説明

眼に関する高精度の測定値を取得するための装置

【課題】眼科的なバイオメトリー及びイメージングの際に高精度かつ再現可能な測定値を取得するための解決策を提供する。
【解決手段】本発明による装置は、固視マークを生成する照明ユニットと、生成された固視マークの光を眼内に伝送するデバイスと、測定デバイスと、制御ユニットとを備える。照明ユニットは、生成された固視マークの照射方向を狙い通りに変更するデバイスを含む。眼の視線方向を検出する追加的なカメラが存在し、カメラは照明ユニット及び測定デバイスと同様に制御ユニットと接続されている。制御ユニットにより、検出された視線方向と生成された固視マークの提供された照射方向とが十分に一致するかどうかが判定され、一致の確率の度合いに応じて測定処理が開始される。提案する装置は、カメラ及び測定システムを含む眼科用診断機器に使用可能であり、測定は眼の全領域で行うことができ、測定デバイスは光学測定システムに基づかなくてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科的バイオメトリーおよびイメージングの際に、高精度かつ再現可能な測定値を取得するための解決策に関する。これは、診察すべき眼が厳密に固視する確率を高くできることによって達成される。
【背景技術】
【0002】
眼科用機器では、診察または計測すべき眼を適切に方向付け、かつ安定させるために固視目標または固視マークを使用する。これは適切な信号特性および安定した条件で測定を実施するため、および/または方向の誤りによる診断結果の歪曲を最小限にするために必要である。
【0003】
重要な例は、白内障患者用の眼内レンズ(略:IOL)の適合を容易にするための眼軸長測定であり、これには例えばカール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト(Carl Zeiss Meditec AG)のIOLMaster(登録商標)を使用することができる。この場合は、厳密に光軸に沿って測定を実施することが重要である。
【0004】
さらなる例は、例えば緑内障または老齢による黄斑変性症のような疾患の経過を追跡するために繰り返される、神経線維層または浮腫のような網膜構造のOCT計測である。この場合も、比較測定が実施できるよう十分に良好な固視が必要である。
【0005】
通常の測定時間は数分の一秒から数秒、たいていは最長2秒でしかないが、全体では最長で数分になり得るアライメントおよび測定に必要な時間の間、安定して眼を固定しておくことは多くの患者にとって困難である。安定した固視が全くできない患者もいる。その理由は例えば下記のとおりである。
【0006】
・低過ぎる視力(白内障などにより)
・疲労
・遠近調節困難(老視または瞳孔散大性の薬剤により)
・神経的問題(眼振など)
・未補正の屈折異常、または
・集中力不足
しかし提供された固視マークへの固視が誤っていると、決定される測定値に誤差が生じる。これにより十分な診断を下すことができないか、または白内障の患者の場合には最適なIOLを選択できない。
【0007】
さらに従来技術では一般的に、アライメントを行った後も引き続き患者が測定のために十分に安定して固視しているかどうかが不確実なので、特に自動化された測定処理は困難であり、または測定を繰り返す必要がある。
【0008】
既知の従来技術に基づき、誤った固視を回避する様々な解決策が知られている。
例えば、独国特許出願公開第102005003443号明細書(特許文献1)には、眼底の診察中または記録中の患者の視線を案内するための解決策が記載されている。この場合、平面光変調器によって生成された固視マークが、眼底の観察または記録すべき部位が光軸上にくるように患者の眼を位置合わせするために利用される。この場合、患者が眼を実際に固視マークに位置合わせしたかどうかのチェックは、同時に眼底を観察している操作者にしか行えない。
【0009】
未公開の独国特許出願102009007732.4号には、診察すべき眼を提供された固視マークに固視し損ねることを回避するための全く異なる解決策が記載されている。この場合、好ましくは可変で、疲労を抑制し、かつ注意を促し、そのために患者の集中力にあまり高い要求が課されない固視マークが患者に提供される。そのために、記載された装置は高光度の光線を改変するための少なくとも1つのDOEを備えており、この場合、光線は、生じるビーム構造のエネルギーおよび/または時間および/または位置および/またはスペクトルを変更し得るように改変される。
【0010】
独国特許出願公開第10359239号明細書(特許文献2)で提案された眼科用処置機器のための固視マークの表示方法も、患者の注意を促す固視マークを基礎とする。この場合、患者は中心窩での合焦によって、処置すべき眼をこの固視マークに位置合わせする。固視マークを患者の視野内で移動させ、この移動は、患者が固視マークを問題なく追えるように行われる。その際、患者の視野内での固視マークの移動は連続的にまたは離散的に、所定の処理に基づくかまたは無作為に行われる。これにより意図しない眼の移動がないようにする。測定または治療は、固視マークの移動の種類に応じて様々に行うことができる。例えば固視マークが患者の視野内で離散的に移動する場合、診断または治療は、固視マークの短い静止段階でのみ行うことが好ましい。これとは対照的に、固視マークが連続的に移動する場合には、眼が固視マークの移動を追っている間も診断または治療を行うことができる。
