説明

真空断熱材及び真空断熱材を搭載した冷蔵庫

【課題】真空断熱材を構成する材料のうち、外包材に係わる熱伝導率を低減し、真空断熱材及びそれを搭載した冷蔵庫の断熱性能を向上させること。
【解決手段】繊維材料積層体又は連通ウレタンからなる芯材と、複数の樹脂フィルムから構成されてその内の少なくとも1つの樹脂フィルム34b,34cには金属蒸着層又は無機蒸着層が形成されて芯材を覆う外包材34と、外包材34の内部に配された吸着材と、を備える真空断熱材であって、外包材の内で最内層の樹脂フィルム34dは芯材を挟んで対向し互いに溶着する溶着層を形成し、溶着層の樹脂フィルム34dは、複数の層341,342,343からなる積層構造であり、その内の1つの層342に熱伝導率低減物質が混練されていること。熱伝導率低減物質は、真空層を保持する有機系または無機系の真空ビーズであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及び真空断熱材を搭載した冷蔵庫に係わり、特に芯材を覆う外包材の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の断熱箱体には、断熱材として、発泡断熱材のほかに、高い断熱性能を有する真空断熱材を備えることが一般的となってきた。冷蔵庫に使用される真空断熱材の従来技術として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、ガスバリア性フィルムからなる外装材が、金属箔を積層したラミネートフィルムからなる面と、金属箔を積層しないラミネートフィルムからなる少なくとも2面で構成されるため、金属箔に起因して生じる熱架橋(ヒートブリッジ)の課題を改善して断熱性能を向上した構成例が開示されている。
【0003】
また、従来技術として特許文献2には、少なくともアルミニウムを蒸着したフィルム2層の間に、アルミニウム箔を挟んでラミネートフィルムとし、該アルミニウム箔がシール部にかからない大きさになるようにエッチング処理して除去し、熱架橋を軽減させるとともにガスバリア性を高めて断熱性能を向上した構成例が開示されている。
【0004】
また、炊飯器に使用する真空断熱材に関する従来の方式として、特許文献3には、ガスバリア層として有機フィルムからなる基材に金属蒸着或いは金属酸化物蒸着などを施した蒸着層を1層または複数層使用したラミネートフィルムとしてガスバリア性とともに熱漏洩を軽減させ断熱性能を向上させることが提案されている。また、このラミネートフィルムの表面層として耐熱性の保護層を設けることにより、熱による性能劣化を抑制する構成例が開示されている。
【0005】
また、特許文献4に記載には、金属を蒸着した蒸着層を有する複数の基材を備えた外包材において、これら複数の基材を蒸着層同士が対向するように積層することにより、ガスバリア性や耐突き刺し性を向上した構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−336991号公報
【特許文献2】特開2001−32992号公報
【特許文献3】特開2001−204620号公報
【特許文献4】特開2005−055086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の構成例では、片面に金属箔を有するラミネートフィルムを用いているが、通常冷蔵庫などに使用する際には、ポリウレタンフォームの流動を阻害しないように外包材稜線部分であるヒートシール部を少なくとも一辺以上折り曲げるため(後述する図3に示す耳部40の折り曲げ形態を参照)、片面のラミネートフィルムから金属箔層を除いた場合であっても、ヒートブリッジの影響は軽減されるものの、片面に残る金属箔層により熱が真空断熱材表面に沿って横方向に流れるヒートブリッジの影響がまだ大きく、また、折り曲げによる金属箔層の二重になった部分に熱が蓄積することにより真空断熱材表面の温度が上昇するなど、断熱性能の改善が不足していた。特に、冷蔵庫実機に搭載した際の断熱性能を測る目安となる熱漏洩量については、真空断熱材を搭載しているのにも関わらず、前述のヒートブリッジの影響により、計算より効果が劣る状況であった。
【0008】
また、特許文献2に開示されているように、ラミネートフィルムの蒸着層2層の間にアルミニウム箔層をシール部にかからない大きさでラミネートしたものについては、該アルミニウム箔はラミネート後にエッチング処理により不要部分を除去するが、加工コストが高いことや、アルミニウム箔を除去した部分と残った部分、つまり蒸着層2層+アルミニウム箔の部分と蒸着層2層のみとなった部分の境界部分の厚み差により、ラミネート時にフィルム内に気泡が出来ると云う、信頼性の面で課題があった。
【0009】
また、特許文献3に開示されているように、ラミネートフィルムの表面層に耐熱性の保護層を配置し、ガスバリア層として有機フィルムからなる基材に金属蒸着或いは金属酸化物蒸着などを施した蒸着層を1層または複数層使用したものについては、85℃前後の温度帯に対する耐熱性は考慮されているが、それ以上の温度帯については考慮されていなかった。すなわち、真空断熱材を外板と内板との間の断熱部に配設する場合には、真空断熱材を外板あるいは内板に接着して、その外板と内板との間にウレタンを流し込んで発泡させることとするが、発泡時に真空断熱材の配設部が到達する温度である120〜150℃という温度に対する耐熱性は考慮されていなかった。また、突き刺しに対する各層の構成についても考慮がされていなかった。
【0010】
