説明

真空処理装置

【課題】装置内の残留作業者を不可視状態、無応答状態でも検知することを可能にし、ロックアウトタグアウトに代表する安全防護の手順を作業者が怠った際にも安全確保ができる真空処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】内部で被処理物を処理する真空容器と、該真空容器に配設されて該真空容器の重量を計測する重量検知センサと、該重量検知センサからの重量情報を受信し、該重量情報に基づき装置普及のための安全確認動作を行う制御装置と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、特に、真空処理装置の製造、調整時、メンテナンス後などの装置内への作業者残留を監視し、不安全状態を防ぐ真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等を製造する真空処理装置は年々大型化しており、近年においては真空処理装置内に複数の作業者が無理なく入り作業ができるほどになっている。
真空処理装置は機能を満たすために真空処理装置内壁部には排気ポンプや様々な計測機器を取り付けており、作業者の出入り箇所は限られ、結果真空処理装置外部から内部を安易に見渡すことができない場合がほとんどである。
【0003】
装置内に作業者を残したまま装置を排気してしまうと人命を失う事態を引き起こすことになり、絶対に防止しなければならない。
ところで、工場内で作業者を守る装置としては、ロックアウトタグアウトが知られている(特許文献1など)。「ロックアウト」とは、機械や装置に供給されるエネルギー(動力)源などを施錠することによって遮断もしくは遮断し続けることであり、上記した「タグアウト」とは、エネルギー(動力)源の遮断中にエネルギー遮断装置の操作を禁止することをタグ(札)などによって明示することである。
そこで、大型真空処理装置においても、ロックアウトタグアウトが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−27382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロックアウトタグアウトは、作業者が内部で作業できるような大型真空処理装置での安全確保のために用いられるが、あくまでその作業自体は各自の自己防護という形で成り立っており、何らかの理由で作業者が施錠を怠ると防護自体成り立たない。
【0006】
また、このような真空処理装置においてはインターロックを設けてあるが、これは装置が生産のための準備が整ったか否かを判断しているに過ぎないことが多く、例えば真空処理装置内部の排気動作等に関しては、真空処理装置内が排気動作可能であるかの条件が成立しているかを監視している場合がほとんどである。
一方、真空処理装置は生産設備である以上、メンテナンス後、再び処理可能になるまでの時間が短いことが望まれる。そのため、真空処理装置内の排気を効率よく行う必要があり、真空処置装置は、一般的には短時間で高い真空度になるよう設計されている。 このため、真空処理装置内に他者に気づかれず残留した作業者がいた場合、装置の排気動作が始まってしまうと助けを求めることもできない。
【0007】
例えば、スパッタリング装置において、シールドは定期的に交換が必要であるが、シールドを交換するメンテナンスなどの際には真空処理装置の内部を大気圧力に戻し、メンテナンス用ハッチから作業者が真空処理装置の内部に入り、作業を行うことが一般的である。
【0008】
シールド交換のみならず、スパッタリング装置の場合はターゲットも真空処理装置内部から交換作業をすることが多く、メンテナンス時は真空処理装置の内部で不特定多数の作業者が作業していることがある。
【0009】
この際、一般的にはハッチに安全装置たるロックアウトタグアウトを用いて、真空処理装置内に入る作業者自身が施錠をおこない、各自で自身の安全防護を行うが、作業者自身で行う作業のため、忘れることや、真空処理装置内部への出入りが多い場合は煩雑と感じて、安全防護作業を怠る可能性を否定できない。
また、重量部品や専用治具なしに安定して置くことのできない部品等の搬入出をハッチから行うことを伴うメンテナンスでは、周囲の環境次第ではロックアウトタグアウト作業をしてからの真空処理装置の内部への進入が困難、煩雑である場合なども、不安全要因となりえる。
【0010】
仮にロックアウトタグアウトを実施できなかった作業者が真空処理装置内部で意識を失い、かつ目視困難な位置に倒れていたとすると、作業者の多いメンテナンス環境ではその作業者に気づくことが出来ないという可能性を否定できない。
【0011】
本発明はこのような状態が発生することを防止することを課題とする。即ち、装置内の残留作業者を不可視状態、無応答状態でも検知することを可能にし、ロックアウトタグアウトに代表する安全防護の手順を作業者が怠った際にも安全確保ができる真空処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の本発明により解決することができる。
すなわち、本発明は、内部で被処理物を処理する真空容器と、該真空容器に配設されて該真空容器の重量を計測する重量検知センサと、該重量検知センサからの重量情報を受信し、該重量情報に基づき装置普及のための安全確認動作を行う制御装置と、を有する真空処理装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常の作業者の安全を確保するロックアウトタグアウトを忘れたり、怠ったりした状態においても、真空処理装置内に残留した作業者を検知できる真空処理装置を提供することができる。
【0014】
すなわち、重量として真空処理装置内に残留した作業者を検知するため、目視可否に関係なく作業者を検知することができる。また、真空処理装置内の作業者の意識の有無にかかわらず検知することができるため、音声による応答に頼ることなく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の真空処理装置の側面概略摸式図である。
【図2】図1の真空処理装置で作業者が作業している状態を示す概略摸式図である。
【図3】本発明の実施形態の検知手順を示したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について、図1、2、3を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態の真空処理装置側面概略図である。図2は、図1の真空処理室にて作業者が作業している状態を示す概略摸式図である。図3は本発明の実施形態の検知手順の一例を表すチャートである。
【0017】
各構成の形状や大きさ、配置方法や数量は本発明を理解できる程度の概略であり、本発明の要旨を逸脱することなく変更および変形が可能である。
【0018】
本発明の真空処理装置は、内部でスパッタリング等の処理を行う真空容器1と、真空処理装置全体の制御を行う制御装置7および、交換シールド類の測定を行う計測ステージ10と、電気的に接続されて真空処理装置を形成している。
真空容器1の内部では被処理物の処理が行われる。真空容器1内には、不図示の搬送ユニットおよびスパッタリングユニットが搭載されている。また、真空容器1には、不図示のガス供給口および排気口が設けられており、ガス供給口からガスが供給され、排気口から排気が行われる。
表示デバイスに用いるスパッタリング装置は真空容器1のサイズが非常に大きく、作業者が真空処理装置1内部に入れるほどの容積があることが一般的である。
【0019】
真空容器1は、設置のために脚3によって自立している。また、真空容器1には、ハッチが設けられており、ハッチ8を開閉することにより、作業者が真空容器1内部に入れるようになっている。
真空容器1の脚3には第一の重量感知センサ4が配設されており、第一の重量感知センサ4により真空容器1の重量を計測することができる。
【0020】
真空処理装置1の上部には、上板2が設けられている。
上板2は、真空容器1に第二の重量感知センサ6を介して、設けられている。
すなわち,真空処理装置上面の作業者を含む重量物はすべて第二の重量感知センサ6により計測できる。
装置のサイズが大きい場合は、上板2の上面は大気側作業可能範囲5となっている。真空処理装置の設置フロアより一定以上の高さとなる場合は,防護柵等で安全確保される。作業者22は、通常の方法で大気側作業可能範囲5に上ることが可能である。
【0021】
大気側作業可能範囲5に作業者22が乗っても前述の脚3の設置された第一の重量検知センサ4だけでは、装置に対する重量増加分が、作業者21によるものか、作業者22によるものか区別できない。そこで、真空処理装置上部の大気側作業可能範囲5は上板2の上部面であるので、第二の重量検知センサ6により、作業者22の有無を検知する。
第二の重量検知センサでは、上板2の重量と作業者22の重量を検知するため、作業前に計測した第二の重量検知センサ6の計測重量を差し引くことにより、大気側作業可能範囲5上の作業者22の有無を判断することができる。
【0022】
図2は、真空容器1内で作業者21が、真空容器1外で作業者22が作業している状態を示す模式図である。
あらかじめ(図1の状態)、第一の重量感知センサ4により真空容器1のみの重量および、第二の重量感知センサ6により上板2の重量を計測しておけば、復旧作業前に第1の重量検知センサ4、第二の重量感知センサで各々重量を計測することにより、真空処理装置1内に作業者がいるか否かが判断できる。
なお、図1に示す例では脚3の上に第一の重量検知センサ4を設置しているが、装置重量を計測できる箇所であれば脚3の下に設置しても構わない。
【0023】
次に、本発明の装置を用いた検知方法を図3を用いて説明する。
装置をメンテナンスしようとした場合、まず、装置への大気開放指示を装置付属の制御装置7にて行う。制御装置7には、真空処理装置の動作を、操作することができる制御盤が設置されている。
【0024】
この際、第一の重量検知センサ4から装置重量を読み取り、制御装置7に初期値の重量情報として記憶させる。併せて、第二の重量検知センサ6からも重量情報を読み取り、初期値の重量情報として記憶させておく。
【0025】
装置が大気開放完了となったら、ハッチ8を開状態にできるように電気的に施錠できるハッチのロック9の開錠指示を制御装置7の制御盤により行う。ハッチが開錠した後、作業者が真空容器1内部に入り、真空容器1内のメンテナンスを実施する。
【0026】
メンテナンス終了後は、ハッチ8を閉じて、再び処理可能状態へ復旧する動作に入るが、
処理可能状態への復旧動作に入る前に、安全確認動作を行う。
安全確認動作は、第一重量検知センサ4と第二の重量検知センサ6により、各センサによる重量を計測し、真空容器1内の現在の重量を、制御装置7内のプログラムによって計算することにより行う。
即ち、第一の重量検知センサ4で計測された重量から第二の重量検知センサ6で計測された重量を差し引いた値が、制御装置7に記憶された初期値と現在の値と比較し、同一であれば、排気可能状態として、復旧動作を開始する。
【0027】
メンテナンスによっては、一部の真空容器内の構成部品を除去する必要がある。
この場合、除去した部品の重量と作業者の体重が同一であった場合、危険が伴うため、スパッタリング処理装置外に計測ステージ10を設け、メンテナンス後に除去した部品を載せておき、復旧時の重量測定を行う。
つまり計測ステージ10で検知した重量を現在の計測重量に加算する。
【0028】
メンテナンス時に部品追加による重量増加があった場合は重量不一致となり、エラーとなるが、これは安全側の動作であるので、問題ない。
上記の構成と一連の動作により安全を確認すれば、真空容器内の作業員を残留させることなく、安全にスパッタリング装置のメンテナンス後の復旧動作を開始することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 真空容器
2 上板
3 脚
4 第一の重量検知センサ
5 大気側作業可能範囲
6 第二の重量検知センサ
7 制御装置
8 ハッチ
9 ハッチのロック
10 計測ステージ
21 真空容器1内の作業者
22 真空容器1上の作業者



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で被処理物を処理する真空容器と、該真空容器に配設されて該真空容器の重量を計測する重量検知センサと、該重量検知センサからの重量情報を受信し、該重量情報に基づき装置普及のための安全確認動作を行う制御装置と、を有する真空処理装置。
【請求項2】
前記真空容器の上部に上板を備え、該上板に配設されて上板の重量を計測する第二の重量検知センサを有する請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記真空容器の部品の重量を計測する計測ステージを有することを特徴とする請求項2に記載の真空処理装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−190522(P2011−190522A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60060(P2010−60060)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】