説明

眼内照明用プローブ

【課題】本体部の先端部に作用する過大な曲げ応力を原因としたこの先端部の破損を防止できるとともに、本体部の伝送損失も低減することができる眼内照明用プローブを提供する。
【解決手段】ハンドピースの内側空間での本体部の支持として、弾性ストッパとフェルールとによる2点支持を採用したので、眼球検査時、何らかの原因で本体部の先端部に過大な曲げ応力が作用しても、本体部が全体的に緩やかに変形するだけで、この先端部に応力が集中しない。その結果、応力集中を原因とした本体部の先端部の破損を防止できるとともに、本体部の伝送損失も低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼内照明用プローブ、詳しくは患者の眼球の検査、特に蛍光眼底造影法によって行う網膜または脈絡膜などの検査に好適な眼内照明用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科領域の各種疾患のうち、眼底疾患は眼球の後壁すなわち眼底での血管異常や出血などの血管病変を主因としている。そのため、治療の前に行われる眼底の検査が重要となる。特に、網膜または脈絡膜の血管病変の精密検査が必要な場合、蛍光眼底造影法が利用されている。
蛍光眼底造影法では、蛍光を発する造影剤を患者に注射することで、血管内に造影剤を循環させる。そして、造影剤に応じた波長の照明光を眼底に照射することにより血管中で循環している造影剤を励起させて血管を造影する。
この検査法では、網膜や脈絡膜の血管をほぼそのままの状態で精密に造影できるため、血管や組織の状態を詳細に調べたり、網膜や脈絡膜の循環動態を把握したりすることが可能になる。その結果、眼底を正確に検査できるだけでなく、網膜や脈絡膜を手術する場合に、手術対象部位を決定する用途にも非常に好適に用いることができる。
【0003】
近年、上記蛍光眼底造影法は大きく進歩しており、眼底疾患の診断のためにより精密な検査が実施できるとともに、眼底疾患の手術として重要な網膜硝子体手術においても、手術対象部位の決定には不可欠なものとなっている。しかしながら、硝子体出血や硝子体混濁が生じていれば、眼底の観察が妨げられるため、手術前に蛍光眼底造影法による眼底検査ができない。そのため、手術対象部位の決定が困難になる。
そこで従来では、先に硝子体から出血部位や混濁物質等を除く手術を行ってから蛍光眼底造影法により眼底の画像を記録して、この画像を見ながら手術が実施されていた。この場合の硝子体手術は、手術用顕微鏡による所見に基づいて実施されるが、手術用顕微鏡による所見だけでは無血管帯や新生血管の把握が不十分となる可能性がある。さらには、術後に硝子帯膣に再出血が生じて蛍光眼底造影が実施できないこともある。
そこで、近年では、手術中に眼底検査を実施することにより手術対象部位を一層明確にする技術が提案されており、照明光を眼底に照射する方法として、被検眼の側部に開けられたポートを介して眼内照明用プローブを挿入し、レーザ光を照射することが行われている。
【0004】
レーザ光照射方式の蛍光眼底造影法で用いられる眼内照明用プローブとしては、例えば、特許文献1に記載されたものなどが知られている。この眼内照明用プローブは、レーザ光を透過する石英ガラスまたは合成樹脂からなる光ファイバを本体部とする。本体部の先端部を除いた部分には、金属製のカニューレが嵌合されている。また、カニューレには、合成樹脂製で円筒形状のハンドピース(グリップ)が嵌合されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−226156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の眼内照明用プローブでは、本体部の先端部を除く部分の外周面とカニューレの内周面とが密着し、かつカニューレの外周面とハンドピースの内周面とも密着していた。そのため、例えば本体部の先端部を眼内に挿入する際など、何らかの原因でハンドピースから突出した本体部の先端部に過大な曲げ応力が作用した場合には、その力のほとんどが本体部の先端部に集中していた。その結果、本体部の先端部に変形が生じて、先端部が破損し易く、本体部の伝送損失も増大していた。
【0007】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、眼内照明用プローブにおける本体部の支持構造に着目した。具体的には、本体部の先端部に過大な曲げ応力が作用した際、本体部にその全長にわたって緩やかな変形が生じ、本体部の先端部への応力の集中を避けるプローブ構造とすれば、上述した課題を解消可能なことを知見し、この発明を完成させた。
