真核細胞及び非ヒト動物における標的遺伝子の発現を調節するための誘導性発現系
本発明は、誘導性発現系、並びに真核細胞及び非ヒト動物における少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するための、組成物及び方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、真核細胞及び非ヒト動物での標的遺伝子の発現調節での使用のための誘導性発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、2本鎖RNAを用いて遺伝子発現を抑制するためのプロセスである。RNAi機構は、植物、無脊椎動物及び脊椎動物で保存されている。その単純性及び特異性により、RNAiは、様々なモデル生物において遺伝子機能を研究するための好ましい方法となっている(例えば、Hannon,G.J.,Nature,418:244−251(2002)、Paddisonら、Cancer Cell,2:17−23(2002)、Sharp,P.A.,Genes Dev.,15:485−490(2001)、Tuschl,T.,Chembiochem.,2:239−245(2001)及びZamore,P.D.,Nat.Struct.Biol,8:746−750(2001))。化学的に合成した小分子干渉RNA(siRNA)は、細胞にトランスフェクトされると関心のある遺伝子を効率的に抑制することができるが、siRNAの使用は、時間経過によりsiRNAが分解されるか又は細胞分裂後に希釈されるため、短期間の実験に限られている。この制限を乗り越えるために、19から20bpのステムを含有し、4から9ヌクレオチドのループサイズである小分子ヘアピン型RNA(shRNA)を発現するベクターを利用した系が開発された。「dicer(ダイサー)」として知られる酵素により、shRNAがsiRNAへとプロセシングされ、ヒト細胞で発現される際に特異的な遺伝子の抑制を示す(例えば、Brummelkamp,T.R.ら、Science,296:550−553(2002)、Miyagishi,M.ら、Nat.Biotechnol,20:497−500(2002)、Paddision,P.J.ら、Genes Dev.,16:948−958(2002)、Paul,C.P.ら、Nat.Biotechnol,20:505−508(2002)及びSui,G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci USA、99:5515−5520(2002))。さらに、shRNA発現系を染色体に組み込み、安定な細胞株を樹立するか、インビボ遺伝子機能研究のためにノックダウン動物を作製できることが分かった(Paddision,P.J.ら、Genes Dev.,16:948−958(2002)、Brummelkamp,T.R.,ら、Cancer Cell,2:243−247(2002)、Hemann,M.T.ら、Nat.Genet.,33:396−400(2003)、Tiscornia,G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:1844−1848(2003)、Barton,G.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14943−14945(2002)、Hasuwa,H.ら、FEBS Lett.,532:227−230(2002)、Kunath,T.,Nat.Biotechnol,21:559−561(2003)及びRubinson,D.A.ら、Nat.Genet.,33:401−406(2003))。
【0003】
RNAポリメラーゼIII依存性プロモーター配列は、shRNAの発現ために選択されることが多い。RNApolyIIにより産生されるmRNAとは異なり、polyIIIにより産生される転写産物は5’キャップ及び3’ポリAテールを持たず、それにより、ダイサー酵素によるshRNAからsiRNAへの効率的プロセシングが可能となる。shRNA発現系の開発により、細胞又は動物において安定な標的ノックダウンが可能となったが、polyIII依存性プロモーター配列の構成的活性がshRNA発現系の使用に様々な制限を与えている。例えば、重要な発生機能を有する遺伝子を標的とするshRNAの構成的発現は胚段階で致死をもたらし、成体動物での機能表現型喪失の研究が妨げられる。さらに、細胞又は動物において重要な機能を有する標的の構成的ノックダウンにより代償性反応が引き起こされることが多く、これにより、遺伝子抑制の真の帰結を変化させる可能性がある。従って、当分野において、細胞及び動物での基本的な遺伝子の機能表現型の喪失を偏らずに分析するために有用なshRNAの発現調節が必要とされている。
【0004】
テトラサイクリン応答性poly III依存性プロモーター配列を開発する試みが行われてきた。ヒトU6shRNAプロモーター配列の2つのタイプのテトラサイクリン−応答性誘導体が当分野で公知である(Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)を参照のこと)。テトラサイクリンO1(tetO1)タイプU6プロモーター配列において、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する1型テトラサイクリンオペレーター(tetオペレーター)を近位配列エレメント(PSE)とTATAボックスとの間に組み込んだ。テトラサイクリンO2(tetO2)タイプU6プロモーターにおいて、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有する2型tetオペレーターをTATAボックスと転写開始部位(TSS)との間に組み込んだ。TATAボックス及びPSEは両者とも、RNAポリメラーゼIIIによる転写開始に重要な役割を果たす。テトラサイクリンリプレッサー(tetR)をこれらの改変U6プロモーター配列にTATAボックス又はPSEに近接する位置で結合させることにより、核内小分子RNA(snRNA)活性化タンパク質複合体(SNAPc)のPSEへの結合が妨害され、続いて、転写開始が妨害されるということは理に適っている。tetO1及びtetO2の両方のタイプのプロモーター配列は、構成的にtetRを発現する細胞株においてテトラサイクリン依存性転写活性を示すことが分かっている。しかしながら、tetO1は、一時的トランスフェクション実験において、tetO2タイプのプロモーターと比較して、テトラサイクリン処理に対してより良い応答性を有していると思われる(Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)を参照のこと。)。tetO1又はtetO2タイプU6プロモーターを用いた、又は、tetO2タイプU6プロモーターと同様の設計を有するヒトH1 shRNAプロモーター誘導体を用いた、shRNAの調節発現もまた当分野で公知である(Matsukura,S.ら、Nucleic Acid Res.,31:e77(2003)及びCzauderna,F.ら、Nucleic Acids Res.,31:e127(2003)を参照のこと)。これらの系を用いて、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)、βカテニン及びP13キナーゼの誘導性ノックダウンを安定的細胞株において行った。文献中ではこれらのpoly III依存性プロモーター誘導体が厳重に制御されていると思われているが、本発明者らは、関心のあるポリヌクレオチド配列(ルシフェラーゼなど)を標的とするshRNAを発現させるためにtetO1プロモーター配列を使用した場合に、これらの発現系の重度の漏出性を観察した。任意の理論に縛られることを望まないが、発明者らは、U6プロモーターの1個の部位へのtetRの結合が、基本的なプロモーターの転写活性を完全にブロックするのに十分ではないようだと考えている。強力なshRNAを使用する場合、系の漏出性がわずかであれば、標的タンパク質の顕著な低下が起こり得る。厳しい制御は、全ての制御発現系に対して最も重要で困難な要求の1つである。関心のある標的によっては、標的レベルのわずかな揺らぎが、表現型の変化を引き起こすのに十分であり得る。
【0005】
ヒトU6 shRNAプロモーター配列の第三タイプのテトラサイクリン応答性誘導体もまた当分野で公知である。このプロモーター配列において、tetO1及びtetO2タイププロモーターの両方がU6プロモーターに組み込まれた(Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)を参照のこと。)。tetO1オペレーターをPSEとTATAボックスとの間に組み込み、tetO2オペレーターをTATAボックスとTSSとの間に組み込んだ。しかしながら、Ohkawaらは、tetO1及びtetO2の両方を含むことにより、結果として、U6プロモーター配列に関する転写活性が完全に失われることを報告した。
【0006】
その結果、現在知られている誘導性shRNA発現系に伴う可能性のある制限のために、当分野において、最小の基本的な転写活性を有する調節shRNA発現系が必要とされている。具体的に、誘導性ノックダウン細胞株及び非ヒト動物の作製の成功率を向上させるためにこのような発現系において使用できる、厳重に制御されるプロモーターが必要とされている。
【発明の開示】
【0007】
ある実施形態では、本発明は、RNA polIII依存性プロモーター配列に関する。プロモーター配列は、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターであり得る。本発明のプロモーター配列は、TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’にある近位配列エレメント(PSE)、TATAエレメントに対して3’にある転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター(第一のtetオペレーター)及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーター(第二のtetオペレーター)を含有する。ある態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの1つ又は両方の部分を形成する。第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置する。ある態様では、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの1つ又は両方の部分を形成する。
【0008】
第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、同一であるか、又は異なり得る。第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列が同一である場合、ポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。
【0009】
第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は互いに異なり得、ただし、第一のtetオペレーターがactctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のtetオペレーターは、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を持たない。第一のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、独立に、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。好ましくは、第一のtetオペレーターが、tccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のテトラサイクリンオペレーターは、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載のプロモーターを含有するベクターに関する。より具体的には、本発明のベクターは、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列と作動可能に連結された上述のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個を含有する。少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列は、DNA又はcDNAであり得る。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、上述のベクターの少なくとも1個を含有する真核細胞に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、トランスジェニック非ヒト動物に関する。トランスジェニック非ヒト動物の例は、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、霊長類(ヒトを除く。)及びモルモットである。本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、本明細書中に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個と作動可能に連結された、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子を含有する。関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生される。産生されるRNA分子は、小分子干渉RNA(siRNA)又は小分子ヘアピン型RNA(shRNA)であり得る。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、トランスジェニック非ヒト動物を作製する方法に関する。ある態様では、次の方法に従い、トランスジェニック非ヒト動物を作製することができる。この方法の第一段階は、トランス遺伝子を非ヒト動物の受精卵母細胞に導入することを含む。このトランス遺伝子は、本明細書中に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個と作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有する。少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生される。産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。この方法における次の段階は、受精卵母細胞を胚へと発生させることを含む。次の段階は、胚を偽妊娠雌非ヒト動物に移すことを含む。次の段階は、胚を出産まで発生させることを含む。次の段階は、関心のあるポリヌクレオチド配列を含有するトランスジェニック非ヒト動物を同定することを含む。
【0014】
別の態様では、トランスジェニック非ヒト動物は、次の方法に従い作製することができる。この方法の第一段階は、非ヒト動物の胚性幹細胞にトランス遺伝子を導入することを含む。このトランス遺伝子は、本明細書中に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個と作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含む。少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生される。産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。この方法における次の段階は、前記非ヒト胚性幹細胞を胚盤胞へと導入することを含む。この方法における次の段階は、得られた胚盤胞を偽妊娠雌非ヒト動物へと移植することを含む。この方法における次の段階は、この非ヒト動物にキメラ非ヒト動物を出産させることを含む。次の段階は、前記トランス遺伝子を含有するトランスジェニック非ヒト動物を作製するためにキメラ非ヒト動物を繁殖させることを含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、真核細胞において、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列の転写を誘導するための方法に関する。この方法では、転写を誘導する場合、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列により、真核細胞において、少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する少なくとも1個のRNA分子が産生される。この方法の第一の段階は、真核細胞にtetRタンパク質を発現させることを含む。真核細胞が提供されたら、次の段階は、少なくとも1個のベクターを用いて(本明細書中で既に述べたベクターの1つなど)、この細胞を形質転換又はトランスフェクションすることである。例えば、ベクターは、本明細書中に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列に作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有し得る。この方法の次の段階は、細胞を誘導剤と接触させることを含む。この誘導剤は、tetリプレッサータンパク質に結合し、関心のあるポリヌクレオチド配列をプロモーター配列により転写させる。ポリヌクレオチド配列の転写により、細胞において、少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する少なくとも1個のRNA分子が産生される。上述の方法で使用される誘導剤は、ドキシサイクリン、テトラサイクリン又はテトラサイクリン類似体であり得る。さらに、上述の方法で産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。
【0016】
場合によっては、上述の方法は、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含有する第二のベクターを用いて真核細胞を形質転換する段階をさらに含み得、ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、プロモーターの少なくとも1個のtetオペレーターに結合するtetリプレッサーをコードする。
【0017】
場合によっては、上記方法で使用される少なくとも1個のベクターは、関心のある第二のポリヌクレオチド配列をさらに含有し得る。ある態様では、この第二のポリヌクレオチド配列を第二のプロモーター配列に作動可能に連結でき、この第二のポリヌクレオチド配列は、プロモーターのtetオペレーターの少なくとも1個に結合するtetリプレッサータンパク質をコードし得る。
【0018】
第二の態様では、この第二のポリヌクレオチド配列は、関心のある第一のポリヌクレオチド配列とタンデム連結され得る。この第二の態様では、細胞を誘導剤と接触させる場合、誘導剤はtetリプレッサータンパク質に結合し、プロモーターにより、関心のある第一の及び第二のポリヌクレオチド配列それぞれの転写が引き起こされる。具体的に、第一のポリヌクレオチド配列の転写により、第一の標的遺伝子の発現を調節する第一のRNA分子が産生され、第二のポリヌクレオチド配列の転写により、第二の標的遺伝子の発現を調節する第二のRNA分子が産生される。
【0019】
本発明のある実施形態では、関心のあるポリヌクレオチド配列の少なくとも1個は、チロシナーゼをコードする。
【0020】
第三の態様では、少なくとも1個のベクターは、関心のある第一のポリヌクレオチド配列とタンデム連結された関心のある第二のポリヌクレオチド配列を含有するだけでなく、第二のプロモーター配列に作動可能に連結された第三のポリヌクレオチド配列も含有する。この第三のポリヌクレオチド配列は、プロモーターのtetオペレーターの少なくとも1個と結合するtetリプレッサータンパク質をコードする。この第三の態様では、細胞を誘導剤と接触させる場合、誘導剤はtetリプレッサータンパク質と結合し、プロモーター配列により、関心のある第一の及び第二のポリヌクレオチド配列それぞれの転写が引き起こされる。具体的に、第一のポリヌクレオチド配列の転写により、第一の標的遺伝子の発現を調節する第一のRNA分子が産生され、第二のポリヌクレオチド配列の転写により、第二の標的遺伝子の発現を調節する第二のRNA分子が産生される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
定義及び他の用語
本明細書中で使用する場合、「遺伝子」という用語は、プロモーター活性の結果、転写が行われるポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、特定のポリペプチドをコードするか、又はRNA分子をコードし得る。遺伝子は、1以上のイントロン及び/又はエクソン及び/又は1以上の制御及び/又は調節配列を含み得る。
【0022】
本明細書中で使用する場合、「誘導剤」という用語は、以下に限定されないが、テトラサイクリン、ドキシサイクリン又はテトラサイクリン類似体を含むtetリプレッサータンパク質に特異的に結合する任意の化合物を指す。
【0023】
本明細書中で使用する場合、「調節」又は「調節する」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される場合、上方制御(つまり、活性化又は刺激(例えば作動化する又は増強することによる))及び下方制御(つまり、阻害又は抑制(例えば、拮抗、低下又は阻害することによる))の両方を指す。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「非ヒト動物」という用語は、ヒトを除く全ての脊椎動物を含む。胚及び胎仔段階など、発生段階全ての個々の動物も含む。「トランスジェニック動物」は、標的化組換え又はマイクロインジェクション又は組換えウイルスを用いた感染によるものなど、細胞より小さいレベルでの慎重な遺伝子操作により、直接的又は間接的に、遺伝情報が変更されているか、遺伝情報を受容する1以上の細胞を含有する任意の動物である。
【0025】
マウスは、飼育しやすく、比較的安価であり繁殖させやすいことから、トランスジェニック動物モデルのために使用されることが多い。しかしながら、他の非ヒトトランスジェニック哺乳動物(以下に限定されないが、霊長類、マウス、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ウシ、ネコ、モルモット及びラットなど)もまた本発明に従い作製することができる。トランスジェニック動物はトランス遺伝子を有する動物であり、このトランス遺伝子は、次の世代に引き継がれる、導入され安定に組み込まれた、クローニングされた遺伝子である。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「作動可能に連結された」という用語は、並列を指し、このように述べられる成分は、それらの意図する様式でそれらが機能させることができる関係にある。例えば、関心のあるポリヌクレオチド配列は、関心のある導入ポリヌクレオチド配列の転写を指示する、又は転写及び翻訳を指示する、別のポリヌクレオチド配列に近接して位置し得る(つまり、例えば、関心のある導入配列によりコードされるポリペプチド又はポリヌクレオチドの産生を促進する)。プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているとみなされる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチド、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド何れかの重合形態を意味する。この用語は、分子の一次構造のみを指す。従って、この用語は、2本鎖及び1本鎖DNA、ならびに2本鎖及び1本鎖RNAを含む。ポリヌクレオチドの、メチル化又はキャッピングなどの修飾及び非修飾形態も含む。「ポリヌクレオチド」、「オリゴマー」、「オリゴヌクレオチド」及び「オリゴ」という用語は本明細書中で交換可能に使用される。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「関心のあるポリヌクレオチド配列」という用語は、RNA分子、例えば、以下に限定されないが、小分子干渉RNA(siRNA)もしくは小分子ヘアピン型RNA(shRNA)又は標的細胞中のタンパク質もしくはその他の分子を発現させることができる(つまり、標的細胞においてタンパク質又はその他の生物分子の産生が可能である)、任意の、DNA、cDNA、ゲノムDNA、核酸類似体及び合成DNAを指す。DNAは2本鎖又は1本鎖であり得、1本鎖である場合、コード(センス)鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であり得る。関心のあるポリヌクレオチド配列は通常、少なくとも1個のプロモーター配列など、発現に必要な他のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。関心のあるあらゆるポリヌクレオチド配列を本発明で用いることができる。本発明で使用できるポリヌクレオチド配列の例としては、以下に限定されないが、マウスIRAK4遺伝子をノックアウトするためのポリヌクレオチド配列、例えば、shRNA法で用い得るggaagaaauuagcaguagcucucuugaagcuacugcuaauuucuuccuu(配列番号16)など、ヒトSTK33遺伝子をノックアウトするためのポリヌクレオチド配列、例えば、それぞれsiRNA法で用い得る、gggcauuucucagagaaugtt(配列番号17)及びttcccguaaagagucucuuac(配列番号18)、NFKB阻害剤Ras様1(「NK1RAS1」としても知られる)タンパク質をコードする、又はNKIRAS1遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(ヒトNK1RAS1タンパク質をコードするcDNAは、GenBank受託番号NM−020345で見出すことができる)、低酸素誘導性因子1、αサブユニット(基本的なヘリックス−ループ−へリックス転写因子であり、「HIF1A」としても知られている。)タンパク質をコードする、又はHIF1A遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(ヒトHIF1Aタンパク質をコードするcDNAは、GenBank受託番号NM_001530として見出すことができる)、以下に限定されないが、第8染色体ゲノムコンティーグ(ヒト第8染色体ゲノムコンティーグをコードするゲノムDNAは、GenBank受託番号NT023736.16で見出すことができる)などの、ゲノム染色体をコードする、又はゲノム染色体をノックダウンする、ポリヌクレオチド配列、キナーゼファミリーのメンバーをコードする、又はキナーゼファミリーのメンバーをコードする遺伝子をノックダウンする、ポリヌクレオチド配列(キナーゼファミリーのメンバーの例としては、アクチビンA受容体タイプII様タンパク質(「ACVRL1」としても知られる。)(ヒトACBRL1タンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号NM_000020で見出すことができる)又はATMタンパク質(ヒトATMをコードするDNAは、GenBank受託番号NM_000051で見出すことができる)が挙げられる)、腫瘍抑制タンパク質をコードする、又は腫瘍抑制タンパク質をコードする遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(腫瘍抑制タンパク質の例としては、p53タンパク質(ヒトp53タンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号NM_000546で見出すことができる)又はヒト網膜芽腫タンパク質(ヒト網膜芽腫タンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号M15400で見出すことができる。)が挙げられる。)、転写因子をコードする、又は転写因子をコードする遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(転写因子の例としては、mycタンパク質(ヒトmycタンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号M13228で見出すことができる)が挙げられる)、Sma11GTPaseをコードする、又はSma11GTPase遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(Sma11GTPaseの例としては、Rasタンパク質(Rasタンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号NM_033360で見出すことができる)が挙げられる)、E3リガーゼをコードする、又はE3リガーゼをコードする遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(E3リガーゼの例としては、SKP2タンパク質(ヒトSKP2タンパク質をコードするDNAはGenBank受託番号NM_032637で見出すことができる)が挙げられる)などが挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書中で交換可能に使用され、共有及び/又は非共有結合を介して連結されたアミノ酸の少なくとも1個の分子鎖を指す。この用語は特定の長さの産物を指すものではない。従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質はポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、タンパク質断片、類似体、突然変異又は変異型タンパク質、融合タンパク質などがポリペプチドの意義内に含まれる。
