と、(2)前記牛の体細胞を培養して相同的組み換えを誘導する段階と、(3)相同的組み換えによって、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を選別する段階と、(4)牛卵子の核を除去し、遺伝子ターゲッティングされた細胞を導入して、体細胞核移植による受精卵を製造する段階と、(5)受精卵を着床させる段階とを含む、形質転換牛を製造する方法に関する。
【0060】
上述したように、本発明のベクターは、牛のβ−カゼイン遺伝子へのターゲッティングが最適化されたベクターなので、形質転換牛の製造に適する。
【0061】
卵子の遺伝物質を除去する方法には、物理的な方法、化学的な方法、サイトカラシン(Cytochalasin)Bを使用した遠心分離法などがある(Tatham et al., Hum Reprod., 11(7);1499-1503, 1996)。本発明では、ガラスマイクロピペット(glass micropipette)を用いた物理的な核除去方法を使用した。
【0062】
遺伝子ターゲッティングされた体細胞は、細胞膜融合法、細胞質内微細注入法などを用いて、核の除去された卵子内に導入される。細胞膜融合法は、簡単でありながら、大規模受精卵の生産に適するという利点があり、細胞質内微細注入法は、核と卵子内物質との接触を極大化させるという利点がある。
【0063】
体細胞と核除去卵子との融合は、電気刺激によって細胞膜の粘度を変化させて融合させる方法によって組み換える。この際、微細電流・電圧を自由に調整することが可能な電気融合器を利用すれば便利である。
【0064】
別の様態において、本発明は、(1)前記本発明に係るベクターで動物の体細胞を形質転換させる段階と、(2)相同的組み換えによって、目的のタンパク質がターゲッティングされた細胞を選別する段階と、(3)遺伝子ターゲッティングされた細胞を核の除去された動物の胚芽に導入する段階と、(4)形質転換動物を製造するために、ミルク生産動物に受精卵を着床させる段階と、(5)形質転換動物からミルクを生産する段階を含む、ミルクから目的のタンパク質を生産する方法に関する。
【0065】
核移植された受精卵は、活性化させて移植可能な段階まで発生させた後、代理母に着床される。
【0066】
複製受精卵の活性化は、受精卵が分裂し得るように成熟過程で一時的に停止された細胞周期をさらに稼動させることを意味する。複製受精卵の活性化のためには、細胞周期停止要素、例えばMPF、MAPキナーゼなどの細胞信号伝達物質の活性を低下させなければならないが、このためには、複製受精卵内のカルシウムイオンの増加が必須的である。大きくは、電気的刺激によって細胞膜透過度を変形して細胞外からカルシウム流入を急激に増加させる方法と、イノマイシン(ionomycin)および6−DMAPなどの化学的物質を用いて細胞周期停止要素の活性を直接阻害させる方法などがあるが、これらの方法は、単独でまたは組み合わせて使用する。本発明では、イノマイシンと6−DMAPを処理して卵子を活性化させ、胚盤胞発達段階まで体外培養した。
【0067】
その後、生まれた個体は、授乳期にβ−カゼインの代わりに目的のタンパク質を発現する形質転換牛である。すなわち、前記β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターが、ターゲッティングされた細胞を用いて核移植された受精卵を着床させて形質動物を作る場合、副作用、例えば動物の発達障害なしに目的のタンパク質を形質転換牛のミルクから大量で収得することができる。
【0068】
別の様態において、本発明は、前記方法によって製造された形質転換牛のミルクから目的のタンパク質を収得する方法に関する。
【0069】
形質転換牛のミルクで過多発現される目的のタンパク質は、通常の方式で精製できる。塩析(例えば、硫酸アンモニウム沈澱、リン酸ナトリウム沈澱など)、溶媒沈澱(例えば、アセトン、エタノールなどを用いたタンパク質分画沈殿)、透析、ゲル濾過、イオン交換、逆相カラムクロマトグラフィなどのカラムクロマトグラフィおよび限外濾過などの技法を単独でまたは組み合わせて適用させ、本発明の目的タンパク質を得ることができる(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1982); Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); Deutscher, M., Guide to Protein Purification Methods Enzymology, vol. 182. Academic Press. Inc., San Diego, CA(1990))。
【0070】
以下、下記実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
〔実施例1:牛β−カゼイン遺伝子ターゲティングベクターの製作〕
〔1−1 pBCKIIとpBCKIIIベクターの製作〕
遺伝子ターゲッティングベクターの製作のために、ミルクにおいて外来治療タンパク質遺伝子の発現を誘導すると知られている牛β−カゼインプロモータ部位を含んでいる牛β−カゼイン遺伝子を利用した。
【0072】
pBC10ベクター(図9)は、pBluescriptIISK(+)プラスミド(Stratagene)ベクター内に牛β−カゼイン遺伝子5’側塩基配列8kbプロモータ、エクソン1、2kbイントロン1およびエクソン2の5’UTRを含む(Sohn et al., J Biotechnol., 103(1);11-19, 2003)。pBC10ベクターのβ−カゼイン遺伝子部位は、本発明のベクター、すなわちpBCKIIおよびpBCIKIIIのロングアーム(第1領域に該当)として使用された。図10に示すように、10kbβ−カゼイン遺伝子をSacIとSacII制限酵素で切断し、これをpBCKIIベクターの第1領域として使用した(図10と図14)。AatIIとSacII制限酵素で切断された牛β−カゼイン遺伝子の4kbプロモータ、解読されないエクソン1、2およびイントロン1を含む6kbβ−カゼインプロモータ部位は、pBCKIIIのロングアーム(第1領域に該当)として使用した(図11および図14)。
【0073】
pBC3.1ベクター(図12)は、本発明の第2領域に該当する部位を含む。牛ゲノムDNAからエクソン5、6、7、8とイントロン5、6、7とイントロン切片4、8を含んでいる牛β−カゼイン遺伝子塩基配列4676〜7898の3.2kb断片をPCRによって増幅した。PCR反応のために使用されたプライマーの塩基配列は、次の通りである。
配列番号1順方向プライマー:5’−attcagtcgagtggaacataaactttcagcc−3’
配列番号2逆方向プライマー:5’−catatgtcgactgtgagattgtattttgact−3’
太字(配列番号1によって示される配列においては、5’末端から数えて第7および8番目のtおよびcが「太字」に相当し、配列番号2によって示される配列においては、5’末端から数えて第9および11番目のgおよびcが「太字」に相当する)は、XhoI、SalI制限酵素部位を作るために変わった塩基を示す。
【0074】
