真空採血管
【課題】
有底管の開口部に気密状態で栓体が取付けられた真空採血管において、採血後に凍結保存用キャップで栓体を覆って確実に保持でき、血液の検査時に解凍後、有低管から凍結保存用キャップと同時に栓体を外すことが可能であり、信頼性と作業効率が共に高い真空採血管を提供する。
【解決手段】
有底管1と、有底管の開口部4に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部6を有する栓体2と、採血後に栓体を覆って保持する凍結保存用キャップ3とを有し、有底管の開口部に、凍結保存用キャップを、少なくとも栓体の針刺通部を覆った状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段7にて取付け、凍結保存用キャップと栓体とが互いに係合手段8にて係合一体化し、凍結保存用キャップを有底管から外す際に、栓体が有底管の開口部から同時に外れるようにした。
有底管の開口部に気密状態で栓体が取付けられた真空採血管において、採血後に凍結保存用キャップで栓体を覆って確実に保持でき、血液の検査時に解凍後、有低管から凍結保存用キャップと同時に栓体を外すことが可能であり、信頼性と作業効率が共に高い真空採血管を提供する。
【解決手段】
有底管1と、有底管の開口部4に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部6を有する栓体2と、採血後に栓体を覆って保持する凍結保存用キャップ3とを有し、有底管の開口部に、凍結保存用キャップを、少なくとも栓体の針刺通部を覆った状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段7にて取付け、凍結保存用キャップと栓体とが互いに係合手段8にて係合一体化し、凍結保存用キャップを有底管から外す際に、栓体が有底管の開口部から同時に外れるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取した血液のサンプルをそのまま凍結保存することが可能な真空採血管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空採血管は、生化学検査、血糖測定、血沈検査、血液凝固測定、血清学検査、血液学検査において、採血操作が簡便であることから広く用いられている。従来、真空採血管として、開口部を有する有底管に、採血針を刺し通すことが可能なゴム製の栓体を取付け、栓体が有底管の開口部に密着して有底管の内部を減圧状態に維持するものが知られている。採血時には、針ホルダに貫通固定、または連結された採血針の一端を被採血者の血管に挿入した後、該針ホルダに真空採血管を装着して、採血針の他端を栓体の針刺通部に刺し通す。そうすると、血管の内部の圧力と有底管の内部の圧力の圧力差によって、被採血者から血液の採取が行われる。このようにして、従来の真空採血管では、真空採血法により採血を行うことができる。そして、採血針を抜いた後であっても、ゴム製の栓体が弾性変形して針穴を塞ぎ、液密性が保たれる。したがって、採取した血液のサンプル(検体ともいう)が、採血時の針穴から漏れることが防止されている。
【0003】
近年では、患者の遺伝子と各種の医薬品の効果や副作用との関係を調べ、個々の患者に合った投薬や治療方法を提供するためのファーマコゲノミクス試験(PGx試験)が、臨床研究や臨床試験に並行して行われるようになってきた。PGx試験においては、DNAの多様性やRNA発現などの解析のために、全血が用いられることが一般的である。PGx試験では、血液の血球成分そのものを検査対象とせず、白血球、リンパ球など有核細胞の核に存在するDNA、あるいはDNAを鋳型として作られるRNA(mRNA)、またそのRNAの情報をもとに生合成される蛋白質が検査対象となる。そのため、PGx試験では、生化学検査と異なり、DNA、RNA、蛋白質の分解を防ぐために、全血を凍結して超低温下で保管することが求められる。また、一旦凍結した血液のサンプルを再溶解すると、DNAの損傷が起こりDNAの抽出効率が落ちてしまう。そのため、採血施設で血液のサンプルを凍結した後は、再溶解しないように超低温下で長期保管することが求められる。
【0004】
しかしながら、従来の真空採血管では、真空採血管の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック材料が用いられることが多く、超低温での保管に耐えられる素材が用いられることはなかった。したがって、従来の真空採血管をそのまま凍結保存しようとすると、液体窒素中に浸漬したときに低温破壊が生じてしまうおそれがあった。また、従来の真空採血管では、栓体を有底管に密着させるために金属製やプラスチック製の蓋が用いられる。しかし、有底管と栓体と蓋では異なる材料が用いられることが多く、これらを超低温にした場合には、熱収縮の程度の違いによって、栓体や蓋と有底管との間に隙間が生じることがある。そのような場合には、その隙間から外部の液体窒素などが有底管の内部に混入したり、真空採血管の内部のサンプルが外部に漏出するおそれがあった。
【0005】
したがって、全血検体を保管する場合には、超低温での保存に耐えうる凍結保存用の血液保管容器を別途用意して、真空採血管で血液を採取した後、血液保管容器に血液サンプルを移し替える必要があった。この血液保管容器は、超低温下でも隙間が生じることがなく液密性が保たれる。すなわち、隙間から外部の液体窒素などが真空採血管の内部に混入したり、真空採血管の内部のサンプルが外部に漏出するおそれがない。しかしながら、真空採血管から血液保管容器への移し替え作業は、作業自体に手間を要するだけでなく、作業時に血液サンプルを溢したり飛散させたりしてしまうおそれがある。そのため、移し替え作業の作業担当者の労力や負担は非常に大きかった。
【0006】
この改善策として、−40℃以下−200℃以上の超低温で凍結保存したときでも低温破壊が生じにくい耐低温性材料で構成され、一端に底部を有するとともに他端に開口部を有する有底管と、採血前に前記有底管の開口部に取付けられ、前記有底管の開口部に密着して前記有底管の内部の減圧状態を維持可能であり、採血針を刺通可能なゴム材料で構成された針刺通部を有する栓体と、前記耐低温性材料で構成され、採血後に前記有底管の開口部に取付けられ、前記超低温の条件下で、前記有底管の開口部を封止して前記有底管の液密状態を維持可能な凍結保存用キャップと、を備えた真空採血管が提案されている(特許文献1参照)。ここで、前記凍結保存用キャップは、採血後に前記栓体を覆って前記有底管の開口部に取付けられる。
【0007】
また、特許文献2には、主な用途が真空採血管であり、有底管、栓体、保護キャップを備えた組立体が開示されている。栓体は、半径方向に張り出した上部フランジ部分及び小径のシール部分を備えている。保護キャップは、可撓性の熱可塑性樹脂で構成され、栓体の頂部を覆うものであり、中心開口を形成した天面、底部ストップ棚、天面から底部ストップ棚まで延びる環状外側スカートを備え、環状外側スカートの内壁面には前記栓体の上部フランジ部分に係合する環状当接部が一体形成されている。この保護キャップは、外形寸法を汎用の針ホルダに挿着できるように抑制したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4195504号公報
【特許文献2】特許第4198309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の真空採血管は、常法通り採血した後、凍結保存用キャップの内周面の下部に設けたねじ溝部を有底管のねじ部に螺合し、該キャップで栓体を確実に保持するので、凍結保存中に不意に栓体が外れることを防止できるが、血液の検査時に解凍後、凍結保存用キャップを回転させて外した後、さらに前記栓体を外さなければならない。この栓体は有底管の開口部に気密状態で取付けられているので、栓体を外す作業に手間がかかったり、勢い良く外すと血液が飛散する恐れもある。ここで、凍結保存期間は、10年を超えて長期間になる場合もあり、その期間中に安全で且つ信頼性の高い保存が望まれている。
【0010】
一方、特許文献2に記載の真空採血管は、採血前から保護キャップが被さって栓体と一体構造になっており、栓体の頂部を常時保護しているが、採血針を保護キャップの中心開口を通して栓体に刺し通すようにしているので、針を刺した栓体の中心部分は常時露出し、長期凍結保存時に針刺通部の気密性を確実に保つことはできない。また、保護キャップを装着した際に、内壁面の環状当接部が栓体の上部フランジ部分に係合しているが、該保護キャップは有底管に対してなんら係合していないので、凍結保存時等に栓体が有底管から外れると保護キャップもいっしょに外れることになり、栓体の外れ防止の機能はない。また、保護キャップと栓体との係合は浅いので、検査時に保護キャップを外す動作に伴って、栓体を同時に外すことができるとは限らない。