【0030】
本明細書中で使用する場合、「標的遺伝子」という用語は、以下に限定されないが、関心のあるポリペプチドあるいは関心のあるRNA分子(例えば以下に限定されないがsiRNA又はshRNAなど)をコードする関心のあるポリヌクレオチド配列を指す。標的遺伝子は、その機能が本発明の方法により遮断される細胞の連続的生存に必要とされる「不可欠な」遺伝子であり得る。「標的遺伝子」という用語はまた、本明細書中に記載の方法によりノックアウトされるべき遺伝子も指す。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「テトラサイクリン類似体」という用語は、テトラサイクリン又はドキシサイクリンに関連し、tetリプレッサータンパク質に特異的に結合する任意の化合物を指す。このような類似体の解離定数は、少なくとも1x10−6M、好ましくは1x10−9Mより大きいものであるべきである。テトラサイクリン類似体の例は、Handbook of Experimental Pharmacology 78,Blackwoodら(編)、New York(1985)における、Hlavkaら、「The Tetracyclines,」及びMitschef(「The Chemistry of Tetracycline Antibiotics,」Medicinal Res.9,New York(1978)で考察されている(これは本明細書中に参考として援用されている)。
【0032】
本明細書中で使用する場合、「テトラサイクリンリプレッサータンパク質」、「tetリプレッサータンパク質」及び「tetR」という用語は、本明細書中で全て交換可能に使用され、1)誘導剤との特異的結合性を示し、2)テトラサイクリンリプレッサータンパク質が誘導剤と結合しない場合、少なくとも1個のtetオペレーター配列に対する特異的な結合を示し、及び/又は3)誘導剤により、テトラサイクリンオペレーターから駆逐され得る、又は競合して除かれ得る、ポリペプチドを指す。「テトラサイクリンリプレッサータンパク質」という用語は、天然の(つまり、ネイティブ)テトラサイクリンリプレッサータンパク質ポリペプチド配列及びその機能的誘導体を含む。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「制御配列」という用語は、通常、ポリヌクレオチドの発現(遺伝子の転写及び翻訳、メッセンジャーRNAの、スプライシング、安定性などを含む。)に影響を与える遺伝子座の(例えば、50kb内の)コード領域と会合する配列を指す。制御配列には、例えば、プロモーター、エンハンサー、スプライシング部位及びポリアデニル化部位が含まれる。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「調節配列」という用語は、それらがライゲーションされているコード配列の発現に影響を与えるために必要なポリヌクレオチド配列を指す。このような調節配列の性質は宿主生物によって異なり、原核生物では、このような調節配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含み、真核生物では、一般に、このような調節配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。「調節配列」という用語は、最小限として、発現のために存在することが必要な全ての成分を含むものとし、また、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列など、存在すれば有利なさらなる成分も含み得る。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「トランス遺伝子」という用語は、細胞に導入されたポリヌクレオチド配列を指す(例えば、ポリペプチドの1つ又はそのアンチセンス転写産物をコードする。)。トランス遺伝子は、一部又は全体的に異種由来であり得、つまり、導入が行われるトランスジェニック動物もしくは細胞に対して外来のものであるか、又は導入が行われるトランスジェニック動物もしくは細胞の内在遺伝子に対して同種ものであり得るが、挿入される細胞のゲノムを変化させるように動物のゲノムに挿入されるように設計されているか、又は挿入される(例えば、これは、天然の遺伝子とは異なる位置又はその挿入の結果ノックアウトが起こる位置に挿入される。)。トランス遺伝子はまた、エピソームの形態で細胞に存在し得る。トランス遺伝子は、1以上の転写制御配列及び任意の他の核酸、例えば、選択されたポリヌクレオチド配列の最適な発現に必要であり得るイントロンなどを含み得る。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド又はDNA配列を細胞に導入するビヒクルを指す。これは、任意の特定の配列に限定されるものではない。ベクターは、それ自身、内在遺伝子を調節する、ポリヌクレオチド又はDNA配列であり得るか、又は内在遺伝子を調節するポリヌクレオチド配列を含有し得る。従って、ベクターは、単純に、調節に必要な配列のみを含有する線状又は環状ポリヌクレオチドであるか、又は大きなポリヌクレオチド又はDNAもしくはRNAウイルスゲノムなどの他の構築物、バイロン全体又は、重要なヌクレオチド配列を細胞に導入するために使用される他の生物学的コンストラクにおけるこれらの配列であり得る。「ベクター構築物」、「組換えベクター」又は「構築物」という語が本明細書中で「ベクター」という用語と交換可能に使用され得ることも理解されたい。
【0037】
本明細書中で使用する場合、「a、」、「an」及び「the」という単数形は、文脈において明確に他に示されない限り、複数形の意味を含む。別段の定義がない限り、本明細書中で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の熟練者により一般に理解されるものと同様の意味を有する。
【0038】
値の範囲が示される場合、文脈において明確に他に示されない限り、個々の介在値が、下限の単位の十分の一まで、同範囲の上限と下限の間にあり、その指定された範囲における任意のその他の指定された値又は介在値が本発明に含まれると理解すべきである。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、より小さい範囲に含まれ得、本発明内にも包含され、指定された範囲における任意の具体的な排除限界に従う。指定された範囲が上限又は下限の1又は両方を含む場合、上限又は下限が含まれるものの何れか又は両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0039】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書中に記載のものと同様又は同等のあらゆる方法、装置及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、代表的方法、装置及び材料をここで記載する。
【0040】
テトラサイクリン耐性オペロン
重要ではないが、本発明の理解の促進を促すために、細菌におけるテトラサイクリン耐性(tet)オペロンに関する情報を本明細書中で簡潔に示す。
【0041】
tetオペロンにおいて、関心のあるポリヌクレオチド配列及びtetリプレッサータンパク質(tetR)をコードする遺伝子は、両方とも同じオペレーターエレメントの制御下にある。誘導剤がない場合、tetリプレッサータンパク質はオペレーター配列に結合し、それにより、近接するプロモーター配列がRNAポリメラーゼなどの転写活性化因子と相互作用することが立体的に妨げられる。従って、関心のあるポリヌクレオチド配列の転写がブロックされる。細菌中の誘導剤のレベルが上昇する場合、誘導剤はtetリプレッサータンパク質に結合し、tetリプレッサータンパク質のオペレーター配列への結合が妨げられる。結果として、ポリメラーゼはプロモーター配列に結合することができ、ポリヌクレオチド配列は転写される。
【0042】
本発明のプロモーター
ある実施形態では、本発明はRNA polIII依存性プロモーター配列に関する。好ましくは、本発明のRNA polIII依存性プロモーター配列は誘導性であり、つまり、このようなプロモーターは誘導性プロモーターである。本明細書中で使用する場合、「誘導性」又は「誘導性プロモーター」という用語は、両方とも本明細書中で交換可能に使用され、本発明のプロモーター配列がある特定の化学条件の設定下で活性化されることを指す。これらの特定の条件とは、tetリプレッサータンパク質に結合する誘導剤の存在である。例えば、本発明において、誘導剤が存在する場合、本発明のプロモーター配列が活性化され、前記プロモーター配列に作動可能に連結された関心のあるポリヌクレオチド配列の転写が起こる。本発明は、以下に限定されないが、U6プロモーター配列、H1プロモーター配列又は7SKプロモーター配列など、任意のRNA polIII依存性プロモーター配列を本明細書中で使用できることを意図する。
【0043】
本発明のプロモーター配列は、TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’に位置する近位配列エレメント(PSE)、TATAエレメントに対して3’に位置する転写状態部位(TSS)、少なくとも1個の第一のテトラサイクリンオペレーター(第一のtetオペレーター)及び少なくとも1個の第二のテトラサイクリンオペレーター(第二のtetオペレーター)を含有する。本発明のプロモーター配列は、少なくとも2個のテトラサイクリンオペレーターを含有するが、2を超えるテトラサイクリンオペレーターを含有するプロモーター配列もまた、本発明の範囲内にあるものとする。
【0044】
本発明のプロモーター配列において、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置する(図1参照)。ある態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの一方又は両方の部分を形成する。第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置する(図1参照)。ある態様において、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの一方又は両方の部分を形成する。これらのエレメントの配置は、所望ならば、プロモーター配列が関心のある下流ポリヌクレオチド配列の転写又は遺伝子産物の翻訳を指揮する能力を実質的に妨げてはいけない。さらに、プロモーター配列、オペレーター及びその他のポリヌクレオチド配列を合成又は精製する手段は当業者に周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Press(1989)に記載のような、適切に配置されたエレメントを用いてベクターを構築するのに利用することができる(本明細書中でより詳細に説明する)。
【0045】
本明細書中に記載のプロモーター配列の特定の位置内で少なくとも2個のテトラサイクリンオペレーターを工作することにより、本発明者らは、本発明のプロモーター配列が関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列と作動可能に連結され、このプロモーター配列が当分野で公知のその他の誘導性poly III依存性プロモーターと比較して、基礎転写活性が低くなることを見出した。従って、本発明のプロモーターがより厳重な制御を示す結果、これらのプロモーター配列は、誘導性ノックダウン細胞株を作製する際の成功率を大きく向上させる。
【0046】
第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、同じ(つまり同一)であるか、又は異なり得る。第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターは、任意のポリヌクレオチド配列を有し得るが、ただし、前記ポリヌクレオチド配列は、誘導剤の非存在下で、前記オペレーターの一方及び/又は両方に対してtetリプレッサータンパク質が結合できるようにするようなものである。例えば、第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列が同一である場合、前記オペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択される。
【0047】
既に述べたように、第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、互いに同一ではなく、互いに異なり得る。同様に、既に述べたように、第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターは任意のポリヌクレオチド配列を有し得るが、ただし、前記ポリヌクレオチド配列は、誘導剤の非存在下で、前記オペレーターの一方及び/又は両方に対してtetリプレッサータンパク質が結合できるようにするようなものである。例えば、第一のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から独立に選択され得る。しかしながら、第一のtetオペレーターがactctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のtetオペレーターは、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有してはいけない。それでもなお、第一のtetオペレーターがtccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有し、第二のテトラサイクリンオペレーターがactctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有することが好ましい。
【0048】
本発明のベクター
本発明のプロモーター配列は、通常、少なくとも1個の発現ベクター(例えば、以下に限定されないが、プラスミド、ウイルス又はファージなど)に組み込まれる。多数の好適なベクターが当業者に公知であり、市販されており、本発明において使用できる。例として次のベクターを示す。細菌性:pINCY(Incyte Pharmaceuticals Inc.,Palo Alto.Calif)、pSPORT1(Life Technologies,Gaithersburg,Md.)、pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)pBs、phagescrip、psiX174、pBluescriptSK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);真核性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかしながら、複製可能で宿主中で生存可能である限り、任意の他のベクターを使用し得る。所望ならば、大量のベクターDNAを生成させることができる(例えば、リプレッサータンパク質を産生する細菌へとベクターを転移させることにより)。
【0049】
発現ベクターはまた、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列も含有する。関心のあるこのポリヌクレオチド配列はあらゆるソース由来であり得、当業者に公知の様々な手段によりベクターに挿入し得る。通常、関心のあるポリヌクレオチド配列を好適な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。このような手段及び他の手段は、当業者の範囲内にあるものとする。発現ベクターはまた、複製起点、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターも含有する。ベクターはまた、発現を増幅するための好適な配列も含み得る。さらに、ベクターは、抗生物質(例えば、アンピシリン、ハイグロマイシン、G418)耐性遺伝子、β−ガラクトシダーゼ又は、ベクターを含有する細胞の選択に使用できるその他の遺伝子産物などの1以上の選択可能なマーカー配列を含有し得る。
【0050】
上記で簡潔に述べたように、ベクターは、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含有し得る。ベクターは、関心のある2以上のポリヌクレオチド配列を含有し得る(ここで、各ポリヌクレオチド配列は、それ自身のプロモーター配列に作動可能に連結されている)。各ポリヌクレオチド配列に対するプロモーター配列は、同じ又は異なり得るが、ただし、少なくとも1個のポリヌクレオチド配列が、本発明の少なくとも1個のプロモーター配列に作動可能に連結されている。例えば、ベクターは、関心のある第一のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第一のプロモーター配列及び第二のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第二のプロモーター配列を含有し得る。第一の及び第二のプロモーター配列は、それぞれ、本発明のプロモーター配列であるか、又は異なるプロモーター配列であり得るが、ただし、第一の又は第二のプロモーター配列の少なくとも1個は、本発明のプロモーター配列である。本発明のプロモーター配列ではなく、関心のある第一の又は第二のポリヌクレオチド配列の何れかに作動可能に連結することができる好適なプロモーター配列の例としては、以下に限定されないが、LTR又はSV40プロモーター、E.コリlac又はtrp、ファージλPsubLプロモーター、及び当業者に公知の他のプロモーターが挙げられる。その他の制御及び/又は調節配列が前記プロモーターとともに同様に含まれ得る。あるいは、関心のある第一の及び第二のポリヌクレオチド配列を本発明のプロモーター配列に、好適な様式で、タンデムに、及び作動可能に連結することができる。
【0051】
以下に限定されないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラン、リポフェクション及び受容体を介したエンドサイトーシス、ポリブレン、粒子衝突法及びマイクロインジェクションなどの当業者に公知の任意の方法を用いて、本明細書中に記載のベクターを哺乳動物(以下に限定されないが、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、げっ歯類、マウスなど)又は非哺乳動物(以下に限定されないが、昆虫、爬虫類、魚類、鳥類など)細胞などの宿主細胞に導入(つまり、形質転換又はトランスフェクション)することができる。あるいは、ベクターをウイルス粒子として細胞にデリバリーすることができる(複製可能又は複製欠損性のいずれか)。核酸のデリバリーに有用なウイルスの例としては、以下に限定されないが、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス及びワクシニアウイルスが挙げられる。当分野で公知の細胞へのポリヌクレオチド配列のデリバリーに好適なその他のウイルスを本発明において同等に使用できる。
【0052】
プロモーター配列を活性化し、トランスフェクトされた細胞を選択することなどに好適なように改変した従来の栄養培地中で操作した宿主細胞を培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択した細胞とともに既に使用されるものであり、当業者にとって明らかである。
【0053】
好ましくは、tetリプレッサータンパク質を発現するように操作した宿主細胞に組換えベクターを転移させるか、形質転換又はトランスフェクトする。tetリプレッサータンパク質を発現するように宿主細胞を操作する方法は数多くある。例えば、ある方法は、tetリプレッサー遺伝子配列をプロモーター配列に作動可能に連結すること及び次いで、関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能にタンデム連結された本発明のプロモーター配列を含有するベクターにこれを組み込み、次にこのベクターを宿主細胞に転移させるか、形質転換又はトランスフェクトすることである。このような発現ベクターにおいて、tetリプレッサー配列を第二のプロモーター配列(第一のプロモーター配列は、少なくとも2個のtetオペレーターを含有し、関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列である)に作動可能に連結させる。組換えベクターは、関心のある少なくとも2個のポリヌクレオチド配列を含有し、tetリプレッサー配列は、関心のあるポリヌクレオチド配列がそれぞれ1個のプロモーターに作動可能に連結されているか、又は別々のプロモーターに作動可能に連結されているかに依存して、「第二」又は「第三」のプロモーター配列に作動可能に連結される。あるいは、プロモーター配列に作動可能に連結されたtetリプレッサー配列を含有する個別の組換えベクターを用いて、関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された本発明のプロモーター配列を含有するベクターの転移前に、細胞に対して形質転換又はトランスフェクションを行い得る。tetリプレッサー配列に作動可能に連結させ得る好適な「プロモーター配列」又は「第二」もしくは「第三」のプロモーター配列の例としては、以下に限定されないが、LTR又はSV40プロモーター、E.コリlac又はtrp、ファージλPsubLプロモーター、及びtetリプレッサー配列の発現を調節することが知られているその他のプロモーターが挙げられる。その他の制御及び/又は調節配列も同様に前記プロモーターとともに含まれ得る。
【0054】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて特異的なポリヌクレオチド配列を増幅することにより、当業者にとって周知のハイブリダイゼーション技術を用いて、組み込まれたベクターを含有する操作した宿主細胞を同定することができる。例えば免疫学的又は酵素的アッセイにより検出可能なタンパク質を産生する細胞にポリヌクレオチド配列が転移される場合、細胞にテトラサイクリンを導入し、次いで細胞周囲の培地又は細胞ライゼートの何れかにおいてアッセイを行うことにより、組換えタンパク質の有無を確認できる。
【0055】
本明細書中で既に述べたように、誘導剤の非存在下で、本明細書中に記載のプロモーター配列を含有する組換えベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトを行った宿主細胞は、当分野で公知の他の誘導性pol III依存性プロモーター配列と比較して、基礎転写活性が低い。それでもなお、誘導剤を用いて、宿主細胞に組み込まれた関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写を達成することができる。関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写を達成するために宿主細胞に添加すべき誘導剤の量は、当業者によって容易に決定され得る。いったん誘導されると、少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写により、RNA分子が生じる。好ましくは、このRNA分子は、宿主細胞において標的遺伝子の発現を調節する。宿主細胞に対して、1を超える関心のあるポリヌクレオチド配列を含有する組換えベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトを行う場合、各ポリヌクレオチド配列からRNA分子が産生される。好ましくは、これらのRNA分子は、宿主細胞において1を超える標的遺伝子の発現を調節する。例えば、前記宿主細胞に対して、関心のある2個のポリヌクレオチド配列を用いて形質転換又はトランスフェクトを行う場合、関心のある第一のポリヌクレオチド配列は、転写の結果として、前記細胞中で第一の標的遺伝子の発現を調節する第一のRNA分子を産生し得る。関心のある第二のポリヌクレオチド配列もまた、転写の結果として、前記細胞中で第二の標的遺伝子の発現を調節する第二のRNA分子を産生し得る。好ましくは、前記第二の標的遺伝子は第一の標的遺伝子とは異なる。また、好ましくは、第一の及び/又は第二のRNA分子によって遂行される調節は、第一の及び/又は第二の標的遺伝子の阻害又は抑制である。しかしながら、本発明が意図するのは、1個のRNA分子が第一の標的遺伝子を阻害又は抑制し得、一方で第二のRNA分子が第二の標的遺伝子を活性化又は刺激し得ることである。
【0056】
小分子干渉RNA及び小分子ヘアピン型RNA
本発明の理解を促進するために、siRNA及びshRNAの簡潔な説明を与える。いくつかの米国特許及びPCT特許出願公開は、siRNAs及びshRNAの、設計、合成、精製及び細胞へのデリバリーの好ましい方法を教示する。特に米国特許出願U.S.2003/0148519(その全体が本明細書中に参考として援用されている)は、哺乳動物細胞でのsiRNA及びshRNAの細胞内発現及びデリバリーに対する組成及び方法を提供し、米国特許出願U.S.2002/0132788(その全体が本明細書中に参考として援用されている)は、細胞での遺伝子発現を阻害する目的のために、インビボでsiRNAを細胞にデリバリーするためのプロセスを提供する。
【0057】
小分子干渉RNA(siRNA)は、小分子の分子間デュプレックスであり、一般に、RNAの2本の相異なる(センス及びアンチセンス)鎖から成り、それぞれ、およそ21ヌクレオチドであり、1〜3個、好ましくは2個のヌクレオチドの1本鎖の3’オーバーハンドを伴い、およそ19塩基対を形成する。siRNAの塩基対領域は通常、分解又は翻訳阻害に標的化されるRNA転写産物において、実質的に「標的遺伝子」及びその相補体に対応するか、好ましくは全く同じである。
【0058】
対応するRNA転写産物の効率的な分解又は抑制を誘導するのに必要とされるsiRNAの特異的及び必要な特性は、標的とされる転写産物内の標的遺伝子の特性とともに調べられてきた。効果的なsiRNA設計のための方法は、Tuschlら、Genes & Dev.,13:3191−3197(1999)及びElbashirら、EMBO J.,20:6877−6888(2001)(それぞれが本明細書中に参考として援用されている)に記載されている。
【0059】
本発明の目的のために、siRNAを含む個々の1本鎖RNAを内生的に(細胞内で)合成する。次に、2本の相補的1本鎖をアニーリングさせてRNAデュプレックス−siRNAを形成させねばならない。アニーリング段階もまた内生的に起こる。本発明のプロモーターを含有する本明細書中に記載のベクターを用い、細胞性RMAポリメラーゼによって、内生的合成1本鎖RNAを合成する。
【0060】
小分子ヘアピン型RNA(shRNA)は、互いにペアになり得る自己相補性の領域を有する1本鎖RNAであり、この自己相補性の領域により、1本鎖が、ステム−ループ型構造を有する分子内デュプレックスに折りたまれることが可能となる。ペアにならないループ領域は理論的にあらゆるサイズであり得るが、同じ1本鎖RNA内の自己相補性配列が互いに容易に見出され、塩基対を形成できるよう十分にループが小さいことが有利である。好ましいループサイズは、4〜9ヌクレオチド以上であり、最も好ましくは、5〜8ヌクレオチドのループである。一般に、ループの配列は重要ではないが、パリンドローム配列を含有すべきでない。細胞内でshRNAのループが切断され、siRNAとは異なる分子間デュプレックスが形成される。shRNAのステム領域は、一般に、およそ19〜29塩基対を含有し、通常、対になった領域を越えて伸びるshRNAの3’末端は、複数のチミジル残基から構成される。分解の標的とされるRNA転写物において、siRNAの塩基対領域がそうであるように、shRNAの塩基対領域は、通常、実質的に、好ましくは正確に、標的遺伝子及びその相補体と一致する。
【0061】
siRNAの1本鎖と同様に、内部的または外部的の何れかでshRNAを合成することができる。内部合成されたshRNAは通常、本発明のプロモーターを含有する本明細書中に記載のベクターを用い、細胞性RNAポリメラーゼによって合成される。
【0062】
非ヒト哺乳動物における遺伝子発現調節のための方法
別の実施形態では、本発明は、非ヒト動物の少なくとも1個の真核細胞において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する方法に関する。これらの方法は、本明細書中に記載のプロモーター配列及び組換えベクターを用いて、関心のあるポリヌクレオチド配列の転写を誘導することを含む。本明細書中で既に述べたように、前記関心のあるポリヌクレオチド配列の転写により、少なくとも1個のRNA分子が産生される。産生され得るRNA分子の例としては、以下に限定されないが、siRNA又はshRNAが挙げられる。これらのRNA分子は、このような細胞中で少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するために使用される。
