説明

真空遮断器真空試験器

【課題】試験時間の短縮化および真空度の低下度合いの把握が図れるとともに既設の真空遮断器にも適用可能な真空遮断器真空試験器を提供する。
【解決手段】真空遮断器1の真空度試験を行うのに用いられる真空遮断器真空試験器10であって、低圧直流電流を真空遮断器1の主回路に供給するための直流電流供給装置20と、真空遮断器1の主回路接点と直流電流供給装置20との間に接続された高圧リアクトル31を備えた高電圧発生装置30と、低圧直流電流を真空遮断器1の主回路に流した状態で真空遮断器1を開放させることにより、高圧リアクトル31に誘起した高電圧を真空遮断器1の主回路接点間に印加して真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否を判定するための制御装置40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空遮断器真空試験器に関し、特に、特別高圧の真空遮断器の真空度試験を行うのに好適な真空遮断器真空試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空遮断器の真空インタラプタ(真空バルブ)の真空度を試験する方法としては、真空遮断器を開放状態にしたのちに、主回路接点(開極)間に試験電圧を印加して耐電圧試験を行う方法が主流である。また、一部では、専用の真空センサーを真空遮断器に取り付ける方法も行われている。
【0003】
なお、下記の特許文献1には、真空度チェック用の停電および高圧電源装置を不要とし、真空度の判定を容易に実施し、メンテナンス作業などのコストを低減するために、真空バルブの開極時に真空バルブ内の接触子間に発生するアーク光のスペクトルを検出して電気信号を出力する検出部と、この電気信号に基づいて、スペクトルが絶縁ガスの輝線スペクトルを示すときに真空度が低下したことを判別して警報信号を出力する信号処理回路部とを設け、信号処理回路部を主回路とは非接触関係で設置した、真空遮断器の真空度監視装置が開示されている。
また、下記の特許文献2には、通常の使用状態で簡易にかつ適確に劣化程度を判断できるようにするために、真空インタラプタの両電極端に検電碍子を配設し、両検電碍子の分圧点間に変圧器の一次巻線を接続して、変圧器の二次電圧をサンプリングするサンプリンクホールド回路、各相の検出電圧を順次選択するマルチプレクサ、検出電圧をA/D変換するA/D変換器、演算・比較判定用のCPUおよびデータ記憶用のメモリなどを設け、運用開始時のデータを基準データとしてメモリに記憶し、その後の遮断器の「入」「切」指令時のデータと比較し、この比較結果に基づいて真空度および接点摩耗度など真空インタラプタの劣化程度を判定する、真空遮断器の劣化診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−306279号公報
【特許文献2】特開平10−255609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高圧の真空遮断器では、開極間距離が短いので、低電圧の試験電圧を主回路接点間に印加することにより通常の遮断器開放状態で耐電圧試験を行うことができるが、特別高圧の真空遮断器では、開極間距離が長いので、通常の遮断器開放状態で耐電圧試験を行おうとすると高電圧が発生可能な大型の耐圧試験器が必要になる。このため、特別高圧の真空遮断器では、専用の治具を使用して真空遮断器の開極間距離を縮めることにより小型の耐圧試験器で耐電圧試験を行っているので、試験時間が長くなったりコストもかかったりするという問題があった。
【0006】
また、従来の主回路接点間に試験電圧を印加する方法では、耐電圧試験に耐えるか否かで判定しているので、真空度の低下度合いを把握することは難しいという問題があった。
【0007】
