説明

眼底撮影装置

【課題】 眼底に対するフォーカス合わせをより精度良く行なうことのできる眼底撮影装置を提供する。
【解決手段】 眼底撮影装置は、被検者眼の眼底を照明する眼底照明光学系と、眼底に対して一対の光学的なスプリット指標を投影する光源を備え、駆動機構により光軸方向に移動可能に設けられたフォーカシングレンズによって眼底上でのスプリット指標の合致状態を調節するスプリット指標投影光学系と、眼底とスプリット指標が撮像される撮像素子を備える眼底撮影光学系と、撮像素子で撮像された眼底とスプリット指標が表示されるモニタとを有し、眼底撮影光学系で得られるスプリット指標の合致状態を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいてスプリット指標の合致状態を示す電子的なインジケータを生成し,眼底と共に前記モニタに表示させる制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼の眼底を撮影する眼底撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者眼の眼底を撮影する眼底撮像装置は、眼底にフォーカスを合わせるためのフォーカシングレンズを備え、フォーカシングレンズを光軸方向に移動させることで、眼底に対するフォーカス合わせを手動で行い、このような眼底のフォーカス状態を眼底に投影される光学的に一対のスプリット指標の合致状態で確認している(例えば、特許文献1参照)。
また、眼底に投影されたスプリット指標の検出結果に基づいて、モニタ上に擬似的な指標を電子的に表示させることで、フォーカス状態をより確認し易くした構成のものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002‐125933号公報
【特許文献2】国際公開2009‐093641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モニタに表示された光学的又は電子的なスプリット指標を用いて手動にてフォーカス状態を調節する場合には、スプリット指標の合致位置は、検者による見た目で判断されるため、個人差等による誤差が含まれる可能性が高くなる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、手動操作において、眼底に対するフォーカス合わせをより精度良く行なうことのできる眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検者眼の眼底を照明するための眼底照明光学系と、前記眼底に対して一対の光学的なスプリット指標を投影するための光源を備えると共に、駆動機構により光軸方向に移動可能に設けられたフォーカシングレンズによって前記眼底上での前記スプリット指標の合致状態が調節されるスプリット指標投影光学系と、前記眼底及び前記スプリット指標が撮像される撮像素子を備える眼底撮影光学系と、前記撮像素子で撮像された前記眼底及び前記スプリット指標が表示されるモニタと、を備える眼底撮影装置において、前記眼底撮影光学系にて得られる前記スプリット指標の合致状態を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果に基づいて前記スプリット指標の合致状態を示す電子的なインジケータを生成し,前記眼底と共に前記モニタに表示させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼底撮影装置は、一対の前記スプリット指標が合致されたとする前記撮像素子上の位置を基準位置として記憶する記憶手段を有し、前記検出手段は前記スプリット指標の少なくとも一方のスプリット指標が撮像される前記撮像素子上の位置と前記基準位置とを比較することにより前記合致状態を検出することを特徴とする。
(3) (2)の眼底撮影装置は、光源から出射された赤外光により照明された前眼部からの反射光を受光して前眼部観察像を得るための前眼部観察光学系を有し、前記制御手段は前眼部観察のために前記前眼部観察光学系によって得られる前記前眼部観察像を前記モニタに表示しているときは、前記眼底照明光学系による眼底照明を消した状態で,又は前記スプリット指標が検出可能な程度な光量で照明させた状態で前記検出手段からの検出結果を得ることを特徴とする。
(4) (3)の眼底撮影装置において、前記制御手段は前記モニタ上での前記スプリット指標の分離方向に合わせて前記インジケータの増減方向を制御することを特徴とする。
(5) (4)の眼底撮影装置において、前記制御手段は前記検出手段からの検出結果をフォーカス合わせに必要な前記フォーカシングレンズの移動量に対応付けることを特徴とする。