【0011】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、有底管の開口部に気密状態で栓体が取付けられた真空採血管において、採血後に凍結保存用キャップで栓体を覆って確実に保持することができるとともに、血液の検査時に解凍後、有低管から凍結保存用キャップと同時に栓体を外すことが可能であり、信頼性と作業効率が共に高い真空採血管を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題解決のために、有底管と、該有底管の開口部に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部を有する栓体と、採血後に前記栓体を覆って保持する凍結保存用キャップとからなる真空採血管において、前記有底管の開口部に、前記凍結保存用キャップを、少なくとも前記栓体の針刺通部を覆った状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段にて取付けるとともに、該凍結保存用キャップと前記栓体とが互いに係合手段にて係合一体化し、前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に、前記栓体が有底管の開口部から同時に外れることを特徴とする真空採血管を構成した(請求項1)。
【0013】
ここで、前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数のダボと、該ダボにそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した単又は複数のL字溝とからなることが好ましい(請求項2)。
【0014】
また、前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に形成した雄ねじ部と、該雄ねじ部に螺合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した雌ねじ部とからなることも好ましい(請求項3)。この場合、前記雄ねじ部と雌ねじ部の一方又は双方が部分ねじであることも好ましい(請求項4)。
【0015】
更に、前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数の係止突起と、該係止突起にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部に形成した単又は複数の係止爪とからなることも好ましい(請求項5)。
【0016】
また、前記係合手段が、前記栓体の周囲に前記有底管の外周面より半径方向外方へ張り出した係合段部と、前記凍結保存用キャップの内周面に突設した前記係合段部に係合一体化する爪部とからなることが好ましい(請求項6)。この場合、前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設してなることも好ましい(請求項7)。
【0017】
あるいは、前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設するとともに、一方の爪部が前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に前記栓体の係合段部に係合し、他方の爪部が前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に前記栓体の係合段部に係合するように、軸方向で位置をずらせて前記爪部を形成していることも好ましい(請求項8)。
【0018】
そして、前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの内面で前記栓体の一部を圧迫し、該栓体による有底管の開口部の密閉性を高めてなることがより好ましい(請求項9)。
【0019】
また、前記有底管の開口部に前記凍結保存用キャップを前記係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの端縁を、該有底管の外周面に設けた外周縁部に保持されたOリングに圧接してなることがより好ましい(請求項10)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の真空採血管は、有底管と、該有底管の開口部に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部を有する栓体と、採血後に前記栓体を覆って保持する凍結保存用キャップとからなる真空採血管において、前記有底管の開口部に、前記凍結保存用キャップを、少なくとも前記栓体の針刺通部を覆った状態、或いは前記栓体を完全に外覆した状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段にて取付けたので、採血後に少なくとも前記栓体の針刺通部を凍結保存用キャップで露出しないように覆って確実に保持することができ、凍結保存状態にあっても不意に栓体が外れることがないので、保存における信頼性を高めることができ、また凍結保存用キャップを有底管の開口部に取付けた際に、該凍結保存用キャップと前記栓体とが互いに係合手段にて係合一体化し、前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に、前記栓体が有底管の開口部から同時に外れるようにしたので、血液の検査時に解凍後、有低管から凍結保存用キャップを外すだけで栓体を有底管の開口部から安全に外すことができ、検査作業の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の真空採血管の第1実施形態を示す分解正面図である。
【図2】同じく第1実施形態の真空採血管を示し、(a)は採血前及び採血中の状態を示す断面図、(b)は採血後の保存状態を示す断面図である。
【図3】本発明の真空採血管を針ホルダに装着した状態の断面図である。
【図4】本発明の真空採血管の第2実施形態を示す分解正面図である。
【図5】同じく第2実施形態の真空採血管における採血後の保存状態を示す断面図である。
【図6】本発明の真空採血管の第3実施形態を示す分解正面図である。
【図7】同じく第3実施形態の真空採血管における採血後の保存状態を示す断面図である。
【図8】本発明の真空採血管の第4実施形態を示し、(a)は凍結保存用キャップの断面図、(b)は採血後に有底管に凍結保存用キャップを取付けた保存状態を示す断面図である。
【図9】本発明の真空採血管の第5実施形態を示し、(a)は凍結保存用キャップの断面図、(b)は採血後に有底管に凍結保存用キャップを取付けた保存状態を示す断面図である。
【図10】第1実施形態の真空採血管の変形例を示す分解正面図である。
【図11】同じく第1実施形態の真空採血管の変形例を示し、(a)は採血前及び採血中の状態を示す断面図、(b)は採血後の保存状態を示す断面図である。
【図12】第2実施形態の真空採血管の変形例を示す分解正面図である。
【図13】同じく第2実施形態の真空採血管の変形例における採血後の保存状態を示す断面図である。
【図14】第3実施形態の真空採血管の変形例を示す分解正面図である。
【図15】同じく第3実施形態の真空採血管の変形例における採血後の保存状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図3は本発明の真空採血管の第1実施形態を示し、図中符号Aは真空採血管、Bは針ホルダ、1は有底管、2は栓体、3は凍結保存用キャップをそれぞれ示している。
【0023】
本発明の真空採血管Aは、−40℃以下−200℃以上の超低温で凍結保存することを前提としてあり、有底管1、栓体2及び凍結保存用キャップ3は、凍結保存温度で耐える耐低温性材料で作成されている。また、検査時には解凍するので、凍結、解凍の熱履歴に耐える材料でなければならない。
【0024】
採取した血液のサンプルは−40℃以下で凍結保存されることが多いので、耐低温性材料は、−40℃以下で凍結保存したときに低温破壊が生じにくい材料であることが望ましい。また、採取した血液のサンプルは液体窒素(沸点−196℃)を用いて凍結保存をすることがあるので、−200℃で凍結保存したときに低温破壊が生じにくい材料であることが望ましい。
【0025】
この耐低温性材料として、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等が用いられる。更に、耐低温性材料として、環状オレフィン・コポリマーを使用することができる。環状オレフィン・コポリマーの一例としては、ノルボルネンとエチレンを、メタロセン触媒を用いて共重合したTOPAS(TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHの登録商標)等があげられる。このような環状オレフィン・コポリマーは、PMMA(ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂)に匹敵する光学特性や、PC(ポリカーボネート樹脂)以上の耐熱性、PMMAやPCより優れた寸法安定性を有しており、血液のサンプルの採取から超低温で凍結保存までの工程に耐えることができ、耐低温性材料として適している。
【0026】
本実施形態では、有底管1と凍結保存用キャップ3をTOPAS又はPPで通常の成形方法により作成した。また、栓体2の耐低温性材料として、ブチルゴム、SIBS等のゴム材料が使用可能である。本実施形態では、栓体2をブチルゴムで通常の成形方法により作成した。
【0027】
