説明

真空積層システムおよび真空積層成形方法

【課題】積層フィルムと被積層品とを積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断する際に、高精度な積層成形が可能であり、なおかつ積層フィルムの余剰部の切断するための移載装置を含む切断工程が簡略化できる真空積層システムおよび真空積層方法を提供する。
【解決手段】積層フィルムNCFと下側のキャリアフィルムC1上を個別に搬送される被積層品Wとをバッチ式の真空積層装置12で積層し、積層フィルムが積層された積層品W1から積層フィルムNCFを切断する真空積層成形システム11であって、下側キャリアフィルムC1に積層フィルムが積層された積層品W1が載置された状態で、該積層フィルムが積層された積層品W1から積層フィルムの余剰部NCFaを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムと被積層品とを積層した後に、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムを切断する真空積層システムおよび真空積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体のウエハ等の被積層品にNCF等の積層フィルムを積層し、その後に積層フィルムが積層されたウエハから積層フィルムの余剰部を切断する技術としては、例えば特許文献1、特許文献2などに記載された技術が公知である。特許文献1は、接着シートをウエハへ押圧して接着した位置で、そのまま切断刃によりウエハの形状に応じて接着シートを切断している。しかし特許文献1では、接着シートをウエハへ押圧する位置と接着シートを切断する位置が同じであり、押圧手段の外周側に切断手段があるので、ウエハへの接着シートの押圧に制限を受けるか、または接着シートが接着されたウエハからの接着シートの余剰部の切断に制約を受ける。具体的には、特許文献1の図1等に記載されるように、ゴム状の第1の押圧手段により押圧され接着される面積よりも切断手段により切断される部分のほうが外側となってしまう。そのため特許文献1では、ウエハの外側寄りの部分は、回転しながら移動するプレスローラによって接着シートとウエハの間の空気を追い出しながら貼付けを行っている。しかしながらこのようなウエハに対する接着シートの貼着を2段階に分けて行うような貼着方法では、ウエハの全面に均一な貼着を行うことは期待できない。また特許文献1では、弾性ゴムシートによる押圧を真空状態で行う記載はなく、プレスローラを用いても空気を完全に除去した良好な貼着は期待できない。
【0003】
また特許文献2は、ウェーハ載置テーブルにおいて貼付けロールを用いてウェーハに対してダイボンドテープを貼着し、貼付けロールが移動した後に、同じ位置で、そのまま切断刃によりウェーハの形状に応じてダイボンドテープの切断をしている。しかし特許文献2では、ウェーハの貼着を貼付けロールにより行うので、次のような問題があった。即ち、貼付けロールは、一度に加圧可能な面積が小さくてウェーハに対して部分的に高圧で加圧することになってしまうという問題があった。また円形のウェーハに対して一方から他方に向けて貼付けロールにより順に押圧していく場合には、最初や最後の部分と中間の部分とでは貼付けロールで加圧されるウェーハの長さが異なるので加圧力が異なってしまうというという問題もあった。更にはウェーハ表面の一方から他方に向けて貼付けロールが順に移動するので、ウェーハにバンプ等の突起がある場合は、横方向から力が加わって前記突起を倒してしまうという問題があった。
【0004】
ところで近年では、バンプ等の微細な突起を有するウエハへのフィルム積層、従来よりも厚みが非常に薄いウエハへのフィルム積層、従来のウエハであっても更にボイドを無くし均一で高精度な積層など、従来よりも厳しい条件の積層成形が求められる場合が出現している。しかしそれらに対して従来の積層装置では十分に対応しきれない場合があった。そこで今回、特許文献3に記載されるようなバッチ式の真空積層装置をウエハの積層に使用することが検討された。特許文献3の場合、連続した帯状の被積層材と積層材は上下のキャリアフィルムに挟まれた状態で真空積層装置で積層され、その後に上下のキャリアフィルムが剥離される。そしてその後に帯状の積層成形品が定寸ごとに切断される。
【0005】