また、特許文献4に開示されているように、金属を蒸着した蒸着層を有する複数の基材を備えた外包材において、これら複数の基材を蒸着層同士が対向するように積層したものについては、金属箔層を無くすことによりヒートブリッジは大幅に低減できるが、まだ所謂耳部近傍の熱伝導率は大きく改善の余地があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、真空断熱材及び真空断熱材を用いた冷蔵庫に係り、真空断熱材を構成する材料のうち、外包材に係わる熱伝導率を低減し、真空断熱材及びそれを搭載した冷蔵庫の性能向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
繊維材料積層体又は連通ウレタンからなる芯材と、複数の樹脂フィルムから構成されてその内の少なくとも1つの樹脂フィルムには金属蒸着層又は無機蒸着層が形成されて前記芯材を覆う外包材と、前記外包材の内部に配された吸着材と、を備える真空断熱材であって、前記外包材の内で最内層の樹脂フィルムは、前記芯材を挟んで対向し互いに溶着する溶着層を形成し、前記溶着層の樹脂フィルムは、複数の層からなる積層構造であり、その内の少なくとも1つの層に熱伝導率低減物質が混練されている構成とする。この熱伝導率低減物質は、真空層を保持する有機系または無機系の真空ビーズである。
【0013】
また、この真空断熱材を冷蔵庫に用いる場合に、真空断熱材が、冷蔵庫の断熱箱体の外板と内箱の間で外板又は内箱のいずれか一方に貼り付けられ、外板と内箱との間に配されたポリウレタンフォームとともに断熱部を形成する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、真空断熱材の外包材に係わる熱伝導率を低減し、断熱性能の経時劣化を低減し、信頼性を確保した真空断熱材及び冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る真空断熱材を適用した冷蔵庫の断面を示す図である。
【図2】図1におけるA−A’線の断面を示す図である。
【図3】本実施形態に係る真空断熱材における芯材及び外包材の構造と形状を示す図である。
【図4】本実施形態に関する外包材における最内層の溶着層を含む積層構造を示す断面図である。
【図5】本実施形態に関する外包材における最内層の溶着層に関する各実施例と効果を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る真空断熱材について、図1〜図5を参照しながら以下詳細に説明する。図面において、10は冷蔵庫箱体、11は外板、12は内箱、13は発泡断熱材、14は冷蔵温度室、15は冷凍温度室、16は送風機、18は冷却器、20は圧縮機、30は真空断熱材、31は芯材、33は外包材、34は貼付面側外包材フィルム、34aは 第一層、34bは 第二層、34cは第三層、34d第四層(溶着層)、35はウレタン側外包材フィルム、40は耳部、50は接着剤、をそれぞれ表す。なお、図2の図示例では、本発明の実施形態に係る真空断熱材30は外板11と接するように配置されているが、この配置に限らず真空断熱材30を内箱12に接するように配置しても構わない。
【0017】
図1において、本実施形態に係る真空断熱材を適用した冷蔵庫は、冷蔵庫箱体10内に冷蔵温度室14と冷凍温度室15とをそれぞれ区画形成している。冷蔵庫箱体10は、外板11と内箱12とを備え、外板11と内箱12とによって形成される空間を断熱部として冷蔵庫箱体10内の各貯蔵室と外部とを断熱している。外板11側または内箱12側に真空断熱材30を貼付し、真空断熱材30以外の断熱部空間には発泡断熱材13が充填されている。
また、冷蔵庫内の各貯蔵室を所定の温度に冷却するために冷凍温度室15の背面側には冷却器18が備えられており、冷却器18と圧縮機20とを含み図示しない凝縮器、キャピラリーチューブとがそれぞれ接続されて冷凍サイクルを構成している。冷却器18の上方には、冷却器18にて冷却された冷気を冷蔵庫庫内に循環して所定の低温温度を保持する送風機16が配設されている。
【0018】
図2において、本実施形態に係る真空断熱材30は、芯材31と芯材31を被覆するガスバリア層を有する外包材33とから構成されている。外包材33は、真空断熱材30の貼付面となる外包材フィルム34とウレタンに接する面となる外包材フィルム35の2面を貼り合わせた製袋形状で構成されている。なお、本実施形態において芯材31については、繊維材料積層体を用いたが、繊維材料積層体のみならず、公知の材料である連通ウレタン等でもよく、特に限定されるものではなく、パネル状に形成した真空断熱材において、パネル厚さ方向への熱伝導をより低減させるために、繊維長の方向をそろえた無機繊維材料の積層体を使用しても当然によいものである。
【0019】
本実施形態における冷蔵庫に使用する真空断熱材としては板状に形成されるパネル状のものとし、芯材31としては無機繊維材料の積層体であるとして(本発明がこれに限らないことは上述したとおり)、以下説明する。
【0020】
冷蔵庫に用いる真空断熱材30は、繊維材料積層体からなる芯材31と外包材及び吸着材とから構成し、外包材33(貼付面側外包材フィルム34とウレタン側外包材フィルム35からなるもの)は、ヒートブリッジの低減とガスバリア性を考慮して、外包材34は、少なくとも一層の金属又は無機の蒸着層を設けたラミネートフィルムとする。真空断熱材30と外板11又は内箱12との貼付面にはホットメルト接着剤50を全面に塗布して、真空断熱材30を貼り付ける。ここで、ヒートブリッジは真空断熱材の表面を通って熱が流れる熱架橋現象を云い断熱性能に影響を及ぼし、ガスバリア性は真空断熱材の外部から外包材を通して芯材に水分やガス成分が侵入することを阻止する機能を云い、真空断熱材の内部の真空度低下に繋がるものである。また、真空断熱材の外包材に設けた金属蒸着膜は、一般的に云って、ガスバリア性には効果的であるがヒートブリッジには不利に作用するものである。