この発明は、本体部の先端部に作用する過大な曲げ応力を原因としたこの先端部の破損を防止できるとともに、本体部の伝送損失も低減することができる眼内照明用プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、円柱形状でかつレーザ光を透過する石英ガラスまたは合成樹脂からなる本体部と、該本体部の先端部を除く部分の全体が内側空間に挿入される円筒形状のハンドピースとを備え、前記本体部の先端部を被検眼の眼球内に挿入し、この状態のまま前記本体部の先端部からレーザ光を照射することで前記眼球内を照明する眼内照明用プローブにおいて、前記ハンドピースの内径は、該ハンドピースの全長にわたって前記本体部の直径より大きく、前記ハンドピースの内側空間の先端側の開口部分と前記本体部の先端部との間には、該本体部の先端部を支持する管形状の弾性ストッパが配置され、前記ハンドピースの内側空間の元側部分と前記本体部の元部分との間には、該本体部の元部を前記ハンドピースの元部内で支持するフェルールが配置された眼内照明用プローブである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ハンドピースの内側空間に、その内周壁との間に隙間をあけて本体部が挿入(遊挿)され、かつ本体部の先端部が弾性ストッパにより支持されるとともに、本体部の元部がフェルールにより支持されている。すなわち、本体部はハンドピースの内側空間で2点支持されている。そのため、本体部の先端部を眼内に挿入する際などにおいて、何らかの原因で本体部の先端部に過大な曲げ応力が作用しても、本体部が全体的に緩やかに変形することで、その先端部への応力の集中が回避される。その結果、この応力集中を原因とした本体部の先端部の破損を防止できるとともに、本体部の伝送損失も低減することができる。
【0010】
眼内照明用プローブは、眼科領域の各種疾患の検査法、特に造影剤を用いる蛍光眼底造影法により、眼球の眼底での血管異常や出血などの血管病変を検査するときに利用される。
レーザ光としては、例えば可視レーザ光、赤外レーザ光などを採用することができる。
本体部は光ファイバである。本体部の素材である石英ガラスとしては、例えば合成石英ガラスなどを採用することができる。また、本体部の別の素材である合成樹脂としては、例えばアクリル樹脂、フッ素化ポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを採用することができる。さらに必要に応じて、プラスチックの被覆を施したり、カニューレを被せることも可能である。
ハンドピースとは、眼内照明用プローブのグリップ(握り柄)である。ハンドピースの素材としては、例えばポリプロピレン、ABS樹脂などを採用することができる。
ハンドピースの元部には、光コネクタ用のアダプタが設けられる。アダプタには光コネクタ用のプラグが着脱自在に装着される。
【0011】
「本体部の先端部を除く部分の全体が内側空間に挿入されている」とは、本体部のうち、眼球内に挿入される先端部を除いた全ての部分が、ハンドピースの内側空間に挿入されて、このハンドピースにより覆われている状態をいう。
「ハンドピースの内径が、ハンドピースの全長にわたって本体部の直径より大きい」とは、本体部の外周面とハンドピースの内周壁(内周面)との間に、ハンドピースの全長にわたって円環形状の隙間が形成されていることを意味する。
弾性ストッパは、弾性素材からなる管部材である。この弾性素材としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの各種のゴムや熱可塑性エラストマーなどのプラスチックを採用することができる。
フェルールとは、ハンドピースの元部に設けられる光コネクタ内で、光ファイバ(本体部)の接続端を保持する部材である。
フェルールの素材としては、例えば、ステンレス等の金属、ジルコニアなどの各種のセラミックスを採用することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ハンドピースの内側空間の前記弾性ストッパから前記フェルールまでの領域で、かつ前記本体部の外周面と前記ハンドピースの内周壁との間には、緩衝部材が収納された請求項1に記載の眼内照明用プローブである。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ハンドピースの内側空間のうち、弾性ストッパからフェルールまでの領域に、本体部の外周面とハンドピースの内周壁との隙間を埋める緩衝部材を収納したので、本体部の先端部に過大な曲げ応力が作用し、本体部が内側空間で全体的に緩やかに変形しても、本体部の長さ方向の中間部がハンドピースの内周壁に直接押し当てられることはない。その結果、ハンドピース内での本体部の変形を原因とした本体部の損傷を防止することができる。
