説明

真空断熱構造体

【課題】2以上の球状スペーサを確実に直列配置でき、断熱性能を向上する。
【解決手段】第1壁部12と、この第1壁部12と所定間隔をもって位置する第2壁部16とを備え、これら第1および第2壁部12,16の間に多数の球状スペーサ20A,20Bを位置決め部材21によって配設するとともに、第1および第2壁部12,16の間を密封して真空空間19とした真空断熱構造体において、位置決め部材21は、2以上の球状スペーサ20A,20Bを第1壁部12から第2壁部16に向けて直列に並べて配置し、その両端の開口部25から球状スペーサ20A,20Bを突出させて位置決め保持する筒状の保持部23を有し、第1および第2壁部12,16のいずれにも接触および固定されていない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネル、魔法瓶、真空二重管、真空二重ジャケット、真空容器等の真空断熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の真空断熱構造体は、対向する第1および第2壁部の間を密封して真空空間としている。この真空断熱構造体は、壁部の肉厚を厚くすれば、真空排気による内外の圧力差に抗して変形することを防止できるが、重量が重くなるという欠点がある。
【0003】
特許文献1の真空断熱構造体では、第1および第2壁部の間に多数の球状スペーサを配設することにより、変形を防止できるようにしている。この真空断熱構造体では、第1壁部に筒状に突出する保持部を設け、この保持部内に2以上の球状スペーサを直列に並べて配置している。
【0004】
しかしながら、特許文献1の真空断熱構造体は、直列に並べた球状スペーサに対して保持部が周方向に接した状態になる。また、第1壁部に加わった熱は、保持部を介して球状スペーサに伝わる。その結果、保持部の熱が第2壁部に接した球状スペーサに直ぐに伝わり、その熱が第2壁部に伝熱されるため、断熱性能が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−214372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2以上の球状スペーサを確実に直列配置でき、断熱性能を向上できる真空断熱構造体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の真空断熱構造体は、第1壁部と、この第1壁部と所定間隔をもって位置する第2壁部とを備え、これら第1および第2壁部の間に多数の球状スペーサを位置決め部材によって配設するとともに、前記第1および第2壁部の間を密封して真空空間とした真空断熱構造体において、前記位置決め部材は、2以上の球状スペーサを第1壁部から第2壁部に向けて直列に並べて配置し、その両端の開口部から前記球状スペーサを突出させて位置決め保持する筒状の保持部を有し、前記第1および第2壁部のいずれにも接触および固定されていない構成としている。
【0008】
ここで、本発明の筒状の保持部とは、円筒状に限られず、多角筒状を含む。また、第1および第2壁部の間の真空空間は、第1および第2壁部の周囲を溶着することにより密封して形成する構成、および、第1および第2壁部をラミネートフィルムで密封して形成する構成を含む。
【0009】
この真空断熱構造体は、位置決め部材を第1および第2壁部のいずれにも接触および固定しないため、第1および第2壁部の一方に加わった熱は、点接触した球状スペーサからのみ他方へ伝熱される。しかも、球状スペーサは、第1壁部から第2壁部に向けて2以上直列に並べて配置しているため、点接触した球状スペーサ間の伝熱も抑制できる。よって、断熱性能を大幅に向上することができる。
【0010】
前記保持部は、ベース板部の両面から突設された筒状のもので、その内接円の直径(D)は、前記球状スペーサの外径(d)と略同一であることが好ましい。
または、前記保持部は、重畳配置される第1および第2ベース板部からそれぞれ対称に突設された先細の円錐筒状のもので、これら第1および第2保持部は、前記球状スペーサの外径(d)より少なくとも一部が小さい寸法(D1)の先端開口部と、前記球状スペーサの外径(d)より大きい寸法(D2)の基端開口部とを有し、前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記先端開口部までの高さ(T1)は、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記先端開口部より突出した頂部までの突出側寸法(s1)より小さく、前記当接位置(P)から前記基端開口部までの高さ(T2)は、前記球状スペーサの外径(d)から前記突出側寸法(s1)を減算した内装側寸法(s2)と略同一であるが好ましい。