また、有底管1や凍結保存用キャップ3の内周面には、ガスバリア性を有する薄膜を形成することもできる。また、この場合、有底管1や凍結保存用キャップ3の内周面にガスバリア性を有する薄膜を形成する以外にも、有底管1や凍結保存用キャップ3自体をガスバリア性を有する材料を用いて製造してもよい。ここで、ガスバリア性とは、気体が外部へ漏れないように遮断する性質、つまり内部の気密性を保つ性質をいう。本実施の形態では、ガスバリア性の高い材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート系共重合体とポリエチレンナフタレート系共重合体の配合体、テレフタル酸とイソフタル酸を酸成分としエチレングリコールをジオール成分とする結晶性を有する共重合ポリエステル樹脂等が用いられる。また、エチレン−ポリプロピレンランダム共重合体からなる有底管1の表面(内周面および/または外周面)にプラズマ化学蒸着(CVD)法にてセラミック薄膜層を形成してもよい。更に、プラスチック製の有底管1の内表面に、炭素原子を含む酸化珪素の薄膜をコーティングしてもよい。
【0028】
本発明の真空採血管Aは、有底管1と、該有底管1の開口部4に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針5を刺通可能な針刺通部6を有する栓体2と、採血後に前記栓体2を覆って保持する凍結保存用キャップ3とからなり、更に前記有底管1の開口部4に、前記凍結保存用キャップ3を、前記栓体2を完全に外覆した状態で有底管1の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段7にて取付けるとともに、該凍結保存用キャップ3と前記栓体2とが互いに係合手段8にて係合一体化し、前記係着手段7による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップ3を前記有底管1から外す際に、前記栓体2が有底管1の開口部4から同時に外れるように構成したものである。尚、以下に示す例も同様であるが、この例では凍結保存用キャップ3が栓体2を完全に外覆した状態で取付けされ、より確実に血液の露出を防止できる点で好ましいが、凍結保存用キャップ3は、少なくとも栓体2の針刺通部6を覆った状態となる様に形成されていれば各種形状とすることが可能である。
【0029】
具体的には、図1及び図2に示すように、前記有底管1は、円筒状の筒体であり、一端を開口部4とし、内部の適所に底面部9を形成し、他端は載置台10としている。例えば、前記有底管1の載置台10の構造として、端部を軸方向に対して直角に形成した構造等の各種構造とすることができる。本実施形態では、有底管1の底部に載置台10を形成して、水平面に安定に起立させることができるようにしているが、底部を半球状の底面部としても良い。更に、前記有底管1の開口部4に近い端部外周面に、前記係着手段7として雄ねじ部11を形成している。
【0030】
前記栓体2は、上部のフランジ部12と下部のシール部13とからなり、該シール部13が前記有底管1の開口部4に弾性的に密嵌するとともに、前記フランジ部12の下端が前記有底管1の端部14に当止し、該有底管1の内部を減圧状態に維持できるようになっている。更に、前記栓体2のフランジ部12の中央部に凹部15を形成するとともに、シール部13の中央部に凹部16を形成し、両凹部15,16の間の薄肉部分を前記針刺通部6としている。更に、前記栓体2の周囲、つまり前記フランジ部12の周囲に、前記有底管1の外周面より半径方向外方へ張り出した係合段部17を形成し、前記係合手段8の一方を構成している。ここで、前記栓体2の針刺通部6には、後述の針ホルダBの採血針5を貫通させるが、この針を抜いた後に、穴が弾性的に塞がり、血液が洩れないようになっている。このようなシール部材は一般的にセプタムシールと呼ばれている。
【0031】
前記凍結保存用キャップ3は、上面部19と該上面部19から下方へ延びた筒部20を有し、該筒部20の端部内周面に、前記係着手段7として前記雄ねじ部11に螺合する雌ねじ部21を形成するとともに、該筒部20の奥部内周面に前記係合段部17に係合する爪部22を突設し、前記係合手段8の他方を構成している。
【0032】
ここで、前記係着手段7としての雄ねじ部11と雌ねじ部21の一方又は双方が部分ねじであっても良い。また、前記係合手段8として前記凍結保存用キャップ3の筒部20の内周面に形成する爪部22は、全周に連続して形成しても、また部分的に単又は複数箇所に形成しても良い。これらは、前記凍結保存用キャップ3の成形性を考慮して決定する。例えば、前記爪部22を凍結保存用キャップ3の内周面に部分的に設ける場合には、一対の爪部22,22を対向位置に突設することが、割り金型を用いた成形において有利である。
【0033】
このように構成した各部材を組み立てて本発明の真空採血管を構成する。先ず、所定の減圧雰囲気中で前記有底管1の開口部4に前記栓体2のシール部13を弾性的に密嵌し、それを大気圧下に取り出して採血前の状態とする。このとき前記凍結保存用キャップ3は有底管1に装着しない。前記有底管1の内部は減圧状態であるので、前記栓体2は管内に引き込まれる方向に力を受けるが、前記フランジ部12の下端の係合段部17が有底管1の端部14に圧接状態で当止し、減圧状態を維持する。ここで、前記有底管1に栓体2を装着した状態で、前記係合段部17は有底管1の外周面より半径方向外方へ突出している。
【0034】
この状態で本発明の真空採血管Aは、図3に示すような針ホルダBに装着され、採血作業に供される。具体的には、前記針ホルダBは、円筒状の本体筒23の一端部に採血針5が貫通固定されるとともに、該本体筒23の他端は開放され、その端部に指掛け用の鍔部24を一体成形された構造であり、図示したものは汎用品である。前記針ホルダBの本体筒23から延びた採血針5の先端部を生体の血管に通した状態で、前記真空採血管Aを栓体2の側から本体筒23内に挿入し、該本体筒23内に突出している前記採血針5の基端部を栓体2の針刺通部6に刺し込むと、減圧状態の有底管1内に血液が吸い込まれるのである。ここで、前記有底管1の外周面からは、前記フランジ部12の下端部と前記雄ねじ部11が突出しているが、前記針ホルダBの本体筒23の内部に挿入できるように突出高さが設定されている。
【0035】
そして、採血後は、前記針ホルダBの本体筒23から真空採血管Aを引き抜き、直ちに前記凍結保存用キャップ3を先端部に装着して前記栓体2を外覆する。本実施形態では、前記凍結保存用キャップ3の筒部20を栓体2に外挿し、該筒部20の端部内周面に形成した雌ねじ部21を、前記有底管1の外周面に形成した雄ねじ部11にねじ込む。前記凍結保存用キャップ3の筒部20の奥部内周面に突設した前記爪部22が、前記栓体2のフランジ部12を弾性変形させながら通過して前記係合段部17に係合する。この際に、前記凍結保存用キャップ3の上面部19が、前記栓体2のフランジ部12の上端を圧迫するように寸法設定することにより、採血後に有底管1の内部が減圧状態で無くなっても、該栓体2のフランジ部12を有底管1の端部14に圧接して良好な気密性を維持できる。この状態で本発明の真空採血管Aは、冷凍保存されるのである。前記有底管1に対して凍結保存用キャップ3は、雄ねじ部11と雌ねじ部21とからなる係着手段7によって機械的に連結されているので、前記栓体2が有底管1の開口部4から不意に外れることがないのである。
【0036】
前記凍結保存用キャップ3を有底管1に装着すると、前記係合段部17と爪部22とからなる係合手段8によって、該凍結保存用キャップ3と栓体2が係合一体化する。つまり、採血した血液の検査時に、前記凍結保存用キャップ3を有底管1から外すと、前記栓体2が有底管1の開口部4から同時に外れるのである。本実施形態の場合、係着手段7が雄ねじ部11と雌ねじ部21とからなるので、前記凍結保存用キャップ3を外す方向に回転させると、徐々に軸方向外方へ移動するが、その際に該凍結保存用キャップ3の爪部22が栓体2の係合段部17を引っ掛けて、該栓体2のシール部13が有底管1の開口部4から抜ける方向に変移させるのである。従って、前記係合段部17と爪部22は、軸方向に対して急峻な当接面となっていることが好ましく、本実施形態では当接面が半径方向を向いている。仮に、前記凍結保存用キャップ3を有底管1から外す際に、係着手段7の係合が解除されて前記栓体2が有底管1に残った場合であっても、前記有底管1の雄ねじ部11を摘みとして持って栓体2を強制的に抜くことができる。また、前記凍結保存用キャップ3の前記爪部22より奥部には、該爪部22とともに栓体2のフランジ部12の半径方向端部を包持することができるように、半径方向内方へ当接部25を突設している。この当接部25と爪部22とで前記栓体2のフランジ部12を包持すると、前記凍結保存用キャップ3と栓体2との間の接触摩擦力が大きくなり、凍結保存用キャップ3を回転させた際に、栓体2を回転させながら抜くことができるので、該栓体2を確実に有底管1から外すことができる。
【0037】
次に、図4及び図5に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には前述の第1実施形態と同様であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係着手段7は、前記有底管1の開口部4に近い端部外周面に突設した単又は複数の係止突起26と、該係止突起26にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップ3の筒部20の端部に形成した単又は複数の係止爪27とから構成されている。前記係止突起26は、少なくとも下半分が略半円柱状に形成され、下面部分が円弧状の誘い面となっており、前記係止爪27を下側へ案内して、前記栓体2を圧迫しながら強固に係止するようになっている。尚、前記係止爪27の先端部上側に、前記係止突起26に係止した状態で戻り止めの凸部を形成することも好ましい。