PCR産物(図12)は、XhoIとSalI制限酵素によって切断した後、pGEM−T(Promega)ベクターのSalI部位に連結した。pBC10ベクターに挿入するための適切な制限酵素部位を作るために、pGEM−Tベクター内にある3.2kb牛β−カゼイン遺伝子断片をHincIIとSalI制限酵素を用いて切断した。そのβ−カゼイン遺伝子3.1kb断片は、pBluescriptIISK(+)のSalI部位に連結し、その結果、BC3.1ベクターを完成した。
【0075】
選別マーカーとして用いられるneo遺伝子断片をpBC10ベクターに挿入した。SV40ori、初期プロモータ、SV40初期スプライシング部位およびポリアデニル化部位を含むneo遺伝子断片を得るために、pMAMneo(CLONTHECH)ベクターを使用した。pMAMneoをBamHI制限酵素で切断して得た2.7kb DNA断片をpBluescriptIISK(+)のBamHI部位に連結し、連結されたベクター内にある2kbneo遺伝子断片をBglIIとBamHI制限酵素で切断した後、pSP73(Promega)ベクターのBglII部位に連結した。最後に、pSP73内にある2kbneo遺伝子断片は、BlgIIとEcoRV制限酵素で切断した後、0.7kb pMAMneo遺伝子断片を持っているpBluescriptIISK(+)のBglIIとEcoRV部位にさらに連結した。このようなDNA切断および連結過程は、pBC10ベクター内に2.7kbneo遺伝子断片を挿入するために要求された(図14)。
【0076】
図14に示すように、pBCKII、pBCKIIIベクターカセットは、pBC10ベクター内にpneo2.7とpBC3.1の遺伝子断片を組み込むことにより完成した。pBluescriptIISK(+)内にあるneo遺伝子をBamHI、EcoRV制限酵素で切った後、pBC10ベクターのBamHI、EcoRV制限酵素部位に連結した。pBC3.1ベクターは、EcoRV、SalI制限酵素で切断した後、pMAMneo遺伝子断片を持っているpBC10ベクターのEcoRV、SalI認識部位に連結し、その結果pBCKIIベクターを完成した。pBCKIIベクターカセットをAatII、SalI制限酵素で切断した後、pGEM−7Zf(Promega)のAatII、XhoI認識部位に連結し、その結果pBCKIIIベクターカセットを完成した。
【0077】
〔1−2 pBCKIDTIとpBCKIDTIIベクターの製作〕
前記で製作したベクターにネガティブ選別マーカー(negative selection marker)としてのDT遺伝子が挿入されたベクターを製作しようとした(図3と図16)。ネガティブ選別マーカーを持つpBCKIDTI、pBCKIDTIIベクターを用いる場合、無作為的にベクターが細胞に挿入された場合、細胞は死滅するので、遺伝子ターゲッティングされた細胞のみを選別することが可能な効率を高められる(図3と図16)。本発明に使用されたDT遺伝子は、Lexicon Genetics(The Woodlands、Tex.)社のpKO SelectDTベクターカセットから由来した。制限酵素RsrIIを使用することにより、SV40PolyAとRNAポリメラーゼIIプロモータと共にジフテリア毒素A鎖(DT)遺伝子が選別された。選別されたDT遺伝子をklenow fillingした後、pBluescriptIIKS(+)(Stratagene)のHindII部位に挿入することにより、pKS DTベクターを完成した。BluescriptIIKS(+)にあるDT遺伝子をXhoIとEcoRVで切断した後、pSP73(Promega)ベクターのXhoIとPvuII部位に挿入することにより、pSP73 DTベクターを完成した(図15)。pSP73 DTベクターに挿入されているDT遺伝子は、XhoIとSalI遺伝子によって選別した後、pBCKIIベクターカセットのSalI部位に挿入することにより、pBCKIDTIベクターカセットを完成した。完成したpBCKIDTIベクターカセットをAatIIとSalIで切った後、pGEM−7Zf(+)(Promega)ベクターのAatIIとXhoI部位に挿入することにより、pBCKIDTIIベクターカセットを完成した(図16)。
【0078】
PCRによって合成または連結されたDNA断片を酵素マッピング(enzyme mapping)およびシーケンシングして前記β−カゼインターゲッティングベクターが正確に製作されたかを確認した。
【0079】
〔実施例2:牛β−カゼイン遺伝子ターゲティングベクターへのヒトトロンボポエチン遺伝子の挿入〕
図17、図18および図19に示すように、300bp牛成長ホルモン遺伝子と共に、1kbヒトトロンボポエチン(hTPO)遺伝子をpBCKII、pBCKIIIおよびpBCKIDTIIベクターカセットに挿入した。SacIIとNotI制限酵素部位を持っているその1.3kb外来遺伝子をpBCKII、pBCKIII、pBCTPOKIDTIIベクターのSacIIとNotI制限酵素部位に連結し、その結果、pBCTPOKII、pBCTPOKIIIおよびpBCTPOKIDTIIベクター構造物を完成した(図17、図18および図19)。その中でも、pBCTPOKIDTIIを大腸菌(Escherichia coli)に導入して2005年10月17日にKCTC(韓国大田市儒城區魚隠洞52番地の韓国生命工学研究院)に寄託番号第KCTC 10864BP号で寄託した。
【0080】
〔実施例3:pBCTPOKII、pBCTPOKIII、pBCTPOKIDTIIの牛胚芽線維芽細胞(bEF)と牛耳組織線維芽細胞(bESF)内への導入〕
〔3−1 線形ベクターの導入〕
プラスミドDNAであるpBCTPOKIIとpBCTPOKIIIを「QIAfilter Plasmid Midi kits」(Qiagen)を用いて精製した後、円形DNAをCsCl−エチジウムブロマイドグラジエント(CsCl-ethidium bromide gradient)による平衡遠心分離を用いて分離した。分離されたpBCTPOKIIとpBCTPOKIIIプラスミドをそれぞれ制限酵素SalI(図20)とAatII(図21)で切って線形化した。エタノール沈澱過程によって精製されたDNAの濃度を分光光度計(spectrophotometer)を用いて測定した。
【0081】
線形化されたpBCTPOKIIとpBCTPOKIII構造物を継代2または3のbEFとbESF細胞にリポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)(商標登録)を用いて導入した。BEFは、各2、4、10μl濃度のトランスフェクション試薬と2、4μgDNA濃度別にトランスフェクションをテストした。BESFは、各2、4、10μl濃度のトランスフェクション試薬と1、2、4μgDNA濃度別にトランスフェクションをテストした。細胞は、トランスフェクション試薬−DNA複合体に24時間露出させた。
【0082】
DMEM(Gibco、Invitrogen corporation)、10%FBS(Hyclone)、0.001%ゲンタマイシン(Gibco、Invitrogen corporation)、1%MEM非必須アミノ酸(Gibco、Invitrogen corporation)組成の培養液で5%CO、37℃の条件で細胞を培養した。培養液は毎日取り替えた。培養液の分量は、下記表のとおり、細胞培養容器に応じて調節した。
【0083】
【表1】

【0084】