【0021】
図3と図4において、外包材33は、最外層である第一層34a,34bと、第二層である34b,35bと、第三層である34c,35cと、互いを耳部40で溶着する第四層34d,35dと、から構成されている。そして、第四層34d,35dは、後述の実施例の欄(図5を参照)で説明する3つの層(図4の符号341,342,343)又は2つの層(図4の符号341,342)から成り立っている。
【0022】
第一層34a,34bは最外層であるため、ウレタン発泡液13の充填時に真空断熱材30配設部が到達する温度である120〜150℃の温度に対する耐熱性も考慮し、第一層は耐熱層とするとよく、本実施形態では、第一層を耐熱層としている。また、第一層は最外層であるため、真空断熱材30の取扱い時のフィルムへの傷付き防止を考慮し、突き刺し強度(外包材フィルム34,35への外部からの機械的な突き刺し現象に対する抵抗性)、耐熱温度が共に高いものとするとよい。そこで、本実施形態では、それらを考慮した上でポリアミド(ナイロン)樹脂の層としている。
【0023】
第二層34b,35b及び第三層34c,35cはアルミニウムを蒸着した面同士をラミネートして中間に配置することにより蒸着層内にあるピンホールや蒸着のバラツキを抑制すると共に、ガスバリア性を強化する効果と蒸着層に外部からのダメージを受け難くする効果を兼ね備えているものである。また、第三層にエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)を配置することで、ガスバリア性以外にも、内側からの突き刺しに対しても十分に耐え得る構造となっており、信頼性の高い真空断熱材を用いた冷蔵庫を提供できるのである。
【0024】
第四層は、芯材31を挟んで対向する面としての溶着であるため(後述する図3から分かるように、第四層34,35同士は耳部40で重なり合って溶着される)、溶着層として高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)とするのがよい。
【0025】
さらに、外包材フィルム34,35の具体的な材料について説明する。ガスバリア層の基材が、ポリアミド樹脂フィルム(PA)、ポリプロピレン樹脂フィルム(PP)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム(PAN)のうちいずれかである真空断熱材とする。これらの酸素又は水蒸気の透過率が低い基材にさらに金属蒸着することにより、真空断熱材の性能劣化を最小限に抑えることができるため、消費電力量の少ない冷蔵庫を実現できる。
【0026】
また、真空断熱材30の外包材の構成が、最外層である第一層としてポリアミド(ナイロン)樹脂(PA)またはポリエチレンテレタフレート樹脂(PET)、第二層をポリアミド樹脂フィルム(PA)、ポリプロピレン樹脂フィルム(PP)、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム(PAN)のうちいずれかからなる層、第三層を金属蒸着(例えばアルミニウム蒸着)した、或いは無機蒸着(例えばシリカ蒸着)したポリアミド樹脂フィルム(PA)、ポリプロピレン樹脂フィルム(PP)、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム(PAN)のうちいずれかからなる層、最内層である第四層を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)または熱溶着可能な樹脂フィルム、とした4つの層からなる真空断熱材とする。ここで、第二層には蒸着層を設けても良く、金属蒸着として、アルミニウムの外にクロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルがあり、無機蒸着として、シリカ(SiO)の外に、TiO 、ZrO 、MgF 、等の酸化物やフッ化物がある。
【0027】
そして、好ましい具体的な構成例として、第一層をポリアミド(ナイロン)樹脂(PA)34a,35a、第二層をアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)34b,35b、第三層をアルミニウムを蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)34c,35c、第四層を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)34d,35dとするのが良い。
【0028】
また、吸着材をモレキュラシーブ13Xとし、芯材31が保持している水分と、外包材が受ける温度条件によって出る僅かなガス成分を高い吸着速度で十分に吸着できるため、初期性能が安定する効果と長期間での劣化を最小限に抑えることができるため消費電力量の少ない冷蔵庫を実現できる。
【0029】
また、真空断熱材30の接着面となる側の外包材フィルムが冷蔵庫の外箱鉄板内側、すなわち外板11の断熱部を形成する面、又は冷蔵庫の内板の樹脂面外側、すなわち内箱12の断熱部を形成する面に貼り付けられて保持されるため、この貼付面側からのガス浸入は少なく抑えられることとなり、信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
