説明

真空断熱材及び真空断熱材を搭載した冷蔵庫

【課題】真空断熱材及び真空断熱材を用いた冷蔵庫において、ヒートブリッジの影響を改善し、ガスバリア性を保持して断熱性能の長期的な劣化を補うこと。
【解決手段】繊維材料積層体からなる芯材と、複数の樹脂フィルムの内の少なくとも1つの樹脂フィルムには金属蒸着層が形成されて芯材を覆う外包材と、吸着材と、を備える真空断熱材であって、袋形状をもつ外包材の周辺部近傍にヒートシール部60が形成され、ヒートシール部60から所定距離だけ離れた中央部寄りの部位から中央領域に亘って金属蒸着層61が形成される構成とする。金属蒸着層61はその蒸着厚さを異にする2つ以上の層厚さ部を有すること。さらに、ヒートシール部60から金属蒸着層61までの領域には無機蒸着層62が形成され、無機蒸着層62と金属蒸着層61の表面はその高さを略同一とすること。前記所定距離は50mm以上で70mm以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及び真空断熱材を搭載した冷蔵庫に係わり、特に芯材を覆う外包材の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の断熱箱体には、断熱材として、発泡断熱材のほかに、高い断熱性能を有する真空断熱材を備えることが一般的となってきた。冷蔵庫に使用される真空断熱材の従来技術として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、ガスバリア性フィルムからなる外装材が、金属箔を積層したラミネートフィルムからなる面と、金属箔を積層しないラミネートフィルムからなる少なくとも2面で構成されるため、金属箔に起因して生じる熱架橋(ヒートブリッジ)の課題を改善して断熱性能を向上した構成例が開示されている。
【0003】
また、従来技術として特許文献2には、少なくともアルミニウムを蒸着したフィルム2層の間に、アルミニウム箔を挟んでラミネートフィルムとし、該アルミニウム箔がシール部にかからない大きさになるようにエッチング処理して除去し、熱架橋を軽減させるとともにガスバリア性を高めて断熱性能を向上した構成例が開示されている。
【0004】
また、炊飯器に使用する真空断熱材に関する従来の方式として、特許文献3には、ガスバリア層として有機フィルムからなる基材に金属蒸着或いは金属酸化物蒸着などを施した蒸着層を1層または複数層使用したラミネートフィルムとしてガスバリア性とともに熱漏洩を軽減させ断熱性能を向上させることが提案されている。また、このラミネートフィルムの表面層として耐熱性の保護層を設けることにより、熱による性能劣化を抑制する構成例が開示されている。
【0005】
また、特許文献4に記載には、金属を蒸着した蒸着層を有する複数の基材を備えた外包材において、これら複数の基材を蒸着層同士が対向するように積層することにより、ガスバリア性や耐突き刺し性を向上した構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−336991号公報
【特許文献2】特開2001−32992号公報
【特許文献3】特開2001−204620号公報
【特許文献4】特開2005−055086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の構成例では、片面に金属箔を有するラミネートフィルムを用いているが、通常冷蔵庫などに使用する際には、ポリウレタンフォームの流動を阻害しないように外包材稜線部分であるヒートシール部を少なくとも一辺以上折り曲げるため(後述する図3に示す耳部40の折り曲げ形態を参照)、片面のラミネートフィルムから金属箔層を除いた場合であっても、ヒートブリッジの影響は軽減されるものの、片面に残る金属箔層により熱が真空断熱材表面に沿って横方向に流れるヒートブリッジの影響がまだ大きく、また、折り曲げによる金属箔層の二重になった部分に熱が蓄積することにより真空断熱材表面の温度が上昇するなど、断熱性能の改善が不足していた。特に、冷蔵庫実機に搭載した際の断熱性能を測る目安となる熱漏洩量については、真空断熱材を搭載しているのにも関わらず、前述のヒートブリッジの影響により、計算より効果が劣る状況であった。
【0008】
また、特許文献2に開示されているように、ラミネートフィルムの蒸着層2層の間にアルミニウム箔層をシール部にかからない大きさでラミネートしたものについては、該アルミニウム箔はラミネート後にエッチング処理により不要部分を除去するが、加工コストが高いことや、アルミニウム箔を除去した部分と残った部分、つまり蒸着層2層+アルミニウム箔の部分と蒸着層2層のみとなった部分の境界部分の厚み差により、ラミネート時にフィルム内に気泡が出来るので信頼性の面で課題があった。
【0009】
また、特許文献3に開示されているように、ラミネートフィルムの表面層に耐熱性の保護層を配置し、ガスバリア層として有機フィルムからなる基材に金属蒸着或いは金属酸化物蒸着などを施した蒸着層を1層または複数層使用したものについては、85℃前後の温度帯に対する耐熱性は考慮されているが、それ以上の温度帯については考慮されていなかった。すなわち、真空断熱材を外板と内板との間の断熱部に配設する場合には、真空断熱材を外板あるいは内板に接着して、その外板と内板との間にウレタンを流し込んで発泡させることとするが、発泡時に真空断熱材の配設部が到達する温度である120〜150℃という温度に対する耐熱性は考慮されていなかった。また、突き刺しに対する各層の構成についても考慮がされていなかった。
【0010】
