説明

相対運動の生起

【課題】物体に相対運動を与えるための改善された技法を得ること。
【解決手段】不均一な相対運動を有する物体から符号化された変換結果を得るのにセンサ12を使用することができる。例えば、センサに関連した変換領域内で相対運動を有する物体から変換結果を得ることができる。物体の速度および/または方向を変化させることにより、あるいは物体を搬送する流体の流れ、チャンネルの運動、支持構造物の運動、センサの運動、および/またはパターンの運動を制御することにより、相対運動を生起することができる。流体の実装形態は、形づくられたチャンネル壁部分および/または時変横変位を生起する変位要素を含むことができる。支持構造物の実装形態は、可動支持構造体またはセンサの、走査運動および回転運動をそれぞれ制御するスキャナデバイスおよび回転デバイスを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば相対運動に起因する時変波形を示す変換結果をもたらすセンサまたは変換要素に関連した変換領域内で、物体に相対運動を与えることに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2008/0181827号は、空間的に変調された励起/発光を用いる技法および粒子と励起/発光パターンの間の相対運動を説明している。例えば、粒子の流れに対して垂直なミクロン以下の周期性を有する励起光の干渉パターンを用いることができ、その他のタイプの空間的変調には、空間的に変調されたマスクまたはマイクロレンズもしくはマイクロミラーアレイ、電界または磁界、音場、蛍光消光を生成する分子被覆、およびマイクロキャビティが含まれる。粒子がパターンに沿って移動するとき、粒子の速度およびストライプパターンの周期性に従って発光が変調され、用いられ得る信号の例には、周期的信号、チャープ状の信号、およびランダム信号が含まれる。2つのストライプにわたって発光を記録する単一の検出器を使用することができる。粒子が励起パターンを通って移動している間の粒子の「明滅」を取り込むための高速検出器読出しを用いて、信号を記録することができる。より一般的には、粒子に時間変調された信号を生成させる環境をチャンネルに沿って設けることができ、この信号は、光学配列または電極配列などによって検出され、かつ評価される。システムは、粒子と空間的に変調された励起領域の間の相対運動をもたらすための手段も含むことができ、相対運動は、粒子または検出器/光学要素が例えばチャンネルに沿って移動することにより、あるいは両者の運動によって、生成されてよい。例えば、粒子は流体中を運搬されてよく、バイオチップ上にあり得て、あるいは流体中に浮遊し得て実質的に垂直方向に移動する変調パターンを有するスキャナのベッド上のスライド上に収容される。信号の評価は、米国特許出願公開第2008/0183418号に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0181827号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0183418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体に相対運動を与えるための改善された技法を得ることは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、変換領域内の物体の不均一な相対運動を生起するシステム、方法、および装置を提供する。
【0006】
動作中、センサに関連した変換領域内の物体から変換結果を得るセンサと、
動作中、物体のサブセットの各々にそれぞれの相対運動を生起する相対運動要素とを備えるシステムであって、サブセット中の各物体が変換領域内でそれぞれの相対運動を有し、相対運動要素が、少なくとも1つの物体の変換領域内の相対運動を不均一にし、変換領域内の不均一な相対運動が、
周期的に変化する相対運動と、
ランダムに変化する相対運動と、
チャープ状に変化する相対運動と、
変換領域内の少なくとも1つの変調サイクルを完成する変調された相対運動とのうち少なくとも1つを含むシステム。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】システムを示す図である。
【図2】運動を制御する機構を示す図である。
【図3】変位制御機構を示す図である。
【図4】エンコーダ/センサを示す図である。
【図5】システムを示す図である。
【図6】不均一な相対運動のルーチンを示す図である。
【図7】アナライザを示す図である。
【図8】流体要素およびグラフを示す図である。
【図9】別の流体要素およびグラフを示す図である。
【図10】別の流体要素およびグラフを示す図である。
【図11】流体要素およびグラフを示す図である。
【図12】スキャナデバイスを含むシステムを示す図である。
【図13】回転デバイスを含むシステムを示す図である。
【図14】回転デバイスを含むシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
変換が実行されるシステムでは、物体は、システムの領域または要素または特性に関連して移動するか、あるいは、物体が、領域、要素または特性に対して時間にわたって一連の位置を有するなら、物体は「相対運動を有する」。
【0009】
実装形態は、物体から変換結果を得るためにセンサを操作する際の問題に対処するものであり、例えば、実装形態で、物体とセンサ間の相対運動の変換が時変の変換結果を得る。従来の技法は、「一様な相対運動」、すなわち、例えば直線またはほぼ定曲率を有するラインにおける、ほぼ一定の速度およびほぼ一定の方向を有する相対運動を利用する。一様なスキャン運動および一様な回転運動は一様な相対運動であり、「スキャン運動」は、実質的に直線に沿った相対運動を指し、「回転運動」は、実質的に定曲率のライン沿った相対運動を指す。
【0010】
一様な相対運動を有する変換は均一性の要件による制約があり、物体が一様な環境内で一様な相対運動を有するなら、変換結果には時間変化がないので、もたらされる情報は限定されたものとなる。
【0011】
情報を増すために、変換結果の空間的変調は「パターン化環境」(すなわちパターンを有する環境があって、その環境内で物体が相対運動を有する)を用いることができ、パターン化環境は、励起、マスキングまたは放射光のフィルタリング、インピーダンスベースの変換、物体からの放射光の光変換などに起因し得る。例示的タイプには、ランダムパターン、周期的パターン、およびチャープパターンが含まれ、パターン化環境に関して、「ランダム」は全長にわたる非周期的パターンを指し、「周期的」シーケンスは、シーケンスの長さにわたって2回以上繰り返す少なくとも1つのパターンを有し、「チャープ」シーケンスは、直線的に変化する時間スケーリングを有して、ランダムではあるが周期的であり得る(すなわち周波数または波長が直線的に変化する一連の期間である)。