または、前記保持部は、重畳配置される第1および第2ベース板部からそれぞれ対称に突設された末広がり逆円錐筒状のもので、これら第1および第2保持部は、前記球状スペーサの外径(d)より大きい寸法(D1)の先端開口部と、前記球状スペーサの外径(d)より小さい少なくとも一部が小さい寸法(D2)の基端開口部とを有し、前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記先端開口部までの高さ(T1)は、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記先端開口部より突出した頂部までの突出側寸法(s1)より小さく、前記当接位置(P)から前記基端開口部までの高さ(T2)は、前記球状スペーサの外径(d)から前記突出側寸法(s1)を減算した内装側寸法(s2)と略同一であることが好ましい。
これらのようにすれば、簡単かつ確実に2以上の球状スペーサを直列に並べて位置決め保持できる。
【0011】
または、前記保持部は、ベース板部に設けた貫通孔からなり、その内接円の直径(D)は、前記球状スペーサの外径(d)より小さく、肉厚(t)は、前記球状スペーサが接した開口部から前記保持部内に位置する前記球状スペーサの頂部までの寸法(s)の略2倍であることが好ましい。
この場合、前記保持部の周囲に、前記球状スペーサを前記保持部に誘導するガイド部を設けることが好ましい。
または、前記第1および第2壁部に、前記球状スペーサを前記保持部に誘導するガイド部を設けることが好ましい。
このようにすれば、簡単かつ確実に2以上の球状スペーサを直列に並べて位置決め保持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空断熱構造体では、位置決め部材を第1および第2壁部のいずれにも接触および固定しないため、断熱性能を向上できる。しかも、球状スペーサは、第1壁部から第2壁部に向けて2以上直列に並べて配置することにより、球状スペーサ間にて更に断熱を図ることができるため、断熱性能を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の真空断熱パネルを示す断面図、(B)は(A)の要部拡大断面図、(C)は位置決め部材の要部拡大断面斜視図である。
【図2】密封前の真空断熱パネルの分解斜視図である。
【図3】第2実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図4】第3実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図5】第4実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図6】第5実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図7】第6実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図8】第7実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図9】第8実施形態の真空断熱パネルを示す断面図である。
【図10】図9の要部を示す断面図である。
【図11】図9の要部を示す斜視図である。
【図12】第8実施形態の真空断熱パネルの変形例の要部を示す斜視図である。
【図13】第8実施形態の真空断熱パネルの他の変形例の要部を示す斜視図である。
【図14】第9実施形態の真空断熱パネルの要部を示す断面図である。
【図15】(A),(B),(C)は第5,第6および第8実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱構造体である真空断熱パネル10を示す。この真空断熱パネル10は、一対の外装パネル11,15と、これらの間に配設した多数の球状スペーサ20A,20B…と、各球状スペーサ20A,20B…を位置決めする位置決め部材21とを備えている。そして、本実施形態では、2個の球状スペーサ20A,20Bを位置決め部材21によって直列に配置し、かつ、位置決め部材21を外装パネル11,15に固着することなく配設することにより、断熱性能を向上したものである。
【0016】
なお、以下の説明では、外装パネル11,15を形式的に第1および第2として区別して説明するが、実際の生産および使用に関して、これらが区別されることはない。また、第1壁部12に接触する側を球状スペーサ20A、第2壁部16に接触する側を球状スペーサ20Bとして説明する。
【0017】
第1および第2外装パネル11,15は、それぞれ薄肉(約0.5mm)のステンレス(SUS304)により形成されている。第1外装パネル11は、球状スペーサ20Aが接触する第1壁部12と、第1壁部12の外周縁から屈曲された第1外面部13と、第1外面部13の端縁からフランジ状をなすように外向きに屈曲された第1接合部14とを備えている。また、第2外装パネル15は、第1外装パネル11の開口側(第1接合部14側)に配設される対称形状のもので、第2壁部16と、第2外面部17と、第2接合部18とを備えている。
【0018】
