説明

省電力制御方法、通信システムおよび局側装置

【課題】局側装置の省電力化を適切に図ることが可能な省電力制御方法、通信システムおよび局側装置を提供する。
【解決手段】省電力制御方法は、局側装置101と通信すべき宅側装置102が存在するか否かを確認するステップと、局側装置101が、自己と通信すべき宅側装置102が存在しない場合には、各宅側装置102と通信信号を送信または受信するための通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移するステップと、局側装置101がスリープ状態から復帰して通信部の動作を再開するステップと、スリープ状態からの復帰後、局側装置101と通信すべき宅側装置102が存在するか否かを確認するステップと、局側装置101が、自己と通信すべき宅側装置102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき宅側装置102が存在する場合には通信部の動作を継続するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力制御方法、通信システムおよび局側装置に関し、特に、局側装置の省電力化を図る省電力制御方法、通信システムおよび局側装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。これに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)およびFTTH(Fiber To The Home)等のブロードバンドアクセスが可能な装置も急速に普及してきている。
【0003】
IEEE Std 802.3ah(登録商標)−2004(非特許文献1)には、複数の宅側装置(ONU:Optical Network Unit)が光通信回線を共有して局側装置(OLT:Optical Line Terminal)とのデータ伝送を行なう媒体共有形通信である受動的光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の1つの方式が開示されている。すなわち、PONを通過するユーザ情報およびPONを管理運用するための制御情報を含め、すべての情報がイーサネット(登録商標)フレームの形式で通信されるEPON(Ethernet(登録商標) PON)と、EPONのアクセス制御プロトコル(MPCP(Multi-Point Control Protocol))およびOAM(Operations Administration and Maintenance)プロトコルとが規定されている。局側装置と宅側装置との間でMPCPフレームをやりとりすることによって、宅側装置の加入、離脱、および上りアクセス多重制御などが行なわれる。また、非特許文献1では、MPCPメッセージによる、新規宅側装置の登録方法、帯域割り当て要求を示すレポート、および送信指示を示すゲートについて記載されている。
【0004】
なお、1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PON(Giga Bit Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)の次世代の技術として、IEEE802.3av(登録商標)−2009として標準化が行なわれた10G−EPONすなわち通信速度が10ギガビット/秒相当のEPONにおいても、アクセス制御プロトコルはMPCPが前提となっている。
【0005】
PONシステムにおいて省電力化を図る方法の一例として、たとえば、特開2010―114830号公報(特許文献1)には、以下のような構成が開示されている。すなわち、局側装置と複数の宅側装置との間で光分岐器を介して光通信を行なうPONシステムにおいて、上記局側装置の送信部は、各宅側装置に順次送信するユーザフレームを蓄積する下りバッファ部と、省電力モード制御部とを有し、上記省電力モード制御部は、上記下りバッファ部の中の送信するユーザフレームが空の宅側装置に対して、当該宅側装置に上り帯域割当用制御フレームを送信してから他の宅側装置に順次送信して当該宅側装置に上り帯域割当用制御フレームを送信するまでの一巡時間よりも短い時間に設定されている省電力モード時間を記述した省電力モード設定フレームを送信し、上記宅側装置のPON受信部は、上記局側装置から受信した自局宛のフレームを解析するフレーム解析部を有し、上記フレーム解析部は、上記省電力モード設定フレームを受信した場合には、その省電力モード設定フレーム内に記述された省電力モード時間にわたって当該PON受信部を省電力モードに設定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3ah(登録商標)-2004
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010―114830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のPONシステムでは、宅側装置の省電力化を図ることが可能である。しかしながら、局側装置については、各宅側装置からの上りフレームを受信する必要があり、また、各宅側装置への下りフレームの送信を停止すると、局側装置および宅側装置間のリンクが切断されるため、宅側装置のように省電力化を図ることは困難である。
【0009】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、局側装置の省電力化を適切に図ることが可能な省電力制御方法、通信システムおよび局側装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる省電力制御方法は、1または複数の宅側装置と、各上記宅側装置と通信信号を送信または受信するための通信部を含む局側装置とを備える通信システムにおける省電力制御方法であって、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認するステップと、上記局側装置が、自己と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合には、上記通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移するステップと、上記局側装置が上記スリープ状態から復帰して上記通信部の動作を再開するステップと、上記スリープ状態からの復帰後、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認するステップと、上記局側装置が、自己と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合に上記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき上記宅側装置が存在する場合には上記通信部の動作を継続するステップとを含む。
【0011】
このような構成により、局側装置において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。したがって、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0012】
好ましくは、上記局側装置は、ディスカバリ動作を間欠的に行い、上記省電力制御方法は、上記局側装置が、上記ディスカバリ動作の開始タイミングになると上記スリープ状態から復帰して上記通信部の動作を再開するステップと、上記局側装置が、上記ディスカバリ動作の完了後、自己と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合に上記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき上記宅側装置が存在する場合には上記通信部の動作を継続するステップとを含む。
【0013】
このような構成により、たとえばディスカバリ動作の周期より長い起床期間を設け、当該起床期間において必ずディスカバリ動作が行なわれるようにする構成と比べて、スリープ期間を長く設定することができるため、省電力効果を高めることができる。
【0014】
好ましくは、上記局側装置は、ディスカバリ動作を周期的に行い、上記省電力制御方法は、上記局側装置が、上記スリープ状態から復帰してから上記ディスカバリ動作の周期よりも長い時間が経過した後、自己と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合に上記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき上記宅側装置が存在する場合には上記通信部の動作を継続するステップを含む。
【0015】
このような構成により、たとえばディスカバリ動作の開始タイミングで起床してディスカバリ動作を行なう構成と比べて、処理の簡易化を図ることができる。すなわち、予め設定されているディスカバリ動作の実行時刻に合わせて起床する等の特別な処理が不要となり、スリープ状態および通常状態を所定周期で繰り返す単純な処理で、新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。
【0016】
好ましくは、上記局側装置は、それぞれ異なる速度の通信信号を上記各宅側装置との間で送信または受信するための複数の通信部を含み、上記省電力制御方法は、上記速度それぞれについて、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認するステップと、上記速度それぞれについて、前記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在しないことが確認された上記速度に対応する上記通信部の動作を停止するステップとを含む。
【0017】
このような構成により、通信信号の速度ごとに通信動作の停止を制御することができるため、より効率的な省電力動作を行なうことができる。
【0018】