【0063】
真核細胞中で少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するための様々な方法において、本明細書中に記載の本発明のプロモーター配列及びベクターを使用することができる。より具体的には、この方法は、少なくとも1個の真核細胞を提供することと、次いで、本明細書中に記載の組換えベクターの少なくとも1個を用い、前記真核細胞に対して形質転換又はトランスフェクションを行うことを含む。本明細書中に記載の組換えベクター内に含有される少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列により、転写後に、前記細胞中で好ましくは少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する少なくとも1個のRNA分子が産生される。意図する目的に依存して、少なくとも1個のRNA分子は、1)標的遺伝子を活性化又は刺激、あるいは2)標的遺伝子を阻害又は抑制することができる。例えば、真核細胞内の標的遺伝子が「ノックアウト」されるべき場合、産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。siRNA又はshRNAを使用して標的遺伝子を「ノックアウト」できることは、当業者に公知である。従ってこの調節の結果、標的遺伝子を阻害又は抑制することとなる。siRNA又はshRNAをコードする関心のあるポリヌクレオチド配列を作製する方法を本明細書中に記載する。
【0064】
トランスジェニック非ヒト動物
別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載のプロモーター配列及びベクターを含有するトランスジェニック非ヒト動物ならびに前記動物を作製する方法に関する。様々な方法を使用して、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を作製することができる。例えば、標的遺伝子のポリヌクレオチド配列の特定の変更を行うことは、使用できる1つのアプローチである。インビトロで使用される様々な酵素的及び化学的方法により、変更を行うことができる。最も一般的な方法の1つは、突然変異原として特異的なオリゴヌクレオチドを用いて、標的遺伝子において、精密に設計された欠失、挿入及び点突然変異を生じさせることである。第二に、野生型ヒト遺伝子及び/又はヒト化非ヒト動物遺伝子を相同組換えにより挿入し得る。本発明のプロモーターを用い、ゲノム又はミニジーン構築物として、変更された又は突然変異(1又は複数)ヒト遺伝子を挿入することも可能である。
【0065】
さらに、少なくとも1個の内在標的遺伝子が「ノックアウト」されている、トランスジェニック非ヒト動物も作製することができる。ノックダウン動物の作製により、当業者は、ノックアウトされた遺伝子のインビボでの機能を評価できるようになる。様々な方法において、少なくとも1個の標的遺伝子のノックアウトを行うことができる。標的遺伝子を「ノックアウト」するのに使用できる或るストラテジーは、相同組換えにより内在遺伝子の人工的修飾断片を挿入することによるものである。この技術において、相同組換えにより、胚性幹細胞(ES)細胞に変異対立遺伝子を導入する。研究されている遺伝子の1つの対立遺伝子にノックアウト突然変異を含有する胚性幹細胞を胚盤胞に導入する。得られた動物は、移植したES細胞及び宿主細胞の両方由来の組織を含有するキメラである。キメラ動物を交尾させ、突然変異が生殖細胞系に組み込まれているか否かを評価する。ノックアウト突然変異に対してそれぞれヘテロ接合であるこれらのキメラ動物を交尾させ、ホモ接合型のノックアウトマウスを作製する。少なくとも1個の遺伝子を「ノックアウト」するのに使用できる第二のストラテジーは、siRNA及びshRNA及び卵母細胞マイクロインジェクション又は胚性幹細胞へのトランスフェクション又はマイクロインジェクション(本明細書中でさらに述べる)を使用することを含む。本明細書中で既に述べたように、本発明のプロモーター配列がより厳重な制御を示すので、当分野で公知の他のプロモーター配列と比較した場合、これらのプロモーター配列により、誘導性ノックダウン細胞株及び動物作製の成功率が大きく向上する。
【0066】
変更されたヒト標的遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト動物を作製するために、卵母細胞マイクロインジェクション又は胚性幹細胞へのトランスフェクションもしくはマイクロインジェクションの標準的な技術を用い、関心のあるポリヌクレオチド配列を非ヒト動物生殖系列に挿入することができる。あるいは、内在遺伝子のノックアウト又は置換が必要である場合、卵母細胞マイクロインジェクション又は胚性幹細胞へのトランスフェクションもしくはマイクロインジェクションを用い、胚性幹細胞を用いた相同組換え又はsiRNAもしくはshRNAを本明細書中に記載のように使用できる。
【0067】
卵母細胞インジェクションの場合、本発明のプロモーターに作動可能に連結された少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を、受精させたばかりの非ヒト動物卵母細胞の前核に挿入することができる。次に、この卵母細胞を偽妊娠養母に再移植する。次に、関心のあるポリヌクレオチド配列の存在に関して尾部由来などの動物のDNAを分析することにより(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて)、生きて生まれた非ヒト動物を組み込みについてスクリーニングすることができる。次いで、キメラ非ヒト動物を同定する。トランス遺伝子は、YAC又は染色体断片として注入された完全なゲノム配列、cDNA又はコード領域全体を含有するミニジーン及び、最適な発現のために必要であることが分かっている他のエレメントであり得る。
【0068】
初期胚のレトロウイルス又はレンチウイルス感染(Lois C.ら、Science,295:868−872(2002)を参照のこと(レンチウイル遺伝子組換えを用いたトランスジェニックのための方法を教示する))もまた、変更された遺伝子を挿入するために行われ得る。この方法では、キメラを作製するために発生の初期段階でマウス胚に直接感染させるのに使用するレトロウイルスベクターへと変更遺伝子を挿入し、これらの幾つかにより、生殖細胞系列伝達が導かれる(Jaenisch,R.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,73:1260−1264(1976))。
【0069】
胚性幹細胞を用いた相同組換えにより、遺伝子転移細胞のスクリーニングによって稀な相同組換えを同定することができるようになる。いったん同定されると、これらを使用して、少なくとも1個の非ヒト動物胚盤胞の注入によりキメラを作製することができ、得られる動物の割合から、組換え系列からの生殖細胞系列伝達が示される。この遺伝子標的法は、特に、遺伝子の不活性化が望ましい場合に有用である。例えば、選択可能マーカーに隣接するエクソンからの配列を含有するポリヌクレオチド断片を設計することにより、遺伝子の不活性化を行うことができる。相同組換えにより、エクソンの途中でのマーカー配列の挿入が導かれ、遺伝子が不活性化される。次に、個々のクローンのDNA分析を用いて、相同組換えを見分けることができる。
【0070】
あるいは、siRNA又はshRNAを用いて標的遺伝子の「ノックアウト」を行うことができる。あるストラテジーでは、卵母細胞マイクロインジェクションを本明細書中に記載のように使用することができる。特に、siRNA又はshRNAである少なくとも1個のRNA分子を発現し、本発明の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列に作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子は、本明細書中に記載の方法を用いて調製される。このトランス遺伝子を好ましくは注入により、非ヒト動物受精卵母細胞に導入する。次に、受精卵母細胞を胚へと発生させる。次に、得られる胚を偽妊娠雌非ヒト動物及に移し、次いで出産させる。次に、試料を得て、動物のDNAを解析することにより(PCRなどの技術を用いる。)、トランス遺伝子を含有するキメラ動物に関して、生きて生まれた非ヒト動物のスクリーニングを行い、このようなキメラ非ヒト動物を同定する。これらの非ヒト動物を誘導剤で処理すると、転写が誘導され、siRNA又はshRNAが発現され、標的遺伝子が抑制もしくは「ノックアウト」される。誘導剤がない場合、遺伝子は抑制又は「ノックアウト」されない。
【0071】
第二のストラテジーでは、本明細書中に記載のように、胚性幹細胞のマイクロインジェクションを用いることができる。特に、siRNA又はshRNAであり、本発明の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列に作動可能に連結された、少なくとも1個のRNA分子を発現する少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子は、本明細書中に記載の方法を用いて調製される。好ましくは注入によって、これらの胚性幹細胞を少なくとも1個の非ヒト動物胚盤胞に導入することにより、キメラを作製するのに使用できる非ヒト動物胚性幹細胞にこのトランス遺伝子を導入する。次に、得られる胚盤胞を偽妊娠雌非ヒト動物に移植し、次にキメラ非ヒト動物を出産させる。PCRを使用して、関心のある動物を同定することができる。次に、試料を得て、前記動物のDNA試料を得て解析することにより(PCRなどの技術を用いて)、トランス遺伝子を含有するキメラ動物に関して、生きて生まれた非ヒト動物のスクリーニングを行い、このようなキメラ非ヒト動物を同定する。次に、このキメラ非ヒト動物を繁殖に用いて、それらのゲノム内にこのトランス遺伝子を安定的に含有するトランスジェニック非ヒト動物を作製することができる。前出の方法と同様に、これらの非ヒト動物を誘導剤で処理すると転写が誘導され、siRNA又はshRNAが発現され、標的遺伝子が抑制もしくは「ノックアウト」される。誘導剤がない場合、遺伝子は抑制又は「ノックアウト」されない。
【0072】
例えば、Wallら、J.Cell.Biochem.,June:49(2)、113−20(1992);Hoganら、「Manipulating the mouse embryo」、A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1992);WO91/08216又は米国特許第4,736,866号(これらの開示全体が本明細書中に参考として援用されている)において、トランスジェニック動物を作製する方法が記載されている。
【0073】
ここで、一例として、限定的なものでなしに、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0074】
shRNA発現用の厳重に制御されたU6プロモーターの開発
a.ルシフェラーゼアッセイ
Lipofectamine2000(Invitrogen,Carlsbad,California)を用いて、ルシフェラーゼレポーター構築物、pGL−3(Promega,Madison Wisconsin)及びpRL−TK(Promega,Wisconsin)を、細胞にトランスフェクトした。Dual−Luciferaseアッセイシステム(Promega,Madison,Wisconsin)を用いてルシフェラーゼ活性を調べた。
【0075】
b.ウェスタン分析
6ウェルプレートにおいて1XLaemmli試料緩衝液中で細胞を直接溶解させた。タンパク質をSDS−PAGEで分離し、PVDF膜に移し、Chk1(1:200、Santa Crutz Biotechnology,Santa Crutz,CA95060)、HIF−1α(1:500、BD Bioscience,Palo Alto,CA 94303)、又はtetR(1:2000、Mo Bi Tec,Germay)に対する抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。
【0076】
c.細胞培養
10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中でD54−MG(Abbott Laboratoriesが所有する特許品の細胞株)細胞を増殖させた。10%FBSを添加した最小必須培地(MEM)中でHeLa−TREx細胞(Invitrogen)を増殖させた。10%FBSを添加したRPMI1640培地中でH1299(Abbott Laboratoriesが所有する特許品の細胞株)細胞を増殖させた。細胞は全て、5%CO2の環境中、37℃にて維持した。pcDNA6/TR(Invitrogen Corp.、Carlsbad,CA 92008)を用いてD54−MG親細胞株をトランスフェクトし、ブラスチシジン10μg/mLを用いて選択することにより、D54−MG−tetR細胞株を樹立した。
【0077】
d.分子クローニング
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、ヒトU6プロモーターを合成した。PCR反応は全て、次のプライマーを用いて、Advantage2 PCRキット(BD Bioscience Clontech,Palo Alto,CA)により行った:
【0078】
【化1】
【0079】
プライマーU6_1、U6_2、U6_3、U6_4、U6_5及びU6_6を用いてアセンブリした後、U6_5’PCR(gatcgaattccaggcaaaacgcaccacgtg)(配列番号25)及びU6_3’PCR(tctagaagcttggtgtttcgtcctttccac)(配列番号26)のプライマーペアを用いて、全長U6プロモーターを増幅した。増幅されたPCR断片を、BluescriptII(SK+)のEcoRI及びHindIII部位にクローニングしして、pU6を作製した。
【0080】
テトラサイクリン制御U6プロモーター変異体pU6_O1、pU6_O2、pU6_O1O2_1、pU6_O1O2_2、pU6_O1O2_3、pU6_O1O2_4、pU6_O1O2_5、pU6_O1O2_6及びpU6_2O2は全て、U6プロモーターのPCR修飾により作製した。U6_5’PCRを5’プライマーとして用いて、次のプライマーをそれぞれ3’プライマーとして用いた:
【0081】
【化2】
【0082】
簡潔に述べると、鋳型としてpU6を、プライマーとしてそれぞれU6_5’PCR及びO1rev又はpU6_O2を用いて、PCRによりpU6_O1及びU6_O2を作製した。テトラサイクリン制御U6プロモーター変異体pU6_O1O2_1、pU6_O1O2_2、pU6_O1O2_3及びpU6_O1O2_4は全て、鋳型としてpU6_01を、5’プライマーとしてU6_5’PCRを、3’プライマーとしてそれぞれO1O2_l、O1O2_2、O1O2_3、又はO1O2_4を用いて、PCRにより作製した。2つのPCR段階によりpU6_0102_5及びpU6_0102_6を作製した。第一の段階において、pU6_01を鋳型として使用し、プライマーペアU6_5’PCR及びO1O2_5又はU6_5’PCR及びO1O2_6をそれぞれプライマーとして用いた。第二の段階において、第一の段階からのPCR産物をそれぞれ鋳型として使用し、U6_5’PCR及びO1O2_revをプライマーとして用いた。pU6を鋳型として、U6_5’PCR及び2O2をプライマーとして用いて、PCRにより2個のO2タイプtetオペレーターを有するU6プロモーター変異体、pU6_2O2を作製した。
【0083】
shRNA標的ルシフェラーゼ又はHIF−1αを発現するU6プロモーター変異体を、U6_luc、O1_luc、O2_luc、O1O2_luc1、O1O2_luc2、O1O2_luc3、O1O2_luc4、O1O2_luc5、O1O2_luc6、2O2_luc及び2O2_Hif1と名付けた。プライマー、U6_5’PCR及び、O1O2_luc5及びO1O2_luc6の両方を作製するためにプライマーO1O2_luc_revを使用することを除き、次の3’プライマーそれぞれを用いて、各プロモーター変異体からPCRによってこれらの構築物を作製した。次に、PCR断片をpBluescript II(SK+)のEcoRI及びHindIII部位にクローニングした。
【0084】
【化3】
【0085】
e.転写活性及びU6プロモーター変異体のテトラサイクリン応答
shRNAを発現するためにU6プロモーター変異体それぞれを使用するプラスミドをU6_luc、O1_luc、O1O2_luc1、O1O2_luc2、O1O2_luc3、O1O2_luc4、O1O2_luc5及びO1O2_luc6と名付けた。これらのプラスミドのそれぞれ(0.008μg)又は対照ベクター(対照ベクターはpU6ベクターと同一であるが、ルシフェラーゼに対するshRNAを含有しない)を、1μg pGL3−対照及び0.5μg pRL−TKとともに共トランスフェクトした(pGL3−対照及びpRL−TKプラスミドそれぞれが、ホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼを発現する。ホタルルシフェラーゼを阻害するようにこれらの構築物それぞれにおけるshRNAを設計した。正規化を行うためにウミシイタケルシフェラーゼを使用した。)。Lipofectamine2000(Invitrogen、Carlsbad,CA)を用いて、製造者推奨のプロトコールに従い、トランスフェクトを行った。
【0086】
トランスフェクト72時間後に、トランスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定した。U6_luc、O1_luc、O1O2_3、O1O2_4、O1O2_luc5、O1O2_luc6(それぞれ0.2μg)及び対照プラスミドも、1μg pGL3−対照、0.5μg pRL−TK及び1μg pcDNA6/TRとともに、個々に共トランスフェクトした。さらに、1μg pGL3−対照、0.5μg pRL−TK及び1μg pcDNA6/TRとともに、対照プラスミド、U6_luc、O1_luc、O2_luc及び2O2_luc(それぞれ0.2μg)を個々に共トランスフェクトした。ドキシサイクリン処理のために、トランスフェクト24時間後、ドキシサイクリン1μg/mLを含有する培地へと細胞の培地を交換した。ドキシサイクリンによる誘導から48時間後、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0087】
f.ルシフェラーゼ shRNAを発現する安定的細胞株作製における、tetO1及び2O2発現系の比較
安定的に組み込まれたO1_luc(O1_luc1からO1_luc4)、2O2_luc(2O2_luc1から2O2_luc7)又は2O2ベクター(対照)を有するD54−MG−tetR細胞に対して、1μg pGL3−対照及び0.5μg pRL−TKを用いてトランスフェクトを行った。ドキシサイクリン処理のために、トランスフェクト24時間後、ドキシサイクリン1μg/mLを含有する培地へと細胞の培地を交換した。ドキシサイクリンによる誘導から48時間後、ルシフェラーゼ活性を測定した。1μg/mL ドキシサイクリンを用いて48時間処理した後、細胞を溶解させ、抗tetR抗体を用いてウェスタンブロッティングにより分析した。同じブロットから結合物を剥がし、抗アクチン抗体を用いて免疫ブロットを行い、各レーンに試料が同じようにローディングされていることを示した。
【0088】
g.Hif−1 shRNAを発現する安定的細胞株作製における、tetO1及び2O2発現系の比較
組み込まれたO1_Hif1カセット又は2O2_Hif1カセットを有するD54−MG−TetR細胞株を1μg/mLドキシサイクリンで48時間処理し、次いで、100μMデスフェリオキサミン(DFO)で6時間処理した。1xLaemmli試料緩衝液で細胞を溶解させ、Hif−1αに対する抗体(1:500)を用いてウェスタンブロッティングにより分析した。
【0089】
h.結果
本発明者らは、最初に、転写活性を無効にすることなくU6プロモーターへと2個のtetオペレーターを遺伝子操作し得るか否かをを調べた。PSEとTATAボックスとの間でO1タイプtetオペレーターを最初に操作し、Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)で報告されたものと同一であるO1タイプU6プロモーターを作製した(図1、O1参照)。次に、O1タイププロモーターの一部をO2タイプtetオペレーターで置換することにより、一群の、2個のtetオペレーターを有する改変ヒトU6プロモーターを作製した(図1参照)。各プロモーターがルシフェラーゼを標的とするshRNAを発現し、レポーター活性を阻害する能力により、改変ヒトU6プロモーターの転写活性を評価した。野生型U6プロモーターを利用してルシフェラーゼshRNAの発現を駆動するU6_lucを用いた用量反応実験に基づき、レポーター活性の80%阻害を示すshRNAプラスミド(0.008μg)の量を、改変U6プロモーターにより示される転写活性の評価のために選択した。阻害の程度は、O1及びO2タイプtetオペレーターの両方を含有するU6誘導体を用いてトランスフェクトした細胞において様々であった。O1_luc、O1O2_luc3、O1O2_luc4、O1O2_luc5及びO1O2_luc6を用いてトランスフェクトした細胞において、ルシフェラーゼ活性に対する同様のレベルの阻害が観察され、このことから、これらの位置におけるO1タイププロモーターへのさらなるO2タイプtetオペレーターの導入が、転写活性において限界効果しか持たないことが示唆される(図2A、O1O2_3、O1O2_4、O1O2_5及びO1O2_6を参照)。
【0090】
次に、活性のあるU6プロモーター誘導体の誘導剤ドキシサイクリンに対する応答について調べた。ドキシサイクリンの有無にかかわらず、O1_luc、O1O2_luc5及びO1O2_luc6を用いてトランスフェクトを行った細胞において、ルシフェラーゼ活性の強い阻害が観察され、このことから、これらの実験条件下でこれらのプロモーターが非常に漏出性が高いことが示唆される(図2B、O1、O1O2_luc5及びO1O2_luc6参照)。対照的に、O1O2_luc3及びO1O2_luc4を用いてトランスフェクトを行った細胞では、ドキシサイクリン非存在下よりもドキシサイクリン存在下でルシフェラーゼ活性が非常に低くなった。しかしながら、ドキシサイクリンの非存在下でさえも、O1O2_luc3及びO1O2_luc4をトランスフェクトした細胞では、対照ベクターでトランスフェクトした細胞と比較して、ルシフェラーゼ活性は>50%低く(図2B、O1O2_3及びO1O2_4を参照)、このことから、これらのプロモーターがO1タイププロモーターと比較して、制御が向上したにもかかわらず、まだ非常に漏出性が高いことが示唆される。
【0091】
誘導系をさらに向上させるために、O2タイプtetオペレーターを導入して、O1O2_3においてO1タイプtetオペレーターを置換し、2O2タイププロモーターを作製した(図1、2O2参照)。O2タイプtetオペレーターは、O1タイプtetオペレーターよりも、tetRに対して強い結合親和性を有するので(Hillen,W.ら、Annu.Rev.,Microbiol,48:345−69(1994))、発明者らは、O1O2_3タイププロモーターよりも、2O2タイププロモーターに固く結合し、その結果、プロモーターの基礎転写活性が低下すると考えた。ドキシサイクリン非存在下では、O1O2_luc3は、対照プラスミドと比較して、ルシフェラーゼ活性の>70%の低下を引き起こした。同じ条件下では、2O2_lucの場合、ルシフェラーゼ活性の阻害はわずか30%にすぎず(図2C参照)、このことから、2O2プロモーターは実際に、O1O2_3プロモーターと比較して基礎活性が低いことが示された。その一方、O2_lucはルシフェラーゼ活性を約85%低下させ、このことから、ドキシサイクリン非存在下でshRNA発現を厳重に調節するためには、2個のO2タイプtetオペレーターが同時に必要とされることが示唆される(図2C参照)。ドキシサイクリンの存在下では、O1O2_luc3及び2O2_lucの両方がルシフェラーゼ活性を80%超阻害し、このことから、2O2及びO1O2_3タイププロモーターが誘導において同様の活性を有することが示唆される(図2C参照)。これらの結果から、転写活性を顕著に犠牲にすることなく、U6プロモーターに2個のtetオペレーターを導入できることが分かった。その一方、TATAボックスにフランキングする2個のO2タイプtetオペレーターによれば、得られたU6プロモーター変異体、2O2は、単一のtetオペレーター(O1又はO2)又はO1及びO2タイプtetオペレーターの組み合わせを有するU6プロモーター変異体と比較して、最も優れたドキシサイクリン応答を示した。
【0092】
染色体への組み込み後、2O2プロモーターがドキシサイクリンに対する応答能を維持しているか否かを調べるために、発明者らは、市販のtetR発現細胞株、HeLaTREx(Invitrogen Corp.、Carlsbad,CA 92008)を用いて、ヒトHif1α(2O2_Hif1)を標的とするshRNAに連結された2O2プロモーターを有する安定的クローンを樹立した。2O2_Hif1カセットを有する5種類のクローンの中で、2種類のクローンにおいて誘導時のHif1αタンパク質が90%超低下した(図3A、Hif1−6及びHif1−7参照)。これらの結果から、染色体への組み込み後、2O2プロモーターがそのドキシサイクリン応答性を維持することが分かった。
【0093】
最もよく制御された2O2_Hif1クローン(Hif1−7)を用いて、発明者らは、さらに、2O2発現系のドキシサイクリン誘導の時間及び用量依存性の特徴を調べた。誘導から12時間という早い段階でHif1αタンパク質の顕著な低下が観察され、ドキシサイクリン処理から24時間後、Hif−1タンパク質の90%超の阻害が観察された。さらに長く誘導しても、Hif1αタンパク質のより完全な阻害が導かれなかった(図3B参照)。用量反応実験において、2O2系の最大誘導に必要なドキシサイクリン濃度を調べた。ドキシサイクリン0.1ng/mLの存在下でHif−1タンパク質の90%超の阻害が観察され、ドキシサイクリン10ng/mLの存在下でHif1αタンパク質の阻害が最大となった(図3C参照)。これらの結果から、ドキシサイクリン誘導に対する2O2系の迅速な応答及び極めて強い感受性が明らかとなる。
【0094】
制御された標的ノックダウンのためのpoly III依存性誘導性発現系の使用は当分野で公知である(van de Wetering,M.ら、EMBO Rep.,4:609−615(2003)、Matskura,S.,ら、Nucleic Acid Res.,31:e77(2003)及びCzauderna,F.ら、Nucleic Acids Res.,31:e127(2003)を参照のこと)。これらの報告された観察とは対照的に、本発明者らは、最初の研究において、O1及びO2プロモーターの深刻な漏出性を観察した(図2C、O1及びO2を参照)。文献における系において観察された漏出性が、これらの系を用いた安定的な細胞株の作製能に負の影響を有するか否かを調べるために、発明者らは、O1及び2O2系の両方を用いて誘導性細胞株作製の成功率を直接比較した。tetR発現レベルが高いD54−MG細胞株を最初に樹立し、ハイグロマイシン耐性遺伝子を用いて、ルシフェラーゼ(O1_luc及び2O2_luc)又はヒトHif1α(O1_Hif1及び2O2_Hif1)を標的とするshRNA発現を駆動するために、O1又は2O2プロモーターを利用するプラスミドをこの細胞株にトランスフェクトした。薬物耐性クローンを選択し、PCRで分析して誘導性shRNA発現カセットを担うクローンを同定した。発明者らは、PCRにより分析した際に、安定に組み込まれたO1_lucを有する4種類のクローン及び安定に組み込まれた2O2_lucカセットを有する7種類のクローンを得た。全クローンが同様のレベルのtetR発現を示した(図4B参照)。これらのクローンのドキシサイクリン誘導に対する応答性を調べた。4種類のO1_lucクローンの中で、顕著なドキシサイクリン依存性のルシフェラーゼ活性低下を示すものはなかった(図4A、O1_luc1からO1_luc4を参照)。興味深いことに、4種類のO1_lucクローンのうち3種類が、ドキシサイクリンの有無に関わらず、ルシフェラーゼ活性の構成的な阻害を示し、このことから、O1系の激しい漏出性が示される(図4A、O1_luc1、O1_luc2及びO1_luc4を参照)。対照的に、7種類の2O2_lucクローンの中で、2種類のクローンが、ルシフェラーゼ活性の明らかなドキシサイクリン依存性阻害を示し(図4A、2O2_luc2、2O2_luc4を参照)、3種類のクローンが、中程度の、ルシフェラーゼ活性のドキシサイクリン依存性阻害を示した(図4A、2O2_luc1、2O2_luc5及び2O2_luc7を参照)。クローンO1_3、2O2_3及び2O2_6に対するshRNA発現カセットを染色体の転写不活性部位に挿入することができ、その結果、ドキシサイクリンの有無に関わらず、ルシフェラーゼ活性は阻害されなかった。
【0095】