しかしながら前記の特許文献3の真空積層装置と切断装置をウエハの積層成形やフィルムの切断に転用することは、次のような理由から困難であった。即ちウエハの場合、円形のウエハが1個づつが個別に搬送されるので、特許文献3のように、キャリアフィルムを剥離した後に帯状の積層成形品のみを引き出して切断するということはできなかった。また特許文献3の真空積層装置でフィルムを積層したウエハ等をキャリアフィルムとは別の移載装置により異なる位置に設けた切断装置の位置まで移動させることも考えられるが、別の移載装置を設置するコストの点やスペースの点で不利であった。
【0006】
また前記において積層される被積層品はウエハに限定されず、それ以外の連続しない単体の被積層品(回路基板等)についても適用されるが、バッチ式の真空積層装置で積層成形が完了した後に、積層成形された回路基板等から積層フィルムの余剰部を切断することについては、同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−32853号公報(0017ないし0019、図1)
【特許文献2】特開2002−134438号公報(0045ないし0049、図11、図13)
【特許文献3】特開2008−272899号公報(請求項1、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来のウエハ用の積層装置においては、ウエハの高精度な積層ができないという問題があった。またバッチ式の真空積層装置を用いて個別に搬送されるウエハ等の被積層品の積層を行う場合については、積層後の積層成形品の切断装置の構造および配置と該切断装置に積層成形品を搬送する移載装置をどのようにするかの技術が確立していなかった。
【0009】
そこで本発明では、積層フィルムと被積層品とを積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断する際に、高精度な積層成形が可能であり、なおかつ積層フィルムの余剰部の切断するための移載装置を含む切断工程が簡略化できる真空積層システムおよび真空積層方法を提供することを目的とする。また特に第2の課題としては被積層品が円形のウエハである場合に、積層フィルムとウエハとを積層し、積層フィルムが積層されたウエハから積層フィルムの余剰部を切断する際に、ウエハへの高精度な積層成形が可能であり、なおかつ積層フィルムの余剰部の切断するための移載装置を含む切断工程が簡略化できる真空積層システムおよび真空積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の真空積層システムは、積層フィルムと下側のキャリアフィルム上を個別に搬送される被積層品とをバッチ式の真空積層装置で積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムを切断する真空積層システムであって、下側キャリアフィルムに積層フィルムが積層された積層品が載置された状態で、該積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載の真空積層システムは、請求項1において、被積層品は円形のウエハであり、積層フィルムは連続式の積層フィルムまたは矩形に切断された積層フィルムであって、前記積層フィルムが積層されたウエハの形状に合わせて積層フィルムを切断することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載の真空積層システムは、請求項1または請求項2において、切断された積層フィルムの余剰部は、下側のキャリアフィルムとともに巻き取られることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に記載の真空積層成形方法は、積層フィルムと下側のキャリアフィルム上を個別に搬送される被積層品とをバッチ式の真空積層装置で積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムを切断する真空積層成形方法であって、下側キャリアフィルムに積層フィルムが積層された積層品が載置された状態で、該積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に記載の真空積層成形方法は、請求項4において、被積層品は円形のウエハであり、積層フィルムは連続式の積層フィルムまたは矩形に切断された積層フィルムであって、前記積層フィルムが積層されたウエハの形状に合わせて積層フィルムを切断することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に記載の真空積層成形方法は、請求項4または請求項5において、切断された積層フィルムの余剰部は、下側のキャリアフィルムとともに巻き取られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の真