説明

真空弁ユニット

【課題】主に、バイパス管の使用時にバイパス管と真空ホースとの両方を個別に開閉操作する必要を無くし得るようにする。
【解決手段】バイパス管25途中の真空ホース26の分岐部分に、バイパス管25の先端部25aと真空ホース26とのどちらか一方を、バイパス管25の真空下水管22側の部分25bに対して選択的に切替可能な三方弁41を設けるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空式下水道システムに用いられる真空弁ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然流下式下水道システムに代わって、真空式下水道システムの採用が増加しつつある。この真空式下水道システムは、真空圧を利用して、汚水枡に溜まった汚水を吸引収集するものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
より具体的には、真空式下水道システムは、建物などから排出された汚水を、真空弁を備えた汚水枡である真空弁ユニットに一時的に貯留しておくと共に、汚水枡の汚水が一定量に達した時に、真空弁を開放することにより、真空弁の下流側に接続された真空下水管を通じて、汚水を真空圧で真空ステーションの集水タンクへ移送するようにした下水道システムである。真空ステーションの集水タンクへ移送された汚水は、その後、圧送ポンプを用いて下水処理場へ送られて処理される。
【0004】
そして、上記した真空弁ユニットは、以下のようなものである。
【0005】
先ず、図5に示すように、汚水枡1の内部に、真空圧が作用される真空下水管2の先端部が挿入配置される。この真空下水管2の先端部に、真空弁3を介して、汚水枡1内部の汚水を吸込可能な汚水吸込管4が接続される。そして、真空弁3を開閉するための真空圧を取出可能な真空ホース5が、上記した真空下水管2や真空弁3などから分岐接続される。この真空ホース5は、真空下水管2などと比べてかなり小径のものとされる。この真空ホース5の途中には、メンテナンス時に真空圧を遮断するための小開閉弁6(常時開弁)が設置される。
【0006】
このような構成によれば、真空弁3を開くことにより、真空下水管2と汚水吸込管4とが連通され、真空下水管2の真空圧が、汚水吸込管4に作用されるようになる。これにより、汚水枡1内部の汚水を、汚水吸込管4から吸込み、真空弁3を介して真空下水管2へと移送することができる。
【0007】
反対に、真空弁3を閉じることにより、真空下水管2と汚水吸込管4との間が遮断され、真空下水管2の真空圧が、汚水吸込管4に作用されなくなる。これにより、汚水枡1内部の汚水の吸込みを停止させることができる。
【0008】
そして、真空弁3は、真空圧と大気圧とを利用して開閉される。真空弁3を開閉させるための真空圧は、通常、真空下水管2や真空弁3などから真空弁3の弁制御部3cへ供給される。なお、真空弁3は、汚水枡1内部の汚水の水位に応じて開閉されるように構成されている。
【0009】
このような真空弁3ユニットには、真空下水管2の先端部と真空弁3との間に、仕切弁7を設置したものが存在している。
【0010】
このように、真空下水管2の先端部と真空弁3との間に仕切弁7を設置することにより、仕切弁7を閉じることによって、真空下水管2と、真空弁3および汚水吸込管4との間を確実に遮断して、真空弁3および汚水吸込管4に真空圧が作用されないようにすることができる。これにより、容易に真空弁3のメンテナンスなどを行うことが可能となる。
【0011】
また、上記した真空弁3ユニットには、真空下水管2の先端部から真空弁3まで間の部分に、汚水枡1内部の汚水を直接、強制的に真空吸引可能なバイパス管8を分岐接続したものが存在している。このバイパス管8は、真空下水管2や汚水吸込管4などよりは径が小さいが、上記した真空ホースよりはかなり径が大きいものとされる。このバイパス管8の途中には、バイパス管8を開閉するための開閉弁9(常時閉弁)が設置される。なお、上記した仕切弁7については、設けても設けていなくても良い。
【0012】
このように、真空下水管2の先端部から真空弁3まで間の部分に、バイパス管8を設けることにより、必要な時に随時、開閉弁9を開けることによって、汚水枡1内部の汚水を直接、強制的に吸出すことができる。なお、必要な時とは、例えば、真空弁3の不具合(真空弁3が所定水位となっても開かないような事態)などによって汚水枡1内部の汚水の水位が異常に上昇してしまったような時や、真空弁3のメンテナンス作業の直前などである。
【0013】