また、特許文献4に開示されているように、金属を蒸着した蒸着層を有する複数の基材を備えた外包材において、これら複数の基材を蒸着層同士が対向するように積層したものについては、金属箔層を無くすことによりヒートブリッジは大幅に低減できるが、まだ所謂耳部近傍の熱伝導率は大きく改善の余地があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、真空断熱材及び真空断熱材を用いた冷蔵庫に係り、真空断熱材を構成する材料の内の外包材について、ガスバリア性を保持しつつヒートブリッジに係る熱伝導率を低減し、真空断熱材及びそれを搭載した冷蔵庫の断熱性能向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
繊維材料積層体又は連通ウレタンからなる芯材と、複数の樹脂フィルムから構成されてその内の少なくとも1つの樹脂フィルムには金属蒸着層が形成されて前記芯材を覆う外包材と、前記外包材の内部に配された吸着材と、を備える真空断熱材であって、袋形状をもつ外包材の周辺部近傍にヒートシール部が形成され、前記ヒートシール部から所定距離だけ離れた中央部寄りの部位から中央領域に亘って金属蒸着層が形成される構成とする。
【0013】
また、前記真空断熱材において、前記金属蒸着層は、その蒸着厚さを異にする2つ以上の層厚さ部を有すること。さらに、前記ヒートシール部から前記金属蒸着層までの領域には無機蒸着層が形成され、前記無機蒸着層と前記金属蒸着層の表面はその高さを略同一とすること。さらに、前記所定距離は、50mm以上で70mm以下であること。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガスバリア性を保持しながらヒートブリッジの影響を抑止して、断熱性能の経時的劣化を低減し、信頼性を確保した真空断熱材及び冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る真空断熱材を適用した冷蔵庫の断面を示す図である。
【図2】図1におけるA−A’線の断面を示す図である。
【図3】本実施形態に係る真空断熱材における芯材及び外包材の構造と形状を示す図である。
【図4】本実施形態に関する外包材フィルムに形成された金属蒸着部と無機蒸着部の配置を示す平面図である。
【図5】本発明の第四実施例に関する外包材フィルムに形成された金属蒸着部と無機蒸着部の形態例を示す断面図である。
【図6】本実施形態に関する外包材フィルムに形成された金属蒸着部の配置例を示す各実施例とその断熱性能を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る真空断熱材について、図1〜図6を参照しながら以下詳細に説明する。図面において、10は冷蔵庫箱体、11は外板、12は内箱、13は発泡断熱材、14は冷蔵温度室、15は冷凍温度室、16は送風機、18は冷却器、20は圧縮機、30は真空断熱材、31は芯材、33は外包材、34は貼付面側外包材フィルム、34aは 第一層、34bは 第二層、34cは第三層、34d第四層(溶着層)、35はウレタン側外包材フィルム、40は耳部、50は接着剤、60はヒートシール部、61は金属蒸着部、62は無機蒸着部、をそれぞれ表す。なお、図2の図示例では、本発明の実施形態に係る真空断熱材30は外板11と接するように配置されているが、この配置に限らず真空断熱材30を内箱12に接するように配置しても構わない。
【0017】
図1において、本実施形態に係る真空断熱材を適用した冷蔵庫は、冷蔵庫箱体10内に冷蔵温度室14と冷凍温度室15とをそれぞれ区画形成している。冷蔵庫箱体10は、外板11と内箱12とを備え、外板11と内箱12とによって形成される空間を断熱部として冷蔵庫箱体10内の各貯蔵室と外部とを断熱している。外板11側または内箱12側に真空断熱材30を貼付し、真空断熱材30以外の断熱部空間には発泡断熱材13が充填されている。
また、冷蔵庫内の各貯蔵室を所定の温度に冷却するために冷凍温度室15の背面側には冷却器18が備えられており、冷却器18と圧縮機20とを含み図示しない凝縮器、キャピラリーチューブとがそれぞれ接続されて冷凍サイクルを構成している。冷却器18の上方には、冷却器18にて冷却された冷気を冷蔵庫庫内に循環して所定の低温温度を保持する送風機16が配設されている。
【0018】
図2において、本実施形態に係る真空断熱材30は、芯材31と芯材31を被覆するガスバリア層を有する外包材33とから構成されている。外包材33は、真空断熱材30の貼付面となる外包材フィルム34とウレタンに接する面となる外包材フィルム35の2面を貼り合わせた製袋形状で構成されている。冷蔵庫に配設される真空断熱材30は、図1に示すように、板状体の形状に限らず、折り曲げ加工された形状(図1の上部と下部に配設された真空断熱材30を参照)で用いられる。さらに、真空断熱材30は、不図示であるが、その板状平面の一部に各種パイプの通る凹部が形成される形状であってもよい。
【0019】
なお、本実施形態において芯材31については、繊維材料積層体を用いたが、繊維材料積層体のみならず、公知の材料である連通ウレタン等でもよく、特に限定されるものではなく、パネル状に形成した真空断熱材において、パネル厚さ方向への熱伝導をより低減させるために、繊維長の方向をそろえた無機繊維材料の積層体を使用しても当然によいものである。
【0020】
本実施形態における冷蔵庫に使用する真空断熱材としては板状に形成されるパネル状のものとし、芯材31としては無機繊維材料の積層体であるとして(本発明がこれに限らないことは上述したとおり)、以下説明する。
【0021】
冷蔵庫に用いる真空断熱材30は、繊維材料積層体からなる芯材31と外包材及び吸着材とから構成し、外包材33(貼付面側外包材フィルム34とウレタン側外包材フィルム35からなるもの)は、ヒートブリッジの低減とガスバリア性を考慮して、外包材34は、少なくとも一層の金属及び/又は無機の蒸着層を設けたラミネートフィルムとする。真空断熱材30と外板11又は内箱12との貼付面にはホットメルト接着剤50を全面に塗布して、真空断熱材30を貼り付ける。ここで、ヒートブリッジは真空断熱材の表面を通って熱が流れる熱架橋現象を云い断熱性能に影響を及ぼし、ガスバリア性は真空断熱材の外部から外包材を通して芯材に水分やガス成分が侵入することを阻止する機能を云い、真空断熱材の内部の真空度低下に繋がるものである。また、真空断熱材の外包材上に蒸着される金属蒸着膜は、一般的に云って、ガスバリア性には効果的であるがヒートブリッジには不利に作用するものである。これに対して、無機蒸着膜はヒートブリッジには有利に作用する。
