説明

相溶性混合溶剤分離装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相溶性の溶剤が混合している混合ガスを各成分ガスに分離する相溶性混合溶剤分離装置に関し、とくに廃棄された冷蔵庫の断熱材に発泡剤として使用されているフロンおよびシクロペンタンの混合ガスからCFC11とHCFC141bとシクロペンタンとを分離する相溶性混合溶剤分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】廃棄された冷蔵庫の断熱材中には、ウレタン等の発泡剤としてフロン系ガスであるCFC11、HCFC141b等またはシクロペンタンが含まれている。従来の冷蔵庫では、もっぱらCFC11が用いられていたが、オゾン層保護および地球温暖化防止のため、オゾン破壊作用の強いCFC11に代えて、オゾン破壊作用の小さいHCFC141bを使用する断熱材が使用されてきた。さらに、温暖化係数の低いシクロペンタンを使用した断熱材が主流になってきている。シクロペンタンは炭化水素であり、引火性が高いので、シクロペンタンのみを処理する場合には、防爆処理を施して回収処分しなければならない。近年、発泡剤をフロンからシクロペンタンに代えた断熱材を用いた冷蔵庫が廃棄される時期に入り、従来大量に使用されていたCFC11を発泡剤として含む断熱材と混じり合って回収されるようになっている。なお、シクロペンタンは上記したように燃料として用いることができるが、CFC11やHCFC141b等のフロンは不燃性である。
【0003】回収したCFC11とHCFC141bとシクロペンタンとの混合物は焼却処理により処理することができるが、触媒処理による処理方法は、CFC11単独では処理可能であるが、シクロペンタンとCFC11とHCFC141bとの混合物では処理することができない。シクロペンタンとCFC11とHCFC141bとの相互分離ができれば、CFC11とHCFC141bとは各種のフロン無害化設備で処理し、シクロペンタンは現状では希釈放散してもよいし、また燃料等として用いることができ、後に問題を残すことなく処理をスムースに進めることができる。オゾン破壊作用の小さいHCFC141bも、今後の規制強化を考慮して分離回収されるほうが望ましい。このような廃棄冷蔵庫の回収処理は冷蔵庫製造メーカによって行われる。廃棄冷蔵庫は、現状、CFC11を用いたものと、HCFC141bを用いたものと、シクロペンタンを用いたものとが混在するが、これらの廃棄冷蔵庫の処理におけるCFC11とHCFC141bとシクロペンタンとの分離回収は次の方法で行われている。
(a)予め、冷媒とオイルとが抜かれ圧縮機が除去された廃棄冷蔵庫を冷蔵庫ごと破砕機にかけ破砕する。
(b)風力選別により、鉄、プラスチック、および断熱材であるウレタンを分離する。
(c)ウレタンだけをすり潰す。
(d)ウレタンから放出されるCFC11とシクロペンタン(とHCFC141b)とはともに活性炭に吸着させる。これは、空気に希薄に混合した状態では、分離回収処理が困難なので高濃度にするためである。この吸着処理には、現在、1バッチ45分間程度かかっている。この時間は、混合ガス濃度と活性炭の量によって決定される。
(e)このフロンとシクロペンタンとが吸着された活性炭に120℃程度の熱水蒸気を吹き付け、吸着したCFC11とシクロペンタン(とHCFC141b)とを水蒸気とともに活性炭から脱離させ、活性炭を再生させる。この活性炭の再生、すなわち水蒸気によるCFC11とシクロペンタン(とHCFC141b)との脱離に、1バッチ30分間程度かかっている。
【0004】上記により回収されたCFC11+シクロペンタン+水蒸気(+HCFC141b)の混合ガスは、CFC11とシクロペンタンとが一定範囲内の比率の場合には、分離することができる。この結果、CFC11のみを各種のフロン無害化設備によって処理し、シクロペンタンは大気放出または燃料として適宜用いている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4は、CFC11と水とを分離する従来の分離装置を示す図である。これまでは、廃棄される冷蔵庫の断熱材に使用されている発泡剤は、ほとんどがCFC11であったため、この方式で凝縮水とCFC11とが分離できればよかった。