空積層システムおよび真空積層成形方法は、積層フィルムと下側のキャリアフィルム上を個別に搬送される被積層品とをバッチ式の真空積層装置で積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムを切断する際に、下側キャリアフィルムに積層フィルムが積層された積層品が載置された状態で、該積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断するので、移載装置を含む切断工程が簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の真空積層システムの側面図である。
【図2】本実施形態の真空積層システムの正面図である。
【図3】本実施形態の真空積層システムの切断部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の真空積層システム11は、図1および図2に示されるように、バッチ式(連続成形方式ではなく成形と成形停止・搬送を交互に繰り返して行われる成形方式)の真空積層装置12、切断装置13と、前記真空積層装置12へ、積層フィルムであるNCFと被積層品であるウエハWとを重ねて搬入し、NCFが積層成形されたウエハW1(以下単にNCF積層ウエハW1と略す)を切断装置13へ移載する搬送装置14等から構成されている。搬送装置14は、上下のキャリアフィルムC1,C2とその送り装置である巻き出しロール15a,15b、巻き取りロール16a,16b、およびチャック式フィルム移載装置17等からなっている。図1の右側に示されるように、巻き出しロール15aから下キャリアフィルムC1は巻き出され、ローラ18aを介して所定長さ分フィルムが水平状態で送られる載置ステージS1が形成される。そして図2に詳細は省略して示される前工程の搬送・重ね装置19から前記載置ステージS1にウエハWとその上面に定寸に切断されたNCFが重ねられたものが搬送されるようになっている。また載置ステージS1よりも真空積層装置12側の位置では、上方の巻き出しロール15bから上キャリアフィルムC2がローラ18bを介して前記ウエハWとNCFの上に重ねられるようになっている。そして上下のキャリアフィルムC1,C2に挟まれた状態で前記ウエハWとNCFはバッチ式の真空積層装置12へ搬入される。前記上下の巻き出しロール15a,15bはブレーキ機能を有するトルクモータやサーボモータ等により制御され、キャリアフィルムC1,C2にテンションが付与されて送られるようにされることが望ましい。
【0019】
バッチ式の真空積層装置12は、固定された上盤20と、該上盤20に対して平行であって昇降可能な下盤21が設けられている。そして下盤21が上昇した際に上盤20と下盤21の間にはチャンバ22が形成されるようになっている。前記チャンバ22は下盤21または上盤20の少なくとも一方に設けられたシール部材23によりシールされて密閉されるとともに、チャンバ22に接続される図示しない真空ポンプを用いて真空状態とされるようになっている。また下盤21側には下方からコンプレッサーによる加圧空気が挿入されて膨出するゴム膜体24(ダイアフラム)がその周囲を固定されて設けられている。またもう一方の上盤20の下面にもゴム膜体25が貼付けられている。また上盤20と下盤21はそれぞれ図示しないヒータにより加熱可能となっている。そして真空積層装置12のチャンバ22が開放された際に、上盤20と下盤21の間の入口26a側から出口26b側に向けて前記キャリアフィルムC1,C2等が移動可能となっている。
【0020】
真空積層装置12は、上記に限らず上盤20側に加圧空気が挿入されて膨出するゴム膜(ダイアフラム)が設けられたものでもよく、真空状態のチャンバ22の中で加圧空気を用いずに常圧でゴム膜を膨出させるものでもよい。また真空積層装置12は、真空状態のチャンバの中で、膨出されるゴム膜を使用せずに、ゴム、多孔質樹脂、緩衝材等の板状の弾性部材でウエハ等を押圧するものでもよい。また加圧面の表面に薄い金属板が貼り付けられたものでもよい。いずれにしてもバッチ式の真空積層装置では、ウエハW等の被積層品とNCF等の積層フィルムを弾性部材により一定時間加圧することによりウエハW等の全面に均一な加圧ができる。
【0021】
