説明

相転移インクおよびそれを製造する方法

【課題】コーティングされた紙基材上への印刷を含む、インクジェット印刷に好適な固体インク組成物を提供する。
【解決手段】非晶質構成成分および結晶性構成成分を含む相転移インクであり、非晶質構成成分は、クエン酸エステルからなり、インク総重量の約5重量%〜約40重量%の量で存在し、結晶性構成成分はアミド化合物からなり、インクの総重量の約60重量%〜約95重量%の量で存在する。さらに、顔料、染料またはこれらの混合物からなる群から選択される着色剤をさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、室温にて固体であり、溶融インクが基材に適用される高温においては溶融状態であることを特徴とする固体インク組成物に関する。これらの固体インク組成物は、インクジェット印刷のために使用できる。本実施形態は、非晶質構成成分、結晶性材料、および場合により着色剤を含む新規な固体インク組成物、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、相転移インク(「ホットメルトインク」と称される場合もある)は、周囲温度において固相状態であるが、インクジェット印刷デバイスの高い操作温度では液相状態で存在する。噴出温度において、液体インクの液滴は、印刷デバイスから放出され、インク液滴が記録媒体表面と接触したときに、直接または中間加熱転写ベルトもしくはドラムを介して、液滴は素早く固化し、固化したインク液滴の所定のパターンを形成する。
【0003】
カラー印刷のための相転移インクは、通常、相転移インク相溶性の着色剤と組み合わせた相転移インクキャリア組成物を含む。特定実施形態において、一連の着色された相転移インクは、インクキャリア組成物を相溶性の減法混色の原色と組み合わせることによって形成できる。減法混色の原色の着色相転移インクは、4つの構成成分染料または顔料、すなわちシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックを含み得るが、インクはこれらの4つの色に限定されない。これらの減法混色の原色着色インクは、単一染料または顔料、または染料もしくは顔料の混合物を用いることによって形成できる。
【0004】
相転移インクは、輸送、長期間貯蔵などの間、室温にて固相状態を保つので、インクジェット印刷機に望ましい。加えて、液体インクジェットインクのインク蒸発の結果としてノズル目詰まりに関連する問題が大きく除外され、それによってインクジェット印刷の忠実度を改善する。さらに、インク液滴が最終記録媒体(例えば、紙、透明材料など)に直接適用される相転移インクジェット印刷機において、液滴は、記録媒体と接触直後に固化し、印刷媒体に沿ったインクの移動が防止され、ドット品質が改善される。
【0005】
上述の従来の固体インク技術は、一般に鮮明な画像を製造し、ジェット使用の経済性および多孔質紙にて基材自由度を与えるのに成功している一方で、こうした技術はコーティングされた基材については満足するものではない。故に、既知の組成物およびプロセスはそれらの意図する目的に好適であるが、コーティングされた紙基材上に画像を形成または印刷するための追加手段を必要とする。そういうものとして、すべての基材に対して優れた画像品質を顧客に提供するための固体インク組成物の代替組成物および将来的には印刷技術を見出すことが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に例示される実施形態によれば、コーティングされた紙基材上での印刷を含むインクジェット印刷に好適な、結晶性アミドおよびクエン酸から合成される非晶質材料を含む新規な固体インク組成物を提供する。
【0007】
特に、本実施形態は、非晶質構成成分および結晶性構成成分を含む相転移インクを提供し、この非晶質構成成分は、次式を有するクエン酸エステルであり、
【化1】

式中、R、R、およびRはそれぞれ互いに独立に、または同一または異なることができることを意味して、アルキル基からなる群から選択され、ここでこのアルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができ、この結晶性構成成分は次の構造を有するアミドであり、
【化2】