【0011】
米国特許出願公開第2007/0291277号明細書(特許文献3)に記載された眼科用イメージング機器内には、多数の眼科用の適用例または単一機器が組み込まれている。つまりこの機器は、眼底イメージング・システム、虹彩ビューア、および光コヒーレンス・トモグラフィー・システム(OCT)の他に、光コヒーレンス・スキャニング・システムも備えている。この眼科用機器は、確実な取扱いのため、および厳密な測定値もしくは画像を取得するために、様々なテストマークおよび固視マークを備えている。この固視システムの課題は、眼を提供された固視マークに、中心窩での合焦によって位置合わせし、診察中または結像中にできるだけ確実に固視することである。このため固視システムにより、好ましくは450から600nmの間の可視波長域内の固視マークが生成され、眼に投射される。患者はこの固視マークに眼をしっかり位置合わせしなければならない。記載された解決策では、固定システムが、固視マークを生成するために約120×120ピクセルのディスプレイを備えている。ただし固視マークの生成にはLCDディスプレイだけでなく、その他のスクリーンを使用することもできる。その場合に、好ましい固視目標は、その大きさを変えることができ、かつ素早く変化する視覚的刺激を眼に提供する。
【0012】
従来技術で既知の解決策では、診察すべき眼が厳密に位置合わせされているかどうかは、眼内の診察すべき目標領域の適切な位置合わせを操作者が目で見て観察すること、または患者が固視マークに厳密に位置合わせできていると知らせることでしか確認できない。この両方の形態とも、やはり誤差のある測定値が決定されることを排除できない。
【0013】
このため既知の解決策では、追加的にいわゆる信憑性チェックが取り入れられた。捕捉された測定値は、誤った固視の際の誤差を是正するために、信憑性および整合性について検査される。ただしこの方法では、誤差が必ずしも信憑性があるものではないので、甚だしい誤差しか認識されない。固視マークへの位置合わせの際の僅かなズレは、確かに誤差はあるが、それにも拘わらず信憑性があり得る測定値を生じさせる。
【0014】
従来技術で既知の解決策の欠点は、これらのシステムでは測定値の決定を自動化できないことである。誤った固視を回避するための方法は非常に時間がかかり、したがって診察または測定値捕捉が無駄に長引き、これにより患者の集中力がさらに低下する。そのうえ測定値を捕捉する際に誤差が生じる確率はやはり比較的高いままである。
【0015】
眼科用レーザ処置のための、従来技術で既知の解決策では、意図しない眼の移動、つまり固視マークに眼を位置合わせできていないことを検出し、この眼の移動をレーザビームで追尾するいわゆるトラッキング・システムが使用される。これにより確かにレーザビームが予め厳密に決められた眼の部位に当たることは保証されるが、トラッキング・システムは、例えば診察すべき眼を光軸に狙い通りに位置合わせするのには適していない。さらにこのようなシステムは非常に複雑で費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005003443号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10359239号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0291277号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、眼における高精度かつ再現可能な測定値を取得する解決策を開発することである。その際、この眼科用機器は、できるだけ単純な基本構造で、簡単な、好ましくは自動化された操作を可能とすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。好ましい発展形態および変形形態は従属請求項の対象である。
この課題は、固視マークを生成する照明ユニットと、生成された固視マークの光を眼内に伝送するデバイスと、測定デバイスと、制御ユニットとを備える、眼における高精度かつ再現可能な測定値を取得するための装置を用い、照明ユニットが、生成された固視マークの照射方向を狙い通りに変更するデバイスを含み、眼の視線方向を検出するために追加的なカメラが存在し、このカメラが照明ユニットおよび測定デバイスと同様に制御ユニットと接続されており、その結果、制御ユニットにより、検出された視線方向と生成された固視マークの提供された照射方向とが十分に一致するかどうかを判定することができ、この一致に応じて測定処理を開始できることによって解決される。
【0019】
提案する技術的構成は、眼における高精度の測定値を取得できる解決策である。この場合、眼のどの領域で測定を行うかはあまり関係ないので、本発明による装置は、カメラおよび測定システムを備えたあらゆる眼科用診断機器に使用可能である。ただしこの場合、測定装置を光学測定システムに限定する必要はない。例えばバイオメトリーまたはイメージングのための超音波測定システムであってもよい。
【0020】