真空積層装置12の後工程には、積層されたNCF積層ウエハW1(以下単にNCF積層ウエハW1と略す)を挟んだキャリアフィルムC1,C2の両側をぞれぞれ上下から挟んで後工程に送るチャック式フィルム移載装置17が設けられている。チャック式フィルム移載装置17の水平方向の移動量は、前記載置ステージS1から真空積層装置12のチャンバ22内の成形位置までの距離にも一致する。なお本発明においてチャック式フィルム移載装置17は必須のものではなく、キャリアフィルムC1,C2を図示しないサーボモータ等のモータにより駆動される巻き取りロール16,16bのみで巻き取りするものでもよい。または巻き取りロール16,16b以外のニップロールの駆動にサーボモータを使用し、キャリアフィルムC1,C2の巻き取り量を制御するようにしてもよい。
【0022】
チャック式フィルム移載装置17が設けられた位置の後工程側の位置で、上側のローラ27bにより上キャリアフィルムC2がNCF積層ウエハW1から剥離され、上キャリアフィルムC2は巻き取りロール16bに巻き取られるようになっている。一方、NCF積層ウエハW1が載置された下キャリアフィルムC1はテンションが付与された状態で所定長さ水平に送られるが、その部分が切断ステージS2となっている。そして前記切断ステージS2に切断装置13が設けられている。
【0023】
切断装置13は、下キャリアフィルムC1よりも上側に設けられた切断機構28と下キャリアフィルムC1よりも下側に設けられたフィルムテンション機構29とからなっている。下キャリアフィルムC1の搬送方向の両側にそれぞれ支柱30が複数本、縦方向に設けられている。そして前記支柱30の上部には下キャリアフィルムC1の搬送方向Aと直交する方向Bに沿って2本の梁部材31が水平に設けられている。そして図2に示されるように、前記梁部材31は、下キャリアフィルムC1の上方からNCFの余剰部が切断された後のNCF積層ウエハW2(以下単にNCF積層ウエハW2と略す)の搬出ステージS3の上方に向けて長く延びている。ぞして前記梁部材31の上面にはリニアガイドのレール32が設けられている。そして前記レール32の上には、下面の両側にリニアガイドのハウジング部35が設けられた台車34が設けられている。そして前記ハウジング部35は前記レール32にガイドされて台車34が移動されるようになっている。
【0024】
また下キャリアフィルムC1の一方2本の支柱30,30の上部には、下キャリアフィルムC1の搬送方向Aと平行に梁部材36が設けられている。そして前記梁部材36から側方に向けて突出して設けられたブラケット上には、前記台車34を移動させるためのサーボモータ37が設けられている。または前記梁部材36の上面に設けられたベアリングによりボールネジ38が軸支され、ボールネジ38の一端とサーボモータ37の駆動軸はカップリングにより結合されている。またボールネジ38の他端側は、NCF積層ウエハW2の搬出ステージS3の上方に設けられた梁部材39にベアリングにより軸支されている。ボールネジ38にはボールネジナット40が回転可能に取付けられ、ボールネジナット40は、前記台車34に固定されている。従ってサーボモータ37の駆動軸が回転されるとボールネジ38はその位置で回転され、ボールネジナット40と台車34は、ボールネジ38の軸方向に沿って直線運動される。
【0025】
また前記台車34の上面には、下キャリアフィルムC1の搬送方向Aと平行にリニアガイドの2本のレール41が設けられ、台車34のレール41の間の部分は一定面積が解放されている。そして前記レール41の上には、下面の両側にリニアガイドのハウジング部43が設けられた上部移動部材42が設けられている。そして前記ハウジング部43は、前記レール41にガイドされ、上部移動部材42が移動されるようになっている。そして前記台車34から側方に向けて突出して設けられたブラケット上には、前記上部移動部材42を移動させるためのサーボモータ44が設けられている。または台車34の上面の両側に設けられたベアリングによりボールネジ45が軸支され、ボールネジ45の一端とサーボモータ44の駆動軸はカップリングにより結合されている。またボールネジ45にはボールネジナット46が回転可能に取付けられ、ボールネジナット46は、前記上部移動部材42に固定されている。従ってサーボモータ44の駆動軸が回転するとボールネジ45が回転され、ボールネジナット46と上部移動部材42は、ボールネジ45の軸方向(搬送方向A)に沿って直線運動する。
【0026】
従って前記の二つのサーボモータ37,44と、ボールネジ機構のボールネジ38,45およびボールネジナット40,46の働きにより上部移動部材42は、下キャリアフィルムC1の切断ステージS2の上方位置で、XY方向(水平面方向)に移動可能となっている。そして上部移動部材42から下方に向けて切断機構28の切断刃33等が取付けられている。具体的には、上部移動部材42の上面には電動シリンダ47がロッド47aを下方に向けて固定されている。電動シリンダ47はサーボモータ等によりロッド47aがクローズドループ制御されて作動するものでミクロン単位での高精度な昇降制御が可能である。そして上部移動部材42の下面には、前記ロッド47aと平行に2本のガイド部材48が設けられている。そしてロッド47aの先端側に水平方向に固定された部材49にはガイド孔が設けられ、部材49のガイド孔の中に前記ガイド部材48が挿通され、部材49はガイド部材48に沿って昇降されるようになっている。またこれらのロッド47a、ガイド部材48等は、台車34のレール41の間の開放された空間から下方に向けて突出している。
【0027】
そして前記部材49の下側には、別のロッド52が下方に向けて固定され、前記ロッド52には円形の切断刃33が刃先を下方に向けて固定されている。切断刃33は、NCF積層ウエハW1からUCFの余剰部UCFaを切断するためのものである。そして切断刃33は、積層されるウエハWの直径や刃先の磨耗に応じて交換可能となっている。なお切断機構28の切断刃33については、図示の構造の刃に限定されず、回転軸芯と所定距離隔てた位置に設けられ側方に刃が形成された切断刃がNCF積層ウエハW1の外周に沿うように円弧上を移動するものでもよい。また上方の切断刃33が下降して積層フィルムを切断するものではなく、下方の載置板50が上昇してNCF積層ウエハW1を上昇させて切断刃33によりNCF等の積層フィルムの余剰部UCFaを切断するものでもよい。更には加熱された刃によりNCF等の積層フィルムを溶断するものでもよく、レーザー等の切断機構を用いたものでもよい。
【0028】
また円形の切断刃33の内部には、複数(本実施形態では4個)のゴムパッドからなる吸着具51が下方に向けて設けられている。そしてゴムパッドの内部は図示しない負圧手段により吸引されるようになっている。また吸着具51は図示しないバネにより伸縮されるようになっており、当初の状態では切断刃33よりも下方に突出しており、NCF積層ウエハW1に当接後も更に切断機構28を下降させると、切断刃33よりも退縮した状態にもなるようになっている。
【0029】
また切断機構28の部材49には、NCF積層ウエハW1の検出機構であるCCDカメラ53が取付けられている。そしてCCDカメラ53は、下キャリアフィルムC1によって搬送されてきたNCF積層ウエハW1が切断ステージS2上のどの位置に停止しているかを検出可能となっている。なお前記検出機構は、CCDカメラに替えて他の光学的、電子的、および機械的等の検出機構でもよい。また前記切断装置13の支柱30間の下キャリアフィルムC1よりも下側には、下キャリアフィルムC1に張りを与えるフィルムテンション機構29が設けられている。フィルムテンション機構29には、積層成形後に搬送されてきたNCF積層ウエハW1の面積よりも一定以上大きい面積の円形の載置板50が設けられている。本実施形態では載置板50は、平滑度の高い金属性の平板からなる。しかし表面にガラス板等の他部材を貼付けしたもの、または他部材を貼替え自在にしたものでもよい。更には中央部が膨出したものや、切断刃に対応する部分に溝が設けられたものなどでもよい。
【0030】
そして前記載置板50は、支柱30間の下キャリアフィルムC1よりも下方に設けられた板54に対して設けられたエアシリンダ55のロッド55aの昇降により下キャリアフィルムC1の定位置よりも上方まで上昇可能となっている。本実施形態では載置板50は水平方向には移動不能であるが、切断機構28の切断刃33のように、NCF積層ウエハW1の位置に応じて載置板50も水平方向に移動可能としてもよい。
【0031】
そして前記の切断装置13のサーボモータ37,44、電動シリンダ47、吸着具51の負圧手段、CCDカメラ53、フィルムテンション機構29のエアシリンダ55の駆動機構等は、バッチ式の真空積層装置12、前工程と後工程を含む搬送装置14等とともに図示しない制御装置に接続され、前記制御装置によりシーケンス制御されるようになっている。
【0032】
次に本発明の真空積層システムによる真空積層成形方法について説明する。本発明において成形に用いられるのは被積層品については限定されないが、本実施形態では、シリコンからなるウエハWの積層成形を行うものについて記載する。ウエハWは、直径が4、8,12,16インチ等のものがあり、ほとんどが円形である。ウエハWの厚みは、0.025mm〜0.8mm程度である。ただし切断装置13との関係から同じ形状のウエハを連続して成形することが望ましい。そして本発明ではバッチ式の真空積層装置12を用いているので、高さ0.01mm〜0.04mmのバンプが形成されたウエハWについても良好な積層成形が可能である。これらのバンプが形成されたウエハWは、ロールラミネータでは加圧力が強すぎたり、バンプに対して横方向から力が加えられてバンプを倒してしまったり、バンプとウエハの間にボイドができたりして、良好な成形が難しい。しかしバッチ式の真空積層装置12、特に加圧されるゴム膜体24(ダイアフラム)によって加圧を行う真空積層装置12(ラミネータ)では良好な積層成形ができる。