これら外装パネル11,15は、互いの接合部14,18が重畳するように突き合わされ、シーム溶接等の圧着接合またはTIG溶接等の突き合わせ溶接、MIGブレージング等によって接合されている。これにより、各外装パネル11,15の壁部12,16は、互いに所定間隔をもって平行に位置し、その間に形成される空間が、真空排気後に真空空間19を構成する。なお、外装パネル11,15はステンレスに限られず、鉄やチタン等であってもよく、必要とされる耐熱温度に応じて変更が可能である。しかも、第1外装パネル11と第2外装パネル15とで異なる金属材料のものを使用してもよい。勿論、使用目的に応じた耐熱温度が得られるならば、樹脂により構成してもよい。
【0019】
球状スペーサ20A,20Bは、熱伝導度が低い硬質なセラミックの一種であるジルコニア(Zro)を、球状としたものである。この球状スペーサ20A,20Bの硬度は、外装パネル11,15および位置決め部材21の硬度より高い。球状スペーサ20A,20Bの外径dは、外装パネル11,15を接合した状態で、壁部12,16の対向面間の隙間の1/2に形成されている。なお、球状スペーサ20A,20Bはセラミックボールに限られず、ガラスボールや耐熱性樹脂ボールであってもよく、熱伝導度が低い硬質なものであれば適用可能である。
【0020】
位置決め部材21は、2個の球状スペーサ20A,20Bを第1壁部12から第2壁部16に向けて直列に並べて配置するとともに、壁部12,16間に平面視で均等に分布して配置するものである。この位置決め部材21は薄肉(約0.2〜1.0mm)のベース板部22を備え、いずれの外装パネル11,15にも固定されることなく、球状スペーサ20A,20Bの位置決め保持によって、対向する壁部12,16間に配置される。また、位置決め部材21は、外装パネル11,15と同様のステンレス(SUS304)により形成されている。なお、位置決め部材21はステンレスに限られず、耐熱性樹脂により形成してもよい。また、輻射伝熱を防止するために、表面に銅メッキを施してもよい。
【0021】
位置決め部材21は、球状スペーサ20A,20Bを配置するための保持部23を多数備えている。これら保持部23は、図1(B),(C)に示すように、ベース板部22の両面から突設される各3つの保持片24を有する。各3つの保持片24は、120度間隔をあけて設けられ、これらを結んだ軌跡が円環状をなす。即ち、保持部23は、ベース板部22の両面から円筒状をなすように突出した形状をなす。この保持部23の内径(内接円の直径)Dは、球状スペーサ20A,20Bの外径dと同一または僅かに小さく形成されている(D≒d)。また、保持部23の両端開口部25,25間の寸法である全高Tは、球状スペーサ20A,20Bの外径dより大きく、2個の球状スペーサ20A,20Bの外径dを加算した寸法(2d)より小さく形成されている(d<T<2d)。これにより、保持部23内に位置決め保持した2個の球状スペーサ20A,20Bは、それぞれ両端の開口部25から突出される構成としている。なお、図2に示すように、本実施形態の保持部23は、ベース板部22に対して3行4列の等間隔に設けているが、その形成位置や数は希望に応じて変形が可能である。
【0022】
次に、真空断熱パネル10の製造方法の一例について説明する。
【0023】
まず、位置決め部材21の1つの保持部23に対して、一方の開口部25から球状スペーサ20Aを押し込み、他方の開口部25から球状スペーサ20Bを押し込む。この際、球状スペーサ20A,20Bは、全て保持部23に配置した状態で、平坦な作業台に位置決め部材21を持って押し付けることにより、突出した頂部を面一に揃えることができる。但し、球状スペーサ20A,20Bは、例え面一に揃った状態にしなくても、後の真空排気による圧力によって壁部12,16で押圧されて面一に揃う。そのため、2個の球状スペーサ20A,20Bを簡単かつ確実に直列に並べて配置できる。
【0024】
ついで、球状スペーサ20A,20Bを配置した位置決め部材21を第1外装パネル11内に配置した後、ゲッター(図示せず)を配設する。なお、ゲッターは、真空排気後の真空空間19で発生したガス等を吸収し、所望の真空度を維持するためのものである。その後、第1外装パネル11に対して第2外装パネル15を被せるように配置し、互いの接合部14,18を重ね合わせて接合する。
【0025】
ここで、接合前の第2外装パネル15には、図2に示すように、断面凸形状に突出する排気部26が形成され、この排気部26に排気孔27が形成されている。なお、この排気孔27は、第2外装パネル15に開口を形成するだけでもよいし、チップ管を接合してもよい。また、第1外装パネル11には、排気部26の下面を閉塞する突片28が設けられている。
【0026】
ついで、第2外装パネル15の排気孔27に排気装置の排気管をシール部材を介して押し付け、予め規定した真空度になるように真空排気する。そして、真空排気により規定の真空度に達すると、その真空度を維持した状態でリークテスト装置により外装体の内部空間にリークが存在するか否かをテストする。リークが無いことが確認されると、最後に、排気部26の基部(付け根の部分)をシーム溶接により接合した後、他の外周縁と面一になる位置で切断する。