従来の専用の真空センサーを真空遮断器に取り付ける方法では、既設の真空遮断器に真空センサーを取り付けるには真空遮断器のタンクを加工する必要があるので、新規に設置する真空遮断器に限定されるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、試験時間の短縮化および真空度の低下度合いの把握が図れるとともに既設の真空遮断器にも適用可能な真空遮断器真空試験器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の真空遮断器真空試験器は、真空遮断器(1)の真空度試験を行うのに用いられる真空遮断器真空試験器(10)であって、低圧直流電流を前記真空遮断器の主回路に供給するための直流電流供給手段(20)と、前記真空遮断器の主回路接点と前記直流電流供給手段との間に接続された高圧リアクトル(31)を備えた高電圧発生手段(30)と、前記低圧直流電流を前記真空遮断器の前記主回路に流した状態で該真空遮断器を開放させることにより、前記高圧リアクトルに誘起した高電圧を該真空遮断器の前記主回路接点間に印加して該真空遮断器の真空インタラプタの真空度の良否を判定するための真空度良否判定手段(41,42)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記真空度良否判定手段が、前記真空遮断器を開放させたのちの該真空遮断器の前記主回路に流れる回路電流(I)の変化速度に基づいて、該真空遮断器の前記真空インタラプタの真空度の良否を判定してもよい。
前記真空度良否判定手段が、前記真空遮断器を開放させたときの該真空遮断器の開極間電圧(V)の正常時開極間電圧(V0)に対する変化量(ΔV)に基づいて、該真空遮断器の前記真空インタラプタの真空度の良否を判定してもよい。
前記真空度良否判定手段が、前記真空遮断器を開放させたのちの該真空遮断器の前記主回路に流れる回路電流(I)の変化速度と、該真空遮断器を開放させたときの該真空遮断器の開極間電圧(V)の正常時開極間電圧(V0)に対する変化量(ΔV)とに基づいて、該真空遮断器の前記真空インタラプタの真空度の良否を判定してもよい。
前記高電圧発生手段が、前記高圧リアクトルと並列に接続された異常電圧抑制用抵抗(32)をさらに備えてもよい。
前記直流電流供給手段が、前記低圧直流電流を前記真空遮断器の前記主回路に供給するための低圧直流電流供給部(21)と、該低圧直流電流供給部のプラス側端子およびマイナス側端子にカソードおよびアノードがそれぞれ接続された保護ダイオード(22)と、前記低圧直流電流供給部の前記マイナス側端子とアースとの間に接続された低電圧避雷器(23)とを備えてもよい。
前記低圧直流電流供給部が、前記低圧直流電流の電流値を任意に設定することができるものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の真空遮断器真空試験器は、以下に示す効果を奏する。
(1)試験時間の短縮
特別高圧の真空遮断器でも通常状態における遮断器開放動作で真空度試験を行うことができるため、従来のように専用の治具を使用して主回路接点を所定の寸法に設定する必要がないので、試験時間の短縮が図れる。
(2)真空度の低下度合いの確認
従来の真空度試験では、真空インタラプタの所定の開極間距離で耐電圧試験に耐えるか否かで判定していたために「良」か「不良」かの2つの判定しかできず、また、「良」であっても「不良に近い良か否か」の判定や「完全な真空破壊か真空度低下であるか」の判定ができなかったが、本発明による真空遮断器真空試験器では、真空度の低下度合いを判定することができるので、真空インタラプタの状態に応じた手入れ(直ちに真空インタラプタの交換、経過観察など)が可能になる。
(3)適用遮断器の拡大
真空遮断器のタンクを加工する必要がないので、既設の真空遮断器にも適用することができる。
また、真空度試験時に真空遮断器の主回路に供給する低圧直流電流の電流値を任意に設定することができるので、22kVクラスから110kVクラスの真空遮断器まで1つの真空遮断器真空試験器で適用することができる。
さらに、通常のガス機器では高電圧の直流電圧を印加することはできないが、本発明による真空遮断器真空試験器では低圧直流電流を供給するため問題はなく、真空遮断器の開放時の短時間には高電圧が印加されるものの過渡的な電圧であるので、66kVクラスや110kVクラスのガス中に真空インタラプタがある真空遮断器にも適用することができる。
(4)精度の向上
開極間電圧は真空遮断器の開放時に最も高くなるためにアーク放電を起こし易くすることができるので、精度の高い真空度試験を行うことができる。
(5)コストの低減
メーカーが推奨している治具使用時のメーカー技術員による指導が不要になるので、コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例による真空遮断器真空試験器10の構成を示す図である。
【図2】本発明の真空遮断器真空試験器における真空インタラプタの真空度の良否判定方法について説明するための図である。