またこの発明の別の局面に係わる省電力制御方法は、1または複数の宅側装置と、各上記宅側装置と通信信号を送受信するための局側装置とを備える通信システムにおける省電力制御方法であって、上記局側装置と上記各宅側装置との間の上記通信信号のトラフィック量を示すトラフィック情報を取得するステップと、取得した上記トラフィック情報に基づいて、上記各宅側装置との間の通信動作を停止するスリープ状態へ上記局側装置を遷移させるか否かを判断するステップと、上記スリープ状態へ遷移させると判断した場合に、上記宅側装置において上記局側装置との間の通信動作が停止するスリープ期間について、上記各宅側装置の上記スリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において上記局側装置が上記スリープ状態となるように制御するステップとを含む。
【0019】
このような構成により、局側装置において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。したがって、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0020】
好ましくは、上記省電力制御方法は、さらに、上記局側装置が、上記重複期間が終了すると上記宅側装置との間の通信動作を再開するステップと、上記局側装置と上記宅側装置との間の通信動作が再開された後、上記トラフィック情報を取得し、取得した上記トラフィック情報に基づいて、上記スリープ状態へ上記局側装置を再遷移させるか否かを判断するステップとを含む。
【0021】
このような構成により、重複期間の終了のたびにトラフィック量を監視し、監視結果に基づいてスリープ状態への遷移を適切に判断することができる。
【0022】
好ましくは、上記局側装置は、異なる速度の上記通信信号を上記各宅側装置との間で送信または受信し、上記省電力制御方法は、上記速度それぞれについて、上記スリープ状態へ遷移させるか否かを判断するステップと、上記速度それぞれについて、上記スリープ状態へ遷移させると判断した上記速度について上記重複期間が設けられるように上記各宅側装置を制御するステップとを含む。
【0023】
このような構成により、通信信号の速度ごとに通信動作の停止を制御することができるため、より効率的な省電力動作を行なうことができる。
【0024】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信システムは、1または複数の宅側装置と、各上記宅側装置と通信信号を送信または受信するための通信部を含む局側装置とを備える通信システムであって、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認するための確認処理部を備え、上記確認処理部は、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合に、上記局側装置が上記通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、上記スリープ状態から復帰して上記通信部の動作を再開した後、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認し、上記局側装置は、自己と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合に上記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき上記宅側装置が存在する場合には上記通信部の動作を継続する。
【0025】
このような構成により、局側装置において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。したがって、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0026】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる局側装置は、1または複数の宅側装置と通信信号を送信または受信するための通信部を備える局側装置であって、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認するための確認処理部と、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合には、上記通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、その後、上記スリープ状態から復帰して上記通信部の動作を再開するためのスリープ制御部とを備え、上記確認処理部は、上記スリープ状態からの復帰後、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在するか否かを確認し、上記スリープ制御部は、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在しない場合に上記スリープ状態へ再び遷移し、上記局側装置と通信すべき上記宅側装置が存在する場合には上記通信部の動作を継続する。
【0027】
このような構成により、局側装置において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。したがって、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0028】
またこの発明の別の局面に係わる通信システムは、1または複数の宅側装置と、各上記宅側装置と通信信号を送受信するための局側装置とを備える通信システムであって、上記局側装置と上記各宅側装置との間の上記通信信号のトラフィック量を示すトラフィック情報を取得するためのトラフィック情報取得部と、取得された上記トラフィック情報に基づいて、上記各宅側装置との間の通信動作を停止するスリープ状態へ上記局側装置を遷移させるか否かを判断するためのスリープ判断部と、上記スリープ状態へ遷移させると判断された場合に、上記宅側装置において上記局側装置との間の通信動作が停止するスリープ期間について、上記各宅側装置の上記スリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において上記局側装置が上記スリープ状態となるように制御するためのスリープ制御部とを備える。
【0029】
このような構成により、局側装置において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。したがって、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0030】
またこの発明の別の局面に係わる局側装置は、1または複数の宅側装置と通信信号を送受信するための局側装置であって、上記局側装置と上記各宅側装置との間の上記通信信号のトラフィック量を示すトラフィック情報を取得するためのトラフィック情報取得部と、取得された上記トラフィック情報に基づいて、上記各宅側装置との間の通信動作を停止するスリープ状態へ上記局側装置を遷移させるか否かを判断するためのスリープ判断部と、上記スリープ状態へ遷移させると判断した場合に、上記宅側装置において上記局側装置との間の通信動作が停止するスリープ期間について、上記各宅側装置の上記スリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において上記局側装置が上記スリープ状態となるように制御するためのスリープ制御部とを備える。
【0031】
このような構成により、局側装置において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規宅側装置の登録処理を行なうことができる。したがって、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る局側装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る局側装置における上りフレーム受信部および下りフレーム送信部の一部の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置が省電力動作およびディスカバリ動作を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおけるディスカバリ動作、ならびに局側装置およびONU間のデータの流れの一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置が省電力動作およびディスカバリ動作を行なう際の動作手順の他の例を定めたフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおけるディスカバリ動作、ならびに局側装置およびONU間のデータの流れの他の例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置が省電力動作およびディスカバリ動作を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムにおける省電力動作、ならびに局側装置およびONU間のデータの流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0035】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【0036】
図1を参照して、PONシステム201は、ONU102A,102B,102C,102Dと、局側装置101と、スプリッタSP1,SP2とを備える。ONU102A,102B,102Cと局側装置101とは、スプリッタSP1およびSP2ならびに光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。ONU102Dと局側装置101とは、スプリッタSP2および光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。
【0037】
ここで、ONUから上位ネットワークへの方向を上り方向と称し、上位ネットワークからONUへの方向を下り方向と称する。PONシステム201では、上り方向が時分割多重アクセス(TDMA)であり、下り方向が時分割多重(TDM)である。
【0038】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る局側装置の構成を示すブロック図である。
【0039】