以下に、本発明を例示的実施形態に基づきさらに詳しく説明する。そのために、本発明による装置の原理図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】検出された視線方向と生成された固視マークの照射方向との一致を示す図である。
【図2】検出された視線方向と生成された固視マークの照射方向との不一致を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
眼における高精度かつ再現可能な測定値を取得するための本発明による装置は、固視マークを生成する照明ユニットと、生成された固視マークの光を眼内に伝送するデバイスと、測定デバイスと、制御ユニットとを備える。その際、照明ユニットは、生成された固視マークの照射方向を狙い通りに変更するデバイスを含んでいる。眼の視線方向を検出するために追加的なカメラが存在し、このカメラは照明ユニットおよび測定デバイスと同様に制御ユニットと接続されている。制御ユニットにより、検出された視線方向と生成された固視マークの提供された照射方向とが十分に一致するかどうかが判定され、この一致の確率の度合いに応じて測定処理が開始される。
【0023】
固視マークを生成する照明ユニットは、第1の有利な変形形態では好ましくは緑から赤の領域の可視光に基づき、照明ユニットとしては単一光源または平面光源が使用される。照明ユニットによって、強度、形状、色、および大きさが変更できる固視マークを表示できることが好ましい。この場合、生成された固視マークの照射方向を狙い通りに変更するために存在するデバイスは、照射方向を離散的にまたは連続的に変更できるように形成されている。生成された固視マークの光を眼内に伝送するには、結像光学系を使用することが好ましい。
【0024】
カメラにより、虹彩、強膜構造(血管など)、もしくは瞳孔の位置、または定義された反射点もしくは反射パターンを測定することで、眼の視線方向を検出する。そのために、眼の視線方向を検出するカメラは、単一画像およびビデオシーケンスを記録して制御ユニットに転送できるように形成されていることが好ましい。眼の視線方向を検出するカメラの他に周囲照明が存在しており、この周囲照明には例えば、好ましくは700〜950nmの領域内の赤外線光に基づくLEDを使用する。この周囲照明は、例えば測定を妨害しないために測定処理中は切ることもできる。さらに、カメラが移動方向を決定する画像処理部を含み、方向情報を制御ユニットに転送することも可能である。
【0025】
制御ユニットにより、検出された視線方向と生成された固視マークの提供された照射方向とが一致するかどうかが判定され、検出された視線方向が生成された固視マークの提供された照射方向と高い確率で対応する場合、測定処理が開始される。さらなる実施形態では、検出された視線方向が生成された固視マークの提供された照射方向と高い確率で対応する場合に、制御ユニットにより測定処理が開始される。確率は、眼の位置が変化した方向が、固視マークの位置が変化したことによる照射方向の変化に対して整合性がある(右/左、上/下)場合、既に上昇している。眼の位置の変化が、固視マークの位置の変化にほぼ比例して行われる場合、確率はさらに高くなる。
【0026】
これに関し図1は、第1の例示的実施形態について、検出された視線方向と生成された固視マークの照射方向とがそのときどきに一致している本発明による装置の原理図を示している。この場合、眼における高精度の測定値を取得するための装置は、固視マーク2を生成する照明ユニット1と、生成された固視マーク2の光を眼4内に伝送する結像光学系3と、測定デバイス5と、制御ユニット6とを備える。その際、照明ユニット1は、生成された固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7を含んでいる。眼4の視線方向を検出するために追加的なカメラ8が存在し、このカメラは照明ユニット1および測定デバイス5と同様に制御ユニット6と接続されている。制御ユニット6により、検出された視線方向と生成された固視マーク2の提供された照射方向とが一致するかどうかが判定され、この一致の確率の度合いに応じて測定処理が開始される。単純化するためここでは周囲照明を別個に表示してはいない。周囲照明は、例えばカメラに内蔵してもよい。結像光学系3は、患者の眼が屈折異常であっても、患者の眼の網膜上に固視マークの結像が合焦できるように設計することができる。このために、例えば、レンズの変位、可変レンズの屈折力の変更、またはミラーの曲率の変更により結像光学系3の焦点距離を適切に適合させることを利用し得る。ただし代替策として、固視マークの光の発散のこのような適合を、照明機構1または生成された固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7中で一緒に行うこともできる。
【0027】
患者の頭が一般的には眼科用診察機器の顎載せ台および/または額当てで固定されている間、患者の診察すべき眼は眼科用診察機器の光軸に位置合わせされている。制御ユニット6により、照明ユニット1および生成すべき固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7を作動させ、それにより結像光学系3を介して眼4内に合焦される一連の固視マーク2を生成させる。
【0028】