【0033】
まずは図示しない前工程の搬送・重ね装置19においてカッタで切断されたNCFがウエハWの上に重ねられる。切断されたNCFの一辺の大きさは、ウエハWの直径以上であり、ウエハWの全面がNCFでカバーされる。NCFは、保存状態では接着層の両面にPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の保護フィルムが積層されているが、一方側の保護フィルムが剥離され、接着層がウエハWに当接された状態で重ねられる。この際、ウエハWと接着層の一部が仮接着される場合とされない場合が想定される。
【0034】
なお本発明では被積層品に積層される積層フィルムはNCF以外でもよく、ABF等の積層材や感光性フィルムを除外するものではなく、樹脂の種類も熱硬化性フィルムの他、可塑性樹脂フィルムや、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合体であってもよい。また本発明において積層フィルムの厚みは限定されず、シートと称されるものも積層フィルムに含まれる。更には本実施形態では積層フィルムは、所定の長さの矩形に切断されて個別の被積層品に重ねられて積層成形が行われるが、連続した帯状のものでもよい。その場合、積層フィルムは巻き出しロールから巻き出され、真空積層装置12で被積層品に積層され、切断装置13で、被積層品に積層されている部分以外の周囲の部分が切断され、切断された積層フィルム(帯状で穴が打ち抜かれたもの)は、巻き取りロールに巻き取られる。また前記切断装置13において、切断された積層フィルムが分断される場合は、下キャリアフィルムC1と共に巻き取るようにしてもよい。更には積層フィルムが切断されたものの場合も連続した帯状のものの場合も、積層フィルムが下側に載置されその上に被積層品を載置して積層成形するものでもよい。更にまた被積層品の上下に積層フィルムを重ね、被積層品を挟むように両面に積層フィルムが貼着されるものでもよい。その場合は切断装置で2枚の積層フィルムが同時に切断される。
【0035】
そして前工程の搬送・重ね装置19により、ウエハWとNCFのセットは、下キャリアフィルムC1上の載置ステージS1に置かれる。次にバッチ式の真空積層装置12のチャンバ22を開いた状態で、上下キャリアフィルムC1,C2の巻き出しロール15a,15bのブレーキを解除し、巻き取りロール16a,16bのモータを駆動させ、チャック式フィルム移載装置17が設けられている場合はチャック式フィルム移載装置17により上下キャリアフィルムC1,C2の側端側を後工程へ向けて引張ることにより、下キャリアフィルムC1上のウエハWとNCFのセットは真空積層装置12へ移動される。そして前記ウエハWとNCFのセットは、途中のローラ18bの部分から上キャリアフィルムC2が重ねられ、上下キャリアフィルムC1,C2に挟まれた状態で、バッチ式の真空積層装置12のチャンバ22内の積層成形位置に搬入される。
【0036】
次に真空積層装置12の下盤21を上昇させ、チャンバ22を密閉した上でチャンバ22内を真空化される。その際に上盤20および下盤21は加熱されているので、直接にウエハWとNCFに当接しないでも、NCFの接着層の溶融が進行する。そして真空度が所定の値となると下側のゴム膜体24(ダイアフラム)の下方に加圧エアを供給し、ゴム膜体24を膨出させ、ウエハWとNCFを上盤側の弾性ゴム膜25に向けて押圧する。この際の加圧力としては、これに限定されるものではないが一例として、0.1MPa〜1.5MPaが望ましい。また真空積層装置12のゴム膜体24(ダイアフラム)のゴム硬度は、これに限定されるものではないが一例として、(JIS K−6253)による測定でデュロメータタイプA硬度(ショアA硬度)が10〜40度が望ましい。また押圧される上盤20側のゴム膜体25の硬度は、これに限定されるものではないが一例として、40〜70度が望ましく、上盤20側のゴム膜体25の硬度のほうが高くなっている。
【0037】
そしてウエハWとNCFは上下キャリアフィルムC1,C2を介して加圧されるので、NCFの接着層が溶融しても真空積層装置12のゴム膜体24,25等に付着することがない。ただし積層フィルムが装置側へ付着しないフィルムの場合や、真空積層装置12の側に溶融樹脂の付着を防止または除去する機構がある場合は、上キャリアフィルムC2は必須ではなく、ウエハW等を搬送するために少なくとも下キャリアフィルムC1が存在すればよい。