式中、RおよびRはそれぞれ互いに独立に、または同一または異なることができることを意味して、アルキル基からなる群から選択され、ここでこのアルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に従うN−フェネチルヒドロシンナミドの示差走査熱量測定(DSC)を示す図である(DSCデータは、Q1000示差走査熱量計(TA Instruments)にて、10℃/分の速度にて−50から、200〜ー50℃までで得た)。
【図2】本実施形態に従うN−フェネチルヒドロシンナミド/トリメンチルシトレート(TMC)(70/30重量%)のDSCデータを示す図である。
【図3】本実施形態に従う芳香族アミド結晶性構成成分/TMC非晶質構成成分(70/30重量%)を含むインクサンプルのレオロジーデータを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
すべてのレオロジー測定は、Peltier加熱プレートを備えたRFS3制御された歪レオメータ(TA instruments)にて、25mm平行プレートを用いて行った。使用された方法は、5℃の温度増加分にて、各温度の間は120秒の浸漬(平衡)時間で、1Hzの一定周波数にて高温から低温に温度を一掃させた。
【0010】
固体インク技術は、多くの市場に対して印刷能および顧客基盤を拡大し、印刷用途の多様性は、プリントヘッド技術、プリントプロセスおよびインク材料の有効な集積によって促進される。固体インク組成物は、室温(RT)(例えば20〜27℃)にて固体であり、溶融インクが基材に適用される高温においては溶融状態であることを特徴とする。上記で議論されたように、現在のインク選択肢は多孔質紙基材について成功しているが、これらの選択肢はコーティングされた紙基材については必ずしも満足するものではない。
【0011】
固体インク配合物における結晶性および非晶質構成成分の混合物を用いることにより、堅牢性インクを提供し、特にコーティングされた紙上に堅牢性の画像を示す固体インクを提供することを見出した。しかし、この手法を用いることは、結晶性材料または非晶質材料の既知の特性からは、驚くべきことである。結晶性材料について、小分子は、一般に固化するときに結晶化する傾向があり、低分子量の有機固体は一般に結晶である。結晶性材料は一般に硬質であり、より抵抗性であるが、こうした材料は相当脆弱でもあり、結果として主に結晶性のインク組成物を用いて製造された印刷物は損傷に対して非常に感受性となる。非晶質材料に関して、高分子量の非晶質材料、例えばポリマーは、高温で粘稠になり、粘着性の液体になるが、高温では十分に低い粘度を示さない。結果として、ポリマーは、所望の噴出温度(≦140℃)にてプリントヘッドノズルから噴出させることができない。しかし、本実施形態において、堅牢性の固体インクは、結晶性および非晶質構成成分のブレンドを通して得ることができることを見出した。
【0012】
本実施形態は、一般にそれぞれ約60:40〜約95:5の重量比において(1)結晶性および(2)非晶質構成成分のブレンドを含むインクジェット固体インク組成物の新規なタイプを提供する。より詳細な実施形態において、結晶性構成成分と非晶質構成成分との重量比は、約65:35〜約95:5、または約70:30〜約90:10である。他の実施形態において、結晶性および非晶質構成成分は、それぞれ約1.5〜約20または約2.0〜約10の重量比でブレンドされる。一般に、非晶質構成成分は、次式を有するクエン酸のエステルである。
【化3】

式中、R、R、およびRはそれぞれ互いに独立に、または同一または異なることができることを意味して、アルキル基からなる群から選択され、ここでこのアルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる。一般に、結晶性構成成分は以下の構造を有する:
【化4】

式中、RおよびRはそれぞれ互いに独立に、または同一または異なることができることを意味して、アルキル基からなる群から選択され、ここでこのアルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる。
【0013】
これらの非晶質および結晶性構成成分のブレンドを組み込んで得られたインクは、コーティングされていないおよびコーティングされた基材上での優れた堅牢性を例示する。インク配合物中の結晶性構成成分は、冷却時の迅速な結晶化を通して相変化を駆動する。結晶性構成成分はまた、最終インクフィルムの構造を設定し、非晶質構成成分のタックを低下させることによって硬質インクを創製する。非晶質構成成分は、タックを提供し、印刷されたインクに堅牢性を付与する。
【0014】
結晶性材料は、非晶質材料と混和性であることが示された分類の芳香族アミド化合物からのものである。芳香族アミドは、文献において既知であり、市販の供給源から利用可能であるが、それらの特性は化学構造に依存して変動する。本実施形態は、固体インクの所望の特性を与えるために結晶性構成成分として選択された芳香族アミドを使用する。材料は、シャープな結晶化を示し、約140℃の温度において、相対的に低い粘度(≦10センチポイズ(cps)、または約0.5〜約10cps、または約1〜約10cps)を示すが、室温にて非常に高い粘度(>10cps)を示す。これらの材料は、150℃未満、または約65〜約150℃、または約66〜約145℃の溶融温度(Tmelt)を有し、60℃を超える、または約60℃〜約140℃、または約65〜約120℃の結晶化温度(Tcrys)を有する。TmeltとTcrysとの間のΔTは約55℃未満である。これらの特性は、これらの芳香族アミドが本実施形態の固体インクの結晶性構成成分として作用するのに非常に適していることを実証している。
【0015】
非晶質材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。これらの材料は、結晶化を示さず、高温にて相対的に低い粘度(<10cps、または約1cps〜約100cps、または約5cps〜約95cps)を有するが、室温にて非常に高い粘度(約>10cps)を有する。室温での高い粘度は、堅牢性を付与する。これらの特徴により、これらの材料が、本実施形態の固体インクのための結晶性および非晶質構成成分のための良好な選択肢となる。クエン酸は、本実施形態のクエン酸トリエステル化合物の調製を例示する以下の合成スキームにおいて示されるようにトリエステルを製造するために種々のアルコールと反応させた。非晶質材料は、ガラス転移温度Tgを有するが、DSC(−50から、200〜−50℃まで10℃/分)で測定される場合、結晶化または溶融ピーク転移を示さない。Tg値は、通常、約10℃〜約50℃、または約10℃〜約40℃、または約10℃〜約35℃であり、所望の強靭性および可撓性をインクに付与する。選択された非晶質材料は、1000g/mol未満、または約100g/mol〜約1000g/mol、または約200g/mol〜約1000g/molのような低分子量を有する。高分子量の非晶質材料、例えばポリマーは、高温で粘稠になり、粘着性の液体になるが、所望の温度では圧電プリントヘッドを用いて噴出可能になるには高すぎる粘度を有する。
【化5】

【0016】
本実施形態において、固体インク組成物はまた、着色剤と組み合わせた結晶性および非晶質材料を含んでいてもよい。本実施形態は、液体から固体へのシャープな相転移を実現するためにバランスのとれた非晶質および結晶性材料を含み、所望のレベルの粘度を維持しながら、硬質および堅牢性の印刷画像を促進する。このインクで製造されたプリントは、市販のインクにも優る利点、例えばスクラッチに対する良好な堅牢性を実証した。故に、結晶性および非晶質構成成分のブレンドを含む得られたインク組成物は、良好なレオロジー特性を示し、インクジェット印刷に関する多くの要件を満たす。
【0017】
インク組成物は、特定実施形態において、インク組成物に存在する顔料または染料であってもよい着色剤を、インク組成物の総重量の少なくとも約0.1重量%〜約50重量%、または少なくとも約0.2重量%〜約20重量%、または約0.5重量%〜約10重量%の量で含む。実施形態において、結晶性材料は、インク組成物の総重量の約60重量%〜約95重量%、または約65重量%〜約95重量%、または約70重量%〜約90重量%の量で存在する。実施形態において、非晶質材料は、インク組成物の総重量の約5重量%〜約40重量%、または約5重量%〜約35重量%、または約10重量%〜約30重量%の量で存在する。
【0018】
実施形態において、得られた固体インクは、約140℃の温度で約1cps〜約14cps、または約2cps〜約13cps、または約3cps〜約12cpsの粘度を有する。実施形態において、固体インクは、室温にて約>10cpsの粘度を有する。実施形態において、固体インクは、10℃/分の速度にてDSCによって測定される場合に、約65〜約150℃、または約65〜約135℃、約70〜約130℃のTmelt、および約40〜約140℃、または約45〜約130℃、約50〜約125℃のTcrysを有する。
【0019】
芳香族アミドについて、3つの特定選択肢は、実験データから選択された:N−フェネチルヒドロシンナミド、N−フェネチルベンズアミド、およびN−ベンジルベンズアミド。N−フェネチルヒドロシンナミドおよびN−フェネチルベンズアミドの合成を実施例の項目で記載する。N−ベンジルベンズアミドは、Sigma−Aldrich(St.Louis、Missouri)から購入した。
【0020】
示差走査熱量測定(DSC、10℃/分の速度にて−50から、200〜−50℃まで)は、選択された材料の熱特性を測定するために利用された。例えば、図1は代表的なデータを与える。図1は、N−フェネチルヒドロシンナミドについてのDSCデータを示す。
【0021】
すべての材料は、表1に記載される熱特性によって示されるように、所望の温度範囲内で非常にシャープな転移を示した。このデータは、材料がインクの相変化材料について所望の特性を有することを示している。TmeltおよびTcrysの間の相対的に狭いギャップは迅速な相変化につながり、これらの材料を、インクの結晶性構成成分について特に良好な選択肢にする。
【表1】

DSCデータは、Q1000示差走査熱量計(TA Instruments)にて、10℃/分の速度にて−50から、200〜−50℃までで得られた。
【0022】
本実施形態のインク組成物は、クエン酸トリエステル化合物の非晶質構成成分を含む。クエン酸は、種々のアルコールと反応させ、トリエステルを製造した。反応した10個の異なるアルコールのうち、DL−メントールは、安定な非晶質トリエステルを形成するための最良の材料として同定された。L−メントールおよびt−ブチルシクロヘキサノールのトリエステルは非晶質に固化するだけでなく、部分的に結晶化した。フェネチルアルコールおよびシクロヘキサノールのトリエステルは冷蔵庫で結晶化した。合成されたトリエステルの残りは、室温で粘稠な液体であった。本実施形態にて使用されるべき好適なアルコールは、アルキルアルコールからなる群から選択されてもよく、ここでアルコールのアルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる。実施形態において、3モル当量以上のアルコールは、クエン酸のトリエステルを製造するための反応中に使用されてもよい。2モル当量のアルコールが使用される場合、結果は大部分がジエステルであり、1モル当量のアルコールが使用される場合、結果は大部分がモノエステルである。
【0023】
実施形態のインクは、従来の添加剤をさらに含み、こうした従来の添加剤と関連した既知の機能を活用してもよい。こうした添加剤としては、例えば少なくとも1つの酸化防止剤、消泡剤、スリップおよび平滑剤、浄化剤、粘度調整剤、接着剤、可塑剤などを挙げることができる。
【0024】
インクは、場合により、酸化から画像を保護するための酸化防止剤を含有してもよく、インク貯蔵器にて加熱された溶融物として存在しつつ酸化からインク構成成分を保護してもよい。好適な酸化防止剤の例としては、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(IRGANOX 1098、BASFから入手可能)、2,2−ビス(4−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル)プロパン(TOPANOL−205、Vertullusから入手可能)、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Aldrich)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスホナイト(ETHANOX−398、Albermarle Corporationから入手可能)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト(ALDRICH)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(TCI America)、トリブチルアンモニウム次亜リン酸塩(Aldrich)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Aldrich)、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(4−メトキシベンジル)フェノール(Aldrich)、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール(Aldrich)、4−ブロモ−3,5−ジジメチルフェノ−ル(Aldrich)、4−ブロモ−2−ニトロフェノール(Aldrich)、4−(ジエチルアミノメチル)−2,5−ジメチルフェノール(Aldrich)、3−ジメチルアミノフェノール(Aldrich)、2−アミノ−4−tert−アミルフェノール(Aldrich)、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール(Aldrich)、2,2’−メチレンジフェノール(Aldrich)、5−(ジエチルアミノ)−2−ニトロソフェノール(Aldrich)、2,6−ジクロロ−4−フルオロフェノール(Aldrich)、2,6−ジブロモフルオロフェノール(Aldrich)、α−トリフルオロ−o−クレゾール−1(Aldrich)、2−ブロモ−4−フルオロフェノール(Aldrich)、4−フルオロフェノール(Aldrich)、4−クロロフェニル−2−クロロ−1,1,2−トリ−フルオロエチルスルホン(Aldrich)、3,4−ジフルオロフェニル酢酸(Adrich)、3−フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、3,5−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2−フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(Aldrich)、エチル−2−(4−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェノキシ)プロピオネート(Aldrich)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホナイト(Aldrich)、4−tert−アミルフェノール(Aldrich)、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルアルコール(Aldrich)、NAUGARD 76、NAUGARD 445、NAUGARD 512、およびNAUGARD 524(Chemtura Corporationが製造)など、ならびにこれらの混合物が挙げられる。存在する場合、酸化防止剤は、いずれかの所望のまたは有効な量、例えばインクの約0.25重量%〜約10重量%またはインクの約1重量%〜約5重量%でインク中に存在してもよい。
【0025】
実施形態において、本明細書で記載される相転移インク組成物はまた、着色剤を含む。故に本実施形態のインクは、着色剤を有するまたは有していないインクであることができる。いずれかの所望のまたは有効な着色剤は、着色剤がインクキャリア中に溶解または分散できる限り、相転移インク組成物に利用されることができ、それらとしては染料、顔料、これらの混合物などが挙げられる。インクキャリア中に分散または溶解でき、他のインク構成成分と相溶性である限り、いかなる染料または顔料が選択されてもよい。相変化キャリア組成物は、従来の相転移インク着色剤材料、例えばカラーインデックス(C.I.)溶媒染料、分散染料、改質酸および直接染料、塩基性染料、硫黄染料、バット染料などと組み合わせて使用できる。好適な染料の例としては、Neozapon Red492(BASF)、Orasol Red G(Pylam Products)、Direct Brilliant Pink B(Oriental Giant Dyes)、Direct Red 3BL(Classic Dyestuffs)、Supranol Brilliant Red 3BW(Bayer AG)、Lemon Yellow 6G(United Chemie)、Light Fast Yellow 3G(Shaanxi)、Aizen Spilon Yellow C−GNH(Hodogaya Chemical)、Bemachrome Yellow GD Sub(Classic Dyestuffs)、Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant)、Cibanone Yellow 2G(Classic Dyestuffs)、Orasol Black RLI(BASF)、Orasol Black CN(Pylam Products)、Savinyl Black RLSN(Clariant)、Pyrazol Black BG(Clariant)、Morfast Black101(Rohm&Haas)、Diaazol Black RN(ICI)、Thermoplast Blue 670(BASF)、Orasol Blue GN(Pylam Products)、Savinyl Blue GLS(Clariant)、Luxol Fast Blue MBSN(Pylam Products)、Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs)、Basacid Blue 750(BASF)、Keyplast Blue(Keystone Aniline Corporation)、Neozapon Black X51(BASF)、Classic Solvent Black 7(Classic Dyestuffs)、Sudan Blue 670(C.I.61554)(BASF)、Sudan Yellow 146(C.I.12700)(BASF)、Sudan Red462(C.I.26050)(BASF)、C.I.Disperse Yellow 238、Neptune Red Base NB543(BASF、C.I.Solvent Red49)、Neopen Blue FF−4012(BASF)、Lampronol Black BR(C.I.Solvent Black 35)(ICI)、Morton Morplas Magenta 36(C.I.Solvent Red 172)、金属フタロシアニン着色剤が挙げられる。ポリマー染料はまた、例えばMilliken&CompanyからMilliken Ink Yellow 869として、Milliken Ink Blue 92、Milliken Ink Red 357、Milliken Ink Yellow 1800、Milliken Ink Black 8915−67、uncut Reactint Orange X−38、uncut Reactint Blue X−17、Solvent Yellow 162、Acid Red 52、Solvent Blue 44、およびuncut Reactint Violet X−80から市販されるものが使用できる。
【0026】