【0038】
次に、図6及び図7に基づいて本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には前述の第1実施形態と同様であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係着手段7は、前記有底管1の開口部4に近い端部外周面に突設した単又は複数のダボ28と、該ダボ28にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面に形成した単又は複数のL字溝29とから構成されている。ここで、前記L字溝29は、前記凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面を減肉して形成し、下方から前記ダボ28を受け入れる縦溝30と、該縦溝30の上端から円周方向に延びた横溝31とからなり、更に前記横溝31の終端には前記ダボ28を係合して戻り止めするためのやや深い凹部を形成することが好ましい。
【0039】
図8は本発明の真空採血管Aの第4実施形態を示している。本実施形態の係着手段7は、第1実施形態と同様に、有底管1の開口部4の近傍外周面に形成した雄ねじ部11と、凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面に形成した雌ねじ部21とから構成されている。また、本実施形態の栓体2は、前述の実施形態のものと形状が異なるが、基本的な機能は全く同じであるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係合手段8は、前記凍結保存用キャップ3の内周面の対向位置に部分的に爪部32,33を突設するとともに、一方の爪部32が前記凍結保存用キャップ3を前記有底管1の開口部4に係着手段7にて取付けた際に前記栓体2の係合段部17に係合し、他方の爪部33が前記係着手段7による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップ3を前記有底管1から外す際に前記栓体2の係合段部17に係合するように、軸方向で位置をずらせて形成している。
【0040】
前記凍結保存用キャップ3に形成した一対の爪部32,33を軸方向で位置をずらせて形成したことにより、該凍結保存用キャップ3を回転させて軸方向外方へ移動させる動作によって、先ず一方の爪部32が前記栓体2の係合段部17を押し上げて該栓体2に捻りを加え、それにより前記シール部13の前記有底管1の開口部4に対する接触抵抗が減少し、更に凍結保存用キャップ3を回転させれば、該爪部32が係合段部17を変形させてめり込むとともに、他方の爪部33が反対側の係合段部17に当接し、その後は前記栓体2を供回りさせて開口部4から簡単に抜き去ることが可能である。
【0041】
図9は本発明の真空採血管Aの第5実施形態を示している。本実施形態の係着手段7は、第1実施形態と同様に、有底管1の開口部4の近傍外周面に形成した雄ねじ部11と、凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面に形成した雌ねじ部21とから構成されている。また、本実施形態の栓体2は、前述の第4実施形態のものと同一であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係合手段8は、前記凍結保存用キャップ3の内周面の対向位置で、同一軸方向位置に部分的に一対の爪部34,34を半径方向内外に弾力性を持たせて突設し、前記栓体2の係合段部17に係合するようになっている。具体的には、前記凍結保存用キャップ3の筒部20に、上方が該筒部20に連続し、下方の3辺が倒コ字形のスリット孔35を形成した弾性片36の下端内面に前記爪部34を突設している。本実施形態の爪部34,34は、半径方向内外に弾性的に変位可能であるので、前記凍結保存用キャップ3を有底管1の先端部に外装する際に、前記栓体2のフランジ部12を通過するときに前記爪部34,34が外側へ変位しながら通過し、前記係合段部17に至ると内側へ弾性復元し、栓体2と凍結保存用キャップ3とが係合一体化する。また、通常、作業者は、該凍結保存用キャップ3を手指でつまんで回転させて軸方向外方へ移動させるので、その際、前記爪部34,34をつまむこととなり、その応力で半径方向内側へより変位すれば、前記栓体2の係合段部17との係合一体化はより確実となるという補助的効果も期待できる。
【0042】
更に、図10〜図15に示すように、前記有底管1の開口部4に前記凍結保存用キャップ3を前記係着手段7にて取付けた際に、該凍結保存用キャップ3の端縁37を、該有底管1の外周面に設けた外周縁部38に保持されたOリング39に圧接し、前記有底管1内部の気密性を更に高めるようにすることがより好ましい。図10及び図11は、第1実施形態の変形例を示し、図12及び図13は第2実施形態の変形例を示し、図14及び図15は第3実施形態の変形例を示している。各実施形態において、前記有底管1の近傍外周面に環状に外周縁部38を突設し、該外周縁部38の半径方向へ向いた平坦な支持面にフラット型の前記Oリング39を接触状態で配置する。その構成は、図1〜図7に示した実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。
【符号の説明】
【0043】
A 真空採血管、 B 針ホルダ、
1 有底管、 2 栓体、
3 凍結保存用キャップ、 4 開口部、
5 採血針、 6 針刺通部、
7 係着手段、 8 係合手段、
9 底面部、 10 載置台、
11 雄ねじ部、 12 フランジ部、
13 シール部、 14 端部、
15 凹部、 16 凹部、
17 係合段部、 19 上面部、
20 筒部、 21 雌ねじ部、
22 爪部、 23 本体筒、
24 鍔部、 25 当接部、
26 係止突起、 27 係止爪、
28 ダボ、 29 L字溝、
30 縦溝、 31 横溝、
32 爪部、 33 爪部、
34 爪部、 35 スリット孔、
36 弾性片、 37 端縁、
38 外周縁部、 39 Oリング。
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取した血液のサンプルをそのまま凍結保存することが可能な真空採血管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空採血管は、生化学検査、血糖測定、血沈検査、血液凝固測定、血清学検査、血液学検査において、採血操作が簡便であることから広く用いられている。従来、真空採血管として、開口部を有する有底管に、採血針を刺し通すことが可能なゴム製の栓体を取付け、栓体が有底管の開口部に密着して有底管の内部を減圧状態に維持するものが知られている。採血時には、針ホルダに貫通固定、または連結された採血針の一端を被採血者の血管に挿入した後、該針ホルダに真空採血管を装着して、採血針の他端を栓体の針刺通部に刺し通す。そうすると、血管の内部の圧力と有底管の内部の圧力の圧力差によって、被採血者から血液の採取が行われる。このようにして、従来の真空採血管では、真空採血法により採血を行うことができる。そして、採血針を抜いた後であっても、ゴム製の栓体が弾性変形して針穴を塞ぎ、液密性が保たれる。したがって、採取した血液のサンプル(検体ともいう)が、採血時の針穴から漏れることが防止されている。
【0003】
近年では、患者の遺伝子と各種の医薬品の効果や副作用との関係を調べ、個々の患者に合った投薬や治療方法を提供するためのファーマコゲノミクス試験(PGx試験)が、臨床研究や臨床試験に並行して行われるようになってきた。PGx試験においては、DNAの多様性やRNA発現などの解析のために、全血が用いられることが一般的である。PGx試験では、血液の血球成分そのものを検査対象とせず、白血球、リンパ球など有核細胞の核に存在するDNA、あるいはDNAを鋳型として作られるRNA(mRNA)、またそのRNAの情報をもとに生合成される蛋白質が検査対象となる。そのため、PGx試験では、生化学検査と異なり、DNA、RNA、蛋白質の分解を防ぐために、全血を凍結して超低温下で保管することが求められる。また、一旦凍結した血液のサンプルを再溶解すると、DNAの損傷が起こりDNAの抽出効率が落ちてしまう。そのため、採血施設で血液のサンプルを凍結した後は、再溶解しないように超低温下で長期保管することが求められる。
【0004】
しかしながら、従来の真空採血管では、真空採血管の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック材料が用いられることが多く、超低温での保管に耐えられる素材が用いられることはなかった。したがって、従来の真空採血管をそのまま凍結保存しようとすると、液体窒素中に浸漬したときに低温破壊が生じてしまうおそれがあった。また、従来の真空採血管では、栓体を有底管に密着させるために金属製やプラスチック製の蓋が用いられる。しかし、有底管と栓体と蓋では異なる材料が用いられることが多く、これらを超低温にした場合には、熱収縮の程度の違いによって、栓体や蓋と有底管との間に隙間が生じることがある。そのような場合には、その隙間から外部の液体窒素などが有底管の内部に混入したり、真空採血管の内部のサンプルが外部に漏出するおそれがあった。