さらに請求項1の場合と異なり、ハンドピース内部に空隙を設ける必要がないので、ハンドピースに本体を組み込む方法として、インサート成形を用いることが可能である。
緩衝部材の素材としては、例えば、ウレタンフォーム、ゴムスポンジなどの各種のスポンジ、その他、軟質のゴムや熱可塑性エラストマーなどを採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、本体部がハンドピースの内側空間で2点支持されているので、眼球検査時に、何らかの原因で本体部の先端部に過大な曲げ応力が作用しても、本体部が全体的に緩やかに変形するだけで、この先端部には応力が集中しない。その結果、この応力集中を原因とした本体部の先端部の破損を防止できるとともに、本体部の伝送損失も低減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ハンドピースの内側空間のうち、弾性ストッパからフェルールまでの領域に、本体部の外周面とハンドピースの内周壁との隙間を埋める緩衝部材を収納したので、本体部の先端部への過大な曲げ応力に伴い、本体部が内側空間で全体的に緩やかに変形しても、本体部の長さ方向の中間部がハンドピースの内周壁に直接押し当てられることはない。その結果、ハンドピース内での本体部の変形を原因とした本体部の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施例1に係る眼内照明用プローブの縦断面図である。
【図2】この発明の実施例1に係る眼内照明用プローブの斜視図である。
【図3】この発明の実施例1に係る眼内照明用プローブが使用された眼底手術装置による眼底手術を示す全体構成図である。
【図4】この発明の実施例2に係る眼内照明用プローブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0018】
図1および図2において、10はこの発明の実施例1に係る眼内照明用プローブで、この眼内照明用ブローブ10は、円柱形状でかつレーザ光を透過する本体部11と、本体部11の先端部を除く部分の全体が内側空間12に挿入される円筒形状のハンドピース13と、ハンドピース13の内側空間12の先端側の開口部分と本体部11の先端部11aとの間に配置され、本体部11の先端部11aを支持する管形状の弾性ストッパ14と、ハンドピース13の内側空間12の元側部分と本体部11の元部分との間に配置され、本体部11の元部をハンドピース13の元部内で支持するフェルール15と、フェルール15の先端部が元部に装着されるスリーブ16と、ハンドピース13の元部にスリーブ16の先端部を外方から覆うように螺合され、かつ先端部に光コネクタのプラグ17の螺合部が形成された筒形状のプラグ接合キャップ18とを備えている。
【0019】
以下、これらの構成要素を具体的に説明する。
図1に示すように、本体部11は合成石英ガラス製の光ファイバである。本体部11の先端部は眼球に挿入し易いように尖っている。本体部11の直径は1.4mm(17ゲージ)以下である。
ハンドピース13は、先端部が徐々に先細りしたポリプロピレン製の厚肉な円筒体である。ハンドピース13の内径(内側空間12の直径)は、本体部11の直径より大きい。そのため、本体部11の外周面とハンドピース13の内周壁との間には、ハンドピース13の略全長にわたって円環形状の隙間が形成されている。ハンドピース13の先端部の内周壁(内側空間12の形成壁)には、弾性ストッパ14の元部が挿入される環状のストッパ挿入溝13aが形成される一方、ハンドピース13の元部の内周面には、フェルール15の元部が挿入される環状のフェルール挿入溝13bが形成されている。ハンドピース13の小径化した元部の外周面には、プラグ接合キャップ18が螺合される外ねじ13cが形成されている。ハンドピース13の先側部の外周面には、所定ピッチで5本の滑り止め溝が形成されている。
【0020】
弾性ストッパ14は、本体部11の先端部11aに密着される弾性素材のシリコーンゴムからなる短尺な円筒体である。弾性ストッパ14は、その元部がストッパ挿入溝13aに挿入され、その先端部がハンドピース13の先端から外方へ突出している。
フェルール15はジルコニアからなる短尺な円筒体である。フェルール15の元部はハンドピース13のフェルール挿入溝13bに挿入され、この元部より小径な先部15aの一部が、ハンドピース13の外ねじ13c付きの元部から外方へ突出している。
スリーブ16はジルコニアからなる短尺な円筒体で、その元側の半分がフェルール15の先部に装着されている。スリーブ16の元部は、フェルール15の先部とハンドピース13の元部との隙間に挿入可能に小径化されている。同様にスリーブ16の先部も、光コネクタのプラグ17を装着可能に小径化されている(図2)。