この従来の分離装置の考え方は、活性炭に吸着させた上記の混合ガスを熱水蒸気によって脱離して、その後は、水とCFC11とを凝縮させた混合液体を静置して比重の相違によって、それぞれの成分層に分離させるというものである。すなわち、混合ガスを凝縮させるために熱交換装置(コンデンサ)は用いるが、あくまで凝縮した混合液体を得るために用い、CFC11と水との分離は、比重の相違によって分けるものである。図4において、今後、徐々にHCFC141bおよびシクロペンタンを発泡剤に使用した冷蔵庫の使用が増えてくると、熱水蒸気とシクロペンタンとCFC11との混合ガスが、1段目コンデンサ101に送り込まれるようになる。1段目コンデンサ101には、冷媒として32℃の水が供給され、上記混合ガスと熱交換することにより沸点の高い水蒸気とシクロペンタンを凝縮させる。凝縮した水蒸気とシクロペンタンとは、未凝縮の混合ガスとともに2段目コンデンサ102に送り込まれる。2段目コンデンサに送り込まれた未凝縮ガスと凝縮した水蒸気(水)とシクロペンタンとは、チラーによって冷却された7〜10℃の冷水と熱交換して、ほとんどすべてのガスを混合液体として凝縮させ、分離槽105に貯められ静置される。この静置により、比重に応じて最下層のCFC11と、下層のHCFC141bと、上層の水と、最上層のシクロペンタンとに分離するはずである。しかし、CFC11とHCFC141bとシクロペンタンとは、相溶性があるため発泡剤の濃度に応じて混合比が変わり、それに伴い比重も変動するので、分離回収が困難になる。
【0006】また、シクロペンタン分離対策として、上記の図4を改良した図5の分離回収装置が考えられる。図5では、HCFC141bを含む場合について、動作原理が示されている。上記の混合ガスが送り込まれる1段目コンデンサ101には、冷媒として32℃の水が供給され、上記混合ガスと熱交換することにより沸点の高い水蒸気とシクロペンタンとを凝縮させ第1分離槽105に凝縮水とシクロペンタンとを貯める。この混合液体は静置されると下層の水と上層のシクロペンタンとに分離する。次いで、1段目コンデンサ101を経由して2段目コンデンサ102に送り込まれた混合ガスは、チラ−によって冷却された7〜10℃の水と熱交換して、ほとんど全てのガスを混合液体として凝縮させ、第2分離槽106に混合液体を貯める。この混合液体は、第2分離槽106に貯められ静置されると、下層のCFC11およびHCFC141bの混合液体と、上層の水とに分離する。CFC11とHCFC141bとシクロペンタンとは相溶性があるが、水に対してはともに不溶である。下層のCFC11およびHCFC141bの混合液体は第2分離槽106から抜かれて(CFC11+HCFC141b)のタンクに回収される。不凝縮ガスの量はきわめて微量であるが、大気に放出されることはなく、吸着装置に再び送り込まれる。CHC11とHCFC141bとシクロペンタンとは相溶性があるため、上記の分離回収されたCFC11およびHCFC141bの混合液体は、少量のシクロペンタンを含んでおり、また、上記シクロペンタンは少量のHCFC141bとCFC11とを含んでいる。したがって、分離は、触媒処理ができるほどのレベルの分離にならない場合がある。しかし、この分離レベルであっても、焼却処理を行う場合には問題なく処分することができる。
【0007】上記分離装置は、シクロペンタンのCFC11に対する比率が0.8以上と大きい場合には、CFC11とシクロペンタンとの混合液は水より軽くなり水と分離することができる。また、シクロペンタンのCFC11に対する比率が0.5未満であれば、水より重くなり水と分離することができる。しかし、シクロペンタンのCFC11に対する比率が0.8未満または0.5以上になるとシクロペンタンとCFC11とを分離できなくなる。すなわち、CFC11とシクロペンタンとの混合比により、シクロペンタンとCFC11とは混合液を形成して水と分離するが、この混合液の層の位置は、水の層の位置に対して上層になったり下層になったり、混合比によって変動する。この理由は、CFC11主体の混合液、シクロペンタン主体の混合液の比重も混合比によって変化するためである。このため、比重を利用しての分離は困難となる。また、光学的に境界面を検出できたとしても、どちらが上層になっているかを判別できないため、自動的に連続分離回収することは不可能である。