【0038】
そして所定の加圧時間が経過するとゴム膜体24による加圧を終了させるとともに、チャンバ22内の真空破壊が行われ、次に下盤21を下降させてチャンバ22を開放する。そしてNCF等の積層フィルムが積層されたウエハ等の積層成形品(NCF積層ウエハW1)を次の工程へ送る。またこのNCF積層ウエハW1の移動の際には上記したように載置ステージS1から次に積層成形を行うウエハWとNCFが真空積層装置12のチャンバ22内に搬入されるのは言うまでもない。本実施形態では正確な搬送を行うためにチャック式フィルム移載装置17が設けられているので、最初に搬送される位置ではNCF積層ウエハW1は、上下のキャリアフィルムC1,C2に挟まれた状態のまま停止される。しかしチャック式フィルム移載装置17を設けずに、最初に搬送される位置までに上キャリアフィルムC2をロール27bにより剥がし、最初に搬送される位置でNCF積層ウエハW1からUCFの余剰部NCFaを切断するものでもよい。
【0039】
本実施形態では、NCF積層ウエハW1は、積層成形後に1回目に搬出され停止される位置と2回目に搬送され停止される位置(切断ステージS2)の間の位置で、上キャリアフィルムC2が除去される。そして次に切断ステージS2においてNCF積層ウエハW1が停止される。なおこの切断ステージS2におけるNCF積層ウエハW1の停止位置は、下キャリアフィルムC1の送り量の誤差や下キャリアフィルムC1の伸びの差などにより、毎回搬送されてくる毎に微妙に相違してしまう。そして切断ステージS2においてNCF積層ウエハW1が停止されると次にまず、切断装置13のうちのフィルムテンション機構29の載置板50の上面が下キャリアフィルムC1の高さ位置よりも上方まで上昇して停止する。このことにより下キャリアフィルムC1には一定以上のテンションがかけられ、同時にNCF積層ウエハW1の位置が固定される。
【0040】
NCF積層ウエハW1の位置が固定されると、上方の切断機構28のCCDカメラ53により位置情報が検出され、NCF積層ウエハW1の停止位置に対応させて、サーボモータ37,44をそれぞれ駆動し、切断機構28の上部移動部材42を移動させる。上部移動部材42および切断刃33等は上記したように水平面上をXY方向に自在に移動可能なので、NCF積層ウエハW1のウエハの部分の外径よりもごく僅かに大きい直径に設けられた円形の切断刃33を前記ウエハの部分の外周と同心円となるような位置へ移動させることができる。または特にCCDカメラや移載装置の精度を高めた装置では、切断刃33の内周径と前記ウエハ部分の外周径をより一層近似させ、切断後のUCF積層ウエハW2においてウエハの部分の外周へのNCFのはみだし部分を無くしたり少なくすることができる。
【0041】
そして上部移動部材42および切断刃33の位置が決定すると、電動シリンダ47のロッド47aを伸張させて、まずNCF積層ウエハW1のNCFの部分の上面に吸着具51に当接させ、負圧手段により吸引する。そしてなおも電動シリンダ47を伸張させると、吸着具51のバネが退縮し、円形の切断刃33がNCF積層ウエハW1のNCFの部分に当接する。この際に切断刃33はウエハWの外周側にあって、図3に示されるようにNCFの部分は完全に切断するが、下キャリアフィルムC1は一部または全部が切断されない高さで停止されるようクローズドループ制御により位置制御される。このことにより、下キャリアフィルムC1は全体が帯状のままであり、切断されて円形の端材を生じない。また当初矩形であったNCFの部分はウエハWの形状に沿って打ち抜かれ、NCFの余剰部NCFaは下キャリアフィルムC1上に残る。
【0042】
なお本実施形態では、NCF積層ウエハW1のウエハ部分の外周に沿ってNCFの部分の切断が行われるが、NCF積層ウエハW1のウエハ部分の外周よりも内側部分でNCFの部分の切断を行うようにしてもよい。その場合は、NCFウエハW2からNCFの部分が除去されてウエハの部分が一部露出することになる。また本実施形態では、電動シリンダ47の制御により、下キャリアフィルムC1を切断しないようにしているが、切断刃33の近傍に下キャリアフィルムC1の厚みと同じか厚み以下僅かに切断刃33よりも突出した突出部を設け、その前記突出部が下キャリアフィルムC1の表面または載置板50に当接した際に、切断刃33が下キャリアフィルムC1を少なくとも完全には切断しない位置で停止するような位置関係の構造のものでもよい。
【0043】
