説明

真核生物I型インタフェロン応答サプレッサー類の共発現による細菌ベースデリバリシステムからのトランスジーン発現の増強方法

トランスジーン発現を改善した細菌デリバリシステムを提供する。この組換え細菌デリバリシステムは、問題のトランスジーンおよび真核細胞I型インタフェロン応答サプレッサーを真核細胞に運搬する。真核細胞I型インタフェロン応答の抑制は、コードされたトランスジーンの発現増大を可能にする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、自然のI型インタフェロン応答を阻害することによって、真核細胞中における向上したトランスジーン発現を促進する細菌デリバリシステムに関する。本発明は、より詳しくいうと、真核細胞に対して、i)トランスジーン類およびii)真核細胞I型インタフェロン応答サプレッサー類を運搬する組換え細菌デリバリシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
数種の病原性菌の生の弱毒化変異体が、粘膜経路により非相同性抗原運搬のための潜在的ワクチンベクターとして開発されている。このような生ベクターは経口で、経鼻でまたは吸入による単回投与で哺乳類細胞および組織に対する巨大分子の標的化デリバリにより、全身および粘膜免疫応答の両者を刺激するという利点を提供する。ワクチン抗原および/または治療分子をコードするプラスミドDNAの細菌媒介運搬という大きな潜在力が、感染性疾患、腫瘍および遺伝的欠陥の実験的動物モデルにおいて、実証されている。
【0003】
残念なことに、哺乳類における外来たんぱく質または阻害性RNAの発現のためのパッセンジャーRNA/DNAおよび他の分子の細菌ベクターによる放出の結果、I型インタフェロン(IFN)応答が起こる。侵入する病原体のための宿主サーベイランスシステムの重要な成分は、細胞壁成分から核酸にわたるパターン化された微生物/ウイルスリガンド類を結合する病原体認識レセプター類(PRR)の進化上保存されたファミリである。PRRシグナル伝達の結果、ニュークリアファクターB(Nuclear Factor−B)(NF−B)およびインタフェロン制御因子3(IRF−3)のような転写因子の活性化が起こり、それらは、宿主防御の迅速活性化のための炎症性文脈を提供する。前記のNF−B経路は、IL−1および腫瘍壊死因子−αのような前炎症性サイトカイン類の発現を制御し、一方、IRF−3経路は、I型インタフェロン(IFN−αおよびIFN−β)の産生を導く。この最初に産生された“第一波”IFNは、関連因子IRF−7の発現を惹起し、それは通常、極めて低濃度でほとんどの細胞中に存在している(非特許文献1)。IRF−3はIRF−7と協働する可能性が非常に高く、数種のIFN−αサブタイプを”第二波”IFNsとして合成開始する正のフィードバックループに関与している(非特許文献2および非特許文献3)。I型IFNsは、オートクリンおよびパラクリンシグナル伝達によって数百種のIFN刺激遺伝子(ISGs)を活性化し(非特許文献4;非特許文献5)、それらのいくつかには、抗ウイルスたんぱく質をコードする。今日まで、3種のIFN刺激経路が完璧に樹立されている。これらには、プロテインキナーゼR(PKR)(非特許文献6)、2’−5’オリゴアデニレートシンセターゼ(2’−5’OAS)(非特許文献7)、およびMXたんぱく質(非特許文献8)が含まれる。このI型IFN応答は、PKRおよび2’−5’OASにより外来遺伝子または阻害性RNAsの発現を限定する。活性化PKRは、真核細胞開始因子eIF2のαサブユニットをリン酸化することによって翻訳を妨害する。一方、2−5Aシンセターゼ類は、mRNAおよびリボソームRNAを消化する一重鎖特異的エンドリボヌクレアーゼであるRNase Lを活性化させる短い2’−5’OAS関連オリゴアデニレート類を産生する。あるRNAウイルスに感染した後の宿主生存におけるMXたんぱく質の重要性が、十分に実証されている(非特許文献9)が、作用の正確な様式は、未だ不明である。このI型IFN応答は、従って、RNA産生と安定性を低下させる機構によって外来核酸の発現を限定し、また、細菌ベクターによって運搬されたパッセンジャー核酸からのメッセージ翻訳を阻害する。
【0004】
さまざまな細菌ベクターの成分は、宿主細胞でIFN応答を惹起する。この細菌自体は、トル様レセプター類を介してIFN応答を惹起できる。転写時においてパッセンジャー核酸により産生された二重鎖RNAはI型IFNsを誘発させるばかりでなく、PKRおよび2’−5’OASを直接的に活性化する。哺乳類細胞の細胞質に運搬されると、プラスミドDNAは、しばしば、mRNAとアニールしてdsRNAを形成するアンチセンスRNAを産生する陰性プロモータ類を含有する。細菌ベクターのこれらの成分全てが、従って、生体医療手段としての細菌ベクターの有効性を低下させる。
【0005】
特許文献1は、アデノウイルスベクターのような組換えベクターに対する免疫応答を阻害する方法を記載している。しかし、この技術は、ベクターによりコードされた遺伝子の長期発現に対する液性応答(例 抗体)および前記ベクターの免疫系によるクリアランスを防止することに関しており、細菌ベクターまたはそのパッセンジャー核酸に対するI型IFN応答の防止については記載していない。
【0006】
【特許文献1】米国特許6,525,029(Falck−Perersenら、2月25日、2003年)
【0007】
【非特許文献1】Sato Mら、Immunity,13(4)539−548;2000
【非特許文献2】Marieら、EMBO J 17(22)、6660−6669;1998
【非特許文献3】Sato Mら、FEBS Lett 441(1)106−110;1998
【非特許文献4】de Veerら、J Leukocyte Biol 69(6)912−920、2001
【非特許文献5】Derら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 95(26)15623−15628;1998
【非特許文献6】Williams,Oncogene 18(45)6112−6120;1999
【非特許文献7】Silverman.、J Interferon Res 14(3)101−104;1994
【非特許文献8】Haller and Kochs、Traffic 3(10)710−714;2002
【非特許文献9】Heftiら、J Virology 73(8)6984−6991;1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記先行技術は従って、これまで、宿主細胞のI型IFN応答を消去させるかまたは減弱させる細菌ベクターを提供できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、細菌発現ベクターによる侵入に対する応答で哺乳類宿主細胞によって通常開始されるI型IFN応答の消去または減弱に成功した組換え細菌発現ベクターを提供する。前記組換え細菌発現ベクターは、宿主細胞中でI型IFN応答を阻害するかまたは抑制する因子をコードすることによって、通常のIFN応答を回避する。このIFNサプレッサーは、i)たんぱく質として運搬するために細菌細胞中で、または、ii)前記細菌細胞によって運搬される塩基配列から真核細胞中で、発現する。IFN応答の阻害は、細菌ベクターによって運搬されたパッセンジャー遺伝子のより確実な発現を可能とし、発現は、I型IFN応答が抑制された真核細胞中でのみ増強される。例えば、本発明の組換え細菌発現ベクターが免疫応答を望む抗原をコードするパッセンジャー塩基配列を運搬する時、哺乳類細胞によるそれらの抗原の産生が、宿主IFN系による妨害が少なくなるかまたは全く妨害されず(または、妨害程度が低下する)、抗原が発現され、前記抗原に対する所望の免疫応答が産生できる。これとは別に、前記パッセンジャー核酸配列が酵素、ホルモン類または治療または栄養性因子のような所望のたんぱく質産物のためである時、前記哺乳類細胞によるこれらのたんぱく質産物の産生は、宿主IFN系による妨害が少ないかまたは全く妨害されない。
【0010】
本発明の目的は、i)1種以上のパッセンジャー遺伝子;およびii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する1種以上の因子をコードする核酸配列、を含む遺伝子工学作製細菌を提供することである。前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする核酸配列は真核細胞プロモータに読み取り可能に連結され、哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する1種以上の因子をコードする核酸配列は、真核細胞プロモータまたは原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている。さらに別の態様では、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記発現可能な核酸配列は、前記遺伝子工学作製細菌の染色体上に存在する。さらなる態様では、i)1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする真核細胞で発現可能である核酸配列;およびii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする核酸配列の一方または両方が、プラスミド上に存在する。さらに、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子細胞は、ウイルス起源であり得る。いくつかの態様において、前記1種以上のパッセンジャー遺伝子は、結核またはマラリア抗原をコードする。さらなる態様において、前記遺伝子工学作製細菌は、シゲラ菌であるかまたはマイコバクテリウムである。さらに、前記パッセンジャー遺伝子は、非相同性トランスジーンであることもできる。
【0011】
本発明はさらに、細胞または組織中において1種以上の問題の遺伝子産物の産生を増大させる方法を提供する。前記方法は、前記細胞または組織に対して、i)問題の1種以上の遺伝子産物およびii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する1種以上の因子をコードする核酸配列を含む遺伝子工学作製細菌を投与することを含む。前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする核酸配列は、真核細胞プロモータに読み取り可能に連結され、哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する1種以上の因子をコードする前記核酸配列は、真核細胞プロモータまたは原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている。投与段階は、前記の遺伝子工学作製細菌が前記細胞または組織に侵入して、問題の1種以上の遺伝子産物および前記1種以上の因子を細胞内または組織内で産生できるようにする条件下で行われる。1態様において、前記発現可能な核酸配列の転写は、真核細胞プロモータによって制御される。別の態様において、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記発現可能な核酸配列の転写は、原核細胞プロモータによって制御される。さらに別の態様において、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記発現可能な核酸配列は、遺伝子工学作製細菌の染色体上に存在する。さらなる態様において、i)前記1種以上の問題の遺伝子産物をコードする発現可能な核酸配列、およびii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする発現可能な核酸配列の一方または両方が、プラスミド上に存在する。さらに、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子は、ウイルス起源であることができる。いくつかの態様において、前記問題の1種以上の遺伝子産物は、結核抗原であることができる。さらなる態様において、前記遺伝子工学作製細菌は、シゲラ菌またはマイコバクテリウムである。
【0012】
本発明はさらに、哺乳類中に問題の抗原に対する免疫応答を誘発する方法を提供する。前記方法は、前記哺乳類に対して問題の抗原をコードする核酸配列;および哺乳類インタフェロン応答を阻害する1種以上の因子をコードする核酸配列、を含む遺伝子工学作製細菌を投与する過程を含む。前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする核酸配列は、真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されており、および哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする核酸配列は、真核細胞プロモータまたは原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている。本発明の1態様において、問題の抗原は、マイコバクテリウム・チューバキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)抗原である。いくつかの態様において、前記発現可能な核酸配列の転写は、真核細胞プロモータによって制御されている。他の態様において、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記発現可能な核酸配列の転写は、原核細胞プロモータによって制御されている。さらに他の態様において、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする発現可能な核酸配列は、前記遺伝子工学作製細菌の染色体上に存在する。いくつかの態様において、i)問題の抗原をコードする発現可能な核酸配列およびii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする発現可能な核酸配列の一方または両方は、プラスミド上に存在する。さらなる態様において、哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子は、ウイルス起源であることができる。
【発明の効果】
【0013】
