説明

真空断熱パネルの製造方法及び製造装置

【課題】芯材を内包する外包材の内部が真空状態としてて外包材周縁部で封止された真空断熱パネルを、真空チャンバーを用いることなく製造する。
【解決手段】一方の分割金型2a,2bの中央に、2枚の板状包材1a,1bの膨出部2eが収まる開口が設けられ、二つの分割金型の外周より内側に外周に沿って上下包材のフランジ部を挟み込むフランジ部押圧パッキン3a,3bがそれぞれ配置されるとともに、フランジ部押圧パッキンと外周の間に外周に沿って上下の分割金型の間をシールする金型シールパッキン4が配置され、フランジ部押圧パッキンと前記金型シールパッキンの間に、一方の分割金型の相対する分割金型の当接面に開口する排気溝5aと排気溝5aと真空機器を結ぶ排気口5bが設けられた上下の分割金型に上下2枚の包材1a,1bのフランジ部を挟み込み、空間の大気を排出して芯材収納部を真空にした後、上下の包材フランジ部を接合して真空封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷蔵庫や保冷庫、或いは保温庫や住宅等の断熱壁等に好適に用いられる真空断熱パネルの製造方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫や保冷庫、或いは保温庫等の断熱壁等に用いられる真空断熱パネルとしては、ガラス繊維やポリエステル繊維化等からなる断熱性に優れた芯材と、その周囲を覆うガス不透過性に優れた外包材からなり、前記芯材を内包する前記外包材の内部が真空状態となるように前記外包材周縁部で封止されたものが一般的である。
そして、外包材の内部を真空状態とした後に封止するために、芯材を内包した状態の外包材全体を真空チャンバーに挿入している。例えば特許文献1,2に見られる通りである。また、真空チャンバーを用いずに外包材の内部を真空状態にしようとする方法も提案されている。例えば特許文献3に示されている。
なお、封止の手段として、外包材の少なくとも一面に積層された樹脂層を介して熱融着する方法や、外包材として金属板を用いた場合に金属板同士を溶接接合する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8‐159376号公報
【特許文献2】特開2010‐174975号公報
【特許文献3】特開2009‐228803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、上下の外包材によって被覆された芯材を真空チャンバー内へ挿入してその内部の真空状態とした後に、両外包材の突き合わせ部をシーム溶接によって封止することにより、真空断熱パネルを形成している。真空チャンバーでの真空引きを行っているため、装置が大がかりとなるばかりでなく、手間もかかる。
また、前記特許文献2では、袋状の外包材に開口部から芯材を挿入し、残りの一辺の開口部を閉まらないように固定して、恒温槽により乾燥したのち、真空包装後の残存ガスや経時的に放出される芯材からのアウトガス、外包材のシール層を通して侵入する透過ガスを吸着するためのガス吸着剤を外包材内に挿入した後に真空引きを行い、その後に、チャンバー内で外包材の開口部をヒートシールして、板状の真空断熱パネルを得ている。この方法も、前記特許文献1と同様に、真空チャンバーでの真空引きを行っているため、装置が大がかりとなっている。
【0005】
そこで、真空チャンバーを用いずに、外包材の内部を真空状態にしようとする方法として特許文献3が挙げられる。
前記特許文献3では、予め溝が形成された略長方形の金属製外包材の3辺に沿って、溶接等によって第1の封止接合部を形成した後に開放されている1辺より芯材部を収納した後残りの1辺を封止する。最後に封止した1辺の接合部より内側に真空引きの孔を設けて収納部を減圧状態に維持し、その後に、金属製外包材の開放されている真空引きの孔を設けて辺に沿って真空引きの孔より内側に第2の封止接合部を形成して金属製真空断熱パネルを製造することが記載されている。
【0006】
