説明

真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法

【課題】潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥を効果的に抑制する。
【解決手段】金型キャビティー3内を真空減圧する真空タンク13及び真空ポンプ14と、溶湯を注湯するための給湯口5が設けられた射出スリーブ6と、射出スリーブ6内の溶湯を押圧して金型キャビティー3に射出させるプランジャーチップ8と、を備える真空ダイカスト装置において、射出スリーブ6への潤滑剤の滴下からプランジャーチップ8が給湯口5を塞ぐまでの間、金型キャビティー3の側から給湯口5に向けて圧縮空気を流して、潤滑剤の燃焼により発生した燃焼ガスの掃気を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯口より射出スリーブ内に給湯された溶湯をプランジャーチップで押圧して真空減圧された金型キャビティー内に射出することで鋳造を行う真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型鋳造法のひとつとして、金型に溶融した金属を圧入することにより、高い寸法精度の鋳物を短時間で製造可能なダイカスト法が知られている。ダイカスト法では、高速で溶湯を金型に圧入することに起因する空気の巻き込みや金型隅部への不充填による不良が発生することがある。そこで、金型キャビティーに存在する空気を真空タンクで吸引することで金型内を真空状態に減圧した状態で、溶融した金属を射出充填する真空ダイカスト法が提案されている。真空ダイカスト法では、抵抗が少ないために溶湯の流動性が向上し、湯回りが改善される。またガス(空気)を吸い出してしまうため、ガスの巻き込みによる巣と呼ばれる鋳造欠陥の発生の抑制にも効果がある。
【0003】
そして従来、真空ダイカスト装置として、特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の装置では、射出スリーブへの溶湯の給湯を開始してからプランジャーチップが給湯口を塞ぐまでは、金型キャビティーを大気開放するようにしている。そしてプランジャーチップが給湯口を塞いだ時点で金型キャビティーの真空減圧により強制排気を開始する。真空減圧は、金型キャビティーの溶湯の充填が完了する直前まで行われ、その後は、金型キャビティーを大気開放して排気を行うようにしている。
【0004】
図5は、こうしたガス抜きを行うための真空ダイカスト装置を示している。真空ダイカスト装置は、後端に給湯口50が設けられるとともに、金型51に形成された金型キャビティー52に前端が連結された射出スリーブ53を備えている。また、射出スリーブ53の内部には、給湯口50より給湯された溶湯を金型キャビティー52に向って押し出すためのプランジャーチップ54が進退可能に配設されている。
【0005】
一方、金型キャビティー52には、ガス抜き部55が接続されている。そしてそのガス抜き部55には、大気系回路と真空排気系の回路とが接続されている。真空排気系の回路には、電磁弁56を介して真空タンク57及び真空ポンプ58が設けられている。また大気系の回路には、電磁弁59が設けられ、その末端は大気開放されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−132760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ダイカスト装置の多くでは、射出スリーブ53内でのプランジャーチップ54の動きを良くするために、溶湯の給湯に先立って給湯口50から射出スリーブ53内に潤滑剤を滴下するようにしている。ところが、潤滑剤を射出スリーブ53に滴下すると、射出スリーブ53の熱で潤滑剤が燃焼し、その燃焼ガスが金型キャビティー52内に侵入するようになる。そして溶湯の射出スピードが高いと、侵入した潤滑剤の燃焼ガスが排出しきる前に金型キャビティー52に溶湯が射出されてしまい、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥が発生することがある。これに対して、上記従来の真空ダイカスト装置のように、金型キャビティーの真空減圧を行っても、プランジャーチップ54が給湯口50を塞いでから数秒程度の短い時間で金型キャビティー52への溶湯の射出が開始されるため、燃焼ガスを排出し切ることができず、ガスの巻き込みによる鋳造欠陥が発生してしまう。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥を効果的に抑制することのできる真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、金型キャビティー内を真空減圧する減圧手段と、溶湯を注湯するための給湯口が設けられた射出スリーブと、射出スリーブ内の溶湯を押圧して金型キャビティーに射出させるプランジャーチップと、を備える真空ダイカスト装置をその前提とするものとなっている。そして上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、金型キャビティーの側から給湯口に向けて圧縮ガスを流して掃気する掃気手段を備えるようにしている。
【0010】
上記構成では、プランジャーチップの動きを良くするために射出スリーブに潤滑剤を滴下すると、射出スリーブの熱で潤滑剤が燃焼して燃焼ガスが発生する。上記構成では、こうした燃焼ガスの発生時に、掃気手段によって、金型キャビティーの側から給湯口に向けて圧縮ガスを流して掃気させることが可能となっている。こうして金型キャビティーの側から給湯口に向けての掃気を行えば、射出スリーブにて発生した潤滑剤の燃焼ガスは、給湯口から排出されるようになり、金型キャビティーへの燃焼ガスの侵入を防止することができるようになる。したがって上記構成によれば、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥を効果的に抑制することができるようになる。
【0011】
なお、請求項2によるように、射出スリーブ内に潤滑剤を滴下した時点から給湯口がプランジャーチップにより塞がれる時点まで掃気手段を稼動させるようにすれば、潤滑剤の燃焼ガスの金型キャビティー内への侵入防止をより確実とすることができるようになる。
【0012】
また請求項3によるように、減圧手段及び掃気手段の何れの手段を金型キャビティーに接続するかを切り換える切換手段を備えるようにすれば、切換手段の操作のみで、掃気と真空減圧との切り換えを容易に行うことができるようになる。
【0013】
一方、上記課題を解決するため、給湯口より射出スリーブ内に給湯された溶湯をプランジャーチップで押圧して真空減圧された金型キャビティー内に射出することで鋳造を行う真空ダイカスト方法としての請求項4に記載の発明は、射出スリーブ内に潤滑剤を滴下する工程と、潤滑剤を滴下した射出スリーブの給湯口に向けて金型キャビティーの側から圧縮ガスを流して掃気を行う工程と、掃気の完了後に金型キャビティーの真空減圧を行う工程と、を備えるようにしている。
【0014】
上記方法では、射出スリーブ内への潤滑剤の滴下後、金型キャビティーの側から給湯口に向けて圧縮ガスを流しての掃気が行われるようになる。そしてその掃気の完了後に、金型キャビティーの真空減圧が行われるようになる。プランジャーチップの動きを良くするために射出スリーブに潤滑剤を滴下すると、射出スリーブの熱で潤滑剤が燃焼し、燃焼ガスが発生するようになる。その際、上記方法では、そうした燃焼ガスの発生時に、金型キャビティーの側から給湯口に向けてガスを流して掃気がなされるようになる。こうした掃気を行えば、射出スリーブにて発生した潤滑剤の燃焼ガスは、給湯口から排出されるようになり、金型キャビティー内への燃焼ガスの侵入を防止することができるようになる。したがって上記方法によれば、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥を効果的に抑制することができるようになる。
【0015】
なお、請求項5によるように、潤滑剤を滴下した時点より開始し、給湯口がプランジャーチップにより塞がれる時点まで継続するように掃気を行えば、潤滑剤の燃焼ガスの金型キャビティー内への侵入防止をより確実とすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態についてその真空ダイカスト装置の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施形態の真空ダイカスト装置の潤滑剤滴下時の状態を示す図。
【図3】同実施形態の真空ダイカスト装置の溶湯給湯時の状態を示す図。
【図4】同実施形態の真空ダイカスト装置の給湯口閉塞後の状態を示す図。
【図5】従来の真空ダイカスト装置の構成を模式的に示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法を具体化した一実施形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態の真空ダイカスト装置及び方法は、アルミ製のシリンダーブロックの鋳造を行うための装置及び方法として、本発明を具体化したものとなっている。
【0018】
図1は、本実施の形態の真空ダイカスト装置の全体構成を示している。同図に示すように、この真空ダイカスト装置は、固定型1及び可動型2の2つの金型を備えている。そしてそれら2つの金型を閉じることで、溶湯が充填される金型キャビティー3が形成されるようになっている。なお、可動型2には、鋳造されたアルミ製シリンダーブロックを離型するための押し出しピン4が設置されている。
【0019】
金型キャビティー3には、溶湯を注湯するための給湯口5がその後端側(図中左側)に形成された射出スリーブ6が接続されている。射出スリーブ6には、棒状のプランジャー7の先端に固定されたプランジャーチップ8が前後方向(図中左右方向)に摺動可能に配設されている。なお、プランジャー7の近傍には、同プランジャー7の変位(ストローク)を検出する変位センサー9が設置されている。
【0020】
また金型キャビティー3は、減圧バルブ10を介して三方弁11に接続されている。なお、この真空ダイカスト装置では、金型キャビティー3は、上記押し出しピン4を通す穴を介しても三方弁11に接続されるようになっている。
【0021】
三方弁11には、圧縮空気配管12に接続された加圧系が接続されている。この圧縮空気配管12は、真空ダイカスト装置の設置された施設に設置され、施設の各部に圧縮空気を搬送する配管となっている。加えて三方弁11には、負圧が貯蔵される真空タンク13及びその真空タンク13を減圧する真空ポンプ14の設けられた減圧系が接続されてもいる。そして三方弁11は、加圧系、減圧系のいずれかを金型キャビティー3に選択的に接続するように構成されている。
【0022】
こうした真空ダイカスト装置の三方弁11は、電子制御ユニット15により制御されている。電子制御ユニット15は、三方弁11の制御に係る演算処理を実施する中央演算処理装置、制御用のプログラムやデータの記憶された読込専用メモリー、及び中央演算処理装置の演算結果やセンサーの検出結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリーを備えている。また電子制御ユニット15には、外部からの信号を受信する入力ポートが設けられており、その入力ポートには、上記変位センサー9の検出信号が入力されている。
【0023】
以下、こうした真空ダイカスト装置でのアルミ製シリンダーブロックの鋳造手順を、図2〜図4を参照して説明する。
アルミ製シリンダーブロックの鋳造に際しては、まず固定型1及び可動型2が真空ダイカスト装置にセットされる。そしてそれらの金型の余熱が行われる。
【0024】
余熱が完了すると、固定型1及び可動型2のキャビティー部に水溶性の離型剤が塗布され、その後、圧縮空気を型表面に吹き付けて残留した水分が除去される。こうして鋳造の準備が完了すると、固定型1及び可動型2が閉じられる。
【0025】
金型が閉じられると、図示しない自動滴下装置により、給湯口5を通して射出スリーブ6内に潤滑剤が滴下される。このとき滴下される潤滑剤には、黒鉛系の油性潤滑剤が使用される。潤滑剤が滴下されると、射出スリーブ6の熱で潤滑剤が燃焼し、燃焼ガスが発生するようになる。
【0026】
このとき、電子制御ユニット15は、金型キャビティー3を加圧系に接続するように三方弁11を制御する。金型キャビティー3に加圧系が接続されると、図2に示すように、金型キャビティー3の側から射出スリーブ6の給湯口5に向けて圧縮空気が流れるようになり、これにより、金型キャビティー3内、及び射出スリーブ6内の掃気が行われるようになる。そのため、潤滑剤の燃焼により発生した燃焼ガスは、給湯口5より外部に排出されるようになる。
【0027】
潤滑剤の滴下が完了すると、図3に示すように、溶湯の注湯が開始される。注湯中も、金型キャビティー3の側から射出スリーブ6の給湯口5に向けて圧縮空気を流しての金型キャビティー3内及び射出スリーブ6内の掃気は継続される。
【0028】
注湯が終了し、プランジャーチップ8が給湯口5を完全に塞ぐ位置まで前進したことを変位センサー9の検出結果から確認すると、電子制御ユニット15は、加圧系との接続を解除して、金型キャビティー3を減圧系に接続するように三方弁11を制御する。金型キャビティー3が減圧系に接続されると、図3に示すように、金型キャビティー3内や射出スリーブ6内から空気が排出され、減圧が開始されるようになる。
【0029】
減圧が開始されると、プランジャーチップ8が高速で前進されるようになり、これにより金型キャビティー3内に溶湯が射出されるようになる。そして溶湯の一部が減圧バルブ10に達した時点で、減圧バルブ10が閉じられる。
【0030】
その後、金型キャビティー3に充填された溶湯の凝固が完了するのを待ち、凝固が完了されると、金型が開かれて、アルミ製シリンダーブロックが取り出される。
ちなみに、発明者らの行った試験の結果によれば、掃気を行わずに鋳造を行ったときには、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みにより、最大でΦ2mm程度の系の鋳造欠陥(巣)がシリンダーボアに発生したものの、掃気を行った場合には、鋳造欠陥の径をΦ0.5mm以下に留めることができることが確認されている。
【0031】
なお、以上の本実施の形態では、真空タンク13及び真空ポンプ14を備える減圧系により上記減圧手段が構成されている。また圧縮空気配管12に接続された加圧系により掃気手段が構成されている。また三方弁11が上記切換手段に相当する構成となっている。
【0032】
以上説明した本実施の形態の真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態の真空ダイカスト装置は、金型キャビティー3内を真空減圧する減圧系と、溶湯を注湯するための給湯口5が設けられた射出スリーブ6と、射出スリーブ6内の溶湯を押圧して金型キャビティー3に射出させるプランジャーチップ8とを備えている。そして本実施の形態の真空ダイカスト装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気配管12を備え、その圧縮空気を金型キャビティー3の側から給湯口5に向けて流して、金型キャビティー3内及び射出スリーブ6内の掃気を行うようにしている。こうした本実施の形態の真空ダイカスト装置では、プランジャーチップ8の動きを良くするために射出スリーブ6に潤滑剤を滴下すると、射出スリーブ6の熱で潤滑剤が燃焼して燃焼ガスが発生する。このとき本実施の形態の真空ダイカスト装置では、こうした燃焼ガスの発生時に、金型キャビティー3を加圧系に接続することで、金型キャビティー3の側から給湯口5に向けて圧縮ガスを流して掃気させることが可能となっている。こうして金型キャビティー3の側から給湯口5に向けての掃気を行えば、射出スリーブ6にて発生した潤滑剤の燃焼ガスは、給湯口5から排出されるようになり、金型キャビティー3内には侵入しないようになる。したがって本実施の形態によれば、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥を効果的に抑制することができるようになる。
【0033】
(2)本実施の形態では、射出スリーブ6内に潤滑剤を滴下した時点から給湯口5がプランジャーチップ8により塞がれる時点まで掃気を行うようにしている。そのため、潤滑剤の燃焼ガスの金型キャビティー3内への侵入防止をより確実とすることができるようになる。
【0034】
(3)本実施の形態では、減圧系と加圧系の何れの系を金型キャビティー3に接続するかを切り換える三方弁11を備えるようにしている。そのため、三方弁11の操作のみで、掃気と真空減圧との切り換えを容易に行うことができるようになる。
【0035】
(4)給湯口5より射出スリーブ6内に給湯された溶湯をプランジャーチップ8で押圧して真空減圧された金型キャビティー3内に射出することで鋳造を行う本実施の形態の真空ダイカスト方法では、以下の工程を通じて鋳造を行うようにしている。
・射出スリーブ6内に潤滑剤を滴下する工程。
・潤滑剤を滴下した射出スリーブ6の給湯口5に向けて金型キャビティー3の側から圧縮ガスを流して掃気を行う工程。
・掃気の完了後に金型キャビティー3の真空減圧を行う工程。
【0036】
こうした本実施の形態の真空ダイカスト方法では、射出スリーブ6内への潤滑剤の滴下後、金型キャビティー3の側から給湯口5に向けて圧縮ガスを流しての掃気が行われるようになる。そしてその掃気の完了後に、金型キャビティー3の真空減圧が行われるようになる。プランジャーチップ8の動きを良くするために射出スリーブ6に潤滑剤を滴下すると、射出スリーブ6の熱で潤滑剤が燃焼し、燃焼ガスが発生するようになる。その際、本実施の形態では、そうした燃焼ガスの発生時に、金型キャビティー3の側から給湯口5に向けて圧縮空気を流して掃気がなされるようになる。こうした掃気を行えば、射出スリーブ6にて発生した潤滑剤の燃焼ガスは、給湯口5から排出されるようになり、燃焼ガスの金型キャビティー3内への侵入が防止されるようになる。したがって本実施の形態の真空ダイカスト方法によれば、潤滑剤の燃焼ガスの巻き込みによる鋳造欠陥を効果的に抑制することができるようになる。
【0037】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、真空ダイカスト装置の設置された施設に設置された圧縮空気配管12から掃気用の圧縮空気を得るようにしていたが、そうした設備の無い施設などでは、真空ダイカスト装置に専用の圧縮ポンプを設け、そのポンプから掃気用の圧縮空気を得るようにしても良い。
【0038】
・上記実施の形態では、圧縮空気により燃焼ガスの掃気を行うようにしていたが、窒素のような空気以外のガスを圧縮したものを用いて掃気を行うようにしても良い。
・上記実施の形態では、三方弁11により、掃気と真空減圧との切り換えを行うようにしていたが、その切り換えを別の手段により行うようにすることもできる。例えば加圧系と減圧系とにそれぞれ開閉弁を設け、いずれの開閉弁を開くかによって掃気と真空減圧との切り換えを行うも可能である。
【0039】
・上記実施の形態では、変位センサー9の検出結果に応じて掃気から真空減圧の切り換えを行うようにしていたが、切り換え時期の確認を他の方法で行うようにしても良い。例えば給湯口5を完全に塞ぐ位置までプランジャーチップ8が前進したときに開閉するスイッチを設け、そのスイッチの開閉に応じて掃気から真空減圧の切り換えを行うようにしても、同様のタイミングで掃気から真空減圧への切り換えを行うことが可能である。
【0040】
・上記実施の形態では、アルミ製シリンダーブロックを鋳造するための真空ダイカスト装置、方法として本発明を具体化した場合を説明したが、本発明の真空ダイカスト装置及び方法は、他の鋳造製品を鋳造するための装置、方法としても具体化することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…固定型、2…可動型、3…金型キャビティー、4…押し出しピン、5…給湯口、6…射出スリーブ、7…プランジャー、8…プランジャーチップ、9…変位センサー、10…減圧バルブ、11…三方弁(切換手段)、12…圧縮空気配管(掃気手段)、13…真空タンク(減圧手段)、14…真空ポンプ(減圧手段)、15…電子制御ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティー内を真空減圧する減圧手段と、溶湯を注湯するための給湯口が設けられた射出スリーブと、前記射出スリーブ内の溶湯を押圧して前記金型キャビティーに射出させるプランジャーチップと、を備える真空ダイカスト装置において、
前記金型キャビティーの側から前記給湯口に向けて圧縮ガスを流して掃気する掃気手段を備える
ことを特徴とする真空ダイカスト装置。
【請求項2】
前記掃気手段は、前記射出スリーブ内に潤滑剤を滴下した時点から前記給湯口が前記プランジャーチップにより塞がれる時点まで稼動される
請求項1に記載の真空ダイカスト装置。
【請求項3】
前記減圧手段及び前記掃気手段の何れの手段を前記金型キャビティーに接続するかを切り換える切換手段を備える
請求項1又は2に記載の真空ダイカスト装置。
【請求項4】
給湯口より射出スリーブ内に給湯された溶湯をプランジャーチップで押圧して真空減圧された金型キャビティー内に射出することで鋳造を行う真空ダイカスト方法であって、
前記射出スリーブ内に潤滑剤を滴下する工程と、
前記潤滑剤を滴下した前記射出スリーブの前記給湯口に向けて前記金型キャビティーの側から圧縮ガスを流して掃気を行う工程と、
前記掃気の完了後に前記金型キャビティーの真空減圧を行う工程と、
を備えることを特徴とする真空ダイカスト方法。
【請求項5】
前記掃気は、前記潤滑剤を滴下した時点より開始され、前記給湯口が前記プランジャーチップにより塞がれる時点まで継続される
請求項4に記載の真空ダイカスト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20310(P2012−20310A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159729(P2010−159729)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)