【0005】
したがって、全血検体を保管する場合には、超低温での保存に耐えうる凍結保存用の血液保管容器を別途用意して、真空採血管で血液を採取した後、血液保管容器に血液サンプルを移し替える必要があった。この血液保管容器は、超低温下でも隙間が生じることがなく液密性が保たれる。すなわち、隙間から外部の液体窒素などが真空採血管の内部に混入したり、真空採血管の内部のサンプルが外部に漏出するおそれがない。しかしながら、真空採血管から血液保管容器への移し替え作業は、作業自体に手間を要するだけでなく、作業時に血液サンプルを溢したり飛散させたりしてしまうおそれがある。そのため、移し替え作業の作業担当者の労力や負担は非常に大きかった。
【0006】
この改善策として、−40℃以下−200℃以上の超低温で凍結保存したときでも低温破壊が生じにくい耐低温性材料で構成され、一端に底部を有するとともに他端に開口部を有する有底管と、採血前に前記有底管の開口部に取付けられ、前記有底管の開口部に密着して前記有底管の内部の減圧状態を維持可能であり、採血針を刺通可能なゴム材料で構成された針刺通部を有する栓体と、前記耐低温性材料で構成され、採血後に前記有底管の開口部に取付けられ、前記超低温の条件下で、前記有底管の開口部を封止して前記有底管の液密状態を維持可能な凍結保存用キャップと、を備えた真空採血管が提案されている(特許文献1参照)。ここで、前記凍結保存用キャップは、採血後に前記栓体を覆って前記有底管の開口部に取付けられる。
【0007】
また、特許文献2には、主な用途が真空採血管であり、有底管、栓体、保護キャップを備えた組立体が開示されている。栓体は、半径方向に張り出した上部フランジ部分及び小径のシール部分を備えている。保護キャップは、可撓性の熱可塑性樹脂で構成され、栓体の頂部を覆うものであり、中心開口を形成した天面、底部ストップ棚、天面から底部ストップ棚まで延びる環状外側スカートを備え、環状外側スカートの内壁面には前記栓体の上部フランジ部分に係合する環状当接部が一体形成されている。この保護キャップは、外形寸法を汎用の針ホルダに挿着できるように抑制したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4195504号公報
【特許文献2】特許第4198309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の真空採血管は、常法通り採血した後、凍結保存用キャップの内周面の下部に設けたねじ溝部を有底管のねじ部に螺合し、該キャップで栓体を確実に保持するので、凍結保存中に不意に栓体が外れることを防止できるが、血液の検査時に解凍後、凍結保存用キャップを回転させて外した後、さらに前記栓体を外さなければならない。この栓体は有底管の開口部に気密状態で取付けられているので、栓体を外す作業に手間がかかったり、勢い良く外すと血液が飛散する恐れもある。ここで、凍結保存期間は、10年を超えて長期間になる場合もあり、その期間中に安全で且つ信頼性の高い保存が望まれている。
【0010】
一方、特許文献2に記載の真空採血管は、採血前から保護キャップが被さって栓体と一体構造になっており、栓体の頂部を常時保護しているが、採血針を保護キャップの中心開口を通して栓体に刺し通すようにしているので、針を刺した栓体の中心部分は常時露出し、長期凍結保存時に針刺通部の気密性を確実に保つことはできない。また、保護キャップを装着した際に、内壁面の環状当接部が栓体の上部フランジ部分に係合しているが、該保護キャップは有底管に対してなんら係合していないので、凍結保存時等に栓体が有底管から外れると保護キャップもいっしょに外れることになり、栓体の外れ防止の機能はない。また、保護キャップと栓体との係合は浅いので、検査時に保護キャップを外す動作に伴って、栓体を同時に外すことができるとは限らない。
【0011】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、有底管の開口部に気密状態で栓体が取付けられた真空採血管において、採血後に凍結保存用キャップで栓体を覆って確実に保持することができるとともに、血液の検査時に解凍後、有低管から凍結保存用キャップと同時に栓体を外すことが可能であり、信頼性と作業効率が共に高い真空採血管を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題解決のために、有底管と、該有底管の開口部に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部を有する栓体と、採血後に前記栓体を覆って保持する凍結保存用キャップとからなる真空採血管において、前記有底管の開口部に、前記凍結保存用キャップを、少なくとも前記栓体の針刺通部を覆った状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段にて取付けるとともに、該凍結保存用キャップと前記栓体とが互いに係合手段にて係合一体化し、前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に、前記栓体が有底管の開口部から同時に外れることを特徴とする真空採血管を構成した(請求項1)。
【0013】
ここで、前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数のダボと、該ダボにそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した単又は複数のL字溝とからなることが好ましい(請求項2)。
【0014】
また、前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に形成した雄ねじ部と、該雄ねじ部に螺合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した雌ねじ部とからなることも好ましい(請求項3)。この場合、前記雄ねじ部と雌ねじ部の一方又は双方が部分ねじであることも好ましい(請求項4)。
【0015】
更に、前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数の係止突起と、該係止突起にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部に形成した単又は複数の係止爪とからなることも好ましい(請求項5)。
【0016】
また、前記係合手段が、前記栓体の周囲に前記有底管の外周面より半径方向外方へ張り出した係合段部と、前記凍結保存用キャップの内周面に突設した前記係合段部に係合一体化する爪部とからなることが好ましい(請求項6)。この場合、前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設してなることも好ましい(請求項7)。
【0017】
あるいは、前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設するとともに、一方の爪部が前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に前記栓体の係合段部に係合し、他方の爪部が前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に前記栓体の係合段部に係合するように、軸方向で位置をずらせて前記爪部を形成していることも好ましい(請求項8)。
【0018】
そして、前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの内面で前記栓体の一部を圧迫し、該栓体による有底管の開口部の密閉性を高めてなることがより好ましい(請求項9)。
【0019】
また、前記有底管の開口部に前記凍結保存用キャップを前記係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの端縁を、該有底管の外周面に設けた外周縁部に保持されたOリングに圧接してなることがより好ましい(請求項10)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の真空採血管は、有底管と、該有底管の開口部に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部を有する栓体と、採血後に前記栓体を覆って保持する凍結保存用キャップとからなる真空採血管において、前記有底管の開口部に、前記凍結保存用キャップを、少なくとも前記栓体の針刺通部を覆った状態、或いは前記栓体を完全に外覆した状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段にて取付けたので、採血後に少なくとも前記栓体の針刺通部を凍結保存用キャップで露出しないように覆って確実に保持することができ、凍結保存状態にあっても不意に栓体が外れることがないので、保存における信頼性を高めることができ、また凍結保存用キャップを有底管の開口部に取付けた際に、該凍結保存用キャップと前記栓体とが互いに係合手段にて係合一体化し、前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に、前記栓体が有底管の開口部から同時に外れるようにしたので、血液の検査時に解凍後、有低管から凍結保存用キャップを外すだけで栓体を有底管の開口部から安全に外すことができ、検査作業の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の真空採血管の第1実施形態を示す分解正面図である。