図2を参照して、局側装置101は、PONトランシーバ11と、上り受信処理部12と、上りバッファメモリ13と、上り送信処理部14と、SNIトランシーバ15と、下り受信処理部16と、下りバッファメモリ17と、下り送信処理部18と、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)処理部(トラフィック情報取得部)19と、制御部(確認処理部、スリープ判断部およびスリープ制御部)20と、下りトラフィック量測定部(トラフィック情報取得部)22とを備える。PONトランシーバ11は、受信部31と、送信部32とを含む。SNIトランシーバ15は、送信部33と、受信部34とを含む。
【0040】
局側装置101において、PONトランシーバ11は、PON線路の親局側起点として、PON回線である光ファイバOPTFと接続される。PONトランシーバ11における受信部31は、光ファイバOPTFを介して各ONU102と双方向通信が行なえるように、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号を光ファイバOPTFから受信し、電気信号に変換して上り受信処理部12に出力する。また、PONトランシーバ11における送信部32は、下り送信処理部18から受けた電気信号を別波長の下り光信号に変換して光ファイバOPTFへ出力する。たとえば、PONトランシーバ11は、下り送信処理部18から受けた10Gbps(ギガビット/秒)の電気信号を1570nm帯の下り光信号に変換して各ONU102へ送信し、また、下り送信処理部18から受けた1Gbpsの電気信号を1490nm帯の下り光信号に変換して各ONU102へ送信する。
【0041】
上り受信処理部12は、PONトランシーバ11から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じてDBA処理部19、制御部20または上りバッファメモリ13にフレームを振り分ける。具体的には、データフレームを上りバッファメモリ13へ出力し、制御フレームをDBA処理部19および制御部20に出力する。
【0042】
上りバッファメモリ13は、上り受信処理部12から受けたデータフレームを蓄積する。
【0043】
上り送信処理部14は、上りバッファメモリ13からデータフレームを取り出して所定の信号処理を行い、処理後のフレームをSNIトランシーバ15へ出力する。
【0044】
SNIトランシーバ15における送信部33は、上り送信処理部14から受けたフレームを上位ネットワークへ送信する。
【0045】
SNIトランシーバ15における受信部34は、上位ネットワークから受信したフレームを下り受信処理部16へ出力する。
【0046】
下り受信処理部16は、SNIトランシーバ15から受けたフレームに所定の信号処理を行い、処理後のフレームをデータフレームとして下りバッファメモリ17へ出力する。
【0047】
DBA処理部19および制御部20は、各種制御情報を示す制御フレームを生成し、下り送信処理部18へ出力する。
【0048】
下り送信処理部18は、下りバッファメモリ17からデータフレームを取り出し、物理層の電気信号に変換してPONトランシーバ11へ出力する。また、下り送信処理部18は、DBA処理部19および制御部20から受けた制御フレームを物理層の電気信号に変換してPONトランシーバ11へ出力する。
【0049】
DBA処理部19および制御部20は、PON回線およびONU102を運営管理するためのMPCPフレームおよびOAMフレーム等の制御フレームを生成し、下り送信処理部18を介してONU102へ送信する。また、DBA処理部19および制御部20は、ONU102から送信されるMPCPフレームおよびOAMフレーム等の制御フレームを上り受信処理部12を介して受信し、対応する処理を行なう。
【0050】
具体的には、DBA処理部19および制御部20は、MPCPおよびOAMなど、PON回線の制御および管理に関する局側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている各ONUとMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、ONUの登録、離脱および帯域割り当てを含めた上りアクセス制御、下りアクセス制御、ならびにONUへのスリープ命令を含めたONUの運用管理などを行なう。
【0051】
たとえば、DBA処理部19は、各ONU102から受けたPON回線における上り帯域の割り当て要求に基づいて、PON回線における上り帯域を各ONU102に割り当てる。具体的には、DBA処理部19は、ONU102から受けたPON回線における帯域の割り当て要求を示すレポートフレームに基づいて、PON回線における帯域をONU102に割り当てる、すなわちグラントを記したゲートフレームをONU102へ送信する。
【0052】
DBA処理部19は、各ONU102からのPON回線における帯域の割り当て要求の受信期間、および予定された各ONU102からの上りフレームの受信期間を含む割り当て周期すなわちDBAサイクルを繰り返す。DBA処理部19は、上りトラフィック量すなわち各ONU102への帯域割り当ての演算結果を示す上りトラフィック情報を制御部20へ出力する。ここで、DBA処理部19は、たとえば、予定された各ONU102からの上りフレームの受信期間において、上記帯域の割り当て量の演算を行なう。
【0053】
下りトラフィック量測定部22は、下り受信処理部16から出力されるデータフレームを監視することにより下りトラフィック量を測定し、測定結果を示す下りトラフィック情報を制御部20へ出力する。
【0054】
制御部20は、DBA処理部19から受けた上りトラフィック情報および下りトラフィック量測定部22から受けた下りトラフィック情報に基づいて、受信部スリープ命令をPONトランシーバ11における受信部31および上り受信処理部12へ出力し、送信部スリープ命令をPONトランシーバ11における送信部32および下り送信処理部18へ出力する。また、制御部20は、所定のタイミングにおいて、受信部起床命令をPONトランシーバ11における受信部31および上り受信処理部12へ出力し、送信部起床命令をPONトランシーバ11における送信部32および下り送信処理部18へ出力する。
【0055】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る局側装置における上りフレーム受信部および下りフレーム送信部の一部の構成を示す図である。
【0056】
図3を参照して、上り受信処理部12は、CDR(Clock and Data Recovery)41と、デシリアライザ42と、MAC処理部43とを含む。下り送信処理部18は、MAC処理部43と、シリアライザ44を含む。PONトランシーバ11において、受信部31は、10G/1G用光受信回路51を含む。送信部32は、10G用光送信回路52と、1G用光送信回路53とを含む。
【0057】
上り方向において、PONトランシーバ11における10G/1G用光受信回路51は、PON回線経由でONU102から1Gbpsまたは10Gbpsに対応する波長の光信号を受信し、受信した光信号を1Gbpsまたは10Gbpsの電気信号に変換して出力する。
【0058】
CDR41は、10G/1G用光受信回路51から受けた電気信号のリシェーピングを行なうとともに、当該電気信号からタイミングを抽出し、抽出したタイミングに基づいて電気信号のリタイミングを行なうことにより、ONU102との同期を確立する。
【0059】
デシリアライザ42は、CDR41から受けたシリアルの電気信号をパラレルの電気信号に変換し、MAC処理部43へ出力する。
【0060】
MAC処理部43は、デシリアライザ42から受けた電気信号に対してMAC(Media Access Control)層の所定の処理を行なうことにより、フレームを再構成する。
【0061】
下り方向において、シリアライザ44は、MAC処理部43から受けたパラレルの電気信号をシリアルの電気信号に変換し、速度に応じてPONトランシーバ11における10G用光送信回路52または1G用光送信回路53へ出力する。
【0062】
10G用光送信回路52は、シリアライザ44から受けた10Gbpsの電気信号を10Gbpsに対応する波長の下り光信号に変換し、PON回線経由でONU102へ送信する。
【0063】
1G用光送信回路53は、シリアライザ44から受けた1Gbpsの電気信号を1Gbpsに対応する波長の下り光信号に変換し、PON回線経由でONU102へ送信する。
【0064】
PONトランシーバ11における10G/1G用光受信回路51、CDR41およびデシリアライザ42は、制御部20から受信部スリープ命令を受けると動作を停止する。また、10G/1G用光受信回路51、CDR41およびデシリアライザ42は、制御部20から受信部起床命令を受けると動作を再開する。
【0065】
また、PONトランシーバ11における10G用光送信回路52および1G用光送信回路53、ならびにシリアライザ44は、制御部20から送信部スリープ命令を受けると動作を停止する。また、10G用光送信回路52および1G用光送信回路53、ならびにシリアライザ44は、制御部20から送信部起床命令を受けると動作を再開する。なお、制御部20は、10G用光送信回路52および1G用光送信回路53の動作の停止および再開を別個に制御することが可能である。
【0066】
[動作]
次に、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムが省電力制御を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0067】
ここでは、局側装置101の配下にONU102が存在しない場合における省電力動作およびディスカバリ動作について説明する。
【0068】
局側装置101にONU102が接続されていない場合には、局側装置101は、ONU102との間でフレームを送信または受信するための通信部すなわち下りフレーム送信部および上りフレーム受信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移することが可能である。
【0069】