【0027】
このように製造された真空断熱パネル10は、第1および第2壁部12,16の対向面(内側面)に、球状スペーサ20A,20Bがそれぞれ点接触し、球状スペーサ20A,20B同士も直列に並んで点接触する。これにより、第1および第2壁部12,16に、2個分の球状スペーサ20A,20Bの外径(2d)と同一幅の真空空間19が形成される。また、球状スペーサ20A,20Bは、第1および第2壁部12,16との接触により、移動不可能に位置決めされる。さらに、位置決め部材21は、球状スペーサ20A,20Bを保持しているため、第1および第2外装パネル11,15のいずれにも接触することなく、第1および第2壁部12,16の中間に位置する。
【0028】
このように、本発明の真空断熱パネル10は、位置決め部材21に形成した各保持部23によって、多数の球状スペーサ20A,20B…を第1および第2壁部12,16間に均等に分布して、簡単かつ確実に配置することができる。そのため、完成した真空断熱パネル10の厚さが不均一になることを防止できるとともに、それに伴う断熱性能の低下を防止できる。しかも、位置決め部材21は、第1および第2外装パネル11,15のいずれにも固定する必要がないため、組立作業性の向上を図ることができる。
【0029】
この真空断熱パネル10を使用すると、第1および第2外装パネル11,15のうち、例えば第1壁部12に加わった熱は、点接触した球状スペーサ20Aに伝わる。そして、第1および第2外装パネル11,15とは接していない位置決め部材21に伝わるとともに、球状スペーサ20Bに伝わる。また、位置決め部材21に伝わった熱は、ベース板部22に伝わって放熱されるとともに、球状スペーサ20Bに伝わる。そして、球状スペーサ20Bから点接触した第2壁部16に伝わる。
【0030】
このように、本発明の真空断熱パネル10は、位置決め部材21を第1および第2外装パネル11,15のいずれにも接触および固定しないため、第1および第2壁部12,16の一方に加わった熱は、点接触した球状スペーサ20A,20Bからのみ他方へ伝熱される。しかも、球状スペーサ20A,20Bは、第1壁部12から第2壁部16に向けて2個直列に並べて配置しているため、点接触した球状スペーサ20A,20B間の伝熱も抑制できる。よって、断熱性能を大幅に向上することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態の真空断熱パネル10の位置決め部材21を示す。この第2実施形態では、保持部23をベース板部22とは異なる別体の筒状体を接合することにより設けた点でのみ、第1実施形態と相違する。この保持部23は、ベース板部22と同一材料で形成することが好ましいが、異なる材料で形成してもよい。そして、このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0032】
(第3実施形態)
図4は第3実施形態の真空断熱パネル10の位置決め部材21を示す。この第3実施形態では、対称な形状の第1および第2ベース板部22A,22Bを重畳させて固着することにより、位置決め部材21を構成した点で、第1実施形態と大きく相違する。
【0033】
各ベース板部22A,22Bは、第1実施形態と同様の薄肉の板材により構成されている。このベース板部22A,22Bには、先細の円錐筒状をなす第1および第2保持部23A,23Bが設けられている。これら保持部23A,23Bは、バーリング加工等によって一方向に突出するように設けられる。保持部23A,23Bの先端開口部25aの内径D1は、球状スペーサ20A,20Bの外径dより小さく形成されている。保持部23A,23Bの基端(ベース板部22A,22Bの側)開口部25bは、球状スペーサ20A,20Bの外径dより大きく形成されている。
【0034】
保持部23A,23Bの全高Tは、球状スペーサ20A,20Bの外径dより低く、半径d/2より大きく形成されている。更に具体的には、基端開口部25bから保持部23A,23B内に球状スペーサ20A,20Bを配置すると、球状スペーサ20A,20Bと保持部23A,23Bとは、平面視円形状をなすように接した状態をなす。この当接位置Pは、球状スペーサ20A,20Bの中心から保持部23A,23Bに対して垂直に交わる線上に位置する。当接位置Pから先端開口部25aまでの保持部23A,23Bの高さT1は、当接位置Pから球状スペーサ20A,20Bの頂部(保持部23A,23Bの軸線に沿った端部)までの突出側寸法s1より、小さくなるように構成されている。また、当接位置Pから基端開口部25bまでの保持部23A,23Bの高さT2は、当接位置Pから球状スペーサ20A,20Bの頂部、即ち球状スペーサ20A,20Bの外径dから突出側寸法s1を減算した内装側寸法s2と同一または僅かに小さく形成されている(T2≒s2)。
【0035】