O1 Hif1クローン及び2O2_Hif1クローンからも同様の結果が得られた。分析した10種類のO1_Hif1クローンの中で、ドキシサイクリン処理時にHif1αタンパク質の明らかな低下を示したものはなかった(図4C、上参照)。一方、11種類の2O2_Hif1クローンのうち2種類が、ドキシサイクリン処理時にHif1αタンパク質の顕著な低下を示した(図4C、下、クローン5及び11参照)。
【実施例2】
【0096】
ドキシサイクリン調節下でHif1αをノックダウンする癌細胞株の調製
Hif1阻害の治療効果の可能性を評価するために、発明者らは、ドキシサイクリン調節下でHif1αに対するshRNAを発現するD54−MG親細胞から安定的な細胞株を樹立した。Hif1αに対する一群の8種類のshRNAにおいて、標的をノックダウンする能力について最初にスクリーニングし(データは示さない)、Hif1αノックダウン細胞株の作製のために最良のshRNAを選択した。Hif1α siRNAの発現を駆動するために、2O2プロモーター、shRNAの発現を厳重に制御する改変U6プロモーター(Xiaoyu Lin、印刷中)を選択した。作製された安定的なクローンは、ドキシサイクリン誘導時にHif1αをノックダウンする能力には多様性があり、おそらくこれは、shRNA発現における様々な組み込み部位の影響によるものであろう(図5A、及びデータは示さない)。D54_Luc、ドキシサイクリン誘導時にルシフェラーゼに対するshRNAを発現する対照細胞株と比較して、D54_Hifクローンは全て、ドキシサイクリン非存在下で同様のレベルのHif1αタンパク質を産生し、このことから、2O2発現系が非常に厳重に制御されることが示される(図5A)。エノラーゼプロモーターからのHREを含有するHif1レポーターを用いて、誘導後に様々な程度のHif1αノックダウンを示す複数のクローンのHif1依存性転写活性についてさらに分析した。驚くべきことに、Hif1αタンパク質の80%の低下は、レポーター活性において限界効果しかない(図5B、D54_Hif18)。レポーター活性における阻害の欠失はHif2αのリダンダント機能によるものではなく、それは、これらの細胞が辛うじて検出可能なHif2αを有し、Hif2αに対する強力なsiRNAを用いてこれらの細胞をトランスフェクトすることにより、レポーター活性のさらなる阻害が行われなくなるからである(データは示さない)。これらの結果から、非常に低レベルのHif1αタンパク質でさえHif1−依存性下流因子の転写を活性化するのに十分であり、Hif1αの場合、Hif1経路を阻害するために非常に高レベルのノックダウンが必要であることが分かった。
【0097】
Hif1αタンパク質の完全なノックダウンを示した細胞において、ドキシサイクリン処理により、レポーター活性の80%低下が観察された(図5B、D54_Hif25)。Hif2αに対する強力なsiRNAを用いてこれらの細胞をトランスフェクトした結果、レポーター活性がさらに阻害されず(データは示さない)、このことから、Hif1αがこれらの細胞において主要な形態であることが示される。QPCR分析から、D54_Hif25細胞におけるドキシサイクリン処理の結果、PGK1及びLDHなどのHif1下流因子の転写が低下したことが示された(図5C、D54_Hif25)。対照として、D54_Luc細胞も平行して分析した。D54_Luc細胞におけるドキシサイクリンにより、ルシフェラーゼレポーターの低下が起こった(図5B、D54_Luc)が、Hif1αタンパク質のノックダウン(図5A、D54_Luc)又はHif1標的遺伝子の阻害(図5C、D54_Luc)は起こらなかった。これらの結果から、Hif1αに対するshRNAの発現の結果、Hif1依存性転写の障害が起こり、この阻害効果は、shRNA発現又はドキシサイクリン処理による非特異的効果ではなく、むしろ、shRNAによるHif1αの特異的阻害によるものであることが分かった。
【実施例3】
【0098】
異種移植腫瘍におけるHif1αのドキシサイクリン依存性阻害
標的ノックダウンにより異種移植腫瘍を誘導することができるか否かを調べるために、D54_Hif25細胞をSCIDマウスに対して皮下注入した。腫瘍が200mm3の平均サイズに到達した後、1mg/mLドキシサイクリンを含有する飲用水をマウスに与えてHif1α shRNAの発現を誘導した。ドキシサイクリンで3、6、9又は12日間マウスを処理した後、腫瘍を回収し、QPCRにより分析して、Hif1αメッセンジャーレベルを求めた。ドキシサイクリンを3日間与えたマウス由来の腫瘍において、Hif1α mRNAの80%低下が観察され、全12日間の処理期間にわたり、ノックダウンが維持された(図6A)。免疫組織化学による腫瘍試料の試験から、第3日以降からのHif1αタンパク質が明らかに減少していることが示された(データは示さない)。
【0099】
標的ノックダウンを誘導する能力が、長期ドキシサイクリン処理にわたり又は腫瘍が非常に大きいサイズに到達した際に障害されるか否かを調べるために、ドキシサイクリンで45日間処理したマウス由来の腫瘍におけるHif1αのノックダウンをさらに分析した。処理終了時の平均腫瘍サイズは2000mm3であった。3日間のドキシサイクリン処理を行ったマウス由来の腫瘍と比較して、これらの腫瘍において比肩し得る程度のHif1αノックダウンが観察された(図6B)。免疫組織化学分析からもまた、Hif1αタンパク質がこれらの腫瘍において辛うじて検出可能なレベルに低下することが分かった(図6C)。これらの結果から、腫瘍が大きくなった場合でも、標的発現の強い抑制が長期にわたり維持され得ることが分かった。対照として、D54_Luc細胞の皮下注入も行い、異種移植腫瘍を生成させ、これらの腫瘍においてもHif1αノックダウンを調べた。ドキシサイクリン誘導後、D54_Luc腫瘍においてHif1α mRNA又はタンパク質の低下は観察されず(図6A、6B及び6C)、このことから、D54−Hif25腫瘍におけるHif1αの低下は、Hif1α shRNA発現に特異的によるものであることが示唆される。
【実施例4】
【0100】
D54−MG腫瘍増殖に対するsiRNAを介したHif1αの阻害の効果
樹立された腫瘍において、Hif1αを阻害する治療効果の可能性を評価するために、D54_Hif25又はD54_Luc(Luc)細胞を用いて、異種移植腫瘍を作製し、腫瘍が190mm3の平均サイズに達したときに、Hif1αノックダウンを開始した。Hif1αノックダウンの結果、腫瘍増殖が2相になった。最初の相において(図3A、第1日から第11日)、腫瘍は増殖を続けたが、機能的Hif1αを有する腫瘍と比較して、僅かに増殖速度は遅かった。第二の相において、腫瘍は、小さいが再生可能な一時的退化を示し、Hif1αなしで増殖を再開した(図5A、第11日及びそれ以降)。対照群と比較して、ドキシサイクリン処理群において全体的な腫瘍増殖がより遅かったにもかかわらず、処理群の腫瘍は全て最終的に大きくなり、その結果、動物は死亡した(図7A)。D54_Luc細胞から作製した異種移植腫瘍は、飲用水中のドキシサイクリンの有無に関わらず同じ速度で増殖し、このことから、Hif1α shRNAを発現する腫瘍の増殖が遅いという表現型は、Hif1αノックダウンの結果であることが示される(図7A)。ドキシサイクリン処理時にHif1α shRNAを発現する2種類の独立のクローンを用いて腫瘍増殖におけるHif1αノックダウンの同様の阻害効果が観察され、これにより、観察された効果は一定であり、異常なクローンによるものでないことが分かった(データは示さない)。これらの結果から、樹立された腫瘍におけるHif1αの欠失により、腫瘍退化を導く一時的な危機が起こることが示唆される。しかしながら、腫瘍はHif1αの欠失に適応することができ、より遅い速度で増殖を続けることができる。
【0101】
インビトロでのドキシサイクリン処理時にHif1αタンパク質の80%ノックダウンを示したいくつかのクローンが利用できるため、Hif1αの部分的阻害がインビボでの治療的有用性を生み出すのに十分であるか否かを調べることができた。D54_Hif18細胞を用いて異種移植腫瘍を生成させ、平均腫瘍サイズが150mm3になった時点でHif1αノックダウンを開始した。インビトロにおいてHif1−依存性転写の顕著な阻害がないことと一致して(図5B、D54_Hif18)、ドキシサイクリン処理により、これらの腫瘍では腫瘍増殖に対して十分な効果を生み出すことができなかった(図7B)。これらの結果から、インビボで腫瘍増殖に負の影響を与えるためには、Hif1αタンパク質レベルでの高度の阻害が必要であることが示唆される。
【実施例5】
【0102】
チロシナーゼノックダウンマウスの作製
a.前核注入を用いたノックダウンマウスの作製
前核注入は、トランスジェニック動物を作製するためのよく樹立された方法である。このアプローチにおいて、DNA断片(トランス遺伝子)を受精卵の前核段階に注入し、注入した卵を偽妊娠動物に移植する。通常の実験においては、50から80個の卵に注入し、注入した卵の半分が生存して新生仔を生成し、新生仔の5%から20%がトランス遺伝子を含有する。
【0103】
ノックダウンする標的として、チロシナーゼを選択した。チロシナーゼはメラニン産生に重要な酵素であり、マウスでのチロシナーゼノックダウンにより、明確な体毛の色の変化が生じる。
【0104】
b.チロシナーゼノックダウンマウス作製のための、2O2プロモーターにより駆動されるトランス遺伝子及び前核注入の使用
改変poly III依存性プロモーター(例えば2O2プロモーターなど)がノックダウン動物の作製に適切であるか否かを調べるために、チロシナーゼに対する2つの最良のshRNAを発現させるよう2O2プロモーターを使用するトランス遺伝子を調製した(2O2−Tyr731(配列番号46)及び2O2−Tyr338(配列番号47))。これらのトランス遺伝子を以下に示す。太字はshRNA配列を表し、下線のある文字はプロモーター配列を表す。tetリプレッサー(tetR)を発現しないマウスからの胚を用いて、第一セットの注入を行った。tetR発現のないマウスにおいて、2O2プロモーターは構成的に活性であると予想される。
【0105】
2O2プロモーターにより駆動されるトランス遺伝子:
【0106】
【化4】
【0107】
2O2−Tyr731トランス遺伝子(配列番号46)を注入した胚から生まれた20匹の仔の中で、3匹の仔が安定的に組み込まれたトランス遺伝子を有しており、図8AからBで示すように、様々な程度の体毛の色の変化を示した。図8Aは、野生型マウスの濃い体毛の色と比較して、初代マウスの1匹のFOの体毛の色が薄いことを示す。トランス遺伝子特異的プライマーを用いて、PCRによりマウスの遺伝子型を調べた。図8Bは、3匹の仔が他のF1仔の濃い色と比較して白く、2O2−Tyr731トランス遺伝子(配列番号46)に対して陽性であることを示す。体毛の色が薄い初代マウスからのこれらのF1トランスジェニック子孫は、siRNA介在抑制効果が世代を通じて受け継がれ得ることを示す。
【0108】
2O2−Tyr338トランス遺伝子(配列番号47)を注入した胚から、40匹の仔が生まれ、2個の胚が死んだ。40匹の新生仔のうち、トランス遺伝子を有するものはなかったが、死んだ両胚は2O2−Tyr338トランス遺伝子(配列番号47)を有しており、このことから、2O2−Tyr338トランス遺伝子(配列番号47)により、Tyr338shRNAの標的外れの効果による、胚の致死が起こることが示唆される。
【0109】
これらの結果から、2O2プロモーターがノックダウン動物の作製によく適していることが示唆される。
【0110】
2O2系を用いて条件付きのノックダウン動物を作製するための2つの平行するアプローチを利用することができる。第一のアプローチは、1個のトランス遺伝子において、2O2−shRNAカセットをCAGGS−tetRカセットとともに共デリバリーすることを含む。ニワトリβアクチンプロモーターは、遍在性の遺伝子発現のための、特徴がよく分かっているプロモーターである。CAGGS−tetRカセットは、ニワトリβアクチンプロモーターを利用してtetRの発現を駆動し、その結果、マウス組織の大部分でtetRの発現が起こる。このアプローチを使用して、短時間で条件つきノックダウン動物を作製することができる。
【0111】
第二のアプローチは、遍在性なtetR発現のあるマウス系列の作製を含む。次に、全ての条件付きノックダウンプロジェクトに対してこのマウス系列を親系列として使用して、標的をより均一に制御することができる。ROSA26遺伝子座の遺伝子が遍在性に発現されることが分かっている。従って、ROSA26遺伝子座においてtetR発現カセットを破壊して、遍在性tetR発現のあるマウス系列を得る。
【0112】
本発明が目的を実行し、述べた結果及び長所ならびにそこに固有であるものを得るように構成されることを当業者は容易に認めるであろう。本明細書中に記載の、分子複合体及び方法、手段、処理、分子、具体的化合物は、目下、好ましい実施形態の代表であり、典型であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書中で開示する本発明に対して、様々な置換及び変形がなされ得ることは、当業者にとって容易に認められよう。
【0113】
明細書中で述べた全ての特許及び刊行物は、本発明が関連する分野の当業者のレベルの指標である。全ての特許及び刊行物は、それぞれの個々の刊行物が具体的に及び個別に参考として援用されていることが示されるように、同程度に本明細書中に参考として援用されている。
【0114】
本明細書中で具体的に開示しない任意の要素(単数又は複数)、制限(単数又は複数)がない状態で、説明として本明細書中で適切に記載される本発明を実施することができる。従って、例えば、本明細書中で各例において、「含む(comprising)」、「原則的に〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語の何れも、他の2つの用語の何れかで置き換え得る。使用されている用語及び表現は、説明であって制限ではない用語として使用され、かかる用語及び表現の使用において、示され、述べられるものの任意の同等物又はそれらの一部を除外する意図はないが、主張される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることを認識されたい。従って、好ましい実施形態により本発明を具体的に開示するが、本明細書中で開示される概念の、任意の特性、変更及び変化が当業者により用いられ得ること、及び、かかる変更及び変化が添付の請求項の範囲により定義されるように本発明の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。
【0115】
さらに、本発明の特性又は態様をマーカッシュグループの観点で述べる場合、本発明が、マーカッシュグループのあらゆる個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点で、それによっても述べられることを当業者は理解するであろう。例えば、Xが臭素、塩素及びヨウ素からなる群から選択される場合、臭素であるXに対する主張及び臭素及び塩素であるXに対する主張が十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、U6プロモーター変異型の配列アラインメントを示す。U6は野生型ヒトU6プロモーター(配列番号6)である。O1(配列番号7)又はO2(配列番号8)は、O1及びO2タイプのヒトU6プロモーターである。O1O2_1(配列番号9)、O1O2_2(配列番号10)、O1O2_3(配列番号11)、O1O2_4(配列番号12)、O1O2_5(配列番号13)及びO1O2_6(配列番号14)は、O1及びO2両方のタイプのtetオペレーターを伴うU6プロモーター変異型である。2O2(配列番号15)は、2個のO2タイプtetオペレーターを伴うU6プロモーター変異型である。下線を引いた斜字体配列は、O2タイプtetオペレーターを表す。下線を引いた斜字体でない配列は、O1タイプtetオペレーターを表す。
【図2A】図2Aは、U6プロモーター変異型の転写活性及びテトラサイクリン応答を示す。
【図2B】図2Bは、U6プロモーター変異型の転写活性及びテトラサイクリン応答を示す。
【図2C】図2Cは、U6プロモーター変異型の転写活性及びテトラサイクリン応答を示す。
【図3A】図3Aは、2O2発現系を用いた、安定的細胞株における内在遺伝子のテトラサイクリン依存性ノックダウンを示す。
【図3B】図3Bは、2O2発現系を用いた、安定的細胞株における内在遺伝子のテトラサイクリン依存性ノックダウンを示す。
【図3C】図3Cは、2O2発現系を用いた、安定的細胞株における内在遺伝子のテトラサイクリン依存性ノックダウンを示す。
【図4A】図4Aは、安定的細胞株作製における、O1及び2O2発現系の比較を示す。
【図4B】図4Bは、安定的細胞株作製における、O1及び2O2発現系の比較を示す。
【図4C】図4Cは、安定的細胞株作製における、O1及び2O2発現系の比較を示す。
【図5A】図5Aは、D54_Luc、D54_Hif25及びD54_Hif18細胞における、Hif1αタンパク質レベルを示す。1μg/mLドキシサイクリン存在下又は非存在下で細胞をインキュベートした。36時間後、細胞を非処理とするか(N)又は、さらに16時間低酸素処理(H)した。細胞を溶解し、Hif1α(上のパネル)又はHif1β(下のパネル)に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングにより分析した。
【図5B】図5Bは、D54_Luc、D54_Hif25及びD54_Hif18細胞における、Hif1レポーター(1xHRE)又は構成的レポーター(pGL3)の活性を示す。1μg/mLドキシサイクリン存在下又は非存在下でpGL3−対照/pRL−TK(左パネル)又は1xHRE/pRL−TKプラスミド(右パネル)の何れかを用いて細胞に対してトランスフェクションを行った。トランスフェクションから36時間後、細胞を低酸素処理した。低酸素処理から16時間後、ルシフェラーゼ活性を調べた。
【図5C】図5Cは、D54_Luc及びD54_Hif25細胞における、Hif1標的遺伝子、PGK1及びLDHのmRNAレベルを示す。1μg/mLドキシサイクリン存在下又は非存在下で細胞をインキュベートした。36時間後、細胞を非処理とするか(N)又は、さらに16時間低酸素処理(H)した。トータルRNAを調製し、指定の遺伝子のレベルを分析するために定量的PCRにおいて使用した。
【図6A】図6Aは、ドキシサイクリン処理した、3種類のD54_Hif25(Hif)又はD54_Luc(Luc)由来の皮下腫瘍における、平均Hif1α mRNAレベル及び標準偏差(SD)を示す。200から300mm3の腫瘍を有するマウスに、3、6、9又は12日間、ドキシサイクリン(1mg/mL)を与えた。処置終了時に腫瘍を回収し、Hif1α mRNAレベルをQPCRにより測定した。Dox処置なしのマウスからの腫瘍を対照として使用した。
【図6B】図6Bは、45日間水(対照)又はドキシサイクリン(Dox)処理したマウスから切り出した4種類のD54_Hif25又はD54_Luc由来の腫瘍における、平均Hif1α mRNAレベルを示す。Hif1α mRNAレベルをQPCRにより測定した。
【図6C】図6Cは、B)からの同じ腫瘍試料の平均Hif1α発現レベル及び標準偏差を示す。IHCにより、及びAxio Vision4(Zeiss)を用いて定量して、Hif1α発現レベルを調べた。
【図7A】図7Aは、D54_Hif25(Hif25)又はD54_Luc(Luc)細胞を用いて15匹のマウスで生成した、及びドキシサイクリン処理及び非処理の、皮下腫瘍における平均腫瘍サイズ及び標準誤差(SE)を示す。腫瘍が190mm3の平均サイズに到達した後、腫瘍を有するマウスをランダム化し、2群に分けた。各群に対して、ドキシサイクリンを含有する(Dox)又は含有しない(対照)飲用水を与えた。マイクロキャリパーを用いて週に2回腫瘍サイズを測定した。
【図7B】図7Bは、D54_Hif25(Hif25)又はD54_Luc(Luc)細胞を用いてマウスで生成した、及びドキシサイクリン処理及び非処理の、8匹のマウスの皮下腫瘍の平均腫瘍サイズ及び標準誤差(SE)を示す。腫瘍が150mm3の平均サイズに到達した後、腫瘍を有するマウスをランダム化し、2群に分けた。各群に対して、ドキシサイクリンを含有する(Dox)又は含有しない(対照)飲用水を与えた。マイクロキャリパーを用いて週に2回腫瘍サイズを測定した。
【図8A】図8A及び8Bは、2O2−Tyr731トランス遺伝子を注入した胚から生まれたマウスを示し、これらは、野生型マウスと比較して、様々な程度の体毛の色の変化を示す。図8Aは、体毛の色が濃い野生型マウスと比較して、初代マウスのF0の体毛の色がより淡いことを示す。
【図8B】図8A及び8Bは、2O2−Tyr731トランス遺伝子を注入した胚から生まれたマウスを示し、これらは、野生型マウスと比較して、様々な程度の体毛の色の変化を示す。図8Bは、濃い色のF1仔と比較して白色である3匹の仔を示す。白色の仔は、2O2−Tyr731トランス遺伝子(配列番号48)に関して陽性である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、真核細胞及び非ヒト動物での標的遺伝子の発現調節での使用のための誘導性発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、2本鎖RNAを用いて遺伝子発現を抑制するためのプロセスである。RNAi機構は、植物、無脊椎動物及び脊椎動物で保存されている。その単純性及び特異性により、RNAiは、様々なモデル生物において遺伝子機能を研究するための好ましい方法となっている(例えば、Hannon,G.J.,Nature,418:244−251(2002)、Paddisonら、Cancer Cell,2:17−23(2002)、Sharp,P.A.,Genes Dev.,15:485−490(2001)、Tuschl,T.,Chembiochem.,2:239−245(2001)及びZamore,P.D.,Nat.Struct.Biol,8:746−750(2001))。化学的に合成した小分子干渉RNA(siRNA)は、細胞にトランスフェクトされると関心のある遺伝子を効率的に抑制することができるが、siRNAの使用は、時間経過によりsiRNAが分解されるか又は細胞分裂後に希釈されるため、短期間の実験に限られている。この制限を乗り越えるために、19から20bpのステムを含有し、4から9ヌクレオチドのループサイズである小分子ヘアピン型RNA(shRNA)を発現するベクターを利用した系が開発された。「dicer(ダイサー)」として知られる酵素により、shRNAがsiRNAへとプロセシングされ、ヒト細胞で発現される際に特異的な遺伝子の抑制を示す(例えば、Brummelkamp,T.R.ら、Science,296:550−553(2002)、Miyagishi,M.ら、Nat.Biotechnol,20:497−500(2002)、Paddision,P.J.ら、Genes Dev.,16:948−958(2002)、Paul,C.P.ら、Nat.Biotechnol,20:505−508(2002)及びSui,G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci USA、99:5515−5520(2002))。さらに、shRNA発現系を染色体に組み込み、安定な細胞株を樹立するか、インビボ遺伝子機能研究のためにノックダウン動物を作製できることが分かった(Paddision,P.J.ら、Genes Dev.,16:948−958(2002)、Brummelkamp,T.R.,ら、Cancer Cell,2:243−247(2002)、Hemann,M.T.ら、Nat.Genet.,33:396−400(2003)、Tiscornia,G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:1844−1848(2003)、Barton,G.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14943−14945(2002)、Hasuwa,H.ら、FEBS Lett.,532:227−230(2002)、Kunath,T.,Nat.Biotechnol,21:559−561(2003)及びRubinson,D.A.ら、Nat.Genet.,33:401−406(2003))。
【0003】
RNAポリメラーゼIII依存性プロモーター配列は、shRNAの発現ために選択されることが多い。RNApolyIIにより産生されるmRNAとは異なり、polyIIIにより産生される転写産物は5’キャップ及び3’ポリAテールを持たず、それにより、ダイサー酵素によるshRNAからsiRNAへの効率的プロセシングが可能となる。shRNA発現系の開発により、細胞又は動物において安定な標的ノックダウンが可能となったが、polyIII依存性プロモーター配列の構成的活性がshRNA発現系の使用に様々な制限を与えている。例えば、重要な発生機能を有する遺伝子を標的とするshRNAの構成的発現は胚段階で致死をもたらし、成体動物での機能表現型喪失の研究が妨げられる。さらに、細胞又は動物において重要な機能を有する標的の構成的ノックダウンにより代償性反応が引き起こされることが多く、これにより、遺伝子抑制の真の帰結を変化させる可能性がある。従って、当分野において、細胞及び動物での基本的な遺伝子の機能表現型の喪失を偏らずに分析するために有用なshRNAの発現調節が必要とされている。
【0004】
テトラサイクリン応答性poly III依存性プロモーター配列を開発する試みが行われてきた。ヒトU6shRNAプロモーター配列の2つのタイプのテトラサイクリン−応答性誘導体が当分野で公知である(Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)を参照のこと)。テトラサイクリンO1(tetO1)タイプU6プロモーター配列において、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する1型テトラサイクリンオペレーター(tetオペレーター)を近位配列エレメント(PSE)とTATAボックスとの間に組み込んだ。テトラサイクリンO2(tetO2)タイプU6プロモーターにおいて、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有する2型tetオペレーターをTATAボックスと転写開始部位(TSS)との間に組み込んだ。TATAボックス及びPSEは両者とも、RNAポリメラーゼIIIによる転写開始に重要な役割を果たす。テトラサイクリンリプレッサー(tetR)をこれらの改変U6プロモーター配列にTATAボックス又はPSEに近接する位置で結合させることにより、核内小分子RNA(snRNA)活性化タンパク質複合体(SNAPc)のPSEへの結合が妨害され、続いて、転写開始が妨害されるということは理に適っている。tetO1及びtetO2の両方のタイプのプロモーター配列は、構成的にtetRを発現する細胞株においてテトラサイクリン依存性転写活性を示すことが分かっている。しかしながら、tetO1は、一時的トランスフェクション実験において、tetO2タイプのプロモーターと比較して、テトラサイクリン処理に対してより良い応答性を有していると思われる(Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)を参照のこと。)。tetO1又はtetO2タイプU6プロモーターを用いた、又は、tetO2タイプU6プロモーターと同様の設計を有するヒトH1 shRNAプロモーター誘導体を用いた、shRNAの調節発現もまた当分野で公知である(Matsukura,S.ら、Nucleic Acid Res.,31:e77(2003)及びCzauderna,F.ら、Nucleic Acids Res.,31:e127(2003)を参照のこと)。これらの系を用いて、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)、βカテニン及びP13キナーゼの誘導性ノックダウンを安定的細胞株において行った。文献中ではこれらのpoly III依存性プロモーター誘導体が厳重に制御されていると思われているが、本発明者らは、関心のあるポリヌクレオチド配列(ルシフェラーゼなど)を標的とするshRNAを発現させるためにtetO1プロモーター配列を使用した場合に、これらの発現系の重度の漏出性を観察した。任意の理論に縛られることを望まないが、発明者らは、U6プロモーターの1個の部位へのtetRの結合が、基本的なプロモーターの転写活性を完全にブロックするのに十分ではないようだと考えている。強力なshRNAを使用する場合、系の漏出性がわずかであれば、標的タンパク質の顕著な低下が起こり得る。厳しい制御は、全ての制御発現系に対して最も重要で困難な要求の1つである。関心のある標的によっては、標的レベルのわずかな揺らぎが、表現型の変化を引き起こすのに十分であり得る。
【0005】
ヒトU6 shRNAプロモーター配列の第三タイプのテトラサイクリン応答性誘導体もまた当分野で公知である。このプロモーター配列において、tetO1及びtetO2タイププロモーターの両方がU6プロモーターに組み込まれた(Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)を参照のこと。)。tetO1オペレーターをPSEとTATAボックスとの間に組み込み、tetO2オペレーターをTATAボックスとTSSとの間に組み込んだ。しかしながら、Ohkawaらは、tetO1及びtetO2の両方を含むことにより、結果として、U6プロモーター配列に関する転写活性が完全に失われることを報告した。
【0006】
その結果、現在知られている誘導性shRNA発現系に伴う可能性のある制限のために、当分野において、最小の基本的な転写活性を有する調節shRNA発現系が必要とされている。具体的に、誘導性ノックダウン細胞株及び非ヒト動物の作製の成功率を向上させるためにこのような発現系において使用できる、厳重に制御されるプロモーターが必要とされている。
【発明の開示】
【0007】
ある実施形態では、本発明は、RNA polIII依存性プロモーター配列に関する。プロモーター配列は、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターであり得る。本発明のプロモーター配列は、TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’にある近位配列エレメント(PSE)、TATAエレメントに対して3’にある転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター(第一のtetオペレーター)及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーター(第二のtetオペレーター)を含有する。ある態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの1つ又は両方の部分を形成する。第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置する。ある態様では、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの1つ又は両方の部分を形成する。
【0008】
第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、同一であるか、又は異なり得る。第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列が同一である場合、ポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。
【0009】
第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は互いに異なり得、ただし、第一のtetオペレーターがactctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のtetオペレーターは、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を持たない。第一のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、独立に、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。好ましくは、第一のtetオペレーターが、tccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のテトラサイクリンオペレーターは、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載のプロモーターを含有するベクターに関する。より具体的には、本発明のベクターは、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列と作動可能に連結された上述のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個を含有する。少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列は、DNA又はcDNAであり得る。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、上述のベクターの少なくとも1個を含有する真核細胞に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、トランスジェニック非ヒト動物に関する。トランスジェニック非ヒト動物の例は、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、霊長類(ヒトを除く。)及びモルモットである。本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、本明細書中に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個と作動可能に連結された、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子を含有する。関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生される。産生されるRNA分子は、小分子干渉RNA(siRNA)又は小分子ヘアピン型RNA(shRNA)であり得る。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、トランスジェニック非ヒト動物を作製する方法に関する。ある態様では、次の方法に従い、トランスジェニック非ヒト動物を作製することができる。この方法の第一段階は、トランス遺伝子を非ヒト動物の受精卵母細胞に導入することを含む。このトランス遺伝子は、本明細書中に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個と作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有する。少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生される。産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。この方法における次の段階は、受精卵母細胞を胚へと発生させることを含む。次の段階は、胚を偽妊娠雌非ヒト動物に移すことを含む。次の段階は、胚を出産まで発生させることを含む。次の段階は、関心のあるポリヌクレオチド配列を含有するトランスジェニック非ヒト動物を同定することを含む。
【0014】
別の態様では、トランスジェニック非ヒト動物は、次の方法に従い作製することができる。この方法の第一段階は、非ヒト動物の胚性幹細胞にトランス遺伝子を導入することを含む。このトランス遺伝子は、本明細書中に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列の少なくとも1個と作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含む。少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生される。産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。この方法における次の段階は、前記非ヒト胚性幹細胞を胚盤胞へと導入することを含む。この方法における次の段階は、得られた胚盤胞を偽妊娠雌非ヒト動物へと移植することを含む。この方法における次の段階は、この非ヒト動物にキメラ非ヒト動物を出産させることを含む。次の段階は、前記トランス遺伝子を含有するトランスジェニック非ヒト動物を作製するためにキメラ非ヒト動物を繁殖させることを含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、真核細胞において、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列の転写を誘導するための方法に関する。この方法では、転写を誘導する場合、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列により、真核細胞において、少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する少なくとも1個のRNA分子が産生される。この方法の第一の段階は、真核細胞にtetRタンパク質を発現させることを含む。真核細胞が提供されたら、次の段階は、少なくとも1個のベクターを用いて(本明細書中で既に述べたベクターの1つなど)、この細胞を形質転換又はトランスフェクションすることである。例えば、ベクターは、本明細書中に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列に作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有し得る。この方法の次の段階は、細胞を誘導剤と接触させることを含む。この誘導剤は、tetリプレッサータンパク質に結合し、関心のあるポリヌクレオチド配列をプロモーター配列により転写させる。ポリヌクレオチド配列の転写により、細胞において、少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する少なくとも1個のRNA分子が産生される。上述の方法で使用される誘導剤は、ドキシサイクリン、テトラサイクリン又はテトラサイクリン類似体であり得る。さらに、上述の方法で産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。
【0016】
場合によっては、上述の方法は、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含有する第二のベクターを用いて真核細胞を形質転換する段階をさらに含み得、ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、プロモーターの少なくとも1個のtetオペレーターに結合するtetリプレッサーをコードする。
【0017】
場合によっては、上記方法で使用される少なくとも1個のベクターは、関心のある第二のポリヌクレオチド配列をさらに含有し得る。ある態様では、この第二のポリヌクレオチド配列を第二のプロモーター配列に作動可能に連結でき、この第二のポリヌクレオチド配列は、プロモーターのtetオペレーターの少なくとも1個に結合するtetリプレッサータンパク質をコードし得る。
【0018】
第二の態様では、この第二のポリヌクレオチド配列は、関心のある第一のポリヌクレオチド配列とタンデム連結され得る。この第二の態様では、細胞を誘導剤と接触させる場合、誘導剤はtetリプレッサータンパク質に結合し、プロモーターにより、関心のある第一の及び第二のポリヌクレオチド配列それぞれの転写が引き起こされる。具体的に、第一のポリヌクレオチド配列の転写により、第一の標的遺伝子の発現を調節する第一のRNA分子が産生され、第二のポリヌクレオチド配列の転写により、第二の標的遺伝子の発現を調節する第二のRNA分子が産生される。
【0019】
本発明のある実施形態では、関心のあるポリヌクレオチド配列の少なくとも1個は、チロシナーゼをコードする。
【0020】
第三の態様では、少なくとも1個のベクターは、関心のある第一のポリヌクレオチド配列とタンデム連結された関心のある第二のポリヌクレオチド配列を含有するだけでなく、第二のプロモーター配列に作動可能に連結された第三のポリヌクレオチド配列も含有する。この第三のポリヌクレオチド配列は、プロモーターのtetオペレーターの少なくとも1個と結合するtetリプレッサータンパク質をコードする。この第三の態様では、細胞を誘導剤と接触させる場合、誘導剤はtetリプレッサータンパク質と結合し、プロモーター配列により、関心のある第一の及び第二のポリヌクレオチド配列それぞれの転写が引き起こされる。具体的に、第一のポリヌクレオチド配列の転写により、第一の標的遺伝子の発現を調節する第一のRNA分子が産生され、第二のポリヌクレオチド配列の転写により、第二の標的遺伝子の発現を調節する第二のRNA分子が産生される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
定義及び他の用語
本明細書中で使用する場合、「遺伝子」という用語は、プロモーター活性の結果、転写が行われるポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、特定のポリペプチドをコードするか、又はRNA分子をコードし得る。遺伝子は、1以上のイントロン及び/又はエクソン及び/又は1以上の制御及び/又は調節配列を含み得る。
【0022】
本明細書中で使用する場合、「誘導剤」という用語は、以下に限定されないが、テトラサイクリン、ドキシサイクリン又はテトラサイクリン類似体を含むtetリプレッサータンパク質に特異的に結合する任意の化合物を指す。
【0023】
本明細書中で使用する場合、「調節」又は「調節する」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される場合、上方制御(つまり、活性化又は刺激(例えば作動化する又は増強することによる))及び下方制御(つまり、阻害又は抑制(例えば、拮抗、低下又は阻害することによる))の両方を指す。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「非ヒト動物」という用語は、ヒトを除く全ての脊椎動物を含む。胚及び胎仔段階など、発生段階全ての個々の動物も含む。「トランスジェニック動物」は、標的化組換え又はマイクロインジェクション又は組換えウイルスを用いた感染によるものなど、細胞より小さいレベルでの慎重な遺伝子操作により、直接的又は間接的に、遺伝情報が変更されているか、遺伝情報を受容する1以上の細胞を含有する任意の動物である。
【0025】
マウスは、飼育しやすく、比較的安価であり繁殖させやすいことから、トランスジェニック動物モデルのために使用されることが多い。しかしながら、他の非ヒトトランスジェニック哺乳動物(以下に限定されないが、霊長類、マウス、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ウシ、ネコ、モルモット及びラットなど)もまた本発明に従い作製することができる。トランスジェニック動物はトランス遺伝子を有する動物であり、このトランス遺伝子は、次の世代に引き継がれる、導入され安定に組み込まれた、クローニングされた遺伝子である。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「作動可能に連結された」という用語は、並列を指し、このように述べられる成分は、それらの意図する様式でそれらが機能させることができる関係にある。例えば、関心のあるポリヌクレオチド配列は、関心のある導入ポリヌクレオチド配列の転写を指示する、又は転写及び翻訳を指示する、別のポリヌクレオチド配列に近接して位置し得る(つまり、例えば、関心のある導入配列によりコードされるポリペプチド又はポリヌクレオチドの産生を促進する)。プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているとみなされる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチド、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド何れかの重合形態を意味する。この用語は、分子の一次構造のみを指す。従って、この用語は、2本鎖及び1本鎖DNA、ならびに2本鎖及び1本鎖RNAを含む。ポリヌクレオチドの、メチル化又はキャッピングなどの修飾及び非修飾形態も含む。「ポリヌクレオチド」、「オリゴマー」、「オリゴヌクレオチド」及び「オリゴ」という用語は本明細書中で交換可能に使用される。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「関心のあるポリヌクレオチド配列」という用語は、RNA分子、例えば、以下に限定されないが、小分子干渉RNA(siRNA)もしくは小分子ヘアピン型RNA(shRNA)又は標的細胞中のタンパク質もしくはその他の分子を発現させることができる(つまり、標的細胞においてタンパク質又はその他の生物分子の産生が可能である)、任意の、DNA、cDNA、ゲノムDNA、核酸類似体及び合成DNAを指す。DNAは2本鎖又は1本鎖であり得、1本鎖である場合、コード(センス)鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であり得る。関心のあるポリヌクレオチド配列は通常、少なくとも1個のプロモーター配列など、発現に必要な他のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。関心のあるあらゆるポリヌクレオチド配列を本発明で用いることができる。本発明で使用できるポリヌクレオチド配列の例としては、以下に限定されないが、マウスIRAK4遺伝子をノックアウトするためのポリヌクレオチド配列、例えば、shRNA法で用い得るggaagaaauuagcaguagcucucuugaagcuacugcuaauuucuuccuu(配列番号16)など、ヒトSTK33遺伝子をノックアウトするためのポリヌクレオチド配列、例えば、それぞれsiRNA法で用い得る、gggcauuucucagagaaugtt(配列番号17)及びttcccguaaagagucucuuac(配列番号18)、NFKB阻害剤Ras様1(「NK1RAS1」としても知られる)タンパク質をコードする、又はNKIRAS1遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(ヒトNK1RAS1タンパク質をコードするcDNAは、GenBank受託番号NM−020345で見出すことができる)、低酸素誘導性因子1、αサブユニット(基本的なヘリックス−ループ−へリックス転写因子であり、「HIF1A」としても知られている。)タンパク質をコードする、又はHIF1A遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(ヒトHIF1Aタンパク質をコードするcDNAは、GenBank受託番号NM_001530として見出すことができる)、以下に限定されないが、第8染色体ゲノムコンティーグ(ヒト第8染色体ゲノムコンティーグをコードするゲノムDNAは、GenBank受託番号NT023736.16で見出すことができる)などの、ゲノム染色体をコードする、又はゲノム染色体をノックダウンする、ポリヌクレオチド配列、キナーゼファミリーのメンバーをコードする、又はキナーゼファミリーのメンバーをコードする遺伝子をノックダウンする、ポリヌクレオチド配列(キナーゼファミリーのメンバーの例としては、アクチビンA受容体タイプII様タンパク質(「ACVRL1」としても知られる。)(ヒトACBRL1タンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号NM_000020で見出すことができる)又はATMタンパク質(ヒトATMをコードするDNAは、GenBank受託番号NM_000051で見出すことができる)が挙げられる)、腫瘍抑制タンパク質をコードする、又は腫瘍抑制タンパク質をコードする遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(腫瘍抑制タンパク質の例としては、p53タンパク質(ヒトp53タンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号NM_000546で見出すことができる)又はヒト網膜芽腫タンパク質(ヒト網膜芽腫タンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号M15400で見出すことができる。)が挙げられる。)、転写因子をコードする、又は転写因子をコードする遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(転写因子の例としては、mycタンパク質(ヒトmycタンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号M13228で見出すことができる)が挙げられる)、Sma11GTPaseをコードする、又はSma11GTPase遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(Sma11GTPaseの例としては、Rasタンパク質(Rasタンパク質をコードするDNAは、GenBank受託番号NM_033360で見出すことができる)が挙げられる)、E3リガーゼをコードする、又はE3リガーゼをコードする遺伝子をノックアウトする、ポリヌクレオチド配列(E3リガーゼの例としては、SKP2タンパク質(ヒトSKP2タンパク質をコードするDNAはGenBank受託番号NM_032637で見出すことができる)が挙げられる)などが挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書中で交換可能に使用され、共有及び/又は非共有結合を介して連結されたアミノ酸の少なくとも1個の分子鎖を指す。この用語は特定の長さの産物を指すものではない。従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質はポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、タンパク質断片、類似体、突然変異又は変異型タンパク質、融合タンパク質などがポリペプチドの意義内に含まれる。
【0030】
本明細書中で使用する場合、「標的遺伝子」という用語は、以下に限定されないが、関心のあるポリペプチドあるいは関心のあるRNA分子(例えば以下に限定されないがsiRNA又はshRNAなど)をコードする関心のあるポリヌクレオチド配列を指す。標的遺伝子は、その機能が本発明の方法により遮断される細胞の連続的生存に必要とされる「不可欠な」遺伝子であり得る。「標的遺伝子」という用語はまた、本明細書中に記載の方法によりノックアウトされるべき遺伝子も指す。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「テトラサイクリン類似体」という用語は、テトラサイクリン又はドキシサイクリンに関連し、tetリプレッサータンパク質に特異的に結合する任意の化合物を指す。このような類似体の解離定数は、少なくとも1x10−6M、好ましくは1x10−9Mより大きいものであるべきである。テトラサイクリン類似体の例は、Handbook of Experimental Pharmacology 78,Blackwoodら(編)、New York(1985)における、Hlavkaら、「The Tetracyclines,」及びMitschef(「The Chemistry of Tetracycline Antibiotics,」Medicinal Res.9,New York(1978)で考察されている(これは本明細書中に参考として援用されている)。
【0032】
本明細書中で使用する場合、「テトラサイクリンリプレッサータンパク質」、「tetリプレッサータンパク質」及び「tetR」という用語は、本明細書中で全て交換可能に使用され、1)誘導剤との特異的結合性を示し、2)テトラサイクリンリプレッサータンパク質が誘導剤と結合しない場合、少なくとも1個のtetオペレーター配列に対する特異的な結合を示し、及び/又は3)誘導剤により、テトラサイクリンオペレーターから駆逐され得る、又は競合して除かれ得る、ポリペプチドを指す。「テトラサイクリンリプレッサータンパク質」という用語は、天然の(つまり、ネイティブ)テトラサイクリンリプレッサータンパク質ポリペプチド配列及びその機能的誘導体を含む。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「制御配列」という用語は、通常、ポリヌクレオチドの発現(遺伝子の転写及び翻訳、メッセンジャーRNAの、スプライシング、安定性などを含む。)に影響を与える遺伝子座の(例えば、50kb内の)コード領域と会合する配列を指す。制御配列には、例えば、プロモーター、エンハンサー、スプライシング部位及びポリアデニル化部位が含まれる。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「調節配列」という用語は、それらがライゲーションされているコード配列の発現に影響を与えるために必要なポリヌクレオチド配列を指す。このような調節配列の性質は宿主生物によって異なり、原核生物では、このような調節配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含み、真核生物では、一般に、このような調節配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。「調節配列」という用語は、最小限として、発現のために存在することが必要な全ての成分を含むものとし、また、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列など、存在すれば有利なさらなる成分も含み得る。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「トランス遺伝子」という用語は、細胞に導入されたポリヌクレオチド配列を指す(例えば、ポリペプチドの1つ又はそのアンチセンス転写産物をコードする。)。トランス遺伝子は、一部又は全体的に異種由来であり得、つまり、導入が行われるトランスジェニック動物もしくは細胞に対して外来のものであるか、又は導入が行われるトランスジェニック動物もしくは細胞の内在遺伝子に対して同種ものであり得るが、挿入される細胞のゲノムを変化させるように動物のゲノムに挿入されるように設計されているか、又は挿入される(例えば、これは、天然の遺伝子とは異なる位置又はその挿入の結果ノックアウトが起こる位置に挿入される。)。トランス遺伝子はまた、エピソームの形態で細胞に存在し得る。トランス遺伝子は、1以上の転写制御配列及び任意の他の核酸、例えば、選択されたポリヌクレオチド配列の最適な発現に必要であり得るイントロンなどを含み得る。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド又はDNA配列を細胞に導入するビヒクルを指す。これは、任意の特定の配列に限定されるものではない。ベクターは、それ自身、内在遺伝子を調節する、ポリヌクレオチド又はDNA配列であり得るか、又は内在遺伝子を調節するポリヌクレオチド配列を含有し得る。従って、ベクターは、単純に、調節に必要な配列のみを含有する線状又は環状ポリヌクレオチドであるか、又は大きなポリヌクレオチド又はDNAもしくはRNAウイルスゲノムなどの他の構築物、バイロン全体又は、重要なヌクレオチド配列を細胞に導入するために使用される他の生物学的コンストラクにおけるこれらの配列であり得る。「ベクター構築物」、「組換えベクター」又は「構築物」という語が本明細書中で「ベクター」という用語と交換可能に使用され得ることも理解されたい。
【0037】
本明細書中で使用する場合、「a、」、「an」及び「the」という単数形は、文脈において明確に他に示されない限り、複数形の意味を含む。別段の定義がない限り、本明細書中で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の熟練者により一般に理解されるものと同様の意味を有する。
【0038】
値の範囲が示される場合、文脈において明確に他に示されない限り、個々の介在値が、下限の単位の十分の一まで、同範囲の上限と下限の間にあり、その指定された範囲における任意のその他の指定された値又は介在値が本発明に含まれると理解すべきである。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、より小さい範囲に含まれ得、本発明内にも包含され、指定された範囲における任意の具体的な排除限界に従う。指定された範囲が上限又は下限の1又は両方を含む場合、上限又は下限が含まれるものの何れか又は両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0039】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書中に記載のものと同様又は同等のあらゆる方法、装置及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、代表的方法、装置及び材料をここで記載する。
【0040】
テトラサイクリン耐性オペロン
重要ではないが、本発明の理解の促進を促すために、細菌におけるテトラサイクリン耐性(tet)オペロンに関する情報を本明細書中で簡潔に示す。
【0041】
tetオペロンにおいて、関心のあるポリヌクレオチド配列及びtetリプレッサータンパク質(tetR)をコードする遺伝子は、両方とも同じオペレーターエレメントの制御下にある。誘導剤がない場合、tetリプレッサータンパク質はオペレーター配列に結合し、それにより、近接するプロモーター配列がRNAポリメラーゼなどの転写活性化因子と相互作用することが立体的に妨げられる。従って、関心のあるポリヌクレオチド配列の転写がブロックされる。細菌中の誘導剤のレベルが上昇する場合、誘導剤はtetリプレッサータンパク質に結合し、tetリプレッサータンパク質のオペレーター配列への結合が妨げられる。結果として、ポリメラーゼはプロモーター配列に結合することができ、ポリヌクレオチド配列は転写される。
【0042】
本発明のプロモーター