但し、スリープ状態への遷移後、新規にONU102が局側装置101の配下に接続される可能性があることから、局側装置101は、定期的にスリープ状態から通常状態へと復帰し、新規のONUを探索する、すなわち自己に新たに接続されたONU102を検出するためのディスカバリ動作を実行する必要がある。このディスカバリ動作により、局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。
【0070】
すなわち、まず、局側装置101における制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合には、通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、その後、スリープ状態から復帰して通信部の動作を再開する。
【0071】
そして、制御部20は、スリープ状態からの復帰後、局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移し、局側装置101と通信すべきONU102が存在する場合には通信部の動作を継続する。
【0072】
ここで、スリープさせるすなわち動作を停止させる具体的な箇所としては、前述のように、上りフレーム受信部のうち、光トランシーバすなわちPONトランシーバ11の受信部31が考えられる。また、ロック時間が十分短い場合には、CDR41およびデシリアライザ42をスリープさせることも可能である。また、下りフレーム送信部のうち、動作を停止させる具体的な箇所としては、PONトランシーバ11の送信部32およびシリアライザ44が考えられる。
【0073】
また、局側装置101が、それぞれ異なる速度のフレームを各ONU102との間で送信または受信するための複数の通信部を含む場合、たとえばPONトランシーバ11が1Gbpsの下りフレーム送信部、10Gbpsの下りフレーム送信部の2つを含む場合には、必ずしもこれらを同時にスリープさせる必要はない。この場合、これらの下りフレーム送信部を個別にスリープさせる、すなわち1Gbpsの下りフレーム送信部のみをスリープさせてもよく、あるいは10Gbpsの下りフレーム送信部のみをスリープさせてもよい。
【0074】
PONシステム201において、GE−PON用のONU102および10G−EPON用のONU102のいずれかしか局側装置101に接続されていない場合には、接続されていないONU102用の下りフレーム送信部、たとえば10G用光送信回路52または1G用光送信回路53の動作を停止させることが可能である。
【0075】
このように、制御部20は、すべてのGE−PON用ONU102についてスリープ条件を満たす場合、またはすべての10G−EPON用ONU102についてスリープ条件を満たす場合には、対応の下りフレーム送信部のみをスリープさせる。
【0076】
すなわち、制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する際、ONU102の存在をフレームの速度ごとに判断する。そして、制御部20は、自己と通信すべきONU102が存在しないことが確認された速度に対応する通信部すなわち下りフレーム送信部の動作を停止する。なお、制御部20は、これらの動作を、速度ごとに異なるタイミングで行なってもよいし、共通のタイミングで行なってもよい。
【0077】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置が省電力動作およびディスカバリ動作を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0078】
局側装置101は、自己に新たに接続されたONU102を検出するディスカバリ動作を間欠的に行なう。局側装置101は、ディスカバリ動作の開始タイミングになるとスリープ状態から復帰する。そして、局側装置101は、ディスカバリ動作の完了後、自己と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移する。
【0079】
具体的には、図4を参照して、まず、局側装置101における制御部20は、たとえばONU102の登録情報を参照することにより、接続ONUが存在するか否か、すなわち局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する(ステップS11)。
【0080】
制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合には(ステップS11でYES)、局側装置101をスリープ状態へ遷移させる。より詳細には、制御部20は、スリープ命令によって上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を停止する(ステップS12)。
【0081】
次に、制御部20は、ディスカバリ動作の開始タイミングになると(ステップS13でYES)、局側装置101をスリープ状態から復帰させる。より詳細には、制御部20は、起床命令によって上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を再開する。なお、ディスカバリ動作の開始タイミングは、たとえばディスカバリゲートの送信のための準備時間を加味して早めに設定される(ステップS14)。
【0082】
次に、制御部20は、ディスカバリゲートのONU102への送信およびレジスタリクエストのONU102からの受信等のディスカバリ動作を行い、接続ONUが発生したか否か、すなわち局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する(ステップS16)。
【0083】
制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合には(ステップS16でNO)、局側装置101を再びスリープ状態へ遷移させる(ステップS12)。
【0084】
一方、制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が発生した場合には(ステップS16でYES)、局側装置101を通常状態へ復帰させ、上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を継続する。
【0085】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおけるディスカバリ動作、ならびに局側装置およびONU間のデータの流れの一例を示す図である。
【0086】
図5を参照して、局側装置101は、ディスカバリ動作の開始タイミングtaになると、スリープ状態から復帰して起床し、ディスカバリゲートをPON回線へ送信する。
【0087】
次に、局側装置101は、当該ディスカバリゲートによって指定したディスカバリウィンドウTdwにおいてONU102から有効なレジスタリクエストを受信しない場合、すなわち接続ONU102が発生していない場合には、再びスリープ状態へ遷移する。
【0088】
次に、局側装置101は、ディスカバリ動作の開始タイミングtbになると、スリープ状態から復帰して起床し、ディスカバリゲートをPON回線へ送信する。
【0089】
次に、局側装置101は、当該ディスカバリゲートによって指定したディスカバリウィンドウTdwにおいてONU102から有効なレジスタリクエストを受信した場合には、すなわち接続ONUが発生した場合には、スリープ状態へ遷移せず、通常状態へと復帰する。
【0090】
このように、局側装置101は、スリープ期間をできるだけ長く設定し、ディスカバリ動作を行なうべき期間だけ起床し、ディスカバリ動作を完了すると再びスリープ状態へ遷移する。
【0091】
このような構成により、後述する図6および図7に示す構成、すなわちディスカバリ動作の周期より長い起床期間を設け、当該起床期間において必ずディスカバリ動作が行なわれるようにする構成と比べて、スリープ期間を長く設定することができるため、省電力効果を高めることができる。
【0092】
なお、この例では、局側装置101は、ディスカバリ動作を周期的に行なう構成に限らず、間欠的に行なう構成であればよい。
【0093】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置が省電力動作およびディスカバリ動作を行なう際の動作手順の他の例を定めたフローチャートである。
【0094】
局側装置101は、ディスカバリ動作を周期的に行なう。局側装置101は、スリープ状態から復帰してからディスカバリ動作の周期よりも長い時間が経過した後、自己と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移する。
【0095】
具体的には、図6を参照して、まず、局側装置101における制御部20は、たとえばONU102の登録情報を参照することにより、接続ONUが存在するか否か、すなわち局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する(ステップS21)。
【0096】
制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合には(ステップS21でYES)、局側装置101をスリープ状態へ遷移させる。より詳細には、制御部20は、スリープ命令によって上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を停止する(ステップS22)。
【0097】
次に、制御部20は、スリープ期間の終了タイミングになると(ステップS23でYES)、局側装置101をスリープ状態から復帰させる。より詳細には、制御部20は、起床命令によって上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を再開する(ステップS24)。
【0098】
次に、制御部20は、ディスカバリ動作の開始タイミングになると、ディスカバリゲートのONU102への送信およびレジスタリクエストのONU102からの受信等のディスカバリ動作を行い、接続ONUが発生したか否か、すなわち局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する(ステップS25)。
【0099】