【0008】さらに、近年では、HCFC141bを含む混合ガスの分離回収を行わなければならない場合があるが、上記したように、HCFC141bはシクロペンタンと混合状態で回収してもよいし、CFC11と混合状態で回収してもよい。
【0009】また、廃棄冷蔵庫は大量に発生する予定であり、廃棄処理におけるフロンガスの分離回収にも高能率の操業が求められている。高能率の分離処理装置では、上記の混合ガスを吸着装置から離脱させる際、短時間のうちに大量の熱水蒸気を用いる。このため、コンデンサにはその大量の熱水蒸気に見合った、単位時間あたり大量の冷却水を用いる必要がある。単位時間あたり大量の冷却水を供給する大型チラーを用いると、分離装置は高価なものとなり、また電力代等の操業費用も増大する。
【0010】そこで、本発明はシクロペンタンとCFC11との比率に関係なく、シクロペンタンとCFC11とHCFC141bとを確実に分離することができる相溶性混合溶剤分離装置を提供することを目的とする。とくに、大型チラー等を設ける必要がなく、かつ高能率の相溶性混合溶剤分離装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の相溶性混合溶剤分離装置は、水蒸気、水蒸気よりも沸点が低い第1発泡成分ガス、第1発泡成分ガスよりも沸点が低い第2発泡成分ガスおよび第2発泡成分ガスよりも沸点が低い第3発泡成分ガスを含む混合ガスを吸着し、熱水蒸気により前記混合ガスを熱水蒸気とともに離脱させる吸着再生装置と、熱水蒸気と混合ガスとを凝縮装置に送り込む送風手段を備えている。さらに、この相溶性混合溶剤分離装置熱水蒸気および混合ガスと第1の温度で熱交換して水蒸気と第1発泡成分ガスとを凝縮させる第1熱交換装置と、第1熱交換装置に冷却媒体を送る冷却塔と、第1熱交換装置から送り出されたガスと第1の温度よりも低い第2の温度で熱交換して、第2発泡成分ガスを凝縮させる第2熱交換装置と、第2熱交換装置から送り出されたガスと第2の温度よりも低い第3の温度で熱交換して、第3発泡成分ガスを凝縮させる第3熱交換装置と、第2および第3の熱交換装置に冷却媒体を送るチラーとを備える。
【0012】上記の構成により、第1熱交換装置で水蒸気と第1発泡成分ガスとを凝縮させる場合にチラーからの水を用いることなく、冷却塔の水を使用することができる。この結果、大量の熱水蒸気の凝縮にチラーからの水を用いる必要がなくなり、チラー容量をいちじるしく小型化することができる。この結果、チラー等の設備投資を抑制し、かつ電力代等の操業費用を低減することが可能となる。本発明の相溶性混合溶剤分離装置は、水蒸気とシクロペンタンとCFC11とが含まれる混合ガスを主な対象にするが、上記の成分以外に、フロン系ガスであるHCFC141bや、水より沸点の高い発泡成分を含んでいてもよい。しかし、以下の説明では、とくに断らない限り、混合ガスは、水蒸気とシクロペンタンとCFC11とHCFC141bとが含まれる混合ガスを指す。その他に第4の発泡成分ガスを含むものも、もちろん対象にすることができる。表1に、水蒸気以外の成分として想定されるCFC11、シクロペンタンおよびHCFC141bの物性値を示す。
【0013】
【表1】


【0014】表1の各成分のうち、オゾン層に悪影響を及ぼすのはCFC11が大きい。CFC11を1とした場合、HCFC141bは0.11となっている。表1によれば、CFC11の沸点が最も低く23.8℃であり、次いでHCFC141bの32℃、シクロペンタンの49.5℃となる。本発明の相溶性混合溶剤分離装置では、混合ガスからCFC11とシクロペンタンとを確実に分離しなければならない。上記構成により、第2熱交換装置を経由して第3熱交換装置に向かうガスの成分の主体をCFC11またはCFC11と若干のHCFC141bとして、第3熱交換装置でCFC11の液体またはCFC11とHCFC141bとの混合液体を凝縮させることができる。本発明の相溶性混合溶剤分離装置が対象とする混合ガスは、水よりも沸点の高いオイル等のガスを含む場合も想定している。この場合には、第1熱交換装置でオイル等のガスまたはオイル等のガスとシクロペンタンと水蒸気とを凝縮させ、第2熱交換装置で水蒸気または水蒸気とHCFC141bとを主成分にして凝縮させる。上記の説明ではHCFC141bの比率は小さいものとしている。また、水が第1および第2熱交換装置の両方に凝縮するのは、沸点以下であっても、上記2つの熱交換装置の温度差に相当して結露する湿分が多いからである。