【図3】図1に示した制御部42における真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否判定方法について説明するための図である。
【図4】図1に示した制御部42における真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の他の良否判定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の目的を、低圧直流電流を直流電流供給手段から真空遮断器の主回路に流した状態で真空遮断器を開放させることにより、真空遮断器の主回路接点と直流電流供給手段との間に接続された高圧リアクトルに誘起した高電圧を真空遮断器の主回路接点間に印加して真空遮断器の真空インタラプタの真空度の良否を判定することにより実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の真空遮断器真空試験器の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の真空遮断器真空試験器は、真空遮断器の主回路接点と高圧リアクトルとを直列に接続するとともに低圧直流電流を真空遮断器の主回路に流した状態で真空遮断器を開放させることにより、高圧リアクトルに誘起した高電圧を真空遮断器の主回路接点間(開極間)に印加して、真空遮断器の主回路に流れる回路電流Iの低下具合(回路電流Iの変化速度)に基づいて真空インタラプタの真空度の良否判定を行うことを特徴とする。
【0014】
なお、真空遮断器に印加させる高電圧(開極間電圧V)の電圧値は、V=L×ΔI/Δt(Lは高圧リアクトルのリアクトル値)で設定できるので、回路電流Iの電流値によって制御が可能になる。
したがって、開極間電圧Vは回路電流Iが大きいほど大きくなるので、回路電流Iの電流値を試験対象の真空遮断器に対応した値とすることにより、幅広い範囲の真空遮断器について真空度試験が可能になる。
【0015】
真空インタラプタの真空度の良否については、以下に説明するように、回路電流Iの低下具合に基づいて判定することができる。
【0016】
(1)真空インタラプタの真空度が高い場合
真空インタラプタの真空度が高い場合には、図2(a)に示すように、遮断器開放時刻t0で真空遮断器が開放されると開極間電圧Vは高電圧になるが、回路電流Iは直ちに遮断されて“0”になる。
したがって、回路電流Iが真空遮断器の開放後瞬時に“0”になる場合には、「真空インタラプタの真空度は正常である(高く保たれている)」と判定することができる。
なお、同図に示す遮断器開放完了時刻t1における開極間電圧Vの電圧値は、後述する異常電圧抑制用抵抗32の抵抗値によって異なる。
【0017】
(2)真空インタラプタの真空度が低下している場合
真空インタラプタの真空度が低下している場合には、真空遮断器が開放されても主回路接点間(開極間)でアーク抵抗をもって放電するために真空遮断器の開放と同時に絶縁が回復しないので、図2(b)に示すように、開極間電圧Vが低下していき、開極間距離が長くなって絶縁がある程度回復した遮断器絶縁回復時刻t2で回路電流Iが遮断されて“0”になる。
ここで、遮断器絶縁回復時刻t2は、真空インタラプタの真空度が低下しているほど遅くなる。
したがって、回路電流Iが瞬時に“0”にならずかつ遮断器開放完了時刻t1よりもある程度前に“0”になる場合には、「真空インタラプタの真空度が低下している」と判定することができる。また、遮断器絶縁回復時刻t2を計測することにより、真空インタラプタの真空度の低下度合いを把握することができる。
なお、遮断器絶縁回復時刻t2において回路電流Iが“0”になると、開極間電圧Vは一旦大きくなったのちに低下していく。
【0018】
(3)真空インタラプタの真空度が破壊されている場合
真空インタラプタの真空度が破壊されている場合には、真空遮断器の主回路接点間(開極間)でアーク抵抗を持って放電が開始されるので、図2(c)に示すように、遮断器開放時刻t0における開極間電圧Vの電圧値は真空インタラプタの真空度が高い場合に比べて小さくなり、回路電流Iもアーク抵抗を持って放電が起こったのちに開極間距離が開くに従ってまた開極間電圧Vが低下するに従って電流値が低下していき、遮断器絶縁回復時刻t3において主回路接点間(開極間)の絶縁が回復すると回路電流Iの電流値が“0”になる。
ここで、遮断器絶縁回復時刻t3を真空遮断器の開放完了時刻t1の直後としているが、真空遮断器の条件(ガス中のインタラプタや気中の場合の湿度など)により異なる。
したがって、回路電流Iが遮断器開放完了時刻t1の前後において“0”になる場合には、「真空インタラプタの真空度が破壊されている」と判定することができる。
なお、遮断器絶縁回復時刻t3において回路電流Iが“0”になると、開極間電圧Vは一旦大きくなったのちに低下していく。
【0019】
次に、本発明の一実施例による真空遮断器真空試験器10について、図1を参照して説明する。
本実施例による真空遮断器真空試験器10は、図1に示すように、直流電流供給装置20と、リアクトル式の高電圧発生装置30と、制御装置40と、直流変流器50と、2つの保安用接地取付端子60とを具備する。
【0020】
ここで、直流電流供給装置20は、低圧直流電流供給部21と、保護ダイオード22と、低電圧避雷器23とを備える。
低圧直流電流供給部21は、真空遮断器1の真空度試験に必要な低圧直流電流を真空遮断器1の主回路に供給するためのものであり、低圧直流電流の電流値を任意に設定することができるものである。
保護ダイオード22は、真空遮断器1が開放された際に後述の高圧リアクトル31から供給される電流を真空遮断器1に流すとともに、真空度試験中に低圧直流電流供給部21が故障(回路開放や電流断)した際に発生する異常電圧(高電圧)を抑制するためのものである。なお、保護ダイオード22のカソードは低圧直流電流供給部21のプラス側端子に接続されており、保護ダイオード22のアノードは低圧直流電流供給部21のマイナス側端子に接続されている。
低電圧避雷器23は、低圧直流電流供給部21のマイナス側端子とアースとの間に接続されており、保護ダイオード22の故障時のバックアップ用のもの(すなわち、保護ダイオード22が故障(回路開放)した際に上記の異常電圧を抑制するためのもの)である。
【0021】
高電圧発生装置30は、高圧リアクトル31と、異常電圧抑制用抵抗32とを備える。
高圧リアクトル31は、真空遮断器1の主回路接点と低圧直流電流供給部21のマイナス側端子との間に接続されており、低圧直流電流を低圧直流電流供給部21から真空遮断器1の主回路に供給したのちに真空遮断器1を開放することにより高電圧を発生させるためのものである。
異常電圧抑制用抵抗32は、高圧リアクトル31と並列に接続されており、高圧リアクトル31によって発生する異常電圧を抑制するとともに放電抵抗の機能を兼ね備えたものである。
【0022】
制御装置40は、電流波形計測部41と、制御部(MPU)42とを備える。
電流波形計測部41は、直流変流器50から入力される回路電流Iの波形を計測するためのものであり、計測した回路電流Iの波形を示す電流波形計測信号を制御部42に出力する。
制御部42は、真空度試験時に真空遮断器1を開放させるための遮断器操作指令信号Saを遮断器(含む遮断器制御装置)(不図示)に出力し、真空度試験開始時に回路電流Iの電流波形を計測するように指示する制御信号を電流波形計測部41に出力し、低圧直流電流の電流値を設定したり真空度試験開始時に低圧直流電流を真空遮断器1に供給するように指示したりする制御信号を低圧直流電流供給部21に出力するとともに、電流波形計測部41から入力される電流波形計測信号に基づいて真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否を判定するためのものである。また、制御部42は、「真空度が低下している」と判定するか「真空度が破壊されている」と判定した場合は、警報出力信号Sbを外部に出力する。
【0023】
直流変流器50は、低圧直流電流供給部21のプラス側端子と真空遮断器1との間の試験回路に設けられており、この試験回路に流れる回路電流Iを検出するためのものである。
【0024】
2つの保安用接地取付端子60は、高電圧発生装置30と真空遮断器1との間の試験回路および直流変流器50と真空遮断器1との間の試験回路にそれぞれ設けられており、保安用接地器具を取り付けるためのものである。
【0025】
次に、制御装置40の制御部42における真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否判定方法について、図3を参照して説明する。
【0026】
制御部42は、真空度試験を開始する際には、低圧直流電流を真空遮断器1に供給するように指示する制御信号を低圧直流電流供給部21に出力する。これにより、低圧直流電流が低圧直流電流供給部21から真空遮断器1の主回路に供給される。
また、制御部42は、直流変流器50から入力される回路電流Iの波形を計測するように指示する制御信号を電流波形計測部41に出力する。これにより、電流波形計測部41は、回路電流Iの波形計測を開始し、電流波形計測信号を制御部42に出力する。
【0027】
その後、制御部42は、真空遮断器1を開放するように指示する遮断器操作指令信号Saを遮断器(含む遮断器制御装置)に出力する。これにより、図3(a)〜(c)に示す遮断器開放時刻t0において真空遮断器1が開放される。
【0028】
制御部42は、以下のようにして、真空遮断器1を開放させたのちの回路電流Iの変化速度に基づいて、真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否を判定する。
制御部42は、電流波形計測部41から入力される電流波形計測信号に基づいて、遮断器開放時刻t0後に回路電流Iの電流値が“0”になる遮断器絶縁回復時刻t2,t3を検出し、検出した遮断器絶縁回復時刻t2,t3から遮断器開放時刻t0を引くことにより遮断器絶縁回復時間T(=t2−t0,t3−t0)を計測し、計測した遮断器絶縁回復時間Tが第1の判定基準値A1未満であるか第1の判定基準値A1以上第2の判定基準値A2未満であるか第2の判定基準値A2以上であるかを調べる。
ここで、第1の判定基準値A1は、たとえば遮断器開放時刻t0から遮断器開放完了時刻t1までの時間(=t1−t0)の1%の値(すなわち、A1=(t1−t0)/100)に設定され、また、第2の判定基準値A2は、たとえば遮断器開放時刻t0から遮断器開放完了時刻t1までの時間(=t1−t0)の90%の値(すなわち、A2=90(t1−t0)/100)に設定される。
【0029】
その結果、遮断器絶縁回復時間Tが図3(a)に示すように第1の判定基準値A1未満である(T<A1)場合には、制御部42は、「真空度は正常である」と判定する。
また、遮断器絶縁回復時間Tが同図(b)に示すように第1の判定基準値A1以上第2の判定基準値A2未満である(A1≦T<A2)場合には、制御部42は、「真空度が低下している」と判定して、その旨を示す警報出力信号Sbを外部に出力する。
さらに、遮断器絶縁回復時間Tが同図(c)に示すように第2の判定基準値A2以上である(A2≦T)場合には、制御部42は、「真空度が破壊されている」と判定して、その旨を示す警報出力信号Sbを外部に出力する。なお、「真空度が破壊されている」と判定する真空度については、パッシェンカーブの最低値に至る前の一定値とする。
【0030】
なお、制御部42は、検出した遮断器絶縁回復時間Tに応じて真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の低下度合いを求め、求めた真空度の低下度合いを示す警報出力信号Sbを外部に出力してもよい。
【0031】
以上の説明では、制御部42は、電流波形計測部41から入力される電流波形計測信号に基づいて真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否を判定したが、図2(a)〜(c)に示したように、遮断器開放時刻t0における開極間電圧Vは、真空遮断器1の真空インタラプタの真空度が低下していくほど正常時開極間電圧V0(真空度が正常である場合の遮断器開放時刻t0における開極間電圧V)よりも小さくなっていくことに着目して、図4(a)〜(c)に示すように開極間電圧変化量に基づいて真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否を判定してもよい。
この場合には、制御部42は、真空遮断器1内に設けられた電圧計(不図示)から入力される真空遮断器開放時の開極間電圧Vの電圧値の正常時開極間電圧V0に対する変化量ΔV(=V−V0)を求め、求めた変化量ΔVが図4(a)に示すように第1の電圧判定基準値B1(たとえば、正常時開極間電圧V0の10%の電圧値(=0.1×V0)に設定される。)未満である場合には、「真空度は正常である」と判定し、求めた変化量ΔVが同図(b)に示すように第1の電圧判定基準値B1以上で第2の電圧判定基準値B2(たとえば、正常時開極間電圧V0の30%の電圧値(=0.3×V0)に設定される。)未満である場合には、「真空度が低下している」と判定し、求めた変化量ΔVが同図(c)に示すように第2の電圧判定基準値B2以上である場合には、「真空度が破壊されている」と判定する。
なお、制御部42は、求めた変化量ΔVに応じて真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の低下度合いを求めてもよい。
【0032】
また、制御部42は、図3を参照して説明した回路電流変化速度による良否判定方法と図4を参照して説明した開極間電圧変化量による良否判定方法とを組み合わせて、真空遮断器1の真空インタラプタの真空度の良否を判定してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 真空遮断器
10 真空遮断器真空試験器
20 直流電流供給装置
21 低圧直流電流供給部
22 保護ダイオード
23 低電圧避雷器
30 高電圧発生装置
31 高圧リアクトル
32 異常電圧抑制用抵抗
40 制御装置
41 電流波形計測部
42 制御部
50 直流変流器
60 保安用接地取付端子
V 開極間電圧
0 正常時開極間電圧
ΔV 変化量
I 回路電流
Sa 遮断器操作指令信号
Sb 警報出力信号
0 遮断器開放時刻
1 遮断器開放完了時刻
2,t3 遮断器絶縁回復時刻
T 遮断器絶縁回復時間
1,A2 第1および第2の判定基準値
1,B2 第1および第2の電圧判定基準値
L リアクトル値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空遮断器(1)の真空度試験を行うのに用いられる真空遮断器真空試験器(10)であって、
低圧直流電流を前記真空遮断器の主回路に供給するための直流電流供給手段(20)と、
前記真空遮断器の主回路接点と前記直流電流供給手段との間に接続された高圧リアクトル(31)を備えた高電圧発生手段(30)と、
前記低圧直流電流を前記真空遮断器の前記主回路に流した状態で該真空遮断器を開放させることにより、前記高圧リアクトルに誘起した高電圧を該真空遮断器の前記主回路接点間に印加して該真空遮断器の真空インタラプタの真空度の良否を判定するための真空度良否判定手段(41,42)と、
を具備することを特徴とする、真空遮断器真空試験器。
【請求項2】
前記真空度良否判定手段が、前記真空遮断器を開放させたのちの該真空遮断器の前記主回路に流れる回路電流(I)の変化速度に基づいて、該真空遮断器の前記真空インタラプタの真空度の良否を判定することを特徴とする、請求項1記載の真空遮断器真空試験器。
【請求項3】
前記真空度良否判定手段が、前記真空遮断器を開放させたときの該真空遮断器の開極間電圧(V)の正常時開極間電圧(V0)に対する変化量(ΔV)に基づいて、該真空遮断器の前記真空インタラプタの真空度の良否を判定することを特徴とする、請求項1記載の真空遮断器真空試験器。
【請求項4】
前記真空度良否判定手段が、前記真空遮断器を開放させたのちの該真空遮断器の前記主回路に流れる回路電流(I)の変化速度と、該真空遮断器を開放させたときの該真空遮断器の開極間電圧(V)の正常時開極間電圧(V0)に対する変化量(ΔV)とに基づいて、該真空遮断器の前記真空インタラプタの真空度の良否を判定することを特徴とする、請求項1記載の真空遮断器真空試験器。
【請求項5】
前記高電圧発生手段が、前記高圧リアクトルと並列に接続された異常電圧抑制用抵抗(32)をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至4いずれかに記載の真空遮断器真空試験器。
【請求項6】
前記直流電流供給手段が、
前記低圧直流電流を前記真空遮断器の前記主回路に供給するための低圧直流電流供給部(21)と、
該低圧直流電流供給部のプラス側端子およびマイナス側端子にカソードおよびアノードがそれぞれ接続された保護ダイオード(22)と、
前記低圧直流電流供給部の前記マイナス側端子とアースとの間に接続された低電圧避雷器(23)と、
を備えることを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載の真空遮断器真空試験器。
【請求項7】
前記低圧直流電流供給部が、前記低圧直流電流の電流値を任意に設定することができるものであることを特徴とする、請求項6記載の真空遮断器真空試験器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−197132(P2010−197132A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40469(P2009−40469)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】