【0022】
図3において、外包材33は、最外層である第一層34a,34bと、第二層である34b,35bと、第三層である34c,35cと、互いを耳部40で溶着する第四層34d,35dと、から構成されている。
【0023】
第一層34a,34bは最外層であるため、ウレタン発泡液13の充填時に真空断熱材30配設部が到達する温度である120〜150℃の温度に対する耐熱性も考慮し、第一層は耐熱層とするとよく、本実施形態では、第一層を耐熱層としている。また、第一層は最外層であるため、真空断熱材30の取扱い時のフィルムへの傷付き防止を考慮し、突き刺し強度(外包材フィルム34,35への外部からの機械的な突き刺し現象に対する抵抗性)、耐熱温度が共に高いものとするとよい。そこで、本実施形態では、それらを考慮した上でポリアミド(ナイロン)樹脂の層としている。
【0024】
第二層34b,35b及び第三層34c,35cはアルミニウムを蒸着した面同士をラミネートして中間に配置することにより蒸着層内にあるピンホールや蒸着のバラツキを抑制すると共に、ガスバリア性を強化する効果と蒸着層に外部からのダメージを受け難くする効果を兼ね備えているものである。また、第三層にエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)を配置することで、ガスバリア性以外にも、内側からの突き刺しに対しても十分に耐え得る構造となっており、信頼性の高い真空断熱材を用いた冷蔵庫を提供できるのである。
【0025】
第四層は、芯材31を挟んで対向する面としての溶着であるため(図3から分かるように、第四層34,35同士は耳部40で重なり合って溶着される)、溶着層として高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)とするのがよい。
【0026】
さらに、外包材フィルム34,35の具体的な材料について説明する。ガスバリア層の基材が、ポリアミド樹脂フィルム(PA)、ポリプロピレン樹脂フィルム(PP)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム(PAN)のうちいずれかである真空断熱材とする。これらの酸素又は水蒸気の透過率が低い基材にさらに金属蒸着することにより、真空断熱材の性能劣化を最小限に抑えることができるため、消費電力量の少ない冷蔵庫を実現できる。
【0027】
また、真空断熱材30の外包材の構成が、最外層である第一層としてポリアミド(ナイロン)樹脂(PA)またはポリエチレンテレタフレート樹脂(PET)、第二層をポリアミド樹脂フィルム(PA)、ポリプロピレン樹脂フィルム(PP)、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム(PAN)のうちいずれかからなる層、第三層を金属蒸着(例えばアルミニウム蒸着)した、或いは無機蒸着(例えばシリカ蒸着)したポリアミド樹脂フィルム(PA)、ポリプロピレン樹脂フィルム(PP)、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアクリルニトリル樹脂フィルム(PAN)のうちいずれかからなる層、最内層である第四層を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)または熱溶着可能な樹脂フィルム、とした4つの層からなる真空断熱材とする。ここで、第二層には蒸着層を設けても良く、また、金属蒸着として、アルミニウムの外にクロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルがあり、無機蒸着として、シリカ(SiO)の外に、TiO 、ZrO 、MgF 、等の酸化物やフッ化物がある。
【0028】
そして、好ましい具体的な構成例として、第一層をポリアミド(ナイロン)樹脂(PA)34a,35a、第二層をアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)34b,35b、第三層をアルミニウムを蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)34c,35c、第四層を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)34d,35dとするのが良い。
【0029】
次に、図4を用いて、合成樹脂フィルムからなる外包材33における金属蒸着層及び無機蒸着層の形成について説明する。図4は本実施形態に関する外包材フィルムに形成された金属蒸着部と無機蒸着部の配置を示す平面図である。本実施形態に係る真空断熱材における外包材は、ヒートブリッジの低減とガスバリア性を考慮して、外包材の少なくとも一層には金属及び無機の蒸着層を設けたラミネートフィルムとする。
【0030】
外包材33は四辺形形状の袋であって、その三辺は折り返し部をもち残りの一辺が開口をもち(三方袋と称する)、開口から芯材を内部に充填した後に袋周辺の四辺にヒートシール部60を施して内部を真空状態を保持している(以下に示す実施例1〜4でも同様)。図4には本実施形態で用いる三方袋の外包材33の外観を示している。
【0031】
外包材33の中央部の領域には金属蒸着部61が存在するが(後述する実施例では外包材33の第三層34cに金属蒸着部61を形成する)、ヒートシール部60の近傍部には金属蒸着が存在しないか或いは無機蒸着部62のみが存在する構成となっている。ここで、外包材への蒸着部の作製手法としては、予めポリエチレンテレフタレートやポリビニルアルコール共重合体のようなプラスチックフィルムの表面に500〜800Åの蒸着層が加工されたフィルムをラミネーターで積層する前に、予め蒸着層を存在させない部分のみを残してマスキングし、特殊な溶剤でその部分のみを溶かすことで部分的に蒸着層の無いプラスチックフィルムを作製することができる。それらのプラスチックフィルムを積層することで部分的に蒸着層が無い外包材を作製することができる。
【0032】
また、部分的に無機蒸着のみを残す場合、即ちヒートシール部近傍で金属蒸着部が無い部分にガスバリア性改善のために無機の蒸着層、例えばシリカ蒸着等が挙げられるが、それらを存在させる場合は、不要な部分をマスキングして無機蒸着を乗せる、或いは他のラミネート層に無機蒸着層を乗せるという手法が考えられる。図4において、金属蒸着部61と無機蒸着部62は、図3に示すように複数の外包材フィルム34を積層するので、同じ層高さにすることが望ましい。なお、ヒートシール部60は、図3に示す耳部40の折り曲げ部分(図3の例で垂直部分)に存在することを妨げないが、金属蒸着部61は折り曲げ部分に存在してはならない(ヒートブリッジの悪影響を回避するために)。
【0033】
上述した手法を用いることにより、耳部40を折り曲げた状態(図3に示す耳折りをした状態)でも真空断熱材30表面に沿って熱が流れるヒートブリッジが少なくなり、断熱性能が向上すると同時に、ガスバリア性にも優れた信頼性の高い真空断熱材を用いた冷蔵庫を提供できる。換言すると、ガスバリア性を確保し断熱性能を向上させるために中央部領域に金属蒸着膜を設け、金属蒸着膜によるヒートブリッジの悪影響を抑止するために
また、吸着材をモレキュラシーブ13Xとし、芯材31が保持している水分と、外包材が受ける温度条件によって出る僅かなガス成分を高い吸着速度で十分に吸着できるため、初期性能が安定する効果と長期間での劣化を最小限に抑えることができる。このため、消費電力量の少ない冷蔵庫を実現できる。
【0034】
また、真空断熱材30の接着面となる側の外包材フィルムが冷蔵庫の外箱鉄板内側、すなわち外板11の断熱部を形成する面、又は冷蔵庫の内板の樹脂面外側、すなわち内箱12の断熱部を形成する面に貼り付けられて保持されるため、この貼付面側からのガス浸入は少なく抑えられることとなり、信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
【0035】
また、真空断熱材が、ガスバリア層として本実施形態の如く高性能なフィルムを採用することにより、例えば上述した第一層と、第二層と、最内層である高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)または熱溶着可能な樹脂フィルムとした層と、することによる3層構成とすることが可能となる。
【0036】
図6は、本実施形態に関する外包材フィルムに形成された金属蒸着部の配置例を示す各実施例とその断熱性能を表す説明図であり、以下の実施例の欄で、従来例及び比較例と対比しながら説明する。図6において、三方袋のヒートシール部60からの金属蒸着部61の距離の差異による断熱性能の評価は、真空断熱材単体での評価として真空断熱材の初期熱伝導率と、70℃雰囲気下に10年相当経過期間放置後の熱伝導率とを確認して、その熱伝導率の悪化度を評価基準とする。さらに、評価基準として、発泡断熱材を含めた冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度(初期熱漏洩量と10年相当経過期間放置後の熱漏洩量との比較による悪化程度)をもって表している。図6に示す実施例1〜4の評価数値は、従来例を100としたときの比較数値であり、数値が小さい方が断熱性能が優れていることを表す。図6では、各実施例において、真空断熱材の10年相当放置時の熱伝導率の劣化度ならびに冷蔵庫箱体の熱漏洩量の悪化度について、従来例及び比較例との対比で表している。
【0037】
「従来例」
従来例においては、図3に示すように、真空断熱材30の貼付面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層をポリアミド(ナイロン)層34a、第二層をアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層をアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層お高密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。なお、ウレタン側の外包材フィルム35の材料も貼付面側の外包材フィルム34と同じでよい。
【0038】
ここで用いた真空断熱材は、芯材をバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものとし、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34及び35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0039】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定した悪化率を100とする。また、上述のように作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量の悪化度を100とした。
【0040】
「実施例1」
本発明における第一の実施例においては、図3に示すように、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層を二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層をシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層を各辺ヒートシール部60から50mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。
【0041】
なお、ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0042】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して80となった。また、本実施例の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して90%となった。
【0043】
「実施例2」
本発明における第二の実施例においては、図3の如く、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層を二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層をシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層を各辺ヒートシール部60から60mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。
【0044】
なお、ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0045】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して85となった。また、本実施例の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して92%となった。換言すると、実施例2は実施例1と比べると熱伝導率悪化率は80から85となって熱伝導率は多少悪化している。この悪化は、金属蒸着部61をヒートシール部60から10mm増やした位置から中央部に亘って蒸着したことで、ガスバリア性が悪化して真空度が低下し熱伝導率が悪化したものとみられる。
【0046】
「実施例3」
本発明における第三の実施例においては、図3の如く、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層を二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層をシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層を各辺ヒートシール部60から70mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。
【0047】
なお、ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0048】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して90となった。また、本実施例の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して95%となった。
【0049】
「実施例4」
本発明の第四の実施例における蒸着部の構成例を図5に示す。図5は本発明の第四実施例に関する外包材フィルムに形成された金属蒸着部と無機蒸着部の形態例を示す断面図である。
【0050】
本発明の第四の実施例においては、実施例3と同様の構成であるが、金属蒸着層の厚みについて、ヒートシール部60から70mmの地点から20mm幅については300Åと通常の半分程度とし、それより内側については700Åと通常より厚いアルミ蒸着層としている。なお、アルミ蒸着層の異なる厚さは、2つに限らず複数の厚さの異なるアルミ蒸着層であってもよい。
【0051】
ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0052】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して85となった。また、本実施例の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して93%となった。換言すると、実施例4は実施例3と比べると熱伝導率悪化率は90から85となって熱伝導率は改善している。この改善は、中央部の金属蒸着部61を厚くしたのでガスバリア性が良くなり、真空度の低下が抑制され熱伝導率が改善したものとみられる。
【0053】
「比較例1」
本発明に対する第一の比較例においては、図3の如く、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層を二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層をシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層を各辺ヒートシール部60から10mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。
【0054】
なお、ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0055】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して101となった。また、本比較例1の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して102%となった。これは、金属蒸着部61によるヒートブリッジの悪影響が及んだとみられる。
【0056】
「比較例2」
本発明に対する第二の比較例においては、図3の如く、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層を二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層をシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層を各辺シール部から30mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。
【0057】
なお、ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0058】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して100となった。また、本比較例2の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して102%となった。
【0059】
「比較例3」
本発明に対する第三の比較例においては、図3の如く、真空断熱材30の接着面側の外包材フィルム34は、最外層から、第一層を二軸延伸ポリプロピレン層34a、第二層をシリカを400〜500Åの厚みで蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層34b、第三層を各辺シール部から40mm内側の長方形領域のみアルミニウムを400〜500Åの厚みで蒸着したエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)層34c、第四層である溶着層を直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層34dの4層構成のラミネートフィルムとした。
【0060】
なお、ここで用いた真空断熱材は、芯材にバインダーを含まない平均繊維径4μmのグラスウール積層体を無機バインダーで固化したものを用い、吸着材はモレキュラシーブ13Xを用い、外包材フィルム34,35からなる製袋品に芯材と吸着材を挿入後、真空包装機にて真空度2.0Pa以下に一定時間保持し封止したものである。
【0061】
この真空断熱材について、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074で初期値から70℃雰囲気下で10年相当経過した際の熱伝導率劣化度を測定したところ、従来例の悪化率を100とした数値に対して99となった。また、本比較例3の如く作製した真空断熱材を搭載した冷蔵庫の熱漏洩量を測定したところ、従来例に対して101%となった。
【0062】
以上説明したように、実施例1から実施例4と従来例とを対比すると、実施例1から実施例4は、熱伝導率については10年相当経過時の劣化度、箱体熱漏洩量の悪化比率いずれも各実施例の方が優れており、10年相当経過後であっても十分な断熱性能を維持して経時劣化を低減している。また、本発明における実施例1〜4は、比較例1から比較例3との対比においても、従来例に対するのと同様に優位性をもっている。本発明では、ヒートブリッジの影響を更に改善することが可能となり、ガスバリア性を保持して断熱性能の長期的な劣化を補うことが可能であり、突き刺しに対しての信頼性をも確保した真空断熱材と真空断熱材を用いた冷蔵庫を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
10 冷蔵庫箱体
11 外板
12 内箱
13 発泡断熱材
14 冷蔵温度室
15 冷凍温度室
16 送風機
18 冷却器
20 圧縮機
30 真空断熱材
31 芯材
33 外包材
34 貼付面側外包材フィルム
34a 第一層
34b 第二層
34c 第三層
34d 第四層(溶着層)
35 ウレタン側外包材フィルム
40 耳部
50 接着剤
60 ヒートシール部
61 金属蒸着部
62 無機蒸着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料積層体又は連通ウレタンからなる芯材と、複数の樹脂フィルムから構成されてその内の少なくとも1つの樹脂フィルムには金属蒸着層が形成されて前記芯材を覆う外包材と、前記外包材の内部に配された吸着材と、を備える真空断熱材であって、
袋形状をもつ外包材の周辺部近傍にヒートシール部が形成され、
前記ヒートシール部から所定距離だけ離れた中央部寄りの部位から中央領域に亘って金属蒸着層が形成される
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
請求項1において、
前記金属蒸着層は、その蒸着厚さを異にする2つ以上の層厚さ部を有することを特徴とする真空断熱材。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ヒートシール部から前記金属蒸着層までの領域には無機蒸着層が形成され、
前記無機蒸着層と前記金属蒸着層の表面はその高さを略同一とする
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項4】
請求項1,2または3において、
前記所定距離は、50mm以上で70mm以下であることを特徴とする真空断熱材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載された真空断熱材が、断熱箱体の外板と内箱の間で前記外板又は前記内箱のいずれか一方に貼り付けられ、前記外板と前記内箱との間に配されたポリウレタンフォームとともに断熱部を形成する冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219956(P2012−219956A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88291(P2011−88291)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】