【図2】同じく第1実施形態の真空採血管を示し、(a)は採血前及び採血中の状態を示す断面図、(b)は採血後の保存状態を示す断面図である。
【図3】本発明の真空採血管を針ホルダに装着した状態の断面図である。
【図4】本発明の真空採血管の第2実施形態を示す分解正面図である。
【図5】同じく第2実施形態の真空採血管における採血後の保存状態を示す断面図である。
【図6】本発明の真空採血管の第3実施形態を示す分解正面図である。
【図7】同じく第3実施形態の真空採血管における採血後の保存状態を示す断面図である。
【図8】本発明の真空採血管の第4実施形態を示し、(a)は凍結保存用キャップの断面図、(b)は採血後に有底管に凍結保存用キャップを取付けた保存状態を示す断面図である。
【図9】本発明の真空採血管の第5実施形態を示し、(a)は凍結保存用キャップの断面図、(b)は採血後に有底管に凍結保存用キャップを取付けた保存状態を示す断面図である。
【図10】第1実施形態の真空採血管の変形例を示す分解正面図である。
【図11】同じく第1実施形態の真空採血管の変形例を示し、(a)は採血前及び採血中の状態を示す断面図、(b)は採血後の保存状態を示す断面図である。
【図12】第2実施形態の真空採血管の変形例を示す分解正面図である。
【図13】同じく第2実施形態の真空採血管の変形例における採血後の保存状態を示す断面図である。
【図14】第3実施形態の真空採血管の変形例を示す分解正面図である。
【図15】同じく第3実施形態の真空採血管の変形例における採血後の保存状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図3は本発明の真空採血管の第1実施形態を示し、図中符号Aは真空採血管、Bは針ホルダ、1は有底管、2は栓体、3は凍結保存用キャップをそれぞれ示している。
【0023】
本発明の真空採血管Aは、−40℃以下−200℃以上の超低温で凍結保存することを前提としてあり、有底管1、栓体2及び凍結保存用キャップ3は、凍結保存温度で耐える耐低温性材料で作成されている。また、検査時には解凍するので、凍結、解凍の熱履歴に耐える材料でなければならない。
【0024】
採取した血液のサンプルは−40℃以下で凍結保存されることが多いので、耐低温性材料は、−40℃以下で凍結保存したときに低温破壊が生じにくい材料であることが望ましい。また、採取した血液のサンプルは液体窒素(沸点−196℃)を用いて凍結保存をすることがあるので、−200℃で凍結保存したときに低温破壊が生じにくい材料であることが望ましい。
【0025】
この耐低温性材料として、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等が用いられる。更に、耐低温性材料として、環状オレフィン・コポリマーを使用することができる。環状オレフィン・コポリマーの一例としては、ノルボルネンとエチレンを、メタロセン触媒を用いて共重合したTOPAS(TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHの登録商標)等があげられる。このような環状オレフィン・コポリマーは、PMMA(ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂)に匹敵する光学特性や、PC(ポリカーボネート樹脂)以上の耐熱性、PMMAやPCより優れた寸法安定性を有しており、血液のサンプルの採取から超低温で凍結保存までの工程に耐えることができ、耐低温性材料として適している。
【0026】
本実施形態では、有底管1と凍結保存用キャップ3をTOPAS又はPPで通常の成形方法により作成した。また、栓体2の耐低温性材料として、ブチルゴム、SIBS等のゴム材料が使用可能である。本実施形態では、栓体2をブチルゴムで通常の成形方法により作成した。
【0027】
また、有底管1や凍結保存用キャップ3の内周面には、ガスバリア性を有する薄膜を形成することもできる。また、この場合、有底管1や凍結保存用キャップ3の内周面にガスバリア性を有する薄膜を形成する以外にも、有底管1や凍結保存用キャップ3自体をガスバリア性を有する材料を用いて製造してもよい。ここで、ガスバリア性とは、気体が外部へ漏れないように遮断する性質、つまり内部の気密性を保つ性質をいう。本実施の形態では、ガスバリア性の高い材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート系共重合体とポリエチレンナフタレート系共重合体の配合体、テレフタル酸とイソフタル酸を酸成分としエチレングリコールをジオール成分とする結晶性を有する共重合ポリエステル樹脂等が用いられる。また、エチレン−ポリプロピレンランダム共重合体からなる有底管1の表面(内周面および/または外周面)にプラズマ化学蒸着(CVD)法にてセラミック薄膜層を形成してもよい。更に、プラスチック製の有底管1の内表面に、炭素原子を含む酸化珪素の薄膜をコーティングしてもよい。
【0028】
本発明の真空採血管Aは、有底管1と、該有底管1の開口部4に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針5を刺通可能な針刺通部6を有する栓体2と、採血後に前記栓体2を覆って保持する凍結保存用キャップ3とからなり、更に前記有底管1の開口部4に、前記凍結保存用キャップ3を、前記栓体2を完全に外覆した状態で有底管1の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段7にて取付けるとともに、該凍結保存用キャップ3と前記栓体2とが互いに係合手段8にて係合一体化し、前記係着手段7による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップ3を前記有底管1から外す際に、前記栓体2が有底管1の開口部4から同時に外れるように構成したものである。尚、以下に示す例も同様であるが、この例では凍結保存用キャップ3が栓体2を完全に外覆した状態で取付けされ、より確実に血液の露出を防止できる点で好ましいが、凍結保存用キャップ3は、少なくとも栓体2の針刺通部6を覆った状態となる様に形成されていれば各種形状とすることが可能である。
【0029】
具体的には、図1及び図2に示すように、前記有底管1は、円筒状の筒体であり、一端を開口部4とし、内部の適所に底面部9を形成し、他端は載置台10としている。例えば、前記有底管1の載置台10の構造として、端部を軸方向に対して直角に形成した構造等の各種構造とすることができる。本実施形態では、有底管1の底部に載置台10を形成して、水平面に安定に起立させることができるようにしているが、底部を半球状の底面部としても良い。更に、前記有底管1の開口部4に近い端部外周面に、前記係着手段7として雄ねじ部11を形成している。
【0030】
前記栓体2は、上部のフランジ部12と下部のシール部13とからなり、該シール部13が前記有底管1の開口部4に弾性的に密嵌するとともに、前記フランジ部12の下端が前記有底管1の端部14に当止し、該有底管1の内部を減圧状態に維持できるようになっている。更に、前記栓体2のフランジ部12の中央部に凹部15を形成するとともに、シール部13の中央部に凹部16を形成し、両凹部15,16の間の薄肉部分を前記針刺通部6としている。更に、前記栓体2の周囲、つまり前記フランジ部12の周囲に、前記有底管1の外周面より半径方向外方へ張り出した係合段部17を形成し、前記係合手段8の一方を構成している。ここで、前記栓体2の針刺通部6には、後述の針ホルダBの採血針5を貫通させるが、この針を抜いた後に、穴が弾性的に塞がり、血液が洩れないようになっている。このようなシール部材は一般的にセプタムシールと呼ばれている。
【0031】
前記凍結保存用キャップ3は、上面部19と該上面部19から下方へ延びた筒部20を有し、該筒部20の端部内周面に、前記係着手段7として前記雄ねじ部11に螺合する雌ねじ部21を形成するとともに、該筒部20の奥部内周面に前記係合段部17に係合する爪部22を突設し、前記係合手段8の他方を構成している。
【0032】
ここで、前記係着手段7としての雄ねじ部11と雌ねじ部21の一方又は双方が部分ねじであっても良い。また、前記係合手段8として前記凍結保存用キャップ3の筒部20の内周面に形成する爪部22は、全周に連続して形成しても、また部分的に単又は複数箇所に形成しても良い。これらは、前記凍結保存用キャップ3の成形性を考慮して決定する。例えば、前記爪部22を凍結保存用キャップ3の内周面に部分的に設ける場合には、一対の爪部22,22を対向位置に突設することが、割り金型を用いた成形において有利である。
【0033】