結核ワクチン剤のワクチン性質を改善し、そのワクチン剤の製造を効率化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の組換え細菌発現ベクターは、細菌侵入に対する応答において哺乳類宿主細胞によって通常開始されるI型インタフェロン応答を消去、減弱または抑制する因子をコードするように遺伝子工学で作製されている。これらの因子は、前記細菌ベクター細胞によって発現されることもあるし、真核宿主細胞によって翻訳される核酸中にコードさせることもできる。真核宿主細胞中におけるIFN応答の減弱または消去は、ベクターに導入された核酸から問題のたんぱく質およびペプチドを効率的に転写および翻訳させる。このようなベクターに入れた分子は、菌の繁殖および生存に必要なペプチドおよびたんぱく質、ならびに、菌内部に含まれる問題の“パッセンジャー”分子をコードすることもできる。問題のパッセンジャー核酸の例には、例えば、遺伝子工学で細菌がコードするようにさせた抗原を含むが、それらに限定されない。真核宿主細胞I型インタフェロン応答は減弱しているので、前記抗原は、持続的にかつ宿主細胞が前記抗原に対して免疫応答を開始させるだけ十分なレベルで発現される。本発明の細菌発現ベクターは、従って、ワクチン調製物における使用に理想的である。
【0015】
本発明の細菌発現ベクターは、I型インタフェロン応答を消去、減弱、阻害または抑制する因子をコードするように遺伝子工学で作製されている。当業者は、IFN応答の特異的メディエータを標的とする因子を多くのウイルスがコードすることを理解するであろう。これらの因子は、IFN応答拮抗剤と称することもできる。最も特性解析のすすんだウイルス標的の中でも、プロテインキナーゼR(PKR)、RNase L活性化(2’−5’)オリゴアデニレートシンセターゼおよびたんぱく質のインタフェロン制御因子(IRF)ファミリがある。
【0016】
免疫応答を“阻害する”または“抑制する”とは、真核細胞中で惹起された典型的または通常の免疫応答が、完全または部分的に阻害され、低下され、減弱され、妨害される等を意味している。このような阻害は、当業者に思い浮かぶだろう数種の方法のいずれによっても検出しかつ測定でき、それらは、前記免疫応答の指標であるかまたはそれに特徴的であるかまたはそれに関連している物質(例 IFNα、IFNβ等)の量、活性または属性の低下を検出することを含むが、それらに限定されない。阻害レベルは、一般的に、少なくとも約25%、好適には約50%、およびさらに好適には約60、70、80、90または100%である。阻害レベルは、典型的には、本発明のベクター(1種以上のトランスジーンプラス1種以上の免疫系阻害剤をコードするベクター)を移入した宿主細胞中で産生される1種以上の物質の量を、対照細胞(前記1種以上のトランスジーンをコードするが免疫系阻害剤はコードしないベクターを移入された細胞)で産生された同一物質の量と比較し、その差を検出することで、通常、測定する。
【0017】
同様に、トランスジーンの発現を“増大”または“増加”させるとは、一般的に、対照細胞に比較して、本発明のベクターを移入した宿主細胞中において発現(すなわち、転写ならびに翻訳)したトランスジーンの量の増大、増加等を意味する。このような増大は、例えば前記ベクターから産生されるトランスジーン産物の量、活性または属性の増大を検出すること;産生されるトランスジーン産物に関連する物質(例 mRNA、前記トランスジーン産物により産生される物質または効果、前記トランスジーン産物に対する抗体)の量、活性または属性の増大を検出すること等、当業者に思い浮かぶいくつかの方法のいずれによっても、測定できる。増大レベルは、一般的に、少なくとも約25%、好適には約50%、およびさらに好適には約60、70、80、90または100%、またはそれをはるかに超えている。
【0018】
本発明での使用に適した免疫応答阻害たんぱく質は、さまざまなウイルスによってコードされ、それらの例には、ロタウイルス非構造たんぱく質1(NSP1);インフルエンザ−Aウイルス非構造たんぱく質1(NS1);アデノウイルス関連RNA IおよびII(VA IおよびII);ワクチニアウイルスE3LまたはνIFN−α/βRcたんぱく質;C型肝炎ウイルス非構造たんぱく質5A(NS5A)またはNS3/4Aプロテアーゼ;シミアンウイルス−Vたんぱく質;センダイウイルスCたんぱく質;エクトロメリアウイルスC12Rたんぱく質;アデノウイルスE1Aたんぱく質、パラミキソウイルスのCたんぱく質、またはヒトパピローマウイルス(HPV)E6オンコプロテインが含まれるが、それらに限定されない。
【0019】
ウイルス感染に対する宿主防御としてのIFN系の基本的重要性は、さらに、いくつかのウイルスがIFN誘発抗ウイルス応答に拮抗する遺伝子産物をコードするという知見によって例示される。ウイルスは、IFN誘発可能たんぱく質の誘発および作用を妨害するために、数種の異なる戦略を用いる。DNAおよびRNAウイルスは両者ともに、IFNシグナル伝達経路の活性を不完全にするたんぱく質をコードする。複数の機構類が関与しているようである。これらの中には、模倣が含まれる。IFNシグナル伝達経路の細胞成分を模倣する産物をウイルスがコードする2−3の例がある。この分子的模倣が、IFNシグナル伝達過程に対する拮抗をもたらすことができる。例えば、ポックスウイルスは、可溶性IFNレセプターホモログ類をコードする(νIFN−Rc)。これらのνIFN−Rcホモログ類は、ポックスウイルス感染細胞から分泌され、IFNを結合し、それによって、それらの天然レセプターを介してそれらが抗ウイルス応答を惹起するように作用するのを妨害する。νIFN−α/βRcたんぱく質は、ワクチニアウイルスおよび他のいくつかのオルソポックスウイルスにより分泌される。νIFN−α/βレセプターホモログ、ウェスタンリザーブ(Western Reserve)株中のB18R遺伝子産物およびコペンハーゲン(Copenhagen)株中におけるB19R産物は、数種の異なるIFN−αサブタイプならびにIFN−βを結合し、IFN−α/βシグナル伝達活性を妨害する。IFNシグナル伝達に悪影響を及ぼす他の3種のDNAウイルスは、アデノウイルス、パピローマウイルスおよびヒトヘルペスウイルス8(HHV−8)である。前記アデノウイルスE1Aたんぱく質は、ISGF−3活性化上流のあるところでIFN媒介シグナル伝達を妨害する。ISGF−3のDNA結合活性は、E1Aにより阻害される。宿主細胞質で複製するパラミキソウイルスであるSeV(SeV)のCたんぱく質は、IFN誘発可能細胞性遺伝子の転写活性化に干渉することにより、IFN誘発抗ウイルス応答を回避させる。センダイ(Sendai)ウイルスの場合、前記Cたんぱく質は、少なくとも2種の方法でIFN作用に干渉する。Cたんぱく質はSTAT−1の合成を防止し、それらはまた、STAT−1ターンオ−バーの亢進を誘発する。ヒトパピローマウイルス(HPV)E6オンコプロテインは選択的にIRF−3に結合するが、しかし、IRF−2およびIRF−9を含む他の細胞性IRF類には非常に弱くしか結合しない。E6がIRF−3に会合してトランス活性化を阻害しそれによってIFN応答を回避する機構を、HPVに付与する。アデノウイルスE1Aたんぱく質はまた、p300を結合するE1A能力に依存性の機構によってIRF−3媒介転写活性化を阻害する。HHV−8はカポジ肉腫に関連するガンマヘルペスウイルスであり、IFN−α/βにより誘発された転写活性化のリプレッサーとして機能するIRFホモログ(νIRF)を合成する。HHV−8にコードされたνIRFたんぱく質はまた、IRF−1媒介転写活性化を抑制する。2種の他のヘルペスウイルスである帯状疱疹ウイルス(VZV)およびサイトメガロウイルス(CMV)もまた、IFNシグナル伝達経路の機能を破壊する。VZVは、STAT−1およびJAK−2たんぱく質の発現を阻害するが、JAK−1に対してはほとんど効果を有していない。異なる拮抗戦略がCMV感染細胞で起こり、MHCクラスII発現もまた、そこで阻害される。CMV感染線維芽細胞中でたんぱく質分解が増大するためJAK−1レベルが特異的に低下する。I型IFNレセプター類からのIFNレセプター媒介シグナル伝達に関与する遺伝子産物を、数種の非セグメント化マイナス鎖RNAウイルスがコードする。例えば、シミアンウイルス5またはおたふくかぜウイルスによる感染は、STAT−1のプロテオゾーム媒介分解増加につながり、一方、2型パラインフルエンザウイルスに感染した細胞中では、STAT−2の分解が起こる。マイナス鎖RNAウイルスであるエボラウイルスのVP35たんぱく質は、I型IFN拮抗剤として作用するが、前記拮抗作用の詳細な生化学的機構は未だ明らかになっていない。VP35は、IFN−βプロモータのウイルス誘発およびISRE駆動遺伝子発現のdsRNA−およびウイルス媒介活性化を阻害する。3種の例示阻害剤(インフルエンザウイルスからのNS1、ロタウイルスからのNSP1およびアデノウイルスからのVAI)をコードする核酸配列を、図9のA−Cに示した。
【0020】
IFN抑制因子はまた、他の非ウイルス起源からも得ることができ、例えば、宿主細胞からも得ることができ(例 サイトカインシグナル伝達サプレッサー(SOCS)、優性PKRネガティブおよび優性RNase Lネガティブ)、本発明の実施において利用することができる。このIFN応答を抑制するかまたは減弱させかつウイルス発現ベクター中に遺伝子工学で作製できかつウイルス発現ベクターから発現に成功した核酸配列によりコードされるいかなる因子(例 インタフェロン刺激遺伝子に対するsiRNAs)も、本発明の実施において使用できる。例には、上記に述べたようなもの、ならびにRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR);2,5’−オリゴアデニレートシンセターゼ(OAS);RNase L;Mxたんぱく質GTPase類;IFN誘発可能RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(ADAR1);IRF−5およびIRF−7のようなIFN制御因子;TLR3、TLR4、TLR7およびTLR9のような(IRF)ファミリの転写因子;IRAK1/4およびTRAF6のような因子;RLR、MyD88、TAK1、TOLLIP、TIFA等のような、I型IFN類の抗ウイルス作用に必須のさまざまなオートクリンIFN誘発エフェクターおよびモジュレータたんぱく質が含まれるが、それらに限定されない。
【0021】
“細菌発現ベクター”とは、問題の核酸配列を含有しかつ運搬し、および/または発現するように遺伝子工学で作製された細菌細胞を意味する。このように利用できる菌の例には、カンピロバクター種(Campylobacter spp.)、ナイセリア種(Neisseria spp.),ヘモフィラス種(Haemophilus spp.),アエロモナス種(Aeromonas spp.),フランシセラ種(Francisella spp.),イエルシニア種(Yersinia spp.),クレブシエラ種(Klebsiella spp.),ボルデテラ種(Bordetella spp.),レジオネラ種(Legionella spp.),コリネバクテリウム種(Corynebacterium spp.),シトロバクター種(Citrobacter spp.),クラミジア種(Chlamydia spp.),ブルセラ種(Brucella spp.),シュードモナス種(Pseudomonas spp.),ヘリコバクター種(Helicobacter spp.),またはビブリオ種(Vibrio spp.)を含むが、それらに限定されない。
【0022】
使用した特定のCampylobacter株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるCampylobacter株の例には、カンピロバクター・ジェジュニ(C.jejuni)(ATCC Nos.43436、43437、43438)、カンピロバクター・ヒョインテスチナリス(C.hyointestinalis)(ATCC No.35217)、カンピロバクター・フィータス(C.fetus)(ATCC No.19438)カンピロバクター・フェカリス(C.fecalis)(ATCC No.33709)、カンピロバクター・ドイレイ(C.doylei)(ATCC No.49349)およびカンピロバクター・コリ(C.coli)(ATCC Nos.33559、43133)を含むが、それらに限定されない。
【0023】
使用した特定のイエルシニア(Yersinia)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるYersinia株の例には、イエルシニア・エンテロコリチカ(Y.enterocolitica)(ATCC No.9610)またはイエルシニア・ペスチス(Y.pestis)(ATCC No.19428)、イエルシニア・エンテロコリチカ(Y.enterocolitica)Ye03−R2(al Hendyら、Infect.Immun.、60:870;1992)またはY.enterocolitica aroA(O’Gaoraら、Micro.Path.,9:105;1990)を含む。
【0024】
使用した特定のクレブシエラ(Klebsiella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるKlebsiella株の例には、クレブシエラ・ニューモニアエ(K.pneumoniae)(ATCC Nos.13884)を含む。
【0025】
使用した特定のボルデテラ(Bordetella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるBordetella株の例には、ボルデテラ・ペルツシス(B.pertussis)およびボルデテラ・ブロンチセプチカ(B.bronchiseptica)(ATCC No.19395)が含まれる。
【0026】
使用した特定のナイセリア(Neisseria)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるNeisseria株の例には、ナイセリア・メニンギチジス(N.meningitidis)(ATCC No.13077)およびナイセリア・ゴノルホエアエ(N.gonorrhoeae)(ATCC No.19424)、N.gonorrhoeae MSII aro変異体(Chamberlainら、Micro.Path.,15:51−63;1993)が含まれる。
【0027】
使用した特定のアエロモナス(Aeromonas)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるAeromonas株の例には、アエロモナス・サルミノシダ(A.salminocida)(ATCC Nos.33658)、アエロモナス・シューベリ(A.schuberii)(ATCC No.43700)、アエロモナス・ヒドロフィア(A.hydrophila)、アエロモナス・ユークレノフィラ(A.eucrenophila)(ATCC No.23309)が含まれる。