【0030】
また、真空断熱材が、ガスバリア層として本実施形態の如く高性能なフィルムを採用することにより、例えば上述した第一層と、第二層と、最内層である高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)または熱溶着可能な樹脂フィルムとした層と、することによる3層構成とすることが可能となる。
【0031】
図5において、本実施形態に関する外包材フィルム34,35の最内層である溶着層34d、35dの組成構成と断熱性能の評価との関連について、以下、従来例と複数の実施例を挙げて説明する。図5は本実施形態に関する外包材における最内層の溶着層に関する各実施例と効果を表す説明図である。外包材フィルム34,35の最内層溶着層で用いた材料の差異による断熱性能の評価は、真空断熱材単体での評価として真空断熱材の初期熱伝導率と、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度と、によって表す。図5に示す実施例1〜5の評価数値は、従来例を100としたときの比較数値であり、数値が小さい方が断熱性能が優れていることを表す。なお、評価としての熱伝導率は、図5で示す初期の熱伝導率と、70℃雰囲気下に10年相当経過期間放置後の熱伝導率と比較しその差を検証すれば、さらに評価基準として優れている。
【0032】
「従来例」
従来例においては、図4に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層として二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層としてシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層として各辺シール部から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34cとした。
【0033】
第四層である溶着層については、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)34dとし、合計4層構成のラミネートフィルムとした。なお、外包材は四辺形形状の袋であって、その三辺は折り返し部をもち残りの一辺が開口をもち、開口から芯材を内部に充填した後に袋周辺の四辺にヒートシール部を施して内部を真空状態に保持している(以下に示す実施例1〜5でも同様)。
【0034】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13X(品名)を用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0035】
真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で測定した熱伝導率初期値を100とし、以下の実施例1〜5での測定値においては従来例初期値との相関で表す。また、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体10の熱漏洩量の悪化値の測定値を100として、以下の実施例1〜5での測定値を従来例悪化値との相関で表すこととする。
【0036】
「実施例1」
本発明における第一の実施例においては、図4に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層として二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層としてシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層として各辺シール部から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34cとした。ここで、外包材は四辺形形状の袋であって、その三辺は折り返し部をもち残りの一辺が開口をもち、開口から芯材を内部に充填した後に袋周辺の四辺にヒートシール部を施して内部を真空状態に保持している。外包材の各四辺の周辺部に設けたヒートシール部から内側にのみアルミニウム蒸着層が設けられ、図3に示す耳部40の折り曲げ部がヒートシール部の外側に配置されているので、耳部40を折り曲げした状態でも真空断熱材の表面に沿って熱が流れるヒートブリッジは少なくなり断熱性能が向上する。
【0037】
第四層である溶着層については、共押しラミネート成形により、接着剤層無しで積層された、10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)341と、真空ビーズが混練されている10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層342と、の2層構造の溶着層であり、他のバリア層34a,34b,34cを含めると、合計4層構成のラミネートフィルムとした。
【0038】
なお、真空ビーズはその内部に真空層を保持して熱伝導率低減物質として働く有機系(例.プラスチック)又は無機系(例.ガラス、セラミックス)のビーズであり、ビーズの内部に真空層が形成されているものである。また、図5によると、溶着層の第2層に真空ビーズを混練させているが、これに限らず、他の層にも混練させてもよい(以下に示す実施例においても同様)。さらに、芯材にグラスウールを用いこのグラスウールを脱気して圧縮するためにポリエチレンからなる内袋を用いてもよい(以下に示す実施例においても同様)。そして、この内袋の外側に外包材が設けられるのである。内袋を用いる場合には、内袋でグラスウールを圧縮するのでグラスウールを結合するためのバインダーは不要となる。