【0021】
プラグ接合キャップ18は、ポリプロピレンからなる短尺な円筒体である。プラグ接合キャップ18の外径はハンドピース13の外径と同一で、プラグ接合キャップ18の内径はスリーブ16の外径と同一である。また、プラグ接合キャップ18の元側の内周面には、ハンドピース13の外ねじ13cに螺合可能な内ねじ18aが形成されている。プラグ接合キャップ18の小径化した先部には、光コネクタのプラグ17が螺合される外ねじ18bが形成されている。さらに、プラグ接合キャップ18の先部の内周面には、スリーブ16の飛び出しを防止する抜け止めリング18cが一体形成されている。
このプラグ17は、外ねじ18bを介してプラグ接合キャップ18に螺合されている。この螺合時、プラグ17側のフェルール15の先部がスリーブ16の先部に挿入される。これにより、本体部11の元側の端と、プラグ17が固定された照明用導光ファイバ19の先端とが、レーザ光を伝達可能に接続される。
【0022】
ここで、図3を参照して、眼内照明用プローブ10が使用される眼底手術装置20を説明する。
図3において、眼底手術装置20は、この発明の実施例1に係る眼内照明用プローブ10と、レーザ手術用プローブ21と、統合光源部22とを備えている。
レーザ手術用プローブ21は、手術用導光ファイバ23により統合光源部22と光伝達可能に接続され、眼内照明用プローブ10の本体部11と同様、内部に光ファイバが挿入されている。統合光源部22から出射された光凝固用のアルゴンレーザ光は、手術用導光ファイバ23によりレーザ手術用プローブ21の一方の端部(入射端部)に導入された後、他方の端部(出射端部・先端部)から出射される。
【0023】
統合光源部22は、照明用の各種光源および手術用の光源などが配備された機器である。具体的には、統合光源部22の動作全体を制御し、手術中に眼底検査が実施できるように、各光源からのレーザ光の発光を制御する光源制御部24と、眼内照明用プローブ10に可視レーザ光を出射する照明用ダイオード25と、照明用ダイオード25から照射される可視レーザ光の光度を検出するレーザ出力検出部26と、レーザ出力検出部26からの検出結果に基づき、眼底の表面における可視レーザ光の照射光度を一定化するレーザ出力安全制御部(キャリブレーション装置)27と、切り換えミラー28を介して、蛍光眼底造影を伴わない手術時に使用される白色光を眼内照明用プローブ10に出射する白色光源29と、レーザ手術用プローブ21に手術用の凝固レーザ光(アルゴンレーザ光)を出射するアルゴンレーザ光源30と、ハーフミラー31を介してアルゴンレーザ光に混合され、手術対象部位にアルゴンレーザ光の照射位置を示すガイド光を発するガイド光用レーザダイオード32と、第1〜第3の集光レンズ33〜35とを備えている。
【0024】
アルゴンレーザ光は、約515nmの緑色の波長と、約488nmの青緑色の波長に特に強い発振線がみられ、眼科や皮膚科等の医療用レーザに好適に用いられる。ガイド光用レーザダイオード32としては、約640nmの赤色の波長のレーザ光を出射するものが採用されている。また、第1の集光レンズ33は照明用ダイオード25とレーザ出力安全制御部27との間に配置され、第2の集光レンズ34はアルゴンレーザ光源30とハーフミラー31との間に配置され、第3の集光レンズ35はガイド光用レーザダイオード32とハーフミラー31との間に配置されている。
【0025】
次に、図3を参照して眼底手術装置20を使用して施される眼底手術方法を説明する。
まず、被検眼Eに手術用コンタクトレンズが装着され、被検眼Eの側部に、眼圧を保持する眼圧保持ポートと、眼内照明用プローブ10を眼球内に挿入する照明用ポートと、レーザ手術用プローブ21を眼球内に挿入する手術用ポートとが形成される。
次に、照明用ポートから眼内照明用プローブ10の本体部11の尖った先端部11aを眼球内に挿入する。その挿入長さは、弾性ストッパ14の先端面が眼球に当接する長さである。このとき、仮に術者の施術ミスにより、本体部11の先端部11aに過大な曲げ応力が作用しても、ハンドピース13の内側空間12で、本体部11が全体的に緩やかに変形することで、本体部11の先端部11aへの応力の集中が回避される。これは、本体部11がハンドピース13の内側空間12で弾性ストッパ14とフェルール15とにより、2点支持されていることによる。その結果、応力集中を原因とした本体部11の先端部11aの破損を防止することができるとともに、本体部11の伝送損失も低減することができる。
【0026】
その後、患者(被検者)に、所定の条件で調整されたフルオレセインの注射液を所定の条件で静脈注射する。次いで、照明用ダイオード25から可視レーザ光を出力する。可視レーザ光は照明用導光ファイバ19を通って眼内照明用プローブ10の先端部から眼球内に出射され、眼底Mを照明する。