【0028】
使用した特定のフランシセラ(Francisella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるFrancisella株の例には、フランシセラ・ツラレンシス(F.tularensis)(ATCC Nos.15482)が含まれる。
【0029】
使用した特定のコリネバクテリウム(Corynebacterium)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるCorynebacterium株の例には、コリネバクテリウム・シュードチューバキュローシス(C.pseudotuberculosis)(ATCC No.19410)を含むが、それらに限定されない。
【0030】
使用した特定のシトロバクター(Citrobacter)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるCitrobacter株の例には、シトロバクター・フロウンジ(C.freundii)(ATCC Nos.8090)を含む。
【0031】
使用した特定のクラミジア(Chlamydia)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるChlamydia株の例には、クラミジア・ニューモニアエ(C.pneumoniae)(ATCC No.VR1310)を含むが、それらに限定されない。
【0032】
使用した特定のヘモフィラス(Haemophilus)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるHaemophilus株の例には、ヘモフィラス・インフルエンザエ(H.influenzae)(Leeら、J.Biol.Chem.270:27151;1995)、ヘモフィラス・ソムナス(H.somnus)(ATCC No.43625)を含むが、それらに限定されない。
【0033】
使用した特定のブルセラ(Brucella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるBrucella株の例には、ブルセラ・アボルツス(B.abortus)(ATCC No.23448)を含む。
【0034】
使用した特定のレジオネラ(Legionella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるLegionella株の例には、レジオネラ・ニューモフィラ(L.pneumophila)(ATCC No.33156)またはL.pneumophila mip変異体(Ott,FEMS Micro.Rev.,14:161;1994)を含む。
【0035】
使用した特定のシュードモナス(Pseudomonas)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるPseudomonas株の例には、シュードモナス・アエルギノサ(P.aeruginosa)(ATCC No.23267)を含む。
【0036】
使用した特定のヘリコバクター(Helicobacter)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるHelicobacter株の例には、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)(ATCC No.43504)、ヘリコバクター・ムステラエ(H.mustelae)(ATCC No.43772)を含む。
【0037】
使用した特定のビブリオ(Vibrio)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるVibrio株の例には、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)(ATCC No.14035)、ビブリオ・シンシナチエンシス(Vibrio cincinnatiensis)(ATCC No.35912)、ビブリオ・コレラエ(V.cholerae)RSI強毒性変異体(Taylorら、J.Infect.Dis.,170:1518−1523;1994)およびV.cholerae ctxA、ace、zot,cep変異体(Waldor Jら、Infect.Dis.,170:278−283;1994)を含む。
【0038】
好適な実施の態様において、本発明においてベクター株を展開した細菌株には、担体としておよびワクチンベクターとしての両者として作用する能力を有するエンテロバクテリアセアエ(Enterobacteriaceae)のような菌が含まれ、エスシェリチア種(Escherichia spp.),シゲラ種(Shigella spp.),およびサルモネラ種(Salmonella spp.)を含むがそれらに限定されない。グラム陽性でかつ抗酸ベクター株も、同様に、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)またはマイコバクテリウム種(Mycobacterium spp.)から構築できる。
【0039】
使用した特定のエスシェリチア(Escherichia)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるエスシェリチア株の例には、大腸菌(Escherichia coli)株DH5α、HB101、HS−4、4608−58、1184−68、53638−C−17,13−80および6−81(例えば、Sambrookら、同上;Grantら、同上;Sansonettiら、Ann.Microbiol.(Inst.Pasteur)、132A:351;1982を参照)、エンテロトキシン原性の大腸菌(例えば、Evansら、Infect.Immun.,12:656;1975参照)、腸管病原性の大腸菌(例えば、Donnenburgら、J.Infect.Dis.,169:831;1994を参照)、腸管侵入性大腸菌(例えば、Smallら、Infect Immun.,55:1674;1987を参照)、および腸管出血性大腸菌(例えば、McKeeおよびO’Brien、Infect.Immun.,63:2070;1995を参照)が含まれる。
【0040】
使用した特定のサルモネラ(Salmonella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるSalmonella株の例には、サルモネラ・チフィ(S.typhi)(例えば、ATCC No.7251参照)、サルモネラ・チフィムリウム(S.typhimurium)(例えば、ATCC No.13311を参照)、サルモネラ・ガリナルム(Salmonella galinarum)(ATCC No.9184)、サルモネラ・エンテリジチス(Salmonella enteriditis)(例えば、ATCC No.4931参照)およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)(例えば、ATCC No.6994参照)、サルモネラ・チフィ(S.typhi)aroC、aroD二重変異体(例えば、Honeら、Vacc.,9:810−816;1991参照)、S.typhimurium aroA変異体(例えば、Mastroeniら、Micro.Pathol.,13:477−491;1992参照)が含まれる。
【0041】
使用した特定のシゲラ(Shigella)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるShigella株の例には、Shigella flexneri(例えば、ATCC No.29903参照)、Shigella flexneri CVD1203(例えば、Noriegaら、Infect.Immun.62:5168;1994)、Shigella flexneri 15D(例えば、Sizemoreら、Science 270:299;1995)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)(例えば、ATCC No.29930参照)、およびシゲラ・ジセテリアエ(Shigella dysenteriae)(例えば、ATCC No.13313参照)が含まれる。
【0042】
使用した特定のマイコバクテリウム(Mycobacterium)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるマイコバクテリウム株の例には、マイコバクテリウム・チューバキュローシス(M.tuberculosis)CDC1551株(例えば、Griffithら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.Aug;152(2):808;1995参照)、M.tuberculosis Beijing株(Soolingenら、1995)H37Rv株(ATCC#:25618)、M.tuberculosisパントテン酸栄養素要求株(Sambandamurthy,Nat.Med.2002 8(10):1171;2002)、M.tuberculosis rpoV変異体株(Collinsら、Proc Natl Acad Sci USA 92(17):8036;1995)、M.tuberculosisロイシン栄養素要求株(Hondalusら、Infect.Immun.68(5):2888;2000)、バシレ・カルメッテ−ゲリン(Bacille Calmette−Guerin(BCG))Danish株(ATCC#:35733)、BCG日本株(ATCC#:35737)、BCG,シカゴ株(ATCC#:27289)、BCGコペンハーゲン株(ATCC#:27290)、BCGパスツール株(ATCC#:35734)、BCGグラクソ株(ATCC#:35741)、BCG Connaught株(ATCC#:35745)、BCGモントリオール(ATCC#:35746)が含まれる。
【0043】
使用した特定のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)株は、本発明にとって重大ではない。本発明に使用できるListeria monocytogenes株の例には、L.monocytogenes株10403S(例えば、Stevensら、J.Virol 78:8210−8218;2004)または(i)actA plcB二重変異体(Petersら、FEMS Immunology and Medical Microbiology 35:243−253;2003);(Angelakopoulousら、Infect and Immunity 70:3592−3601;2002);(ii)アラニンラセマーゼ遺伝子およびD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のためのdal dat二重変異体(Thompsonら、Infect and Immunity 66:3552−3561;1998)のような変異L.monocytogenes株が含まれる。
【0044】
本発明のいくつかの実施の態様において、前記菌は、特に、Shigella種であり、特に、弱毒化侵入性Shigella flexneri 2aである。これらの株、MPC51およびNCD1は、asdおよびmurI欠失変異を導入したS.flexneri株2457Tの誘導体である。このasd欠損は、発現ベクターコードasd対立遺伝子によって補完されており、murI変異の結果、前記株がD−グルタメートを合成できなくなる;従って、これらの株は、ジアミノピメリン酸およびD−グルタメート不在下で適切な細胞壁を合成できなくなり、そのことが、真核細胞の侵入後の細菌細胞の溶解を促進する。ゲンタミシン保護アッセイにより測定されるように、△asd、△murI二重変異体MPC51のHeLa細胞侵入挙動は、親株およびMPC51pYA3342(asdをコードするプラスミド)のそれと類似していた。前記株はさらに、先に染色体asd座に挿入したカナマイシン耐性遺伝子の除去により、さらに改変されている。生成した株Shigella flexneri NCD1は、従って、抗生物質耐性マーカー類を含んでおらず、asdおよびmurI遺伝子の染色体欠損をまだ保持しており、現在の法的要件下でヒトにおける薬理用途のために許容できる。NCD1はまた、親株と同様の様式でHeLaおよびCaco−2細胞に侵入性であることが明らかとなっている。
【0045】
一般的に、本発明の細菌発現ベクターは、IFN阻害因子および1種以上の問題の他の遺伝子すなわちパッセンジャー遺伝子の両方をコードし運搬するように遺伝子工学で作製されている。前記パッセンジャー遺伝子は、典型的には、別の菌または病原体のような別の生物由来の非相同性トランスジーンであり、いかなる生物由来であってもよい。しかし、前記“パッセンジャー遺伝子”はまた、細菌ベクターそれ自体に自然に出現する遺伝子である(すなわち、ベクターとして作用する菌に由来するかまたはそれから派生する)こともできるが、しかし、1個以上の付加的コピーが、例えば、細菌にとって典型的なレベルを上回るように転写レベルを増大させるプロモータまたは宿主細胞または組織(例 肺、リンパ節、樹状突起細胞等)の特定型に特異的なプロモータの制御下にある細菌ベクター中に、遺伝子工学で作製できる。さらに、“パッセンジャー遺伝子”は、全“遺伝子”を称するばかりでなく問題のペプチド、ポリペプチド、たんぱく質または核酸をコードするいかなる配列をも称することを意図しており、すなわち、全“遺伝子”それ自体が含まれなくてもよく、むしろ、例えば抗原性ペプチドのような問題のポリペプチドまたはペプチドをコードする遺伝子の部分が含まれる。さらに、例えば、キメラたんぱく質またはアミノ酸配列のさまざまな変異体(天然であるかまたは遺伝子工学で作製された)形態のようなさまざまな他の構築体も、パッセンジャー遺伝子によってコードされることができる。さらに、自然に出現しない完全に人工的なアミノ酸配列も同様に、コードすることができる。前記細菌発現ベクターは、1種以上のこのような“パッセンジャー遺伝子”を含むように遺伝子工学で作製でき、また、各パッセンジャー遺伝子の複数コピーをコードすることもできる。前記組換え細菌発現ベクターは、前記細菌の侵入を受けた宿主細胞中に前記パッセンジャー遺伝子(類)を保有するベクターとして作用し、その細菌中で前記遺伝子産物が発現され、すなわち、遺伝子配列が発現可能でかつ前記遺伝子産物の転写および/または翻訳が、前記細菌による侵入を受ける宿主細胞中で起こる。前記パッセンジャー遺伝子をコードする配列は、発現制御配列、特に細菌および/または真核宿主細胞内部で発現を可能とする発現制御配列に機能的に(読み取り可能に)連結している。“読み取り可能に連結する”とは、前記パッセンジャー遺伝子をコードする核酸配列が、細菌ベクターまたは哺乳類細胞のような適切な宿主細胞内部における有効な転写および翻訳を受けることを意味している。