(6) (5)の眼底撮影装置において、前記制御手段は、前記検出手段による検出結果に基づき、前記スプリット指標の合致状態と合致していない状態とで、前記インジケータの表示状態を切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手動操作において、眼底に対するフォーカス合わせをより精度良く行なうことのできる眼底撮影装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は眼底カメラの外観構成の説明図である。眼底カメラは、基台1と、基台1に対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離、Z方向)に移動可能な移動台2と、移動台2の上面に設けられた操作パネル2aと、移動台2に対して3次元方向に移動可能に設けられ,後述する光学系が収納された撮影部(装置本体)3と、撮影部3を被検者眼に対して三次元(XYZ)方向に移動させる駆動部6と、被検者の顔を支持するために基台1に固設された顔支持ユニット5と、撮影部3の検者側に傾斜可能に設けられた表示部(モニタ)8と、から構成される。モニタ8には被検者眼の前眼部の観察像及び眼底の観察(撮影)像が表示される。また、本実施形態では、眼底の観察時に、フォーカス状態を検者に示すための光学的な(又は電子的な)スプリット指標と、スプリット指標を合致状態に導くためのインジケータとが眼底像上に重ねてモニタ8に表示されるようになっている。なお、スプリット指標及びインジケータについての詳細な説明は後述する。
【0010】
ここで、図2に操作パネル2aの構成の説明図を示す。操作パネル2aには、移動台2を基台1上で被検者眼Eに対してXZ方向に移動させるためのジョイスティック4と、モニタ8上に表示されたスプリット指標の合致状態をマニュアル操作で調節するためのフォーカスノブ9と、固視標の呈示パターンや呈示位置を、標準撮影又は眼底の周辺撮影などに応じて変更するための内部固視標呈示スイッチ11等の各種操作部材が設けられている。なお、ここでのフォーカスノブ9は右方向(矢印A方向)と左方向(矢印B方向)に回転可能に設けられている。また、このようなフォーカスノブ9の回転方向は後述するインジケータの表示方向に合わせて決定されており、検者がインジケータを確認しながらフォーカスノブ9を操作することで、後述するフォーカシングレンズ等の光学部材を光軸方向に移動させることができ、フォーカス状態を示すスプリット指標を簡単に精度良く合致させることができるようになっている。
【0011】
次に、撮影部3の内部に設けられた光学系及び制御系の構成について説明する。図3は眼底カメラの光学系及び制御系の概略構成図である。光学系は、照明光学系10、被検者眼の眼底の観察・撮影を行う眼底観察・撮影光学系30、被検者眼の眼底にスプリット指標(フォーカス指標)を投影するためのスプリット指標投影光学系40、被検者眼の前眼部にアライメント用指標光束を投影するアライメント指標投影光学系50、被検者眼の前眼部を撮影する前眼部観察光学系60、被検者眼の視線を誘導するための固視標呈示光学系70から構成されている。
【0012】
<照明光学系> 照明光学系10は、観察照明光学系と撮影照明光学系を有する。観察照明光学系は、近赤外光の光束を照射する赤外光源11、近赤外光を透過する赤外フィルタ12、コンデンサレンズ13、コンデンサレンズ13とリングスリット17との間に配置されたダイクロイックミラー16、リング状の開口を有するリングスリット17、リレーレンズ18、ミラー19、中心部に黒点を有する黒点板20、リレーレンズ21、孔あきミラー22、光路分岐部材としてのダイクロイックミラー(波長選択ミラー)24、対物レンズ25を有する。これにより、赤外光源11からの赤外の光束により被検者眼の眼底が照明される。一方、撮影照明光学系は、フラッシュランプ,LED等の可視光を照射する撮影光源14、コンデンサレンズ15、リングスリット17から孔あきミラー22までの光学系と対物レンズ25を備え、撮影光源14からの可視光束により被検者眼の眼底が照明される。
【0013】
なお、ダイクロイックミラー16は、赤外光を反射し可視光を透過する特性を持つ。また、ダイクロイックミラー24は、観察照明光学系の赤外光源からの波長を透過し、後述するアライメント指標投影光学系50からの赤外光を反射する波長特性を有する。また、ダイクロイックミラー24は、ソレノイドとカム等により構成される挿脱機構66により光路から挿脱可能に斜設されており、観察照明光学系を用いた眼底の観察時には光路に斜設され、撮影照明光学系による眼底の撮影時には光路から外されるようになっている。
【0014】
