説明

眼寸法測定装置

【課題】 被検眼の眼軸長と前眼部寸法とをスムーズに測定する。
【解決手段】 低コヒーレント光を出射する測定光源と、該測定光源から出射された光の一部の光路長を変化させるために移動可能に配置された光路長変更部材と、受光素子と、を有し、被検眼の前眼部及び眼底に低コヒーレント光を照射し、被検眼からの反射光を干渉光として前記受光素子で受光する干渉光学系と、前記受光素子から出力された干渉信号に基づいて被検眼の眼軸長及び前眼部寸法を測定する演算制御部と、を備える眼寸法測定装置において、前記測定光源は、眼軸長測定用の750〜1100nmの内に中心波長を持つ第1の低コヒーレント光を出射する第1の光源と、前眼部寸法測定用の400〜700nmの内に中心波長を持つ第2の低コヒーレント光を出射する第2の光源と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の眼寸法を測定する眼寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低コヒーレント光の干渉を用いて被検眼の眼軸長と前眼部寸法(例えば、角膜厚、前房深度等)とを非接触で測定する光干渉式眼寸法測定装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−160694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置において前眼部寸法を測定する場合、検者は、前眼部における各層からの正反射成分が精度良く検出できるように、被検眼に対してアライメントと固視誘導とを行う(被検眼光軸と装置光軸を一致させる)必要があった。しかしながら、上記のような調整作業は非常に手間であり、測定時間の長期化、測定精度の低下、等の原因になりうるものであった。
【0005】
本発明は、上記問題点を鑑み、被検眼の眼軸長と前眼部寸法とをスムーズに測定できる眼寸法測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 低コヒーレント光を出射する測定光源と、該測定光源から出射された光の一部の光路長を変化させるために移動可能に配置された光路長変更部材と、受光素子と、を有し、被検眼の前眼部及び眼底に低コヒーレント光を照射し、被検眼からの反射光を干渉光として前記受光素子で受光する干渉光学系と、
前記受光素子から出力された干渉信号に基づいて被検眼の眼軸長及び前眼部寸法を測定する演算制御部と、を備える眼寸法測定装置において、
前記測定光源は、
眼軸長測定用の750〜1100nmの内に中心波長を持つ第1の低コヒーレント光を出射する第1の光源と、
前眼部寸法測定用の400〜700nmの内に中心波長を持つ第2の低コヒーレント光を出射する第2の光源と、を含むことを特徴とする眼寸法測定装置。
(2) (1)の眼寸法測定装置において、
前記干渉光学系には、前記第1及び第2の光源から出射された各光を分割する光分割部材を有し、
前記光路長変更部材は、該光分割部材によって分割された前記第1及び第2の光源から出射された各光の光路長を同時に変更可能であることを特徴とする。
(3) (2)の眼寸法測定装置において、
前記受光素子は、前記第1の光源による被検眼からの反射光を受光する第1の受光素子であって、前記第1の光源の発光波長に対応した分光感度波長を持つ第1の受光素子と、前記第2の光源による被検眼からの反射光を受光する第2の受光素子であって、前記第2の光源の発光波長に対応した分光感度波長を持つ第2の受光素子と、
を備えることを特徴とする。
(4) (3)の眼寸法測定装置において、
前記演算制御部は、前記第1の光源、前記第2の光源、を制御する演算制御部であって、
前記第1の光源と前記第2の光源とをそれぞれ点灯させると共に、前記光路長変更部材が移動された状態において、前記第1の受光素子から出力される干渉信号に基づいて被検眼の眼軸長を測定し、前記第2の受光素子から出力される干渉信号に基づいて被検眼の前眼部寸法を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
被検眼の眼軸長と前眼部寸法とをスムーズに測定できる
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る眼寸法測定装置の光学系の概略構成図である。
【0010】
被検眼前眼部と被検眼眼底に測定光を照射するために配置された照射光学系10は、低コヒーレント光を出射する測定光源1a,1b(例えば、SLD)と、測定光源1a,1bから出射された光束をそれぞれ平行光束とするために配置されたコリメータレンズ2a,2bと、光源1aから出射された光と光源1bから出射された光とを合成するために配置されたダイクロイックミラー3と、光源1a,1bから出射された各光を分割/合成するビームスプリッタ5と、ビームスプリッタ5の透過方向に配置された第1三角プリズム(コーナーキューブ)7と、ビームスプリッタ5の反射方向に配置された第2三角プリズム9と、偏光ブームスプリッタ11と、1/4波長板13と、検査窓17と、を有する。なお、ダイクロイックミラー3としては、例えば、光源1aから出射された光を透過し、光源1bから出射された光を反射する光学特性を有する光学部材を使用できる。
【0011】
測定光源は、眼軸長測定用の750〜1100nmの内に中心波長を持つ第1の低コヒーレント光を出射する第1の光源1aと、前眼部寸法測定用の400〜700nmの内に中心波長を持つ低コヒーレント光を出射する第2の光源1bと、を含む。この場合、第1光源1aの発光波長は、眼内での透過率が高い波長帯域に設定される。また、第2光源1bの発光波長は、前眼部の各部位(角膜、水晶体)での散乱効果が高い波長帯域に設定される。なお、第1の光源1a及び第2の光源1bの少なくともいずれかは、被検眼を固視させるための固視用光源として使用できる。
【0012】
第1光源1aとしては、より好ましくは、眼内での透過率がより高いλ=750〜850nmのいずれかに中心波長を持つ光源を使用できる。また、第1光源1aとしては、白内障混濁に対する透過率が高いλ=1000〜1100nmのいずれかに中心波長を持つ光源を使用できる。また、第2光源1bとしては、より好ましくは、前眼部での散乱効果がより高いλ=400〜500nmのいずれかに中心波長を持つ光源を使用できる。
【0013】
光源1a(光源1b)から出射された光(直線偏光)は、コリメータレンズ2a(2b)によってコリメートされた後、ダイクロイックミラー3を介して、ビームスプリッタ5によって分割される。そして、ビームスプリッタ5によって分割された一方の光は三角プリズム7によって反射され、ビームスプリッタ5によって分割された他方の光は三角プリズム9によって反射され、その後、ビームスプリッタ5によって合成される。そして、合成された光は、偏光ビームスプリッタ11によって反射され、1/4波長板13によって円偏光に変換された後、ダイクロイックミラー15及び検査窓17を介して被検眼に照射される。このとき、測定光束は、被検者眼にて反射されると、1/2波長分位相が変換される。
【0014】
このとき、第1光源1aによって被検眼に対して照射された光は、被検眼角膜にて反射された後、後述する受光光学系20へ向かう。また、第1光源1aによる光は、眼内での透過率が高いため、眼内を通過し、眼底にて反射された後、再び眼内を介して被検眼から出射され、受光光学系20へと向かう。
【0015】
また、第2光源1bによって被検眼に対して照射された光は、被検眼前眼部の各部位にて反射(散乱)された後、受光光学系20へと向かう。この場合、第2光源1bによる光は、前眼部の各部位での散乱効果が高いため、第1光源1aによる前眼部反射光よりも多くの反射光が得られる。
【0016】
照射光学系10によって照射された測定光による被検眼からの反射光を干渉光として受光するために配置された受光光学系20は、検査窓17と、1/4波長板13と、偏光ビームスプリッタ11と、集光レンズ19と、第1光源1aによる干渉光と第2光源1bによる干渉光とを分割するために配置されたダイクロイックミラー26と、第1光源1aによる干渉光を受光する受光素子27aと、第2光源1bによる干渉光を受光する受光素子27bと、を有する。ダイクロイックミラー26としては、例えば、第1光源1aによる干渉光を透過し、第2光源1bによる干渉光を反射する光学特性を有する光学部材を使用できる。
【0017】
なお、受光光学系20としては、眼軸長測定用の受光素子として用いられ,第1光源1aの発光波長に対応した分光感度波長を持つ第1の受光素子27aと、前眼部寸法測定用の受光素子として用いられ,第2光源1bの発光波長に対応した分光感度波長を持つ第2の受光素子27bと、をそれぞれ配置できる。この場合、第1の受光素子27aは、その分光感度波長のピークが第1光源1aの中心波長付近に設定されたものが好ましい。また、第2の受光素子27bは、その分光感度波長のピークが第2光源1bの中心波長付近に設定されたものが好ましい。これにより、第1の光源1aによる干渉光と、第2の光源1bによる干渉光と、をそれぞれ精度良く検出できる。
【0018】
なお、上記構成に限るものではなく、一つの受光素子を設け、その受光素子より前に、第1の光源1aによる干渉光と第2の光源1bによる干渉光をそれぞれ選択的に通過させるフィルタユニットを設けるようにしてもよい。この場合、フィルタユニットとしては、例えば、受光光学系20の光路中において、第1の光源1aによる干渉光を通過し,第2の光源1bによる干渉光をカットする第1フィルタと、第2の光源1bによる干渉光を通過し,第1の光源1aによる干渉光をカットする第2フィルタと、を切換配置する構成が使用できる。
【0019】
第1光源1aによる角膜と眼底からの反射光、及び第2光源1bによる前眼部からの反射光は、検査窓17及びダイクロイックミラー15を介して、1/4波長板13によって直線偏光に変換される。その後、偏光ビームスプリッタ11を透過した反射光は、集光レンズ19によって集光された後、ダイクロイックミラー26によって分割される。ここで、第1光源1aによる反射光は、ダイクロイックミラー26を透過し、受光素子27aによって受光される。また、第2光源2aによる反射光は、ダイクロイックミラー26によって反射され、受光素子27bに受光される。
【0020】
なお、三角プリズム7は、光路長を変更させるための光路長変更部材として用いられ、駆動部71(例えば、モータ)の駆動によってビームスプリッタ5に対して光軸方向に直線的に移動される。この場合、光路長変更部材は、三角ミラー、コーナープリズム等であってもよい。また、プリズム7の駆動位置は、位置検出センサ72(例えば、ポテンショメータ、エンコーダ、等)によって検出される。
【0021】
なお、以上の説明において、光路長変更部材は、光路分割部材によって分割された光路中に配置され、二つに分割された光路間の光路差が調整されるように移動されればよい。具体的には、光路長変更部材及び光路分割部材は、図1のように照射光学系10の光路中に配置される他、受光光学系20の光路、又は照射光学系10と受光光学系20の共通光路に配置された構成であってもよい。
【0022】
なお、本実施形態では、ビームスプリッタ5及びプリズム7は、第1光源1aによる測定光が通過する光路と第2光源1bによる測定光が通過する光路との共通光路に配置されている。このため、ビームスプリッタ5は、第1光源1a及び第2光源1bから出射された各光を分割する。そして、ビームスプリッタ5によって分割された各光は、プリズム7にて反射され、ビームスプリッタ5に戻る。ここで、プリズム7が移動されると、ビームスプリッタ5によって分割された各光の光路長が同時に変更される。
【0023】
ダイクロイックミラー15の反射方向には、被検眼の前眼部を撮像するために配置された前眼部撮像光学系30が設けられている。撮像光学系30は、光源1a,1bによる被検眼からの反射光と前眼部照明光源40による被検眼からの反射光を分割する特性を有するダイクロイックミラー15、対物レンズ31、全反射ミラー33、結像レンズ35、二次元撮像素子37、を有する。ここで、照明光源40によって照明された前眼部像は、検査窓17、ダイクロイックミラー15、対物レンズ31、全反射ミラー33、結像レンズ37を介して、二次元撮像素子37に結像される。ダイクロイックミラー15としては、例えば、光源1a,1bによる被検眼からの反射光を透過し、照明光源40による被検眼からの反射光を反射する光学特性を有する光学部材を使用できる。
【0024】
次に、本実施形態に係る装置の制御系について説明する。制御部80は、表示モニタ81、光源1a,1b、受光素子27a,27b、駆動部71、位置検出センサ72、コントロール部84、メモリ85、等が接続される。制御部80は、受光素子27a,27bから出力される受光信号を処理して,被検眼の眼軸長と前眼部寸法(例えば、前房深度)を演算により求める。メモリ85には、求められた測定値などが記憶される。また、コントロール部84には、測定開始のトリガ信号を発する測定開始スイッチ84a、等の各種スイッチが設けられている。
【0025】
以上のような構成を備える装置を用いて、被験者眼の眼軸長と前眼部寸法を測定する場合について説明する。検者は、モニタ81に表示される被験者眼のアライメント状態を見ながら、図示なきジョイスティック等の操作手段を用いて、装置を上下左右及び前後方向に移動させ、装置を被験者眼Eに対して所定の位置関係に置く。また、検者は、固視灯(例えば、第2の光源1b)を被験者眼に固視させる。この場合、制御部80は、光源1aと光源1bの少なくともいずれかを予め点灯させておけばよい。
【0026】
ここで、測定開始のトリガ信号が出力されると、制御部80は、光源1aと光源1bの両方を点灯する。この場合、光源1aと光源1bによる測定光が被検眼に照射され、光源1aと光源1bによる被検眼からの反射光が受光素子27aと受光素子27bに入射される。
【0027】
また、制御部80は、駆動部71の駆動を制御し、第1三角プリズム7を往復して移動させる。そして、制御部80は、受光素子27aによって干渉光が検出されたタイミングを元に、眼軸長を算出する。また、そして、制御部80は、受光素子27bによって干渉光が検出されたタイミングを元に、前眼部寸法を算出する。
【0028】
ここで、光路長が長くなる方向に向けて所定の初期位置からプリズム7が移動され、プリズム7を介して角膜前面に照射された第2光源1bによる測定光の光路長と,プリズム9を介して角膜後面に照射された第2光源1bによる測定光の光路長と、が一致されたとき、第2光源1bによる角膜前面での反射光と角膜後面での反射光との干渉光が受光素子27bに受光される。このとき、干渉光による干渉信号が受光素子27bから制御部80に出力され、角膜厚値の算出に用いられる。
【0029】
さらに、プリズム7が移動され、プリズム7を介して角膜に照射された第2光源1bによる測定光の光路長と,プリズム9を介して水晶体前面に照射された第2光源1bによる測定光の光路長と、が一致されたとき、第2光源1bによる角膜での反射光と水晶体前面での反射光との干渉光が受光素子27bに受光される。このとき、干渉光による干渉信号が受光素子27bから制御部80に出力され、前房深度の算出に用いられる。
【0030】
さらに、プリズム7が移動され、プリズム7を介して角膜に照射された第1光源1aによる測定光の光路長と,プリズム9を介して眼底に照射された第2光源1aによる測定光の光路長と、が一致されたとき、第1光源1aによる角膜での反射光と眼底での反射光との干渉光が受光素子27aに受光される。このとき、干渉光による干渉信号が受光素子27aから制御部80に出力され、眼軸長の算出に用いられる。
【0031】
ここで、干渉光を受光する受光素子から出力される干渉信号が被検眼のどの部位に対応する干渉信号であるかは、干渉信号の信号強度、信号の検出順序、等から特定できる。また、前述のような干渉信号が検出されたときのプリズム7の移動位置は、位置検出センサ72から出力される信号に基づいて検出できる。したがって、眼軸長値を算出する場合、所定の演算式又はテーブル表等を用い、プリズム7の移動位置と被検眼の眼軸長との関係を予め求めておけばよい。また、角膜厚、前房深度においても、同様に、プリズム7の移動位置と各眼寸法との関係を予め求めておけばよい。なお、上記手法に限るものではなく、プリズム7の移動中において干渉信号が検出された時間に基づいて各眼寸法を測定するようにしてもよい。
【0032】
取得された被験者眼の寸法に関する情報は、メモリ85に記憶されるとともに、モニタ81に表示される。また、制御部80は、所定回数の測定が完了したら(又は被検者の眼寸法値が所定数得られたら)、プリズム7の往復移動を終了し、プリズム7の移動位置を初期位置に復帰させる。なお、上記のように測定値が複数取得された場合、各測定値をそれぞれ出力するようにしてもよいし、複数取得された測定値の平均値を出力するようにしてもよい。
【0033】
以上のような構成とすれば、前眼部の各部位での散乱効果が高い波長帯域の光を前眼部寸法測定用の光として用いることによって、前眼部における各層からの反射光を良好なS/N比で検出でき、干渉光を高感度で検出できる。したがって、必ずしも被検眼の光軸と測定光軸とを厳密に一致させるために固視位置を調整する必要が無くなり、被検眼の視軸と測定光軸を一致させるために測定光軸上の固視光源を被検眼に固視させれば済む。したがって、固視誘導及びアライメントにかかる手間を軽減でき、前眼部における寸法の測定をスムーズに行うことが可能となる。
【0034】
また、上記構成においては、第1光源1aによる干渉光と第2光源1bによる干渉光とを各波長成分に分光した後、受光素子にて受光させる構成とした。このため、第1光源1aと第2光源1bとを同時点灯するような場合、第1光源1aによる干渉信号の検出の際に第2光源1bによる干渉光がノイズ信号として検出される、又、第2光源1bによる干渉信号の検出の際に第1光源1aによる干渉光がノイズ信号として検出される、等の状況を回避できる。
【0035】
また、本実施形態においては、眼軸長測定時及び前眼部寸法測定時において光源1a及び光源1bを同時点灯させるものとしたが、眼軸長測定時においては、光源1aを点灯、光源1bを消灯させるものとし、前眼部寸法測定時においては、光源1aを消灯、光源1bを点灯させるようにしてもよい。これにより、各測定に不要な光が被検眼に照射されるのを回避できる。この場合、例えば、制御部80は、プリズム7の移動可能範囲において、眼軸長測定用の移動範囲と前眼部測定用の移動範囲とを設定し、眼軸長測定用の移動範囲にプリズム7が配置されたときに光源1bを点灯し、前眼部測定用の移動範囲にプリズム7が配置されたときに光源1aを点灯するようにすればよい。