【0046】
特に、上記パッセンジャー遺伝子は、抗原でありかつそれに対する免疫応答を惹起するのが望ましい1種以上のペプチドまたはたんぱく質をコードできる。当業者は、広く多様なこのような抗原が、さまざまなウイルス、菌、真菌、さまざまな寄生体等の病原菌に関連するものを含めてただしそれに限定されずに、存在することを認識するであろう。前記ウイルス抗原が由来するウイルス病原体は、インフルエンザウイルス(Taxonomy ID:59771のようなオルソミキソウイルス;RSV,HTLV−1(Taxonomy ID:39015)およびHTLV−II(Taxonomy ID:11909)のようなレトロウイルス、HPV(Taxonomy ID:337043)のようなパピロ−マヴィリダエ、EBV Taxonomy ID:10295)のようなヘルペスウイルス;CMV(Taxonomy ID:10358)または単純ヘルペスウイルス(ATCC#:VR−1487);HIV−1(Taxonomy ID:12721)およびHIV−2 Taxonomy ID:11709)のようなレンチウイルス;狂犬病のようなラブドウイルス;ポリオウイルス(Taxonomy ID:12080)のようなピコルノウイルス;ワクチニア(Taxonomy ID:10245)のようなポックスウイルス;ロタウイルス(Taxonomy ID:10912);およびアデノ関連ウイルス1(Taxonomy ID:85106)のようなパルボウイルスがあげられるが、それらに限定されない。
【0047】
ウイルス抗原の例は、ヒト免疫不全ウイルス抗原Nef(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.(国立アレルギー感染症HIV保管カタログ番号)#183;Genbank寄託番号#AF238278)、Gag,Env(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#2433;Genbank寄託番号#U39362)、Tat(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat#827;Genbank寄託番号#M13137)、Tat−31−45(Agwaleら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:10037;2002)のようなTatの変異誘導体、Rev(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#2088;Genbank寄託番号#L14572)、およびPol(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repository Cat.#238;Genbank寄託番号#AJ237568)およびgp120のTおよびB細胞エピトープ(Hanke and McMichael,AIDS Immunol Lett.,66:177;1999);(Hankeら、Vaccine,17:589;1999);(Palkerら、J.Immunol.,142:3612 3619;1989)限定されるわけではないがgp120とCD4の融合体(Foutsら、Virol.2000,74:11427−11436;2000)のようなHIV−1 Envとgp120のキメラ誘導体;限定されるわけではないがgp140(Stamatosら、J Virol、72:9656−9667;1998)またはHIV−1 Envの誘導体および/またはそのgp140(Binleyら、J Virol,76:2606−2616;2002);(Sandersら、J Virol,74:5091−5100(2000));(Binleyら、J Virol,74:627−643;2000)のようなHIV−1 envの短く切断されたかまたは修飾された誘導体、B型肝炎抗原(Genbank寄託番号#AF043578);(Wuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:4726 4730;1989);VP4(Genbank寄託番号#AJ293721);(Mackowら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、87:518 522;1990)およびVP7(Genbank寄託番号#AY003871);(Greenら、J.Virol.62:1819 1823;1988)のようなロタウイルス抗原、ヘマグルチニンまたは(GenBank寄託番号#AJ404627);(PertmerおよびRobinson,Virology、257:406;1999);ヌクレオプロテイン(GenBank寄託番号#AJ289872);(Linら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA97:9654−9658;2000)のようなインフルエンザウイルス抗原、チミジンキナーゼ(GenBank寄託番号#AB047378;(Whitleyら、New Generation Vaccines、825−854ページ)のような単純ヘルペスウイルス抗原が含まれるが、それらに限定されない。
【0048】
前記細菌抗原が由来する菌病原体には、マイコバクテリウム種(Mycobacterium spp.),ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、サルモネラ種(Salmonella spp.),シゲラ種(Shigella spp.),大腸菌(E.coli),リケッチア種(Rickettsia spp.),リステリア種(Listeria spp.),レジオネラ・ニューモニアエ(Legionella pneumoniae),シュードモナス種(Pseudomonas spp.),ビブリオ種(Vibrio spp.),バシラス・アンスラシス(Bacillus anthracis)およびボレリア・ブルグドルフェリ(Borellia burgdorferi)が含まれるが、それらに限定されない。
【0049】
細菌病原体の防御性抗原の例には、CFA/Iフィンブリエ抗原(Yamamotoら、Infect.Immun.,50:925 928;1985)および熱不安定性トキシンの無毒性Bサブユニット(ら、Infect.、Immun.,40:888−893;1983)のようなエンテロトキシン原性大腸菌の体性抗原;ボルデテラ・ペルツシス(Bordetella pertussis)のパータクチン(Robertsら、Vacc.,10:43−48;1992)、B.pertussisのアデニレートシクラーゼヘモライシン(Guisoら、Micro.Path.,11:423−431;1991)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)の破傷風毒素のC断片(Fairweatherら、Infect.Immun.58:1323 1326;1990)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borellia burgdorferi)のOspA(Sikandら、Pediatrics,108:123−128;2001);(Wallichら、Infect Immun,69:2130−2136;2001)、リケッチア・プロワゼキ(Rickettsia prowazekii)およびリケッチア・チフィ(Rickettsia typhi)の防御性パラクリスタリン表面層たんぱく質(Carlら、Proc Natl Acad Sci USA、87:8237−8241;1990)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のリステリオライシン(“Llo”および“Hly”としても公知)および/またはスーパーオキシドジスムターゼ(“SOD”および“p60”としても公知)(Hess、J.ら、Infect.Immun.65:1286−92;1997);Hess,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.93:1458−1463;1996);(Bouwerら、J.Exp.Med.175:1467−71;1992)、ヘリコバクター・ピロリ(Helocobacter pylori)のウレアーゼ(Gomez−Duarteら、Vaccine 16、460−71;1998);(Corthesy−Theulazら、Infection&Immunity 66、581−6;1998)およびバシラス・アンスラシス(Bacillus anthracis)防御性抗原および致死的因子レセプター結合ドメイン(Priceら、Infect.Immun.69、4509−4515;2001)が含まれる。
【0050】
寄生体抗原が由来する寄生体病原体には、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)(ATCC#:30145)のようなPlasmodium種;トリパノゾーマ・クルジ(Trypanosome cruzi)(ATCC#:50797)のようなTrypanosome種;ジアルジア・インテスチナリス(Giardia intestinalis)(ATCC#:30888D)のようなGiardia種;ブーフィラス(Boophilus)種、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)(ATCC#:30221)のようなBabesia種;エンタメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)(ATCC#:30015)のようなEntamoeba種;エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)(ATCC#:40357)のようなEimeria種;リューシュマニア(Leishmania)種(Taxonomy ID:38568);シストゾーム(Schistosome)種、ブルギア(Brugia)種、ファスシダ(Fascida)種、ジロフィラリア(Dirofilaria)種、ウチェレリア(Wuchereria)種、およびオンチョセレア(Onchocerea)種を含むがそれらに限定されない。
【0051】
寄生体病原体の防御性抗原の例には、プラスモジウム・ベルゲイ(P.berghei)のサーカムスポロゾイテ抗原またはプラスモジウム・ファルシパルム(P.falciparum)のサーカムスポロゾイテ抗原のようなPlasmodium種のサーカムスポロゾイテ抗原(Sadoffら、Science,240:336 337;1988);Plasmodium種のメロゾイテ表面抗原(Spetzlerら、Int.J.Pept.Prot.Res.,43:351−358;1994);エンタメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)のガラクトース特異的レクチン(Mannら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA,88:3248−3252;1991)、Leishmania種のgp63(Russellら、J.Immunol.,140:1274 1278;1988);(XuおよびLiew,Immunol.,84:173−176;1995)、リューシュマニア・メージャー(Leishmania major)のgp46(Handmanら、Vaccine、18:3011−3017;2000)ブルギア・マライ(Brugia malayi)のパラミオシン(Liら、Mol.Biochem.Parasitol.,49:315−323;1991)、シストソマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)のトリオースーホスフェートイソメラーゼ(Shoemakerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:1842 1846;1992);トリチョストロンギラス・コルブリホルミス(Trichostrongylus colubriformis)の分泌グロビン様たんぱく質(Frenkelら、Mol.Biochem.Parasitol.,50:27−36;1992)、フランシオラ・ヘパチカ(Frasciola hepatica)(Hillyerら、Exp.Parasitol.,75:176−186;1992)、シストゾーマ・ボビス(Shistosoma bovis)およびシストゾーマ・ジャポニクム(S.japonicum)(Bashirら、Trop.Geor.Med.,46:255−258;1994)のグルタチオン―S―トランスフェラーゼ類;およびSchistosoma bovisおよびS.japonicumのKLH(Bashirら、同上、1994)が含まれる。
【0052】
これとは別に、例えば、癌細胞、アルツハイマー病、1型糖尿病、心疾患、クローン病、多発性硬化症等関連抗原のような感染性物質関連でない抗原に対する免疫応答を惹起するのが望ましい。
【0053】
さらに、前記細菌によって保有されるパッセンジャー遺伝子は、抗原をコードする必要はないが、問題のいかなるペプチドまたはたんぱく質もコードすることができる。例えば、本発明の方法は、先天性障害の矯正のためのパッセンジャー分子の運搬のために用いることができる。このような遺伝子には、例えば、嚢胞性線維症のための嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンスレギュレータ(CFTR)遺伝子のような欠損遺伝子の配置;またはHIV治療のためのインテグラーゼアンチセンス遺伝子のような新規遺伝子の導入;またはインタロイキン−27(IL−27)のようなI型T細胞応答を増強するための遺伝子;またはコレステロールとコレステロールレセプターまたはインシュリンとインシュリンレセプターのようなあるレセプター、代謝物またはホルモンの発現を修飾する遺伝子;または腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)のような癌細胞を死滅させることができる産物をコードする遺伝子;または骨吸収を阻害する天然のたんぱく質オステオプロテジェリン(OPG);または完全長ヒト化抗体類を効率的に発現させるための例えば癌細胞上のHER2/neu(erbB2)レセプターに作用するヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0054】
さらに、前記パッセンジャー遺伝子は、“小型阻害性”siRNAsのような阻害性RNAsをコードすることもできる。当該技術で公知のように、このようなRNAsは、問題のmRNAに対して相補性であり、例えば、遺伝子産物発現を防止する手段としてmRNAに結合してその翻訳を防止する。
【0055】
同様の方法をパッセンジャー分子の運搬のために用いて、自己免疫疾患または他の免疫系疾患を予防しまたは制御するために、免疫系を下方制御できる。例には、糖尿病、多発性硬化症、紅班性狼そうおよびクローン病、さらに炎症性関節皮膚疾患の予防または治療が挙げられる。他の例には、癌および他の疾患に対する治療的免疫応答をそらす免疫応答類の下方制御のような特定の免疫応答を妨害する免疫応答の微細調整が含まれる。Th1応答が、癌、リューシュマニア症、結核、およびHIVの予防および治療に適している時、例えば、Th2応答の下方制御である。このことは、適切な免疫応答の刺激と不適切な免疫応答の阻害のための適切なサイトカイン環境を発現させる能力と組み合わせた免疫系の免疫抑制性の性質を操作することにより、現技術によって達成できる。
【0056】
好適な実施の態様において、本発明は、宿主細胞中にIFN耐性遺伝子を導入する方法に関する。このような方法は、問題の遺伝子すなわち核酸配列をコードする配列とともに細菌ベースデリバリシステムに所望のIFN耐性遺伝子を導入することを含み、IFN耐性たんぱく質および問題の核酸配列が、前記菌を宿主に投与する時発現するようにする。前記IFN阻害剤は、前記菌(例 シゲラ)によってまたは宿主細胞によって産生されることができる。すなわち、IFN耐性遺伝子は、原核細胞プロモータからまたは真核細胞プロモータから発現させることができる。問題の前記遺伝子または核酸配列(パッセンジャー遺伝子)は、宿主細胞中で発現される。さらに、遺伝子配列は全て、連続的にまたは一時的に発現させるかまたは誘発させることもできる。
【0057】
さらに別の好適な実施の態様において、本発明は、1種以上の問題の遺伝子とともにインビトロで細胞中にI型IFN耐性遺伝子を導入する方法を提供する。このような方法は、例えば、弱毒化または減弱/不活性化シゲラ類中に1種以上のIFN耐性遺伝子とともに問題の1種以上のたんぱく質をコードする遺伝子の導入を含み、前記所望のたんぱく質/ペプチドは、前記シゲラを細胞に投与すると産生される。シゲラは、BHK(ベビーハムスター腎細胞)、HeLa(ヒト頚部エピセロイドカルシノーマ)、CaCo−2(ヒト結腸アデノカルシノーマ)のような数種の異なる細胞型に感染し、従って、細胞中に所望のパッセンジャー分子を運搬可能である。シゲラ感染細胞中における遺伝子発現は、I型IFN応答の阻害剤によって増強される。核酸運搬後、細胞を治療目的のため、遺伝子療法のため移植でき、または、診断アッセイの試薬として使用する。
【0058】
いくつかの場合、前記菌は、細胞に対して、所望の物質をコードする核酸配列を運搬し、細胞中でその産生を媒介することによって、”遺伝子療法”物質として作用する。例えば、シゲラベクターを用いて腸内にCXCR4/またはCCR5結合ケモカインコード遺伝子を運搬することは、HIV−I感染治療のためとみなすことができる。遺伝子工学作製菌のための操作は当業者に周知であり、このような操作を行う指針も、周知である。E.coli,Salmonella,Mycobacteria、Shigella,およびListeriaを弱毒化させる方法も、当業者に周知である(Evansら、J of Immuno.,Vol.120,1978,p.1423);(Noriegaら、Infect.Immun.,62(11):5168−5172 1994);(Honeら、Vacc.,9:810−816;1991)。
【0059】
例えば、細胞中に所望の遺伝子または遺伝子を運搬するための方法には、菌株中に問題の遺伝子を導入することを含め得る。本発明によれば、抗IFN応答遺伝子または遺伝子は、菌染色体または強毒性プラスミド中に、当業者に周知の方法によって導入でき、またはこれとは別に、複製性または非複製性のプラスミド中に保有させることができる。問題のベクターは、例えば、形質転換、エレクトロポレーション、移入、結合等により、細菌中に導入できる。前記株および細菌ベクター構築に用いた組換えDNA操作には、ポリメラーゼチェーン反応(PCR)、制限エンドヌクレアーゼ(本文で“RE”と称する)消化、DNA連結、アガロースゲル電気泳動、DNA精製、およびジデオキシヌクレオチド配列決定を含むが、それらに限定されず、それらは、他所に記載されており(Miller、A Short Course in Bacterial Genetics(細菌遺伝学の短期コース),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;1992);(Bothwellら,Methods for Cloning and Analysis of Eukaryotic Genes(真核細胞遺伝子のクローニングと分析のための方法),Eds.,Jones and Bartlett Publishers,Boston, Mass.1990);および(Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学のカレントプロトコール),vol.2:10.8.1−10.8.13,1992),バクテリオファージ媒介形質導入(deBoerら、Cell,56:641−649;1989);(Miller,同上、1992)および(Ausubelら、同上)、または化学的(Bothwellら、同上);(Ausubelら、同上);(Felgnerら、同上);および(Farhood,同上)、エレクトロポレーション(Bothwellら、同上);(Ausubelら、同上);(Sambrook、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(モレキュラークローニング:ラボラトリマニュアル)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, NY;1992)および物理的形質転換技術(Bothwellら、同上)を含むが、それらに限定されない。前記遺伝子は、ファージ類(deBoerら、同上)、プラスミドベクター(Curtiss、New Generation Vaccines(新世代ワクチン類):The Molecular Approach(分子的アプローチ),Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.、161−188ページおよび269−288ページ、1989)中に取り込ませることができるし、または、標的株の染色体中にスプライシングする(Honeら、同上)こともできる。
【0060】
例えば、Applied Biosystems ABITM3900ハイスループット(High−Throughput)DNAシンセサイザー(Foster City,CA94404 U.S.A.)を用いかつ製造業者が示した操作を用いて、遺伝子配列を合成により作製できる。約200bpを超える大きな配列を合成するため、完全長配列の1連のセグメント類をPCRにより作製し、それらを結合し、当該技術で周知の操作を用いて、完全長配列を形成させる。しかし、約200bpより小さい小型配列も、一回で合成できる。
【0061】
組換えプラスミド類を、例えば、バイオラッドジーンパルサー(BioRad Gene−Pulser)を用いてエレクトロポレーションにより菌株中に導入することもできる。ヌクレオチド配列決定によるcDNA配列の確認は、標準的自動化配列決定技術を用いて(例 Applied Biosystems自動シークエンサー、モデル373Aを用いて)達成できる。DNA配列決定およびポリメラーゼチェーン反応(本文で“PCR”と称する)のためのDNAプライマー類は、合成で調製できる。
【0062】
本発明のいくつかの実施の態様において、遺伝子工学作製菌は、弱毒化侵入性Shigella flexneriであり、前記菌中に導入する遺伝子は、アデノウイルスVAI遺伝子、ロタウイルスのNSP1および/またはインフルエンザウイルスのNS1であり、それらは、真核細胞プロモータ制御下にクローニングされ、エレクトポレーションによって前記細菌中に導入される。
【0063】
本発明はまた、本発明の組換え細菌発現ベクターを投与するための調製物を提供する。例えば、免疫応答惹起において使用するためのワクチン調製物を提供する。前記調製物には、本文に記載のような少なくとも1種の遺伝子工学作製菌株、および薬理学的に適切な担体を含む。このような組成物(例 ワクチンとしての用途用)の調製は、当業者に周知である。典型的には、このような組成物は液体溶液または懸濁物のいずれかとして調製されるが、錠剤、丸剤、粉剤等のような固体形状も同様に考えられる。固体形状または投与前溶液または懸濁液との混合に適した濃縮形状も同様に調製することができる。前記調製物も乳化できる。前記活性成分は、薬学的に許容でき前記の活性成分と相溶性の賦形剤と混合することもできる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等またはそれらの組み合わせである。さらに、前記組成物は、湿潤剤または懸濁化剤、pH緩衝剤等のような少量の助剤を含むことができる。本発明のワクチン調製物はさらに、アジュバントを含むことができ、その例には、セピック(Seppic),クイルA(Quil A)、アルヒドロゲル(Alhydrogel)等が含まれるが、それらに限定されない。
【0064】
もし前記組成物の経口形態を投与することを望むならば、さまざまな粘稠剤、着香料、希釈剤、懸濁化剤、分散剤または結合剤等を添加することができる。本発明の組成物は、投与に適した形状で前記組成物を提供するため、いかなる上記のような追加成分をも含むこともできる。前記製剤中の組換え菌の最終的量は変化してもよい。しかし、一般的に前記製剤中の前記量は、約1−99%であろう。さらに、本発明の調製物は、単一タイプの組換え菌または1種を超える組換え菌を含むことができる。最初、前記細菌ベクター株を約10−10cfuの用量で投与し、適切な経路で投与する。投与回数は、それぞれのベクター株の強度、および問題のコードされた組換え産物の価数、特定用途等に応じて変化させることができる。
【0065】
ワクチン調製物の場合、本発明は、前記細菌によってコードされた抗原に対する免疫応答を惹起する方法および前記抗原関連疾患または状態に対して哺乳類にワクチン接種する方法を提供する。免疫応答を惹起するとは、本発明のワクチン調製物投与が特異的抗体の合成(約1乃至1×10の範囲、好適には1×10、さらに好適には約1×10乃至約1×10の範囲、最も好適には1×10を超える力価)および/または例えば、Hチミジンキナーゼによって測定するような細胞性増殖を引き起こすことを意味している。本方法は、本発明の菌株を薬理学的に許容できる担体中に含む組成物を、哺乳類に投与することを含む。本発明のワクチン調製物は、当業者に周知の多くの適切な手段のいずれによって投与でき、それらは、注射によって、経口的に、経鼻的に、吸入によって、組換え菌を含む食品を摂取することによって等を含むがそれらに限定されない。好適な態様において、投与様式は、経口、皮下、皮膚内または筋肉内である。
【0066】
本発明をさらに、下記の非限定的実施例によって例示する。
【実施例1】
【0067】
組換えシゲラベクターによる宿主細胞中におけるI型IFN応答の誘発
I型インタフェロン応答を哺乳類細胞中で誘発する菌の能力を試験し、前記応答の性質を分析した。実験条件は、下記のようであった:セミコンフルエンスのHeLa細胞単層を、RNAパッセンジャー分子を有するShigella flexneriに1時間、感染多重度(MOI)100で37℃の6ウェルプレート中で暴露させた。細胞を、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)で2回洗浄した。150μg/mlゲンタミシンを含有する培地を1時間、前記細胞に添加し、細胞外菌を死滅させた。その後、細胞を2回洗浄し、10%ウシ胎児血清(FBS)添加DMEMを添加し、感染細胞を20時間、インキュベーションした。細胞を次にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、総RNAをRNeasyミニキット(Qiagen)により単離した。ヒトインタフェロンおよびレセプター類RTProfilerTM PCRアレイ(Superarray Biosciences)を利用し、84種のインタフェロン関連遺伝子の発現の上方制御または下方制御を明らかにした。
【0068】
結果を、表1に示した。この表からわかるとおり、シゲラベクターのヒト細胞への侵入は、I型IFNsおよび2’−5’オリゴアデニレートシンセターゼ(2’−5’OAS)のようなIFN刺激遺伝子の転写誘発につながった。調べた89種の遺伝子中、74種が、転写において2倍を超える増大を示した。
【0069】
さらに、実験を行い、シゲラにより運搬されたプラスミドDNAパッセンジャー分子由来のレポーター遺伝子のIFN−α/β欠失細胞中における発現が、自然のIFN系を有する細胞に比較して増強している(図1)ことを示した。
【0070】
これらの結果は、IFN刺激遺伝子が細菌ベクターにより哺乳類細胞に運搬されたパッセンジャー分子からの遺伝子発現を抑制することを示している。
【0071】
【表1】



【実施例2】
【0072】
I型IFN応答抑制細菌デリバリシステムの構築および細菌ベクターにより運搬されたパッセンジャー核酸の発現に及ぼす効果
この実施例は、I型IFN応答を抑制する2種の細菌デリバリシステムの構築とその利用、ならびに、パッセンジャー核酸発現に及ぼすその効果を記載している。両者の場合において、核酸は、エレクトポレーションによって弱毒化、侵入性Shigella flexneri中に遺伝子工学で作製した。Shigella flexneriは多くの組織培養細胞株中および動物モデル中で自然に侵入性であるので、それを選択した。このシゲラ株は導入された染色体変異を有しており、真核細胞侵入後それを溶解させ、エンドサイトーシス性小胞から逃れさせ、パッセンジャー分子の真核細胞の細胞質への放出を可能とする。
【0073】
実験第1セットにおいて、電気的に受容能力があるShigella flexneri株NCD1を調製し、市販のE.coliベータ−ガラクトシダーゼ発現レポーターベクターpcDNA3.1/His/lacZ(Invitrogen)によりエレクトロポレーションした。レポーターベクターpcDNA3.1/His/lacZは、哺乳類細胞中でヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモータ制御下に大腸菌(E.coli)ベータ−ガラクトシダーゼを発現させ、前記ベクターの運搬後、哺乳類媒介遺伝子発現の簡易分析を可能とする。この実験に用いた前記インタフェロン耐性遺伝子は、アデノウイルス関連I(VAI)RNA遺伝子であった。このアデノウイルスRNA遺伝子は、アデノウイルス感染後大量のRNAポリメラーゼIIIにより転写されることが公知となっている(Reichら、J.Mol.Biol.17,428,1996;Priceら、J.Virol.9,62,1972;Weinmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 71,3426;Solderlundら、Cell 7,585,1976)。アデノウイルスは、インタフェロン誘発二重鎖RNA活性化プロテインキナーゼPKRの活性化をブロックすることによって細胞性抗ウイルス性応答に対する防御として、ウイルスコードウイルス関連RNAを用いる(Galabru J、Katze MG、Robert N,Hovanessian AG.Eur.J Biochem.1989 Jan2;178(3):581−9)。アデノウイルスウイルス関連I(VAI)RNA遺伝子を1724bp挿入体上に有するpAdVAntageベクターを同様に、Shigella flexneri NCD1株中にエレクトポレーションによって入れた。Shigella flexneri株によるエレクトロポレーションによって、実施例1に記載のようにしてHeLa細胞に侵入させた。簡単に述べると、VAI遺伝子の抗インタフェロン効果を試験するため、HeLa細胞に、1)ベータ−ガラクトシダーゼレポーターベクター(pcDNA3.1/His/lacZ)を含むShigella flexneri NCD1およびpAdVAntageベクターを含むShigella flexneri NCD1;または2)ベータ−ガラクトシダーゼレポーターベクターのみを含むShigella flexneri NCD1株のいずれかを感染させた。24時間後、ベータ−ガラクトシダーゼアッセイ試薬(Stratagene)を、細胞溶解のためおよび細胞抽出物中におけるベータ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイするための両者のため、用いた。結果を、図2に示した。この図からわかるとおり、ベータ−ガラクトシダーゼ活性の大幅な増加が、ベータ−ガラクトシダーゼレポーターベクターおよびVAI抗インタフェロンベクターの両者を含むシゲラが侵入したHeLa細胞中で観察された。
【0074】
同様に、第二セットの実験で、レポーター遺伝子グリーンフルオレセントプロテイン(Green Fluorescent Protein)(GFP)含有組換え二重鎖RNAヌクレオカプシド類(rdsRN)を保有するシゲラベクターを、真核細胞発現ベクターpcDNA3.1zeo(+)(Invitrogen)中にクローニングしたインフルエンザ−A NS1またはロタウイルスNSP1のいずれかをコードする配列によってエレクトロポレーションした。生成したシゲラ株は、従って、RNAヌクレオカプシド(rdsRN)中にGFP遺伝子およびpcDNA中にNSP1またはNS1のいずれかの両者を含んでいた。BHK−21およびHeLa細胞は、GFPおよびNSP1またはNS1発現プラスミド保有シゲラ株に感染させ、または、GFP発現プラスミドのみを保有するシゲラ株に感染させた。16時間後、侵入を受けたHeLa細胞を緑色蛍光について試験し、HeLa細胞溶解物をイムノブロッティングによってGFPたんぱく質について分析した。蛍光結果は、GFP遺伝子のみを有するShigella株による侵入を受けた細胞に比較して、GFPたんぱく質の発現がNS1またはNSP1発現プラスミド保有Shigella株の侵入を受けた細胞中で増強していることを示していた(データを示さず)。真核細胞により産生された総たんぱく質のイムノブロッティングは、NS1またはNSP1発現プラスミド保有Shigella株の侵入を受けた細胞中でGFP発現が高いことを確認した(図3)。
【0075】
これらの知見は、哺乳類細胞内部における細菌ベクターによるI型インタフェロン応答阻害剤をコードする遺伝子(例 VAI、NS1またはNSP1)の発現が、問題のたんぱく質(例 ベータ−ガラクトシダーゼまたはGFP)をコードするトランスジーンの共発現を増強することを示している。この実施例に述べた結果は、問題のたんぱく質の発現増強が、細菌ベースのデリバリシステムを用いてIFN応答を減弱させることによって得ることができることを示す最初のエビデンスである。
【実施例3】
【0076】
組換えShigellaベクターによるI型インタフェロン応答の哺乳類宿主細胞における誘発が、インタフェロンアンタゴニスト類によって抑制される
この実施例では、哺乳類細胞中で菌によって誘発されたインタフェロン刺激遺伝子(ISGs)の発現を抑制するインタフェロンアンタゴニスト類の能力を述べている。これらの実験で用いたShigella flexneri株は、真核細胞に侵入した後にそれを溶解させる染色体変異を有している。このシゲラは、宿主細胞中で十分に長く生存し、エンドサイトーシス小胞を逃れ、インタフェロンアンタゴニスト類を含むプラスミド分子の、哺乳類細胞の細胞質への放出を可能とする。前記Shigella株は、レポーター遺伝子緑色蛍光たんぱく質(GFP)をコードする組換えヌクレオカプシドを含みかつ発現させる。このS.flexneri株は、プラスミドベクターpcDNA3.1zeo(+)およびpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen,Carlsbad,CA)にそれぞれクローニングされたインフルエンザ−A NS1遺伝子またはアデノウイルスVAI RNA遺伝子によりエレクトロポレーションした。これらのS.flexneri株は、NS1遺伝子またはVAI RNA遺伝子のいずれかを保有し、これらを用いて、哺乳類細胞中における遺伝子発現を調べた。
【0077】
実験条件は、下記のようであった:セミコンフルエンスのHeLa細胞単層を、IFNサプレッサー遺伝子を有するShigella flexneriに1時間、感染多重度(MOI)100で37℃の6ウェルプレート中で暴露させた。細胞を、イーグル最小必須培地(EMEM)で2回洗浄し、150μg/mlゲンタミシン含有EMEMを細胞に対して1時間、添加し、細胞外菌を死滅させた。その後、細胞を2回洗浄し、新鮮EMEMを添加し、侵入細胞を20時間、インキュベーションした。細胞を次にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、総RNAをRNeasyミニキット(Qiagen)により単離した。ヒトインタフェロンおよびレセプターRTProfilerTM PCRアレイ(Superarray Biosciences)を利用し、84種のインタフェロン関連遺伝子の発現の上方制御または下方制御を明らかにした。
【0078】
結果を、表2に示した。この表からわかるとおり、S.flexneriのヒト細胞への侵入は、I型IFNsおよび2’−5’オリゴアデニレートシンセターゼ(2’−5’OAS)のようなIFN刺激遺伝子の転写誘発につながった。誘発された遺伝子は、S.flexneriによりベクターとしたパッセンジャー核酸の転写と翻訳の阻害に関与している。しかし、図4に示したように、S.flexneriのみの侵入を受けた細胞に比較して、インタフェロンアンタゴニストNS1遺伝子を保有するS.flexneriの侵入を受けたHeLa細胞は、ISGs発現レベルが低いことを示した。これらの結果は、NS1が哺乳類細胞における細菌誘発ISGs発現を抑制することを明確にしている。
【実施例4】
【0079】
インタフェロンアンタゴニストによるインタフェロン刺激遺伝子(ISGs)発現の抑制
この実施例は、哺乳類細胞中で菌によって誘発されたインタフェロン刺激遺伝子(ISGs)の発現を抑制するインタフェロンアンタゴニスト類の能力を述べている。これらの実験で用いたShigella株は、真核細胞に侵入した後にそれを溶解させエンドサイトーシス小胞を逃れる染色体変異を有し、インタフェロンアンタゴニスト類を含むパッセンジャープラスミド分子の、哺乳類細胞の細胞質への放出を可能とする。Shigella flexneri株NCDは、プラスミドベクターpcDNA3.1zeo(+)およびpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen,Carlsbad,CA)にそれぞれクローニングしたインフルエンザ−A NS1遺伝子またはアデノウイルスVAI RNA遺伝子によりエレクトロポレーションした。NS1遺伝子またはVAI RNA遺伝子を保有するShigella株を用いて、I型IFN応答の誘発と抑制を調べた。
【0080】
実験条件は、下記のようであった:セミコンフルエンスのHeLa細胞単層を、IFNサプレッサー遺伝子(NS1またはVAI)を有するShigella flexneriに1時間、感染多重度(MOI)100で37℃の6ウェルプレート中で暴露させた。細胞をイーグル最小必須培地(EMEM)で2回洗浄し、150μg/mlゲンタミシン含有新鮮EMEMを細胞に対して1時間、添加し、細胞外菌を死滅させた。その後、HeLa細胞をEMEMで2回洗浄し、新鮮EMEMを添加し、侵入後前記細胞を20時間、インキュベーションした。HeLa細胞を次にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、総RNAをRNeasyミニキット(Qiagen)により単離した。ヒトインタフェロンおよびレセプターRTProfilerTM PCRアレイ(Superarray Biosciences)を利用し、84種のインタフェロン関連遺伝子の発現の上方制御または下方制御を明らかにした。表2に示したように、Shigellaのヒト細胞への侵入は、非侵入細胞に比較して、I型IFNsおよび2’−5’オリゴアデニレートシンセターゼ(2’−5’OAS)のようなIFN刺激遺伝子の転写誘発につながった。しかし、図4に示したように、I型インタフェロンアンタゴニストNS1遺伝子を保有するShigella株の侵入を受けたHeLa細胞は、Shigellaのみに比較して、細菌誘発ISGs発現レベルが低いことを示した。これらの結果は、実際、NS1がISGsの細菌誘発発現を抑制することを明確にしている。同様に、アデノウイルスVAI RNA遺伝子発現Shigella感染HeLa細胞のqRT−PCR発現研究は、CXCL10およびMX2のようなISGsの発現もまた、インタフェロンアンタゴニスト類によって抑制されることを示唆している(図5)。上記結果は、IFN応答阻害の原因となる分子機構を例示しており、それは、細菌ベクターによってコードされた非相同性パッセンジャー遺伝子のより強い発現を可能とする。
【0081】
これらの結果は、細菌ベクターからのI型IFN応答のウイルスサプレッサー類の発現が、感染細胞のIFN応答を阻害することを示している。
【0082】
【表2】

【実施例5】
【0083】
IFNアンタゴニストの共発現による改良された細菌ベースのトランスジーン発現デリバリシステムの構築
プラスミドベクターを、レポーター遺伝子緑色蛍光たんぱく質(GFP)を発現するように構築した。このGFP遺伝子は、アクプライム(Accuprime)DNAポリメラーゼ(Invitrogen,Carlsbad,CA)ならびにHpaIおよびNotI制限酵素部位を含むプライマーを用いて、PCR増幅させた。増幅された配列の大きさは、アガロースゲル電気泳動によって確認し、QIAquickPCR精製キットを用い製造業者の指示に従って(Qiagen、Cat.No.28106、Valencia,CA)精製した。このGFP遺伝子を、哺乳類発現プラスミドpShooter(Invitrogen、Carlsbad,CA)のHincIIおよびNotI部位(New England Biolabs,Beverly、MA)にクローニングした。pShooterベクター中における発現は、強くて構成的なヒトEF−1αプロモータによって駆動される。この実験で用いたインタフェロン耐性遺伝子は、RNAポリメラーゼIIIプロモータによって駆動されるアデノウイルス関連I(VAI)RNA遺伝子であった。RNAポリメラーゼIIIプロモータ下流のVAI RNA遺伝子をコードする遺伝子を、PCRで増幅し、GFP pShooterベクターのEcoRI部位にクローニングした。生成した構築体のマップを、図6に示した。
【0084】
適切な挿入物を保有する組換えプラスミドを同定し、新規プラスミドをpAdgfpと命名した。pAdgfpベクターを、Shigella flexneri NCD1株中にエレクトロポレーションした。HeLa細胞の侵入は、実施例3に記載のように実行した。簡単に述べると、VAI遺伝子の発現増強効果を試験するため、HeLa細胞に、pAdgfpプラスミド(GFPおよびVAIをコードする)を有するShigella flexneri NCD1株、またはGFPのみをコードするpShooterプラスミド(pGFP)を有するShigella flexneri NCD1株を侵入させた。24時間後各ウェルの細胞を溶解させ、GFP特異的抗血清によるイムノブロッティングにより分析した。結果を図7に示した。この図からわかるとおり、GFP発現の増加が、GFPと抗インタフェロンVAI RNA遺伝子の両者を含むShigellaが侵入したHeLa細胞中で観察された。
【実施例6】
【0085】
真核細胞に運搬された時のプラスミドコードベータ−ガラクトシダーゼの、インフルエンザインタフェロン阻害剤NS1発現弱毒化Shigella flexneriによる発現増強
CMVプロモータの翻訳制御下においてベータ−ガラクトシダーゼコードプラスミド(pcDNA−lacZ)を、Shigella flexneri NCDにエレクトロポレーションした。インフルエンザA NS1遺伝子をコードする第二のプラスミド(pEF NS1)も同様に、別のShigella flexneri NCD株にエレクトロポレーションした。pEF NS1ベクター中で、NS1遺伝子発現は、強い構成的ヒトEF−1αプロモータによって駆動される。Shigella flexneri株によるHeLa細胞の侵入は、実施例1に記載のように行った。簡単に述べると、NS1遺伝子の抗インタフェロン効果を試験するため、HeLa細胞に、ベータ−ガラクトシダーゼレポーターベクター(pcDNA3.1/His/lacZ)を含むShigella flexneri NCDおよびpEF NS1ベクターを含むShigella flexneri NCDによるか、または、Shigella flexneri NCD株単独(ベクターなし)で共侵入させた。18時間後、HeLa細胞溶解のためおよび細胞抽出物中のベータ−ガラクトシダーゼ活性アッセイのための両者のために、ベータ−ガラクトシダーゼアッセイ試薬類(Stratagene)を用いた。結果を、表3に示した。わかるように、ベータ−ガラクトシダーゼ活性の大幅な増加が、ベータ−ガラクトシダーゼレポーターベクターとNSI遺伝子の両者を含むShigellaによる共侵入を受けたHeLa細胞で観察された。