ある実施形態では、本発明はRNA polIII依存性プロモーター配列に関する。好ましくは、本発明のRNA polIII依存性プロモーター配列は誘導性であり、つまり、このようなプロモーターは誘導性プロモーターである。本明細書中で使用する場合、「誘導性」又は「誘導性プロモーター」という用語は、両方とも本明細書中で交換可能に使用され、本発明のプロモーター配列がある特定の化学条件の設定下で活性化されることを指す。これらの特定の条件とは、tetリプレッサータンパク質に結合する誘導剤の存在である。例えば、本発明において、誘導剤が存在する場合、本発明のプロモーター配列が活性化され、前記プロモーター配列に作動可能に連結された関心のあるポリヌクレオチド配列の転写が起こる。本発明は、以下に限定されないが、U6プロモーター配列、H1プロモーター配列又は7SKプロモーター配列など、任意のRNA polIII依存性プロモーター配列を本明細書中で使用できることを意図する。
【0043】
本発明のプロモーター配列は、TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’に位置する近位配列エレメント(PSE)、TATAエレメントに対して3’に位置する転写状態部位(TSS)、少なくとも1個の第一のテトラサイクリンオペレーター(第一のtetオペレーター)及び少なくとも1個の第二のテトラサイクリンオペレーター(第二のtetオペレーター)を含有する。本発明のプロモーター配列は、少なくとも2個のテトラサイクリンオペレーターを含有するが、2を超えるテトラサイクリンオペレーターを含有するプロモーター配列もまた、本発明の範囲内にあるものとする。
【0044】
本発明のプロモーター配列において、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置する(図1参照)。ある態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第一のtetオペレーターは、TATAエレメントとPSEとの間に位置し、PSE又はTATAエレメントの一方又は両方の部分を形成する。第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置する(図1参照)。ある態様において、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの何れの部分も形成しない。別の態様では、第二のtetオペレーターは、TATAエレメントとTSSとの間に位置し、TSS又はTATAエレメントの一方又は両方の部分を形成する。これらのエレメントの配置は、所望ならば、プロモーター配列が関心のある下流ポリヌクレオチド配列の転写又は遺伝子産物の翻訳を指揮する能力を実質的に妨げてはいけない。さらに、プロモーター配列、オペレーター及びその他のポリヌクレオチド配列を合成又は精製する手段は当業者に周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Press(1989)に記載のような、適切に配置されたエレメントを用いてベクターを構築するのに利用することができる(本明細書中でより詳細に説明する)。
【0045】
本明細書中に記載のプロモーター配列の特定の位置内で少なくとも2個のテトラサイクリンオペレーターを工作することにより、本発明者らは、本発明のプロモーター配列が関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列と作動可能に連結され、このプロモーター配列が当分野で公知のその他の誘導性poly III依存性プロモーターと比較して、基礎転写活性が低くなることを見出した。従って、本発明のプロモーターがより厳重な制御を示す結果、これらのプロモーター配列は、誘導性ノックダウン細胞株を作製する際の成功率を大きく向上させる。
【0046】
第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、同じ(つまり同一)であるか、又は異なり得る。第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターは、任意のポリヌクレオチド配列を有し得るが、ただし、前記ポリヌクレオチド配列は、誘導剤の非存在下で、前記オペレーターの一方及び/又は両方に対してtetリプレッサータンパク質が結合できるようにするようなものである。例えば、第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列が同一である場合、前記オペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)、tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択される。
【0047】
既に述べたように、第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、互いに同一ではなく、互いに異なり得る。同様に、既に述べたように、第一のtetオペレーター及び第二のtetオペレーターは任意のポリヌクレオチド配列を有し得るが、ただし、前記ポリヌクレオチド配列は、誘導剤の非存在下で、前記オペレーターの一方及び/又は両方に対してtetリプレッサータンパク質が結合できるようにするようなものである。例えば、第一のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から選択され得る。第二のtetオペレーターのポリヌクレオチド配列は、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)tccctatcagtgatagagagg(配列番号4)及びctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)からなる群から独立に選択され得る。しかしながら、第一のtetオペレーターがactctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のtetオペレーターは、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有してはいけない。それでもなお、第一のtetオペレーターがtccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有し、第二のテトラサイクリンオペレーターがactctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有することが好ましい。
【0048】
本発明のベクター
本発明のプロモーター配列は、通常、少なくとも1個の発現ベクター(例えば、以下に限定されないが、プラスミド、ウイルス又はファージなど)に組み込まれる。多数の好適なベクターが当業者に公知であり、市販されており、本発明において使用できる。例として次のベクターを示す。細菌性:pINCY(Incyte Pharmaceuticals Inc.,Palo Alto.Calif)、pSPORT1(Life Technologies,Gaithersburg,Md.)、pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)pBs、phagescrip、psiX174、pBluescriptSK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);真核性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかしながら、複製可能で宿主中で生存可能である限り、任意の他のベクターを使用し得る。所望ならば、大量のベクターDNAを生成させることができる(例えば、リプレッサータンパク質を産生する細菌へとベクターを転移させることにより)。
【0049】
発現ベクターはまた、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列も含有する。関心のあるこのポリヌクレオチド配列はあらゆるソース由来であり得、当業者に公知の様々な手段によりベクターに挿入し得る。通常、関心のあるポリヌクレオチド配列を好適な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。このような手段及び他の手段は、当業者の範囲内にあるものとする。発現ベクターはまた、複製起点、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターも含有する。ベクターはまた、発現を増幅するための好適な配列も含み得る。さらに、ベクターは、抗生物質(例えば、アンピシリン、ハイグロマイシン、G418)耐性遺伝子、β−ガラクトシダーゼ又は、ベクターを含有する細胞の選択に使用できるその他の遺伝子産物などの1以上の選択可能なマーカー配列を含有し得る。
【0050】
上記で簡潔に述べたように、ベクターは、関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含有し得る。ベクターは、関心のある2以上のポリヌクレオチド配列を含有し得る(ここで、各ポリヌクレオチド配列は、それ自身のプロモーター配列に作動可能に連結されている)。各ポリヌクレオチド配列に対するプロモーター配列は、同じ又は異なり得るが、ただし、少なくとも1個のポリヌクレオチド配列が、本発明の少なくとも1個のプロモーター配列に作動可能に連結されている。例えば、ベクターは、関心のある第一のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第一のプロモーター配列及び第二のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第二のプロモーター配列を含有し得る。第一の及び第二のプロモーター配列は、それぞれ、本発明のプロモーター配列であるか、又は異なるプロモーター配列であり得るが、ただし、第一の又は第二のプロモーター配列の少なくとも1個は、本発明のプロモーター配列である。本発明のプロモーター配列ではなく、関心のある第一の又は第二のポリヌクレオチド配列の何れかに作動可能に連結することができる好適なプロモーター配列の例としては、以下に限定されないが、LTR又はSV40プロモーター、E.コリlac又はtrp、ファージλPsubLプロモーター、及び当業者に公知の他のプロモーターが挙げられる。その他の制御及び/又は調節配列が前記プロモーターとともに同様に含まれ得る。あるいは、関心のある第一の及び第二のポリヌクレオチド配列を本発明のプロモーター配列に、好適な様式で、タンデムに、及び作動可能に連結することができる。
【0051】
以下に限定されないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラン、リポフェクション及び受容体を介したエンドサイトーシス、ポリブレン、粒子衝突法及びマイクロインジェクションなどの当業者に公知の任意の方法を用いて、本明細書中に記載のベクターを哺乳動物(以下に限定されないが、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、げっ歯類、マウスなど)又は非哺乳動物(以下に限定されないが、昆虫、爬虫類、魚類、鳥類など)細胞などの宿主細胞に導入(つまり、形質転換又はトランスフェクション)することができる。あるいは、ベクターをウイルス粒子として細胞にデリバリーすることができる(複製可能又は複製欠損性のいずれか)。核酸のデリバリーに有用なウイルスの例としては、以下に限定されないが、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス及びワクシニアウイルスが挙げられる。当分野で公知の細胞へのポリヌクレオチド配列のデリバリーに好適なその他のウイルスを本発明において同等に使用できる。
【0052】
プロモーター配列を活性化し、トランスフェクトされた細胞を選択することなどに好適なように改変した従来の栄養培地中で操作した宿主細胞を培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択した細胞とともに既に使用されるものであり、当業者にとって明らかである。
【0053】
好ましくは、tetリプレッサータンパク質を発現するように操作した宿主細胞に組換えベクターを転移させるか、形質転換又はトランスフェクトする。tetリプレッサータンパク質を発現するように宿主細胞を操作する方法は数多くある。例えば、ある方法は、tetリプレッサー遺伝子配列をプロモーター配列に作動可能に連結すること及び次いで、関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能にタンデム連結された本発明のプロモーター配列を含有するベクターにこれを組み込み、次にこのベクターを宿主細胞に転移させるか、形質転換又はトランスフェクトすることである。このような発現ベクターにおいて、tetリプレッサー配列を第二のプロモーター配列(第一のプロモーター配列は、少なくとも2個のtetオペレーターを含有し、関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列である)に作動可能に連結させる。組換えベクターは、関心のある少なくとも2個のポリヌクレオチド配列を含有し、tetリプレッサー配列は、関心のあるポリヌクレオチド配列がそれぞれ1個のプロモーターに作動可能に連結されているか、又は別々のプロモーターに作動可能に連結されているかに依存して、「第二」又は「第三」のプロモーター配列に作動可能に連結される。あるいは、プロモーター配列に作動可能に連結されたtetリプレッサー配列を含有する個別の組換えベクターを用いて、関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された本発明のプロモーター配列を含有するベクターの転移前に、細胞に対して形質転換又はトランスフェクションを行い得る。tetリプレッサー配列に作動可能に連結させ得る好適な「プロモーター配列」又は「第二」もしくは「第三」のプロモーター配列の例としては、以下に限定されないが、LTR又はSV40プロモーター、E.コリlac又はtrp、ファージλPsubLプロモーター、及びtetリプレッサー配列の発現を調節することが知られているその他のプロモーターが挙げられる。その他の制御及び/又は調節配列も同様に前記プロモーターとともに含まれ得る。
【0054】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて特異的なポリヌクレオチド配列を増幅することにより、当業者にとって周知のハイブリダイゼーション技術を用いて、組み込まれたベクターを含有する操作した宿主細胞を同定することができる。例えば免疫学的又は酵素的アッセイにより検出可能なタンパク質を産生する細胞にポリヌクレオチド配列が転移される場合、細胞にテトラサイクリンを導入し、次いで細胞周囲の培地又は細胞ライゼートの何れかにおいてアッセイを行うことにより、組換えタンパク質の有無を確認できる。
【0055】
本明細書中で既に述べたように、誘導剤の非存在下で、本明細書中に記載のプロモーター配列を含有する組換えベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトを行った宿主細胞は、当分野で公知の他の誘導性pol III依存性プロモーター配列と比較して、基礎転写活性が低い。それでもなお、誘導剤を用いて、宿主細胞に組み込まれた関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写を達成することができる。関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写を達成するために宿主細胞に添加すべき誘導剤の量は、当業者によって容易に決定され得る。いったん誘導されると、少なくとも1個のポリヌクレオチド配列の転写により、RNA分子が生じる。好ましくは、このRNA分子は、宿主細胞において標的遺伝子の発現を調節する。宿主細胞に対して、1を超える関心のあるポリヌクレオチド配列を含有する組換えベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトを行う場合、各ポリヌクレオチド配列からRNA分子が産生される。好ましくは、これらのRNA分子は、宿主細胞において1を超える標的遺伝子の発現を調節する。例えば、前記宿主細胞に対して、関心のある2個のポリヌクレオチド配列を用いて形質転換又はトランスフェクトを行う場合、関心のある第一のポリヌクレオチド配列は、転写の結果として、前記細胞中で第一の標的遺伝子の発現を調節する第一のRNA分子を産生し得る。関心のある第二のポリヌクレオチド配列もまた、転写の結果として、前記細胞中で第二の標的遺伝子の発現を調節する第二のRNA分子を産生し得る。好ましくは、前記第二の標的遺伝子は第一の標的遺伝子とは異なる。また、好ましくは、第一の及び/又は第二のRNA分子によって遂行される調節は、第一の及び/又は第二の標的遺伝子の阻害又は抑制である。しかしながら、本発明が意図するのは、1個のRNA分子が第一の標的遺伝子を阻害又は抑制し得、一方で第二のRNA分子が第二の標的遺伝子を活性化又は刺激し得ることである。
【0056】
小分子干渉RNA及び小分子ヘアピン型RNA
本発明の理解を促進するために、siRNA及びshRNAの簡潔な説明を与える。いくつかの米国特許及びPCT特許出願公開は、siRNAs及びshRNAの、設計、合成、精製及び細胞へのデリバリーの好ましい方法を教示する。特に米国特許出願U.S.2003/0148519(その全体が本明細書中に参考として援用されている)は、哺乳動物細胞でのsiRNA及びshRNAの細胞内発現及びデリバリーに対する組成及び方法を提供し、米国特許出願U.S.2002/0132788(その全体が本明細書中に参考として援用されている)は、細胞での遺伝子発現を阻害する目的のために、インビボでsiRNAを細胞にデリバリーするためのプロセスを提供する。
【0057】
小分子干渉RNA(siRNA)は、小分子の分子間デュプレックスであり、一般に、RNAの2本の相異なる(センス及びアンチセンス)鎖から成り、それぞれ、およそ21ヌクレオチドであり、1〜3個、好ましくは2個のヌクレオチドの1本鎖の3’オーバーハンドを伴い、およそ19塩基対を形成する。siRNAの塩基対領域は通常、分解又は翻訳阻害に標的化されるRNA転写産物において、実質的に「標的遺伝子」及びその相補体に対応するか、好ましくは全く同じである。
【0058】
対応するRNA転写産物の効率的な分解又は抑制を誘導するのに必要とされるsiRNAの特異的及び必要な特性は、標的とされる転写産物内の標的遺伝子の特性とともに調べられてきた。効果的なsiRNA設計のための方法は、Tuschlら、Genes & Dev.,13:3191−3197(1999)及びElbashirら、EMBO J.,20:6877−6888(2001)(それぞれが本明細書中に参考として援用されている)に記載されている。
【0059】
本発明の目的のために、siRNAを含む個々の1本鎖RNAを内生的に(細胞内で)合成する。次に、2本の相補的1本鎖をアニーリングさせてRNAデュプレックス−siRNAを形成させねばならない。アニーリング段階もまた内生的に起こる。本発明のプロモーターを含有する本明細書中に記載のベクターを用い、細胞性RMAポリメラーゼによって、内生的合成1本鎖RNAを合成する。
【0060】
小分子ヘアピン型RNA(shRNA)は、互いにペアになり得る自己相補性の領域を有する1本鎖RNAであり、この自己相補性の領域により、1本鎖が、ステム−ループ型構造を有する分子内デュプレックスに折りたまれることが可能となる。ペアにならないループ領域は理論的にあらゆるサイズであり得るが、同じ1本鎖RNA内の自己相補性配列が互いに容易に見出され、塩基対を形成できるよう十分にループが小さいことが有利である。好ましいループサイズは、4〜9ヌクレオチド以上であり、最も好ましくは、5〜8ヌクレオチドのループである。一般に、ループの配列は重要ではないが、パリンドローム配列を含有すべきでない。細胞内でshRNAのループが切断され、siRNAとは異なる分子間デュプレックスが形成される。shRNAのステム領域は、一般に、およそ19〜29塩基対を含有し、通常、対になった領域を越えて伸びるshRNAの3’末端は、複数のチミジル残基から構成される。分解の標的とされるRNA転写物において、siRNAの塩基対領域がそうであるように、shRNAの塩基対領域は、通常、実質的に、好ましくは正確に、標的遺伝子及びその相補体と一致する。
【0061】
siRNAの1本鎖と同様に、内部的または外部的の何れかでshRNAを合成することができる。内部合成されたshRNAは通常、本発明のプロモーターを含有する本明細書中に記載のベクターを用い、細胞性RNAポリメラーゼによって合成される。
【0062】
非ヒト哺乳動物における遺伝子発現調節のための方法
別の実施形態では、本発明は、非ヒト動物の少なくとも1個の真核細胞において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する方法に関する。これらの方法は、本明細書中に記載のプロモーター配列及び組換えベクターを用いて、関心のあるポリヌクレオチド配列の転写を誘導することを含む。本明細書中で既に述べたように、前記関心のあるポリヌクレオチド配列の転写により、少なくとも1個のRNA分子が産生される。産生され得るRNA分子の例としては、以下に限定されないが、siRNA又はshRNAが挙げられる。これらのRNA分子は、このような細胞中で少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するために使用される。
【0063】
真核細胞中で少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するための様々な方法において、本明細書中に記載の本発明のプロモーター配列及びベクターを使用することができる。より具体的には、この方法は、少なくとも1個の真核細胞を提供することと、次いで、本明細書中に記載の組換えベクターの少なくとも1個を用い、前記真核細胞に対して形質転換又はトランスフェクションを行うことを含む。本明細書中に記載の組換えベクター内に含有される少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列により、転写後に、前記細胞中で好ましくは少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節する少なくとも1個のRNA分子が産生される。意図する目的に依存して、少なくとも1個のRNA分子は、1)標的遺伝子を活性化又は刺激、あるいは2)標的遺伝子を阻害又は抑制することができる。例えば、真核細胞内の標的遺伝子が「ノックアウト」されるべき場合、産生されるRNA分子は、siRNA又はshRNAであり得る。siRNA又はshRNAを使用して標的遺伝子を「ノックアウト」できることは、当業者に公知である。従ってこの調節の結果、標的遺伝子を阻害又は抑制することとなる。siRNA又はshRNAをコードする関心のあるポリヌクレオチド配列を作製する方法を本明細書中に記載する。
【0064】
トランスジェニック非ヒト動物
別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載のプロモーター配列及びベクターを含有するトランスジェニック非ヒト動物ならびに前記動物を作製する方法に関する。様々な方法を使用して、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を作製することができる。例えば、標的遺伝子のポリヌクレオチド配列の特定の変更を行うことは、使用できる1つのアプローチである。インビトロで使用される様々な酵素的及び化学的方法により、変更を行うことができる。最も一般的な方法の1つは、突然変異原として特異的なオリゴヌクレオチドを用いて、標的遺伝子において、精密に設計された欠失、挿入及び点突然変異を生じさせることである。第二に、野生型ヒト遺伝子及び/又はヒト化非ヒト動物遺伝子を相同組換えにより挿入し得る。本発明のプロモーターを用い、ゲノム又はミニジーン構築物として、変更された又は突然変異(1又は複数)ヒト遺伝子を挿入することも可能である。
【0065】
さらに、少なくとも1個の内在標的遺伝子が「ノックアウト」されている、トランスジェニック非ヒト動物も作製することができる。ノックダウン動物の作製により、当業者は、ノックアウトされた遺伝子のインビボでの機能を評価できるようになる。様々な方法において、少なくとも1個の標的遺伝子のノックアウトを行うことができる。標的遺伝子を「ノックアウト」するのに使用できる或るストラテジーは、相同組換えにより内在遺伝子の人工的修飾断片を挿入することによるものである。この技術において、相同組換えにより、胚性幹細胞(ES)細胞に変異対立遺伝子を導入する。研究されている遺伝子の1つの対立遺伝子にノックアウト突然変異を含有する胚性幹細胞を胚盤胞に導入する。得られた動物は、移植したES細胞及び宿主細胞の両方由来の組織を含有するキメラである。キメラ動物を交尾させ、突然変異が生殖細胞系に組み込まれているか否かを評価する。ノックアウト突然変異に対してそれぞれヘテロ接合であるこれらのキメラ動物を交尾させ、ホモ接合型のノックアウトマウスを作製する。少なくとも1個の遺伝子を「ノックアウト」するのに使用できる第二のストラテジーは、siRNA及びshRNA及び卵母細胞マイクロインジェクション又は胚性幹細胞へのトランスフェクション又はマイクロインジェクション(本明細書中でさらに述べる)を使用することを含む。本明細書中で既に述べたように、本発明のプロモーター配列がより厳重な制御を示すので、当分野で公知の他のプロモーター配列と比較した場合、これらのプロモーター配列により、誘導性ノックダウン細胞株及び動物作製の成功率が大きく向上する。
【0066】
変更されたヒト標的遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト動物を作製するために、卵母細胞マイクロインジェクション又は胚性幹細胞へのトランスフェクションもしくはマイクロインジェクションの標準的な技術を用い、関心のあるポリヌクレオチド配列を非ヒト動物生殖系列に挿入することができる。あるいは、内在遺伝子のノックアウト又は置換が必要である場合、卵母細胞マイクロインジェクション又は胚性幹細胞へのトランスフェクションもしくはマイクロインジェクションを用い、胚性幹細胞を用いた相同組換え又はsiRNAもしくはshRNAを本明細書中に記載のように使用できる。
【0067】
卵母細胞インジェクションの場合、本発明のプロモーターに作動可能に連結された少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を、受精させたばかりの非ヒト動物卵母細胞の前核に挿入することができる。次に、この卵母細胞を偽妊娠養母に再移植する。次に、関心のあるポリヌクレオチド配列の存在に関して尾部由来などの動物のDNAを分析することにより(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて)、生きて生まれた非ヒト動物を組み込みについてスクリーニングすることができる。次いで、キメラ非ヒト動物を同定する。トランス遺伝子は、YAC又は染色体断片として注入された完全なゲノム配列、cDNA又はコード領域全体を含有するミニジーン及び、最適な発現のために必要であることが分かっている他のエレメントであり得る。
【0068】
初期胚のレトロウイルス又はレンチウイルス感染(Lois C.ら、Science,295:868−872(2002)を参照のこと(レンチウイル遺伝子組換えを用いたトランスジェニックのための方法を教示する))もまた、変更された遺伝子を挿入するために行われ得る。この方法では、キメラを作製するために発生の初期段階でマウス胚に直接感染させるのに使用するレトロウイルスベクターへと変更遺伝子を挿入し、これらの幾つかにより、生殖細胞系列伝達が導かれる(Jaenisch,R.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,73:1260−1264(1976))。
【0069】
胚性幹細胞を用いた相同組換えにより、遺伝子転移細胞のスクリーニングによって稀な相同組換えを同定することができるようになる。いったん同定されると、これらを使用して、少なくとも1個の非ヒト動物胚盤胞の注入によりキメラを作製することができ、得られる動物の割合から、組換え系列からの生殖細胞系列伝達が示される。この遺伝子標的法は、特に、遺伝子の不活性化が望ましい場合に有用である。例えば、選択可能マーカーに隣接するエクソンからの配列を含有するポリヌクレオチド断片を設計することにより、遺伝子の不活性化を行うことができる。相同組換えにより、エクソンの途中でのマーカー配列の挿入が導かれ、遺伝子が不活性化される。次に、個々のクローンのDNA分析を用いて、相同組換えを見分けることができる。
【0070】
あるいは、siRNA又はshRNAを用いて標的遺伝子の「ノックアウト」を行うことができる。あるストラテジーでは、卵母細胞マイクロインジェクションを本明細書中に記載のように使用することができる。特に、siRNA又はshRNAである少なくとも1個のRNA分子を発現し、本発明の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列に作動可能に連結された、少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子は、本明細書中に記載の方法を用いて調製される。このトランス遺伝子を好ましくは注入により、非ヒト動物受精卵母細胞に導入する。次に、受精卵母細胞を胚へと発生させる。次に、得られる胚を偽妊娠雌非ヒト動物及に移し、次いで出産させる。次に、試料を得て、動物のDNAを解析することにより(PCRなどの技術を用いる。)、トランス遺伝子を含有するキメラ動物に関して、生きて生まれた非ヒト動物のスクリーニングを行い、このようなキメラ非ヒト動物を同定する。これらの非ヒト動物を誘導剤で処理すると、転写が誘導され、siRNA又はshRNAが発現され、標的遺伝子が抑制もしくは「ノックアウト」される。誘導剤がない場合、遺伝子は抑制又は「ノックアウト」されない。