バイパス管8を設けた場合、上記した真空ホース5は、真空弁3や仕切弁7や真空下水管2などから分岐させるようにしても良いが、真空ホース5を汚水の流れに対して遠い位置に離すために、バイパス管8の途中(開閉弁9の上流側)から分岐させるようにすることが行われている。
【0014】
また、上記とは反対に、上記したバイパス管8を、真空弁3や仕切弁7や真空下水管2などにおける真空ホース5の分岐部分の位置に接続することも考えられるが、真空ホース5の分岐部分は、上記したように、かなり口径が小さいため、詰まりを生じるおそれがあるので、バイパス管8を取付けることは通常行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009-281042号公報
【特許文献2】特開2010-116693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記真空弁ユニットには、以下のような問題があった。
【0017】
即ち、上記したように、バイパス管8の途中から真空ホース5を分岐接続した場合には、バイパス管8の使用時に、バイパス管8を流れる汚水が真空ホース5へ逆流して弁制御部3cへ流れ込まないようにする必要がある。そのために、開閉弁9によってバイパス管8を開く前に、小開閉弁6によって真空ホース5を確実に閉じておくようにしなければならない。
【0018】
しかし、小開閉弁6と開閉弁9とをそれぞれ開閉操作すること、および、これらを手順を間違えずに順番に開閉操作することは、作業員にとって煩わしく、また、開閉操作のし忘れが起こる可能性があった。
【0019】
特に、真空ホース5の途中の小開閉弁6は、文字通り小さく、しかも、バイパス管8の奥などに隠れた状態で配置されることが多いため、小開閉弁6の閉め忘れが起こり易かった。そして、小開閉弁6を閉め忘れた場合、真空ホース5を介して真空弁3の弁制御部3cに汚水が入り、真空弁3に不具合を生じさせてしまう。そこで、このような誤操作による不具合を防止するために、真空ホース5の小開閉弁6と真空弁3の弁制御部3cとの間の部分に、真空弁3への汚水の流入を防止可能な逆止弁10を設ける必要が生じる。
【0020】
また、バイパス管8の使用時に、小開閉弁6と開閉弁9とを正しく開閉操作した場合であっても、使用後に小開閉弁6を開けるのを忘れてしまうと、真空弁3の弁制御部3cに、真空弁3の開閉のための真空圧が付与されなくなるため、真空弁3が作動しないという二次的トラブルを生じるおそれがある。
【0021】
更に、上記した逆止弁10が必須の構成となる場合、万一、真空ホース5に汚水が流入した際に、逆止弁10に異物の噛み込みなどが生じてしまうと、真空弁3の正常な作動が妨げられるおそれがあるので、逆止弁10の管理が必要になる。
【0022】
また、上記の他にも、以下のような要望が存在している。
【0023】
即ち、上記した仕切弁7やバイパス管8は、真空弁3のメンテナンス等を行う上で非常に有効なものであるが、既存の真空弁3ユニットにはこれらのうちの少なくともいずれかを備えていないものも多く、機能向上のためにこれらを追設することが望まれている。しかし、これらを取付けるためには、汚水枡1の内部に空間的な余裕が必要であり、既存の真空弁3ユニットには、そのような空間的な余裕のないものが多い。よって、これらを追設したくても、あきらめざるを得ない状況が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、汚水枡の内部に、真空圧が作用される真空下水管の先端部が挿入配置され、該真空下水管の先端部に、真空弁を介して、汚水枡内部の汚水を吸込可能な汚水吸込管が接続され、前記真空弁または真空弁よりも下流側の部分に、汚水枡内部の汚水を直接真空吸引可能なバイパス管が分岐接続され、該バイパス管の途中に、前記真空弁を開閉するための真空圧を取出可能な真空ホースが分岐接続された真空弁ユニットであって、前記バイパス管途中の前記真空ホースの分岐部分に、前記バイパス管の先端部と前記真空ホースとのどちらか一方を、前記バイパス管の真空下水管側の部分に対して選択的に切替可能な三方弁を設けたことを特徴とする。
【0025】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記三方弁を、1箇所の下部接続口と、該下部接続口を挟んで互いに反対の側に位置する2箇所の上部接続口とを有する側面視ほぼT字型のものとすると共に、前記下部接続口に前記バイパス管の真空下水管側の部分を接続し、前記上部接続口の一方に前記バイパス管の先端部側の部分を接続し、前記上部接続口の他方に前記真空ホースを接続したことを特徴とする。
【0026】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記三方弁を、前記汚水枡の上端部近傍の位置に保持可能な弁保持部を設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項4に記載された発明は、汚水枡の内部に、真空圧が作用される真空下水管の先端部が挿入配置され、該真空下水管の先端部に、真空弁を介して、汚水枡内部の汚水を吸込可能な汚水吸込管が接続され、前記真空弁または真空弁よりも下流側の部分に、汚水枡内部の汚水を直接真空吸引可能なバイパス管が分岐接続され、該バイパス管の途中に、前記真空弁を開閉するための真空圧を取出可能な真空ホースが分岐接続された真空弁ユニットであって、前記真空弁に、バイパス管を取付けるためのバイパス管取付予定部が予め形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、バイパス管途中の真空ホースの分岐部分に、三方弁を設けたことにより、三方弁のみを切替操作することによって、バイパス管の先端部と真空ホースとの一方の開放と他方の遮断とを、同時に行うことが可能となる。これにより、バイパス管の使用時や使用後にバイパス管と真空ホースとを手順に従って順番に開閉操作する必要を無くし、開閉操作の煩わしさや、開閉操作のし忘れや、開閉操作のし忘れによる真空弁の動作不良などをなくして、確実にメンテナンスを行うことが可能となる。
【0029】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、バイパス管の先端部側の部分と、真空ホースとを、下部接続口を挟んで互いに反対の側に位置された2箇所の上部接続口のそれぞれに接続することにより、バイパス管の先端部側の部分と、真空ホースとが連通し難い構造的とすることができる。これにより、バイパス管の先端部側の部分から真空吸引された汚水が真空ホースを介して真空弁へ逆流して不具合を生じることを確実に防止することが可能となる。
【0030】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、弁保持部を設けることにより、三方弁を汚水枡の上端部近傍の位置に保持することが可能となる。これにより、三方弁を手の届き易い位置に設置しておくことが可能となる。
【0031】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、真空弁に予めバイパス管取付予定部を形成しておくことにより、必要な場合に、バイパス管取付予定部を利用して、バイパス管を取付けることが可能となる。例えば、既存の汚水枡で内部に空間的な余裕がない場合であっても、バイパス管取付予定部を備えた真空弁に交換するだけで、バイパス管取付予定部を利用してバイパス管を取付けることが可能となり、バイパス管を利用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例にかかる真空弁ユニットの縦断面図である。
【図2】図1の横断面図である。
【図3】図1の真空弁に設けられたバイパス管取付予定部の部分拡大断面図である。
【図4】図3を軸線方向から見た部分拡大断面図である。
【図5】従来例にかかる真空弁ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、上記した各問題点を解決するために、主に、バイパス管の使用時にバイパス管と真空ホースとの両方を個別に開閉操作する必要を無くす構成を備えるようにしている。
【0034】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0035】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。
【0036】
<構成>まず、構成について説明する。
【0037】
この実施例は、真空圧を利用して、汚水枡に溜まった汚水を吸引収集する真空式下水道システムに関する。
【0038】
このような真空式下水道システムは、建物などから排出された汚水を、真空弁を備えた汚水枡である真空弁ユニットに一時的に貯留しておくと共に、汚水枡の汚水が一定量に達した時に、真空弁を開放することにより、真空弁の下流側に接続された真空下水管を通じて、汚水を真空圧で真空ステーションの集水タンクへ移送するようにした下水道システムである。真空ステーションの集水タンクへ移送された汚水は、その後、圧送ポンプを用いて下水処理場へ送られて処理される。
【0039】
上記した真空弁ユニットは、より具体的には、以下のような構成を備えている。
【0040】