この第3実施形態の真空断熱パネル10は、例えば第1ベース板部22Aの第1保持部23Aの基端開口部25bを上側に位置させた状態で、2個の球状スペーサ20A,20Bを上側から配置する。この状態で、第2ベース板部22Bを上側から被せるように配置することにより、第2保持部23B内に球状スペーサ20Bを配置する。そして、第1および第2保持部23A,23Bが同一軸線となるように位置決めし、各ベース板部22A,22Bを接合する。これにより、2個の球状スペーサ20A,20Bを簡単かつ確実に直列に並べて配置できる。
【0036】
なお、第1および第2ベース板部22A,22Bによる位置決め部材21を形成した後の工程は、第1実施形態と同一である。そして、このように製造した第3実施形態の真空断熱パネル10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0037】
(第4実施形態)
図5は第4実施形態の真空断熱パネル10の位置決め部材21を示す。この第4実施形態では、第1および第2保持部23A,23Bの形状を逆円錐筒状とした点でのみ、第3実施形態と相違する。即ち、保持部23A,23Bの先端開口部25aの内径D1は、球状スペーサ20A,20Bの外径dより大きく形成されている。保持部23A,23Bの基端開口部25bは、球状スペーサ20A,20Bの外径dより小さく形成されている。
【0038】
保持部23A,23Bの全高Tは、球状スペーサ20A,20Bの外径dより低く形成されている。但し、第4実施形態では、球状スペーサ20A,20Bの半径d/2より小さく形成しても構わない。先端開口部25aから保持部23A,23B内に球状スペーサ20A,20Bを配置した状態で、当接位置Pから先端開口部25aまでの保持部23A,23Bの高さT1は、当接位置Pから球状スペーサ20A,20Bの上側頂部までの突出側寸法s1より、小さくなるように構成されている。また、当接位置Pから基端開口部25bまでの保持部23A,23Bの高さT2は、当接位置Pから球状スペーサ20A,20Bの下側頂部までの内装側寸法s2と同一または僅かに小さく形成されている(T2≒s2)。
【0039】
この第4実施形態の真空断熱パネル10は、例えば第1および第2保持部23A,23Bが外側に位置するように、第1および第2ベース板部22A,22Bを重畳させる。そして、各保持部23A,23Bが同一軸線となるように位置決めして、各ベース板部22A,22Bを接合して、1個の位置決め部材21を形成する。
【0040】
そして、第1外装パネル11内の第1壁部12上に、第1保持部23Aと同数の球状スペーサ20Aを配置した後、第1保持部23Aが下側に位置するようにして、位置決め部材21を上側から被せるように配置する。この際、位置決め部材21の各第1保持部23A内に各球状スペーサ20Aを保持させる。または、第1保持部23Aが上側に位置するように位置決め部材21を配置して、各第1保持部23Aに球状スペーサ20Aを配置した後、その上側に第1外装パネル11を配置して、これらを上下逆向きに配置する。
【0041】
次に、上側に位置する第2保持部23B内に球状スペーサ20Bをそれぞれ配置する。これにより、2個の球状スペーサ20A,20Bを簡単かつ確実に直列に並べて配置できる。ついで、第1外装パネル11にゲッターを配設した後、第1外装パネル11に対して第2外装パネル15を被せるように配置し、互いの接合部14,18を重ね合わせて接合する。
【0042】
その後、真空排気工程、検査工程および封止工程を実行することにより、第1実施形態と同様の真空断熱パネル10が完成する。そして、このように製造した第4実施形態の真空断熱パネル10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0043】
(第5実施形態)
図6は第5実施形態の真空断熱パネル10の位置決め部材21を示す。この第5実施形態では、保持部23を円形状の貫通孔によって構成した点で、各実施形態と大きく相違する。
【0044】
保持部23の内径Dは、球状スペーサ20A,20Bの外径dより小さく形成されている。また、ベース板部22の肉厚tは、球状スペーサ20A,20Bが接した開口部25から、保持部23内に位置する球状スペーサ20A,20Bの頂部までの寸法sの2倍の数値と同一または僅かに小さく形成されている(t≒2s)。例えば、肉厚tが1mmのベース板部22に対して、内径Dが3mmの保持部23を設け、その両側に外径dが4.9mmの球状スペーサ20A,20Bを配設する構成としている。言い換えれば、保持部23の内径Dは、装着状態の球状スペーサ20A,20Bの対応位置(頂部からt/2の部分)の直径と略同一に形成されている、
この第5実施形態の真空断熱パネル10は、第4実施形態と同様に、第1外装パネル11内の第1壁部12上に、保持部23と同数の球状スペーサ20Aを配置した後、位置決め部材21を上側から被せるように配置する。この際、位置決め部材21の各保持部23に各球状スペーサ20Aを保持させる。または、治具上に位置決め部材21を配置して、保持部23に球状スペーサ20Aを配置した後、その上側に第1外装パネル11を配置して、これらを上下逆向きに配置する。