【0071】
第二のストラテジーでは、本明細書中に記載のように、胚性幹細胞のマイクロインジェクションを用いることができる。特に、siRNA又はshRNAであり、本発明の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列に作動可能に連結された、少なくとも1個のRNA分子を発現する少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子は、本明細書中に記載の方法を用いて調製される。好ましくは注入によって、これらの胚性幹細胞を少なくとも1個の非ヒト動物胚盤胞に導入することにより、キメラを作製するのに使用できる非ヒト動物胚性幹細胞にこのトランス遺伝子を導入する。次に、得られる胚盤胞を偽妊娠雌非ヒト動物に移植し、次にキメラ非ヒト動物を出産させる。PCRを使用して、関心のある動物を同定することができる。次に、試料を得て、前記動物のDNA試料を得て解析することにより(PCRなどの技術を用いて)、トランス遺伝子を含有するキメラ動物に関して、生きて生まれた非ヒト動物のスクリーニングを行い、このようなキメラ非ヒト動物を同定する。次に、このキメラ非ヒト動物を繁殖に用いて、それらのゲノム内にこのトランス遺伝子を安定的に含有するトランスジェニック非ヒト動物を作製することができる。前出の方法と同様に、これらの非ヒト動物を誘導剤で処理すると転写が誘導され、siRNA又はshRNAが発現され、標的遺伝子が抑制もしくは「ノックアウト」される。誘導剤がない場合、遺伝子は抑制又は「ノックアウト」されない。
【0072】
例えば、Wallら、J.Cell.Biochem.,June:49(2)、113−20(1992);Hoganら、「Manipulating the mouse embryo」、A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1992);WO91/08216又は米国特許第4,736,866号(これらの開示全体が本明細書中に参考として援用されている)において、トランスジェニック動物を作製する方法が記載されている。
【0073】
ここで、一例として、限定的なものでなしに、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0074】
shRNA発現用の厳重に制御されたU6プロモーターの開発
a.ルシフェラーゼアッセイ
Lipofectamine2000(Invitrogen,Carlsbad,California)を用いて、ルシフェラーゼレポーター構築物、pGL−3(Promega,Madison Wisconsin)及びpRL−TK(Promega,Wisconsin)を、細胞にトランスフェクトした。Dual−Luciferaseアッセイシステム(Promega,Madison,Wisconsin)を用いてルシフェラーゼ活性を調べた。
【0075】
b.ウェスタン分析
6ウェルプレートにおいて1XLaemmli試料緩衝液中で細胞を直接溶解させた。タンパク質をSDS−PAGEで分離し、PVDF膜に移し、Chk1(1:200、Santa Crutz Biotechnology,Santa Crutz,CA95060)、HIF−1α(1:500、BD Bioscience,Palo Alto,CA 94303)、又はtetR(1:2000、Mo Bi Tec,Germay)に対する抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。
【0076】
c.細胞培養
10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中でD54−MG(Abbott Laboratoriesが所有する特許品の細胞株)細胞を増殖させた。10%FBSを添加した最小必須培地(MEM)中でHeLa−TREx細胞(Invitrogen)を増殖させた。10%FBSを添加したRPMI1640培地中でH1299(Abbott Laboratoriesが所有する特許品の細胞株)細胞を増殖させた。細胞は全て、5%CO2の環境中、37℃にて維持した。pcDNA6/TR(Invitrogen Corp.、Carlsbad,CA 92008)を用いてD54−MG親細胞株をトランスフェクトし、ブラスチシジン10μg/mLを用いて選択することにより、D54−MG−tetR細胞株を樹立した。
【0077】
d.分子クローニング
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、ヒトU6プロモーターを合成した。PCR反応は全て、次のプライマーを用いて、Advantage2 PCRキット(BD Bioscience Clontech,Palo Alto,CA)により行った:
【0078】
【化1】
【0079】
プライマーU6_1、U6_2、U6_3、U6_4、U6_5及びU6_6を用いてアセンブリした後、U6_5’PCR(gatcgaattccaggcaaaacgcaccacgtg)(配列番号25)及びU6_3’PCR(tctagaagcttggtgtttcgtcctttccac)(配列番号26)のプライマーペアを用いて、全長U6プロモーターを増幅した。増幅されたPCR断片を、BluescriptII(SK+)のEcoRI及びHindIII部位にクローニングしして、pU6を作製した。
【0080】
テトラサイクリン制御U6プロモーター変異体pU6_O1、pU6_O2、pU6_O1O2_1、pU6_O1O2_2、pU6_O1O2_3、pU6_O1O2_4、pU6_O1O2_5、pU6_O1O2_6及びpU6_2O2は全て、U6プロモーターのPCR修飾により作製した。U6_5’PCRを5’プライマーとして用いて、次のプライマーをそれぞれ3’プライマーとして用いた:
【0081】
【化2】
【0082】
簡潔に述べると、鋳型としてpU6を、プライマーとしてそれぞれU6_5’PCR及びO1rev又はpU6_O2を用いて、PCRによりpU6_O1及びU6_O2を作製した。テトラサイクリン制御U6プロモーター変異体pU6_O1O2_1、pU6_O1O2_2、pU6_O1O2_3及びpU6_O1O2_4は全て、鋳型としてpU6_01を、5’プライマーとしてU6_5’PCRを、3’プライマーとしてそれぞれO1O2_l、O1O2_2、O1O2_3、又はO1O2_4を用いて、PCRにより作製した。2つのPCR段階によりpU6_0102_5及びpU6_0102_6を作製した。第一の段階において、pU6_01を鋳型として使用し、プライマーペアU6_5’PCR及びO1O2_5又はU6_5’PCR及びO1O2_6をそれぞれプライマーとして用いた。第二の段階において、第一の段階からのPCR産物をそれぞれ鋳型として使用し、U6_5’PCR及びO1O2_revをプライマーとして用いた。pU6を鋳型として、U6_5’PCR及び2O2をプライマーとして用いて、PCRにより2個のO2タイプtetオペレーターを有するU6プロモーター変異体、pU6_2O2を作製した。
【0083】
shRNA標的ルシフェラーゼ又はHIF−1αを発現するU6プロモーター変異体を、U6_luc、O1_luc、O2_luc、O1O2_luc1、O1O2_luc2、O1O2_luc3、O1O2_luc4、O1O2_luc5、O1O2_luc6、2O2_luc及び2O2_Hif1と名付けた。プライマー、U6_5’PCR及び、O1O2_luc5及びO1O2_luc6の両方を作製するためにプライマーO1O2_luc_revを使用することを除き、次の3’プライマーそれぞれを用いて、各プロモーター変異体からPCRによってこれらの構築物を作製した。次に、PCR断片をpBluescript II(SK+)のEcoRI及びHindIII部位にクローニングした。
【0084】
【化3】
【0085】
e.転写活性及びU6プロモーター変異体のテトラサイクリン応答
shRNAを発現するためにU6プロモーター変異体それぞれを使用するプラスミドをU6_luc、O1_luc、O1O2_luc1、O1O2_luc2、O1O2_luc3、O1O2_luc4、O1O2_luc5及びO1O2_luc6と名付けた。これらのプラスミドのそれぞれ(0.008μg)又は対照ベクター(対照ベクターはpU6ベクターと同一であるが、ルシフェラーゼに対するshRNAを含有しない)を、1μg pGL3−対照及び0.5μg pRL−TKとともに共トランスフェクトした(pGL3−対照及びpRL−TKプラスミドそれぞれが、ホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼを発現する。ホタルルシフェラーゼを阻害するようにこれらの構築物それぞれにおけるshRNAを設計した。正規化を行うためにウミシイタケルシフェラーゼを使用した。)。Lipofectamine2000(Invitrogen、Carlsbad,CA)を用いて、製造者推奨のプロトコールに従い、トランスフェクトを行った。
【0086】
トランスフェクト72時間後に、トランスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定した。U6_luc、O1_luc、O1O2_3、O1O2_4、O1O2_luc5、O1O2_luc6(それぞれ0.2μg)及び対照プラスミドも、1μg pGL3−対照、0.5μg pRL−TK及び1μg pcDNA6/TRとともに、個々に共トランスフェクトした。さらに、1μg pGL3−対照、0.5μg pRL−TK及び1μg pcDNA6/TRとともに、対照プラスミド、U6_luc、O1_luc、O2_luc及び2O2_luc(それぞれ0.2μg)を個々に共トランスフェクトした。ドキシサイクリン処理のために、トランスフェクト24時間後、ドキシサイクリン1μg/mLを含有する培地へと細胞の培地を交換した。ドキシサイクリンによる誘導から48時間後、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0087】
f.ルシフェラーゼ shRNAを発現する安定的細胞株作製における、tetO1及び2O2発現系の比較
安定的に組み込まれたO1_luc(O1_luc1からO1_luc4)、2O2_luc(2O2_luc1から2O2_luc7)又は2O2ベクター(対照)を有するD54−MG−tetR細胞に対して、1μg pGL3−対照及び0.5μg pRL−TKを用いてトランスフェクトを行った。ドキシサイクリン処理のために、トランスフェクト24時間後、ドキシサイクリン1μg/mLを含有する培地へと細胞の培地を交換した。ドキシサイクリンによる誘導から48時間後、ルシフェラーゼ活性を測定した。1μg/mL ドキシサイクリンを用いて48時間処理した後、細胞を溶解させ、抗tetR抗体を用いてウェスタンブロッティングにより分析した。同じブロットから結合物を剥がし、抗アクチン抗体を用いて免疫ブロットを行い、各レーンに試料が同じようにローディングされていることを示した。
【0088】
g.Hif−1 shRNAを発現する安定的細胞株作製における、tetO1及び2O2発現系の比較
組み込まれたO1_Hif1カセット又は2O2_Hif1カセットを有するD54−MG−TetR細胞株を1μg/mLドキシサイクリンで48時間処理し、次いで、100μMデスフェリオキサミン(DFO)で6時間処理した。1xLaemmli試料緩衝液で細胞を溶解させ、Hif−1αに対する抗体(1:500)を用いてウェスタンブロッティングにより分析した。
【0089】
h.結果
本発明者らは、最初に、転写活性を無効にすることなくU6プロモーターへと2個のtetオペレーターを遺伝子操作し得るか否かをを調べた。PSEとTATAボックスとの間でO1タイプtetオペレーターを最初に操作し、Ohkawa,J.ら、Human Gene Therapy、11:577−585(2000)で報告されたものと同一であるO1タイプU6プロモーターを作製した(図1、O1参照)。次に、O1タイププロモーターの一部をO2タイプtetオペレーターで置換することにより、一群の、2個のtetオペレーターを有する改変ヒトU6プロモーターを作製した(図1参照)。各プロモーターがルシフェラーゼを標的とするshRNAを発現し、レポーター活性を阻害する能力により、改変ヒトU6プロモーターの転写活性を評価した。野生型U6プロモーターを利用してルシフェラーゼshRNAの発現を駆動するU6_lucを用いた用量反応実験に基づき、レポーター活性の80%阻害を示すshRNAプラスミド(0.008μg)の量を、改変U6プロモーターにより示される転写活性の評価のために選択した。阻害の程度は、O1及びO2タイプtetオペレーターの両方を含有するU6誘導体を用いてトランスフェクトした細胞において様々であった。O1_luc、O1O2_luc3、O1O2_luc4、O1O2_luc5及びO1O2_luc6を用いてトランスフェクトした細胞において、ルシフェラーゼ活性に対する同様のレベルの阻害が観察され、このことから、これらの位置におけるO1タイププロモーターへのさらなるO2タイプtetオペレーターの導入が、転写活性において限界効果しか持たないことが示唆される(図2A、O1O2_3、O1O2_4、O1O2_5及びO1O2_6を参照)。
【0090】
次に、活性のあるU6プロモーター誘導体の誘導剤ドキシサイクリンに対する応答について調べた。ドキシサイクリンの有無にかかわらず、O1_luc、O1O2_luc5及びO1O2_luc6を用いてトランスフェクトを行った細胞において、ルシフェラーゼ活性の強い阻害が観察され、このことから、これらの実験条件下でこれらのプロモーターが非常に漏出性が高いことが示唆される(図2B、O1、O1O2_luc5及びO1O2_luc6参照)。対照的に、O1O2_luc3及びO1O2_luc4を用いてトランスフェクトを行った細胞では、ドキシサイクリン非存在下よりもドキシサイクリン存在下でルシフェラーゼ活性が非常に低くなった。しかしながら、ドキシサイクリンの非存在下でさえも、O1O2_luc3及びO1O2_luc4をトランスフェクトした細胞では、対照ベクターでトランスフェクトした細胞と比較して、ルシフェラーゼ活性は>50%低く(図2B、O1O2_3及びO1O2_4を参照)、このことから、これらのプロモーターがO1タイププロモーターと比較して、制御が向上したにもかかわらず、まだ非常に漏出性が高いことが示唆される。
【0091】
誘導系をさらに向上させるために、O2タイプtetオペレーターを導入して、O1O2_3においてO1タイプtetオペレーターを置換し、2O2タイププロモーターを作製した(図1、2O2参照)。O2タイプtetオペレーターは、O1タイプtetオペレーターよりも、tetRに対して強い結合親和性を有するので(Hillen,W.ら、Annu.Rev.,Microbiol,48:345−69(1994))、発明者らは、O1O2_3タイププロモーターよりも、2O2タイププロモーターに固く結合し、その結果、プロモーターの基礎転写活性が低下すると考えた。ドキシサイクリン非存在下では、O1O2_luc3は、対照プラスミドと比較して、ルシフェラーゼ活性の>70%の低下を引き起こした。同じ条件下では、2O2_lucの場合、ルシフェラーゼ活性の阻害はわずか30%にすぎず(図2C参照)、このことから、2O2プロモーターは実際に、O1O2_3プロモーターと比較して基礎活性が低いことが示された。その一方、O2_lucはルシフェラーゼ活性を約85%低下させ、このことから、ドキシサイクリン非存在下でshRNA発現を厳重に調節するためには、2個のO2タイプtetオペレーターが同時に必要とされることが示唆される(図2C参照)。ドキシサイクリンの存在下では、O1O2_luc3及び2O2_lucの両方がルシフェラーゼ活性を80%超阻害し、このことから、2O2及びO1O2_3タイププロモーターが誘導において同様の活性を有することが示唆される(図2C参照)。これらの結果から、転写活性を顕著に犠牲にすることなく、U6プロモーターに2個のtetオペレーターを導入できることが分かった。その一方、TATAボックスにフランキングする2個のO2タイプtetオペレーターによれば、得られたU6プロモーター変異体、2O2は、単一のtetオペレーター(O1又はO2)又はO1及びO2タイプtetオペレーターの組み合わせを有するU6プロモーター変異体と比較して、最も優れたドキシサイクリン応答を示した。
【0092】
染色体への組み込み後、2O2プロモーターがドキシサイクリンに対する応答能を維持しているか否かを調べるために、発明者らは、市販のtetR発現細胞株、HeLaTREx(Invitrogen Corp.、Carlsbad,CA 92008)を用いて、ヒトHif1α(2O2_Hif1)を標的とするshRNAに連結された2O2プロモーターを有する安定的クローンを樹立した。2O2_Hif1カセットを有する5種類のクローンの中で、2種類のクローンにおいて誘導時のHif1αタンパク質が90%超低下した(図3A、Hif1−6及びHif1−7参照)。これらの結果から、染色体への組み込み後、2O2プロモーターがそのドキシサイクリン応答性を維持することが分かった。
【0093】
最もよく制御された2O2_Hif1クローン(Hif1−7)を用いて、発明者らは、さらに、2O2発現系のドキシサイクリン誘導の時間及び用量依存性の特徴を調べた。誘導から12時間という早い段階でHif1αタンパク質の顕著な低下が観察され、ドキシサイクリン処理から24時間後、Hif−1タンパク質の90%超の阻害が観察された。さらに長く誘導しても、Hif1αタンパク質のより完全な阻害が導かれなかった(図3B参照)。用量反応実験において、2O2系の最大誘導に必要なドキシサイクリン濃度を調べた。ドキシサイクリン0.1ng/mLの存在下でHif−1タンパク質の90%超の阻害が観察され、ドキシサイクリン10ng/mLの存在下でHif1αタンパク質の阻害が最大となった(図3C参照)。これらの結果から、ドキシサイクリン誘導に対する2O2系の迅速な応答及び極めて強い感受性が明らかとなる。
【0094】
制御された標的ノックダウンのためのpoly III依存性誘導性発現系の使用は当分野で公知である(van de Wetering,M.ら、EMBO Rep.,4:609−615(2003)、Matskura,S.,ら、Nucleic Acid Res.,31:e77(2003)及びCzauderna,F.ら、Nucleic Acids Res.,31:e127(2003)を参照のこと)。これらの報告された観察とは対照的に、本発明者らは、最初の研究において、O1及びO2プロモーターの深刻な漏出性を観察した(図2C、O1及びO2を参照)。文献における系において観察された漏出性が、これらの系を用いた安定的な細胞株の作製能に負の影響を有するか否かを調べるために、発明者らは、O1及び2O2系の両方を用いて誘導性細胞株作製の成功率を直接比較した。tetR発現レベルが高いD54−MG細胞株を最初に樹立し、ハイグロマイシン耐性遺伝子を用いて、ルシフェラーゼ(O1_luc及び2O2_luc)又はヒトHif1α(O1_Hif1及び2O2_Hif1)を標的とするshRNA発現を駆動するために、O1又は2O2プロモーターを利用するプラスミドをこの細胞株にトランスフェクトした。薬物耐性クローンを選択し、PCRで分析して誘導性shRNA発現カセットを担うクローンを同定した。発明者らは、PCRにより分析した際に、安定に組み込まれたO1_lucを有する4種類のクローン及び安定に組み込まれた2O2_lucカセットを有する7種類のクローンを得た。全クローンが同様のレベルのtetR発現を示した(図4B参照)。これらのクローンのドキシサイクリン誘導に対する応答性を調べた。4種類のO1_lucクローンの中で、顕著なドキシサイクリン依存性のルシフェラーゼ活性低下を示すものはなかった(図4A、O1_luc1からO1_luc4を参照)。興味深いことに、4種類のO1_lucクローンのうち3種類が、ドキシサイクリンの有無に関わらず、ルシフェラーゼ活性の構成的な阻害を示し、このことから、O1系の激しい漏出性が示される(図4A、O1_luc1、O1_luc2及びO1_luc4を参照)。対照的に、7種類の2O2_lucクローンの中で、2種類のクローンが、ルシフェラーゼ活性の明らかなドキシサイクリン依存性阻害を示し(図4A、2O2_luc2、2O2_luc4を参照)、3種類のクローンが、中程度の、ルシフェラーゼ活性のドキシサイクリン依存性阻害を示した(図4A、2O2_luc1、2O2_luc5及び2O2_luc7を参照)。クローンO1_3、2O2_3及び2O2_6に対するshRNA発現カセットを染色体の転写不活性部位に挿入することができ、その結果、ドキシサイクリンの有無に関わらず、ルシフェラーゼ活性は阻害されなかった。
【0095】
O1 Hif1クローン及び2O2_Hif1クローンからも同様の結果が得られた。分析した10種類のO1_Hif1クローンの中で、ドキシサイクリン処理時にHif1αタンパク質の明らかな低下を示したものはなかった(図4C、上参照)。一方、11種類の2O2_Hif1クローンのうち2種類が、ドキシサイクリン処理時にHif1αタンパク質の顕著な低下を示した(図4C、下、クローン5及び11参照)。
【実施例2】
【0096】
ドキシサイクリン調節下でHif1αをノックダウンする癌細胞株の調製
Hif1阻害の治療効果の可能性を評価するために、発明者らは、ドキシサイクリン調節下でHif1αに対するshRNAを発現するD54−MG親細胞から安定的な細胞株を樹立した。Hif1αに対する一群の8種類のshRNAにおいて、標的をノックダウンする能力について最初にスクリーニングし(データは示さない)、Hif1αノックダウン細胞株の作製のために最良のshRNAを選択した。Hif1α siRNAの発現を駆動するために、2O2プロモーター、shRNAの発現を厳重に制御する改変U6プロモーター(Xiaoyu Lin、印刷中)を選択した。作製された安定的なクローンは、ドキシサイクリン誘導時にHif1αをノックダウンする能力には多様性があり、おそらくこれは、shRNA発現における様々な組み込み部位の影響によるものであろう(図5A、及びデータは示さない)。D54_Luc、ドキシサイクリン誘導時にルシフェラーゼに対するshRNAを発現する対照細胞株と比較して、D54_Hifクローンは全て、ドキシサイクリン非存在下で同様のレベルのHif1αタンパク質を産生し、このことから、2O2発現系が非常に厳重に制御されることが示される(図5A)。エノラーゼプロモーターからのHREを含有するHif1レポーターを用いて、誘導後に様々な程度のHif1αノックダウンを示す複数のクローンのHif1依存性転写活性についてさらに分析した。驚くべきことに、Hif1αタンパク質の80%の低下は、レポーター活性において限界効果しかない(図5B、D54_Hif18)。レポーター活性における阻害の欠失はHif2αのリダンダント機能によるものではなく、それは、これらの細胞が辛うじて検出可能なHif2αを有し、Hif2αに対する強力なsiRNAを用いてこれらの細胞をトランスフェクトすることにより、レポーター活性のさらなる阻害が行われなくなるからである(データは示さない)。これらの結果から、非常に低レベルのHif1αタンパク質でさえHif1−依存性下流因子の転写を活性化するのに十分であり、Hif1αの場合、Hif1経路を阻害するために非常に高レベルのノックダウンが必要であることが分かった。
【0097】
Hif1αタンパク質の完全なノックダウンを示した細胞において、ドキシサイクリン処理により、レポーター活性の80%低下が観察された(図5B、D54_Hif25)。Hif2αに対する強力なsiRNAを用いてこれらの細胞をトランスフェクトした結果、レポーター活性がさらに阻害されず(データは示さない)、このことから、Hif1αがこれらの細胞において主要な形態であることが示される。QPCR分析から、D54_Hif25細胞におけるドキシサイクリン処理の結果、PGK1及びLDHなどのHif1下流因子の転写が低下したことが示された(図5C、D54_Hif25)。対照として、D54_Luc細胞も平行して分析した。D54_Luc細胞におけるドキシサイクリンにより、ルシフェラーゼレポーターの低下が起こった(図5B、D54_Luc)が、Hif1αタンパク質のノックダウン(図5A、D54_Luc)又はHif1標的遺伝子の阻害(図5C、D54_Luc)は起こらなかった。これらの結果から、Hif1αに対するshRNAの発現の結果、Hif1依存性転写の障害が起こり、この阻害効果は、shRNA発現又はドキシサイクリン処理による非特異的効果ではなく、むしろ、shRNAによるHif1αの特異的阻害によるものであることが分かった。
【実施例3】
【0098】
異種移植腫瘍におけるHif1αのドキシサイクリン依存性阻害
標的ノックダウンにより異種移植腫瘍を誘導することができるか否かを調べるために、D54_Hif25細胞をSCIDマウスに対して皮下注入した。腫瘍が200mm3の平均サイズに到達した後、1mg/mLドキシサイクリンを含有する飲用水をマウスに与えてHif1α shRNAの発現を誘導した。ドキシサイクリンで3、6、9又は12日間マウスを処理した後、腫瘍を回収し、QPCRにより分析して、Hif1αメッセンジャーレベルを求めた。ドキシサイクリンを3日間与えたマウス由来の腫瘍において、Hif1α mRNAの80%低下が観察され、全12日間の処理期間にわたり、ノックダウンが維持された(図6A)。免疫組織化学による腫瘍試料の試験から、第3日以降からのHif1αタンパク質が明らかに減少していることが示された(データは示さない)。
【0099】
標的ノックダウンを誘導する能力が、長期ドキシサイクリン処理にわたり又は腫瘍が非常に大きいサイズに到達した際に障害されるか否かを調べるために、ドキシサイクリンで45日間処理したマウス由来の腫瘍におけるHif1αのノックダウンをさらに分析した。処理終了時の平均腫瘍サイズは2000mm3であった。3日間のドキシサイクリン処理を行ったマウス由来の腫瘍と比較して、これらの腫瘍において比肩し得る程度のHif1αノックダウンが観察された(図6B)。免疫組織化学分析からもまた、Hif1αタンパク質がこれらの腫瘍において辛うじて検出可能なレベルに低下することが分かった(図6C)。これらの結果から、腫瘍が大きくなった場合でも、標的発現の強い抑制が長期にわたり維持され得ることが分かった。対照として、D54_Luc細胞の皮下注入も行い、異種移植腫瘍を生成させ、これらの腫瘍においてもHif1αノックダウンを調べた。ドキシサイクリン誘導後、D54_Luc腫瘍においてHif1α mRNA又はタンパク質の低下は観察されず(図6A、6B及び6C)、このことから、D54−Hif25腫瘍におけるHif1αの低下は、Hif1α shRNA発現に特異的によるものであることが示唆される。
【実施例4】
【0100】
D54−MG腫瘍増殖に対するsiRNAを介したHif1αの阻害の効果
樹立された腫瘍において、Hif1αを阻害する治療効果の可能性を評価するために、D54_Hif25又はD54_Luc(Luc)細胞を用いて、異種移植腫瘍を作製し、腫瘍が190mm3の平均サイズに達したときに、Hif1αノックダウンを開始した。Hif1αノックダウンの結果、腫瘍増殖が2相になった。最初の相において(図3A、第1日から第11日)、腫瘍は増殖を続けたが、機能的Hif1αを有する腫瘍と比較して、僅かに増殖速度は遅かった。第二の相において、腫瘍は、小さいが再生可能な一時的退化を示し、Hif1αなしで増殖を再開した(図5A、第11日及びそれ以降)。対照群と比較して、ドキシサイクリン処理群において全体的な腫瘍増殖がより遅かったにもかかわらず、処理群の腫瘍は全て最終的に大きくなり、その結果、動物は死亡した(図7A)。D54_Luc細胞から作製した異種移植腫瘍は、飲用水中のドキシサイクリンの有無に関わらず同じ速度で増殖し、このことから、Hif1α shRNAを発現する腫瘍の増殖が遅いという表現型は、Hif1αノックダウンの結果であることが示される(図7A)。ドキシサイクリン処理時にHif1α shRNAを発現する2種類の独立のクローンを用いて腫瘍増殖におけるHif1αノックダウンの同様の阻害効果が観察され、これにより、観察された効果は一定であり、異常なクローンによるものでないことが分かった(データは示さない)。これらの結果から、樹立された腫瘍におけるHif1αの欠失により、腫瘍退化を導く一時的な危機が起こることが示唆される。しかしながら、腫瘍はHif1αの欠失に適応することができ、より遅い速度で増殖を続けることができる。
【0101】
インビトロでのドキシサイクリン処理時にHif1αタンパク質の80%ノックダウンを示したいくつかのクローンが利用できるため、Hif1αの部分的阻害がインビボでの治療的有用性を生み出すのに十分であるか否かを調べることができた。D54_Hif18細胞を用いて異種移植腫瘍を生成させ、平均腫瘍サイズが150mm3になった時点でHif1αノックダウンを開始した。インビトロにおいてHif1−依存性転写の顕著な阻害がないことと一致して(図5B、D54_Hif18)、ドキシサイクリン処理により、これらの腫瘍では腫瘍増殖に対して十分な効果を生み出すことができなかった(図7B)。これらの結果から、インビボで腫瘍増殖に負の影響を与えるためには、Hif1αタンパク質レベルでの高度の阻害が必要であることが示唆される。