<眼底観察・撮影光学系> 眼底観察・撮影光学系30は、眼底観察光学系と眼底撮影光学系とを有する。眼底観察光学系は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口近傍に位置する撮影絞り31、光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ32、結像レンズ33、眼底撮影時には挿脱機構39により光路から挿脱可能な跳ね上げミラー34を備える。また、跳ね上げミラー34の反射方向の光路には、赤外光反射・可視光透過の特性を有するダイクロイックミラー37、リレーレンズ36、赤外域に感度を有する観察用の二次元撮像素子38が配置されており、赤外光源11で照明された眼底が撮影されるようになっている。一方、眼底撮影光学系は、対物レンズ25と,撮影絞り31から結像レンズ33までの光学系を眼底観察光学系と共用する。また、眼底撮影光学系は、可視域に感度を有する撮影用二次元撮像素子35を備え、可視光源14で照明された眼底が撮影される。なお、撮影絞り31は対物レンズ25に関して被検者眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置される。また、フォーカシングレンズ32は、モータを備える駆動機構49にて光軸方向に移動される。
【0015】
以上のような構成の照明光学系と眼底観察・撮影光学系によって、眼底の観察時に、赤外光源11を発した光束は、赤外フィルタ12からリレーレンズ21を経て、孔あきミラー22に達する。そして、孔あきミラー22で反射された光が、ダイクロイックミラー24を透過し、対物レンズ25により被検者眼Eの瞳孔付近で一旦収束した後、拡散して被検者眼Eの眼底を照明する。一方、眼底からの反射光は、対物レンズ25、ダイクロイックミラー24、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34、ダイクロイックミラー37、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像する。また、眼底の撮影時には、可視光源11で照明された眼底からの反射光が、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33を経て、二次元撮像素子35に結像される。
【0016】
<スプリット指標投影光学系> スプリット指標投影光学系40は、赤外光源41、スリット指標板42、スリット指標板42に取り付けられた2つの偏角プリズム43、投影レンズ47、照明光学系10の光路に斜設されたスポットミラー44を備える。スポットミラー44はレバー45の先端に固着されていて、通常は光軸に斜設されるが、撮影時にはロータリーソレノイド46の軸の回転で、光路外に退避させられる。なお、スポットミラー44は被検者眼Eの眼底と共役な位置に配置される。光源41、スリット指標板42、偏角プリズム43、投影レンズ47、スポットミラー44及びレバー45は、フォーカシングレンズ32と連動して駆動機構49により光軸方向に移動される。
【0017】
また、スプリット指標投影光学系40のスリット指標板42の光束は、偏角プリズム43及び投影レンズ47を介してスポットミラー44により反射された後、リレーレンズ21、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を経て被検者眼Eの眼底に投影される。眼底のフォーカスが合っていないとき、スリット指標板42の指標像は分離され、フォーカスが合っているときに一致(合致)して投影される。そして、被検者眼Eの眼底上に投影されたスプリット指標像(後述するスプリット指標像S1,S2)は、眼底観察用の撮像素子38によって眼底と共に撮像される。
【0018】
<アライメント指標投影光学系> アライメント指標投影光学系50は、撮影光軸L1を中心とした同心円上に複数個の赤外光源が配置されており、撮影光軸L1を通る垂直平面を挟んで左右対称に配置された赤外光源51とコリメーティングレンズ52を持つ第1指標投影光学系(0度、及び180)と、第1指標投影光学系とは異なる位置に配置され複数の赤外光源53を持つ第2指標投影光学系とを備える。この場合、第1指標投影光学系は被検者眼Eの角膜に無限遠の指標を左右方向から投影し、第2指標投影光学系は被検者眼Eの角膜に有限遠の指標を上下方向もしくな斜め方向から投影する。
【0019】
<前眼部観察光学系> 前眼部観察光学系60は、ダイクロイックミラー24の反射側に配置され、二次元撮像素子65によって前眼部照明光源58で照明された前眼部とアライメント指標が撮像される。なお、二次元撮像素子65で撮像された前眼部像からは被検者眼の瞳孔形状が得られる。また、アライメント指標投影光学系50が持つ光源の点灯により、アライメント用光束による角膜反射光が二次元撮像素子65で検出される。二次元撮像素子65の出力が制御部80に入力されると、モニタ8には前眼部像AEが表示される(図4参照)。なお、前眼部観察光学系60は、被検者眼に対する装置本体のアライメント状態を検出する役割を兼用している。
【0020】
<固視標呈示光学系> 固視標呈示光学系70は、図示を略す赤色の可視光源と、複数の開口部が形成された遮光版は表示制御で開口部の形成位置が切換えられる液晶ディスプレイ等の固視標切換部材とを備え、固視標切換部材の遮光版の開口部が可視光源の前に選択的に配置されることで、光軸L2に対して異なる位置に固視標が呈示されるようになっている。これにより、眼底中心部を撮影する標準撮影と眼底周辺部を撮影する周辺撮影とで固視標の呈示位置が変更される。
【0021】
<制御系> 制御部80には、二次元撮像素子35、38、65、ジョイスティック4、駆動部6、モニタ8、フォーカスノブ9、挿脱機構39、駆動機構49、挿脱機構66、記憶手段としてのメモリ85、各光源等が接続されている。なお、メモリ85には、インジケータを用いたフォーカス調節に必要となる様々な情報(フォーカス用情報)が予め記憶されている。フォーカス用情報としては、例えば、スプリット指標が合致されたとする撮像素子38上の位置情報(以下、基準位置と記す)や、スプリット指標の分離量と駆動機構49の駆動量(フォーカシングレンズ32の位置)との対応関係を決めるための情報、スプリット指標の分離量とインジケータの表示状態との関係を定める情報(又は駆動機構49の駆動量とインジケータの表示状態との関係を定めるための情報)等が記憶されている。なお、スプリット指標が合致されたとする基準位置は、例えば、正視眼に対して撮影光学系が適正なアライメント、及びフォーカスが行われた状態にあるときに、設計情報が既知である各光学系を考慮して一対のスプリット指標が合致するとされる撮像素子38上の位置が基準位置として記憶されていればよい。
【0022】
また、制御部80は各二次元撮像素子35、38、65からの入力信号によりモニタ8に前眼部像又は眼底観察像(撮影像)を表示させる制御を行うと共に、各種検出処理を行う。例えば、制御部80は二次元撮像素子65で撮像された前眼部画像からアライメント指標を検出処理すると共に、瞳孔形状を検出する(なお、瞳孔形状からその中心位置(瞳孔中心)を求めるようにしても良い)。また、制御部80は、撮像素子65の撮影信号に基づいて被検者眼に対する装置本体3のアライメント偏位量を検出する。また、制御部80は、被検者眼Eの前眼部像AEが表示されたモニタ8の画面上(図4参照)において、レチクルLTを電子的に形成して表示させると共に、検出されたアライメント偏位量に応じて表示位置が移動されるアライメント指標A1を電子的に形成して合成表示させる。
【0023】
また、制御部80は、二次元撮像素子38で撮像されたスプリット指標像と眼底画像をモニタ8に表示させると共に、スプリット指標の合致状態(分離状態)に基づき生成した電子的なインジケータの表示制御を行う。更に、制御部80は、メモリ85に記憶されているフォーカス情報に基づき、オートフォーカスの際には、撮像素子38で得られるスプリット指標像の分離量から駆動機構49を駆動させ、スプリット指標が合致するようにフォーカシングレンズ32及びスポットミラー44(レバー45を含む)を光軸上で一体的に移動させる制御を行う。そして、スプリット指標の分離量に応じたインジケータ状態をモニタ8に表示させるようにする。一方、マニュアル操作(手動操作)の場合には、フォーカスノブ9の回転操作によって駆動機構49が駆動されることで、フォーカシングレンズ32及びスポットミラー44が光軸上で移動される。これにより、モニタ8に表示されるスプリット指標の表示位置(分離状態)が変わるので、制御部80は撮像素子38にて検出されるスプリット指標像の分離量を随時検出することで、その分離量に応じたインジケータ状態をモニタ8に表示させる制御を繰り返し行う。なお、このような制御は分離された一対のスプリット指標が両方とも検出されている必要はなく、少なくとも一方のスプリット指標の分離位置が撮像素子38で検出されていれば、予め求められている基準位置との関係(フォーカス状態)が把握できる。
【0024】
次に、以上のような構成を備える眼底カメラの動作を説明する。ここでは、検者による手動でフォーカス合わせを行うマニュアルフォーカスモードが設定されている場合を例に挙げて説明する。また、ここでは、オートアライメントが設定され、固視標の呈示位置が、眼底の中央位置(後極部位)が撮影するように設定されているとする。
【0025】
例えば、被検者眼が白内障等で混濁している場合等、オートフォーカスが行えない場合には、マニュアル操作でのフォーカス調整が行われる。しかし、従来のマニュアル操作によるフォーカス調整では、検者の観察によって一対のスプリット指標が合致しているか否かを判断する。しかし、スプリット指標の重なり程度(合致程度)の判断は、検者によってばらつく可能性が高い。そこで、本実施形態ではスプリット指標の合致状態を客観的に示すインジケータを用いることで、スプリット指標が合致しているか否かを一義的に判断できるようにする。このようにすると、個人差によらず、精度良くフォーカス調節ができるようになる。