生成された固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7としては、例えば可変回折光学素子(DOE)を使用することができ、この可変回折光学素子により固視マークを相応に形成し偏向させることができる。
【0029】
固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7を備えた照明ユニット1の代わりに、空間的に分離された複数の光源、またはTFT−LCDディスプレイなどの電気光学ディスプレイの形の平面光源を使用してもよい。
【0030】
同時に、眼4の視線方向を検出するカメラ8を、制御ユニット6によって作動させる。視線方向の検出は、例えば眼4の虹彩(構造)または瞳孔(中心および/または周縁)の位置測定によって行うことができる。頭の姿勢を固定することにより、眼4を回転させることでしか視線方向が変えられなくなるので、瞳孔の位置が、診察すべき眼4の視角に関する尺度となる。
【0031】
その際、照射方向と眼4に提供すべき固視マーク2の相関関係に関しては、下記の単純な順序で十分であろう。
→固視マーク2’左、
→固視マーク2’’右、
→固視マーク2’’’中心
この場合、一方では十分な反応を引き起こし、他方で患者に無駄に負担をかけないためには、照射方向の変化を、視野内で±2°〜±10°にすることが好ましい。原理的にはより大きなまたはより小さな方向変化も利用可能ではあるが、そうすると視線方向変化の検出の労力および不確実さが増大する。
【0032】
そのために、カメラ8によって眼4の対応する視線方向(4’、4’’、および4’’’)が検出され、その際、単一画像およびビデオシーケンスを記録することができる。
生成された固視マーク2の照射方向を変えるためのシーケンスの速度は、一方では漠然とではあるが患者が固視マークを苦労なく追えるような速さであることが望ましく、他方では、全体の測定時間が無駄に長引かないことが望ましい。そのための明確な限界値は存在しないが、0.5〜5Hzの速度が有利と思われる。
【0033】
これに加え患者の注意は、強度、形状、色、および大きさが変更できる固視マークを使用することで高めることができる。
眼の診察は一般的に暗くした空間で行われるので、診察すべき眼4を周囲照明によって照らすことが有用であり、その結果カメラ8により瞳孔を対応して確実に検出することができる。
【0034】
周囲照明には例えば、好ましくは赤外線スペクトルのLEDを使用することができる。これは、患者がまぶしくなく、固視マークへの位置合わせを逸らさせないという利点を有する。
【0035】
制御ユニット6により、デバイス7によって生成された固視マーク2の照射方向を、カメラ8によって検出された眼4の視線方向と比較する。制御ユニット6により、検出された眼4の視線方向が生成された固視マーク2の提供された照射方向に高い確率で対応することが確認された場合、測定デバイス5による測定処理、例えば眼軸長測定が開始される。
【0036】
生成された固視マーク2の照射方向を制御された順序で交替させながら、眼4の視線方向を検出することにより、患者の反応を確認する。眼4が固視マークに規定通りに位置合わせされた確率が高い場合に初めて、制御ユニット6により測定デバイス5による測定処理が開始される。
【0037】
この点について分かり易くするために、図2は検出された視線方向と生成された固視マークの照射方向とが一致していない、本発明による装置の原理図を示している。
眼4に提供すべき固視マーク2’の照射方向が左からになっているのに、カメラ8ではまだ眼4の中心の視線方向(4’’’)が検出されている。この場合、制御ユニット6により、検出された眼4の視線方向が生成された固視マーク2の提供された照射方向と一致していないことが確認される。したがって測定処理は開始されない。
【0038】
第2の例示的実施形態では、第1段階で、患者の平均反応時間、つまり患者が提供された固視マークに眼を位置合わせするのにかかる時間を分析する。
このために用いられる装置も図1に示した装置に対応しており、固視マーク2を生成する照明ユニット1と、生成された固視マーク2を眼4内に合焦する結像光学系3と、測定デバイス5と、制御ユニット6とを備える。その際、照明ユニット1は、生成された固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7を含んでいる。眼4の視線方向を検出するために追加的なカメラ8が存在し、このカメラは照明ユニット1および測定デバイス5と同様に制御ユニット6と接続されている。カメラ8によって眼4の対応する視線方向(4’、4’’、および4’’’)が検出され、その際、好ましくはビデオシーケンスを記録する。
【0039】
この場合も患者の頭は一般的に眼科用診察機器の顎載せ台および/または額当てで固定されており、患者の診察すべき眼は眼科用診察機器の光軸に位置合わせされている。照明ユニット1および生成すべき固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更するデバイス7が制御ユニット6によって作動され、これにより結像光学系3を介して眼4内に合焦される一連の固視マーク2が生成される。
【0040】
この場合、眼4に提供すべき固視マーク2の照射方向の変更は、所定のシーケンスに基づいても、無作為に行ってもよい。