顔料はまた、相転移インクのための好適な着色剤である。好適な顔料の例としては、PALIOGEN Violet5100(BASF)、PALIOGEN Violet 5890(BASF)、HELIOGEN Green L8730(BASF)、LITHOL Scarlet D3700(BASF)、SUNFAST Blue 15:4(Sun Chemical)、Hostaperm Blue B2G−D(Clariant)、Hostaperm Blue B4G(Clariant)、Permanent Red P−F7RK、Hostaperm Violet BL(Clariant)、LITHOL Scarlet 4440(BASF)、Bon Red C(Dominion Color Company)、ORACET Pink RF(BASF)、PALIOGEN Red 3871K(BASF)、SUNFAST Blue 15:3(Sun Chemical)、PALIOGEN Red 3340(BASF)、SUNFAST Carbazole Violet 23(Sun Chemical)、LITHOL Fast Scarlet L4300(BASF)、SUNBRITE Yellow 17(Sun Chemical)、HELIOGEN Blue L6900、L7020(BASF)、SUNBRITE Yellow 74(Sun Chemical)、SPECTRA PAC C Orange 16(Sun Chemical)、HELIOGEN Blue K6902、K6910(BASF)、SUNFAST Magenta 122(Sun Chemical)、HELIOGEN Blue D6840、D7080(BASF)、Sudan Blue OS(BASF)、NEOPEN Blue FF4012(BASF)、PV Fast Blue B2GO1(Clariant)、IRGALITE Blue GLO(BASF)、PALIOGEN Blue6470(BASF)、Sudan Orange G(Aldrich)、Sudan Orange 220(BASF)、PALIOGEN Orange 3040(BASF)、PALIOGEN Yellow152、1560(BASF)、LITHOL Fast Yellow 0991K(BASF)、PALIOTOL Yellow1840(BASF)、NOVOPERM Yellow FGL(Clariant)、Ink Jet Yellow4G VP2532(Clariant)、Toner Yellow HG(Clariant)、Lumogen Yellow D0790(BASF)、Suco−YellowL1250(BASF)、Suco−Yellow D1355(BASF)、Suco Fast Yellow D1355、D1351(BASF)、HOSTAPERM Pink E02(Clariant)、Hansa Brilliant Yellow5GX03(Clariant)、Permanent Yellow GRL02(Clariant)、Permanent Rubine L6B05(Clariant)、FANAL Pink D4830(BASF)、CINQUASIA Magenta(DU PONT)、PALIOGEN Black L0084(BASF)、Pigment Black K801(BASF)、およびカーボンブラック、例えばREGAL 330(商標)(Cabot)、Nipex150(Evonik)Carbon Black5250およびCarbon Black5750(Columbia Chemical)など、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
インクベース中の顔料分散液は、共力剤および分散剤によって安定化されてもよい。一般に、好適な顔料は、有機材料または無機材料であってもよい。磁気材料系顔料はまた、例えば堅牢性磁気インク文字認識(MICR)インクの製作に好適である。磁気顔料としては、磁気ナノ粒子、例えば強磁性ナノ粒子が挙げられる。
【0028】
実施形態において、溶媒染料が利用される。本明細書に使用するのに好適な溶媒染料の例としては、本明細書に開示されるインクキャリアとの相溶性のためにスピリットソルブル染料を挙げることができる。好適なスピリット溶媒染料の例としては、Neozapon Red 492(BASF)、Orasol Red G(Pylam Products)、Direct Brilliant Pink B(Global Colors)、Aizen Spilon Red C−BH(Hodogaya Chemical)、Kayanol Red 3BL(Nippon Kayaku)、Spirit Fast Yellow 3G、Aizen Spilon Yellow C−GNH(Hodogaya Chemical)、Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant)、Pergasol Yellow 5RA EX(Classic Dyestuffs)、Orasol Black RLI(BASF)、Orasol Blue GN(Pylam Products)、Savinyl Black RLS(Clariant)、Morfast Black101(Rohm and Haas)、Thermoplast Blue 670(BASF)、Savinyl Blue GLS(Sandoz)、Luxol Fast Blue MBSN(Pylam)、Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs)、Basacid Blue 750(BASF)、Keyplast Blue(Keystone Aniline Corporation)、Neozapon Black X51(C.I.Solvent Black、C.I.12195)(BASF)、Sudan Blue 670(C.I.61554)(BASF)、Sudan Yellow 146(C.I.12700)(BASF)、Sudan Red 462(C.I.260501)(BASF)、これらの混合物などが挙げられる。
【0029】
着色剤は、所望の色または色相を得るためにいずれかの所望のまたは有効な量、例えば少なくともインクの約0.1重量%〜インクの約50重量%、少なくともインクの約0.2重量%〜インクの約20重量%、および少なくともインクの約0.5重量%〜インクの約10重量%で相転移インク中に存在してもよい。
【0030】
実施形態において、相転移インクのためのインクキャリアは、例えば示差走査熱量測定によって10℃/分で測定される場合、約65℃〜約150℃、例えば約70℃〜約140℃、約75℃〜約135℃、約80℃〜約130℃、または約85℃〜約125℃Cの融点を有していてもよい。さらに、これらのインクは、約140℃の温度にて、約1cps〜約13cps、例えば約2cps〜約13cps、約4cps〜約12cpsの噴出粘度を有する。
【0031】
インク組成物は、いずれかの所望のまたは好適な方法によって調製できる。例えば、インクキャリアの各構成成分は、共に混合されることができ、その後この混合物を少なくともその融点、例えば約60℃〜約150℃、80℃〜約145℃および85℃〜約140℃に加熱する。着色剤は、インク成分を加熱する前またはインク成分を加熱した後に添加されてもよい。顔料が選択された着色剤である場合、溶融混合物は、磨砕機またはボールミル装置または他の高エネルギー混合装置での粉砕に供されることができ、インクキャリア中の顔料の分散に影響を与える。次いで加熱された混合物は、約5秒〜約30分以上撹拌され、実質的に均質で、均一な溶融物が得られ、続いてインクを周囲温度(通常約20℃〜約25℃)まで冷却する。インクは周囲温度にて固体である。特定実施形態において、形成プロセス中、それらの溶融状態におけるインクは、モールドに注がれ、次いで冷却され、固化されてインクスティックを形成する。好適なインク調製技術は、その開示全体が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,762号明細書に開示される。
【0032】
インクは、直接印刷インクジェットプロセスのための装置および間接(オフセット)印刷インクジェット用途に利用できる。本明細書に開示される別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込む工程、インクを溶融する工程、および溶融したインクの液滴を記録基材上に画像様パターンに放出させる工程を含むプロセスを対象とする。本明細書に開示されるさらに別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込む工程、インクを溶融させる工程、溶融したインクの液滴を中間転写部材上に画像様パターンに放出させる工程および中間転写部材から画像様パターンにインクを最終記録基材に転写する工程を含むプロセスを対象とする。特定実施形態において、中間転写部材を、最終記録シートを超える温度で、印刷装置の溶融したインクの温度未満の温度に加熱する。別の特定実施形態において、中間転写部材および最終記録シート両方を加熱し、この実施形態において、中間転写部材および最終記録シートの両方を印刷装置の溶融インクの温度未満の温度に加熱し、この実施形態において、中間転写部材および最終記録シートの相対温度は、(1)中間転写部材を、最終記録基材を超える温度で、印刷装置の溶融したインクの温度未満の温度に加熱する、(2)最終記録基材を、中間転写部材の温度を超える温度で、印刷装置の溶融したインクの温度未満の温度に加熱する、または(3)中間転写部材および最終記録シートをほぼ同じ温度に加熱することであることができる。1つの特定実施形態において、印刷装置は、圧電印刷プロセスを利用するが、ここでインクの液滴は、圧電振動素子の振幅によって画像様パターンに放出される。本明細書に開示されたインクはまた、他のホットメルト印刷プロセス、例えばホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルト熱インクジェット印刷、ホットメルト連続ストリームまたは偏向インクジェット印刷などに利用されることができる。本明細書に開示される相転移インクはまた、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに使用できる。
【0033】
いずれかの好適な基材または記録シートが利用でき、これらとしては、普通紙、例えばXEROX 4200紙、XEROX Image Series紙、Courtland 4024 DP紙、罫線入りノート紙、ボンド紙、シリカコーティングされた紙、例えばSharp Companyシリカコーティングされた紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT紙など、光沢コーティングされた紙、例えばXEROX Digital Color Elite Gloss、Sappi Warren Papers LUSTROGLOSS、特にXerox DURAPAPERなどのような紙、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、無機記録媒体、例えば金属および木材など、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、無機基材、例えば金属および木材などが挙げられる。
【0034】
本明細書に記載されるインクはさらに、次の実施例に例示される。すべての部およびパーセンテージは、特に指示のない限り重量による。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
材料の合成
N−フェネチルヒドロシンナミドの合成について、エチルヒドロシンナメート(30.0g,168mmol)、2−フェネチルアミン(21.2ml,168mmol)、炭酸カリウム(2.3g,16.83mmol)およびMeOH(250ml)を、500mlフラスコに共に添加し、懸濁液を得た。反応混合物を、44時間還流し、室温まで冷却した。溶媒を除去し、得られた白色沈殿物をエーテルで希釈し、水(3×)で洗浄し、MgSOで乾燥した。ろ過後、溶媒を除去し、残留黄色油を冷蔵庫で一晩維持し、白色結晶を得た(3.4g、収率8%)。サンプルをH NMRによって特徴付けた。
【化6】

【0036】
N−フェネチルベンズアミドの合成について、2−フェネチルアミン(12.15g、100mmol)およびピリジン(8.11ml、100mmol)を500mlフラスコに共に添加し、無色の溶液を得た。フラスコを氷浴で冷却し、塩化ベンゾイル(12.80ml、110mmol)を撹拌しながら10分かけて徐々に添加した。得られた結晶性混合物をジクロロメタンで抽出し、水(1×)、5%HCl水溶液(1×)、5%NaOH水溶液(1×)、水(2×)で洗浄し、MgSOで乾燥した。ろ過後、溶媒を除去し、得られた結晶をMeOH/水(95/5)から再結晶させ、白色結晶(15.8g、収率70%)を得た。サンプルをH NMRによって特徴付けた。
【化7】

【0037】
例えばトリ−DL−メンチルシトレート(TMC)の代表的な合成において、クエン酸(20.0g、104mmol)、DL−メントール(48.8g、312mmol)、およびキシレン(250ml)を、ディーンスタークトラップを備えた500mLフラスコに添加し、懸濁液を得た。p−トルエンスルホン酸一水和物(0.396g、2.08mmol)を添加し、混合物を、水を共沸除去しながら21時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、10重量%KOH水溶液(1×)およびブライン(2×)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥させた。ろ過および溶媒の除去後、残渣を120℃で撹拌しながら減圧下で乾燥し、49.3g(収率78%)の非晶質固体を得た。サンプルをH NMR分光法、および酸価分析(16.34mgKOH/g)によって特徴付けた。合成スキームを以下に例示する。
【化8】

【0038】
実施形態において、Rは、アルキル基として定義され、ここでアルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる。
【0039】
固体インク1の調製
実施例に使用された非晶質構成成分は、高温(>100℃)にて低い粘度(η<102cps)を有するが、室温にて高い粘度(η>10cps)を有するトリメチルシトレート(TMC)であった。結晶性構成成分としてN−フェネチルヒドロシンナミド、およびTMC非晶質構成成分を120℃で、溶融状態で撹拌し、次いで冷却して無色透明のインクサンプルを得た。インクサンプルの結晶性/非晶質比は、重量%で70/30であった。結晶性および非晶質材料は、この混合比で非常に混和性であった。
【0040】
固体インク2の調製
無色透明インク2は、N−フェネチルベンズアミドを結晶性構成成分として使用した以外は、インク1と同じ様式で調製した。
【0041】
固体インク3の調製
無色透明インク3は、N−ベンジルベンズアミドを結晶性構成成分として使用した以外は、インク1と同じ様式で調製した。
【0042】
図2は、インクサンプルの代表的なDSCデータを示す。TmeltおよびTcrysの両方が低温にシフトしたが、サンプルは、非晶質構成成分と混合された場合であっても相対的にシャープな相転移を依然として示した。図3は、インクサンプルのレオロジーデータを示す。インクは、65〜105℃にて>10cpsへの相転移を示した。相転移温度は、材料を選択し、結晶性/非晶質比を変更することによって調節可能である。約130℃での粘度は12cps未満であった。
【0043】
プリント性能
インク1に、3重量%のシアン染料(Ciba Orasol Blue GN)を添加した。染料は、インク中で良好な溶解度を示した。続いて、インク1を、K−印刷プルーファー(RK Print Coat Instrument Ltd.,Litlington,Royston,Heris,SG80OZ,U.K.が製造)を用いて、Xerox Digital Color Elite Gloss(DCEG)120gsm紙にコーティングした。垂直から約15°の角度にて湾曲した先端を有するスクラッチ/ゴージフィンガーを、528gの重さを適用し、約13mm/sの速度で画像にわたって引き寄せた場合に、インクは画像から明確には取り除かれなかった。スクラッチ/ゴージ先端は、約12mmの曲率半径を有する旋盤円形ノーズに類似する。
【0044】
K−プルーファーは、印刷所での共通の試験装置である。この場合、プルーファーは、印刷プレートを加熱して固体インクを溶融するために変更されている。使用されるK−プルーファーは、それぞれ約9.4×4.7cmの3つの長方形グラビアパターンを有する。第1の長方形のセル密度は、通常100%であり、第2のセル密度は80%、第3のセル密度は60%である。実際、このK−プルーフプレートは、厚さ(または高さ)約5ミクロンのフィルム(またはピクセル)をもたらす。試験インクは、加熱されたグラビアプレートにわたって展延され、試験プリントは、試験紙が固定されているプレート表面にわたってワイピングブレードを通過させ、その直後にゴムロールを通過させることによって製造される。紙ロールが通過するときに、インクはグラビアセルから紙に転写される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも非晶質構成成分であって、前記非晶質構成成分が、次式を有するクエン酸のエステルであり、
【化9】

式中、R、R、およびRはそれぞれ互いに独立に、アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる、非晶質構成成分と、
少なくとも結晶性構成成分であって、前記結晶性構成成分が、次の構造を有するアミドであり、
【化10】

式中、RおよびRはそれぞれ互いに独立に、アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる結晶性構成成分と、
を含む、相転移インク。
【請求項2】
前記非晶質構成成分が、前記相転移インクの総重量の約5重量%〜約40重量%の量で存在し、前記結晶性構成成分が、前記相転移インクの総重量の約60重量%〜約95重量%の量で存在する、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項3】
前記結晶性および非晶質構成成分が、約1.5〜約20の重量比でブレンドされる、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項4】
顔料、染料またはこれらの混合物からなる群から選択される着色剤をさらに含む、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項5】
前記結晶性構成成分が、約140℃の温度にて約1cps〜約10cpsの粘度を有する、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項6】
前記非晶質構成成分が、約140℃の温度で約1cps〜約100cpsの粘度を有する、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項7】
約140℃の温度にて約15cps未満の粘度を有する、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項8】
室温にて約10cpsを超える粘度を有する、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項9】
少なくとも非晶質構成成分であって、前記非晶質構成成分が、次式を有するクエン酸のエステルであり、
【化11】

式中、R、R、およびRはそれぞれ互いに独立に、アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる、非晶質構成成分と、
少なくとも結晶性構成成分であって、前記結晶性構成成分が、次の構造を有するアミドであり、
【化12】

式中、RおよびRはそれぞれ互いに独立に、アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる結晶性構成成分と、
を含む、相転移インクであって、さらにこの相転移インクが、約65℃〜約150℃のTmelt、および約65℃〜約140℃のTcrysを有する、相転移インク。
【請求項10】
非晶質構成成分であって、この非晶質構成成分が、次式を有する、少なくとも1つのアルコールとのエステル化反応によって合成されるクエン酸のエステルであり、
【化13】

式中、R、R、およびRはそれぞれ互いに独立に、アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる、非晶質構成成分と、
結晶性構成成分であって、前記結晶性構成成分が、次の構造を有するアミドであり、
【化14】

式中、RおよびRはそれぞれ互いに独立に、アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル部分は、直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の置換または非置換であり、約1個〜約40個の炭素原子を有する基、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であることができる、結晶性構成成分と、
を含む、相転移インクであって、さらにクエン酸と反応するためのアルコールが、
【化15】

およびこれらの混合物からなる群から選択される、相転移インク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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