照明用ダイオード25は、フルオレセインを励起して蛍光させる緑色から青色の波長域の可視レーザ光を発する。フルオレセインの励起光としては、波長域465nm〜490nmの範囲内のレーザ光が好適であるため、可視レーザ光の波長は、約488nmとしている。また、レーザ出力検出部26からの検出信号が光源制御部24へ送られ、光源制御部24はレーザ出力安全制御部27に対して、眼底M上での照射光度、すなわち、眼内照明用プローブ10の先端部から出射して被検眼Eの眼底Mの表面に達したときの照射光度が0.22mW・cm以下となるように制御する。
この可視レーザ光による眼底Mの照明状態で、手術用ポートを通して眼球内に挿入されたレーザ手術用プローブ21の先端部から、手術用導光ファイバ23を介して、アルゴンレーザ光源30から出力された凝固レーザ光を眼底Mの患部に出射する。それに先駆けて、ガイド光用レーザダイオード32から出力されたガイド光を、ハーフミラー31を経て手術用導光ファイバ23に導入し、アルゴンレーザ光の照射位置を手術対象部位に示す。
【0027】
次に、図4を参照して、この発明の実施例2に係る眼内照明用プローブ10Aを説明する。
図4に示すように、実施例2に係る眼内照明用プローブ10Aの特徴は、ハンドピース13の内側空間12の弾性ストッパ14からフェルール15までの領域で、かつ本体部11の外周面とハンドピース13の内周壁との間に、緩衝部材40を収納させた点である。緩衝部材40としては、細長い管形状のウレタンフォームが採用されている。
【0028】
このように、ハンドピース13の内側空間12のうち、弾性ストッパ14からフェルール15までの領域に、本体部11の外周面とハンドピース13の内周壁との隙間を埋める緩衝部材40を収納するように構成したので、本体部11の先端部に過大な曲げ応力が作用し、本体部11が内側空間12で全体的に緩やかに変形しても、本体部11の長さ方向の中間部がハンドピース13の内周壁に直接押し当てられることはない。その結果、ハンドピース13内での本体部11の変形を原因とした本体部11の損傷を防止することができる。
さらにハンドピース13内部に空隙を設ける必要がないので、ハンドピース13に本体部11を組み込む方法として、インサート成形を用いることが可能である。
その他の構成、作用および効果は実施例1と同じであるので、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明の眼内照明用プローブは、医療用照明装置として有用である。また、この眼内照明用プローブは、工業用照明装置にも応用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10,10A 眼内照明用プローブ、
11 本体部、
11a 先端部、
12 内側空間、
13 ハンドピース、
14 弾性ストッパ、
15 フェルール、
40 緩衝部材、
E 被検眼。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状でかつレーザ光を透過する石英ガラスまたは合成樹脂からなる本体部と、該本体部の先端部を除く部分の全体が内側空間に挿入される円筒形状のハンドピースとを備え、前記本体部の先端部を被検眼の眼球内に挿入し、この状態のまま前記本体部の先端部からレーザ光を照射することで前記眼球内を照明する眼内照明用プローブにおいて、
前記ハンドピースの内径は、該ハンドピースの全長にわたって前記本体部の直径より大きく、
前記ハンドピースの内側空間の先端側の開口部分と前記本体部の先端部との間には、該本体部の先端部を支持する管形状の弾性ストッパが配置され、
前記ハンドピースの内側空間の元側部分と前記本体部の元部分との間には、該本体部の元部を前記ハンドピースの元部内で支持するフェルールが配置された眼内照明用プローブ。
【請求項2】
前記ハンドピースの内側空間の前記弾性ストッパから前記フェルールまでの領域で、かつ前記本体部の外周面と前記ハンドピースの内周壁との間には、緩衝部材が収納された請求項1に記載の眼内照明用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−19836(P2012−19836A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158169(P2010−158169)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人科学技術振興機構 独創的シーズ展開事業(独創モデル化)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)