【0045】
次に、位置決め部材21の各保持部23上に球状スペーサ20Bをそれぞれ配置する。これにより、2個の球状スペーサ20A,20Bを簡単かつ確実に直列に並べて配置できる。ついで、第1外装パネル11にゲッターを配設した後、第1外装パネル11に対して第2外装パネル15を被せるように配置し、互いの接合部14,18を重ね合わせて接合する。
【0046】
その後、真空排気工程、検査工程および封止工程を実行することにより、第4実施形態と同様の真空断熱パネル10が完成する。そして、このように製造した第5実施形態の真空断熱パネル10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0047】
(第6実施形態)
図7は第6実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第6実施形態では、位置決め部材21と第1および第2壁部12,16との間に、規制部として断熱材29を配設した点でのみ、第5実施形態と相違する。この断熱材29は、グラスウールやセラミックウールからなる弾性的に変形可能なものである。このように構成した第6実施形態では、第5実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0048】
(第7実施形態)
図8は第7実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第7実施形態では、外装パネル11,15に外面部13,17および接合部14,18を設けることなく、壁部12,16のみにより構成し、別材のラミネートフィルム30によって密封して真空空間19を形成した点で、各実施形態と相違する。このラミネートフィルム30は、一辺のみを開口部31とした袋状のものである。このラミネートフィルム30は、金属箔の両面を樹脂シートで挟み込むようにして接着したものである。
【0049】
そして、この第7実施形態の真空断熱パネル10は、球状スペーサ20A,20Bを保持させた位置決め部材21の両側に第1および第2外装パネル11,15を配置した状態で、これらを開口部31からラミネートフィルム30内に配置する。そして、開口部31から内部を真空排気した後、その開口部31を溶着により密封することにより製造される。そして、このように構成した第7実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0050】
(第8実施形態)
図9は第8実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第8実施形態では、位置決め部材21の貫通孔からなる保持部23の周囲に、球状スペーサ20A,20Bを保持部23へ向けて誘導するガイド部33を設けた点で、第5実施形態と相違する。
【0051】
ガイド部33は、図10および図11に示すように、位置決め部材21とは別体のガイド板32に形成した円形状の貫通孔の内周面からなる。ガイド板32は、打抜加工により保持部23と同一の配列でガイド部33が形成され、このガイド部33の軸線が保持部23と同一軸線上に位置するように、位置決め部材21に対して接合されている。ガイド部33の内径Dgは、保持部23の内径Dより大きく、装着状態の球状スペーサ20A,20Bの対応位置(頂部からt/2+tgの部分)の直径dgより大きく形成されている。これにより、球状スペーサ20A,20Bを保持部23に直列に配置した状態では、球状スペーサ20A,20Bがガイド部33に接触(伝熱)しない構成としている。
【0052】
この第8実施形態の真空断熱パネル10は、第5実施形態と同様の工程を経て製造される。そして、この第8実施形態では、第5実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、保持部23の周囲に設けたガイド部33により、球状スペーサ20A,20Bの配置作業性を向上できるとともに、転動による脱落を防止できる。これにより、保持部23を形成する位置決め部材21の肉厚tを小さくし、球状スペーサ20A,20Bとの間の熱伝導を抑制できる。
【0053】
具体的には、位置決め部材21の肉厚tを小さくし、球状スペーサ20A,20Bと保持部23との接触面積を少なくすれば、相互の伝熱を抑制できる。この場合、保持部23の開口面積(直径D)を小さくする必要がある。しかし、保持部23の開口面積を小さくした場合には、球状スペーサ20A,20Bを配置する作業性が悪くなる。しかし、本実施形態では、保持部23の周囲にガイド部33を設けているため、製造に関する作業性を向上しつつ、熱伝導を抑制できる。
【0054】
(第8実施形態の変形例)
図12および図13は第8実施形態の変形例の位置決め部材21を示す。図12の変形例では、各保持部23の周囲に、内径dgの円環状部材からなる別体のガイド部33が配設されている。図13の変形例では、各保持部23の周囲に、複数のガイド片34が切り起こしにより上下に突出するように設けられ、これらの内端部を結ぶ仮想円形部によって直径dgのガイド部33を構成している。これらの変形例においても第8実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0055】