即ち、図1(および図2)に示すように、汚水枡21の内部に、真空圧が作用される真空下水管22の先端部が挿入配置される。汚水枡21の内部に挿入された真空下水管22の先端部に、真空弁23を介して、汚水枡21内部の汚水を吸込可能な汚水吸込管24が接続される。
【0041】
更に、真空弁23または真空弁23よりも(汚水の流れの)下流側の部分に、汚水枡21内部の汚水を直接、強制的に真空吸引可能なバイパス管25が分岐接続される。
【0042】
そして、バイパス管25の途中に、真空弁23を開閉するための真空圧を取出可能な真空ホース26が分岐接続される。
【0043】
ここで、「汚水枡21」は、地中に埋設されるものである。この場合、汚水枡21は、コンクリート製の容器状をした汚水枡本体21aと、この汚水枡本体21aの上端部に設けられた開口部に対して開閉可能に取付けられた蓋部21bとを有している。汚水枡本体21aの側部には、汚水流入管21cや通気管21dが接続されている。
「真空下水管22」は、所要の排水勾配とリフト部とを繰り返しつつ横方向へ延設されるものである。
「真空弁23」は、真空下水管22に接続される短管状の接続管部23aと、この接続管部23aの内部に設けられた図示しない弁座に対して図示しない弁体を開閉動させるための弁本体23bと、この弁本体23bに弁体の開閉動を行わせるための弁制御部23cとを備えている。接続管部23aや弁本体23bのハウジングは、例えば、樹脂などで構成されている。また、弁制御部23cには、水位検知管31に取付けられた水位検知用ホース32が接続される。弁制御部23cや弁本体23bには、空気連通管33に取付けられた大気ホース34,35が接続される。
そして、真空下水管22と真空弁23との間には、必要に応じて「仕切弁36」が設けられる。
「バイパス管25」は、真空下水管22の(汚水枡21の内部に挿入された)先端部、仕切弁36(の真空下水管22および真空弁23との接続部分)、真空弁23の接続管部23a(の図示しない弁座よりも下流側の部分)のいずれかに接続することができる。この場合には、バイパス管25は、仕切弁36の下流側に接続されている。
「真空ホース26」は、真空下水管22や上記したバイパス管25などと比べてかなり小径のものとされる。この真空ホース26の途中には、真空ホース26を閉止可能な小開閉弁37(常時開弁)が設けられる。この小開閉弁37は、真空弁23をメンテナンスする時に真空ホース26を閉じるために必要なものである。また、必須ではないが、多重の安全手段として、真空ホース26の小開閉弁37と弁制御部23cとの間に、弁制御部23cへの汚水の流入を防止可能な逆止弁38を設けるようにしても良い。
【0044】
なお、真空下水管22と、仕切弁36と、真空弁23と、汚水吸込管24とのそれぞれの間は、ゴム輪接続と、バンド固定とを併用した連結部材などによって気密に連結される。
【0045】
そして、以上のような構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0046】
(1)バイパス管25途中の真空ホース26の分岐部分に、バイパス管25の先端部25aと真空ホース26とのどちらか一方を、バイパス管25の真空下水管22側の部分25b(基端部)に対して選択的に切替可能な三方弁41を設けるようにする。
【0047】
(2)そして、上記した三方弁41を、1箇所の下部接続口41aと、この下部接続口41aを挟んで互いに反対の側に位置する2箇所の上部接続口41b,41cとを有する側面視ほぼT字型のものとする。そして、下部接続口41aに、バイパス管25の真空下水管22側の部分25bを接続する。また、上部接続口41bの一方に、バイパス管25の先端部25a側の部分を接続する。そして、上部接続口41cの他方に、真空ホース26を接続する。
【0048】
ここで、「三方弁41」は、上記した下部接続口41aや上部接続口41b,41cを有する弁本体41dと、三方弁41を切替えるための操作部41e(ハンドル部)とを有している。三方弁41は、全体がほぼ硬質の樹脂によって構成されている。この場合、一方の上部接続口41bは、下向きに曲げ形成されている。また、他方の上部接続口41cは、下向きに曲げ形成された後に、真空弁23の弁制御部23cへ向けて横方向に曲げ形成されている。
「バイパス管25の真空下水管22側の部分25b」「バイパス管25の先端部25a」「真空ホース26」は、それぞれ、樹脂製の柔軟な管(フレキシブル管)によって構成されている。
【0049】
(3)更に、三方弁41を、汚水枡21の上端部近傍の位置に保持可能な弁保持部43を設ける。
【0050】
この「弁保持部43」は、例えば、汚水枡21内部の上端付近に取付けられた係止ブラケットや係止フックなどとすることができる。
【0051】
