説明

真空採血管の開栓装置及び開栓方法

【課題】真空採血管の開栓時に内部の血液が飛散するという不具合を簡単に解消でき、コンタミネーションの問題を解決できる真空採血管の開栓装置を提供する。
【解決手段】開口部が栓体14によって閉栓され、内部が真空状態の真空採血管11を開栓する真空採血管11の開栓装置24において、真空採血管11を開栓ポジション23で直立状態にクランプする採血管クランプ機構25と、前記開栓ポジション23に設けられ、前記真空採血管11の栓体14を咬持するチャック機構41と、前記チャック機構41に設けられ、前記真空採血管11の栓体14を咬持したとき、該栓体14を含む前記真空採血管11の開口部周辺を密封するとともに、この密封領域を前記真空採血管11の内圧と略同圧に減圧する密封減圧手段と、前記チャック機構41を栓咬持位置から上昇させ、前記真空採血管11の栓体14を開栓する昇降機構とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血した血液を収容する真空採血管から栓を自動的に取外す真空採血管の開栓装置及び開栓方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液を収容する試験管は、その開口部がゴム栓等の栓体によって閉塞されている。そして、例えば、血液の分取・分注装置においては、多数本の試験管が試験管ホルダー等によって1本ずつ支持され、ベルトコンベアによって搬送される。搬送途中には開栓ポジションが設けられ、試験管が開栓ポジションに到達すると、試験管の搬送が一時停止され、試験管栓取外し装置によって試験管の栓体が自動的に取り外される。栓体が取り外された試験管は、再びコンベアによって血液の分取・分注ポジションに搬送され、試験管内の血液は、分取・分注装置によって分取・分注される。
【0003】
前記試験管栓取外し装置は、試験管が開栓ポジションに到達すると、試験管クランプ機構によって保持した状態で、試験管の栓体をチャック機構によってチャックされる。その後、チャック機構を昇降機構によって上昇させ、試験管の栓体を取り外すように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−271991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血液が収容された試験管が、減圧されている真空採血管においては、採血管内が真空で、外部が大気圧であるため、開栓すると同時に大気圧が真空の採血管内に急激に侵入する。このため、採血管内の血液の液面が大気圧によって押圧され、採血管内の血液が飛散し、外部に飛び散って周辺機器、隣の真空採血管に付着して汚染させるという問題があり、コンタミネーションの原因になっている。
【0005】
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、真空採血管の開栓時に内部の血液が飛散するという不具合を簡単に解消でき、コンタミネーションの問題を解決できる真空採血管の開栓装置及び開栓方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1は、開口部が栓体14によって閉栓され、内部が真空状態の真空採血管11を開栓する真空採血管11の開栓装置24において、真空採血管11を開栓ポジション23で直立状態にクランプする採血管クランプ機構25と、前記開栓ポジション23に設けられ、前記真空採血管11の栓体14を咬持するチャック機構41と、前記チャック機構41に設けられ、前記真空採血管11の栓体14を咬持したとき、該栓体14を含む前記真空採血管11の開口部周辺を密封するとともに、この密封領域を前記真空採血管11の内圧と略同圧に減圧する密封減圧手段と、前記チャック機構41を栓咬持位置から上昇させ、前記真空採血管11の栓体14を開栓する昇降機構と、を具備したことを特徴とする真空採血管の開栓装置にある。
【0007】
請求項2は、請求項1の前記チャック機構41は、シリンダ42と、このシリンダ42によって駆動され前記栓体14をその側面から挟持する一対のチャック部材44と、これらチャック部材44に設けられ前記栓体14に穿刺される穿刺針46とから構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1の前記密封減圧手段は、前記チャック機構41と一体的に開閉し、閉塞時には前記チャック部材44及び前記真空採血管11の開口部周辺を包容する少なくとも一対の覆い部材47からなり、この覆い部材47には、内部を減圧する真空吸引機構が接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