このように構成した各部材を組み立てて本発明の真空採血管を構成する。先ず、所定の減圧雰囲気中で前記有底管1の開口部4に前記栓体2のシール部13を弾性的に密嵌し、それを大気圧下に取り出して採血前の状態とする。このとき前記凍結保存用キャップ3は有底管1に装着しない。前記有底管1の内部は減圧状態であるので、前記栓体2は管内に引き込まれる方向に力を受けるが、前記フランジ部12の下端の係合段部17が有底管1の端部14に圧接状態で当止し、減圧状態を維持する。ここで、前記有底管1に栓体2を装着した状態で、前記係合段部17は有底管1の外周面より半径方向外方へ突出している。
【0034】
この状態で本発明の真空採血管Aは、図3に示すような針ホルダBに装着され、採血作業に供される。具体的には、前記針ホルダBは、円筒状の本体筒23の一端部に採血針5が貫通固定されるとともに、該本体筒23の他端は開放され、その端部に指掛け用の鍔部24を一体成形された構造であり、図示したものは汎用品である。前記針ホルダBの本体筒23から延びた採血針5の先端部を生体の血管に通した状態で、前記真空採血管Aを栓体2の側から本体筒23内に挿入し、該本体筒23内に突出している前記採血針5の基端部を栓体2の針刺通部6に刺し込むと、減圧状態の有底管1内に血液が吸い込まれるのである。ここで、前記有底管1の外周面からは、前記フランジ部12の下端部と前記雄ねじ部11が突出しているが、前記針ホルダBの本体筒23の内部に挿入できるように突出高さが設定されている。
【0035】
そして、採血後は、前記針ホルダBの本体筒23から真空採血管Aを引き抜き、直ちに前記凍結保存用キャップ3を先端部に装着して前記栓体2を外覆する。本実施形態では、前記凍結保存用キャップ3の筒部20を栓体2に外挿し、該筒部20の端部内周面に形成した雌ねじ部21を、前記有底管1の外周面に形成した雄ねじ部11にねじ込む。前記凍結保存用キャップ3の筒部20の奥部内周面に突設した前記爪部22が、前記栓体2のフランジ部12を弾性変形させながら通過して前記係合段部17に係合する。この際に、前記凍結保存用キャップ3の上面部19が、前記栓体2のフランジ部12の上端を圧迫するように寸法設定することにより、採血後に有底管1の内部が減圧状態で無くなっても、該栓体2のフランジ部12を有底管1の端部14に圧接して良好な気密性を維持できる。この状態で本発明の真空採血管Aは、冷凍保存されるのである。前記有底管1に対して凍結保存用キャップ3は、雄ねじ部11と雌ねじ部21とからなる係着手段7によって機械的に連結されているので、前記栓体2が有底管1の開口部4から不意に外れることがないのである。
【0036】
前記凍結保存用キャップ3を有底管1に装着すると、前記係合段部17と爪部22とからなる係合手段8によって、該凍結保存用キャップ3と栓体2が係合一体化する。つまり、採血した血液の検査時に、前記凍結保存用キャップ3を有底管1から外すと、前記栓体2が有底管1の開口部4から同時に外れるのである。本実施形態の場合、係着手段7が雄ねじ部11と雌ねじ部21とからなるので、前記凍結保存用キャップ3を外す方向に回転させると、徐々に軸方向外方へ移動するが、その際に該凍結保存用キャップ3の爪部22が栓体2の係合段部17を引っ掛けて、該栓体2のシール部13が有底管1の開口部4から抜ける方向に変移させるのである。従って、前記係合段部17と爪部22は、軸方向に対して急峻な当接面となっていることが好ましく、本実施形態では当接面が半径方向を向いている。仮に、前記凍結保存用キャップ3を有底管1から外す際に、係着手段7の係合が解除されて前記栓体2が有底管1に残った場合であっても、前記有底管1の雄ねじ部11を摘みとして持って栓体2を強制的に抜くことができる。また、前記凍結保存用キャップ3の前記爪部22より奥部には、該爪部22とともに栓体2のフランジ部12の半径方向端部を包持することができるように、半径方向内方へ当接部25を突設している。この当接部25と爪部22とで前記栓体2のフランジ部12を包持すると、前記凍結保存用キャップ3と栓体2との間の接触摩擦力が大きくなり、凍結保存用キャップ3を回転させた際に、栓体2を回転させながら抜くことができるので、該栓体2を確実に有底管1から外すことができる。
【0037】
次に、図4及び図5に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には前述の第1実施形態と同様であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係着手段7は、前記有底管1の開口部4に近い端部外周面に突設した単又は複数の係止突起26と、該係止突起26にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップ3の筒部20の端部に形成した単又は複数の係止爪27とから構成されている。前記係止突起26は、少なくとも下半分が略半円柱状に形成され、下面部分が円弧状の誘い面となっており、前記係止爪27を下側へ案内して、前記栓体2を圧迫しながら強固に係止するようになっている。尚、前記係止爪27の先端部上側に、前記係止突起26に係止した状態で戻り止めの凸部を形成することも好ましい。
【0038】
次に、図6及び図7に基づいて本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態は、基本的には前述の第1実施形態と同様であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係着手段7は、前記有底管1の開口部4に近い端部外周面に突設した単又は複数のダボ28と、該ダボ28にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面に形成した単又は複数のL字溝29とから構成されている。ここで、前記L字溝29は、前記凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面を減肉して形成し、下方から前記ダボ28を受け入れる縦溝30と、該縦溝30の上端から円周方向に延びた横溝31とからなり、更に前記横溝31の終端には前記ダボ28を係合して戻り止めするためのやや深い凹部を形成することが好ましい。
【0039】
図8は本発明の真空採血管Aの第4実施形態を示している。本実施形態の係着手段7は、第1実施形態と同様に、有底管1の開口部4の近傍外周面に形成した雄ねじ部11と、凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面に形成した雌ねじ部21とから構成されている。また、本実施形態の栓体2は、前述の実施形態のものと形状が異なるが、基本的な機能は全く同じであるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係合手段8は、前記凍結保存用キャップ3の内周面の対向位置に部分的に爪部32,33を突設するとともに、一方の爪部32が前記凍結保存用キャップ3を前記有底管1の開口部4に係着手段7にて取付けた際に前記栓体2の係合段部17に係合し、他方の爪部33が前記係着手段7による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップ3を前記有底管1から外す際に前記栓体2の係合段部17に係合するように、軸方向で位置をずらせて形成している。
【0040】
前記凍結保存用キャップ3に形成した一対の爪部32,33を軸方向で位置をずらせて形成したことにより、該凍結保存用キャップ3を回転させて軸方向外方へ移動させる動作によって、先ず一方の爪部32が前記栓体2の係合段部17を押し上げて該栓体2に捻りを加え、それにより前記シール部13の前記有底管1の開口部4に対する接触抵抗が減少し、更に凍結保存用キャップ3を回転させれば、該爪部32が係合段部17を変形させてめり込むとともに、他方の爪部33が反対側の係合段部17に当接し、その後は前記栓体2を供回りさせて開口部4から簡単に抜き去ることが可能である。
【0041】
図9は本発明の真空採血管Aの第5実施形態を示している。本実施形態の係着手段7は、第1実施形態と同様に、有底管1の開口部4の近傍外周面に形成した雄ねじ部11と、凍結保存用キャップ3の筒部20の端部内周面に形成した雌ねじ部21とから構成されている。また、本実施形態の栓体2は、前述の第4実施形態のものと同一であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の係合手段8は、前記凍結保存用キャップ3の内周面の対向位置で、同一軸方向位置に部分的に一対の爪部34,34を半径方向内外に弾力性を持たせて突設し、前記栓体2の係合段部17に係合するようになっている。具体的には、前記凍結保存用キャップ3の筒部20に、上方が該筒部20に連続し、下方の3辺が倒コ字形のスリット孔35を形成した弾性片36の下端内面に前記爪部34を突設している。本実施形態の爪部34,34は、半径方向内外に弾性的に変位可能であるので、前記凍結保存用キャップ3を有底管1の先端部に外装する際に、前記栓体2のフランジ部12を通過するときに前記爪部34,34が外側へ変位しながら通過し、前記係合段部17に至ると内側へ弾性復元し、栓体2と凍結保存用キャップ3とが係合一体化する。また、通常、作業者は、該凍結保存用キャップ3を手指でつまんで回転させて軸方向外方へ移動させるので、その際、前記爪部34,34をつまむこととなり、その応力で半径方向内側へより変位すれば、前記栓体2の係合段部17との係合一体化はより確実となるという補助的効果も期待できる。