第1の例示的実施形態とは異なり、患者の平均反応時間、つまり検出された視線方向と生成された固視マーク2の提供された照射方向との一致が達成されるまでの時間が、制御ユニット6によって分析される。そのために、カメラ8から送られた例えば1〜200Hzの周波数で記録されたビデオシーケンスを使用する。
【0041】
患者の決定された平均反応時間は、制御ユニット6により例えば加重平均値として保存することができる。
第2段階では、生成された固視マーク2の照射方向を狙い通りに変更した後、測定デバイス5による測定処理を開始するために、患者の決定された平均反応時間が制御ユニット6によって使用される。
【0042】
この第2の例示的実施形態は、患者の平均反応時間の分析により、測定処理が、連続的に遅滞なくさらなる中断なしで進められるという利点を有する。
この第2の例示的実施形態の有利な一変形形態では、測定工程中も、眼4の視線方向を(チェック目的で)追加的に検出するためにカメラ8を使用することができる。
【0043】
さらなる有利な一変形形態では、生成された固視マーク2の照射方向を、したがって眼4の視線方向を狙い通りに制御することにより、光軸外の眼の長さの測定を実施可能にするために、第2の例示的実施形態で説明した解決策を使用する。多数のこのような測定値によって、眼の周囲の形状を決定することができる。
【0044】
第3の例示的実施形態においては、眼における高精度の測定値の取得は、患者がその視覚異常に関わらず眼を位置合わせすることができる固視マークを生成し、結像光学系を介して眼内に合焦することによって達成される。
【0045】
この場合、図1に基づく装置は同様に、固視マークの照射方向を狙い通りに変更するデバイス7を備えた、固視マーク2を生成する照明ユニット1と、生成された固視マーク2を眼4内に合焦する結像光学系3と、測定デバイス5と、制御ユニット6とを備える。眼4の視線方向を検出するために追加的なカメラ8が存在し、このカメラは照明ユニット1および測定デバイス5と同様に制御ユニット6と接続されている。制御ユニット6により、検出された視線方向と生成された固視マーク2の提供された照射方向とが一致するかどうかが判定され、この一致の確率の度合いに応じて測定処理が開始される。
【0046】
これに加え結像光学系3は、生成された固視マーク2を診察すべき眼4の異なる平面内に同時に合焦させる多焦点光学素子を備えている。
多焦点光学素子としては、回折光学素子(DOE)の他に、複数の焦点を実現するフレネルレンズも使用することができる。
【0047】
この場合、多焦点光学素子は、例えば−10、−50、および−100ディオプトリという異なる屈折誤差のための不連続な固視マークも、例えば+3〜−15ディオプトリの範囲全体用の固視マークも生成することができる。
【0048】
多焦点の固視マークを生成することにより、屈折誤差がある患者でも、提供された固視マークへの精密な位置合わせを達成する確率が高くなる。
生成すべき固視マークに関しては、高精度の測定値が取得できるよう、診察すべき眼の厳密な位置合わせを達成するために使われるだけなので、多焦点の固視マークの生成が可能である。必要な解像度に対する要求はどちらかと言えば低い。
【0049】
眼に関する高精度の測定値を取得するための本発明による装置の形態とは無関係に、生成された固視マークの照射方向を変えるためのシーケンスの速度が可変に変更できると好都合である。これにより、個々の患者(子供、大人、老人など)の個性により適切に対応すること、および測定をさらに最適化することが可能になる。
【0050】
本発明による装置の最後の変形形態では、これに加え、生じる瞳孔収縮を、カメラによって認識することができ、これを、提供された固視マークへの眼の厳密な位置合わせに関する指標として使用することができる。これも同様に、本発明による装置のそれぞれの形態に依存しない。
【0051】
本発明による装置により、眼における高精度の測定値を簡単に取得できる解決策が提供される。この眼科用機器は、できるだけ単純な基本構造で、簡単な、好ましくは自動化された操作を可能にする。
【0052】
高精度の測定値は、計測すべき眼が正しく位置合わせされてから、つまり検出された視線方向と生成された固視マークの提供された照射方向とが一致してから測定処理を開始することによって達成される。したがって提案した解決策は、眼科学における半自動および全自動の測定機器の開発および導入のための基本的な前提条件を構成している。
【0053】
結像光学系の構成要素として多焦点光学素子を追加的に使用することにより、計測すべき眼の視覚異常とは無関係に提案した解決策が適用可能であり、高精度の測定値を提供することが保証できる。
【0054】
さらに、最後のまばたきの時点を考慮することにより、高い確率で邪魔なまばたきなしで、または涙膜がはがれた状態で測定が行われるように、測定をさらに有利に開始させることができる。そのために、カメラおよび制御ユニットによってまばたきを検出し、最後のまばたきから0.1〜0.5秒後に測定を開始することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1 照明ユニット
2 固視マーク
3 結像光学系
4 眼
5 測定デバイス
6 制御ユニット
7 デバイス