【0036】
なお、以上の説明においては、第1光源1aによる角膜反射光と眼底反射光との干渉光が受光素子27aに受光され、第2光源1bによる角膜前面での反射光と他の前眼部位での反射光との干渉光が受光素子27bに受光されるものとしたが、これに限るものではない。
【0037】
図2は第2実施形態に係る眼寸法測定装置の光学系について示す概略光学図である。なお、図1の同一の番号を付したものについては、特段の説明がない限り、同一の構成・機能を有するものとする。図2において、ダイクロイックミラー31は、光源1aから出射された光を第1測定光と第1参照光とに分割する。具体的には、光源1aから出射された光の1/2を透過し、他の1/2を反射する。また、ダイクロイックミラー31は、光源1bから出射された光を透過する。ダイクロイックミラー33は、光源1bから出射された光を第2測定光と第2参照光とに分割する役割を有し、具体的には、光源1bから出射された光の1/2を透過し、残る1/2を反射する。また、ダイクロイックミラー33は、光源1aから出射された光を透過する。
【0038】
ここで、ダイクロイックミラー31、33を透過した第1測定光と第2測定光は、被検眼に照射される。このとき、第1光源1aによって被検眼に照射された光は、被検眼角膜にて反射されると共に、被検眼眼底にて反射された後に被検眼から出射され、受光光学系20へと向かう。その後、その反射光は、ダイクロイックミラー33を通過して、ダイクロイックミラー31によって反射された後、さらに、集光レンズ26aによって受光素子27a上に集光される。また、第2光源1bによって被検眼に照射された光は、被検眼前眼部の各部位にて反射(散乱)される。その後、その反射光は、ダイクロイックミラー33によって反射され、さらに、集光レンズ26bによって受光素子27b上に集光される。
【0039】
ダイクロイックミラー31の反射方向には、第1参照光を反射するために配置された第1参照ミラー36が光軸方向に移動可能に配置されている。第1参照ミラー36は駆動部36aによって光軸方向に移動される。これにより、光源1aによる第1参照光の光路長が変化される。なお、第1参照ミラー36によって反射された第1参照光は、ダイクロイックミラー31を透過し、さらに、集光レンズ26aによって受光素子27a上に集光される。この場合、第1参照ミラー36の移動によって第1参照光の光路長が変化され、被検眼眼底に照射された第1測定光による光路長と、第1参照ミラー36によって反射された第1参照光による光路長と、が一致したとき、光源1aによる眼底反射光と参照光との干渉光が受光素子27aに受光される。
【0040】
また、ダイクロイックミラー33の反射方向には、第2参照光を反射するために配置された第2参照ミラー37が光軸方向に移動可能に配置されている。第2参照ミラー37は駆動部37aによって光軸方向に移動される。これにより、光源1bによる第2参照光の光路長が変化される。なお、第2参照ミラー37によって反射された第2参照光は、ダイクロイックミラー33を透過し、さらに、集光レンズ26bによって受光素子27b上に集光される。この場合、第2参照ミラー37の移動によって第2参照光の光路長が変化され、被検眼角膜に照射された第2測定光による光路長と、第2参照ミラー37によって反射された第2参照光による光路長と、が一致したとき、光源1bによる角膜反射光と参照光との干渉光が受光素子27bに受光される。また、同様に、第2参照ミラー37の移動によって第2参照光の光路長が変化され、水晶体前面に照射された第2測定光による光路長と、第2参照ミラー37によって反射された第2参照光による光路長と、が一致したとき、光源1bによる水晶体前面反射光と参照光との干渉光が受光素子27bに受光される。
【0041】
制御部80は、光源1aによる眼底反射光と参照光との干渉光が受光素子27aに受光されたときの第1参照ミラー36の移動位置に基づいて眼底位置を検出する。また、制御部80は、光源1bによる角膜反射光と参照光との干渉光が受光素子27bに受光されたときの参照ミラー37の移動位置に基づいて角膜位置を検出する。そして、制御部80は、検出された眼底と角膜の位置関係から眼軸長を算出する。また、制御部80は、光源1bによる水晶体前面反射光と参照光との干渉光が受光素子27bに受光されたときの参照ミラー37の移動位置に基づいて水晶体前面位置を検出し、検出された角膜と水晶体前面の位置関係から前房深度を測定する。また、同様に、角膜前後面の位置をそれぞれ検出することによって,角膜厚の算出も可能である。
【0042】