(4)そして、図3、図4に示すように、真空弁23の真空下水管22等との接続部分(接続管部23a)に対し、バイパス管25を取付けるためのバイパス取付口44を形成可能なバイパス管取付予定部45を予め設けるようにする。
【0052】
この「バイパス管取付予定部45」は、バイパス管25の取付けに必要な強度(肉厚など)および大きさを確保可能な厚肉管台部とされている。このバイパス管取付予定部45は、真空弁23の接続管部23aの上半部(好ましくは上部)に一体的に形成される。そして、バイパス管取付予定部45の外面(この場合には上面)は、バイパス管25と同じかそれよりも径の大きい平坦面45aとされている。バイパス管取付予定部45の外面中央部には、バイパス取付口44の中心を規定すると共に、バイパス取付口44を開口形成する際の加工起点となる小凹部45b(ポンチ部)が設けられる。そして、バイパス管取付予定部45を開口して成るバイパス取付口44には、バイパス管25を接続するための接続用部材46が取付けられることとなる。この接続用部材46は、例えば、筒状をしてバイパス取付口44へ螺着可能または圧入固定可能なものなどとされる。そのために、接続用部材46のバイパス取付口44に対する挿入部分の外周にはネジや圧入部などが形成される。
【0053】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0054】
真空弁23を開くことにより、真空下水管22と汚水吸込管24とが連通され、真空下水管22の真空圧が、汚水吸込管24へ作用されるようになる。これにより、汚水枡21内部の汚水を、汚水吸込管24から吸込み、真空弁23を介して真空下水管22へと移送することができる。
【0055】
反対に、真空弁23を閉じることにより、真空下水管22と汚水吸込管24との間が遮断され、真空下水管22の真空圧が、汚水吸込管24に作用されなくなる。これにより、汚水枡21内部の汚水の吸込みを停止させることができる。
【0056】
ここで、通常時には、三方弁41を、バイパス管25の真空下水管22側の部分25bと、真空ホース26とが接続されるよう選択的に切替えておく。これにより、真空ホース26を介して真空弁23に真空圧が付与される状態となり、この真空圧によって真空弁23を開閉させることが可能となる。
【0057】
また、メンテナンス時などには、仕切弁36を閉じることで、真空下水管22と、真空弁23および汚水吸込管24との間を確実に遮断して、真空弁23や汚水吸込管24に真空圧が作用されないようにすることができる。また、メンテナンス終了後には、仕切弁36を開くことで、真空弁23や汚水吸込管24に真空圧が作用されるようにすることができる。これにより、容易にメンテナンスを行うことが可能となる。
【0058】
そして、バイパス管25の使用時には、三方弁41を、バイパス管25の真空下水管22側の部分25bと、バイパス管25の先端部25aとが接続されるよう切替える。これにより、汚水枡21内部の汚水を、真空圧により、バイパス管25の先端部25aから強制的に吸込んで、三方弁41、バイパス管25の真空下水管22側の部分25bを介し、真空下水管22へと送るようにすることができる。よって、汚水枡21の内部の汚水を吸出して異常水位を解消したり真空弁23のメンテナンスを行ったりすることが可能となる。
【0059】
バイパス管25の使用後には、三方弁41を、バイパス管25の真空下水管22側の部分25bと、真空ホース26とが接続される状態に切替える。これにより、真空弁23に開閉用の真空圧が付与されることとなるので、真空弁23が動作しないという二次的トラブルをなくすことができる。
【0060】
また、三方弁41によって、二者択一的にバイパス管25の先端部25aと真空ホース26とが切替えられるので、真空ホース26に対して、逆止弁38を設ける必要をなくすことができる。
【0061】
そして、例えば、既存の汚水枡21で、内部に空間的な余裕がない場合に、上記したバイパス管25を追設する場合、先ず、既存の真空弁を、バイパス管取付予定部45を備えた上記真空弁23に交換する。そして、真空弁23の真空下水管22との接続部分(接続管部23a)に形成したバイパス管取付予定部45を利用して、バイパス管25を接続するには、小凹部45bを利用してバイパス取付口44を加工形成し、形成されたバイパス取付口44に接続用部材46を取付けて、接続用部材46にバイパス管25を取付けるようにする。そして、バイパス管25の途中から真空ホース26を分岐し、真空ホース26の分岐部に上記した三方弁41を設けるようにする。
【0062】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