【0039】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13X(品名)を用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0040】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で測定した値は、従来例での測定値との比率で表すと98となった。また、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度は、従来例での測定値との比率で表すと99となった。
【0041】
「実施例2」
本発明における第二の実施例においては、図4に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層として二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層としてシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層として各辺シール部から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34cとした。
【0042】
第四層である溶着層については、共押しラミネート成形により、接着剤層無しで積層された、10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)341と、真空ビーズが混練されている10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)342と、10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)343と、の3層構造の溶着層であり、他のバリア34a,34b,34cを含めると、合計4層構成のラミネートフィルムとした。
【0043】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13X(品名)を用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0044】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で測定した値は、従来例での測定値との比率で表すと96となった。また、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度は、従来例での測定値との比率で表すと98となった。
【0045】
「実施例3」
本発明における第三の実施例においては、図4に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層として二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層としてシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層として各辺シール部から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34cとした。
【0046】
第四層である溶着層については、共押しラミネート成形により、接着剤層無しで積層された、10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)341と、真空ビーズが混練されている20μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)342と、の2層構造の溶着層であり、他のバリア層34a,34b,34cを含めると、合計4層構成のラミネートフィルムとした。
【0047】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13X(品名)を用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0048】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で測定した値は、従来例での測定値との比率で表すと95となった。また、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度は、従来例での測定値との比率で表すと97となった。
【0049】
「実施例4」
本発明における第四の実施例においては、図4に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層として二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層としてシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層として各辺シール部から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34cとした。
【0050】
第四層である溶着層については、共押しラミネート成形により、接着剤層無しで積層された、10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(LLDPE)341と、真空ビーズが混練されている10μmの低密度ポリエチレン樹脂層342(LDPE)と、10μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層343(LLDPE)と、の3層構造の溶着層であり、他のバリア層34a,34b,34cを含めると、合計4層構成のラミネートフィルムとした。
【0051】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13X(品名)を用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0052】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で測定した値は、従来例での測定値との比率で表すと96となった。また、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度は、従来例での測定値との比率で表すと98となった。
【0053】
「実施例5」
本発明における第五の実施例においては、図4に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層として二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層としてシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層として各辺シール部から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34cとした。
【0054】
第四層である溶着層については、共押しラミネート成形により、接着剤層無しで積層された、10μmの高密度ポリエチレン樹脂層341と、真空ビーズが混練されている20μmの低密度ポリエチレン樹脂層342と、の2層構造の溶着層であり、他のバリア層34a,34b,34cを含めると、合計4層構成のラミネートフィルムとした。
【0055】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13X(品名)を用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で測定した値は、従来例での測定値との比率で表すと96となった。また、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度は、従来例での測定値との比率で表すと98となった。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る真空断熱材の構成によれば、外包材の耳部を折り曲げた状態においても真空断熱材の表面に沿って熱が流れるヒートブリッジの影響を改善することが可能となり、真空ビーズの混練したラミネートフィルム構成として熱伝導率低減をもたらして断熱性能の劣化を防止し、ガスバリア性を補うことが可能であり、突き刺しに対しての信頼性を確保することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 冷蔵庫箱体
11 外板
12 内箱
13 発泡断熱材
14 冷蔵温度室
15 冷凍温度室
16 送風機
18 冷却器
20 圧縮機
30 真空断熱材
31 芯材
33 外包材
34 貼付面側外包材フィルム
34a 第一層
34b 第二層
34c 第三層
34d 第四層(溶着層)
35 ウレタン側外包材フィルム
40 耳部
50 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料積層体又は連通ウレタンからなる芯材と、複数の樹脂フィルムから構成されてその内の少なくとも1つの樹脂フィルムには金属蒸着層又は無機蒸着層が形成されて前記芯材を覆う外包材と、前記外包材の内部に配された吸着材と、を備える真空断熱材であって、
前記外包材の内で最内層の樹脂フィルムは、前記芯材を挟んで対向し互いに溶着する溶着層を形成し、
前記溶着層の樹脂フィルムは、複数の層からなる積層構造であり、その内の少なくとも1つの層に熱伝導率低減物質が混練される
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
請求項1において、
前記熱伝導率低減物質は、真空層を保持する有機系または無機系の真空ビーズであることを特徴とする真空断熱材。
【請求項3】
請求項2において、
前記真空ビーズが混練された層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層又は低密度ポリエチレン樹脂層に前記真空ビーズが混練されることを特徴とする真空断熱材。
【請求項4】
請求項1,2または3において、
ポリエチレンからなる内袋を用いて前記芯材としてのグラスウールを脱気し圧縮し、
前記外包材が前記内袋の外側を囲む
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載された真空断熱材が、断熱箱体の外板と内箱の間で前記外板又は前記内箱のいずれか一方に貼り付けられ、前記外板と前記内箱との間に配されたポリウレタンフォームとともに断熱部を形成する冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219955(P2012−219955A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88281(P2011−88281)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】