(第9実施形態)
図14は第9実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第9実施形態では、第1および第2壁部12,16の内面側に補強板35を配設し、この補強板35に球状スペーサ20A,20Bを保持部23に誘導するガイド部33を設けた点で、第8実施形態と相違する。
【0056】
補強板35は、表面硬度が高いステンレス(SUS301)により構成された薄肉(0.5〜1.0mm)のものである。この補強板35には、打抜加工により保持部23と同一の配列で円形状の貫通孔の内周面からなるガイド部33が形成されている。このガイド部33の直径は、第9実施形態と同様に、装着状態の球状スペーサ20A,20Bの対応位置の直径より大きく形成され、球状スペーサ20A,20Bを保持部23に直列に配置した状態では、球状スペーサ20A,20Bがガイド部33に接触しない構成としている。なお、補強板35は、外装パネル11,15と同様のステンレス(SUS304)により構成してもよい。また、補強板35に形成するガイド部33の直径は、保持部23と同様に、球状スペーサ20A,20Bの対応位置の直径と略同一に形成してもよい。
【0057】
この第9実施形態の真空断熱パネル10は、例えば第1接合部14を上側に配置した第1外装パネル11内に補強板35を配置して、各ガイド部33に球状スペーサ20Aを配置する。ついで、球状スペーサ20Aの上側に保持部23が位置するように位置決め部材21を配置した後、各保持部23に球状スペーサ20Bを配置する。その後、球状スペーサ20Bの上側にガイド部33が位置するように更に補強板35を配置した後、その上側に第2外装パネル15を配置し、互いの接合部14,18を接合する。
【0058】
そして、このように構成した真空断熱パネル10は、第8実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、製造ステップに関する自由度が大幅に向上する。しかも、補強板35によって壁部12,16の変形を確実に防止できる。即ち、真空空間19の真空度が高い場合には、内外の圧力差によって壁部12,16が変形して、球状部材に対して部分的に面接触する可能性があるが、本実施形態では、確実に点接触状態を確保できる。よって、断熱性能の低下を確実に防止できる。
【0059】
なお、本発明の真空断熱構造体は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態では、全ての球状スペーサ20A,20B…を1枚の位置決め部材21で位置決めしたが、2組以上の球状スペーサ20A,20B…を位置決め可能とした複数の位置決め部材21によって、全て球状スペーサ20A,20B…を位置決めする構成としてもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、位置決め部材21に対して縦横に均等に配列して保持部23,23A,23Bを設けたが、必ずしも平行かつ均等である必要はなく、特に加圧力が大きい部分が存在する場合には、その部分に多く配置する構成としてもよい。
【0062】
さらに、前記実施形態では、1個の保持部23に2個の球状スペーサ20A,20Bを配設する構成としたが、特に、第1および第2実施形態では、3個以上の球状スペーサを配設する構成としてもよい。また、第5,第6,第7および第8実施形態では、2枚以上の位置決め部材21を配設することにより、3個以上の球状スペーサを直列に並べて配設する構成としてもよい。
【0063】
さらにまた、第1〜第5,第7〜第9実施形態の真空断熱パネル10では、第6実施形態と同様に断熱材29からなる規制部を設ける構成としてもよい。そして、第1〜第8実施形態の真空断熱パネル10では、第9実施形態と同様にガイド部33を有する補強板35を配設する構成としてもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、真空断熱パネル10の形状を平面視矩形状に形成したが、三角形状や五角形以上の多角形状でもよいうえ、円形状としてもよく、その形状は希望に応じて変更が可能である。
【0065】
さらに、前記実施形態では、保持部23を円筒状をなすように形成したが、軸方向から見た形状が三角形状や四角形状をなす多角筒状に形成してもよい。この多角筒状の保持部23は、その内接円の直径Dを球状スペーサ20A,20Bの直径dと略同一に構成することにより、前記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。即ち、本発明の筒状の保持部23とは、円形状に限られず、多角筒状を含む。
【0066】