【0015】上記のオイル等のガスを含まず、水蒸気と表1に示す成分が含まれる場合には、第2熱交換装置では、HCFC141bと若干のシクロペンタンを凝縮することができる。混合ガスの大きな比率を占める大量の熱水蒸気は、経済性を考慮して交換温度を高く設定した第1熱交換装置で高能率で凝縮させることができる。各熱交換装置に移る際に、凝結する水分は次段の熱交換装置で凝縮する。
【0016】上記の3基の熱交換装置を用いることにより、CHC11とシクロペンタンとを確実に分離することができ、かつ短時間のうちに大量に使用される水蒸気を経済性を考慮して高能率で処理できる。このため、高能率の分離処理装置でありながら、例えば、第2および第3熱交換装置に送り込む冷媒を供給するチラー等の設備を小型化することができ、設備投資額の抑制や省エネルギを達成することが可能となる。また、確実に分離されたCFC11は焼却処分および触媒処分等のいずれの方法でも処分でき、状況に応じた処分方法が可能となる。また、冷蔵庫によっては、HCFC141bを発泡剤に用いるものも多く、CFC11と、シクロペンタンと、かなりの比率のHCFC141bとを含むものを分離回収する場合がある。この場合でも、上記の3基の熱交換装置を用いて経済的な分離回収を実施することができる。さらに、オイル等の水よりも沸点の高い成分をさらに含む混合ガスから、後の処分が容易な混合液体の構成をとったうえで、CFC11とシクロペンタンとを分離することが可能となる。すなわち、3段の熱交換装置の構成をとることにより、対象とする混合ガスの種類に応じて、廃棄冷蔵庫の処分に対してトータルで安価な処理方法を柔軟に採用する可能性がひらける。
【0017】請求項2の相溶性混合溶剤分離装置では、請求項1の装置において、第1の温度が、水蒸気の沸点温度および第1発泡成分ガスの沸点温度より低く、第2の温度が、第2発泡成分ガスの沸点温度よりも低く、第3の温度が、第3発泡成分ガスの沸点温度よりも低い温度である。
【0018】上記の構成により、各熱交換装置で生成する液体は、大まかに3種類の液体に分けられ、第2の温度で熱交換して生成した液体は第2発泡成分を主成分として含み、第3の温度で熱交換して生成した液体は第3発泡成分を主成分としている。
【0019】
【0020】
【0021】請求項の相溶性混合溶剤分離装置では、請求項1〜3のいずれかの装置において、第1発泡成分ガスがシクロペンタンであり、第2発泡成分ガスがフロン系ガスHCFC141bであり、第3発泡成分ガスがフロン系ガスCFC11である。
【0022】上記の混合ガスの場合に、シクロペンタンとフロン系ガスのうちのCFC11とを経済的に分離することができる。この結果、CFC11は焼却処分でも触媒処理でも処分方法が多様化し、状況に応じた処分が可能となる。
【0023】請求項の相溶性混合溶剤分離装置では、請求項1〜4のいずれかの装置において、第1発泡成分ガス、第2発泡成分ガスおよび第3発泡成分ガスを含む混合ガスを吸着し、熱水蒸気により混合ガスを熱水蒸気とともに離脱させる吸着再生装置を備えている。
【0024】この構成により、1台の吸着再生装置で混合ガスの吸着と混合ガスの放出(再生)とを交互に行うことができる。また、2台の吸着再生装置を用いることにより、一方の吸着装置をウレタンをすり潰して発生したガスの吸着処理に用い、他方の吸着装置をすでに吸着処理を行って混合ガスを吸着している吸着装置に熱水蒸気を送り込んで再生処理に用いることができる。この結果、高能率で廃冷蔵庫の断熱材の処分を行うことが可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】次に、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0026】(実施の形態1)図1は、本発明の相溶性混合溶剤分離装置の概略構成を示す図である。図1において、120℃の熱水蒸気には、シクロペンタン、HCFC141bおよびCFC11が含まれている。第1コンデンサ1には、冷媒として冷却塔から供給される32℃の水が用いられる。