(1)バイパス管25途中の真空ホース26の分岐部分に、三方弁41を設けたことにより、三方弁41のみを切替操作することによって、バイパス管25の先端部25aと真空ホース26との一方の開放と他方の遮断とを、同時に行うことが可能となる。これにより、バイパス管25の使用時や使用後にバイパス管25と真空ホース26とを手順に従って順番に開閉操作する必要を無くし、開閉操作の煩わしさや、開閉操作のし忘れや、開閉操作のし忘れによる真空弁23の動作不良などをなくして、確実にメンテナンスを行うことが可能となる。
【0064】
(2)バイパス管25の先端部25a側の部分と、真空ホース26とを、下部接続口41aを挟んで互いに反対の側に位置された2箇所の上部接続口41b,41cのそれぞれに接続することにより、バイパス管25の先端部25a側の部分と、真空ホース26とが連通し難い構造とすることができる。これにより、バイパス管25の先端部25a側の部分から真空吸引された汚水が真空ホース26を介して真空弁23へ逆流して不具合を生じることを確実に防止することが可能となる。
【0065】
(3)弁保持部43を設けることにより、三方弁41を汚水枡21の上端部近傍の位置に保持することが可能となる。これにより、三方弁41を手の届き易い位置に設置しておくことが可能となる。
【0066】
(4)真空弁23に予めバイパス管取付予定部45を形成しておくことにより、必要な場合に、バイパス管取付予定部45を利用して、バイパス管25を取付けることが可能となる。例えば、既存の汚水枡21で内部に空間的な余裕がない場合であっても、バイパス管取付予定部45を備えた真空弁23に交換するだけで、バイパス管取付予定部45を利用してバイパス管25を取付けることが可能となり、バイパス管25を利用することができるようになる。
【0067】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0068】
21 汚水枡
22 真空下水管
23 真空弁
24 汚水吸込管
25 バイパス管
25a 先端部
25b 部分(基端部)
26 真空ホース
41 三方弁
41a 下部接続口
41b 上部接続口
41c 上部接続口
43 弁保持部
45 バイパス管取付予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水枡の内部に、真空圧が作用される真空下水管の先端部が挿入配置され、
該真空下水管の先端部に、真空弁を介して、汚水枡内部の汚水を吸込可能な汚水吸込管が接続され、
前記真空弁または真空弁よりも下流側の部分に、汚水枡内部の汚水を直接真空吸引可能なバイパス管が分岐接続され、
該バイパス管の途中に、前記真空弁を開閉するための真空圧を取出可能な真空ホースが分岐接続された真空弁ユニットであって、
前記バイパス管途中の前記真空ホースの分岐部分に、前記バイパス管の先端部と前記真空ホースとのどちらか一方を、前記バイパス管の真空下水管側の部分に対して選択的に切替可能な三方弁を設けたことを特徴とする真空弁ユニット。
【請求項2】
前記三方弁を、1箇所の下部接続口と、該下部接続口を挟んで互いに反対の側に位置する2箇所の上部接続口とを有する側面視ほぼT字型のものとすると共に、
前記下部接続口に前記バイパス管の真空下水管側の部分を接続し、前記上部接続口の一方に前記バイパス管の先端部側の部分を接続し、前記上部接続口の他方に前記真空ホースを接続したことを特徴とする請求項1記載の真空弁ユニット。
【請求項3】
前記三方弁を、前記汚水枡の上端部近傍の位置に保持可能な弁保持部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空弁ユニット。
【請求項4】
汚水枡の内部に、真空圧が作用される真空下水管の先端部が挿入配置され、
該真空下水管の先端部に、真空弁を介して、汚水枡内部の汚水を吸込可能な汚水吸込管が接続され、
前記真空弁または真空弁よりも下流側の部分に、汚水枡内部の汚水を直接真空吸引可能なバイパス管が分岐接続され、
該バイパス管の途中に、前記真空弁を開閉するための真空圧を取出可能な真空ホースが分岐接続された真空弁ユニットであって、
前記真空弁に、バイパス管を取付けるためのバイパス管取付予定部が予め形成されたことを特徴とする真空弁ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−57386(P2012−57386A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203094(P2010−203094)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】