【0026】
まず、被検者の顔を顔支持ユニット5で支持した状態で、ジョイスティック4の操作で撮影部3が被検者眼Eに近づくように移動台2を移動させる。そして、固視標呈示光学系70を点灯させて被検者眼を固視させる。また、検者はジョイスティック4の操作で、前眼部像AEがモニタ8に表示されるように、撮影部3を三次元方向に移動させる。前眼部像AEがモニタ8に現れるようになると、アライメント指標像もモニタ8に表示されるようになる。
【0027】
ここで、図4にモニタ8に表示された前眼部像AEの例を示す。なお、図4(a)にアライメントが合っていない状態、図4(b)にアライメントが合っているときの状態が示されている。被検者眼の角膜上に投影されたアライメント指標像が撮像素子65で検出されると、制御部80は、撮像素子65からの撮像信号に基づいて被検者眼に対する撮影部3のアライメント偏位量を検出する。具体的には、制御部80は、リング状に投影された指標像Ma〜Mhによって形成されるリング形状の中心のXY座標を略角膜頂点(アライメント基準位置)として検出してアライメント指標A1を表示させる、また、予め撮像素子65上に設定されたXY方向の基準となる位置(例えば、撮像素子65の撮像面と撮影光軸L1との交点)にレチクルLTを表示させるとともに、アライメント指標A1とレチクルLTとの偏位量を求める。そして、無限遠の指標像Ma,Meの間隔と、有限遠の指標像Mh,Mfの間隔とを比較することでZ方向のアライメント偏位量を求める。
【0028】
本実施形態では、制御部80は、レチクルLTとアライメント指標A1が合致するように、三次元方向のアライメント偏位量が所定のアライメント許容範囲を満たすように撮影部3を移動させ、三次元方向のアライメントの合致状態を判定する。なお、差動距離方向のアライメントは、モニタ8に表示されるインジケータGの本数の増減により確認することができる。そして、検者は、図4(b)に示すように、インジケータGの本数が1本となるようにジョイスティック4の操作で作動距離方向の位置合わせを行う。
【0029】
以上のようにアライメント状態が完了したら、制御部80は眼底に対するフォーカス調節を行う。ここで、図5にモニタ8に表示される眼底像Fの例を示す。なお、図5(a)にフォーカスが合致していない状態、図5(b)にフォーカスが合致した状態が示されている。なお、理解を助けるために、撮像素子上の所定位置に設定されている基準位置に対応したモニタ8上の表示位置を基準位置Dとして便宜上形成しておく。
【0030】
図5に示すように、モニタ8上に、撮像素子38で撮像された眼底像Fとスプリット指標S1,S2が表示されると、制御部80は、前述した基準位置Dに対する各スプリット指標S1,S2の基準位置Dからのずれ量(或いは分離量)を撮像素子38からの信号により求める(検出する)。なお、本実施形態ではスプリット指標S1,S2はモニタ8の画面上で左右方向に移動(分離)されるようになっている。また、制御部80は、2つのスプリット指標S1,S2を移動方向で見たときの表示位置関係から(例えば、設定された基準位置Dに対して各スプリット指標S1,S2が左右どちらに表示されているかを検出することで)、フォーカシングレンズ32がフォーカスの合致位置に対してプラス方向にあるのか、マイナス方向にあるのかを求める。
【0031】
例えば、図5(a)に示すように、スプリット指標S1が基準位置Dに対して紙面左側(スプリット指標S2が右側)に表示されている場合には、フォーカシングレンズ32が適正なフォーカス位置よりプラス側にあるとする。一方、スプリット視標S1が基準位置Dに対して右側(スプリット指標S2が左側)に表示されている場合には、フォーカシングレンズ32が適正なフォーカス位置よりマイナス側にあるとする。
【0032】
次に、制御部80は、モニタ8上に表示させる電子的なインジケータI(I1,I2)の制御を行う。インジケータIはフォーカスが合っていることを示すインジケータI1と、フォーカスのずれ量、ずれ方向を定量的に示すインジケータI2の組合せからなる。本実施形態では、フォーカスのずれ量、及びずれ方向に応じて、インジケータI1を中心としてインジケータI2の表示本数を左右方向に増減させる表示制御を行っている。なお、本実施形態では、スプリット指標が合致したときのライン上(縦ライン)であって、レバー45の投影像45a上に縦長の矩形状のインジケータI1が形成されるものとしている。
【0033】