【0042】
更に、図10〜図15に示すように、前記有底管1の開口部4に前記凍結保存用キャップ3を前記係着手段7にて取付けた際に、該凍結保存用キャップ3の端縁37を、該有底管1の外周面に設けた外周縁部38に保持されたOリング39に圧接し、前記有底管1内部の気密性を更に高めるようにすることがより好ましい。図10及び図11は、第1実施形態の変形例を示し、図12及び図13は第2実施形態の変形例を示し、図14及び図15は第3実施形態の変形例を示している。各実施形態において、前記有底管1の近傍外周面に環状に外周縁部38を突設し、該外周縁部38の半径方向へ向いた平坦な支持面にフラット型の前記Oリング39を接触状態で配置する。その構成は、図1〜図7に示した実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付して、その説明は省略する。
【符号の説明】
【0043】
A 真空採血管、 B 針ホルダ、
1 有底管、 2 栓体、
3 凍結保存用キャップ、 4 開口部、
5 採血針、 6 針刺通部、
7 係着手段、 8 係合手段、
9 底面部、 10 載置台、
11 雄ねじ部、 12 フランジ部、
13 シール部、 14 端部、
15 凹部、 16 凹部、
17 係合段部、 19 上面部、
20 筒部、 21 雌ねじ部、
22 爪部、 23 本体筒、
24 鍔部、 25 当接部、
26 係止突起、 27 係止爪、
28 ダボ、 29 L字溝、
30 縦溝、 31 横溝、
32 爪部、 33 爪部、
34 爪部、 35 スリット孔、
36 弾性片、 37 端縁、
38 外周縁部、 39 Oリング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底管と、該有底管の開口部に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部を有する栓体と、採血後に前記栓体を覆って保持する凍結保存用キャップとからなる真空採血管において、前記有底管の開口部に、前記凍結保存用キャップを、少なくとも前記栓体の針刺通部を覆った状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段にて取付けるとともに、該凍結保存用キャップと前記栓体とが互いに係合手段にて係合一体化し、前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に、前記栓体が有底管の開口部から同時に外れることを特徴とする真空採血管。
【請求項2】
前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数のダボと、該ダボにそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した単又は複数のL字溝とからなる請求項1記載の真空採血管。
【請求項3】
前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に形成した雄ねじ部と、該雄ねじ部に螺合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した雌ねじ部とからなる請求項1記載の真空採血管。
【請求項4】
前記雄ねじ部と雌ねじ部の一方又は双方が部分ねじである請求項3記載の真空採血管。
【請求項5】
前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数の係止突起と、該係止突起にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部に形成した単又は複数の係止爪とからなる請求項1記載の真空採血管。
【請求項6】
前記係合手段が、前記栓体の周囲に前記有底管の外周面より半径方向外方へ張り出した係合段部と、前記凍結保存用キャップの内周面に突設した前記係合段部に係合一体化する爪部とからなる請求項1〜5何れか1項に記載の真空採血管。
【請求項7】
前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設してなる請求項6記載の真空採血管。
【請求項8】
前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設するとともに、一方の爪部が前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に前記栓体の係合段部に係合し、他方の爪部が前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に前記栓体の係合段部に係合するように、軸方向で位置をずらせて前記爪部を形成している請求項6記載の真空採血管。
【請求項9】
前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの内面で前記栓体の一部を圧迫し、該栓体による有底管の開口部の密閉性を高めてなる請求項1〜8何れか1項に記載の真空採血管。
【請求項10】
前記有底管の開口部に前記凍結保存用キャップを前記係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの端縁を、該有底管の外周面に設けた外周縁部に保持されたOリングに圧接してなる請求項1〜9何れか1項に記載の真空採血管。
【請求項1】
有底管と、該有底管の開口部に管内部が減圧状態に維持可能に気密状態で取付けられ、採血針を刺通可能な針刺通部を有する栓体と、採血後に前記栓体を覆って保持する凍結保存用キャップとからなる真空採血管において、前記有底管の開口部に、前記凍結保存用キャップを、少なくとも前記栓体の針刺通部を覆った状態で有底管の軸方向外方に対する移動を規制する係着手段にて取付けるとともに、該凍結保存用キャップと前記栓体とが互いに係合手段にて係合一体化し、前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に、前記栓体が有底管の開口部から同時に外れることを特徴とする真空採血管。
【請求項2】
前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数のダボと、該ダボにそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した単又は複数のL字溝とからなる請求項1記載の真空採血管。
【請求項3】
前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に形成した雄ねじ部と、該雄ねじ部に螺合すべく前記凍結保存用キャップの端部内周面に形成した雌ねじ部とからなる請求項1記載の真空採血管。
【請求項4】
前記雄ねじ部と雌ねじ部の一方又は双方が部分ねじである請求項3記載の真空採血管。
【請求項5】
前記係着手段が、前記有底管の開口部近傍の外周面に突設した単又は複数の係止突起と、該係止突起にそれぞれ回転係合すべく前記凍結保存用キャップの端部に形成した単又は複数の係止爪とからなる請求項1記載の真空採血管。
【請求項6】
前記係合手段が、前記栓体の周囲に前記有底管の外周面より半径方向外方へ張り出した係合段部と、前記凍結保存用キャップの内周面に突設した前記係合段部に係合一体化する爪部とからなる請求項1〜5何れか1項に記載の真空採血管。
【請求項7】
前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設してなる請求項6記載の真空採血管。
【請求項8】
前記凍結保存用キャップの内周面の対向位置に部分的に前記爪部を突設するとともに、一方の爪部が前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に前記栓体の係合段部に係合し、他方の爪部が前記係着手段による移動規制を解除して前記凍結保存用キャップを前記有底管から外す際に前記栓体の係合段部に係合するように、軸方向で位置をずらせて前記爪部を形成している請求項6記載の真空採血管。
【請求項9】
前記凍結保存用キャップを前記有底管の開口部に係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの内面で前記栓体の一部を圧迫し、該栓体による有底管の開口部の密閉性を高めてなる請求項1〜8何れか1項に記載の真空採血管。
【請求項10】
前記有底管の開口部に前記凍結保存用キャップを前記係着手段にて取付けた際に、該凍結保存用キャップの端縁を、該有底管の外周面に設けた外周縁部に保持されたOリングに圧接してなる請求項1〜9何れか1項に記載の真空採血管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−229758(P2011−229758A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104367(P2010−104367)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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