項1または3の前記一対の覆い部材47は、横断面が略半円状で、その開口縁部を対向させた開閉自在な一対の容器からなり、これら容器の開口縁部には閉塞時に密接して前記真空採血管11の周囲を遮蔽するシール部材48が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、開口部が栓体14によって閉栓され、内部が真空状態の真空採血管11を開栓する真空採血管の開栓方法において、真空採血管11を開栓ポジション23で直立状態にクランプする第1の工程と、クランプされた前記真空採血管11の栓体14をチャックする第2の工程と、前記真空採血管11の栓体14をチャックしたとき、該栓体14を含む前記真空採血管11の開口部周辺を密封するとともに、この密封領域を前記真空採血管11の内圧と略同圧に減圧する第3の工程と、前記真空採血管11の栓体14を開栓する第4の工程と、からなる真空採血管の開栓方法にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、真空採血管の開栓前に、栓体を含む真空採血管の開口部周辺を密封するとともに、この密封領域を減圧することにより、真空採血管の内圧との圧力差を少なくすることができる。従って、開栓すると同時に大気圧が真空の採血管内に急激に侵入して採血管内の血液の液面が大気圧によって押圧されるという不具合を解消でき、採血管内の血液が外部に飛び散って周辺機器、隣の真空採血管に付着して汚染させるという、コンタミネーションの問題を解消できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は真空採血管の開栓装置の正面図、図2は覆い部材の斜視図、図3(a)(b)は要部を拡大した縦断正面図、図4は図3のA−A線に沿う断面図である。11は真空採血管であり、プラスチックもしくはガラス製の管体12の内部には採血した血液13が収容されている。管体12の開口部はゴムもしくは合成樹脂材料からなる栓体14によって閉塞され、内部は真空状態に保たれている。
【0014】
真空採血管11は採血管ホルダー15に挿入保持され、直立状態に保持されている。採血管ホルダー15は、底面を有する筒体16の下端部に上下一対のフランジ17が設けられ、これらフランジ17間には環状溝18が設けられている。この採血管ホルダー15は、真空採血管11を保持して採血管搬送路19上を搬送されるようになっている。
【0015】
採血管搬送路19は、上面に採血管ホルダー15の底面が載置される載置面を有するエンドレスベルトからなるベルトコンベア20と、このベルトコンベア20の両側に立設された一対のガイドレール21と、これらガイドレール21の互いに対向する面に設けられ、採血管ホルダー15の環状溝18と係合する案内突条22とから構成されている。そして、ベルトコンベア20の走行に伴って真空採血管11を保持した採血管ホルダー15が一列縦隊で搬送されるようになっている。
【0016】
採血管搬送路19の搬送途中には真空採血管11の栓体14を開栓する開栓ポジション23が設けられている。開栓ポジション23には管体12から栓体14を自動的に取り外す本発明の開栓装置24が設けられている。
【0017】
次に、開栓装置24について説明すると、開栓ポジション23には真空採血管11を開栓位置で直立状態に保持する採血管クランプ機構25が設けられている。この採血管クランプ機構25は、採血管搬送路19の上部で、該搬送路19を挟んで互いに対向する一対のエアシリンダ26が水平に固定されている。これらエアシリンダ26のピストンロッド27には採血管ホルダー15に支持された真空採血管11の管体12を両側から挟持するクランプ体28が設けられている。このクランプ体28は例えばゴム部材からなり、クランプ面には管体12の外周面に沿う円弧面が設けられ、管体12が周方向及び軸方向に移動しないように保持するようになっている。
【0018】
開栓ポジション23の上方位置には固定枠29が設けられている。固定枠29には鉛直方向に一対のガイド部材30が固定されている。固定枠29には昇降自在な可動枠31が設けられ、この可動枠31にはガイド部材30に案内されて昇降する昇降軸32が設けられている。
【0019】
固定枠29の上部には正逆回転可能な駆動モータ33がその回転軸34を上向きにして取り付けられ、回転軸34には駆動スプロケット35が装着されている。固定枠29には駆動モータ33の左右方向に延長する支持プレート36が固定され、この支持プレート36の両端部には従動スプロケット37が回転自在に取り付けられている。駆動スプロケット35と左右の従動スプロケット37との間には無端チェーン38が掛け渡され、左右の従動スプロケット37は同方向に回転するようになっている。
【0020】
左右の従動スプロケット37にはこれと一体に回転するスクリューロッド39が設けられ、これらスクリューロッド39は下方に向かって延長している。さらに、可動枠31には左右のスクリューロッド39と螺合するナット部材40が固定されている。従って、スクリューロッド39の回転運動はナット部材40によって直線運動に変換され、固定枠29に対して可動枠31が昇降する昇降機構を構成している。
【0021】
可動枠31に固定された昇降軸32の下端部には真空採血管11の栓体14を咬持するチャック機構41が設けられている。チャック機構41は、駆動機構として、例えば2軸エアシリンダ42を備えており、昇降軸32の下端部に横向きに固定されている。2軸エアシリンダ42の両端部には同時に左右(開閉)方向に移動自在な開閉部材43を介して一対のチャック部材44が設けられている。
【0022】
一対のチャック部材44のチャック面には栓体14の外周面に沿う円弧面45が設けられ、円弧面45の内部には栓体14に穿刺可能な穿刺針46が水平方向に突設されている。さらに、一対のチャック部材44には密封減圧手段としての開閉可能な一対の覆い部材47が設けられている。
【0023】
一対の覆い部材47は円筒体を左右に2分割した形状であり、上下面には閉塞部47a、47bが設けられている。覆い部材47の上部の閉塞部47aは前記チャック部材44と一体的に固定され、このチャック部材44の上部には円弧面45の上部を覆う閉塞部47cが設けられている。さらに、閉塞部47bには真空採血管11の管体12に嵌合する半円状の嵌合部47dが設けられている。覆い部材47の開口縁部及び閉塞部47a,47b,47cの開口縁部にはゴム部材等のシール部材48が装着され、覆い部材47及び閉塞部47a,47b,47cが閉じたときにチャック部材44を包容する密封領域としての空間部49が形成されるようになっている。
【0024】
覆い部材47の閉塞部47aには透孔が設けられ、この透孔は配管50を介して2軸エアシリンダ42に固定された真空吸引機構としての真空ポンプ51と接続されている。そして、覆い部材47によって構成される空間部49内を真空吸引して減圧できるようになっている。
【0025】
次に、前述のように構成された開栓装置の作用について説明する。
【0026】
採血した血液13が収容されている真空採血管11の開口部は栓体14によって閉塞され、内部は真空状態に保たれている。この真空採血管11は試験管ホルダー15に挿入保持され、採血管搬送路19によって一方向に搬送される。真空採血管11が保持された採血管ホルダー15が開栓ポジション23に到達すると、センサ等によって検知され、採血管ホルダー15が停止手段によって停止されると同時に採血管クランプ機構25が作動する。
【0027】
採血管クランプ機構25の一対のエアシリンダ26は同時に作動し、ピストンロッド27が突出してクランプ体28によって採血管ホルダー15に支持された真空採血管11の管体12を両側から挟持して管体12の周方向及び軸方向に移動しないように固定する。
【0028】
次に、駆動モータ33が駆動し、駆動スプロケット35が回転し、この回転は無端チェーン38を介して従動スプロケット37に伝達される。左右の従動スプロケット37の回転によってスクリューロッド39が回転すると、これらスクリューロッド39に螺合しているナット部材40が下方に移動する。従って、固定枠29に対して可動枠31がガイド部材30に案内されて下降し、昇降軸32の下端部に設けられたチャック機構41が下降する。
【0029】
チャック機構41の一対のチャック部材44は開放状態にあり、真空採血管11の栓体14の側部に一対のチャック部材44が対向する位置に到達すると、駆動モータ33は停止する。そして、チャック機構41の2軸エアシリンダ42が作動し、開閉部材43を介して一対のチャック部材44が閉じる。従って、栓体14は一対のチャック部材44によって咬持され、穿刺針46が栓体14の側壁に穿刺される。チャック部材44には覆い部材47が設けられているため、チャック部材44の円弧面45の上方は閉塞部47cで閉塞され、真空採血管11の管体12には嵌合部47dが嵌合され、覆い部材47の開口縁部及び閉塞部47a,47b,47cの開口縁部はシール部材48によってシールされる。従って、真空採血管11の開口部を含む周囲はチャック部材44とともに空間部49の内部に包容される。
【0030】
このとき、真空ポンプ51は常時真空吸引されているため、覆い部材47の閉塞によって空間部49内は減圧され、真空採血管11の内部と略同圧になる。この状態で、駆動モータ33が逆方向に駆動すると、スクリューロッド39が逆転し、ナット部材40を介して昇降軸32が上昇する。覆い部材47は一対のチャック部材44と一緒に上昇し、嵌合部47dは管体12の外周面を摺動して上昇する。