ここで、図6にインジケータIの拡大図を示す。例えば、フォーカスが適正とされておらず、フォーカシングレンズ32がプラス側にある状態では、基準位置Dからのスプリット指標のずれ量(スプリット指標の分離量)に応じて、右方向に1本乃至複数本のインジケータI2を表示させる。一方、フォーカシングレンズ32がマイナス側にある場合には、基準位置Dからのスプリット指標のずれ量に応じて左方向に1本乃至複数本のインジケータI2が表示されるようにする。これにより、検者はインジケータを用いてスプリット指標の分離状態を定量的に確認できるようになる。
【0034】
なお、本実施形態では、スプリット指標S1,S2が分離状態にあるときのインジケータI2の表示本数は、基準位置Dからのスプリット指標S1,S2の表示位置までの距離(基準位置Dに対する指標のずれ量)に応じて決定されるようになっている。つまり、基準位置Dに対してスプリット指標S1(S2)が離れるに従って、インジケータI2の表示本数を増加する表示制御が行われる。なお、ここでは、インジケータI2の最大の表示本数は4本であるとする。
【0035】
なお、このような、スプリット指標の分離量の算出方法は、スプリット指標S1,S2の検知状態に応じて使い分けられても良い。例えば、撮像素子38で2つのスプリット指標S1,S2が検知される場合には、2つのスプリット指標の中心間距離に基づき分離量が計算されるようにする。一方、スプリット指標S1,S2の一方のみが検知される場合には、上述したように、基準位置Dから検知されている側のスプリット指標の表示位置までの距離に応じて分離量が求められるようにしても良い。
【0036】
検者はモニタ8に表示されるインジケータを見ながらインジケータI1に対するインジケータI2の表示方向に対応させて、インジケータI2の表示がなくなるように(インジケータI1のみの表示となるように)フォーカスノブ9を回転させる。本実施形態では、フォーカスノブ9が時計回り(図2に示す矢印A方向)に回転されると、フォーカシングレンズ32がプラス側へ移動され、それに応じてスポットミラー44がフォーカシングレンズ32と一体的に光軸方向に移動する。フォーカスノブ9が反時計回り(矢印B方向)に回転されると、フォーカシングレンズ32がマイナス側へと移動され、それに応じてスポットミラー44がフォーカシングレンズ32と一体的に光軸方向に移動する。
このようなインジケータを用いることにより、フォーカス状態を客観的に判断することができ、検者によらず好適なフォーカス状態が得られることとなる。
【0037】
なお、スプリット指標S1,S2が合致した状態で表示されるインジケータI1の表示状態(形状、色等)と、合致していない状態で表示されるインジケータI2との表示状態を変えると、検者にとって合致状態がより視覚的に分かり易くなる。例えば、インジケータI1に対してインジケータI2の大きさや色を変えることにより、インジケータの判別をより行い易くすることができる。
【0038】
なお、本実施形態ではスプリット指標S1,S2がモニタ8の画面上で左右方向に移動される例を説明したが、これに限るものではなく、スプリット指標の分離方向に合わせたインジケータの増減の表示制御が行われていれば、より好ましい。例えば、スプリット指標S1,S2の分離状態がモニタ8の画面上で上下方向に移動される場合には、上述したインジケータI1を90°回転させて横長の矩形状のインジケータ表示とし、インジケータI2の表示もそれに合わせてモニタ8上で上下方向に増減されるようにする。
【0039】
また、眼底観察のために赤外光が照明されている状態では、スプリット指標を撮像素子にて検出し難い場合がある。このような場合には、前眼部観察のためにモニタ8に前眼部観察像が表示されているときに、始めから眼底照明光学系による眼底照明を消した状態で(或いは、スプリット指標像が検出可能な程度の眼底の照明状態で)眼底にスプリット指標を投影し、撮像素子38によりスプリット指標像の分離量(基準位置からのずれ量)を前眼部観察時に予め検出しておけばよい。なお、このような検出は、前眼部におけるアライメントが完了し、モニタ8に表示される観察画像が前眼部から眼底に移るタイミングで行うことが好ましい。
【0040】
制御部80は前眼部観察時に検出したスプリット指標の分離量(検出結果)に基づいて、眼底観察画面に切換えた後に表示される眼底観察画面にインジケータの表示を行えばよい。また同時に検出結果とフォーカス合わせに必要なフォーカシングレンズ32の移動量とを予め対応付けておき、眼底観察時にはフォーカシングレンズの移動(駆動機構49の駆動量)に基づいてインジケータの表示を適宜変更すればよい。このような制御を行うことにより、観察用の照明光によって眼底が明るくスプリット指標が検出され難い場合であっても、手動操作により好適にフォーカス合わせを行うことが可能である。
【0041】