上記の混合ガスは、この第1コンデンサで32℃の水と熱交換して、42℃程度の凝縮水とシクロペンタンとを分離槽5に貯める。分離槽5に静置された水とシクロペンタンとは、下層の水および上層のシクロペンタンに分離される。次に、第1コンデンサ1を経由した混合ガスは第2コンデンサ2で、25℃のチラー水と熱交換して若干のシクロペンタンとHCFC141bとの混合液体および水を凝縮させる。分離槽6に静置されたこの水と混合液体とは、上層の水および下層の若干のシクロペンタンとHCFC141bとの混合液体に分離される。第2コンデンサ2を経由して残ったガスは、ほとんどCFC11であり、第3コンデンサ3で7℃のチラー水と熱交換してCFC11の液体を凝縮してCFC回収槽7に貯められる。第3コンデンサ3を経由して残った不凝縮ガスは、ごく微量であるが吸着装置に再度送り込まれる。
【0027】上記の分離装置によれば、シクロペンタンとCFC11とは沸点の相違によって分離されるので、たとえ両者に相溶性があっても分離は問題なく行われる。また、HCFC141bとシクロペンタンとは混合状態にあるが両方ともオゾン破壊性はゼロに近いので、大気放出でも焼却でもよく、処分方法の制限はない。また、第1コンデンサでは大量の冷却水を用いるが、冷却塔からの32℃の水を用いるので、チラーの容量を大きくする必要がない。このため、設備費用は抑制され、また分離のための操業の電力代も低減される。また、他の種類のガスを含む場合にも、廃棄冷蔵庫の処分を全体的に考えて、安価で効率的な処分方法を採用する可能性がひらける。
【0028】図2は、図1に示す概略構成を具体化した相溶性混合溶剤分離装置を示す構成図である。図2において、図1と同じ番号を付してある部材は、図1と同じ部材である。図2において、冷却塔10で冷却された32℃の水はポンプ11により送り出されて、第1コンデンサ1に送り込まれる。この冷却塔は、大型チラーのように高価ではないが、32℃程度の水を短時間のうちに大量に供給することができる。したがって、本発明の相溶性混合溶剤分離装置では、コンデンサを3段直列に接続して、1段目の冷却水を32℃程度とするので、大型チラーの設置を不要とし、しかも高能率に凝縮することが可能となる。このため、設備費用および電力代等の操業費を大幅に抑制することができる。
【0029】図3は、断熱材であるウレタンをすり潰して放出されるCFC11+シクロペンタン+HCFC141bの混合ガスを吸着する吸着装置を示す構成図である。吸着装置21に上記の混合ガスを吸着させる場合には、バルブ24、27および29とを閉じて、バルブ23と25とを開けて、ブロワ31により混合ガスを吸着装置21に送り込み、吸着させる。吸着剤には活性炭を用いることができる。吸着された残りの空気は、開状態のバルブ25から排気される。廃棄冷蔵庫の処理を進行させながら、吸着された混合ガスの分離回収を行う場合には、吸着装置22にて上記の要領で吸着をしながら、吸着装置21には120℃程度の熱水蒸気を送り込む。このため、バルブ25、23、は閉じて、バルブ27、29を開け、熱水蒸気を吸着装置21に送る。熱水蒸気と接触した上記の成分は吸着装置から脱離して、水蒸気と混合した混合ガスとして第1コンデンサ1に送り込まれる。
【0030】上記の吸着再生装置の構成により、一方の吸着装置でCFC11とシクロペンタンとを含む混合ガスの吸着をしながら、他方の吸着装置を熱水蒸気によって再生させることができる。再生のときは、当然、上記の混合ガスは離脱して、図1および図2に説明する分離装置に送り込まれる。
【0031】本実施の形態の分離装置を用いることにより、相溶性混合溶剤を沸点の差を利用して確実に高能率で分離することができる。さらに、3段のコンデンサを用い、1段目のコンデンサに冷却塔で冷却された水を冷媒として用いるので、大量分離できる高能率の装置であるにもかかわらず高価な大型チラーを設ける必要がない。このため、設備費用および電気代等の操業費用を大幅に抑制することが可能となった。
【0032】上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【0033】