特に、第5,第6および第8実施形態に示すように、貫通孔からなる保持部23の場合、図15(A),(B)に示すように、平面視が三角形状や六角形状などの多角形状をなす構成、図15(C)に示すように、寸法Dより大きい直径の貫通孔の内縁から2以上の突出部を設けた構成としてもよい。即ち、保持部23は、内接円の直径Dが球状スペーサ20A,20Bの直径dと略同一であればよい。このようにすれば、前記と同様の作用および効果を得ることができるうえ、球状スペーサ20A,20Bを配置した状態で通気用の空間が形成されるため、真空排気時の効率を向上できる。しかも、球状スペーサ20A,20Bから位置決め部材21への熱伝導も抑えることができる。
【0067】
そして、前記実施形態では、真空断熱構造体として真空断熱パネル10を用いて説明したが、魔法瓶、真空二重管、真空二重ジャケット、真空容器等の真空構造体にも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…真空断熱パネル(真空断熱構造体)
11…第1外装パネル
12…第1壁部
15…第2外装パネル
16…第2壁部
19…真空空間
20A,20B…球状スペーサ
21…位置決め部材
22,22A,22B…ベース板部
23,23A,23B…保持部
25,25a,25b…開口部
33…ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁部と、この第1壁部と所定間隔をもって位置する第2壁部とを備え、これら第1および第2壁部の間に多数の球状スペーサを位置決め部材によって配設するとともに、前記第1および第2壁部の間を密封して真空空間とした真空断熱構造体において、
前記位置決め部材は、2以上の球状スペーサを第1壁部から第2壁部に向けて直列に並べて配置し、その両端の開口部から前記球状スペーサを突出させて位置決め保持する筒状の保持部を有し、前記第1および第2壁部のいずれにも接触および固定されていないことを特徴とする真空断熱構造体。
【請求項2】
前記保持部は、ベース板部の両面から突設された筒状のもので、その内接円の直径(D)は、前記球状スペーサの外径(d)と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項3】
前記保持部は、重畳配置される第1および第2ベース板部からそれぞれ対称に突設された先細の円錐筒状のもので、
これら第1および第2保持部は、前記球状スペーサの外径(d)より少なくとも一部が小さい寸法(D1)の先端開口部と、前記球状スペーサの外径(d)より大きい寸法(D2)の基端開口部とを有し、
前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記先端開口部までの高さ(T1)は、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記先端開口部より突出した頂部までの突出側寸法(s1)より小さく、前記当接位置(P)から前記基端開口部までの高さ(T2)は、前記球状スペーサの外径(d)から前記突出側寸法(s1)を減算した内装側寸法(s2)と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項4】
前記保持部は、重畳配置される第1および第2ベース板部からそれぞれ対称に突設された末広がり逆円錐筒状のもので、
これら第1および第2保持部は、前記球状スペーサの外径(d)より大きい寸法(D1)の先端開口部と、前記球状スペーサの外径(d)より小さい少なくとも一部が小さい寸法(D2)の基端開口部とを有し、
前記球状スペーサに接する当接位置(P)から前記先端開口部までの高さ(T1)は、前記球状スペーサの当接位置(P)から前記先端開口部より突出した頂部までの突出側寸法(s1)より小さく、前記当接位置(P)から前記基端開口部までの高さ(T2)は、前記球状スペーサの外径(d)から前記突出側寸法(s1)を減算した内装側寸法(s2)と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項5】
前記保持部は、ベース板部に設けた貫通孔からなり、その内接円の直径(D)は、前記球状スペーサの外径(d)より小さく、肉厚(t)は、前記球状スペーサが接した開口部から前記保持部内に位置する前記球状スペーサの頂部までの寸法(s)の略2倍であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項6】
前記保持部の周囲に、前記球状スペーサを前記保持部に誘導するガイド部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の真空断熱構造体。
【請求項7】
前記第1および第2壁部に、前記球状スペーサを前記保持部に誘導するガイド部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の真空断熱構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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