なお、上記では検者によるマニュアル操作にてフォーカス調節を行う例が示されているが、例えば、オートフォーカスにてフォーカス調節を行う場合にも、モニタ8上に表示される光学的なスプリット指標等の表示状態が確認しにくくなっている可能性もある。この場合にも、上述したようなインジケータが表示されることで、検者はスプリット指標の合致状態を確認し易くなる。
【0042】
また、本実施形態ではインジケータがモニタの眼底上に表示される例が示されているが、これに限られるものではない。モニタ8に表示された眼底の周辺に(眼底像に重ねずに)にインジケータが表示されるようにしても良い。なお、この場合にも、インジケータの増減方向とフォーカスノブの操作方向とを合わせることで、検者はインジケータを用いて容易にフォーカス調節を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】眼底カメラの外観構成の説明図である。
【図2】操作パネルの構成の説明図である。
【図3】眼底カメラの光学系及び制御系の概略構成図である。
【図4】モニタに表示される前眼部像の例である。
【図5】モニタに表示される眼底の例である。
【図6】インジケータの拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
8 モニタ
9 フォーカスノブ
10 照明光学系
11 赤外光源
30 眼底観察・撮影光学系
35、38、65 二次元撮像素子
40 スプリット指標投影光学系
41 光源
49 駆動機構
58 前眼部照明光源
60 前眼部観察光学系
80 制御部
85 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者眼の眼底を照明するための眼底照明光学系と、
前記眼底に対して一対の光学的なスプリット指標を投影するための光源を備えると共に、駆動機構により光軸方向に移動可能に設けられたフォーカシングレンズによって前記眼底上での前記スプリット指標の合致状態が調節されるスプリット指標投影光学系と、
前記眼底及び前記スプリット指標が撮像される撮像素子を備える眼底撮影光学系と、
前記撮像素子で撮像された前記眼底及び前記スプリット指標が表示されるモニタと、
を備える眼底撮影装置において、
前記眼底撮影光学系にて得られる前記スプリット指標の合致状態を検出する検出手段と、
該検出手段の検出結果に基づいて前記スプリット指標の合致状態を示す電子的なインジケータを生成し,前記眼底と共に前記モニタに表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
請求項1の眼底撮影装置は、一対の前記スプリット指標が合致されたとする前記撮像素子上の位置を基準位置として記憶する記憶手段を有し、前記検出手段は前記スプリット指標の少なくとも一方のスプリット指標が撮像される前記撮像素子上の位置と前記基準位置とを比較することにより前記合致状態を検出することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項3】
請求項2の眼底撮影装置は、光源から出射された赤外光により照明された前眼部からの反射光を受光して前眼部観察像を得るための前眼部観察光学系を有し、
前記制御手段は前眼部観察のために前記前眼部観察光学系によって得られる前記前眼部観察像を前記モニタに表示しているときは、前記眼底照明光学系による眼底照明を消した状態で,又は前記スプリット指標が検出可能な程度な光量で照明させた状態で前記検出手段からの検出結果を得ることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項4】
請求項3の眼底撮影装置において、前記制御手段は前記モニタ上での前記スプリット指標の分離方向に合わせて前記インジケータの増減方向を制御することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項5】
請求項4の眼底撮影装置において、前記制御手段は前記検出手段からの検出結果をフォーカス合わせに必要な前記フォーカシングレンズの移動量に対応付けることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項6】
請求項5の眼底撮影装置において、
前記制御手段は、前記検出手段による検出結果に基づき、前記スプリット指標の合致状態と合致していない状態とで、前記インジケータの表示状態を切換えることを特徴とする眼底撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183185(P2012−183185A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48172(P2011−48172)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)