【0086】
【表3】

【実施例7】
【0087】
インフルエンザインタフェロン阻害剤NS1発現弱毒化Shigella flexneriにより運搬された時のカプシドでコードされたMTB抗原85Aの発現
SおよびM RNAセグメントの両者上でM.tuberculosis抗原85Aを発現する組換えヌクレオカプシドを構築した(51 MS85A)。侵入アッセイは、CMVプロモータの制御下に哺乳類プラスミド上これらのカプシド類±インフルエンザNS1遺伝子を発現するShigella flexneriおよび抗原85Aを発現するShigella flexneri株(pcDNA−85A)を用いて実施した。菌は、28℃または37℃において初期対数相になるまで増殖させ、37℃で1時間、振とうせずにインキュベーションし、S.flexneri強毒性遺伝子の発現を誘発させた。前記菌は、イーグルの最小必須培地(EMEM)中に再懸濁させ、37℃+5%CO中MOI 100で、10細胞/ウェルで6ウェルプレートに接種しておいたBHK21細胞と1時間インキュベーションした。細胞をPBSで3回洗浄し、EMEM+ゲンタミシン(150μg/ml)とともにインキュベーションし、細胞外菌を全て死滅させた。細胞を次にPBSで3回洗浄し、EMEM培地中で20時間インキュベーションした。細胞をPBSで1回洗浄し、250μlのMPERマンマリアンプロテインエクストラクションリージェント(Mammalian Protein Extraction Reagent)(Pierce)により溶解させた。各細胞抽出物30μlをSDS−PAGEゲル上に流し、ニトロセルロース膜に移し、抗原85Aに対する抗血清によりイムノブロットした(図8)。抗原85Aの発現は、28℃で増殖させたNS1遺伝子発現プラスミド(MS85A pNS1)含有85Aカプシド株MS85A中でのみBHK−21細胞中に見られた(レーン3)。pNS1なしで28℃または37℃で増殖させたMS85Aまたは37℃で増殖させたMS85A pNS1からは、発現が見られなかった(レーン1,2&4)。このことは、NS1たんぱく質の発現が、S.flexneri株によって運搬された組換えヌクレオカプシドによりコードされた抗原の発現に必要であることを示している。
【実施例8】
【0088】
菌および哺乳類細胞の両者中でインタフェロン耐性遺伝子を発現しかつ哺乳類細胞でのみ問題のたんぱく質を発現させる発現ベクターの構築
HIV−1のイムノドミナントGagペプチドを発現するプラスミドベクターを構築する。600bpの断片を、合成gag遺伝子からPCR増幅する。配列は、Accuprime DNA ポリメラーゼ(Invitrogen、Carlsbad,CA)およびHpaIおよびNotI RE部位を含むプライマー類を用いて増幅する。増幅させた配列の大きさは、アガロースゲル電気泳動によって確認し、QIAquick PCR精製キットを用い製造業者の指示に従って(Qiagen、Cat.No.28106、Valencia,CA)精製した。この600bpのgag遺伝子を、発現ベクタープラスミドpcDNA3.1zeo(+)(Invitrogen、Carlsbad,CA)のEcoRVおよびNotI部位(New England Biolabs,Beverly、MA)にクローニングした。適切な挿入物を有する組換えプラスミド類を同定し、新規プラスミドをpGAG4Xと命名する。
【0089】
インタフェロン耐性遺伝子(例 NS1またはNSP1)をこのpGAG4Xベクター中に適切な真核細胞プロモータ(例 SV40プロモータ)または原核細胞プロモータ(例 arg1のハウスキーピングプロモータ)または両者の制御下にクローニングし、二重発現ベクターを作製する。(本文に記載の特定の真核細胞および原核細胞プロモータ配列は、前記ベクターの構築に重大ではなく、当業者は、他の適切なプロモータを思い浮かぶであろう。)従って、この発現ベクターは、細菌および哺乳類細胞の両者でインタフェロン耐性遺伝子を発現する;しかし、問題のたんぱく質(例 HIV−1のGag)は、哺乳類細胞中でのみ発現する。この手法は、転写安定性とその後のパッセンジャーRNA/DNAおよび問題の外来たんぱく質の発現のための他の分子または哺乳類細胞における阻害性RNAsの翻訳を向上させる。
【実施例9】
【0090】
IFN応答を抑制するために遺伝子工学で作製された組換え細菌発現ベクターのワクチンとしての使用
いかなる細菌性の生ベクターワクチンであってもその有効性は、ヒト免疫系に対して十分な外来性抗原を提示し、所望の防御性免疫応答を開始させるその能力にある。しかし、パッセンジャーDNA/RNA分子は、宿主防御系すなわちIFN応答により、インビボで不安定になり、その結果、外来性遺伝子の損失と目的とした免疫応答の低下が起こる。この発明は、IFN防御系を減弱させることによって宿主細胞内部で高レベルの抗原を合成するための解決策を提供する。
【0091】
IFN耐性および問題の抗原をコードする遺伝子の運搬と発現は、標的細胞(組織、生体等)に、問題のトランスジーンおよびI型IFN応答のサプレッサーをコードする核酸を保有する非病原性のすなわち弱毒化細菌ワクチンベクターを接種することによって、達成できる。問題の生体応答は、防御性または調節性の免疫応答類;治療応答類;および宿主たんぱく質遺伝子発現(例 siRNA)の下方制御および遺伝子発現(例 サイトカイン発現)の上方制御を含むが、それらに限定されない。
【0092】
いったん非病原性のすなわち弱毒化細菌ワクチンベクター株を選択すると、その株を修飾し、インタフェロン応答抑制株として機能させる。このことは、前記株中に1種以上のIFN耐性遺伝子を導入することを含む上記に述べた戦略類を用いて達成される。
【0093】
I型インタフェロン耐性遺伝子と問題の抗原を含む株を作製するため、インビトロで合成した遺伝子(類)をエレクトロポレーションによって前記株中に導入し、形質転換体を、組換えプラスミド中に正の選択対立遺伝子(例 抗生物質耐性または栄養素要求性の補完)を保有しかつ発現させる株の増殖のみを可能とする条件下において固体培地上で単離する。生ベクターによる発現プラスミドの遺伝形質の増強方法は、細菌染色体中における導入変異を補完するように設計されたパッセンジャー核酸の構築を含む。プラスミドベースの補完システムにおいて、細菌の細胞質で複製するプラスミドは、前記細菌が増殖し複製するために必要な重要たんぱく質を発現させる;このようなプラスミドが損失すると、前記細菌が前記重要たんぱく質を発現する能力を取り去り、細胞死が結果として起こる。(細菌複製中におけるプラスミド損失という現象はまた“隔離後死滅”とも称され、その結果、プラスミドを有していない全ての細菌の死が起こる。)このようなシステムは、Salmonella typhimurium中で使用に成功し、アスパルテートβ−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Asd)をコードする遺伝子asdの発現に基づいている(Galenら、Gene,1990;49:29−35)。Asdは、グラム陰性菌中細胞壁の形成に必須の構造成分の合成に関与する重要酵素である。従って、このような重要酵素をコードするプラスミド類がないことは、染色体からAsdを合成できないいかなる細菌にとっても致命的であろう。
【0094】
投与するこの組換え菌の量は、対象種、ならびに治療しようとしている疾患または状態に応じて、変化する。一般的に、使用した投与量は、生菌体約10から1011、好適には生菌体約10から10である。前記DNA/RNAパッセンジャー分子を保有する細菌ベクターは、一般的に、薬学的に許容できる担体または希釈剤とともに投与される。使用した特定の薬学的に許容できる担体または希釈剤は、本発明にとって重要ではない。希釈剤の例には、リン酸緩衝生理食塩水、ショ糖含有クエン酸緩衝液(pH7.0)、重炭酸緩衝液(pH10)単独(Levineら、J.Clin.Invest.,79:888−902;1987);(Blackら、J.Infect.Dis.,155:1260−1265;1987);またはアスコルビン酸、ラクトースおよび任意のアスパルテート含有重炭酸緩衝液(pH7.0)のような胃中の胃液に対する緩衝作用のための緩衝液(Levineら、Lancet,II:467 470;1988)が含まれる。担体の例には、スキムミルク中に見られるもののようなたんぱく質、ショ糖のような糖類またはポリビニルピロリドンが含まれる。典型的には、これらの担体類は、約0.1−90(w/v)%の濃度で使用されるであろうが、好適には1−10(w/v)%の範囲である。
【0095】
ベクター株の生物活性は、適切な動物モデル(例 マウス、ウサギ、モルモット、またはアカゲザル)で評価する。当初、前記細菌ベクター株を用量10−10cfuで投与し、適切な経路(例 E.coli,SalmonellaおよびShigellaは、胃中または鼻腔中に投与できる)により投与する。投与回数は、それぞれのベクター株の能力、および問題のコードされた組換え産物の価数に応じて、変化するであろう。
【0096】
動物モデル中でコードされた産物に対する免疫および他の生物応答を測定する方法は、当業者に周知である。抗原に対するIgGおよびIgA応答を測定するため、血清を、ワクチン接種前および接種後10,20,30,40,50,60,70および80日後に採取する。血液約400−500μlを各試験管に採取し、氷上で4時間インキュベーションし血餅とする。5分間ミクロ遠心管中で遠心した後、血清を新しい試験管に移し、−80℃で保存する。問題の遺伝子により発現した抗原に対する粘膜IgGおよびIgA応答を、ワクチン接種前および接種後定期的に採取する糞便ペレットおよび膣洗浄物を用いて、決定する(Srinivasanら、Biol.Reprod.53:462;1995);(Staatsら、J.Immunol.157:462;1996)。標準的ELISAを用いて、前記血清および粘膜サンプル中問題の抗原に対するIgGおよびIgA応答を定量する(Abaciogluら、AIDS Res.Hum.Retrovir.10;371;1994);(Pincusら、AIDS Res.Hum.Retrovir.12:1041;1996)。マイナス対照抗原として各ELISAで卵アルブミンを含めることができる。さらに、各ELISAは、プラス対照血清、糞便ペレットまたは膣洗浄サンプルを適切なものとして含むことができる。記載されているように(Yamamotoら、Proc.Natl.Acad.Sci.94:5267;1997)、コレラトキシン10μgと混合した問題の遺伝子により発現した抗原10μgを経鼻的にワクチン接種した動物から、前記プラス対照サンプルを採取する。終点での力価は、490nmにおける吸光度がマイナス対照列の平均プラス3標準誤差値を超える増加を示す最終血清希釈の逆数を得ることで、計算する。
【0097】
細胞免疫は、細胞内サイトカイン染色(細胞内サイトカインサイトメトリとも称される)によってまたはELISPOT(Letsch A.ら、Methods 31:143−49;2003)によって測定することができる。両者の方法とも抗原特異的免疫応答の定量を可能とするが、ただし、ICSは、抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞の表現型を特性解析する同時能力を付加する。このようなアッセイは、IL−2、IL−4,IL−5,IL−6、IL−10およびIFN−(Wuら、AIDS Res.Hum.Retrovir.13:1187;1997)を分泌する抗原特異的T細胞の数を評価する。ELISPOTアッセイは、市販の捕捉および検出mAb(R&D Systems and Pharmingen)を用いて、記載されたように(Wuら、Infect.Immun.63:4933;1995)および先に使用されているように(Xu−Amanoら、J.Exp.Med.178:1309;1993);(Okahashiら、Infect.Immun.64:1516;1996)、行う。各アッセイは、マイトジェン(ConA)および卵アルブミン対照を含む。本文に記載の抗IFN細菌ベースデリバリシステムは、IFN耐性遺伝子を有していないデリバリシステムよりもいくつか利点を有している。前記抗原遺伝子は、より高いレベルでかつより長い時間発現され、従って、より活発な免疫応答を誘発する。動物モデル中で有効性を示し無毒性である細菌ベクターを、さらに臨床治験で評価する。
【実施例10】
【0098】
結核ワクチンの開発
BCGバクテリアを本文に記載のとおり遺伝子工学で作製し、1)パッセンジャー遺伝子としての1種以上の結核抗原、および2)哺乳類宿主細胞I型インタフェロン応答を阻害するかまたはそれに干渉する1種以上の因子、をコードする核酸を含ませる。哺乳類宿主(例 ヒト)に投与すると、前記の遺伝子工学作製BCGは、宿主細胞に侵入し、エンドソームを逃れ、溶解し、パッセンジャー遺伝子を放出し、前記1種以上の結核抗原を産生する。さらに、前記BCGはまた、宿主細胞IFN応答を阻害する前記1種以上の因子を産生する。前記因子は宿主細胞IFN応答を減弱させるが、それは、そうでない場合にはTB抗原の産生を低下させるであろう。結果として、十分なTB抗原が産生され、その結果、TB抗原に対する明確な免疫応答がおこる。
【0099】
本発明を好適な態様の観点から説明してきたが、当業者は、本発明が付属の請求の範囲の真意と範囲内で修飾して実行できることを認識するであろう。従って、本発明は、上記に記載のような態様に限定されるべきではなく、本文の明細書の真意と範囲の中でその修飾物ならびにその均等物全てを含むことになる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
性質を改善した結核ワクチン剤の製造、およびその製造の効率化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】β−ガラクトシダーゼの真核細胞発現をコードするプラスミドを有するシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)NCD1によるHeLaまたはBHK−21細胞(IFN欠失)の侵入後における細胞溶解物のベータ−ガラクトシダーゼ活性。黒棒は、lacZ遺伝子をコードするプラスミドを有する菌株による侵入後の細胞由来β−ガラクトシダーゼ活性を示し;白棒は、菌株マイナスlacZプラスミドの侵入後における細胞由来のβ−ガラクトシダーゼ活性を示す。