【0031】
従って、チャック機構41の一対のチャック部材44によって咬持されている栓体14はチャック部材44の上昇に伴って管体12から取り外され、真空採血管11の栓体14が開栓される。このとき、空間部49内は減圧され、真空採血管11の内部との圧力差が少なくなるため、真空採血管11の内部の血液13が大気圧によって急激に押圧されることはなく、真空採血管11内の血液13が外部に飛び散って周辺機器、隣の真空採血管に付着して汚染させるという、コンタミネーションの問題を解消できる。
【0032】
なお、前記実施形態においては、チャック機構41の一対のチャック部材44によって栓体14を咬持し、チャック機構41をそのまま上昇させて開栓するようにしたが、チャック部材44によって栓体14を回転させながら開栓させてもよく、抉じ開けるようにしてもよい。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る真空採血管の開栓装置の正面図。
【図2】同実施形態の覆い部材の斜視図。
【図3】同実施形態の開栓装置の要部を示し、(a)はチャック部材が開いているときの縦断正面図、(b)はチャック部材が閉じているときの縦断正面図。
【図4】同実施形態を示し、図3のA−A線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0035】
11…真空採血管、14…栓体、15…採血管ホルダー、23…開栓ポジション、24…開栓装置、25…採血管クランプ機構、41…チャック機構、44…チャック部材、47…覆い部材、48…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が栓体によって閉栓され、内部が真空状態の真空採血管を開栓する真空採血管の開栓装置において、
真空採血管を開栓ポジションで直立状態にクランプする採血管クランプ機構と、
前記開栓ポジションに設けられ、前記真空採血管の栓体を咬持するチャック機構と、
前記チャック機構に設けられ、前記真空採血管の栓体を咬持したとき、該栓体を含む前記真空採血管の開口部周辺を密封するとともに、この密封領域を前記真空採血管の内圧と略同圧に減圧する密封減圧手段と、
前記チャック機構を栓咬持位置から上昇させ、前記真空採血管の栓体を開栓する昇降機構と、
を具備したことを特徴とする真空採血管の開栓装置。
【請求項2】
前記チャック機構は、シリンダと、このシリンダによって駆動され前記栓体をその側面から挟持する一対のチャック部材と、これらチャック部材に設けられ前記栓体に穿刺される穿刺針とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空採血管の開栓装置。
【請求項3】
前記密封減圧手段は、前記チャック機構と一体的に開閉し、閉塞時には前記チャック部材及び前記真空採血管の開口部周辺を包容する少なくとも一対の覆い部材からなり、この覆い部材には、内部を減圧する真空吸引機構が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の真空採血管の開栓装置。
【請求項4】
前記一対の覆い部材は、横断面が略半円状で、その開口縁部を対向させた開閉自在な一対の容器からなり、これら容器の開口縁部には閉塞時に密接して前記真空採血管の周囲を遮蔽するシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1または3に記載の真空採血管の開栓装置。
【請求項5】
開口部が栓体によって閉栓され、内部が真空状態の真空採血管を開栓する真空採血管の開栓方法において、
真空採血管を開栓ポジションで直立状態にクランプする第1の工程と、
クランプされた前記真空採血管の栓体をチャックする第2の工程と、
前記真空採血管の栓体をチャックしたとき、該栓体を含む前記真空採血管の開口部周辺を密封するとともに、この密封領域を前記真空採血管の内圧と略同圧に減圧する第3の工程と、
前記真空採血管の栓体を開栓する第4の工程と、
からなる真空採血管の開栓方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−279128(P2008−279128A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127086(P2007−127086)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(397054691)株式会社アイディエス (10)
【Fターム(参考)】