そして次に切断機構28の電動シリンダ47を上昇させ、切断刃33を上昇させるとともに、吸着具51により円形のNCFの部分が貼着されたNCF積層ウエハW2を吸着して上昇させる。そして次にサーボモータ37を作動させて台車34を次の後工程であるNCF積層ウエハW2の搬出ステージS3の上方まで移動させ、再び電動シリンダ47を作動させて吸引具51等を下降させるとともに吸着具51の負圧吸引を停止して、NCF積層ウエハW2を後工程の搬送装置へ載置する。またNCFの余剰部NCFaは、下キャリアフィルムC1に貼付いた状態で、次回以降にキャリアフィルムC1による送りが行われた際に、巻き取りロール16aに巻き取られるので、別途に切断されたフィルムの除去装置を設ける必要がない。そしてまた本発明では、下キャリアフィルムC1上で積層フィルムの余剰部の切断が行えるので、切断装置13を下キャリアフィルムC1と別の位置に別個に設けた場合と比較して、移載用のロボットを少なくとも1台省略でき設置レイアウトもコンパクトにすることができる等、切断工程の簡略化が可能となる。特にこれらの装置はクリーンルーム内に設置されるので、切断工程のレイアウトがコンパクトになることの効果は大きい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の真空積層システムおよび真空積層成形方法は、ウエハ、回路基板の他、微細な凹凸を有する面に積層フィルムを貼着する装置の後工程に用いられ、被積層成形品の種類は限定されない。
【符号の説明】
【0045】
11 真空積層システム
12 真空積層装置
13 切断装置
14 搬送装置
24,25 ゴム膜体
33 切断刃
37,44 サーボモータ
47 電動シリンダ
50 載置板
51 吸着具
53 CCDカメラ
A 搬送方向
C1 下キャリアフィルム
C2 上キャリアフィルム
NCF NCF(積層フィルム)
NCFa NCFの余剰部(積層フィルムの余剰部)
S1 載置ステージ
S2 切断ステージ
W ウエハ
W1 NCFが積層成形されたウエハ(NCF積層ウエハ)
W2 NCFの余剰部が切断された後のNCF積層ウエハ(NCF積層ウエハ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムと下側のキャリアフィルム上を個別に搬送される被積層品とをバッチ式の真空積層装置で積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムを切断する真空積層システムであって、
下側キャリアフィルムに積層フィルムが積層された積層品が載置された状態で、該積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断することを特徴とする真空積層システム。
【請求項2】
被積層品は円形のウエハであり、積層フィルムは連続式の積層フィルムまたは矩形に切断された積層フィルムであって、前記積層フィルムが積層されたウエハの形状に合わせて積層フィルムを切断することを特徴とする請求項1に記載の真空積層システム。
【請求項3】
切断された積層フィルムの余剰部は、下側のキャリアフィルムとともに巻き取られることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空積層システム。
【請求項4】
積層フィルムと下側のキャリアフィルム上を個別に搬送される被積層品とをバッチ式の真空積層装置で積層し、積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムを切断する真空積層成形方法であって、
下側キャリアフィルムに積層フィルムが積層された積層品が載置された状態で、該積層フィルムが積層された積層品から積層フィルムの余剰部を切断することを特徴とする真空積層成形方法。
【請求項5】
被積層品は円形のウエハであり、積層フィルムは連続式の積層フィルムまたは矩形に切断された積層フィルムであって、前記積層フィルムが積層されたウエハの形状に合わせて積層フィルムを切断することを特徴とする請求項4に記載の真空積層成形方法。
【請求項6】
切断された積層フィルムの余剰部は、下側のキャリアフィルムとともに巻き取られることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の真空積層成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103346(P2013−103346A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246464(P2011−246464)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】