しかしながら、当該特許文献3の製造方法においては、真空引き用の孔を設ける必要があり、材料が無駄であるばかりでなく、真空封止後に切除する必要がある。しかも、切除部分にも一旦封止のための溶接をする余分な手間がかかる。さらに、切除されるフランジが広いため真空引きのための溝を設けなければならないばかりか、この溝も溶接前に潰す必要があり、全体として手間がかかりすぎるといった問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するために案出されたものであり、ガラス繊維やロックウール等の無機繊維や、合成繊維や天然繊維等の有機繊維等からなる断熱性に優れた芯材と、その周囲を覆うガス不透過性に優れた外包材からなり、前記芯材を内包する前記外包材の内部が真空状態とされて前記外包材周縁部で封止された真空断熱パネルを、大がかりな真空チャンバーを用いることなく簡便に製造する方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の真空断熱パネルの製造方法は、その目的を達成するため、少なくとも片方に芯材を収納する膨出部を有する上下2枚の板状包材と、当該包材の前記膨出部に収納する芯材を準備し、上下二つに分割された金型であって、その少なくとも一方の分割金型の中央に前記包材の膨出部が収まる開口部が設けられ、それら二つの分割金型の外周より内側に外周に沿って上下包材のフランジ部を挟み込むフランジ部押圧パッキンがそれぞれ配置されるとともに、前記フランジ部押圧パッキンと外周の間に外周に沿って上下の分割金型の間をシールする金型シールパッキンが配置され、前記フランジ部押圧パッキンと前記金型シールパッキンの間に、前記二つの分割金型の内の少なくとも一方の分割金型の相対する分割金型との当接面に開口する排気溝と当該排気溝と真空機器を結ぶ排気口が設けられた金型を用いて、分割金型の前記開口部に芯材を収納した前記膨出部が収まるように、上下2枚の包材のフランジ部を上下の分割金型でフランジ部押圧パッキンを介して挟み込むと共に、上下包材の外周部より外側において上下分割金型を金型シールパッキンによりシールすることで上下包材の外周部に閉じた空間を作り出し、排気溝を経由させて外部に通じる排気口から、上下包材に囲まれた空間の大気を排出して芯材収納部を真空にした後、分割金型内周面と包材の膨出部の外周に囲まれた領域において上下の包材フランジ部を接合して真空封止することを特徴とする。
【0009】
上下2枚の板状包材として、厚さ0.05mm〜0.3mm程度のステンレス鋼、アルミニウム等の金属薄板や金属箔を用い、レーザ溶接、シーム溶接、TIG溶接、プラズマ溶接、電子ビーム溶接等の溶接法や拡散接合等の接合手段により上下の包材フランジ部を接合してもよい。
また、上下2枚の板状包材として、少なくとも互いの当接面側にポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を積層したラミネート材を用い、熱融着法により上下の包材フランジ部を接合してもよい。
効率的な真空引きの観点から、2枚の包材の接触面積(接触幅×周長)は狭いほど好ましく、合わせ面の表面粗度は溶接等による接合が可能な範囲で粗い方が好ましい。
【0010】
本発明の真空断熱パネルの製造装置は、上下二つに分割された金型であって、その少なくとも一方の分割金型の中央に前記包材の膨出部が収まる開口部が設けられ、前記二つの分割金型の外周より内側に外周に沿って上下包材のフランジ部を挟み込むフランジ部押圧パッキンがそれぞれ配置されるとともに、前記フランジ部押圧パッキンと外周の間に外周に沿って上下の分割金型の間をシールする金型シールパッキンが配置され、前記フランジ部押圧パッキンと前記金型シールパッキンの間に、前記二つの分割金型の内の少なくとも一方の分割金型の相対する分割金型との当接面に開口する排気溝と当該排気溝と真空機器を結ぶ排気口が設けられた金型を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、大気中で真空封止を行っている。このため、大型の真空チャンバーは不要であり、設備が簡素であるばかりでなく、効率良く真空断熱パネルを製造することが可能となる。また、包材の外周全体の広い範囲から真空引きする形態となるため、作業が短時間で完了する。
さらに、用いる上下の分割金型を、上下包材の耐熱性繊維製芯材収納膨出部が収まるような開口部を設け、上下包材のフランジ部のみを抑えるような構造としているため、最終製品とほぼ同寸法の包材を使用でき、材料の歩留りが向上する。
さらにまた、上下包材に、真空引きのための口金等の取り付け必要がないので、この点からも材料の歩留りが向上するばかりでなく、作業効率も良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の真空断熱パネルの製造手順を説明する分解図