制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合には(ステップS26でNO)、スリープ期間の開始タイミングの到来を待って(ステップS27でYES)、局側装置101を再びスリープ状態へ遷移させる(ステップS22)。
【0100】
一方、制御部20は、局側装置101と通信すべきONU102が発生した場合には(ステップS26でYES)、局側装置101を通常状態へ復帰させ、上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を継続する。
【0101】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおけるディスカバリ動作、ならびに局側装置およびONU間のデータの流れの他の例を示す図である。
【0102】
図7を参照して、局側装置101は、所定時間ごとにスリープ状態から復帰し、ディスカバリ動作の周期よりも長い起床期間を設け、この起床期間において通常動作を行なう。
【0103】
これにより、局側装置101は、起床期間においてディスカバリ動作を確実に実行することができる。
【0104】
局側装置101は、送信したディスカバリゲート1に対応するディスカバリウィンドウTdw1において、ONU102から有効なレジスタリクエストを受信しない場合、すなわち接続ONU102が発生していない場合には、起床期間が終了すると、再びスリープ状態へ遷移する。
【0105】
次に、局側装置101は、スリープ期間の終了によりスリープ状態から復帰し、ディスカバリゲート2をPON回線へ送信する。
【0106】
次に、局側装置101は、ディスカバリゲート2によって指定したディスカバリウィンドウTdw2においてONU102から有効なレジスタリクエストを受信した場合には、すなわち接続ONUが発生した場合には、スリープ状態へ遷移せず、通常状態へと復帰する。
【0107】
このように、局側装置101は、ディスカバリ動作の周期より長い起床期間を設け、当該起床期間において必ずディスカバリ動作が行なわれるようにする。
【0108】
このような構成により、前述の図4および図5に示す構成、すなわちディスカバリ動作の開始タイミングで起床してディスカバリ動作を行なう構成と比べて、処理の簡易化を図ることができる。すなわち、予め設定されているディスカバリ動作の実行時刻に合わせて起床する等の特別な処理が不要となり、スリープ状態および通常状態を繰り返す単純な処理で、新規ONUの登録処理を行なうことができる。
【0109】
具体的には、たとえば、予め設定されているディスカバリ動作の実行時刻に合わせて起床するためには、ディスカバリ開始直前にDBA処理部19から起床するための信号を出力する必要がある。制御部20は、DBA処理部19から受けた上記信号によってスリープ制御を終了し、各部を起床させる。
【0110】
これに対して、局側装置101では、上記のような信号をDBA処理部19から出力させることなく、スリープ動作を実現することが可能である。
【0111】
ところで、特許文献1に記載のPONシステムでは、宅側装置の省電力化を図ることが可能である。しかしながら、局側装置については、各宅側装置からの上りフレームを受信する必要があり、また、各宅側装置への下りフレームの送信を停止すると、局側装置および宅側装置間のリンクが切断されるため、宅側装置のように省電力化を図ることは困難である。このため、既存のPONシステムでは、局側装置は、ONUとの間で通信トラフィックが無い場合であっても、すべての回路を通常動作させている。
【0112】
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在しない場合には、各ONU102とフレームを送信または受信するための通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移する。局側装置101は、スリープ状態から復帰して通信部の動作を再開する。局側装置101は、スリープ状態からの復帰後、局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。そして、局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべきONU102が存在する場合には通信部の動作を継続する。
【0113】
すなわち、局側装置101は、ONU102が1つも接続されていない場合に、ONU102との間で通信信号すなわちフレームを送信または受信するための通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、たとえば所定時間ごとにスリープ状態から復帰して新規ONUの登録処理を実施する。
【0114】
このような構成により、局側装置101において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規ONUの登録処理を行なうことができる。
【0115】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0116】
また、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、ディスカバリ動作を間欠的に行なう。局側装置101は、ディスカバリ動作の開始タイミングになるとスリープ状態から復帰する。そして、局側装置101は、ディスカバリ動作の完了後、自己と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移する。
【0117】
このような構成により、たとえばディスカバリ動作の周期より長い起床期間を設け、当該起床期間において必ずディスカバリ動作が行なわれるようにする構成と比べて、スリープ期間を長く設定することができるため、省電力効果を高めることができる。
【0118】
また、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、ディスカバリ動作を周期的に行なう。そして、局側装置101は、スリープ状態から復帰してからディスカバリ動作の周期よりも長い時間が経過した後、自己と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移する。
【0119】
このような構成により、たとえばディスカバリ動作の開始タイミングで起床してディスカバリ動作を行なう構成と比べて、処理の簡易化を図ることができる。すなわち、予め設定されているディスカバリ動作の実行時刻に合わせて起床する等の特別な処理が不要となり、スリープ状態および通常状態を所定周期で繰り返す単純な処理で、新規ONUの登録処理を行なうことができる。
【0120】
また、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、それぞれ異なる速度のフレームを各ONU102との間で送信または受信するための複数の通信部を含む。局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する際、ONU102の存在をフレームの速度ごとに判断する。そして、局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在しないことが確認された速度に対応する通信部の動作を停止する。
【0121】
このような構成により、通信信号の速度ごとに通信動作の停止を制御することができるため、より効率的な省電力動作を行なうことができる。
【0122】
また、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101が、自己のスリープ状態への遷移可否判断、ディスカバリ動作および各ONU102に対するスリープ制御を行なう。
【0123】
しかしながら、PONシステム201は、このような構成に限定されるものではない。すなわち、局側装置101の代わりに、PONシステム201における局側装置101およびONU102以外の他の装置が、局側装置101のスリープ状態への遷移可否判断、ディスカバリ動作および各ONU102に対するスリープ制御を行なう構成であってもよい。
【0124】
たとえば、PONシステム201は、確認処理部を備える。確認処理部は、局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。確認処理部は、局側装置101と通信すべきONU102が存在しない場合に、局側装置101が通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、スリープ状態から復帰して通信部の動作を再開した後、局側装置101と通信すべきONU102が存在するか否かを確認する。そして、局側装置101は、自己と通信すべきONU102が存在しない場合にスリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべきONU102が存在する場合には通信部の動作を継続する。
【0125】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0126】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係るPONシステムと比べて接続ONUが存在する状態において省電力動作を行なうPONシステムに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係るPONシステムと同様である。
【0127】
局側装置101は、各ONU102の負荷状況すなわちトラフィック量を確認し、配下の全ONUについて上りトラフィック量および下りトラフィック量がゼロである場合、または十分に少ない場合には、局側装置101における通信部、たとえば上り受信処理部12、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の動作を停止する。
【0128】
より詳細には、局側装置101では、下りトラフィック量測定部22がたとえば下りフレームのレートを測定することで下りトラフィック量を取得し、DBA処理部19が各ONU102からのレポートを集計することで上りトラフィック量を取得する。
【0129】
但し、ONU102は、局側装置101からの下りトラフィックが途絶えると、シグナルディテクト(Signal Detect)に失敗し、局側装置101およびONU102間のリンク断に至ってしまう。
【0130】
これを防ぐために、局側装置101は、通信部の動作を停止しているスリープ期間において、局側装置101配下の各ONU102をスリープさせることにより、各ONU102におけるシグナルディテクトおよびすべてのタイムアウト検出を無効にする。
【0131】
すなわち、局側装置101における制御部20は、局側装置101と各ONU102との間のフレームのトラフィック量を示すトラフィック情報を取得する。制御部20は、取得したトラフィック情報に基づいて、各ONU102との間の通信動作を停止するスリープ状態へ局側装置101を遷移させるか否かを判断する。制御部20は、局側装置101をスリープ状態へ遷移させると判断した場合に、ONU102において局側装置101との間の通信動作が停止するスリープ期間について、たとえば各ONU102のスリープ期間が一致する共通スリープ期間が設けられるように各ONU102を制御する。そして、制御部20は、共通スリープ期間において局側装置101がスリープ状態となるように制御する。
【0132】
ここで、上記各ONU102に対する制御には、局側装置101が、スリープ動作中のONU102が既にいくつか存在している状態でスリープ状態へ遷移可能となるために、これらのONU102を一旦起床させる制御も含まれる。
【0133】
また、PONシステム201では、たとえば、ONUごとに設定されたスリープ時間α[s]および起床時間β[s]に基づいて、ONUがスリープおよび起床を繰り返す。
【0134】
なお、制御部20は、共通スリープ期間が設けられるような制御を行なわない構成であってもよい。すなわち、各ONU102のスリープ期間がたまたま重複する場合には、当該重複期間において局側装置101をスリープ状態に遷移させればよい。また、局側装置101のスリープ状態への遷移が可能と判断した後に、共通スリープ期間が設けられるような制御を行なう構成に限らず、事前に共通スリープ期間が設けられるような制御を行なう構成であってもよい。具体的には、制御部20は、局側装置101のスリープ状態への遷移が可能と判断する前において、各ONU102に対して個別に、各ONU102のスリープ期間が一致するようにスリープ動作を制御する。これにより、局側装置101のスリープ状態への遷移が可能と判断された時点で、各ONU102のスリープ期間が既に一致している状態とすることが可能である。
【0135】
また、制御部20は、共通スリープ期間が終了するとONU102との間の通信動作を再開させ、取得したトラフィック情報に基づいて、局側装置101をスリープ状態へ遷移させるか否かを判断する。
【0136】
ここで、局側装置101は、スリープ状態であっても下りトラフィック量測定部22からの下りトラフィック情報を取得しており、また、起床期間においてDBA処理部19からの上りトラフィック情報を取得する。上りトラフィック情報については、スリープ動作中のONU102において上りトラフィックが発生した場合に、起床期間においてONU102からスリープ終了要求が送信され、制御部20がDBA処理部19からの上りトラフィック情報を取得する。ONU102において上りトラフィックが発生しなければ、DBA処理部19からの上りトラフィック情報は取得されず、この場合、制御部20は、上りトラフィックはゼロであると認識する。
【0137】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置が省電力動作およびディスカバリ動作を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0138】
図8を参照して、まず、局側装置101における制御部20は、上りトラフィック情報および下りトラフィック情報を取得する。すなわち、制御部20は、DBA処理部19からの上りトラフィック情報および下りトラフィック量測定部22からの下りトラフィック情報を取得する(ステップS1)。
【0139】
次に、制御部20は、取得したトラフィック情報に基づいて、局側装置101をスリープ状態へ遷移させるか否かを判断する。より詳細には、制御部20は、上りトラフィックおよび下りトラフィックを監視し、トラフィック量がゼロまたは非常に小さい場合に、配下の全ONUはスリープ可能であり、局側装置101のスリープ状態への遷移が可能であると判断する(ステップS2)。
【0140】
制御部20は、局側装置101をスリープ状態へ遷移させないと判断すると(ステップS2でNO)、たとえば次のDBAサイクルにおいて、トラフィック情報の取得およびスリープ状態への遷移可否判断を再び行なう(ステップS1およびS2)。
【0141】
一方、制御部20は、局側装置101をスリープ状態へ遷移させると判断すると(ステップS2でYES)、配下の全ONUのスリープタイミングが一致しているか否か、すなわち全ONUのスリープ期間および起床期間が一致しているか否かを確認する(ステップS3)。
【0142】
次に、制御部20は、配下の全ONUのスリープタイミングが一致していない場合には(ステップS3でNO)、全ONUのスリープタイミングを一致させる、すなわち全ONUのスリープ期間および起床期間を一致させる制御を行なう(ステップS4)。
【0143】
ここで、制御部20が局側装置101のスリープ状態への遷移を判断した際、既にいくつかのONU102が個別にスリープ動作を行っている可能性が考えられる。この場合、当該ONU102は、既にα[s]のスリープ時間およびβ[s]の起床時間に従ってスリープおよび起床を繰り返している。このため、全ONUのスリープタイミングを揃えることができない可能性がある。
【0144】
このような場合には、制御部20は、必要なONU102に対して一旦スリープ動作を終了させ、配下の全ONUのスリープタイミングが揃うようなタイミングで当該ONU102をスリープ状態へ遷移させてもよい。
【0145】
また、制御部20は、既にスリープ動作を行っている全ONUに対して、一旦スリープ動作を終了させる制御を行なってもよい。
【0146】
次に、制御部20は、配下の全ONUからスリープ命令に対するスリープ承認信号を受信できなかった場合、具体的には、いずれかのONU102からスリープ命令に対するスリープ否認信号を受信した場合、またはいずれかのONU102から応答が無かった場合には(ステップS5でNO)、今回のDBAサイクルでは局側装置101をスリープ状態へ遷移させない。
【0147】
一方、制御部20は、配下の全ONUからスリープ承認信号を受信した場合には(ステップS5でYES)、配下の全ONUのスリープ期間において、局側装置101をスリープ状態へ遷移させる。より詳細には、制御部20は、スリープ命令によって上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を停止する(ステップS6)。
【0148】
次に、制御部20は、スリープ期間の終了タイミングになると、局側装置101をスリープ状態から復帰させる。より詳細には、制御部20は、起床命令によって上り受信処理部12、PONトランシーバ11の受信部31、下り送信処理部18およびPONトランシーバ11の送信部32の動作を再開する(ステップS7)。
【0149】
より詳細には、スリープ期間の終了タイミングになると、局側装置101および全ONUが起床する。この起床の目的は、ゲートフレームおよびレポートフレームの送受信による局側装置101およびONU102間の同期維持、ならびに局側装置101のスリープ動作およびONU102のスリープ動作を終了する際のスリープ終了要求等のやり取りである。
【0150】
この起床期間において、ゲートフレームおよびレポートフレームは毎回送信されるが、スリープ終了要求は、必要な場合しか送信されない。
【0151】
次に、制御部20は、ディスカバリゲートのONU102への送信およびレジスタリクエストのONU102からの受信等のディスカバリ動作を行い、接続ONUが新たに発生したか否か、すなわち局側装置101と通信すべきONU102が新たに発生したか否かを確認する。なお、このディスカバリ動作は、スリープ状態からの復帰のたびに行なう必要はない(ステップS8)。
【0152】
次に、制御部20は、取得したトラフィック情報に基づいて、局側装置101をスリープ状態へ再遷移させるか否かを判断する。より詳細には、制御部20は、上りトラフィックが発生した場合すなわちONU102からスリープ終了要求を受信した場合(ステップS9でYES)、または下りトラフィックが発生した場合には(ステップS10でYES)、該当のONU102へ起床命令を送信し、また、局側装置101をスリープ状態から復帰させる(ステップS11)。
【0153】
すなわち、局側装置101は、一台でも通信すべきONU102が発生すれば、スリープ動作を終了しなければならない。その際、局側装置101は、他のONU102についてはスリープ動作をそのまま継続させる。通信すべきONU102が発生しなかった場合には、局側装置101およびONU102は再びスリープ状態へ遷移する。
【0154】
また、ONU102は、上りトラフィックが発生した場合にはスリープ終了要求を送信し、上りトラフィックが発生しない場合には局側装置101へ何も送信しない。制御部20は、スリープ終了要求の受信の有無を上りトラフィック情報として取得する。
【0155】
制御部20は、局側装置101をスリープ状態へ遷移させると判断すると(ステップS9でNOかつステップS10でNO)、配下の全ONUのスリープ期間において、局側装置101をスリープ状態へ遷移させる(ステップS6)。このとき、全ONUは一斉に起床している状態であり、スリープタイミングは調整済みであることから、全ONUのスリープタイミングを一致させるための再度の調整は不要である。
【0156】
一方、制御部20は、通信すべきONU102が発生したため、局側装置101をスリープ状態へ遷移させないと判断すると(ステップS9でYESまたはステップS10でYES)、起床させるべきONU102に対して起床命令を送信し、その後、トラフィック情報の取得およびスリープ状態への遷移可否判断を再び行なう(ステップS1およびS2)。すなわち、局側装置101および該当のONU102はそのまま起床し続け、他のONU102はスリープ動作を継続する。なお、トラフィックの無い他のONU102は、既にスリープ動作中であり、所定のスリープ開始タイミングでスリープ状態へ遷移するため、スリープ命令を当該ONU102へ送信する必要はない。