コンフルアンスに達するまで成長した細胞は、1×トリプシン−EDTA(Gibco、Invitrogen corporation)溶液を用いて37℃の条件で3分間置いて細胞を培養容器から分離した後、DPBS(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline)(Gibco、Invitrogen corporation)を用いて細胞を2回洗浄した。1×トリプシン−EDTA処理によって容器から分離した細胞株をゆっくりピペットしてそれぞれの細胞に解離した後、より広い培養容器に移して増殖させた。使用する1×トリプシン−EDTA溶液の分量は、下記表のとおり、培養容器のタイプに応じて異にした。
【0085】
【表2】

【0086】
実験順序は、次のとおりである:
【0087】
【表3】

【0088】
96ウェル培養容器上でコンフルアンスに達するまで成長した細胞を48ウェル培養容器に継代培養した後、漸次24ウェル、12ウェル、6ウェルおよび100mmの培養容器に移して培養した。6ウェル培養容器で、細胞の半分はPCR反応のために使用し、残りは6ウェル培養容器の2つのウェルに分けて培養した。
【0089】
〔3−2 プラスミド部分を除去した線形ベクターの導入〕
pBCTPOKIII、pBCTPOKIDTIIベクター構造物において制限酵素AatIIとClaIを用いてベクターからプラスミド部分を除去し線形化させた後、前記の方法と同様に牛耳組織線維芽細胞(bESF)と牛胚芽線維芽細胞(bEF)に形質転換させた(図22と図23)。
【0090】
〔実施例4:それぞれの細胞株に対するPCR分析〕
G418抗生剤に抵抗性を有するそれぞれの細胞株に対して外来遺伝子導入有無または形質転換有無を確認するためにPCR分析を行った。「AccuPrep Genomic DNA Extraction Kit」(Bioneer)を用いて、6ウェル培養容器で培養された細胞の半分からゲノムDNAを抽出し、「AccuPower PCR Premix」(Bioneer)を用いてPCRを行った。ヒトトロンボポエチン遺伝子(hTPO)に対するプライマーセットと温度サイクリング(thermal cycling)条件は、次のとおりである。
配列番号3順方向プライマー:GGA GCT GAC TGA ATT GCT CCT CGT
配列番号4逆方向プライマー:CCT GAC GCA GAG GGT GGA CCC TCC
【0091】
【表4】

【0092】
PCR結果より、G418抗生剤に抵抗性を有する大部分の細胞株は形質転換セルであることが分かった(図25)。
【0093】
〔実施例5:遺伝子ターゲッティング有無確認のためのLong−range PCR分析〕
形質転換された細胞株の中で遺伝子ターゲッティングされた細胞株を確認するために、Long−range PCRを行った。形質転換細胞株のゲノムDNAは、「AccPrep Genomic DNA Extraction Kit」(Bioneer)を用いて抽出し、あるいは約5つ程度の細胞を液体窒素に約1分間浸漬した後、沸かし湯に約1分間浸漬する過程を3〜4回繰り返し行うことで細胞を分解し、DNAを露出させた。Long−range PCRは、「AccuPower HL PCR Premix」(Bioneer)を用いて行った。
【0094】
図7に示すように、ベクター構造物内にあるneo遺伝子の3’末端に結合するように5’プライマーを準備し、3’プライマーは、ベクター構造物には含まれない内生的牛β−カゼインのイントロン8に結合するように準備した。遺伝子ターゲッティングされた細胞株は、1%アガロースゲルで4kbPCR産物によって確認可能である。プライマーセットの塩基配列と温度サイクリング条件は次のとおりである。
配列番号5順方向プライマー:5’−ccacacaggcatagagtgtctgc−3’
配列番号6逆方向プライマー:5’−ccacagaattgactgcgactgg−3’
【0095】
【表5】

【0096】
実施例3−1と実施例3−2の方法によって遺伝子ターゲッティング有無とその効率を比較した。
【0097】
実施例3−1の方法によるlong−range PCR分析の結果、2つの細胞クローンが遺伝子ターゲッティングされたことを確認することができた(図28)。
【0098】
実施例3−1の方法によってベクターを形質転換させる場合の効率は、次のとおりである。pBCTOKIIベクターが導入された体細胞のうち、合計41個の細胞株を選別し、その中で38個(93%)の細胞株が形質転換されたと確認され、遺伝子ターゲッティングされた細胞株(0%)は得ることができなかった。また、実施例3−1の方法で形質転換させた場合、pBCTPOKIIIベクターが導入された体細胞のうち、合計31個の細胞株を選別し、その中で29個(94%)が形質転換されたと確認され、2個(7%)の遺伝子ターゲッティングされた細胞株を得ることができた(表6および図28)。
【0099】
【表6】

【0100】
実施例3−2の方法によってベクターを形質転換させる場合の効率は、次のとおりである。pBCTPOKIII、pBCTPOKIDTIIをbEFとbESF細胞に導入(transfection)した後、遺伝子ターゲッティング有無をlong−template PCRによって確認した。少量のDNAサンプルに対して第2PCRを行った(図27と図29)。
【0101】
第2PCRは、同一の条件にプライマーセット:5’−ttcactgcattctagttgtggtttgtcca−3’(配列番号8);5’−tctaggaccaaacatcggcttactt−3’(配列番号9)を使用した。第2PCRまで行われた、遺伝子ターゲッティングされた細胞株は、3.4kb位置にバンド(band)を示す。
【0102】
図29において、Aは、bESF細胞にpBCTPOKIDTIIベクターをトランスフェクションした細胞株に対するlong−templateトPCRの結果であり、5、30、17、18、20、21、26番の細胞株が遺伝子ターゲッティングされたことを示す。Bは、bESF細胞にpBCTPOKIIIベクターをトランスフェクションした細胞株に対するlong−template PCR結果であり、16番細胞株が遺伝子ターゲッティングされたことを示す。Cは、ネガティブコントロール(−)として使用された牛のゲノムDNAとポジティブコントロール(+)として使用されたpneoBC3.7に対するlong−template PCR結果である。
【0103】
pBCTPOKIIIベクターとpBCTPOKIDTIIベクターをbEFとbESF細胞にトランスフェクションさせた後、遺伝子ターゲッティング効率を比較した。その結果、pBCTPOKIIIベクターがトランスフェクションされたbEF細胞における遺伝子ターゲッティング比率は18.2%(10/55)であるが、これに対し、pBCTPOKIDTIIベクターがトランスフェクションされたbEF細胞における遺伝子ターゲッティング比率は41.4%(12/29)であって、pBCTPOKIIIより遺伝子ターゲッティング効率が約2.3(41.4%/18.2%)倍高かった。また、pBCTPOKIIIベクターがトランスフェクションされたbESF細胞における遺伝子ターゲッティング比率は5.7%(12/212)であるが、これに対し、pBCTPOKIDTIIベクターがトランスフェクションされたbESF細胞における遺伝子ターゲッティング比率は36.6(63/172)であって、pBCTPOKIIIより遺伝子ターゲッティング効率が約6.4(36.6%/5.7%)倍高かった。平均的にpBCTPOKIDTIIベクターは、pBCTPOKIIIベクターより遺伝子ターゲッティング比率が約4.5(37.3%/8.3%)倍高かった。これにより、pBCKIDTIIベクターカセットがpBCKIIIベクターカセットに比べて遺伝子ターゲッティング効率が非常に高いことを確認した(表7)。また、pBCTPOKIDTIIベクターによる、bEFにおける41.4%の遺伝子ターゲッティング効率は、既存のGoat fetal fibroblastsで12.7%(SHEN Wei et al., Chinese Journal of Biotechnology, 20(3);361-365, 2004)の遺伝子ターゲッティング効率より3倍(41.4%/12.7%)以上高かった。これにより、本pBCTPOKIDTIIベクターの遺伝子ターゲッティング効率が非常に優れることを確認した。
【0104】
【表7】

【0105】
〔実施例6:遺伝子ターゲッティング有無確認のためのサザンブロック(Southern blot)分析〕
実施例1で製作した様々な形の牛カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターの体細胞へのターゲッティングを実施例3の方法によって行った結果、製作されたベクターの体細胞への遺伝子ターゲッティングが高効率で成功し、ターゲッティング効率は形質転換方法によって異なった。
【0106】
その中でも実施例3−1の方法で形質転換させ、PCR分析によって、BCTPOKIIIベクターで遺伝子ターゲッティングされたものと確認された2つのクローンをサザンブロットによって再確認した。各細胞クローンを2つの100mmの培養容器で拡張培養した後、その一つはゲノムDNAを抽出するために、細胞を集めて少なくとも10μgDNAをそれぞれのクローンから抽出した。その後、37℃の条件で16時間EcoRI制限酵素によって制限した。EcoRIで制限されたDNAを、16時間1×TAEバッファで50Vにて0.75%アガロースゲル上に電気泳動することにより分離した。そのDNAを、陽電荷を有する膜(membranes positively charged : Boehringer Mannheim)に移し、ヒトTPO cDNA(図30)のあるベクター構造物に対する、指針書(Roche)に基づいてRandom primed DIG−labeling技術を用いて製作されたプローブでハイブリダイゼーションを行った。サザンブロット用プローブは、配列番号3および4のプライマーを用いてPCR DIG labeling mix(Roche)とTaq DNAポリメラーゼ(QIAGEN)を用いて製作された。PCR反応の温度サイクリングの条件は、次のとおりである。
【0107】
【表8】

【0108】
PCR反応により、BCTPOKIIIベクターが牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングされたものと選定された2つの細胞株がターゲッティングされたことを再確認した(図31)。81番、89番の2つの細胞株は、発明したベクターがゲノムの牛β−カゼイン遺伝子座にターゲッティングされたことが再確認された。
【0109】
この中でも、81番クローンをBCTPOKIbESF81と命名し、KCTC(韓国大田市儒城區魚隠洞52番地)に2004年11月10日付けで第KCTC 10720BP号で寄託した。
【0110】
〔実施例7:牛体細胞の準備〕
韓国の畜産研究所の動物管理指針に基づいてこの実験を行った。1年に12,000kg以上のミルクを生産する牛(ホルスタイン種)の妊娠後45日目となる胎児から牛胚芽線維芽細胞(bEF)を分離し、既に報告された論文に従って細胞を準備した(Koo et al., Biol Reprod., 63(4);986-992, 2000)。胎児の頭部は、解剖用鋏を用いて除去し、肝と内臓などの柔らかい組織は、2つのwatchmarker’s forcepsで掻き出して除去した。牛(ホルスタイン種)の耳組織線維芽細胞(bESF)は、1年に12,000kg以上のミルクを生産する2年齢の牛の耳から分離した。PBS(Gibco BRL)で2回洗浄した後、bEFとbESFを100mmの培養容器上で解剖用刃を用いて薄切りにした。この実験の手続きは常温で行った。薄切りにした組織を0.05%(w/v)トリプシン/0.53mM EDTA溶液10mLに仕込み、30分間38.5℃の培養器で培養した。同量の10%FBSを含んでいる細胞培養液を添加してトリプシンの活性を抑制した。細胞培養液は、DMEM、10%FBS、ペニシリン100ユニット、ストレプトマイシン1000μg/mL(Gibco BRL)から組成した。強いピペットを行った後、5分間150×gの条件で遠心分離した。細胞を浮遊させた後、2×10cells/mL程度の細胞濃度を持つように濃度を調整して175−cm組織培養容器(Nunc、Roskilde、Denmark)にコンフルアンスに達するまで成長するよう37℃、5%COの条件で10mLの培養液を仕込んで培養した。bEFとbESF細胞を、20%FBSと10%DMSO(dimethyl sulphoxide)を含んでいる冷たいDPBS(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline)溶液を用いて凍結させた後、16時間−70℃に保管し、その後、外来遺伝子導入実験を行うまで液体窒素中に保管した。
【0111】
遺伝子ターゲッティングされた細胞株を得るためには、DNAの導入された細胞が老化または変形なしに体外培養システムで長期間生存することができなければならない。本発明において、BCTPOKIIとBCTPOKIIIベクターは、牛胚芽線維芽細胞(bEF)と牛耳組織線維芽細胞(bESF)に導入された。羊の場合、出生した羊の線維芽細胞が胚芽線維芽細胞より体外培養でさらに安定的な染色体の数を示しながら長期間持続されるということが報告された(Williams et al., Mol Reprod Dev., 66(2);115-125, 2003)。本発明において、牛耳組織線維芽細胞(bESF)は、牛胚芽線維芽細胞(bEF)より体外培養において変形なしにさらに長期間培養された(表9)。
【0112】
【表9】

【0113】
継代4にある304個の牛耳組織線維芽細胞由来の細胞株のうち、51個(17%)の細胞株が継代8まで正常的な模様を示しながら体外培養された。これに対し、牛胚芽線維芽の場合、6%(9/149)の細胞株のみが継代8まで培養された。
【0114】
〔実施例8:遺伝子タターゲッティングされた細胞の解凍および凍結〕
実施例6のサザンブロット分析によって準備された、遺伝子ターゲッティングされた細胞を2つの100mmの培養容器でコンフルアンスに達するまで培養し、その中のいずれか一つの培養容器内にある細胞に対してサザンブロット分析を行った。残った他の容器内の細胞の半分を培養し続け、残りの半分は16時間−70℃で凍結した後、液体窒素に保管した。核供与細胞として用いられる、出来る限り多数の細胞を確保するために、継代培養と保管過程を繰り返し行った。細胞凍結液は、20%FBSと10%DMSOを含むDMEMから組成した。
【0115】
凍結されている遺伝子ターゲッティングされた細胞の入っている1つのチューブを出来る限り速く解凍した後、9mLの培養液を入れた15mLのチューブにその解凍液を仕込んで3分間1000rpmで遠心分離した。細胞沈殿物を3mLの培養液で浮揚させた後、6ウェル培養容器に仕込み、核移植に用いられるまで37℃、5%COの培養器で培養した。
【0116】
〔実施例9:核移植〕
牛卵子を屠殺場の卵巣から獲得し、38.57℃、5%COと水分のある状態で22時間成熟培養液で培養した。成熟培養液は、Eagle saltsと10%(v/v)FBS(Gibco BRL、Grand Island、NY)の補充されたL−グルタミンと1μg/mLエストラジオール(estradiol)と1μL/mL FSH−P(Schering−Plough Animal Health Corp.,Kenilworth、NJ)と25mM NaHCOとTCM−199(Sigma Chemical Co.)から組成した。体外成熟させた後、卵子を0.1%ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の入っている500μLのTL−Hepesに仕込んで卵子の卵丘(cumulus)を強いピペットで除去した。卵丘細胞の除去された卵子の透明帯を精巧なガラス針を用いて部分的に切開した(Tsunoda et al., J Exp Zool., 240(1);119-125, 1986)。卵子操作、例えば核除去や細胞挿入などは、逆像顕微鏡(Leitz、Ernst Leitz Wetzlar GmbH、Germany)付き極微操作装置(micromanipulator)によって行った。操作のために使用された培養液は、7.5μg/mLのサイトカラシンB(cytochalasin B)を含んでいるTL−Hepesである。一番目の極体と中期II(metaphase II)染色体を含んでいる部分的な細胞質を直径20μmのマイクロピペットを用いて除去した。一つの遺伝子ターゲッティングされた細胞をそれぞれレシピエント細胞質体(recipient cytoplast)の卵黄周囲腔(perivitelline space)に組み込んだ。細胞−細胞質体(cell-cytoplast)複合体を10〜20秒間50μLの細胞融合培養液内に置いた後、細胞融合培養液に覆われた2つの電極1mmアパート(electrodes 1mm apart)のある融合容器に移した。細胞融合培養液は、0.3Mマンニトール、0.5mM Hepes、0.01%BSA、0.1mM CaCl、0.1mM MgClから組成した。細胞−細胞質体複合体をElectro Cell Manipulator2001(BTX、San Diego、CA)でそれぞれ20×10−6secの間直接的な1.6kV/cmで電流を流すように1回のパルスで融合を誘導した。このような過程は常温で行った。体細胞が見えない、再構成された受精卵は、融合パルス以後1時間経過したときに融合された受精卵と決定される。電気的融合以後4時間が経過した後、融合された受精卵を5分間5μMイノマイシンで処理して活性化させた後、10%FBSの入っているCR1aa medium(Rosenkrans et al., Biol Reprod., 49(3);459-462, 1993)に2.5mM 6−ジメチル−アミノプリンを38.5℃、5%COの条件で3.5時間処理する。
【0117】
〔実施例10:再構成された受精卵の培養〕
再構成された受精卵を、1mMグルタミンと1×イグル必須アミノ酸溶液(Gibco BRL)の入っているCR1aa培養液で培養した。3日間培養の後、分裂された受精卵をマウス胚芽線維芽細胞単層(mouse embryonic fibroblasts monolayer)上で750μL CR1aa(with10%FBS)のある4ウェル培養容器の各ウェルで4日間38.5℃、5%COの条件で培養した(Park et al., Anim Reprod Sci., 59(1-2);13-22, 2000)。培養7日以後、胚盤胞形成が観察された。
【0118】
〔実施例11:組み換えされた受精卵のPCR分析〕
各受精卵を50mM KCl、1.5mL MgCl、10mM Tris−HCl pH8.5. 0.5%Nonidet P40、0.5% Tween、400μg/mLプロテイナーゼKからなるリーシスバッファ20μL内に入れた後、30分間65℃の条件で置いた。そして、反応を10分間95℃に置くことにより、プロテイナーゼKの活性を中止させた(McCreath et al., Nature, 405(6790);1066-1069, 2000)。溶解されたそれぞれの受精卵に対し、第1PCRは配列番号3および4のプライマーとしてAccuPower PCR Premix(Bioneer)を用いて行った後、nested PCRを第1PCR産物1μLを用いて行った。配列番号3および7のプライマーを使用し、温度サイクリング(thermal cycling)条件は、次のとおりである:
Nested PCR
配列番号7逆方向プライマー:5’−gagacggacctgtccagaaagctg−3’
【0119】
【表10】

【0120】
様々な発達段階にある組み換えされた複製胚芽のPCRによって確認された形質転換有無は、次のとおりである(表11)。
【0121】
【表11】

【0122】
33個の複製胚芽のうち33個(100%)全てが形質転換されたことが分かる。これは、発明が本遺伝子ターゲッティングされた体細胞を使用することにより、遺伝子ターゲッティングされた複製動物を生産するために用いられることを意味する。
【0123】
図32は81番細胞株の細胞から核移植された受精卵のPCR分析結果である(図32)。
【0124】
〔実施例12:複製された胎児由来の胎盤細胞のlong−range PCR分析〕
胚盤胞段階にある複製受精卵は、非手術的な方法を用いて、妊娠準備された母牛に移植した。移植後、妊娠36日と確認された母牛の子宮から、フォーリーカテーテル(Agtech、Manhatan、KS)を用いて、非手術的な方法によって、胎盤と共に、胎膜に取り囲まれている胎児を抽出した。胎児と胎児由来の胎膜組織を実施例7と同様の方法によって細胞培養した。細胞培養した胎膜組織をlong−range PCR方法によってβ−カゼイン遺伝子ターゲッティングを確認した結果、4kbバンドを介してβ−カゼイン遺伝子ターゲッティングされたことが分かる(図33)。ゲノムDNA抽出過程とlong−range PCR方法は、前記実施例5と同様である。
【0125】
〔産業上の利用可能性〕
上述したように、本発明のβ−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターがターゲッティングされた細胞を用いて核移植された受精卵を着床させて形質転換牛を製造する場合、医薬、産業的に有用な高付加価値タンパク質を副作用、例えば動物の発達障害なしに形質転換牛のミルクから大量獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングのために製作されたpBluescriptIISK(+)プラスミド内にある18.8kb pBCKIIベクターカセットを示す。ベクターカセットはneo遺伝子の前にSacII、NotI、BamHI制限酵素部位を含んでおり、ショットアーム(short arm)部位の後ろにBamHI制限酵素部位を持っている。
【図2】図2は、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングのために製作されたpGEM7Zf(+)プラスミド内にある14.8kb pBCKIIIベクターカセットを示す。
【図3】図3は、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングのために製作されたpBluescriptIISK(+)プラスミド内にある16.1kb pBCKIIベクターカセットを示す。ベクターカセットは、neo遺伝子の前にSacII、NotI、BamHI制限酵素部位を含んでおり、ショットアーム部位の後ろに陰性選別マーカーとしての1.3kbジフテリア毒素(DT)遺伝子を持っている。ジフテリア毒素遺伝子部位の後ろにBamHI制限酵素部位を持っている。
【図4】図4は、pBCKIIベクターカセットとターゲッティングされたβ−カゼイン遺伝子間の相同的組み換え現象を示す。牛β−カゼイン遺伝子座における二重交差による結果として、内生的(endogenous)β−カゼイン塩基配列がベクターカセットの塩基配列で交替されることを示す。
【図5】図5は、pBCKIIIベクターカセットとターゲッティングされたβ−カゼイン遺伝子間の相同的組み換え現象を示す。牛β−カゼイン遺伝子座における二重交差による結果として、内生的β−カゼイン塩基配列がベクターカセットの塩基配列で交替されることを示す。
【図6】図6は、pBCKIDTIIベクターカセットとターゲッティングされたβ−カゼイン遺伝子間の相同的組み換え現象を示す。牛β−カゼイン遺伝子座における二重交差による結果として、内生的β−カゼイン塩基配列がベクターカセットの塩基配列で交替されることを示す。相同的組み換えが起こると、ジフテリア毒素(DT)遺伝子は脱落する。
【図7】図7は、pBCKIIとpBCKIIIベクターカセットによる牛β−カゼイン遺伝子座で起こる遺伝子ターゲティングを確認するために使用されたPCR分析戦略と、ターゲッティングされたβ−カゼイン遺伝子座の接合点部位とベクターカセット内の制限酵素部位の塩基配列を示す。上位絵は、neo遺伝子からベクターカセット内に存在しない内生的β−カゼイン遺伝子座までの4kb DNA断片を合成するためのプライマーセットの適切な位置を示す。塩基配列Aは、ロングアーム(long arm)とneo遺伝子接合点部位の塩基配列である。塩基配列Bは、ショットアームとneo遺伝子接合点部分の塩基配列であって、5PCRプライマーが位置する。塩基配列Cは、ショットアームとベクターカセットには存在しない内生的β−カゼイン遺伝子接合点部位の塩基配列を示し、3’PCRプライマーが位置する。
【図8】図8は、pBCKIDTIIベクターカセットによる牛β−カゼイン遺伝子座で起こる遺伝子ターゲッティングを確認するために使用されたPCR分析戦略と、ターゲッティングされたβ−カゼイン遺伝子座の接合点部位とベクターカセット内の制限酵素部位の塩基配列を示す。上位絵は、neo遺伝子からベクターカセット内に存在しない内生的β−カゼイン遺伝子座までの4kb DNA断片と3.4kb DNA断片の適切な位置を示す。この際、少量のDNA試料においてもターゲッティング有無を確認するために、第1PCRプライマーで合成した後、第2PCRプライマーで再合成した。塩基配列Aは、ロングアームとneo遺伝子接合点部位の塩基配列である。塩基配列Bは、ショットアームとneo遺伝子接合点部分の塩基配列であって、5’PCRプライマーが位置する。塩基配列Cは、ショットアームとベクターカセットには存在しない内生的β−カゼイン遺伝子接合点部位の塩基配列を示し、3’PCRプライマーが位置する。
【図9】図9は、前で報告されたpBC10ベクターを示す(Kim et a l., J Biochem (Tokyo)., 126(2);320-5, 1999)。pBC10ベクターは、pBluescriptIISKベクター内にある牛β−カゼインプロモータ部位10kbを含んでいる。牛β−カゼイン遺伝子プロモータ部位は、遺伝子5’−フランキング(flanking)配列の8kb、解読されないエクソン1および2(Vertical open boxes)、イントロン1の2kbを含んでいる。プロモータは、SacI、AatII、SacII制限酵素部位を持っているが、SmaI、BamHI、SalI、SpeI、ClaIなどの制限酵素部位はない。
【図10】図10は、pBC10ベクターをSacIとSacII制限酵素で切断することにより分離された10kb DNA断片を示している。分離された10kb DNA断片は、pBCKIIベクターカセットのロングアームに使用した。
【図11】図11は、pBC10ベクターをAatIIとSacII制限酵素で切断することにより分離された6kb DNAを示している。分離された6kb DNAは、pBCKIIIベクターカセットのロングアームに使用した。
【図12】図12は、pBCKIIとpBCKIIIベクターカセットのショットアームに使用されたpBC3.1ベクターの製作順序を示す。牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8を含んでいる3.2kb DNA断片を、XhoIとSalI(太字)制限酵素部位を持っているプライマーセットを用いて牛染色体DNA(chromosomal DNA)からPCR合成した。合成されたDNA断片をXhoIとSalI制限酵素を用いて切断した後、pGEM−Tベクター(Promega)のSalI認識部位に連結した。pGEM−Tベクター内にある3.2kb DNA断片をHincIIとSalI制限酵素でさらに切断した後、pBluescriptIISK(+)のSalI認識部位に連結した。
【図13】図13は、pMAMneoベクター(CLONTECH)からSV40 ori、初期プロモータ(early promoter)、ネオマイシン抵抗性遺伝子、SV40初期スプライシング(early splicing)部位、ポリアデニル化(polyadenylation)部位を含んでいるneo遺伝子を選別する過程を示す。BamHI制限酵素で切断された2.7kb neo遺伝子断片をpBluescriptIISK(+)のBamHI制限酵素部位に連結した。pBluescriptIISK(+)内にあるneo遺伝子の2kb DNA断片をBglIIとBamHI制限酵素で切断した後、pSP73ベクター(Promega)のBalII制限酵素部位に連結した。BglIIとEcoRV制限酵素で切断したpSP73ベクターの2kb断片を、pneo2.7ベクター構造物を作るために0.7kb neo遺伝子を含んでいるpBluescriptIISK(+)ベクターのBglIIとEcoRV制限酵素部位に再連結した。
【図14】図14は、pBCKIIとpBCKIIIベクターカセットの製作過程を示す。pBluescriptIISK(+)ベクター内にある陽性選別マーカーとショットアームに相当するDNA断変を適切な制限酵素を用いて切断した後、BamHI、EcoRV、SalI制限酵素部位を用いて、pBC10 DNA断片を含んでいるpBleuscriptIISK(+)ベクター内に連結した。結果的に、pBCKIIベクターカセットは、10kbロングアーム、選別マーカー遺伝子、およびショットアームを含んでいる。pBCKIIベクターのロングアームの長さを短くするために、AatIIとSalI制限酵素で切断したDNA断片をpGEM7Zf(+)ベクターのAatIIとXhoI制限酵素部位に連結した。その結果、6kbロングアーム、neo遺伝子およびショットアームを持っているpBCKIIIベクターカセットを完成した。
【図15】図15は、本pBCKIDTIIベクターカセットに使用されたDT遺伝子をpKO SelectDT(Lexicon Genetics)ベクターから選別する過程を示す。制限酵素RsrIIとして使用することにより、SV40PolyAおよびRNAポリメラーゼIIプロモータと共にジフテリア毒素A鎖(DT)遺伝子が選別された。選別されたDT遺伝子をklenow fillingした後、pBluescriptIIKS(+)(Stratagene)のHindII部位に挿入することにより、pKS DTベクターを完成した。pKS DTベクターにあるDT遺伝子をXhoIとEcoRVで切断した後、pSP73(Promega)ベクターのXhoIとPvuII部位に挿入することにより、pSP73 DTベクターを完成した。
【図16】図16は、pBCKIDTIIベクターカセットの製作過程を示す。pSP73 DTベクターに挿入されているDT遺伝子を、XhoIとSalI遺伝子によって選別した後、pBCKIIベクターカセットのSalI部位に挿入することにより、pBCKIDTIベクターカセットを完成した。完成したpBCKIDTIベクターカセットをAatIIとSalIで切断した後、pGEM−7Zf(+)(Promega)ベクターのAatIIとXhoI部位に挿入することにより、pBCKIDTIIベクターカセットを完成した。
【図17】図17は、pBCKIIベクターカセット内への有用な遺伝子の挿入を示す。治療用タンパク質遺伝子の一例として、ヒトトロンボポエチン遺伝子(hTPO)を発明したpBCKIIベクターカセットに挿入した。われわれの以前研究において、ヒトトロンボポエチンcDNA全体1kbをPCRによって増幅し、牛成長ホルモン(bGH)遺伝子の300bp poly(A)付加的配列(additional sequence)を、増幅されたcDNA断片の下部にあるKpnI制限酵素部位に連結させた(Sohn, DNA Cell Biol., 18(11);845-852, 1999)。hTPO cDNAとbGH遺伝子を含んでいる1.3kb DNA断片は、pBCKIIベクターカセットのSacIIとNotI制限酵素部位に挿入された。その結果、20.1kb pBCTPOKIIベクター構造物が完成された。
【図18】図18は、pBCKIIIベクターカセット内へのhTPO cDNAの導入を示す。結果的に、16.1kb pBCTPOKIIIベクター構造物を作った。その順序は図17での説明と同様である。
【図19】図19は、pBCKIDTIIベクターカセット内へのhTPO cDNAの導入を示す。結果的に、17.4kb pBCTPOKIDTIIベクター構造物を作った。その順序は図17での説明と同様である。
【図20】図20は、制限酵素SalIによる切断の後、細胞内導入のために使用された線形化pBCTPOKIIベクター構造を示す。
【図21】図21は、制限酵素AatIIによる切断の後、細胞内導入のために使用された線形化pBCTPOKIIIベクター構造を示す。
【図22】図22は、制限酵素AatIIとClaIによるプラスミドベクターの除去の後、細胞内導入のために使用された線形化pBCTPOKIDTIIベクター構造を示す。
【図23】図23は、制限酵素AatIIとClaIによるプラスミドベクターの除去の後、細胞内導入のために使用された線形化pBCTPOKIIIベクター構造を示す。図21ではpBCTPOKIIIベクターがAatIIによってのみ線形化されたので、プラスミドベクターをもって細胞内に導入されたが、図23におけるpBCTPOKIIIベクターは、AatIIとClaIによってプラスミドベクターが除去されたので、プラスミドベクターが切断されてから細胞内に導入された。
【図24】図24は、牛胚芽線維芽細胞(bEF)と牛耳組織線維芽細胞(bESF)の形態を示す。AとBは、コンフルアンスに達するまで成長した、DNAが導入されていない(正常)bEFとbESFである。CとDは、本発明のベクターが導入された後コロニー形成を示すbEFとbESFである。抗生剤抵抗性neo遺伝子を含み、遺伝子ターゲッティングベクターをリポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)方法を用いてbEFとbESFに導入した後、G418(Gibco、Invitrogen corporation)を処理して生き残った細胞株は、外来遺伝子の導入有無を分析した。
【図25】図25は、pBCKIIIトランスフェクションの後に生き残った細胞株のPCR分析を示す。矢印で表された500bp PCR DNA断片に対する陽性シグナルは「+」で示し、陰性シグナルは「−」で示した。本発明のpBCTPOKIIIベクターは陽性対照区として使用し、PCRはhTPO遺伝子に対するプライマーを利用した。
【図26】図26は、long−range PCR分析のために対照区として使用されたpneoBC3.7ベクターの製作順序を示す。牛β−カゼイン遺伝子の塩基7888〜8479に相応するイントロン8とエクソン9を含んでいる591bp DNA断片は、プライマーセットを用いて、牛染色体DNAからPCR増幅によって準備した。3’プライマーは、太字で表記されているように、XhoI制限酵素部位を持っている。増幅されたPCR DNA断片は、pGEM−Tベクター内に挿入された。その結果、pBC591ベクター構造物を完成した。
【図27】図27は、long−range PCR分析のために対照区として使用されたpneoBC3.7ベクターの製作順序を示す。pBC591ベクターをSalIとXhoI制限酵素を用いて切断した後、そのDNA断片をpBC3.1ベクターのSalI制限酵素部位内に連結した。同時に、pneoBC2.7ベクターをBamHIとEcoRV制限酵素で切断した後、BamHIとEcoRV制限酵素で切断されたpBC3.1ベクターに連結した。その結果、pneoBC3.7ベクターが完成された。矢印は、4kbと3.4kbのlong−range PCR合成のためのプライマーセットを示す。
【図28】図28は、pBCTPOKIIIベクターが導入されたbESF細胞株のlong−range PCR分析結果を示す。矢印で表わされる4kb陽性シグナルは、細胞株81と89番がβ−カゼイン遺伝子ターゲッティングされたことを示す。それ以外の他の細胞株は、陰性シグナル(−)を示した。pneoBC3.7ベクターを陽性対照区として使用した。
【図29】図29は、pBCTPOKIDTIIとpBCTPOKIIIベクターの導入されたbESF細胞株のlong−range PCR分析結果を示す。矢印で表わされる3.4kb陽性シグナルは、β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされたことを示す。約5個の細胞において第1PCRを行った後、第2PCRを行うことにより、3.4kb陽性シグナルを確認した(図8)。Aは、pBCTPOKIDTIIベクターを導入した細胞株に対するlong−template PCRの結果であり、5、30、17、18、20、21、26番の細胞株がβ−カゼイン遺伝子ターゲッティングされたことを示す。Bは、pBCTPOKIIIベクターを導入した細胞株に対するlong−template PCRの結果であり、16番の細胞株が遺伝子ターゲッティングされたことを示す。Cは、陰性対照区(−)として使用された牛のゲノムDNAと陽性対照区(+)として使用されたpneoBC3.7に対するlong−template PCRの結果である。
【図30】図30は、ターゲッティングされた塩基配列を再確認するためのサザンブロット分析のための戦略を示す。外来遺伝子の導入された細胞株から、精製されたゲノムDNA(genomic DNA)とpBCTPOKIIIベクターをEcoRI制限酵素で切断した。EcoRIによって切られたBCTPOKIIIベクターのDNA(A)とゲノムDNA(B)の断片サイズは、それぞれ9.2kbと9.9kbである。hTPO遺伝子の下にあるバーは、サザンブロット分析のために使用されたプローブの位置を示す。プローブとして用いられるhTPO cDNAの500bp断片をPCRによって増幅した。
【図31】図31は、サザンブロット分析によって、遺伝子ターゲッティングされたものと確認された細胞株を示す。81番と89番の2つの細胞株は、発明したベクターが内生的牛β−カゼイン遺伝子座にターゲッティングされたことが再確認された。ターゲッティングされた細胞株は、9.9kb断片を示し、97、47、43、34番の細胞株は、いずれのシグナルも示していない。様々な濃度の牛ゲノムDNAを陰性対照区として使用し、様々な濃度のpBCTPOKIIIベクターから由来した9.2kb断片は陽性対照区として使用した。
【図32】図32は、81番細胞株の細胞から核移植された受精卵のnested PCR分析を示す。356bpの陽性シグナルは、体細胞から複製された受精卵が本発明のターゲッティングベクターを持っていることを示す。pBCTPOKIIIベクターを陽性シグナルとして使用し、nested PCRは陽性シグナルを再確認するために行った。
【図33】図33は、89番クローンの細胞から核移植された受精卵を妊娠準備済みの母牛に移植した後、妊娠36日目の母牛から取り出した胎膜に取り囲まれている胎児(A)、胎膜を除去した胎児(B)、胎膜細胞(C)、胎膜細胞のlong−range PCR分析(D)を示す。4kb陽性シグナルは、胎児由来の胎膜細胞がβ−カゼイン遺伝子ターゲッティングされたことを示す。pneoBC3.7ベクターを陽性対照区として使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)牛β−カゼイン遺伝子のプロモータを有し、このプロモータの前後に位置した牛β−カゼイン遺伝子のエクソン1、イントロン1およびエクソン2からなり、牛β−カゼイン遺伝子の核酸配列に相同である5〜12kb長の核酸配列を有する第1領域と、
(2)目的のタンパク質をコードする核酸クローニング部位と、
(3)ポジティブ選別マーカー領域と、
(4)牛β−カゼイン遺伝子のエクソン5、6、7、8およびイントロン5、6、7からなり、牛β−カゼイン遺伝子核酸配列に相同である2.8〜3.5kb長の核酸配列を有する第2領域とを含み、
β−カゼイン遺伝子の核酸配列の5’−3’配列において、第1領域が上流(upstream)に該当し、第2領域が下流(downstream)に該当することを特徴とする、牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクター。
【請求項2】
第1領域が5.5〜10kbの長さを有する、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
第2領域が3.0〜3.2kbの長さを有する、請求項1に記載のベクター。
【請求項4】
ポジティブ選別マーカーが、ネオマイシン(Neo)、ハイグロマイシン(Hyg)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(hisD)またはグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Gpt)である、請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
ネガティブ選別マーカーをさらに含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
ネガティブ選別マーカーがジフテリア毒素である、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
請求項1または5に記載の、図1に開示されているpBCKII、図2に開示されているpBCKIII、図16に開示されているpBCKIDTI、または図3に開示されているpBCKIDTIIであるベクター。
【請求項8】
請求項1または5に記載のベクターで遺伝子ターゲッティングされた牛の体細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の牛の体細胞を用いた核移植により得られた受精卵。
【請求項10】
(1)請求項1または5に記載の牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターで牛の体細胞を形質転換させる段階と、
(2)牛の体細胞を培養して相同的組み換えを誘導する段階と、
(3)相同的組み換えによって、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を選別する段階とを含む、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を製造する方法。
【請求項11】
段階(1)で線形のベクターまたはプラスミド骨格が除去された線形のベクターの形で形質転換させる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(1)請求項1または5に記載の牛β−カゼイン遺伝子ターゲッティングベクターで牛の体細胞を形質転換させる段階と、
(2)牛の体細胞を培養して相同的組み換えを誘導する段階と、
(3)相同的組み換えによって、牛β−カゼイン遺伝子がターゲッティングされた牛の体細胞を選別する段階と、
(4)牛卵子の核を除去し、遺伝子ターゲッティングされた細胞を導入することにより、体細胞核移植による受精卵を製造する段階と、
(5)前記受精卵を着床させる段階とを含む、形質転換牛を製造する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって製造された形質転換牛のミルクから目的のタンパク質を大量収得する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2007−510437(P2007−510437A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546862(P2006−546862)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003923
【国際公開番号】WO2006/057499
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】