また、図3に示すような構成であってもよい。この場合、ハーフミラー35は、光源1aから出射された光を第1測定光と第1参照光とに分割すると共に、光源1bから出射された光を第2測定光と第2参照光とに分割する。また、第1参照ミラー36は全反射ミラー、第2参照ミラー37はダイクロイックミラーであって、光源1aによる第1参照光を透過し、光源1bによる第2参照光を反射する。図3の構成においても、図2と同様に、第1参照ミラー36及び第2参照ミラー37が移動されたときに受光素子27a,27bから出力される干渉信号に基づいて眼軸長、前房深度、等を算出できる。
【0043】
また、上記構成においては、参照光の光路長を変更する参照ミラーとして眼底検出用のミラー(参照ミラー36)と前眼部検出用のミラー(参照ミラー37)をそれぞれ設けるものとしたが、これに限るものではない。眼底位置と前眼部の各部位の位置を一つの参照ミラーの移動によって検出するようにしてもよい。例えば、図3において、参照ミラー37を除去した構成とし、眼底位置検出と前眼部の各部位の位置検出が可能な移動範囲において参照ミラー36を移動させるような構成であってもよい。
【0044】
また、上記構成においては、参照ミラーを直線的に移動させることにより参照光の光路長を変化させるものとしたが、これに限るものではなく、回転反射体による光遅延機構により参照光の光路長を変化させる構成であっても、本発明の適用は可能である(例えば、特開2005−160694号公報参照)。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係る眼寸法測定装置の光学系の概略構成図である。
【図2】第2実施形態に係る眼寸法測定装置の光学系について示す概略光学図である。
【図3】第3実施形態に係る眼寸法測定装置の光学系について示す概略光学図である。
【符号の説明】
【0046】
1a 第1光源
1b 第2光源
5 ビームスプリッタ
7 三角プリズム(光路長変更部材)
10 照射光学系
20 受光光学系
27a 第1受光素子
27b 第2受光素子
71 駆動部
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低コヒーレント光を出射する測定光源と、該測定光源から出射された光の一部の光路長を変化させるために移動可能に配置された光路長変更部材と、受光素子と、を有し、被検眼の前眼部及び眼底に低コヒーレント光を照射し、被検眼からの反射光を干渉光として前記受光素子で受光する干渉光学系と、
前記受光素子から出力された干渉信号に基づいて被検眼の眼軸長及び前眼部寸法を測定する演算制御部と、を備える眼寸法測定装置において、
前記測定光源は、
眼軸長測定用の750〜1100nmの内に中心波長を持つ第1の低コヒーレント光を出射する第1の光源と、
前眼部寸法測定用の400〜700nmの内に中心波長を持つ第2の低コヒーレント光を出射する第2の光源と、を含むことを特徴とする眼寸法測定装置。
【請求項2】
請求項1の眼寸法測定装置において、
前記干渉光学系には、前記第1及び第2の光源から出射された各光を分割する光分割部材を有し、
前記光路長変更部材は、該光分割部材によって分割された前記第1及び第2の光源から出射された各光の光路長を同時に変更可能であることを特徴とする眼寸法測定装置。
【請求項3】
請求項2の眼寸法測定装置において、
前記受光素子は、前記第1の光源による被検眼からの反射光を受光する第1の受光素子であって、前記第1の光源の発光波長に対応した分光感度波長を持つ第1の受光素子と、前記第2の光源による被検眼からの反射光を受光する第2の受光素子であって、前記第2の光源の発光波長に対応した分光感度波長を持つ第2の受光素子と、
を備えることを特徴とする眼寸法測定装置。
【請求項4】
請求項3の眼寸法測定装置において、
前記演算制御部は、前記第1の光源、前記第2の光源、を制御する演算制御部であって、
前記第1の光源と前記第2の光源とをそれぞれ点灯させると共に、前記光路長変更部材が移動された状態において、前記第1の受光素子から出力される干渉信号に基づいて被検眼の眼軸長を測定し、前記第2の受光素子から出力される干渉信号に基づいて被検眼の前眼部寸法を測定することを特徴とする眼寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−184050(P2010−184050A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30488(P2009−30488)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)