【0012】
パターン化環境は、所望の結果を得るのにかなりの複雑さが必要なことがある。パターン化環境は、作るのが困難かまたは高くつくことがある。
【0013】
一様な相対運動の技法には融通性およびロバスト性がない。
【0014】
これらの制限に対処して、実装形態は、物体に変換領域内で不均一な相対運動を与える。「不均一な相対運動」は、センサまたは変換要素と変換領域内の物体の間の相対運動であり、「一様な相対運動」から十分にはずれて、速度および/または方向における測定可能な変化すなわち「速度/方向変化」を含む。不均一な相対運動は、直線またはほぼ定曲率のラインであるほぼ一定の速度から、方向において、測定可能な程度にはずれる。物体とセンサが互いに対して移動していなければ、ただ単に物体と変換領域内のパターン化環境の間の相対運動だけでは、不均一な相対運動の例とならないはずである。
【0015】
実装形態は、様々な種類の速度/方向変化を伴う不均一な相対運動を生起し、一様な相対運動の制限を克服して新規の変換技法を提供する。
【0016】
変換領域内での物体の相対運動に速度/方向変化をもたらす機構は、時として「運動が変化する機構」である。
【0017】
速度/方向変化のタイプには、周期的に変化する相対運動、ランダムに変化する相対運動、および/またはチャープ状に変化する相対運動が含まれる。変換結果は、速度/方向変化に起因する情報のみを含むか、あるいは速度/方向変化とパターン化環境からの情報の両方を含むことができる。変換結果が周期的であれば、不均一な相対運動は「周期的な変化」であり、すなわち2回以上繰り返す少なくとも1つのパターンを含み、周期的な変化でなければ「ランダムな変化」であり、また、ランダムに変化していても直線的時間スケーリングで周期的な変換結果を得ることができるならば「チャープ状の変化」である。
【0018】
チャンネル壁は、不均一な相対運動を生起する形状を有する内側面を有することができ、ほぼ1.0mmと0.1μmの間の断面寸法を有する「マイクロ流体チャンネル」は、非常に低いレイノルズ数を有し、その結果、流れは、チャンネル壁形状からの方向および/または速度における変化にもかかわらず、乱流がなく、チャンネル壁と平行な方向で層流のままである。
【0019】
変調された相対運動は、「搬送要素」(例えばスキャン運動または回転運動などの一様な相対運動)と称される他の相対運動と組み合わされた変調サイクルを含む、一種の不均一な相対運動である。「変調サイクル」は、例えば、2つの最大値の間、2つの最小値の間、または同じ位相の2つの非極値の間の、波状の速度/方向変化の単一の周期状部分を指す。周波数、波長、および/または振幅は、単一の変調サイクル中に、または異なる変調サイクルの間に変化し得る。
【0020】
いくつかの実装形態では、相対運動要素は、運動デバイス、流体デバイス、スキャナデバイス、および/または制御信号に応答して時変変位をもたらすことができる回転デバイスを含む。スキャナデバイスは、物体を支持する支持構造物とエンコーダ/センサの間の走査方向における相対運動をもたらすことができ、物体のトリガ信号に応答して、走査方向、エンコーダ/センサと物体の間の距離が不変の第1の横方向、およびエンコーダ/センサと物体間の距離が変化する第2の横方向を含む3つの方向うち1つ以上の時変変位をもたらすことができる。回転デバイスは、物体を支持する支持構造物とエンコーダ/センサの間の回転方向における相対運動をもたらすことができ、物体のトリガ信号に応答して、回転方向、エンコーダ/センサと回転軸の間の距離が変化する半径方向、およびエンコーダ/センサと物体間の距離が変化する横方向を含む3つの方向うち1つ以上の時変変位をもたらすことができる。
【0021】
実装形態は、例えばパターン化環境を用いて、一様な相対運動の制限を緩和するものであり、相対運動要素を用いた一様な励起およびフィルタリングを利用することができ、パターン化された励起および/またはフィルタリングを与える要素を製作または取得することの困難さを回避するか、あるいは新規のタイプの符号化/変換を提供することができる。
【0022】
制御動作を実行する回路は「制御回路」であり、処理動作を実行する回路は「処理回路」である。
【0023】
図1は、センサ12、変換領域14、相対運動要素16および回路要素18を含むシステム10を示す。
【0024】
「励起要素」は、励起をもたらす部分または要素を指し、励起に応答して物体が光(例えば照射、電子ビームなど)を放射する。
【0025】
「変位要素」は、変位(一般に変換領域内で相対運動する物体の変位)をもたらす部分または要素を指し、相対運動における変位は「相対変位」である。システムは、相対運動要素および変位要素の両方を含むかまたはその両方として動作することができるデバイスを含んでよく、相対運動要素は、相対変位のタイプをもたらす変位要素を含んでよい。流体デバイスは、チャンネル内の長手方向の相対運動をもたらす相対運動要素であり得て、運動デバイスは、変換領域に沿って長手方向と平行でない横方向などにチャンネル壁を移動させる変位要素であり得る。スキャナまたは回転デバイスは、走査方向または回転方向における相対運動をもたらす相対運動要素であり得て、変換領域内の相対運動中に相対変位をもたらす変位要素でもあり得る。
【0026】
「光フィルタ」または「フィルタ要素」、「フィルタ」、または「マスク」は、基準に従って光を伝送する光透過性の部分または要素を指す。「帯域通過フィルタ」は、光子エネルギーの何らか用途の範囲にわたって、「帯域」と称されることがあるサブレンジ内の光を優先的に伝送するものであり、したがって、帯域またはサブレンジを規定することにより帯域通過フィルタのタイプを規定することができる。「遮断フィルタ」は、適用される範囲内のいかなる光も伝送しないが、「透過フィルタ」は、用途の範囲内の光をすべて伝送する。本明細書では、「変換要素」は、センサまたはセンサおよび関連の回路を含む要素を指す。変換パターンのカテゴリには、例えば周期的パターン、チャープパターン、ランダムパターンなどが含まれる。
【0027】
センサ12は、変換領域14内の物体20に応答して物体20から変換結果を取得し、回路要素18に変換結果を供給する。
【0028】
「領域」は、空間の点または位置の接続された組を指す。変換領域14は要素またはデバイスに「関連して」いるが、このことは、変換領域14が要素またはデバイスとほぼ一定の空間的関係を有することを意味しており、すなわち、所与の用途向けに適正水準の精度に情報を変換することができるように、その領域内で物体がセンサ12と相互作用することができる。
【0029】
センサ12は、物体20と相互作用し得る。例えばフローサイトメトリ、バイオチップ読出し、点または他の物体をもつ支持構造物の走査、あるいは検体検出において、例えば、光は、放射、散乱または透過などによって物体20から放射し、センサ12内の光センサによって受け取られ得るか、あるいは、物体20は、センサ12の中のインピーダンスベースの変換要素と電気的または磁気的に相互作用し得る。
【0030】
「物体」は、センサが情報を得ることができるあらゆるものを含む。
【0031】
センサは、物体からの信号を受け取り、かつ変換することができ(物体からの放射光を、例えば放射、弾性散乱もしくは非弾性散乱、または透過によって)、あるいは、センサは、例えば物体と電極配置またはホール効果センサ配置の間の相互作用からもたらされるインピーダンスベースのセンサであり得る。
【0032】
例えば小滴、小量の液体、単一分子、凝集分子、分子クラスタ、細胞、ウィルス、バクテリア、長いポリマー、亜分子複合体、微粒子、ナノ粒子、特定の化学物質あるいは他の検体を結合し搬送するビードまたは他の小粒子、乳剤、スライドなど支持構造物上の物体または配列内の物体、および表面の識別可能な領域(例えば有色の点)。
【0033】
「時変波形」は、時間の次元にわたって変化する。「変換された時変波形」は、時間にわたって得られた変換結果によって示される。変換領域内での物体の相対運動は、任意の、適切な、物体の運動ならびに/あるいはセンサ、センサの一部分もしくは要素、あるいは励起のパターン、フィルタリングのパターン、または変換もしくは別の環境のパターン、あるいは特性など、パターンまたは他の特性の、その変換領域内の運動またはその変換領域に関連した運動に起因し得る。
【0034】
図1で、相対運動要素16は物体20の運動を生起し、物体20の相対運動は、矢印22による領域14内のセグメントを含む。領域14内のセグメントは、任意の形状、速度、および/または方向を有し得る。
【0035】
センサ12は、矢印24によって、物体20から変換結果を取得し(例えば物体20の相対運動に起因する情報を含む電気信号が要素18に供給され)、信号は、不均一な相対運動に起因する情報を有する1つ以上の時変波形を示し得る。要素18は、符号化された情報を含むデータを得るために、例えば時変波形を示すことにより変換結果を用い得て、プログラム式マイクロプロセッサまたは中央処理装置(CPU)を含んでよく、矢印26によって、さらなる操作、記憶または伝達向けのデータを供給する。
【0036】
物体の変換領域内の相対運動に起因する情報を有する時変波形を示す符号化された変換結果またはデータは、矢印26に隣接したラベルによる「運動に関連した」変換結果またはデータである。運動に関連した変換結果またはデータは、符号化された情報を示すデータを得る(すなわち「復号する」)のに用いることができる。
【0037】
ボックス30およびボックス32内のグラフは、要素16が、例えば要素18からの矢印34による1つの制御信号によって生起し得る不均一な相対運動を示す。要素16は「運動を変化させる機構」として動作し、変換領域14内の物体の相対運動の速度および/または方向を変化させる。
【0038】
ボックス30は、ランダムに変化する相対運動、周期的に変化する相対運動、およびチャープ状に変化する相対運動を示す。上のグラフは、周期的パターン(例えば励起または変換のパターン)を有する環境における速度/方向の変化を示す。下のグラフは、「速度/方向サイクル」に従う速度/方向の変化を示す。
【0039】
上のグラフで、時間T1とT2の間では、変換結果が非周期的になるように速度/方向が変化し、すなわちランダムな相対運動である。時間T2とT3の間では、符号化された変換結果が周期的になるように、速度/方向は一定値を保持し、すなわち周期的に変化することのない一様な相対運動である。時間T3とT4の間では、符号化された変換結果が非周期的であるものの適切な線形の時間スケーリングで周期的になり得るように、速度/方向は直線的に増加し、すなわちチャープ状に変化する相対運動である。
【0040】
ボックス30内の下のグラフでは、変換結果も非周期的であるように、速度/方向の変化は、時間T1とT2の間のサイクルに従うが周期的に繰り返すパターンのサイクルを含まず、すなわちランダムに変化する相対運動である。時間T2とT3の間では、符号化された変換結果が周期的であるように、速度/方向は2つのほぼ同一のサイクルに従い、すなわち上のグラフの時間T2とT3の間の一様な相対運動ではなく、周期的に変化する相対運動である。時間T3とT4の間では、符号化された変換結果が非周期的であるものの適切な線形の時間スケーリングで周期的になり得るように、速度/方向は、周波数が増加して波長が減少するサイクルに従い、すなわちチャープ状に変化する相対運動である。
【0041】
ボックス32内のグラフは変調された相対運動を示す。水平軸は「搬送の速度/方向」で垂直軸と交差し、すなわち搬送要素として役立つ一様な相対運動である。グラフは時間T5とT6の間で2.5変調サイクルを含み、すなわち1つ以上の変調サイクルが変換領域14内で完成される。周波数、波長、および/または振幅は、単一の変調サイクル中に、または異なる変調サイクルの間に変化し得る。少なくとも1つの変調サイクルが完成されるので、変換結果から、変調の周波数、波長、および/または振幅に関する情報を抽出することができる。
【0042】
要素16からボックス30およびボックス32への2つの矢印の間の「および/または」は、不均一な相対運動の例が互いに排他的ではないが、不均一な相対運動において同時に生起され得ることを意味する。ボックス32内の変調サイクルは、ボックス30内の下のグラフの相対運動タイプのうち任意のものとともに生起され得る。ボックス30内の2つ以上のタイプの不均一な相対運動は、例えば様々なタイプの速度/方向変化で同時に生起されることにより重ね合わせられ得て、ボックス30内の下のグラフのように、様々なタイプの周期的変化が様々な周波数帯で生起され得る。パターン化された環境と結合することも可能なはずである。
【0043】
センサ12は、例えば光センサまたはインピーダンスベースのセンサであり得る。符号化された変換結果は、当初はアナログまたはデジタルであり得るが、例えば後続の保存、伝達、および処理向けに光信号または他の電磁気信号に変換され得る。
【0044】
図2は、要素16が含み得る機構の例(例えば流体運動機構60、チャンネル運動機構62、支持体運動機構64、センサ/パターン運動機構66)を示す。各機構は、不均一な相対運動の生起に関与し得る。
【0045】
機構60および機構62は、流体構造70内にある。チャンネル壁72は、構造70内のチャンネルを結合する内側面を有する。
【0046】
機構60は、チャンネル内の変換領域14内の物体を矢印74によって例えば長手方向に搬送する流体(例えば液化ガス、エアロゾルなど)の流れを制御する。機構60は、例えば、制御信号によってポンプを制御する回路を伴うポンプなどの流体推進デバイスを含み得て、流体の流れを制御する。
【0047】
機構62は、例えば双方向矢印76によって長手方向と平行でない横方向に壁72を移動する運動デバイスを用いて、壁72によって境界づけられたチャンネルの運動を制御する。機構62は、運動デバイスを制御する回路を含むことができ、チャンネルの運動を制御する。チャンネルが横方向に移動するとき、変換領域14を通って搬送されている物体は、前記横方向の反対にさらなる相対運動を得る。
【0048】
流体構造70は、機構64および機構66を含むデバイス82に接続された支持構造物80上に支持されている。デバイス82はセンサ12に接続されている。
【0049】
機構64は、例えば運動デバイスおよび運動デバイスを制御する回路を用いて支持構造物80の運動を制御し、x軸およびz軸の84による相対運動を生起する。要素16は、支持構造物80上で物体がより直接的に支持されるシステム内にあり得る。
【0050】
機構66は、例えば運動デバイスおよび運動デバイスを制御する回路を用いて、センサ12、センサ12内の部分もしくは要素、または変換領域14内のパターンもしくは変換領域14に関連したパターンの運動を制御する。x軸およびz軸の86によって、センサ16および支持構造物80の運動はともに相対運動をもたらすことができ、すなわち、センサ12のx方向の運動は支持構造物80のx方向の運動と等しく、それと同時にセンサ12のz方向の運動は支持構造物80のz方向の運動と等しい。
【0051】
デバイス82は、例えばスキャナデバイスまたは回転デバイスであり得て、変調サイクルを伴う搬送要素をもたらし得る。
【0052】
図3で、物体20の経路に沿った変位制御機構100は、各々が経路のセグメントを囲む変位制御要素を含むが、経路は囲まれ得ない。
【0053】
図3の変位制御要素は、「xまたはt」とラベルが付いた座標軸に沿っており、すなわち、例えば、物体20の経路がx方向に沿って空間的に延び、かつ/または物体20の変位が時間tにわたって生じる。x方向はただ単に物体の経路を指すが、速度もしくはその他の変位のレートに関する情報またはトリガ検出もしくはトリガ信号からの情報によって、x方向位置と時間tの間の近似マッピングが可能になり得る。
【0054】
図3は、制御要素102から104を示し、要素102が「0」で要素104が「(N−1)」である。
【0055】
制御要素110(「n1」)は、経路のまわりに部分的にまたは完全に延びる形づくられた境界112を含み、その形状が物体20の変位(例えば物体20の速度またはその他の変位レート)に影響を及ぼすかまたはこの変位を制御する。
【0056】
制御要素120(「n2」)は運動デバイス122を含み、このデバイスは、その経路のセグメントにおける境界の双方向矢印124による横方向の運動を生起する。デバイス122は、ライン126を介して制御信号受け取ることができる。変位制御回路は、定常状態または時変のやり方のいずれかでデバイス122を操作することによって、トリガ検出回路に応答し得る。
【0057】
機構100がデバイス122を含むとすれば、それは変位回路(すなわち変位を生起することにより、制御信号を供給するかまたは制御信号に応答する回路)である。変位回路を含むことができる別のタイプのセンサには、「エンコーダ/センサ」、または「符号化/変換要素」、または「符号化/変換機構」がある。エンコーダ/センサは、符号化された変換結果をもたらす(すなわち、例えば相対運動からの変換結果の中の情報を符号化する)。「符号化/変換領域」は、変換領域と似ているがエンコーダ/センサと関連したものである。
【0058】
図4で、破線の境界150は、物体が流体または他の相対運動デバイスによって生起された相対運動を有するチャンネルまたは領域を表す。物体20は、矢印152による相対運動を有する識別可能な物体である。物体20の経路は、エンコーダ/センサ160に関連した符号化/変換領域内のセグメントを含む。符号化/変換領域内の物体20の相対運動中に、制御回路162からの制御信号は、放射光中の情報の符号化をもたらす。
【0059】
制御回路162は、エンコーダ/センサ160および/または相対運動デバイスを動作させる制御信号をもたらし、その結果、エンコーダ/センサ160は、ボックス164によって、符号化/変換領域内の物体20の相対運動に起因する情報を有する少なくとも1つの時変波形を示す符号化された変換結果をもたらす。
【0060】
励起回路170は励起を供給することができ、変位回路172(および相対運動デバイス)は、符号化/変換領域内の物体20の相対変位をもたらすことができ、フィルタ回路174は、例えば放射光に対してフィルタリングを実行することができ、また、センサ回路176は変換を実行することができる。センサ回路176は、光変換配列中の光変換要素178(例えば様々な寸法、様々な色または様々な輝度などの離散的光変換要素またはセルの組の長手方向シーケンス)を含むことができる。
【0061】
励起回路170は矢印180による励起光を供給し、これに応答して、物体20は矢印182による放射光をもたらし、放射光はフィルタ回路174に応答してフィルタリングされ、かつ光変換要素178によって変換される。光は、染料または他の付加された「タグ」の蛍光、あるいは生来の蛍光または自動蛍光、化学蛍光、バイオ蛍光、吸収、散乱、同時励起を除く他の現象、または照射以外の形式に起因し得る。
【0062】
励起回路170は、符号化/変換領域内の励起パターンを供給し得る。フィルタ回路174は、符号化/変換領域から放射する光を受け取るフィルタリングパターンを供給し得て、また、センサ回路176が供給し得るパターンで符号化/変換領域内の物体との相互作用が生じる。そのような回路は、符号化/変換領域内の物体とパターンの間の相対運動(例えば不均一な相対運動)を生起することによって制御信号に応答する運動デバイスまたは他のデバイスも含み得る。
【0063】
エンコーダ/センサ160は、示されたすべての回路を含むとは限らない。例えば、センサ回路176は、電極、ホール効果センサ、コイルまたは他の要素を有するインピーダンスベースの検出装置だけを含み得て、励起回路170、フィルタ回路174および変位回路172は省略されてよい。制御信号は、ライン184を通って流体または他の相対運動デバイスにもたらされ得て、その結果、相対運動は、情報を符号化するやり方で変化し得る。
【0064】
センサ回路176は、ボックス164によって、符号化/変換領域内の物体20の相対運動に起因する情報を有する1つ以上の時変波形を示す変換結果をもたらす。光変換要素178が長手方向シーケンスを含むなら、相対運動に起因する情報を有する時変波形を示す変換結果をもたらすために、シーケンスからの光変換結果が結合され得る。
【0065】
図5は、バス204または他の回路によって諸要素に接続された中央処理装置(CPU)202を有するシステム200を示す。
【0066】
システム200は、外部入力/出力(I/O)要素206およびメモリ208を含み、どちらもバス204に接続されている。外部I/O206によって、システム200の外部デバイスとの通信が可能になる。
【0067】
IC−I/O210によって、IC(例えばIC(0)212からIC(P−1)214のP個の一連のIC)との通信が可能になる。212から214のICは、光センサ配列218を有するIC(p)216を含む。デバイスI/O220によって、例えばデバイス(0)222からデバイス(Q−1)224のQ個の変換デバイスおよび制御デバイスとの通信が可能になる。デバイス222からデバイス224は、流体運動、走査運動、回転移動、または他の相対運動もしくは相対変位を引き起こす相対運動デバイス(例えば流体ポンプ、測定電極、スマートゲート、ゲート制御および二叉枝分かれ用のデバイス、バルブ、流量センサまたは圧力センサなど)を含むことができる。
【0068】
メモリ208はプログラムメモリ230を含み、ソフトウェアまたはハードウェアの他の形式で命令が与えられ得る。プログラムメモリ230は、不均一な相対運動のルーチン240、変換結果のルーチン242、および物体識別ルーチン244を保存する。
【0069】
CPU202は、ルーチン240を実行してシステム200の要素を操作し、変換領域(例えば符号化/変換領域)内の不均一な相対運動を生起する。ルーチン240は、デバイス222からデバイス224より入力信号を受け取り、かつデバイス224からデバイス222に出力信号を供給することができ、例えば計算を実行してどのような流体操作および変位操作が必要か判断し、次いで、信号を供給して、ポンプ、測定電極、ゲート、バルブ、および運動デバイスまたは他の変位デバイスを起動し、適切な不均一相対運動を生起する。
【0070】
CPU202は、ルーチン242を実行し、不均一な相対運動に起因する情報および他の要因に起因するかもしれない情報を有する時変波形を示す変換結果および/またはデータを得る。CPU202は、ルーチン240からの不均一な相対運動に起因する情報の符号化に加えて放射光の符号化を実行するために、例えば、励起要素、フィルタ要素、変換要素、または他の要素もしくはデバイスにどのような制御信号を供給するべきか判断することができる。
【0071】
CPU202は、例えば、物体のタイプまたは他の特性を示すデータを得るか、あるいは物体を選択する、物体を受け付けない、物体に関するさらなる情報を得る、などの動作を制御するために、物体識別ルーチン244も実行し得る。
【0072】
図6は、CPU202がルーチン242を実行することができるやり方を示す。
【0073】
ボックス260で、CPU202は、符号化された変換結果からデータを取得するための要求を受け取るかそうでなければ得る。CPU202は、変換結果を取得するための準備をなし得て、例えば、IC212からIC214の1つ以上に読出し制御信号を供給するか、あるいは、変換された量をアナログまたはデジタルの形式で連続的に供給するインピーダンスベースのセンサまたは他のセンサからの出力を監視する。
【0074】
CPU202は、変換前読出しを実行し、物体情報および変換期間を取得し、変換期間およびアナログ調整を用いて変換読出しを実行し、デジタル的に変換結果を調整して物体に関する量を保存し、かつ物体に関する量を結合して特性データを生成する。
【0075】
CPU202は、その変換動作を変更して、運動に関連した変換結果および/またはデータを得ることができる。ボックス262で、CPU202は、変換結果が符号化されて不均一な相対運動に起因する情報を有する時変波形を示すように、符号化/変換および/または相対運動をもたらす制御信号を供給する。次いで、CPU202は、ボックス264によって、符号化された変換結果の取得を開始する。
【0076】
次いで、ボックス266は、ボックス264からの符号化された変換結果を用いて運動に関連したデータを得る。CPU202は、例えば不均一な相対運動からの情報を保存するやり方で、符号化された変換結果からデータを得ることができる。あるいは、CPU202は、制御信号を必要としないやり方で(例えばインピーダンスベースの変換を用いて)運動に関連したデータを得ることができ、変換結果は、ボックス262によって、制御信号なしで例えば生得的に符号化され得る。
【0077】
CPU202は、ボックス266からボックス260への矢印によってボックス260へ戻り、別の要求を待つことができる。CPU202は、同時にいくつかの様々なセンサを使用し得る。
【0078】
図7では、支持構造物302上にアナライザ300がある。構造物302は蛇行チャンネル304を含み、これを通って、物体306は例えば流体によって搬送される。
【0079】
物体306は、推進要素によりチャンネル304を通って搬送され得て、また、除去されるかまたは例えばバルブの切換えによって流体で搬送されて排出口から出され得る。チャンネル304では、物体306は、物体との相互作用要素に関連した相互作用領域内の相対運動を有することができ、各々が物体306に関する情報を得る。
【0080】
クールター計数器310およびミー散乱センサ312は粒径検出器である。粒径情報を得るために、チャープフィルタパターン、小さなフィーチャサイズを有するランダムフィルタパターン、階段周期的フィルタパターンなどを用いる技法を含む様々な他の技法も用いられ得て、そのような技法によって、粒径を求めるために特殊な要素を使用することが不要になり得る。
【0081】
物体との相互作用要素320は、励起/変位要素322、フィルタ要素324、および変換要素326またはそれらのサブセットを含む。要素320は、形成された境界を有する変位制御装置および/または運動デバイスもしくは他の変位要素も含み得る。
【0082】
要素330、332および334は、第1および第2の蛍光変換要素およびラマン散乱変換要素を含む。物体のタイプの区別に基づいて、バルブ340は位置間で切り換わることができ、物体306は、矢印342によって1つの位置から出て、矢印344によって別の位置から出る。
【0083】
図8〜図11では、層流が、形づくられた境界および/またはチャンネルの運動機構中の運動デバイスの結果として不均一な変位またはその他の不均一な相対運動を生成することができる。
【0084】
図8で、要素400は形づくられた境界を有し、壁状部分410と412の間の距離は直線的に減少する。物体414が、互いに組み合わされた2色のパターン416を通るとき、その速度は、位置または時間の関数として曲線420によって直線的に増加する。結果として生じる時変信号はチャープ状(すなわち物体414を搬送する流体の流速の変化に起因してチャープ状に変化する相対運動のために周期が直線的に減少する)である。
【0085】
パターン416は、任意の適切なやり方で供給され得る。例えば、その領域は、励起領域または離散的光変換要素もしくは光変換配列の一部分など他のタイプの領域であり得る。フィルタ要素、光変換要素、または光変換配列の一部分であれば、領域は阻止領域によって囲まれ得る。
【0086】
曲線422は、変換結果(すなわち交番する輝度1(A)および1(B)を有するチャープ状信号)を示す。パターン416の各連続領域中の期間は先行の領域より短く、チャープ状パターンをもたらす。曲線422では遷移時間の直線的減少が強調されている。
【0087】
また、デバイスは、チャンネル内の流速または流れパターンを変化させ得て、より複雑で不均一な相対運動を生成する。多色の互いに組み合わされた干渉パターンまたはホログラフィック励起パターンが用いられ得る。
【0088】
図9の要素430では、励起パターンによって層流が維持され、また、チャンネル壁によって、励起領域は乱されぬまま依然として均質である。例えば荷電粒子が電界変化を受けても、チャンネル内での物体の不均一な相対運動が生起され得る。
【0089】
壁状部の440および442は平行であるが、各々が正弦波のように形づくられていてチャンネル内に正弦波の流れパターンをもたらし、これが正弦波状の経路に沿って周期的に変化する相対運動を生起する。領域444および領域446は、均質な、2つの異なる色またはグレーレベル「A」および「B」である。領域444および領域446は、縞状の励起領域または離散的光変換要素もしくは光変換配列の一部分など他のタイプの領域であり得て、フィルタ要素、光変換要素、または光変換配列の一部分であれば、領域は分離され、かつ阻止領域によって囲まれ得る。
【0090】
物体414は、領域444と領域446の間を前後に移動し、各周期でそれらの間の小間隙を2度通過する。曲線460および曲線462は、もたらされ得る時変信号を示す。曲線460は、Aの色またはグレーレベルで強く、Bの色またはグレーレベルで弱く、応答するかまたは放射する物体からのものであり、一方、曲線462は、Bの色またはグレーレベルで強く、Aの色またはグレーレベルで弱く、応答するかまたは放射する物体からのものである。これらの曲線は、経路450が間隙と交差する間は各々ほぼ0になるが、いくぶん相補的である。
【0091】
図10の要素470では、壁状部の472および474は平行な内側面を有するが、各々がランダムに変化する形状に作られており、チャンネル内のランダムに変化する流れパターンおよびランダムに変化する相対運動をもたらす。領域476および領域478は、均質な、2つの異なる色またはグレーレベル「A」および「B」である。
【0092】
物体414は、領域476と領域478の間を前後に移動し、それらの間の小間隙を通過する。曲線490および曲線492は、経路480を進む物体からの時変信号を示し、曲線490は、Aの色またはグレーレベルで強く、Bの色またはグレーレベルで弱く、応答するかまたは放射する物体に関するものであり、曲線492は、Bの色またはグレーレベルで強く、Aの色またはグレーレベルで弱く、応答するかまたは放射する物体に関するものである。これらの曲線は、経路480が間隙と交差する間は各々ほぼ0になるが、いくぶん相補的である。
【0093】
図11は要素500を示し、この要素では、運動デバイスまたは他の変位回路に制御信号を供給することによって生起された不均一な相対運動に関する情報が、運動に関連した変換結果によって符号化される。この例示的実装形態では、壁状部の502および504は、実質的に一直線で平行であり、したがって、何らかの付加的な要因なしで一様な相対運動を生じることになる。壁状部の502と504の間に長手方向領域の510および512があり、各々が符号化/変換領域514を横切って長手方向に延び、したがって、これらは領域444および領域446(図9)に関して前述したやり方のうち任意のもので実施し得る。
【0094】
ソレノイドまたはモータで動くピストンなど電気的に制御されたデバイスであり得る運動デバイス520は、物体414と領域510および領域512の間に双方向矢印522によって示された横方向の相対運動を生起する。制御回路524は、実例として、トリガ検出器(図示せず)からのトリガ信号に応答して、運動デバイス520の動作を制御するために信号を供給する。運動デバイス520の動作によって生起された不均一な相対運動は、周期的でなくてもよいが、任意の適切なタイプの速度/方向変化を有し得て、様々なタイプの物体を示す特徴を有する任意の時変信号を含むことができる変換結果をもたらす。相対運動を生成する代替の方法は、領域510および領域512の位置を制御する光源または他の要素を移動させるものとなり、より一般的には、一方では壁502と壁504の間の相対運動の任意の組合せが、もう一方では領域510と領域512の間の相対運動の任意の組合せが、双方向矢印522によって示されるような運動を生成し得る。その上、チャンネル内で流体の流れを変化させることにより、さらなる速度/方向の変化を生成し得て、その結果、物体414の速度または他の変位がその他の運動に関連して時間の関数として変化する。
【0095】
曲線530は、「帯域A」とラベルが付いた領域510と「帯域B」とラベルが付いた領域512の間の、物体414のy方向の運動を示す。ランダムに変化する相対運動の一例では、図示のように、物体414が各領域で過ごす時間の長さは様々であり、各領域で過ごす時間はランダムであり得る。曲線532および曲線534は、例示的変換結果(すなわち、領域510および領域512が、励起、フィルタリング、または帯域Aおよび帯域Bの変換をそれぞれもたらすなら、図11の技法によって取得され得る時変信号)を示す。一方のタイプの物体は、曲線532によって示されるように、領域510内の色Aでより強く応答するかまたはより強く放射し、その一方で、他方のタイプは、曲線534によって示されるように、領域512内の色Bでより強く応答するかまたはより強く放射する。領域510と領域512の間で各物体の相対運動が起こるので、相対運動が領域間の間隙を通過して励起または変換が一時的に中断され、その結果、各曲線は一時的にOになる。曲線532で、領域510内の輝度はI(A1)であり、その一方で領域512内の輝度はI(B1)でより低い値である。反対に、曲線534が示すものは、領域512で輝度がI(B2)でより高く、領域510で輝度がI(A2)でより低い。一般に、2つの曲線は、両曲線が領域510と領域512の間の間隙を通過しているときを除いて相補的であり、物体414は、帯域Aと帯域Bの間を瞬時に移動することができ、領域510と領域512の間の間隙を横切って非常に速く移動し、その結果、間隙を通過する時間は非常に短い。
【0096】
上記に示されたように、不均一な相対運動の技法は、流体構造内の相対運動が流体デバイスによって生起される実装形態に限定されるものではなく、非流体デバイスによって非流体構造内で生起される相対運動を含む他のタイプの相対運動を用いて利用され得る。図12〜図14は、非流体デバイスが、前述の変調された相対運動などの不均一な相対運動を生成する例を示す。一般に、図12〜図14の技法は、様々なやり方で実施することができる。
【0097】
図12〜図14では、1つの要素が支持構造物を含み、その上に物体が支持されており、別の要素が物体との相互作用ユニットを含み、このユニットはトリガ検出器およびエンコーダ/センサを有する。どちらの要素も、デバイスによって制御信号に応答して移動することができ、あるいは一方の要素が静止し得て他方だけが移動され得る。
【0098】
エンコーダ/センサとは対照的に、時として「トリガ検出要素」または「トリガ検出デバイス」と称され得る「トリガ検出器」は、本明細書で一般に「トリガ信号」と称される、条件または現象の検出を示す信号を供給することにより検出された条件または現象に応答するセンサである。例えば、トリガ検出器は、特定の領域内に識別可能な物体を検出したとき、トリガ信号を供給し得る。トリガ検出器は、個別の要素またはデバイスであり得るか、あるいは、例えば光変換配列のトリガ部分を読み出す操作により、または別の適切なやり方でもたらされ得る。しかし、前述のように、本明細書ではトリガ検出器の使用を一般に必要とせず、図12〜図14と類似の実装形態ではトリガ検出器を省略することができる。
【0099】
支持構造物は、例えばスライド、ベッドまたはディスク、1つ以上のチャンネルの内部に物体が固定されるかもしくは物体がデバイスの動作によってもたらされた不均一な相対運動に関連して内部でゆっくり移動している流体デバイス、または唾液もしくは他の液体中のように間に物体が置かれた一対のスライド、物体を含む毛細管、バイオチップ、ウェルの配列、ウェルプレートなどを含み得るが、これらは、例えばスキャナベッドまたは回転ディスク上に位置決めされ得る。作用ユニットにおける検出および変換は、光の光学変換、電極またはホール効果素子などを用いたインピーダンスベースの変換、あるいは、音響信号の圧電変換またはその他の圧力ベースの変換さえ含む任意の適当な相互作用を利用し得る。
【0100】
図12のシステム930は、支持要素934および936を有するスキャナデバイス932を含む。支持構造物940は支持要素934上に取り付けられ、識別可能な物体942を支持する。物体との相互作用ユニット944は支持要素936上に取り付けられ、トリガ検出器946およびエンコーダ/センサ948を含む。x軸、y軸、およびz軸の相補的な2つの組は、物体942のうちの1つおよび物体との相互作用ユニット944向けであり、どちらか一方または両方を移動させることにより支持構造物940と物体との相互作用ユニット944の間の相対運動を達成することができる様子を示す。X軸は、スキャナデバイス932が相対運動をもたらすことができる走査方向を示す。Y軸は相対運動の方向を示し、この方向では、支持構造物940と、物体との相互作用ユニット944の間の距離は一定のままであり得るが、走査方向に対して垂直に変位が生じることがある。z軸が示す方向では、支持構造物940と、物体との相互作用ユニット944とが、互いにより接近するか、またはより遠ざかって移動することができる。
【0101】
スキャナデバイス932は、例えばCPU402からデバイス制御IO220を経由した走査制御信号に応答して、支持構造物940および/または物体との相互作用ユニット944を移動することにより、走査方向における相対運動を生成する。トリガ検出器946が物体942のうちの1つ向けのトリガ信号を供給すると、CPU202は、スキャナデバイス932にトリガ応答の変位制御信号を供給することができ、スキャナデバイス932は、支持構造物940および/または物体制御ユニット944を移動して変位をもたらし、一方、物体942はエンコーダ/センサ948の符号化/変換領域内で相対運動を有する。x軸、y軸、z軸によって示された方向における変位は、運動に関連した変換結果および/または相対運動に起因する情報を有する時変波形を示すデータを得るのに用いることができる。3つの方向のうちどの方向の変位も、符号化/変換領域内で変調サイクルを含むことができ、その結果、走査運動は搬送要素であり、変位は変調サイクルを含む。
【0102】
図13および図14で、システム960は回転デバイス962を含み、このデバイスは、支持要素964および966を介して回転動作を生成することができ、小型化したデバイス(例えばMEMSまたはナノテクノロジーのデバイス)でよい。支持構造物970は物体972を支持し、円形または別の形状であり得る。支持構造物970は、双方向矢印976によって軸974のまわりで回転することができる。物体との相互作用ユニット980は、トリガ検出器(TD)982およびエンコーダ/センサ(E/S)984を含み、軸986のまわりで回転することができる。TD982およびE/S984については、高さはz方向に別々に調整され得る。
【0103】
相対運動の3つの次元は、矢印976による角回転のθ方向、支持構造物970の回転軸から物体との相互作用ユニット980への距離r、およびz方向を含む。支持構造物970はθ方向に回転するが、物体972はトリガ検出器982のトリガ検出領域へ相対運動を有することができ、回転デバイス962により、回転制御信号に応答して回転動作が生成される。CPU202からのトリガ応答性の変位制御信号に応答して、回転デバイス962は、θ方向、r方向、および/またはz方向の変位を生成することができ、一方、物体972は、エンコーダ/センサ984の符号化/変換領域内で相対運動を有する。構造物970上およびユニット980上の相補的なr軸およびz軸は、デバイス962が、支持構造物970および980が安定して取り付けられている支持要素964および966の一方または両方を移動することにより、これらの方向に変位を生成することができる様子を示し、トリガ検出器982とエンコーダ/センサ984を、例えばz方向に別々に変位させることが可能であり得る。変位は、符号化/変換領域内での変調サイクルを含むことができ、その結果、回転運動は搬送要素であり、変位は変調サイクルを含む。
【0104】
実装形態は、例えば蛍光ベースまたはインピーダンスベースのフローサイトメトリ(速度不明の粒子のシグナチュアを求めるバイオ検出器用途)に適用され得て、あるいは様々なタイプのタグ付き細胞、粒子、タグ付きDNAなどの蛍光を発する様々なタイプの物体間の比をカウントするかまたは取得するために適用され得る。製作公差に起因する偏差を含むが未知の物体に関する情報を得るのに変換済波形と比較することができるテンプレート波形を得るために、既知の速度の既知の物体(例えばタグ付きビーズ)を使用して較正を実行することができる。
【0105】
実装形態は、例えば注意ポイントのフローサイトメトリ、DNA解析、プロテオミクスなど、コンパクトで危険光学部品がなく変換効率の高い低コストの要素を必要とするバイオ検出器用途で利用されてよい。
【0106】
実装形態は、物体が様々な放射スペクトルを有するときなどバイオチップまたはドキュメントを走査し得て、また、例えばソナーのように物体速度が信号の伝搬速度程度であって、既知信号が不明の速度で進む物体に当って跳ね返る様々な低S/N比システムで利用され得る。
【符号の説明】
【0107】
10 システム、12 センサ、14 変換領域、16 相対運動要素、18 回路要素、20 物体、22 矢印、24 矢印、26 矢印、30 ボックス、32 ボックス、60 流体運動機構、62 チャンネル運動機構、64 支持体運動機構、66 センサ/パターン運動機構、70 流体構造、72 チャンネル壁、74 矢印、76 矢印、80 支持構造物、82 デバイス、84 x軸およびz軸、86 x軸およびz軸、100 変位制御機構、102 制御要素、104 制御要素、110 制御要素、112 境界、120 制御要素、122 運動デバイス、124 矢印、126 ライン、150 境界、152 矢印、160 エンコーダ/センサ、162 制御回路、164ボックス、170 励起回路、172 変位回路、174 フィルタ回路、176 センサ回路、178 光変換要素、180 矢印、182 矢印、184 ライン、200 システム、202 CPU、204 バス、206 外部入力/出力(I/O)要素、208 メモリ、210 IC I/O、212 IC、214 IC、216 IC、218 光センサ配列、220 デバイスI/O、222 デバイス、224 デバイス、230 メモリ、240 相対運動ルーチン、242 変換結果ルーチン、244 物体識別ルーチン、260 ボックス、262 ボックス、264 ボックス、266 ボックス、300 アナライザ、302 支持構造物、304 蛇行チャンネル、306 物体、310 クールター計数器、312 ミー散乱センサ、320 物体との相互作用要素、322 励起/変位要素、324 フィルタ要素、326 変換要素、330 要素、332 要素、334 要素、340 バルブ、342 矢印、344 矢印、400 要素、410 壁状部分、412 壁状部分、414 物体、416 2色のパターン、420 曲線、422 曲線、430 要素、440 壁状部、442 壁状部、444 領域、446 領域、450 経路、460 曲線、462 曲線、470 要素、472 壁状部、474 壁状部、476 領域、478 領域、480 経路、490 曲線、492 曲線、500 要素、502 壁状部、504 壁状部、510 長手方向領域、512 長手方向領域、520 運動デバイス、522 矢印、524 制御回路、530 曲線、532 曲線、534 曲線、930 システム、932 スキャナデバイス、934 支持要素、936 支持要素、940 支持構造物、942 物体、944 物体との相互作用ユニット、946 トリガ検出器、948 エンコーダ/センサ、960 システム、962 回転デバイス、964 支持要素、966 支持要素、970 支持構造物、972 物体、974 軸、976 双方向矢印、980 物体との相互作用ユニット、982 トリガ検出器、984 エンコーダ/センサ、986 軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作中、センサに関連した変換領域内の物体から変換結果を得るセンサと、
動作中、前記物体のサブセットの各々にそれぞれの相対運動をもたらす相対運動要素とを備えるシステムであって、前記サブセット中の前記物体の各々が前記変換領域内でそれぞれの相対運動を有し、前記相対運動要素が、少なくとも1つの物体の前記変換領域内の相対運動を不均一にし、前記変換領域内の前記不均一な相対運動が、
周期的に変化する相対運動と、
ランダムに変化する相対運動と、
チャープ状に変化する相対運動と、
前記変換領域内の少なくとも1つの変調サイクルを完成する変調された相対運動とのうち少なくとも1つを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
センサを操作して前記センサに関連した変換領域内の物体から変換結果を得るステップを含む、センサを使用する方法であって、前記センサを操作する作用が、
前記物体の各サブセットのそれぞれの相対運動を生起するステップであって、各物体の相対運動が前記変換領域内のそれぞれの相対運動を含み、前記サブセット中の少なくとも1つの物体に関して、前記それぞれの相対運動が前記変換領域内で不均一であって、前記変換領域内の前記不均一な相対運動が、
周期的に変化する相対運動と、
ランダムに変化する相対運動と、
チャープ状に変化する相対運動と、
前記変換領域内の少なくとも1つの変調サイクルを完成する変調された相対運動とのうち少なくとも1つを含むステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
チャンネルを境界づけるチャンネル壁を含む流体構造であって、動作中、流体が前記チャンネルを通って長手方向に物体を運び、前記チャンネルが1組の1つ以上の領域を含み、動作中、前記領域の各々がそれぞれのセンサに関連した変換領域となり、各領域のセンサが前記領域内の物体から変換結果を得ることができる流体構造と、
動作中、前記チャンネルを通して長手方向に流体を駆動し、かつ、物体に各領域内のそれぞれの長手方向の相対運動を与える流体デバイスと、を備える製品であって、
前記組中の形づくられた壁の領域を境界づける内側面を有するチャンネル壁部分であって、前記内側面が前記形づくられた壁の領域内の物体のそれぞれの相対運動を不均一にする形状を有するチャンネル壁部分と、
動作中、前記組中の変位領域内で物体の時変相対変位を生起する変位要素であって、前記相対変位が、長手方向と平行でない横方向のものであり、かつ少なくとも1つの物体の前記変位領域内での相対運動を不均一にする変位要素とのうち少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする製品。
【請求項4】
使用するとき物体を支持する支持構造物と、
センサと、
制御信号に応答して前記支持構造物および前記センサの一方または両方を移動して前記支持構造物上に支持された物体に前記センサに関連した変換領域内でそれぞれの相対運動を与える相対運動要素であって、前記センサが前記変換領域内の物体から変換結果を得ることができる相対運動要素と、を備える製品であって、前記相対運動要素が、
動作中、前記支持構造物の運動を制御する支持体運動機構と、
動作中、前記センサの運動を制御するセンサ運動機構と、
制御信号を供給する制御回路であって、前記相対運動要素が、前記制御信号に応答して少なくとも1つの物体の前記変換領域内の相対運動を不均一にする制御回路のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−180729(P2009−180729A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−19175(P2009−19175)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】