【実施例5】
【0102】
チロシナーゼノックダウンマウスの作製
a.前核注入を用いたノックダウンマウスの作製
前核注入は、トランスジェニック動物を作製するためのよく樹立された方法である。このアプローチにおいて、DNA断片(トランス遺伝子)を受精卵の前核段階に注入し、注入した卵を偽妊娠動物に移植する。通常の実験においては、50から80個の卵に注入し、注入した卵の半分が生存して新生仔を生成し、新生仔の5%から20%がトランス遺伝子を含有する。
【0103】
ノックダウンする標的として、チロシナーゼを選択した。チロシナーゼはメラニン産生に重要な酵素であり、マウスでのチロシナーゼノックダウンにより、明確な体毛の色の変化が生じる。
【0104】
b.チロシナーゼノックダウンマウス作製のための、2O2プロモーターにより駆動されるトランス遺伝子及び前核注入の使用
改変poly III依存性プロモーター(例えば2O2プロモーターなど)がノックダウン動物の作製に適切であるか否かを調べるために、チロシナーゼに対する2つの最良のshRNAを発現させるよう2O2プロモーターを使用するトランス遺伝子を調製した(2O2−Tyr731(配列番号46)及び2O2−Tyr338(配列番号47))。これらのトランス遺伝子を以下に示す。太字はshRNA配列を表し、下線のある文字はプロモーター配列を表す。tetリプレッサー(tetR)を発現しないマウスからの胚を用いて、第一セットの注入を行った。tetR発現のないマウスにおいて、2O2プロモーターは構成的に活性であると予想される。
【0105】
2O2プロモーターにより駆動されるトランス遺伝子:
【0106】
【化4】
【0107】
2O2−Tyr731トランス遺伝子(配列番号46)を注入した胚から生まれた20匹の仔の中で、3匹の仔が安定的に組み込まれたトランス遺伝子を有しており、図8AからBで示すように、様々な程度の体毛の色の変化を示した。図8Aは、野生型マウスの濃い体毛の色と比較して、初代マウスの1匹のFOの体毛の色が薄いことを示す。トランス遺伝子特異的プライマーを用いて、PCRによりマウスの遺伝子型を調べた。図8Bは、3匹の仔が他のF1仔の濃い色と比較して白く、2O2−Tyr731トランス遺伝子(配列番号46)に対して陽性であることを示す。体毛の色が薄い初代マウスからのこれらのF1トランスジェニック子孫は、siRNA介在抑制効果が世代を通じて受け継がれ得ることを示す。
【0108】
2O2−Tyr338トランス遺伝子(配列番号47)を注入した胚から、40匹の仔が生まれ、2個の胚が死んだ。40匹の新生仔のうち、トランス遺伝子を有するものはなかったが、死んだ両胚は2O2−Tyr338トランス遺伝子(配列番号47)を有しており、このことから、2O2−Tyr338トランス遺伝子(配列番号47)により、Tyr338shRNAの標的外れの効果による、胚の致死が起こることが示唆される。
【0109】
これらの結果から、2O2プロモーターがノックダウン動物の作製によく適していることが示唆される。
【0110】
2O2系を用いて条件付きのノックダウン動物を作製するための2つの平行するアプローチを利用することができる。第一のアプローチは、1個のトランス遺伝子において、2O2−shRNAカセットをCAGGS−tetRカセットとともに共デリバリーすることを含む。ニワトリβアクチンプロモーターは、遍在性の遺伝子発現のための、特徴がよく分かっているプロモーターである。CAGGS−tetRカセットは、ニワトリβアクチンプロモーターを利用してtetRの発現を駆動し、その結果、マウス組織の大部分でtetRの発現が起こる。このアプローチを使用して、短時間で条件つきノックダウン動物を作製することができる。
【0111】
第二のアプローチは、遍在性なtetR発現のあるマウス系列の作製を含む。次に、全ての条件付きノックダウンプロジェクトに対してこのマウス系列を親系列として使用して、標的をより均一に制御することができる。ROSA26遺伝子座の遺伝子が遍在性に発現されることが分かっている。従って、ROSA26遺伝子座においてtetR発現カセットを破壊して、遍在性tetR発現のあるマウス系列を得る。
【0112】
本発明が目的を実行し、述べた結果及び長所ならびにそこに固有であるものを得るように構成されることを当業者は容易に認めるであろう。本明細書中に記載の、分子複合体及び方法、手段、処理、分子、具体的化合物は、目下、好ましい実施形態の代表であり、典型であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書中で開示する本発明に対して、様々な置換及び変形がなされ得ることは、当業者にとって容易に認められよう。
【0113】
明細書中で述べた全ての特許及び刊行物は、本発明が関連する分野の当業者のレベルの指標である。全ての特許及び刊行物は、それぞれの個々の刊行物が具体的に及び個別に参考として援用されていることが示されるように、同程度に本明細書中に参考として援用されている。
【0114】
本明細書中で具体的に開示しない任意の要素(単数又は複数)、制限(単数又は複数)がない状態で、説明として本明細書中で適切に記載される本発明を実施することができる。従って、例えば、本明細書中で各例において、「含む(comprising)」、「原則的に〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語の何れも、他の2つの用語の何れかで置き換え得る。使用されている用語及び表現は、説明であって制限ではない用語として使用され、かかる用語及び表現の使用において、示され、述べられるものの任意の同等物又はそれらの一部を除外する意図はないが、主張される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることを認識されたい。従って、好ましい実施形態により本発明を具体的に開示するが、本明細書中で開示される概念の、任意の特性、変更及び変化が当業者により用いられ得ること、及び、かかる変更及び変化が添付の請求項の範囲により定義されるように本発明の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。
【0115】
さらに、本発明の特性又は態様をマーカッシュグループの観点で述べる場合、本発明が、マーカッシュグループのあらゆる個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点で、それによっても述べられることを当業者は理解するであろう。例えば、Xが臭素、塩素及びヨウ素からなる群から選択される場合、臭素であるXに対する主張及び臭素及び塩素であるXに対する主張が十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、U6プロモーター変異型の配列アラインメントを示す。U6は野生型ヒトU6プロモーター(配列番号6)である。O1(配列番号7)又はO2(配列番号8)は、O1及びO2タイプのヒトU6プロモーターである。O1O2_1(配列番号9)、O1O2_2(配列番号10)、O1O2_3(配列番号11)、O1O2_4(配列番号12)、O1O2_5(配列番号13)及びO1O2_6(配列番号14)は、O1及びO2両方のタイプのtetオペレーターを伴うU6プロモーター変異型である。2O2(配列番号15)は、2個のO2タイプtetオペレーターを伴うU6プロモーター変異型である。下線を引いた斜字体配列は、O2タイプtetオペレーターを表す。下線を引いた斜字体でない配列は、O1タイプtetオペレーターを表す。
【図2A】図2Aは、U6プロモーター変異型の転写活性及びテトラサイクリン応答を示す。
【図2B】図2Bは、U6プロモーター変異型の転写活性及びテトラサイクリン応答を示す。
【図2C】図2Cは、U6プロモーター変異型の転写活性及びテトラサイクリン応答を示す。
【図3A】図3Aは、2O2発現系を用いた、安定的細胞株における内在遺伝子のテトラサイクリン依存性ノックダウンを示す。
【図3B】図3Bは、2O2発現系を用いた、安定的細胞株における内在遺伝子のテトラサイクリン依存性ノックダウンを示す。
【図3C】図3Cは、2O2発現系を用いた、安定的細胞株における内在遺伝子のテトラサイクリン依存性ノックダウンを示す。
【図4A】図4Aは、安定的細胞株作製における、O1及び2O2発現系の比較を示す。
【図4B】図4Bは、安定的細胞株作製における、O1及び2O2発現系の比較を示す。
【図4C】図4Cは、安定的細胞株作製における、O1及び2O2発現系の比較を示す。
【図5A】図5Aは、D54_Luc、D54_Hif25及びD54_Hif18細胞における、Hif1αタンパク質レベルを示す。1μg/mLドキシサイクリン存在下又は非存在下で細胞をインキュベートした。36時間後、細胞を非処理とするか(N)又は、さらに16時間低酸素処理(H)した。細胞を溶解し、Hif1α(上のパネル)又はHif1β(下のパネル)に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングにより分析した。
【図5B】図5Bは、D54_Luc、D54_Hif25及びD54_Hif18細胞における、Hif1レポーター(1xHRE)又は構成的レポーター(pGL3)の活性を示す。1μg/mLドキシサイクリン存在下又は非存在下でpGL3−対照/pRL−TK(左パネル)又は1xHRE/pRL−TKプラスミド(右パネル)の何れかを用いて細胞に対してトランスフェクションを行った。トランスフェクションから36時間後、細胞を低酸素処理した。低酸素処理から16時間後、ルシフェラーゼ活性を調べた。
【図5C】図5Cは、D54_Luc及びD54_Hif25細胞における、Hif1標的遺伝子、PGK1及びLDHのmRNAレベルを示す。1μg/mLドキシサイクリン存在下又は非存在下で細胞をインキュベートした。36時間後、細胞を非処理とするか(N)又は、さらに16時間低酸素処理(H)した。トータルRNAを調製し、指定の遺伝子のレベルを分析するために定量的PCRにおいて使用した。
【図6A】図6Aは、ドキシサイクリン処理した、3種類のD54_Hif25(Hif)又はD54_Luc(Luc)由来の皮下腫瘍における、平均Hif1α mRNAレベル及び標準偏差(SD)を示す。200から300mm3の腫瘍を有するマウスに、3、6、9又は12日間、ドキシサイクリン(1mg/mL)を与えた。処置終了時に腫瘍を回収し、Hif1α mRNAレベルをQPCRにより測定した。Dox処置なしのマウスからの腫瘍を対照として使用した。
【図6B】図6Bは、45日間水(対照)又はドキシサイクリン(Dox)処理したマウスから切り出した4種類のD54_Hif25又はD54_Luc由来の腫瘍における、平均Hif1α mRNAレベルを示す。Hif1α mRNAレベルをQPCRにより測定した。
【図6C】図6Cは、B)からの同じ腫瘍試料の平均Hif1α発現レベル及び標準偏差を示す。IHCにより、及びAxio Vision4(Zeiss)を用いて定量して、Hif1α発現レベルを調べた。
【図7A】図7Aは、D54_Hif25(Hif25)又はD54_Luc(Luc)細胞を用いて15匹のマウスで生成した、及びドキシサイクリン処理及び非処理の、皮下腫瘍における平均腫瘍サイズ及び標準誤差(SE)を示す。腫瘍が190mm3の平均サイズに到達した後、腫瘍を有するマウスをランダム化し、2群に分けた。各群に対して、ドキシサイクリンを含有する(Dox)又は含有しない(対照)飲用水を与えた。マイクロキャリパーを用いて週に2回腫瘍サイズを測定した。
【図7B】図7Bは、D54_Hif25(Hif25)又はD54_Luc(Luc)細胞を用いてマウスで生成した、及びドキシサイクリン処理及び非処理の、8匹のマウスの皮下腫瘍の平均腫瘍サイズ及び標準誤差(SE)を示す。腫瘍が150mm3の平均サイズに到達した後、腫瘍を有するマウスをランダム化し、2群に分けた。各群に対して、ドキシサイクリンを含有する(Dox)又は含有しない(対照)飲用水を与えた。マイクロキャリパーを用いて週に2回腫瘍サイズを測定した。
【図8A】図8A及び8Bは、2O2−Tyr731トランス遺伝子を注入した胚から生まれたマウスを示し、これらは、野生型マウスと比較して、様々な程度の体毛の色の変化を示す。図8Aは、体毛の色が濃い野生型マウスと比較して、初代マウスのF0の体毛の色がより淡いことを示す。
【図8B】図8A及び8Bは、2O2−Tyr731トランス遺伝子を注入した胚から生まれたマウスを示し、これらは、野生型マウスと比較して、様々な程度の体毛の色の変化を示す。図8Bは、濃い色のF1仔と比較して白色である3匹の仔を示す。白色の仔は、2O2−Tyr731トランス遺伝子(配列番号48)に関して陽性である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレーターのポリヌクレオチド配列と同一のポリヌクレオチド配列を有する、RNA polIII依存性プロモーター配列。
【請求項2】
第一のテトラサイクリンオペレーター及び第二のテトラサイクリンオペレーターそれぞれが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載のプロモーター配列。
【請求項3】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項1に記載のプロモーター配列。
【請求項4】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置しPSE又はTATAエレメントの一部を形成する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレータのポリヌクレオチド配列と同一のポリヌクレオチド配列を有する、RNA polIII 依存性プロモーター配列。
【請求項5】
第一のテトラサイクリンオペレーター及び第二のテトラサイクリンオペレーターそれぞれが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含有する、請求項4に記載のプロモーター配列。
【請求項6】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項5に記載のプロモーター配列。
【請求項7】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレーターのポリヌクレオチド配列と異なるポリヌクレオチド配列を有し、但し、第一のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のテトラサイクリンオペレーターが、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有さない、RNA polIII依存性プロモーター配列。
【請求項8】
第二のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項7に記載のプロモーター配列。
【請求項9】
第一のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有し、第二のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する、請求項7に記載のプロモーター配列。
【請求項10】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項7に記載のプロモーター配列。
【請求項11】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置しPSE又はTATAエレメントの一部を形成する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレータのポリヌクレオチド配列と異なるポリヌクレオチド配列を有し、但し、第一のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のテトラサイクリンオペレーターが、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有する、RNA polIII 依存性プロモーター配列。
【請求項12】
第二のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項11に記載のプロモーター配列。
【請求項13】
第一のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有し、第二のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する、請求項11に記載のプロモーター配列。
【請求項14】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項11に記載のプロモーター配列。
【請求項15】
関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された少なくとも1個の請求項1に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項16】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項5に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項18】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項7に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項20】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項11に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項22】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項15に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項24】
請求項17に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項25】
請求項19に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項26】
請求項21に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項27】
RNA polIII 依存性プロモーター配列に作動可能に連結された関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、ここで関心のある前記ポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック非ヒト動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生され、さらに、前記プロモーター配列は、TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、第一のテトラサイクリンオペレーターは、第二のテトラサイクリンオペレーターのポリヌクレオチド配列と同一のポリヌクレオチド配列を有する、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項28】
第一のテトラサイクリンオペレーター及び第二のテトラサイクリンオペレーターそれぞれが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項27に記載の動物。
【請求項29】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項27に記載の動物。
【請求項30】
マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、霊長類及びモルモットからなる群から選択される、請求項27に記載の動物。
【請求項31】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項27に記載の動物。
【請求項32】
RNA分子が小分子干渉RNA又は小分子ヘアピン型RNAである、請求項27に記載の動物。
【請求項1】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレーターのポリヌクレオチド配列と同一のポリヌクレオチド配列を有する、RNA polIII依存性プロモーター配列。
【請求項2】
第一のテトラサイクリンオペレーター及び第二のテトラサイクリンオペレーターそれぞれが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載のプロモーター配列。
【請求項3】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項1に記載のプロモーター配列。
【請求項4】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置しPSE又はTATAエレメントの一部を形成する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレータのポリヌクレオチド配列と同一のポリヌクレオチド配列を有する、RNA polIII 依存性プロモーター配列。
【請求項5】
第一のテトラサイクリンオペレーター及び第二のテトラサイクリンオペレーターそれぞれが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含有する、請求項4に記載のプロモーター配列。
【請求項6】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項5に記載のプロモーター配列。
【請求項7】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレーターのポリヌクレオチド配列と異なるポリヌクレオチド配列を有し、但し、第一のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のテトラサイクリンオペレーターが、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有さない、RNA polIII依存性プロモーター配列。
【請求項8】
第二のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項7に記載のプロモーター配列。
【請求項9】
第一のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有し、第二のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する、請求項7に記載のプロモーター配列。
【請求項10】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項7に記載のプロモーター配列。
【請求項11】
TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置しPSE又はTATAエレメントの一部を形成する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、ここで第一のテトラサイクリンオペレーターが、第二のテトラサイクリンオペレータのポリヌクレオチド配列と異なるポリヌクレオチド配列を有し、但し、第一のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する場合、第二のテトラサイクリンオペレーターが、ctccctatcagtgatagagaaa(配列番号5)のポリヌクレオチド配列を有する、RNA polIII 依存性プロモーター配列。
【請求項12】
第二のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項11に記載のプロモーター配列。
【請求項13】
第一のテトラサイクリンオペレーターが、tccctatcagtgatagagacc(配列番号2)のポリヌクレオチド配列を有し、第二のテトラサイクリンオペレーターが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)のポリヌクレオチド配列を有する、請求項11に記載のプロモーター配列。
【請求項14】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項11に記載のプロモーター配列。
【請求項15】
関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された少なくとも1個の請求項1に記載のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項16】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項5に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項18】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項7に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項20】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項11に記載の少なくとも1個のRNA polIII依存性プロモーター配列を含有する、ベクター。
【請求項22】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項15に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項24】
請求項17に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項25】
請求項19に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項26】
請求項21に記載のベクターを含有する真核細胞。
【請求項27】
RNA polIII 依存性プロモーター配列に作動可能に連結された関心のある少なくとも1個のポリヌクレオチド配列を含有するトランス遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、ここで関心のある前記ポリヌクレオチド配列の転写により、前記トランスジェニック非ヒト動物において少なくとも1個の標的遺伝子の発現を調節するRNA分子が産生され、さらに、前記プロモーター配列は、TATAエレメント、TATAエレメントに対して5’の近位配列エレメント(PSE)、及びTATAエレメントに対して3’の転写開始部位(TSS)、PSEとTATAエレメントとの間に位置する第一のテトラサイクリンオペレーター、及びTATAエレメントとTSSとの間に位置する第二のテトラサイクリンオペレーターを含有し、第一のテトラサイクリンオペレーターは、第二のテトラサイクリンオペレーターのポリヌクレオチド配列と同一のポリヌクレオチド配列を有する、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項28】
第一のテトラサイクリンオペレーター及び第二のテトラサイクリンオペレーターそれぞれが、actctatcattgatagagttat(配列番号1)、tccctatcagtgatagaga(配列番号2)、tccctatcagtgatagagacc(配列番号3)及びtccctatcagtgatagagagg(配列番号4)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を有する、請求項27に記載の動物。
【請求項29】
プロモーターが、U6プロモーター、H1プロモーター又は7SKプロモーターである、請求項27に記載の動物。
【請求項30】
マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、霊長類及びモルモットからなる群から選択される、請求項27に記載の動物。
【請求項31】
少なくとも1個の関心のあるポリヌクレオチド配列がDNA又はcDNAである、請求項27に記載の動物。
【請求項32】
RNA分子が小分子干渉RNA又は小分子ヘアピン型RNAである、請求項27に記載の動物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2008−508887(P2008−508887A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525046(P2007−525046)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/027970
【国際公開番号】WO2006/017775
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/027970
【国際公開番号】WO2006/017775
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
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