【0157】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムにおける省電力動作、ならびに局側装置およびONU間のデータの流れの一例を示す図である。図9は、局側装置101に2つのONUiおよびONUi+1が接続された場合を示す。
【0158】
図9を参照して、局側装置101は、ONUごとの上りトラフィック量および下りトラフィック量を確認し、ONUの上りおよび下りの負荷が十分に低い場合には、当該ONUに対してスリープを指示する。たとえば、局側装置101は、スリープ時間および起床時間を示すスリープ命令をONUiおよびONUi+1へ送信する。ONUiおよびONUi+1は、当該スリープ命令を受信して、スリープ命令に対するスリープ受諾信号またはスリープ否認信号を局側装置101へ返信する。より詳細には、ONU102は、上りトラフィックが溜まっている場合にはスリープ否認信号を局側装置101へ送信し、スリープ動作を行なわない。この場合、局側装置101は、スリープ状態へ遷移しないことになる。ここでは、ONUiおよびONUi+1は、当該スリープ命令を受信して、スリープ状態へ遷移するものとする。
【0159】
局側装置101は、配下の全ONUの上りおよび下りの負荷が十分に低い場合には、各ONU102に指示するスリープ時間を調整することにより、全ONUのスリープ期間を同期させる。たとえば、局側装置101は、ONUiおよびONUi+1の上りトラフィック情報および下りトラフィック情報を取得し、ONUiおよびONUi+1の上りトラフィック量および下りトラフィック量が所定の閾値以下またはゼロになったことから、自己をスリープ状態へ遷移させると判断する。そうすると、局側装置101は、前述のように、配下のONUiおよびONUi+1のスリープタイミングを一致させる制御を行なうことにより、ONUiおよびONUi+1の共通スリープ期間を設ける。
【0160】
図9に示す例では、ONUiおよびONUi+1が同じタイミングで起床し、局側装置101が、スリープタイミングを示すスリープ命令をONUiおよびONUi+1へ送信する。ONUiおよびONUi+1は、当該スリープ命令を受信して、スリープ受諾信号を局側装置101へ返信し、互いに同じタイミングにおいてスリープ期間へ遷移し、同じスリープ時間だけスリープ状態を維持する。これにより、ONUiおよびONUi+1の共通スリープ期間が設けられる(状態ST21)。
【0161】
次に、局側装置101は、ONUiおよびONUi+1からスリープ受諾信号を受信した場合には、この共通スリープ期間に合わせてスリープ状態へ遷移する。ここで、スリープ中のONU102は、信号ロス、およびMPCP等のタイムアウト検出を行なわない。このため、局側装置101は、ONU102側の共通スリープ期間に対応する期間において、10Gbpsまたは1Gbpsのフレーム送信動作、およびフレーム受信動作を停止させることができる。
【0162】
次に、局側装置101ならびにONUiおよびONUi+1は、スリープ状態から復帰し、ONUごとの上りトラフィック量および下りトラフィック量を確認し、ONUの上りおよび下りの負荷が十分に低いことから、ONUiおよびONUi+1のスリープ動作を継続させ、自己も再びスリープ状態へ遷移する。すなわち、局側装置101は、ONUとの間では特に信号を送受信せず、共通スリープ期間に合わせてスリープ状態へ再び遷移する。なお、局側装置101は、起床期間においてディスカバリ動作を行ってもよい(状態ST22)。
【0163】
なお、この起床期間において、ONUiおよびONUi+1は、上りトラフィックが存在する場合には、スリープ終了要求を局側装置101へ送信する(状態ST23およびST24)。
【0164】
次に、局側装置101ならびにONUiおよびONUi+1は、スリープ状態から復帰する。局側装置101は、ONUごとの上りトラフィック量および下りトラフィック量を確認し、たとえばONUiの上りトラフィック量または下りトラフィック量が所定の閾値を超えたことから、自己をスリープ状態へ遷移させないと判断する。そうすると、局側装置101は、起床命令をONUiへ送信する。ONUiは、当該起床命令を受信して、局側装置101へ起床受諾信号を送信し、通常動作に復帰する。一方、局側装置101は、ONUi+1の上りトラフィック量および下りトラフィック量は所定の閾値以下であることから、ONUi+1との間では特に信号を送受信せず、ONUi+1は、スリープ状態へ遷移する(状態ST25)。
【0165】
なお、この起床期間において、ONUiおよびONUi+1は、上りトラフィックが存在する場合には、スリープ終了要求を局側装置101へ送信する(状態ST26およびST27)。
【0166】
なお、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムと同様に、フレームの速度ごとに、トラフィック情報の取得、局側装置101のスリープ状態への遷移可否判断および各ONU102に対するスリープ制御を行なう構成であってもよい。
【0167】
すなわち、局側装置101における制御部20は、局側装置101をスリープ状態へ遷移させるか否かを速度ごとに判断し、スリープ状態へ遷移させると判断した速度について共通スリープ期間が設けられるように各ONU102を制御する。なお、制御部20は、これらの動作を、速度ごとに異なるタイミングで行なってもよいし、共通のタイミングで行なってもよい。
【0168】
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、自己と各ONU102との間のフレームのトラフィック量を示すトラフィック情報を取得する。局側装置101は、取得したトラフィック情報に基づいて、各ONU102との間の通信動作を停止するスリープ状態へ局側装置101を遷移させるか否かを判断する。局側装置101は、スリープ状態へ遷移させると判断した場合に、ONU102において局側装置101との間の通信動作が停止するスリープ期間について、たとえば各ONU102のスリープ期間が一致する共通スリープ期間においてスリープ状態となる。
【0169】
すなわち、局側装置101は、トラフィック量がゼロであるか、またはトラフィック量が十分に少ない場合に、各ONUをスリープさせ、各ONUがスリープ状態である期間、通信部の動作を停止する。
【0170】
このような構成により、局側装置101において動作をさせる必要のない回路を停止して消費電力を低減するとともに、この省電力動作と並行して新規ONUの登録処理を行なうことができる。
【0171】
したがって、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置の省電力化を適切に図ることができる。
【0172】
また、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、共通スリープ期間が終了するとONU102との間の通信動作を再開する。そして、局側装置101は、自己とONU102との間の通信動作が再開された後、トラフィック情報を取得し、取得したトラフィック情報に基づいて、自己をスリープ状態へ再遷移させるか否かを判断する。
【0173】
このような構成により、共通スリープ期間の終了のたびにトラフィック量を監視し、監視結果に基づいてスリープ状態への遷移を適切に判断することができる。
【0174】
また、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、異なる速度のフレームを各ONU102との間で送信または受信する。局側装置101は、自己をスリープ状態へ遷移させるか否かを速度ごとに判断し、スリープ状態へ遷移させると判断した速度について共通スリープ期間が設けられるように各ONU102を制御する。
【0175】
このような構成により、通信信号の速度ごとに通信動作の停止を制御することができるため、より効率的な省電力動作を行なうことができる。
【0176】
なお、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101は、各ONU102のスリープ期間が一致する共通スリープ期間が設けられるように各ONU102を制御する構成であるとしたが、これに限定するものではない。局側装置101は、各ONU102のスリープ期間の一部または全部が重複する重複期間が設けられるように各ONU102を制御する構成であればよい。
【0177】
また、本発明の第2の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置101が、トラフィック情報の取得、局側装置101のスリープ状態への遷移可否判断、ディスカバリ動作および各ONU102に対するスリープ制御を行なう。
【0178】
しかしながら、PONシステム201は、このような構成に限定されるものではない。すなわち、局側装置101の代わりに、PONシステム201における局側装置101およびONU102以外の他の装置が、トラフィック情報の取得、局側装置101のスリープ状態への遷移可否判断、ディスカバリ動作および各ONU102に対するスリープ制御を行なう構成であってもよい。
【0179】
たとえば、PONシステム201は、トラフィック情報取得部、スリープ判断部およびスリープ制御部を備える。
【0180】
トラフィック情報取得部は、局側装置101と各ONU102との間のフレームのトラフィック量を示すトラフィック情報を取得する。
【0181】
スリープ判断部は、取得されたトラフィック情報に基づいて、各ONU102との間の通信動作を停止するスリープ状態へ局側装置101を遷移させるか否かを判断する。
【0182】
スリープ制御部は、スリープ状態へ遷移させると判断された場合に、ONU102において局側装置101との間の通信動作が停止するスリープ期間について、各ONU102のスリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において局側装置101がスリープ状態となるように制御する。
【0183】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係るPONシステムと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0184】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0185】
11 PONトランシーバ
12 上り受信処理部
13 上りバッファメモリ
14 上り送信処理部
15 SNIトランシーバ
16 下り受信処理部
17 下りバッファメモリ
18 下り送信処理部
19 DBA処理部(トラフィック情報取得部)
20 制御部(確認処理部、スリープ判断部およびスリープ制御部)
22 下りトラフィック量測定部(トラフィック情報取得部)
31 受信部
32 送信部
33 送信部
34 受信部
41 CDR
42 デシリアライザ
43 MAC処理部
44 シリアライザ
51 10G/1G用光受信回路
52 10G用光送信回路
53 1G用光送信回路
101 局側装置
102A,102B,102C,102D 宅側装置
201 PONシステム
SP1,SP2 スプリッタ
OPTF 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の宅側装置と、各前記宅側装置と通信信号を送信または受信するための通信部を含む局側装置とを備える通信システムにおける省電力制御方法であって、
前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認するステップと、
前記局側装置が、自己と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合には、前記通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移するステップと、
前記局側装置が前記スリープ状態から復帰して前記通信部の動作を再開するステップと、
前記スリープ状態からの復帰後、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認するステップと、
前記局側装置が、自己と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合に前記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき前記宅側装置が存在する場合には前記通信部の動作を継続するステップとを含む、省電力制御方法。
【請求項2】
前記局側装置は、ディスカバリ動作を間欠的に行い、
前記省電力制御方法は、
前記局側装置が、前記ディスカバリ動作の開始タイミングになると前記スリープ状態から復帰して前記通信部の動作を再開するステップと、
前記局側装置が、前記ディスカバリ動作の完了後、自己と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合に前記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき前記宅側装置が存在する場合には前記通信部の動作を継続するステップとを含む、請求項1に記載の省電力制御方法。
【請求項3】
前記局側装置は、ディスカバリ動作を周期的に行い、
前記省電力制御方法は、
前記局側装置が、前記スリープ状態から復帰してから前記ディスカバリ動作の周期よりも長い時間が経過した後、自己と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合に前記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき前記宅側装置が存在する場合には前記通信部の動作を継続するステップを含む、請求項1に記載の省電力制御方法。
【請求項4】
前記局側装置は、それぞれ異なる速度の通信信号を前記各宅側装置との間で送信または受信するための複数の通信部を含み、
前記省電力制御方法は、
前記速度それぞれについて、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認するステップと、
前記速度それぞれについて、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在しないことが確認された前記速度に対応する前記通信部の動作を停止するステップとを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の省電力制御方法。
【請求項5】
1または複数の宅側装置と、各前記宅側装置と通信信号を送受信するための局側装置とを備える通信システムにおける省電力制御方法であって、
前記局側装置と前記各宅側装置との間の前記通信信号のトラフィック量を示すトラフィック情報を取得するステップと、
取得した前記トラフィック情報に基づいて、前記各宅側装置との間の通信動作を停止するスリープ状態へ前記局側装置を遷移させるか否かを判断するステップと、
前記スリープ状態へ遷移させると判断した場合に、前記宅側装置において前記局側装置との間の通信動作が停止するスリープ期間について、前記各宅側装置の前記スリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において前記局側装置が前記スリープ状態となるように制御するステップとを含む、省電力制御方法。
【請求項6】
前記省電力制御方法は、さらに、
前記局側装置が、前記重複期間が終了すると前記宅側装置との間の通信動作を再開するステップと、
前記局側装置と前記宅側装置との間の通信動作が再開された後、前記トラフィック情報を取得し、取得した前記トラフィック情報に基づいて、前記スリープ状態へ前記局側装置を再遷移させるか否かを判断するステップとを含む、請求項5に記載の省電力制御方法。
【請求項7】
前記局側装置は、異なる速度の前記通信信号を前記各宅側装置との間で送信または受信し、
前記省電力制御方法は、
前記速度それぞれについて、前記スリープ状態へ遷移させるか否かを判断するステップと、
前記速度それぞれについて、前記スリープ状態へ遷移させると判断した前記速度について前記重複期間が設けられるように前記各宅側装置を制御するステップとを含む、請求項5または請求項6に記載の省電力制御方法。
【請求項8】
1または複数の宅側装置と、各前記宅側装置と通信信号を送信または受信するための通信部を含む局側装置とを備える通信システムであって、
前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認するための確認処理部を備え、
前記確認処理部は、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合に、前記局側装置が前記通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、前記スリープ状態から復帰して前記通信部の動作を再開した後、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認し、
前記局側装置は、自己と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合に前記スリープ状態へ再び遷移し、自己と通信すべき前記宅側装置が存在する場合には前記通信部の動作を継続する、通信システム。
【請求項9】
1または複数の宅側装置と通信信号を送信または受信するための通信部を備える局側装置であって、
前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認するための確認処理部と、
前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合には、前記通信部の動作を停止するスリープ状態へ遷移し、その後、前記スリープ状態から復帰して前記通信部の動作を再開するためのスリープ制御部とを備え、
前記確認処理部は、前記スリープ状態からの復帰後、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在するか否かを確認し、
前記スリープ制御部は、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在しない場合に前記スリープ状態へ再び遷移し、前記局側装置と通信すべき前記宅側装置が存在する場合には前記通信部の動作を継続する、局側装置。
【請求項10】
1または複数の宅側装置と、各前記宅側装置と通信信号を送受信するための局側装置とを備える通信システムであって、
前記局側装置と前記各宅側装置との間の前記通信信号のトラフィック量を示すトラフィック情報を取得するためのトラフィック情報取得部と、
取得された前記トラフィック情報に基づいて、前記各宅側装置との間の通信動作を停止するスリープ状態へ前記局側装置を遷移させるか否かを判断するためのスリープ判断部と、
前記スリープ状態へ遷移させると判断した場合に、前記宅側装置において前記局側装置との間の通信動作が停止するスリープ期間について、前記各宅側装置の前記スリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において前記局側装置が前記スリープ状態となるように制御するためのスリープ制御部とを備える、通信システム。
【請求項11】
1または複数の宅側装置と通信信号を送受信するための局側装置であって、
前記局側装置と前記各宅側装置との間の前記通信信号のトラフィック量を示すトラフィック情報を取得するためのトラフィック情報取得部と、
取得された前記トラフィック情報に基づいて、前記各宅側装置との間の通信動作を停止するスリープ状態へ前記局側装置を遷移させるか否かを判断するためのスリープ判断部と、
前記スリープ状態へ遷移させると判断された場合に、前記宅側装置において前記局側装置との間の通信動作が停止するスリープ期間について、前記各宅側装置の前記スリープ期間の一部または全部が重複する重複期間において前記局側装置が前記スリープ状態となるように制御するためのスリープ制御部とを備える、局側装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−90025(P2013−90025A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226509(P2011−226509)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】