【図2】本発明の真空断熱パネルの製造装置を説明する断面図
【図3】本発明の真空断熱パネルの製造装置を説明する部分断面図
【符号の説明】
【0013】
1a:上側包材 1a:下側包材
2a:上金型 2b:下金型
2c:上側包材フランジ部 2d:下側包材フランジ部
2e:芯材収納膨出部
3a:上包材用フランジ部押圧パッキン 3b:下包材用フランジ部押圧パッキン
4:金型シールパッキン
5a:排気溝 5b:排気口
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記した通り、上下の外包材によって被覆された芯材を真空チャンバー内へ挿入して、その内部の真空状態とした後に、両外包材の突き合わせ部をシーム溶接によって封止して製造しようとすると、真空チャンバーでの真空引きを行う必要があるため、装置が大がかりとなるばかりでなく、手間もかかって、結果的に高コストなってしまう。
そこで、本発明者らは、真空チャンバーを用いることなく、外包材の突き合わせ部から簡便に真空引きした後に封止シールすることが可能な方法について鋭意検討し、本発明に到達した。
以下に、その詳細を説明する。
【0015】
まず、図に基づいて、本発明方法において用いる装置の構造から説明する。
図1〜3は本発明製造装置の概略構造と操作手順を説明する図である。本発明の真空断熱パネルの製造装置は、基本的には上下二つに分割された金型から構成されている。
上金型2a、下金型2bは、製造しようとする真空断熱パネルの外形に排気用溝と金型シールパッキンとそれらの間或いは周辺のスペース等を加えた、真空断熱パネルの外形よりも大きい外形を有している。図に示す例は、矩形の真空断熱パネルを製造するための金型であり、外形は矩形とされている。そして、分割金型の中央に、真空断熱パネルを構成する芯材を収納する包材の膨出部が収まるような開口部が設けられている。この開口部は、上金型2a、下金型2bの両方に設けられていてもよいし、上下二枚の包材の内の一方にのみ膨出部が設けられたような真空断熱パネルを製造する場合には、片方の分割金型にのみ設けられていてもよい。
【0016】
二つの分割金型2a、2bの相接する当接面には、金型外周より内側に外周に沿って上下包材1a,1bのフランジ部2c、2dを挟み込むフランジ部押圧パッキン3a、3bがそれぞれ配置されている。なお、図中では、フランジ部押圧パッキン3a、3bとしてOリングを用いている。
また、二つの分割金型2a、2bの相接する当接面には、前記フランジ部押圧パッキン3a、3bと分割金型の外周の間に分割金型の外周に沿って上下の分割金型の間をシールする金型シールパッキン4が配置されている。なお、図中では、金型シールパッキン4として、下金型2bの上金型2aに相対する面に凹溝を設け、この凹溝にOリングを配している。
さらに、前記フランジ部押圧パッキン3a、3bと前記金型シールパッキン4の間に、前記二つの分割金型2a、2bの内の一方の分割金型の相対する分割金型の当接面に開口する排気溝5aと当該排気溝5aと真空機器を結ぶ排気口5bが設けられている。なお、図中では、排気溝5a、排気口5bは下金型2bに設けられているが、上金型2aに設けてもよいし、上金型2aと下金型2bの両方に設けてもよい。
【0017】
次に、上記製造装置を用いて真空断熱パネルを製造する手順について説明する。
別途、少なくとも片方に芯材を収納する膨出部2eを有する上下2枚の板状包材1a、1bと、この包材の前記膨出部2eに収納する断熱性繊維製の芯材を準備する。
膨出部2eに芯材を収納し、フランジ部2c、2dで重ねられた上下2枚の板状包材1a、1bを、そのフランジ部2c、2dがフランジ部押圧パッキン3a、3bで押されるように、二つの分割金型2a、2b間に挟み込む。なお、この時点では、芯材を収納した包材の膨出部2eは、分割金型2a、2bの開口部に納まった状態となっている。
【0018】
その後、図示していない真空ポンプを作動させ、排気溝5a、排気口5bを経由させて芯材収納空間から大気を吸引する。その後、芯材収納空間を真空に維持した状態で、図2,3に示すように、分割金型の内側と膨出部2eとの間の任意位置で、上下2枚の板状包材1a、1bのフランジ部2c、2dをレーザ溶接する。
上下2枚の板状包材1a、1bのフランジ部2c、2dの間には僅かな隙間があるために大気は十分に吸引され、芯材収納空間は真空状態となるが、より真空状態にし易くするためには、フランジ部合わせ面の表面を粗く仕上げていることが好ましい。