【図2】β−ガラクトシダーゼをコードするプラスミドを有するShigella flexneri NCD1による侵入後およびPKRのアデノウイルス由来阻害剤(アデノウイルス関連I、VAI)をコードするShigella flexneri NCD1との共侵入後におけるHeLa細胞溶解物のβ−ガラクトシダーゼ活性。
【図3】真核細胞GFPレポーター遺伝子のみ(レーン4)またはGFPプラスNS1(レーン5)またはNSP1(レーン2)を有するShigella flexneri株MPC51による侵入後HeLa細胞中緑色蛍光たんぱく質(GFP)のトランスジーン発現を示すイムノブロット。レーン1:正の対照;レーン3:非侵入HeLa細胞。
【図4】HeLa細胞中IFN−α/β経路に及ぼすNS1たんぱく質の効果。NS1(黒棒)は、シゲラ誘発IFN関連遺伝子の発現(灰色棒)を抑制する。
【図5】HeLa細胞中IFN−α/β経路に及ぼすVAI RNA遺伝子の効果。VAI RNA遺伝子(黒棒)は、シゲラ誘発IFN関連遺伝子の発現(白棒)を抑制する。
【図6】レポーターベクターをコードするIFN拮抗剤の概略図。IFN拮抗剤遺伝子を、GFPレポーターベクターの骨格にクローニングする。RNAポリメラーゼIIIプロモータ制御下におけるVAI RNA遺伝子の転写のためならびにプロモータPef−aによる宿主細胞によるGFP遺伝子の発現のための単一プラスミド系。
【図7】GFPコードプラスミド(pGFP)またはGFPおよびVAI IFNサプレッサーをコードするプラスミド(pAdgfp)を有するShigella flexneriによるHeLa細胞侵入。GFP発現は、ウサギ抗GFP抗血清を用いるイムノブロット分析により決定した。GFPたんぱく質発現増強が、GFPおよびVAI RNA遺伝子の両者を含むシゲラ(pAdgfp)による侵入を受けたHeLa細胞中で観察された。2種の独立した実験の結果を示す。
【図8】IFNサプレッサーNS1をコードするプラスミドを有するか有していないMtb抗原85AをコードするRNAを有するシゲラによる侵入を受けたBHK21細胞の溶解物のウェスタンブロット。レーン1、51 MS85A 28;レーン2、51 MS85A 37;レーン3、51 MS85A pNS1 28;レーン4、51 MS85A pNSI 37;レーン5、51 MS85A pNSI 37;レーン6、S.flexneri NCD pcDNA−85A;レーン7、MPC51 pLM2653;レーン8、BHK21細胞;レーン9、pcDNA−85A移入BHK21細胞。
【図9】A乃至Cは抗ウイルス免疫応答阻害剤の配列。A,インフルエンザウイルス由来のNS1のDNA配列(SEQ ID NO:1);B,ロタウイルス由来のNSP1のDNA配列(SEQ ID NO:2);C,アデノウイルス由来VAIのRNA遺伝子配列(SEQ ID NO:3)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のパッセンジャー遺伝子と、
哺乳類I型インタフェロン応答を抑制する1種以上の因子と
をコードする核酸配列を含む遺伝子工学作製細菌であって、
前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする前記核酸配列が、真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されており、哺乳類I型インタフェロン応答を抑制する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、真核細胞プロモータまたは原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されていることを特徴とする遺伝子工学作製細菌。
【請求項2】
哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項3】
哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項4】
哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする核酸配列が、前記遺伝子工学作製細菌の染色体上に存在する請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項5】
i)前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする核酸配列と、
ii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする核酸配列と
の一方または両方が、プラスミド上に存在する請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項6】
哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子がウイルス起源である請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項7】
前記1種以上のパッセンジャー遺伝子が結核抗原をコードする請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項8】
前記遺伝子工学作製細菌がシゲラ(Shigella)菌である請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項9】
前記遺伝子工学作製細菌がマイコバクテリウム(Mycobacterium)菌である請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項10】
前記1種以上のパッセンジャー遺伝子が非相同性トランスジーンである請求項1記載の遺伝子工学作製細菌。
【請求項11】
細胞または組織中で問題の1種以上の遺伝子産物の産生を増大させる方法であって、
前記細胞または組織に対して、
i)問題の前記1種以上の遺伝子産物と、
ii)哺乳類インタフェロン応答を抑制する1種以上の因子と
をコードする核酸配列を含む遺伝子工学作製細菌を投与する過程を含み、
前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする前記核酸配列が真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されており、哺乳類I型インタフェロン応答を抑制する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が真核細胞プロモータまたは原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されており、
前記投与する過程が、前記遺伝子工学作製細菌が前記細胞または組織に侵入できるようにする条件下で実行され、
前記細胞または組織が問題の前記1種以上の遺伝子産物を産生できる
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている請求項11記載の方法。
【請求項13】
哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている請求項11記載の方法。
【請求項14】
哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、前記遺伝子工学作製細菌の染色体上に存在する請求項11記載の方法。
【請求項15】
i)問題の前記1種以上の遺伝子産物をコードする前記核酸配列と、
ii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列と
の一方または両方が、プラスミド上に存在する請求項11記載の方法。
【請求項16】
哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子がウイルス起源である請求項11記載の方法。
【請求項17】
問題の前記1種以上の遺伝子産物がマイコバクテリウム・チューバキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)抗原である請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子工学作製細菌がシゲラ(Shigella)、リステリア(Listeria),サルモネラ(Salmonella),およびバシレ・カルメッテ・グエラン(Bacille Calmette−Gue’rin)(BCG)で構成される群から選択された菌である請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記1種以上のパッセンジャー遺伝子が非相同性トランスジーンである請求項11記載の方法。
【請求項20】
哺乳類において問題の抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、
前記哺乳類に対して、
問題の前記抗原をコードする核酸配列と、
哺乳類インタフェロン応答を抑制する1種以上の因子をコードする核酸配列と
を含む遺伝子工学作製細菌を投与する過程を含み、
前記1種以上のパッセンジャー遺伝子をコードする前記核酸配列が真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されており、哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が真核細胞プロモータまたは原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されており、
前記哺乳類中の細胞または組織が問題の前記抗原を産生できるようにし、それによって問題の前記抗原に対する免疫応答が起こされることを特徴とする方法。
【請求項21】
問題の前記抗原がマイコバクテリウム・チューバキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)抗原である請求項20記載の方法。
【請求項22】
哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、真核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている請求項20記載の方法。
【請求項23】
哺乳類I型インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、原核細胞プロモータに読み取り可能に連結されている請求項20記載の方法。
【請求項24】
哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列が、前記遺伝子工学作製細菌の染色体上に存在する請求項20記載の方法。
【請求項25】
i)問題の前記抗原をコードする前記核酸配列と、
ii)哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子をコードする前記核酸配列と
の一方または両方がプラスミド上に存在する請求項20記載の方法。
【請求項26】
哺乳類インタフェロン応答を阻害する前記1種以上の因子がウイルス起源である請求項20記載の方法。
【請求項27】
宿主細胞または組織I型インタフェロン(IFN)応答サプレッサー因子をコードする1種以上の遺伝子工学作製核酸配列と、
1種以上の宿主細胞または組織活性アミノ酸配列をコードする1種以上の遺伝子工学作製核酸と
により遺伝的に形質転換された細菌を含む組換え細菌ベクターであって、
前記1種以上の宿主細胞または組織活性アミノ酸配列をコードする1種以上の遺伝子工学作製核酸が、前記細菌が前記宿主細胞または組織に侵入すると過剰発現されることを特徴とする組換え細菌ベクター。
【請求項28】
前記宿主細胞または組織I型IFN応答サプレッサー因子が、ロタウイルスNSP1またはインフルエンザウイルスNS1である請求項27記載の組換え細菌ベクター。
【請求項29】
前記1種以上の宿主細胞または組織活性アミノ酸配列が結核抗原およびマラリア抗原から選択される請求項27記載の組換え細菌ベクター。
【請求項30】
前記宿主細胞または組織活性アミノ酸配列が、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、エクトロメリアウイルス、肝炎ウイルス、ワクチニアウイルス、アデノウイルス、パラミキソウイルス、HPV,HIV,HTLV,エンテロウイルス、ヘルペスウイルス、EEE,VEE,西ナイルウイルス、ノーウォークウイルス、パルボウイルス、デングウイルス、および出血熱ウイルスの1種以上に由来する1種以上の免疫刺激アミノ酸配列を含む請求項27記載の組換え細菌ベクター。
【請求項31】
前記1種以上の宿主細胞または組織活性アミノ酸配列が、ホルモン、酵素、抗癌剤、およびアポトーシス因子から選択される請求項27記載の組換え細菌ベクター。
【請求項32】
前記宿主細胞または組織I型IFN応答サプレッサー因子が、ロタウイルスNSP1、インフルエンザ−ウイルスNS1、エクトロメリアウイルスC12Rたんぱく質、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ、ワクチニアウイルスνIFN−α/β Rcたんぱく質、アデノウイルスE1Aたんぱく質、パラミキソウイルスのCたんぱく質およびヒトパピローマウイルス(HPV)E6オンコプロテインから構成される群から選択される請求項27記載の組換え細菌ベクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2010−538649(P2010−538649A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524977(P2010−524977)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/075972
【国際公開番号】WO2009/036137
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510054577)エーラス グローバル ティービー ワクチン ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】