【発明の効果】本発明の相溶性混合溶剤分離装置は、従来と相違して沸点の差によりCFC11とシクロペンタンとを分離するので、シクロペンタンとCFC11との比率に関係なく、シクロペンタンとCFC11とを確実に分離することができる。また、コンデンサの構成を3段にしたので、大型チラー等を設ける必要がなく、冷却塔の水を1段目のコンデンサに用いることにより高能率の相溶性混合溶剤分離装置を提供することができる。さらに、他の成分を含む場合にも、廃棄冷蔵庫処分を全体的に安価にする方法を採用できる可能性がひらける。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の相溶性混合溶剤分離装置の構成概念図である。
【図2】 図1に示す概略構成を具体化した相溶性混合溶剤分離装置の構成図である。
【図3】 本発明の実施の形態の相溶性混合溶剤分離装置の吸着再生装置の構成を示す図である。
【図4】 従来の分離装置の1例の構成概念図である。
【図5】 従来の分離装置の他の例の構成概念図である。
【符号の説明】
1 第1コンデンサ、2 第2コンデンサ、3 第3コンデンサ、5,6 分離槽、7 CFC11貯留槽、10 冷却塔、11 ポンプ、21,22 吸着装置、23,24,25,26,27,28,29,30 バルブ、31 ブロワ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水蒸気、水蒸気よりも沸点が低い第1発泡成分ガス、前記第1発泡成分ガスよりも沸点が低い第2発泡成分ガスおよび前記第2発泡成分ガスよりも沸点が低い第3発泡成分ガスを含む混合ガスを吸着し、熱水蒸気により前記混合ガスを熱水蒸気とともに離脱させる吸着再生装置と、前記熱水蒸気と混合ガスとを凝縮装置に送り込む送風手段と、前記熱水蒸気および前記混合ガスと第1の温度で熱交換して水蒸気と前記第1発泡成分ガスとを凝縮させる第1熱交換装置と、前記第1熱交換装置に水を送る冷却塔と、前記第1熱交換装置から送り出されたガスと前記第1の温度よりも低い第2の温度で熱交換して、前記第2発泡成分ガスを凝縮させる第2熱交換装置と、前記第2熱交換装置から送り出されたガスと前記第2の温度よりも低い第3の温度で熱交換して、前記第3発泡成分ガスを凝縮させる第3熱交換装置と前記第2および第3の熱交換装置に冷却水を送るチラーと、を備える、相溶性混合溶剤分離装置。
【請求項2】 前記第1の温度が、水蒸気の沸点温度および前記第1発泡成分ガスの沸点温度より低く、前記第2の温度が、前記第2発泡成分ガスの沸点温度よりも低く、前記第3の温度が、前記第3発泡成分ガスの沸点温度よりも低い温度である、請求項1に記載の相溶性混合溶剤分離装置。
【請求項3】 前記第1発泡成分ガスがシクロペンタンであり、前記第2発泡成分ガスがフロン系ガスHCFC141bであり、前記第3発泡成分ガスがフロン系ガスCFC11である、請求項1または2に記載の相溶性混合溶剤分離装置。
【請求項4】 前記相溶性混合溶剤分離装置は、前記第1発泡成分ガス、前記第2発泡成分ガスおよび前記第3発泡成分ガスを含む混合ガスを吸着し、熱水蒸気により前記混合ガスを熱水蒸気とともに離脱させる吸着再生装置を備える、請求項1〜のいずれかに記載の相溶性混合溶剤分離装置。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【特許番号】特許第3448531号(P3448531)
【登録日】平成15年7月4日(2003.7.4)
【発行日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−14295(P2000−14295)
【出願日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【公開番号】特開2001−205002(P2001−205002A)
【公開日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【審査請求日】平成12年11月13日(2000.11.13)
【出願人】(000108890)ダイキンプラント株式会社 (4)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−218202(JP,A)
【文献】特開 平7−100301(JP,A)
【文献】特開 平9−117603(JP,A)
【文献】特開 平4−243501(JP,A)
【文献】特表 平3−500857(JP,A)