また、図示していないが、上下2枚の板状包材1a、1bの何れかのフランジ部2c、2dに、レーザ溶接による溶接封止部より外側に平坦部を挟んで外周に通じる浅い溝を設けて、真空引きを行い易くしてもよい。
【0019】
ところで、上記の事例では、上下2枚の板状包材1a、1bとして金属板を用いているのでレーザ溶接したが、レーザ溶接の他に、シーム溶接、TIG溶接、プラズマ溶接、電子ビーム溶接、拡散接合等であってもよい。
上下2枚の板状包材として用いられる金属板としては、厚さ0.05mm〜0.3mm程度のステンレス鋼、アルミニウム等の金属薄板や金属箔が好ましいが、めっき鋼板等であってもよい。
また、上下2枚の板状包材として、少なくとも互いの当接面側にポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を積層したラミネート材を用い、熱融着法により上下の包材フランジ部を接合してもよい。
板状包材の材質、板厚或いは包材フランジ部の封止方法については、本発明で提供される真空断熱パネルの用途に応じて選択をすればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片方に芯材を収納する膨出部を有する上下2枚の板状包材と、当該包材の前記膨出部に収納する芯材を準備し、上下二つに分割された金型であって、その少なくとも一方の分割金型の中央に前記包材の膨出部が収まる開口部が設けられ、それら二つの分割金型の外周より内側に外周に沿って上下包材のフランジ部を挟み込むフランジ部押圧パッキンがそれぞれ配置されるとともに、前記フランジ部押圧パッキンと外周の間に外周に沿って上下の分割金型の間をシールする金型シールパッキンが配置され、前記フランジ部押圧パッキンと前記金型シールパッキンの間に、前記二つの分割金型の内の少なくとも一方の分割金型の相対する分割金型との当接面に開口する排気溝と当該排気溝と真空機器を結ぶ排気口が設けられた金型を用いて、分割金型の前記開口部に芯材を収納した前記膨出部が収まるように、上下2枚の包材のフランジ部を上下の分割金型でフランジ部押圧パッキンを介して挟み込むと共に、上下包材の外周部より外側において上下分割金型を金型シールパッキンによりシールすることで上下包材の外周部に閉じた空間を作り出し、排気溝を経由させて外部に通じる排気口から、上下包材に囲まれた空間の大気を排出して芯材収納部を真空にした後、分割金型内周面と包材の膨出部の外周に囲まれた領域において上下の包材フランジ部を接合して真空封止することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
【請求項2】
上下2枚の板状包材として金属薄板又は金属箔を用い、溶接法により上下の包材フランジ部を接合する請求項1に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項3】
上下2枚の板状包材として、互いの当接面の少なくとも片方に熱可塑性樹脂を積層したラミネート材を用い、熱融着法により上下の包材フランジ部を接合する請求項1に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項4】
上下二つに分割された金型であって、その少なくとも一方の分割金型の中央に前記包材の膨出部が収まる開口部が設けられ、前記二つの分割金型の外周より内側に外周に沿って上下包材のフランジ部を挟み込むフランジ部押圧パッキンがそれぞれ配置されるとともに、前記フランジ部押圧パッキンと外周の間に外周に沿って上下の分割金型の間をシールする金型シールパッキンが配置され、前記フランジ部押圧パッキンと前記金型シールパッキンの間に、前記二つの分割金型の内の少なくとも一方の分割金型の相対する分割金型との当接面に開口する排気溝と当該排気溝と真空機器を結ぶ排気口が設けられた金型を備えていることを特徴とする真空断熱パネルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−177386(P2012−177386A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39157(P2011−39157)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】