8 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固視マーク(2)を生成する照明ユニット(1)と、該生成された固視マーク(2)の光を眼(4)内に伝送するデバイスと、測定デバイス(5)と、制御ユニット(6)とを備える、眼(4)における高精度の測定値を取得するための装置において、該照明ユニット(1)が該生成された固視マーク(2)の照射方向を狙い通りに変更するデバイス(7)を含んでおり、眼(4)の視線方向(4’、4’’、4’’’)を検出する追加的なカメラ(8)が存在し、該カメラが該照明ユニット(1)および該測定デバイス(5)と同様に該制御ユニット(6)と接続されて、該制御ユニット(6)により、検出された視線方向(4’、4’’、4’’’)と該提供された固視マーク(2’、2’’、2’’’)の照射方向とが十分に一致するかどうかを判定することができ、一致の確率の度合いに応じて該測定デバイス(5)による測定処理を開始できることを特徴とする装置。
【請求項2】
固視マーク(2)を生成する照明ユニット(1)として、好ましくは緑から赤のスペクトル領域の可視光を放出する1つまたは複数の単一光源または平面光源が使用されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
固視マーク(2)を生成する前記照明ユニット(1)が、強度、形状、色、発散、および大きさが可変の固視マーク(2)を表示できるように形成されていることを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記生成された固視マークの光を眼内に伝送するデバイスが、多焦点光学素子を含む結像光学系(3)であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記生成された固視マーク(2)の照射方向を狙い通りに変更するデバイス(7)が、照射方向を離散的にまたは連続的に変更できるように形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記カメラ(8)により、瞳孔または虹彩または強膜構造の位置を測定することで、眼(4)の視線方向(4’、4’’、4’’’)が検出されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
眼(4)の視線方向(4’、4’’、4’’’)を検出するカメラ(8)が、単一画像およびビデオシーケンスを記録できるように形成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記カメラ(8)が、移動方向の変化を検出し、該方向情報を前記制御ユニット(6)に伝送するように形成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
眼(4)の視線方向(4’、4’’、4’’’)を検出するカメラ(8)の他に周囲照明が存在していることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
周囲照明には例えば、好ましくは700〜950nmのスペクトル領域内の赤外線光を放出するLEDが使用されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
周囲照明を測定処理中に切っておくことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
検出された視線方向(4’、4’’、4’’’)が前記提供された固視マーク(2’、2’’、2’’’)の照射方向に高い確率で対応する場合に、前記制御ユニット(6)により前記測定デバイス(5)による測定処理が開始されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記生成された固視マーク(2)の照射方向を狙い通りに変更した後、患者の予め決定された平均反応時間が経過して、視線方向(4’、4’’、4’’’)が前記提供された固視マーク(2’、2’’、2’’’)の照射方向に高い確率で対応する場合に、前記制御ユニット(6)により、前記測定デバイス(5)による測定処理が開始されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記生成された固視マーク(2)の照射方向を狙い通りに変更した後、前記カメラ(8)によって瞳孔収縮が検出されたとき、前記制御ユニット(6)により、前記測定デバイス(5)による測定処理が開始されることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記カメラ(8)および前記制御ユニット(6)によってまばたきが検出され、まばたきから0.1〜0.5秒の時間内に前記測定デバイス(5)による測定処理が開始されることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224377(P2011−224377A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95075(P2011−95075)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany