説明

眼用ハイドロゲルナノコンポジット

【課題】材料のモジュラスを相当に変えることなしには、ハイドロゲルの屈折率を制御することは困難である。伝統的に、ハイドロゲルの屈折率は、異なるポリマー濃度を用いることによって変えられることが多い。しかし、これは、材料のモジュラスも変える結果になる。したがって、材料の屈折率とモジュラスをほとんど独立に制御できる代替物が依然として求められている。
【解決手段】本発明の化学的に可逆なレドックスハイドロゲル系は、架橋剤と共にモノマーを重合することにより生成するコポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、係属中の米国特許出願第10/706081号の一部継続出願である。この出願はまた、米国特許仮出願第499887号および米国特許仮出願第564592号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ナノ粒子もしくはナノ相を含むハイドロゲル系に関する。特に、本発明のハイドロゲルは、酸化状態、あるいは光の振動数と強度、あるいは機械的応力の変化がトリガーとなってハイドロゲルを生成し得る、ナノ粒子を含むコポリマー溶液からなる。例えば、コポリマー溶液は酸化されてハイドロゲルを生成し得る;また、ハイドロゲルは還元されてコポリマー溶液となり得る。光付加化学反応を用いて、あるいは、機械的応力に感応するポリマー(剪断による粘度低下を起こす物理的ゲル)を用いてもまた、可逆性は実現され得る。上の方法の原理はまた、コポリマーの希薄溶液から可逆的ナノゲルを生成させるためにも用いられ得る。ハイドロゲルをそれに埋め込まれたナノ粒子を含めて生成させると、その屈折率およびモジュラスをそれぞれナノ粒子の量とハイドロゲルのポリマー濃度を変えることにより制御できるナノコンポジットが生成する。
【背景技術】
【0003】
白内障の混濁部分は、通常は透明な眼の水晶体の曇った部分あるいは混濁した部分である。混濁度が増すと、光線が水晶体を通過し、網膜(眼の後ろの内側を覆っている感光性組織)に焦点を合わせることが妨げられる。早期の水晶体の変化または混濁は視力に不自由を生じないかもしれないが、水晶体が変化し続けると、かすみ目、光と輝きに対する過敏、近視の進行、および/または、どちらかの目における乱視を含めて、いくつかの特殊な症状が現れることがある。
【0004】
白内障の混濁部分が一旦できると、それらを消失させる治療薬、点眼液、訓練、または眼鏡は全くない。人が日々の正常な活動を行うのに十分なだけ見ることができなければ、白内障の混濁部分を除去し正常な視力を回復するために手術が必要である。
【0005】
最新の白内障混濁部分摘出手術では、混濁部分は水晶体嚢(lens capsule)の開口部を通して水晶体から取り除かれる。手術用顕微鏡を用いて、目、次いて、水晶体嚢が小さく切開される。マイクロ手術器具を用いて、最初に、曇った水晶体を細かくし、次に、目から吸引する。水晶体の裏側の膜(後嚢と呼ばれる)は、もとのまま残される。この場合、予め作製された永続的な透明プラスチック眼内レンズ(intraocular lens、IOL)(1980年代初期に普及した)移植片に置き換えることにより、通常遠くの視力だけ、視覚系の焦点調節力は回復する。
【0006】
IOLが進歩する以前には、白内障患者は、手術の後、「コークボトル(coke bottle)」の厚い眼鏡またはコンタクトレンズを付けることを余儀なくされた。残念ながら、視力は、厚い眼鏡によっては大してよくならないし、厚いコンタクトレンズはそれ程よい選択肢でない。IOLの発明はこの問題を解決した。
【0007】
眼内レンズを、2つの主なグループ:ノン-フォールダブル(non-foldable)とフォールダブル:に分けることができる。最初の眼内レンズは、硬質プラスチック(ノン-フォールダブル)材料から作製されていて、そのために、レンズの直径と同じ大きさの切開によってのみ、目に導入することができた。白内障手術における目の外傷を減らすために、手術の処理が実施される切開はできるだけ小さくすることが望ましい。フォールダブルレンズはアクリルまたはシリコーン製であり、それを丸め、とても小さいチューブ内に入れることができる。このチューブは、長さが3.2mm未満の非常に小さい切開を通して挿入される。一旦目に入ると、IOLは徐々に広がる。
【0008】
白内障の手術が実施される前に、挿入されるIOLに対する適切な焦点調節力を求めるために、患者の目の角膜曲率と眼軸長が測定される。複雑な式を用いてレンズの処方矯正倍率を計算すると、IOLは厚い眼鏡の必要性に取って代わるだけでなく、それはまた、目に存在する屈折異常を矯正できる。
【0009】
様々な焦点距離の標準的なIOLが入手可能であるが、これらの距離はレンズにより決まっている。このため、目の天然の水晶体と違って、標準的なIOLは、焦点を変化させることができない。したがって、標準的なIOLに頼らざるを得ない患者は手術後に調節能力を失う。IOLは通常、適当な距離が見えるように選択される。しかし、遠くがよく見えると、近くがぼやけるかもしれず、患者は、白内障の手術の後、読書用眼鏡を使う必要があり得る。
【0010】
この問題を改善するために、2焦点および多焦点IOLが開発された。それらは、読書用眼鏡の必要性を減らすか、あるいは不要にさえするが、これらのIOLは、コントラスト感度の低下と、光源の回りのハローの主観的経験とを生じる。
【0011】
このように、目の天然の水晶体に似た動きをするので、白内障の手術後に読書用眼鏡を不要にすることができる材料が求められている。このような材料は、目の中でその形状を変えることにより、その屈折力を変えることができなければならない。白内障の手術においてIOLとして使用されるだけでなく、このような材料はまた、老眼(加齢による目の調節力の生理的低下)を含めて、他の屈折異常を治療するためにも使用され得るであろう。
【0012】
注入可能な、in situで生成するゲルには、医療においていくつかの可能な使用法(例えば、眼内レンズに、代用硝子体として、および薬物デリバリデバイスとして)がある。一般に、in situで生成するゲルは、他のやり方で予め作製することは困難であろう様々な形状に合致しながら、低侵襲で、容易に送り込むことができで、元々あるかまたは可能なキャビティを満たすことができるという利点がある。ゲル化の機構は、物理的(温度変化、水素結合、疎水相互作用)または化学的(イオン結合もしくは共有結合の生成)であり得る。通常、物理的架橋は化学的架橋より不安定である。in situなゲル化は、ラジカル重合により共有結合した網目を生成し、熱、化学開始剤、または光子の吸収により開始され得る。しかし、ラジカル重合は定量的であることがまれであり、得られるゲルは通常、相当量の未反応モノマー、開始剤、および促進剤を含んでおり、これらの何れかあるいは全てに毒性があり、反応それ自体が非常に発熱的であり得る。目の用途では特に要求が厳しく、その要求には、室温に非常に近くて狭い反応温度範囲、光学的に透明な材料、非常に低い化学的毒性および光毒性、ならびに、湿潤で酸素が供給され、また光が豊富な環境における長期の安定性が含まれる。in situでゲルを生成させる本発明の目的には、新しい代用硝子体と注入可能な眼内レンズ材料を開発することがある。
【0013】
視覚系、主に水晶体の屈折力が自動的に調節されて網膜上に集光させる動的な過程が、調節である。この能力は、通常、人生の30歳代までに大幅に低下し、水晶体の容積と弾性の進行性の変化により人生の60歳代までにほぼ完全に失われて、腕の長さより近い対象に焦点を合わせることができなくなる(老眼と呼ばれる状態)。嚢(capsular bag)の内容物を吸い出し、それを適当な容積の適切な材料で満たすことによってもまた、老眼患者の調節力が回復する可能性がある。小さな開口部を通して水晶体嚢を空にする手術手順の開発と、嚢内に再び満たされる適切な材料の同定が探求されている。このような材料は、調節力の回復、現在半硬質の代用水晶体に要求されるものより小さい角強膜切開、眼内レンズの生理学的位置付けの改善、および、2次的混濁速度の低下を含めて、いくつかの利点をもつことが好ましい。
【0014】
嚢内でゲルを生成する物理的および化学的架橋が探求されている。例えば、Kessler(Experiments in refilling the lens. Arch. Ophthalmol. 71:412-417, 1964)は、Carquilleの浸漬オイル、シリコーン流体、および、ダンマル(damar)ガムを用いて、物理的に架橋されたゲルをウサギの目に生成させた。Parel等は化学的架橋によるゲルの生成を普及させ(Phaco-Ersatz: Cataract surgery designed to preserve accommodation. Graefes Arch. Clin. Exp. Ophthalmol. 224:165-173, 1986)、この場合、室温で数時間以内に通常硬化される、フィラーを含まないジビニルメチルシクロシロキサンのエラストマーが利用された。Nishi等(Accommodation amplitude after lens refilling with injectable silicone by sealing the capsule with a plug in primates. Arch. Ophthalmol. 116:1358-1361, 1998)は、架橋剤としてハイドロジェンポリシロキサンを含むポリメチルジシロキサンを用いた。他の研究者は、モノマーを含む混合物を注入し、in situで光重合してゲルを生成させる嚢内(endocapsular)重合を報告した。Jacqueline等(Injectable intraocular lens materials based upon hydrogels, Biomacromolecules 2:628-634, 2001)は、最近、アクリルアミド系光開始剤を用いる、アクリレート変性N-ビニルピロリドン/ビニルアルコールコポリマーの嚢内での光重合を報告し、いくつかの組成物の寸法が安定であり光学的に透明であることを確認した。しかし、未反応モノマーの毒性と重合反応の発熱的性質のためにこの系は実用的でない。さらに、上の全ての場合において、再充填材料の機械的性質は研究されなかった。これらの化学的に架橋されたゲルの何れも可逆的でないので、水晶体の回復の見込みは全くやった結果次第である。
【0015】
以前の我々の仕事において、我々は、典型的なマクロモノマーとしてポリエチレングリコールアクリレートを合成し、特性を評価し、それを用いてゲル化が同時に起こる嚢内重合を実施した。重合の間の転化の度合いは、多くのフリーラジカル反応で通常そうであるように、約95%であった。残留モノマーの毒性の問題に対処するために、我々は、構造と毒性の関係を定量的に探求し、以下のことを確認した:1)一般に、アクリレートはメタクリレートより毒性が強かった;2)どちらの種類においても、疎水性モノマーは親水性モノマーより毒性が強かった;また3)毒性の作用は、恐らく、残留モノマーが脂質2重層を横切り、次に、マイケル付加反応により細胞内タンパク質およびDNAと反応し得ることによっていた。我々はまた、親水性ハイドロゲルを含むアクリレートまたはメタクリレートが、組織培養培地において加水分解に対して不安定であることも認めた。眼科学におけるポリマーの使用に関する我々の理解を深める新しい技術を、特に、それらが調節力と老眼に影響する場合に、確立し発展させることが我々の継続的な意図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願第10/706081号
【特許文献2】米国特許仮出願第499887号
【特許文献3】米国特許仮出願第564592号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Kessler, Experiments in refilling the lens. Arch. Ophthalmol. 71:412-417, 1964
【非特許文献2】Parel et al., Phaco-Ersatz: Cataract surgery designed to preserve accommodation. Graefes Arch. Clin. Exp. Ophthalmol. 224:165-173, 1986
【非特許文献3】Nishi et al., Accommodation amplitude after lens refilling with injectable silicone by sealing the capsule with a plug in primates. Arch. Ophthalmol. 116:1358-1361, 1998
【非特許文献4】Jacqueline et al., Injectable intraocular lens materials based upon hydrogels, Biomacromolecules 2:628-634, 2001
【非特許文献5】Gupta et al., Laser Raman spectroscopy of polyacrylamide. J. Polym. Sci., Polym. Phys. Edn. 19:353-360, 1981
【非特許文献6】Hisano et al., Entrapment of islets into reversible disulfide hydrogels. J Biomed Mater Res. 40:115-123, 1998
【非特許文献7】Ellman, Arch. Biochem. Biophys., 1959, 82:70-77
【非特許文献8】Mori et al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125:3712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、材料のモジュラスを相当に変えることなしには、ハイドロゲルの屈折率を制御することは困難である。伝統的に、ハイドロゲルの屈折率は、異なるポリマー濃度を用いることによって変えられることが多い。しかし、これは、材料のモジュラスも変える結果になる。したがって、材料の屈折率とモジュラスをほとんど独立に制御できる代替物が依然として求められている。
【0019】
一実施形態において、本発明は、酸化/還元によって、あるいは、波長の異なる光の照射によって、あるいは、物理的ゲルの場合には剪断を加えることによって、ゾル-ゲル相の間で可逆的に変換される可逆ハイドロゲル系を提供する。ハイドロゲルを逆に変化させて溶液にすることができる;また、その溶液を、ハイドロゲルとなるように、適当なトリガーにより変換することができる。こうして、その系は、ハイドロゲルと溶液の間で可逆的に変換される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の化学的に可逆なレドックスハイドロゲル系は、架橋剤と共にモノマーを重合することにより生成するコポリマーを含む。架橋剤は、コポリマー分子内にジスルフィド結合を提供して、ハイドロゲルを生成する。ハイドロゲルが還元されると、ジスルフィド結合は壊されて可溶性コポリマー溶液を生じる。他方、コポリマー溶液は酸化されて(酸素添加反応、ジスルフィド交換反応、あるいは、リボフラビンおよび酸素の存在の下での光酸化による)、ジスルフィド結合を生成してハイドロゲルを再び生成することができる。酸化は、約7.0から約7.4の生理的なpHで実施され得る。ゲルはまた、2+2光付加を受ける感光性の基、あるいは、チオールと光化学的に反応する(例えば、チオール-アクリルアミド反応)基を組み入れることによっても生成され得る。疎水性ハイドロゲルまたは会合性ハイドロゲルもまた、剪断力に対して、このような可逆性を示す、すなわち、それらは、剪断を受けた時は溶液のように、そして、剪断力がなくなるかまたは特定の降伏応力より小さくなると、ゲルとして振舞う。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】可逆ハイドロゲル系を製造する一般的方法を示す。
【図2】ポリアクリルアミド/BAC可逆ハイドロゲル系の調製の概略を示す。
【図3】ABSH2(連続線)、ABSH4(----)、およびABSH6(......)ポリマーの、HPLC-GPCトリプル検出器クロマトグラムを示す。信号は、a)RI、b)粘度、およびc)光散乱検出器による。
【図4】a)ゲル化前のABSH6の4%(w/v)水溶液;b)ゲル化後のABSH6の4%(w/v)水溶液;およびc)ポリアクリルアミドの5%(w/v)水溶液(BACなしで、同じ実験条件を用いて調製された);のラマンスペクトルを示す。挿入図は、a)が差し引かれた後のb)およびc)の拡大部分を示している。
【図5】a)アルカリpHでの空気酸化;およびb)チオールジスルフィド交換反応による、チオール含有ABSHポリマーの酸化による再ゲル化を示す。
【図6】嚢内でハイドロゲルを生成させる手術手順の概略:a)角膜の穿孔と虹彩の後退と、その後の水晶体内容物の除去;b)空の水晶体嚢への可逆ハイドロゲル材料溶液の再充填;およびc)可逆ハイドロゲル材料のin situでの再ゲル化;を示す。
【図7】a)ブタの水晶体嚢内の;b)水晶体嚢から分離された;また、c)モールド内で調製された;10w/v %のABSH4の再ゲル化試料を示す。
【図8】a)強膜、RPE、および角膜の切除の後に観察された、ヒトの死体の目における代用硝子体;およびb)視軸に沿って切断された目;を示す。
【図9】-SH基の間の分子内架橋による、ABSHポリマーからのナノ粒子の生成を概略的に示す。
【図10】ジスルフィド含有ナノゲルおよびブタ水晶体クリスタリンタンパク質の屈折率の値を示す。
【図11】合成ポリマーとクリスタリンの粘弾性を示す。
【図12】a)付加、およびb)酸性縮合反応による、シリカナノ粒子の調製を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別の実施形態において、本発明は、ジスルフィド架橋を含むナノゲル(ハイドロゲルナノ粒子)の製造方法を提供する。好ましくは、ナノゲルは、酸化/還元によって、あるいは、異なる波長の光によって、ハイドロゲル状態と溶液との間で可逆的に変換される可逆ハイドロゲル系から製造される。ハイドロゲルは、還元されて溶液となり得る;また、この溶液は酸化されてハイドロゲルとなり得る。こうして、この系はハイドロゲルと溶液との間で可逆的に変換される。ナノゲルは、モノマーを架橋剤と共重合して架橋ハイドロゲルを生成させること;架橋したハイドロゲルを還元してコポリマー溶液とすること;コポリマー溶液を稀釈して稀釈コポリマー溶液とすること;そして次に、稀釈コポリマー溶液を酸化してナノゲルを生成させること;により製造される。チオール含有ナノゲルはまた、それに金属粒子(例えば、金)を組み入れることができる。さらに、ハイドロゲルを生成させるのに用いられる上の基本的考え方の全ては、最初にコポリマー溶液をその臨界濃度まで稀釈することにより、可能性として、ナノゲルを生成させるために用いられ得る。
【0023】
さらに別の実施形態において、本発明は、注入可能な、調節可能眼内レンズとして用いるためのハイドロゲルナノコンポジットを生成させるために、可逆ハイドロゲルとナノ粒子を一緒にする。本発明のナノコンポジットは、ポリマーハイドロゲル配合物に分散したナノ粒子を含み、材料の屈折率およびモジュラスが、2つの変数(すなわち、ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度とコポリマー濃度)を用いて制御され得る。屈折率は、ナノ粒子の量を変えることにより制御され、モジュラスはハイドロゲル中のポリマー濃度を変えることにより制御され得る。ナノ粒子は、好ましくは、約150nm未満、最も好ましくは、約3〜20nmの粒径をもち、それが非散乱性でなければならないことが最も重要である。ナノ粒子が、可視光を分散または散乱させないこのような寸法のものであることが、極めて重要である。ナノ粒子の性質はそれ程重要でなく、それが水性媒体に分散性があり、可視光を散乱させず、またポリマー配合物と共に安定であり続ける限り、ナノゲル、タンパク質、シリカ、金、銀、TiO2、遷移金属、セラミック、または、これらの組合せであり得る。
【0024】
I. 可逆ハイドロゲル系
本発明のハイドロゲル系は、1つの状態ではハイドロゲルであり、別の状態では溶液であるコポリマーを含む。このコポリマーは、好ましくは、モノマーと架橋剤とを共重合することにより得られる。架橋剤は分子間を架橋してハイドロゲルを生成する。モノマーは、アクリルアミド、N-オルニチンアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、ヒドロキシ-エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸、ベンジルメタクリルアミド、メチルチオエチルアクリルアミド、またはこれらの組合せであり得る。ジスルフィド基もしくは可逆性の架橋を組み入れるために変性もしくは誘導され得る、官能基をもつマクロモノマーあるいはポリマー(例えば、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリビニルアルコールなど)もまた本発明にとって適切であり得る。好ましいポリマー系は、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、コラーゲン、多糖のような半屈曲性もしくは剛直な水溶性ポリマー骨格をもつ。
【0025】
前記ポリマーは、好ましくは、水溶液中にある時に、ポリマー内で、または他のポリマーと共有結合を生成することが可能である架橋性の基(熱もしくは光化学に依存するマクロマーのゲル化の後、あるいはそれとは独立に、ポリマーを架橋させてゲルを生成させ得る)を含む。当技術分野において知られている化学的もしくはイオン性の架橋性の基は、マクロマーに備わっていてもよい。好ましい架橋性の基は、不飽和基(ビニル基、アリル基、シンナメート、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレート、アクリルアミドが含まれる)、あるいは、生物学的に許容される他の光重合性の基である。架橋剤は、好ましくは、ジスルフィドリンカー、例えば、N,N'-ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC)である。他の有用な架橋剤には、これらに限定されないが、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノ-もしくはポリカルボン酸とポリオールとのエステル、例えばジアクリレートまたはトリアクリレート(例えば、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、またトリメチロールプロパントリアクリレート)、アリル化合物(例えば、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレアート、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、ペンタエリスリトールトリアリルエステル、またはリン酸のアリルエステル)、ならびに、ビニル化合物(例えば、ビニルアクリレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、およびビニルホスホン酸誘導体)が含まれる。分岐を生成するように、他の非可逆的リンカーをポリマーに含めてもよい。
【0026】
本発明に適する光化学的に可逆なリンカーには、これらに限定されないが、スチルベン、アゾ、およびシンナモイルの誘導体が含まれ得る。通常、光化学的に可逆なリンカーにより、コポリマーのゲル化は特定の波長で起こり、そのコポリマーの液状化は異なる波長で起こる。例えば、コポリマー溶液は、第1の波長に曝すことによりハイドロゲルを生成し、このハイドロゲルは、第2の波長に曝すことによりコポリマー溶液に戻る。
【0027】
図1は、ハイドロゲルの生成、コポリマーの可溶化、および、ハイドロゲルの再生成について概略的に示している。モノマーとリンカー共重合により、架橋ハイドロゲルが生成する。この重合は、水溶性もしくはモノマー可溶性の開始剤またはレドックス開始剤の組合せにより開始される。水溶性開始剤の例は、ペルオキソ二硫酸のナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩、過酸化水素、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキソ二リン酸カリウム、tert-ブチルペルオキシピバレート、クミルヒドロペルオキシド、イソプロピルベンジルモノヒドロペルオキシドおよびアゾビスイゾブチロニトリルである。モノマー可溶性開始剤の例は、ジアセチルペルオキシジカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナートおよびジベンゾイルペルオキシドである。通常、開始剤は、モノマーの全重量に対して、0.01から0.5重量%の量で用いられる。(複数の)還元剤との組合せとして前記開始剤の組合せは、レドックス開始剤として使用され得る。適切な還元剤は、これらに限定されないが、アルカリ金属およびアンモニアの亜硫酸塩と亜硫酸水素塩(例えば、亜硫酸ナトリウム)、ホルムアルデヒドスルホキシル酸の亜鉛もしくはアルカリ金属塩のようなスルホキシル酸の誘導体(例えば、ナトリウムヒドロキシメタンスルホナート)、およびアスコルビン酸であり得る。好ましくは、還元剤の量は、モノマーの全重量に対して、0.01から0.5重量%である。
【0028】
一旦コポリマーが生成されると、未反応モノマーと架橋剤を完全に除去するために洗浄することが好ましい。洗浄ステップは、ヒトに使用されると毒性があるモノマーでは特に好ましい。例えば、アクリルアミドは発癌物質であり神経毒であることが知られているが、そのポリマーであるポリアクリルアミドは無害である。このように、アクリルアミドの重合の後、未反応アクリルアミドがハイドロゲルから完全に洗浄されることが非常に望まれる。未反応モノマーと架橋剤の除去の後、水含量を望まれるものとするために、コポリマーは液体(好ましくは、水)によってさらに膨潤させられる。
【0029】
このハイドロゲルは、架橋の破壊により、液状化されて、コポリマーの溶液となり得る。ジスルフィド結合の場合には、液状化は、ハイドロゲルを化学的に還元して、ジスルフィド結合をチオールに還元することにより実施され得る。好ましくは、還元は、ジチオスレイトール(DTT)のような還元剤の存在の下で行われる。他の還元剤には、これらに限定されないが、2-メルカプトエタノール、ジチオエリトリトール、システイン、ブタンチオール、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素、メルカプトエチルアミン、エチルマレイミド、およびトリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP・HCl)があり得る。還元剤は、架橋の性質に基づいて選択される。ジスルフィド結合では、DTTが好ましい還元剤である。一旦還元されると、ハイドロゲルは液状化し、コポリマー溶液となる。ジスルフィド結合をもつコポリマーの場合には、還元により、水溶性のチオール含有コポリマーが得られる。
【0030】
コポリマー溶液は、望みに応じて、稀釈、濃縮および/または乾燥され得る。保管のために、好ましくは、コポリマーは、例えばメタノールによって溶液から析出させられ、濾過され、乾燥される。凍結乾燥を含めて、他の方法もまた適切である。保管されたコポリマーの固体は、後に、使用のために望みの濃度まで溶液に溶かされる。
【0031】
ハイドロゲルは、コポリマー分子内の架橋を再生成させることによってコポリマー溶液から再生成され得る。ジスルフィド結合の場合には、好ましくは酸化剤(好ましくは大気中の酸素)の存在の下でのコポリマー溶液の酸化により再ゲル化を実施することができる。大気中の酸素が好ましいが、他の酸化剤、例えば、ジチオジプロピオン酸(DTDP)、シスタミン、2-ヒドロキシエチルジスルフィド、過酸化水素、有機過酸、ペルオキシカルボナート、硫酸アンモニウムペルオキシド(ammonium sulfate peroxide)、ベンゾイルペルオキシド、過ホウ酸塩なども使用できる。しかし、さらに重要なことは、好ましい酸化剤がヒトおよび/または動物に対する如何なる重大な毒性ももつべきでないということである。
【0032】
スチルベン、アゾ、シンナモイルの誘導体のような、光化学に依存するリンカーを用いたポリマーでは、再ゲル化は、コポリマー溶液を、適切な波長の光に曝すことによって実施される。こうして、可逆性の基の液状化は、通常はゲル化波長と異なる波長である、適切な波長の光にゲルを曝すことにより実施され得る。
【0033】
光化学に依存するリンカーと酸化に依存するリンカーは排他的でないことを注意しておく。望みの結果を実現するために、両タイプのリンカーを同じポリマーに使用してもよい。例えば、両タイプのリンカーを含むポリマーは、酸化/還元を用いて調製され洗浄され得る。しかし、一旦レンズが形成されると、光化学に依存するリンカーもまた活性化されて、より永続的で安定なハイドロゲルとなり得る。この実施形態において、可逆リンカーを、非可逆リンカーと一緒に用いてもよい。例えば、そのポリマーは酸化/還元可逆リンカーと非可逆的な光化学に依存するリンカー(例えば、チオール-アクリルアミドおよび/またはチオール-アクリレート)を用いることができる。
【0034】
II. ナノゲル
上のハイドロゲルは、ナノゲル(その粒径はコポリマーの分子量に依存する)の製造にも使用され得る。本発明の方法は、直径が150nm未満、好ましくは約3〜20nmで、屈折率が天然の水晶体のそれに似たナノゲルの製造技術を教示する。上のセクションIにおける可逆ハイドロゲルの調製に含まれる化学はナノゲルの製造に適している。ナノゲルは、モノマーを架橋剤と共重合して架橋ハイドロゲルを生成させること;架橋ハイドロゲルを還元または照射して、コポリマー溶液を生成させること:コポリマー溶液を稀釈して稀釈コポリマー溶液とすること;および、稀釈コポリマー溶液を酸化してナノゲルとすること;によって製造される。このように、ナノゲルを製造する方法は、ナノゲルが希薄コポリマー溶液から生成すること以外は、可逆ハイドロゲルのそれと実質的に同じである。希薄により、コポリマー溶液の濃度が、1パーセント(w/v)未満、好ましくは、0.5パーセント(w/v)未満、最も好ましくは、0.01パーセント(w/v)未満であることを意味する。このように、コポリマーの濃度が希薄である時に、コポリマー溶液の酸化および/または照射によってナノゲルは生成し、コポリマー濃度が濃厚である時には、コポリマー溶液の酸化および/または照射によってハイドロゲルが生成する。希薄コポリマー溶液により、分子間相互作用が極めて少なくなるので、架橋は分子内で形成され、このために、ナノゲルが生成する。他方、コポリマー溶液がより濃厚であると、分子間架橋が支配的になってハイドロゲルが生成する。
【0035】
本発明の一実施形態において、チオール含有ナノゲル粒子は、金属粒子(例えば、金)もまた包み込むことができる。この場合、金属粒子は、それらのチオール基に向かう傾向によって、自発的に作用する。金属なしで、溶液は酸化または照射されて、分子内架橋をしてナノゲルを生成する。しかし、ナノゲル生成の間に、金属粒子がナノゲル内に捕捉される。金属粒子の濃度が十分に低ければ、1個のナノゲル粒子に1個の金属粒子を結び付けることが可能である。金属によっては、架橋は、金属粒子とナノゲルとの間でもまた起こり得る。例えば、金は、酸化に際してコポリマーの-SH基と架橋し得る。
【0036】
III. ハイドロゲルナノコンポジット
これらのハイドロゲル材料は、天然の水晶体のそれに似たモジュラスを示すが、ハイドロゲルの屈折率は通常、天然の水晶体材料の屈折率より小さい。通常、屈折率はポリマー濃度に比例して増えるが、モジュラスは指数関数的に増加する。こうして、典型的なハイドロゲルでは、屈折率が高く、モジュラスが小さい材料を得ることはほとんど不可能である。出願人は、ハイドロゲルとナノ粒子のナノコンポジットが、天然の水晶体に似た高屈折率(RI)と低モジュラスを実現し得ることを見出した。ナノコンポジット系はまた、好ましくは、約1秒以内、より好ましくは約50〜250ミリ秒以内で、天然の水晶体に似た調節特性も示す。
【0037】
本発明のハイドロゲルナノコンポジットは、可逆ハイドロゲルマトリックスに分散したナノ粒子を含み、2つの変数(すなわち、ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度と、ハイドロゲル中のコポリマー濃度)を変えることによって、材料の屈折率とモジュラスを制御できるという点に利点がある。RIは、ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度を変えることにより制御され、モジュラスは、ハイドロゲル中のポリマー濃度を変えることにより制御され得る。これは、相互作用しないナノ粒子の場合において、特に正しい。しかし、ナノ粒子がコポリマー骨格と作用する場合には、架橋密度と粒径に応じて、モジュラスがナノ粒子(またはRI)と共に増加する系を得ることもある。
【0038】
ナノ粒子は、好ましくは、約150nm未満、最も好ましくは、約3〜20nmの粒径をもつ。ナノ粒子が、可視光を分散または散乱させない、このような大きさのものであることは非常に重要である。ナノ粒子は、それが水性媒体に分散し、ポリマー配合物と共に安定であり続け、また、好ましくは、ポリマー骨格と作用しない限り、これらに限定されないが、ポリマーナノゲル(上のセクションII参照)、タンパク質、シリカ、金属(例えば、金、銀、および遷移金属)、TiO2、セラミック、あるいは、これらの組合せであり得る。
【0039】
セクションIにおいてすでに記載された可逆ハイドロゲルは、ナノコンポジットの好ましいマトリックスとなる。しかし、他のハイドロゲルもまた本発明にとって適切である。
【0040】
ナノコンポジットを製造するために、ナノ粒子は液状化されたコポリマー溶液に添加され、均一な分散体になるように撹拌される。次に、この分散体は、酸化および/または照射されて、本発明のナノコンポジットを生成する。
【0041】
ナノゲルがナノ粒子として使用される場合、ナノゲルおよび可逆ハイドロゲルが異なる架橋性の基を含んでいることが好ましい。例えば、ハイドロゲルが酸化/還元のリンカーを用いる場合、ナノゲルは光化学に依存するリンカーを用いること、およびこの逆が好ましい。より好ましくは、ナノゲルは、安定性と性能をより向上させるために、酸化/還元および光化学依存性の両方の架橋基を含む。
【0042】
好ましい一実施形態において、ナノ粒子は、ハイドロゲルマトリックスとナノ粒子との間の架橋が最少化されるように選択されるべきである。この場合、マトリックスとナノ粒子との間に架橋が全くないと、ナノコンポジットのRIおよびモジュラスを実質的に独立に制御することができる。具体的には、RIは、ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度を調節することにより制御され、モジュラスは、ハイドロゲル中のコポリマー濃度を調節することにより制御され得る。ハイドロゲルマトリックスとナノ粒子との間の相互作用および/または架橋のレベルが大きくなるほど、ナノコンポジットのRIおよびモジュラスを独立に制御できる可能性はより小さくなる。
【0043】
代用水晶体とするためには、ナノコンポジットは、約1.40から1.41のRIと、約1,000から1,500パスカルのモジュラスを実現すべきである。
【0044】
これ以上説明しなくても、当業者は、先の説明と以下の例示を用いて、本発明の合成物を製造し利用し、特許請求される方法を実施することができると思われる。以下の例は、本発明を例示するために与えられている。本発明は、この例に記載されている具体的な条件または詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【0045】
(実施例1)
アクリルアミド/BACのハイドロゲル
実験方法
ポリアクリルアミド/BACのハイドロゲルの合成
25%エタノール(25:75=エタノール:水 v/v)中、5%(w/w)で、様々な組成のハイドロゲルを、アクリルアミド(Aam)とBACとを、98/2、96/4、および94/6のアクリルモル比で反応させることにより合成した。重合開始の前に、約30分間溶液を通して窒素のバブリングを行い、溶存酸素を全て追い出した。反応を、2.1%(w/w)のTEMEDおよび0.4%(w/w)のAPSを加えることにより開始し、25℃で15時間続けた。水へのBACの限られた溶解性のために、水性エタノールを溶剤として用いた。得られたゲルをビーカーから取り出し、500mLの水の中で2日間膨潤させ、小さく砕いて、蒸留水で洗った。上のコポリマー組成物からのゲルを、それらがそれぞれ、2、4、および6アクリルモル%のBACを組み入れることによってジスルフィド(-SS-)結合を含んでいることを示して、ABSS2、ABSS4、およびABSS6と名づけた。
【0046】
モノマーを含まない膨潤ハイドロゲルの還元液状化
ゲルを小さく砕き、pH7.0で、10モル/(1モルのBAC)でDTTを加えることにより液状化させた。撹拌しながら、溶液を通して窒素のバブリングを行いながら、ABSS2、ABSS4、およびABSS6に対してそれぞれ、2、4、および6時間還元を行った。ゲルを完全に溶解させた後、10%(V/V)のHClを用いて溶液をpH3まで酸性にし、激しく撹拌しながら過剰のメタノール中に析出させた。析出した-SHポリマーを濾過し、真空の下で乾燥し、必要とするまで減圧下に保管した。ABSS2、ABSS4、およびABSS6からの上の可溶性ポリマーを、それらがジスルフィド結合の代わりに-SH基を今度は含んでいることを示して、それぞれ、ABSH2、ABSH4、およびABSH6と名づけた。
【0047】
可溶性コポリマーの特性評価
各コポリマーのチオール(-SH)含量を、Ellman試薬を用いて求めた。簡単に言えば、50μLの0.5%(w/v)コポリマー溶液(pH4、窒素バブリングを行った)を、50μLの0.01MのEllman試薬(0.1Mリン酸緩衝液中、pH8.0)、500μLの0.1Mのリン酸緩衝液(pH8)、および450μLの蒸留水の混合物に加えた。得られた溶液の412nmでの吸光度(Beckman DU54分光光度計を用いた)を、混合後5分で求めた。各ABSHポリマー中の-SHの濃度を、13,600M-1cm-1のモル吸光係数を用いて計算した。
【0048】
還元後のポリマーの分子量を、粘度検出器とタンデム式に連結した静的光散乱および屈折率検出器を装備したViscotek HPLC-GPCシステム(ヒューストン、テキサス州)を用いて求めた。固定相は、直列に連結されたG6000PWXLおよびG4000PWXI(Tosoh Biosep、Montgomeryville、ペンシルバニア州)の2つのカラムからなっており、移動相は20mMのBis-Tris緩衝液(pH6.0、0.1%のアジ化ナトリウム)であった。試料を0.5%(w/v)の濃度で、水(pH4、N2で飽和させた)で調製した。分子量(Mw)1000から950,000までのポリエチレングリコール標準(Viscotek、ヒューストン、テキサス州)を用いて較正した。
【0049】
可溶性ポリマー中のチオール基の存在と、再ゲル化に際してのそれらの消失を、ラマン分光法(Kaiser Holoprobe Series 5000ラマン分光光度計、514nmのアルゴンレーザ波長で運転)により調べた。バイアル中のポリマー試料水溶液に直接レーザ光線を照射し、2cm-1の分解能でスペクトルを得た。市販の移動台上で特注の試料ホールダを用いて、レーザの焦点に対する試料の位置の再現性を確保した。スペクトルを、GRAMS/32ソフトウェアパッケージ(Galactic Industries Corporation、Salem、ニューハンプシャー州)を用いて解析した。
【0050】
コポリマー溶液の再ゲル化を、DTDPを用いて実施し(詳細は下に記載)、その後、ゲルを2日間膨潤させた。膨潤したゲルを、水で数回洗浄した後、ラマンの実験に用いて、-SH基のピークの消失と、ジスルフィド(-S-S-)結合の生成に対応するピークの出現を観察した。
【0051】
コポリマー水溶液の再ゲル化
窒素で飽和させたpH4の水中の、3つの異なる濃度(% w/v)のポリマー溶液を、還元後のポリマーの各々から調製した:ABSH2から、10.0、12.5、および15.0%;ABSH4から、5.0、7.5、および10.0%;ABSH6から、2.0、3.0、4.0%。ポリマー溶液(それぞれ1mL)を試験管に入れ、溶液のpHを、10MのNaOHの計算量を用いて約7.4に調節し、その後、必要量のDTDP(0.5M、pH7)を加え、激しく撹拌した。各ABSHポリマー溶液の-SH含量に基づいて、等モル量のDTDPを加えた。試験管を傾けることによりゲル化を目で観察した。注入の容易さと、嚢内でのゲルの均一性を評価するために、天然のブタの水晶体を模倣した特殊な注入枠(mold)を用いた。
【0052】
円柱形のゲルの調製を、テフロン(登録商標)枠を用いて行った。再ゲル化試料(円柱または薄い円盤としての)の静的モジュラスを、動的粘弾性分析装置(Perkin Elmer DMA7e、Norwalk、米国)を用いて応力/歪みの実験から求め、分析をDTDP添加後1時間ほどで完了した。静的応力スキャンを、25℃で5mN/分の速度で、0から25mNまで実施した。コポリマーハイドロゲルの調製およびそれらの還元と、水溶性コポリマーからの再ゲル化を図2に概略的に示す。
【0053】
嚢内ゲル化
ABSH2から10.0および12.5%;ABSH4から5.0および7.5%;さらに、ABSH6から2.0%;のコポリマー溶液(% w/v)をそれぞれ、嚢内ゲル化について評価した。新しく摘出したブタの目を、地元の畜殺場から屠殺の後すぐに購入した。通常、それぞれの目をスタイロフォーム板上で安定化させ、角膜と虹彩を除去した。Ellman Surgitron用具(Edmonton、ニュージャージー州)を用いて、前嚢上の赤道近くで1.0から1.2mmの直径の嚢切開を実施した。次に、Storz Phacoemulsification超音波装置(Premiere型、Bausch and Lomb、セントルイス、ミズーリ州)を用いて嚢を空にした。DTDPを注入直前にコポリマー溶液に加えてよく混合した。典型的な事例では、800μLの5%(w/v)ABSH4溶液(10MのNaOHを用いてpH7.4に調節した)を、試験管に入れ、43μLのDTDP(0.5M、pH7.0)を加え、10秒間ボルテックススターラで十分に混合し、外径1.0mmの注射針(その先端はプラスチック製の円錐形微小先端部に取り付けられていた)の付いた注射器に吸い上げた。注意深く、素早くコポリマーを嚢内の底に注入し、こうして、泡なしに嚢を満たし、その後の2から3分の間、閉じたまま保った。ゲル化は、通常、3分以内に起こった。ハイドロゲルの注入と再ゲル化の手術方法を図3に概略的に示す。
【0054】
結果
ポリ(AAm-co-BAC)ハイドロゲルの合成
様々な組成の異なる3種のハイドロゲルを、アクリルアミドに対して、2、4、および6アクリルモル%のBACで、アクリルアミドとBACから調製した。予想したように、BACを増加させると構造の一体性がより良好なゲルとなった。より多量のBACを含むゲルでは、僅かであるが透明性がより低かった。ABSS2は安定なゲルを生成しなかったが、粘度の高い溶液であった。しかしながら、より高濃度では安定なゲルとなった(>15%)。
【0055】
ABSHコポリマーの合成と特性評価
水溶性コポリマー(ABSH)を架橋ゲル(ABSH)から得る鍵となるステップは、図2に示すように、ジスルフィド結合(-S-S-)のチオール(-SH)基への完全な還元を含んでいた。DTTによるゲルの還元により、ほぼ完全にジスルフィド結合は還元された(表1の-SH含量の値に示したように)。溶液を通して窒素のバブリングを行うと、ゲルの溶解がかなり加速された。水溶性コポリマー(ABSH)の-SH含量は、表1に示したように、共重合に使用されたBAC濃度に比例している。
【0056】
【表1】

【0057】
図3は、HPLC-GPCの3種の検出器により観察されたABSHコポリマーのGPC曲線を示している。図3の曲線aに示すように、共重合におけるBAC含量の増加につれて分子量が増加し、分子量分布が広くなっている。ABSHポリマーの重量平均分子量(Mw)の結果を表1に示す。
【0058】
チオールと、再ゲル化に際してのその消失(同時にジスルフィド(-S-S-)結合の生成を伴う)を、ラマン分光法により確認した。ABSH6(4w/v%水溶液)と、それに対応する再生成させたゲルであるRABSS6(この「R」は、ABSH6から再生成させたゲルを示す)のラマンスペクトルを図4に示す。2580cm-1の特性吸収は、-SH伸縮振動(νSH)に対応し、図4の曲線bに認められ、これはゲル化により完全に消失した。-S-S-伸縮(νs-s)に対応する吸収は、それが他の振動と重ならなければ、通常、約510cm-1に現れる。ポリマーは大部分ポリアクリルアミドであるので、図4の曲線cに認められるように、485cm-1に中心があるポリアクリルアミドの広い非対称-C-C-骨格変角ピークからの干渉のために、νs-sをνs-sで明瞭に認めるのは困難である。この問題を、RABSS6のスペクトルからポリアクリルアミドのスペクトル(図4の曲線a、BACなしで、同じ手順を用いて調製した)を引くことにより解決した。図2の挿入図に示すように、505cm-1の肩ピークとして、νs-sを明瞭に認めた。
【0059】
-SHおよび-S-S-振動だけでなく、図4の挿入図に示すように、ポリアクリルアミドのスペクトルを引いた後に、ABSH6の-C-S-H基とRABSS6の-C-S-S-C-とからの-C-S-伸縮(νC-s)もまた、662cm-1および621cm-1にそれぞれ明瞭に観察された。上の特性吸収に加えて、図4に示す他の吸収ピークは、ポリアクリルアミドのラマンスペクトルに対応する(Gupta et al. Laser Raman spectroscopy of polyacrylamide. J. Polym. Sci., Polym. Phys. Edn. 19:353-360, 1981)。
【0060】
再ゲル化と機械的性質
ABSHポリマーの再ゲル化を、チオールの空気酸化により、あるいは、チオールジスルフィド交換反応(図5)により実施することができる(図5)。ABS-イオン(ABSHからの)からの酸素への1電子移動の反応速度が、チオールの空気酸化の速度を決める。この反応速度は、pHを大きくすると増加する。pH7.4で、ゲル化は通常12時間以内に起こった。Hisano等(Entrapment of islets into reversible disulfide hydrogels. J Biomed Mater Res. 40:115-123, 1998)は、同じタイプのチオール化アクリルアミドポリマーで、pH8.8では、ゲルを生成させるのに、空気酸化では約6時間かかったことを報告した。空気酸化と異なり、チオールジスルフィド交換反応では、7.0と7.5の間のpH(生理的pHにより近い)で数分以内にゲル化が起こった。ゲル化時間がそれ程短いので(全て5分未満)、いくつかの異なる濃度のABSHポリマーについて再ゲル化の実験を行うことができた。ABSHポリマーの濃度と、再ゲル化試験体の静的モジュラスを表2に列挙する。同じ濃度で生成したゲルのモジュラスは、分子量および-SH含量の増加と共に大きくなった。全ての再生成ゲルは透明であった。
【0061】
【表2】

【0062】
本実験において、ゲル化は、ABSH2の15%溶液、ABSH4の10%溶液、ならびに、ABSH6の3および4%溶液では、30秒より短時間に起こった。しかし、高粘度と素早い反応のために、これらの試料を用いて嚢内ゲル化を試みなかった。その代わりに、空気酸化は好ましい方法であった。より低濃度(これらは表2に含まれていない)は安定なゲルを生成させるのに適切でなかった。全体として、ゲル化の速度は、酸化剤、pH、および光の関数であった。
【0063】
嚢内ゲル化
嚢内ゲル化に対する水溶性コポリマー溶液(ABSH)の適性を、予め内容物を取り出したブタの水晶体嚢で例示した。すでに記載したように、非常に速い再ゲル化により、いくつかのポリマー濃度での試験が妨げられた。嚢内ゲル化を、新たに調製されたABSH2の10.0および12.5%溶液、ABSH4の5.0および7.5%溶液、ならびに、ABSH6の2.0%溶液を用いて実施した。これらの全ての場合に、再ゲル化は5分以内に起こった。元々の高粘度(これはさらにDTDPの添加で増加する)のおかげで、再充填の間の漏れはなかった。嚢内ゲル化のためのin-vitroでの再充填手術の手順を図6に概略的に示す。ここで、角膜に穴をあけ、水晶体の内容物を破砕吸引(phagofragmentation)することにより取り除き嚢内を空にする。次に、空の嚢内を適当なABSH溶液で再び満たし、in situで再ゲル化させた。
【0064】
図7aは、ABSH4の10%(w/v)溶液で嚢内ゲル化を実施した場合の、ブタの目の代表的試料を示している。そのレンズを通して見ると対象ははっきりと歪みなく見える。図7bは、ブタの水晶体嚢内から分離された再ゲル化レンズを示している。水晶体の形に形作られた注入枠においてもまた、均一で透明なゲルの生成を確かめた(図7c)。
【0065】
検討
本実験の主な目的は、生理的条件の下においてin vivoで化学架橋させるための注入可能な前駆体としてチオール含有コポリマーを用いることの実現可能性を具体的に示すことであった(室温、酸素の存在下、中性pH付近)。予め内容物を取り除いた嚢内に、光学的に透明なゲル(そのモジュラスは若年者の水晶体物質のモジュラス(約1000Pa)に近かった)を生成させることは可能である。ゲル化の化学は、遅い空気酸化、あるいは、適切な無毒のジスルフィド試薬が介在する速い交換反応によってジスルフィド化する、ペンダントチオールの円滑な酸化を用いる。このような系は、毒性モノマーを含んでおらず、生きた組織の近くでの熱反応を含まず、漏れがなく、また生体と共存し得る適切な促進剤および光子によって調節され得るゲル化速度をもつ。
【0066】
ここで、ポリアクリルアミドは、骨組みまたは骨格のモデルとして用いられており、任意のポリマー鎖によって置き換えられ得る。疎水性の基を組み入れることにより、コポリマー溶液の性質、すなわち、粘度および/またはチクソトロピーをかなり増大させることができる。さらに、チオールは、ペンダント状であっても、星型(multi-armed)ポリマーにおける鎖の末端にあってもよい。この化学は、チオール含有シリコーン(例外的に大きな酸素透過性をもつ)にも適用可能である。親水性で水溶性のアクリレートは通常、生分解性であり、代用硝子体あるいは眼内レンズ材料として長期の使用に適さないので、アクリルアミド誘導体は、一般に比較的大きいそれらの加水分解安定性のために選択される。この系の別の独特の利点は、身体の外で最初に網目を生成させることにより、熱ならびにモノマーおよび他の毒性化学物質の除去(除去されなければ、in vivoでの重合が厳しく制限される問題)が円滑に行われることである。水溶性ABSHコポリマーを得るための、ハイドロゲルのジスルフィド結合のDTTを用いる還元は、還元剤のレドックス電位によってだけでなく、濃度、時間、pH、および雰囲気窒素によってもまた影響される重要なステップである。これらの要因を考慮した上で、10モル過剰のDTTを用い、窒素の下で撹拌することが、嚢内再ゲル化のためのコポリマーを得るのに最も適した手法であることが分かる。ポリマー析出中に酸性メタノール(pH3)を使用することが、次の処理の間、チオールを還元状態に保つのに極めて重要である。そうしなければ、このコポリマーは、部分的にのみ可溶である。乾燥して、次に使用されるまで、試料を減圧に保った。表1における-SH含量から分かるように、ジスルフィド結合をほぼ定量的に還元することが可能である。ゲルは単に空気酸化によっても、あるいは、DTDPを加えることによるチオール-ジスルフィド交換反応によっても再生成され得る。-SH含量、濃度、コポリマーの分子量が、再ゲル化特性と得られたゲルのモジュラスに影響を及ぼしたが、表2から、非常に大きい、または小さい上のパラメータの値により、この材料は嚢内ゲル化に不適切になることが明らかである。一般に、ハイドロゲルのモジュラスは、-SHおよびコポリマー濃度の増大と共に増加し、ハイドロゲルは光学的に透明な
ままである。シスタミンおよび2-ヒドロキシエチルジスルフィドもまた再ゲル化に使用され得るが、DTDPはこれらの何れよりも毒性が低い。
【0067】
可逆ジスルフィド化学を用いる、in situでの嚢内ハイドロゲル生成は、注入可能な眼内レンズの開発のためだけでなく、代用硝子体、および局所治療薬としての使用でも、将来性のある技術である。in situでの重合およびゲル化と異なり、本明細書において記載されている可逆ハイドロゲル系は、in situでのゲル化のみを伴い、温度の認められるような変化はない。コポリマーはモノマーを含んでおらず、粘稠なコンシステンシーをもつ濃度で注入されたので、モノマーによる毒性および漏れは回避される。再ゲル化の時間は、DTDP、酸素、pH、および/または光子を用いて容易に操作され得る。
【0068】
(実施例2)
アクリルアミド/BAC/N-フェニルアクリルアミドのハイドロゲル(疎水性ハイドロゲル)
アクリルアミド(AAm)、ビスアクリロイルシスタミン(BAC)、および、N-フェニルアクリルアミド(NPA)の共重合を、25%エタノール(25:75=エタノール:水 v/v)中、5%(w/w)で、94/4/2のアクリルモル比で実施した。約30分間溶液を通して窒素のバブリングを行って、重合の開始の前に溶存酸素を全て除去した。反応を、2.1%(w/w)のテオトラメチレンジアミンおよび、0.4%(w/w)の過硫酸アンモニウムを添加することにより開始し、25℃で15時間続けた。水へのBACのかぎられた溶解性のために、水性エタノールを溶剤として用いた。得られたゲルをビーカーから取り出し、500mLの水の中で2日間膨潤させ、小さく砕いて、蒸留水で洗った。上のコポリマー組成物からのゲルを、それが4アクリルモル%のBACを組み入れることによるジスルフィド(-SS-)結合と2アクリルモル%のNPAを含んでいることを示して、AB4N2SSと名づけた。
【0069】
砕かれたゲル(AB4N2SS)の液状化を、砕かれたハイドロゲルにジチオスレイトール(DTT)(10モル/使用された1モルのBAC)を加えることにより実施した。この還元を、pH7.0で4時間実施し、その間、撹拌しながら溶液を通して窒素のバブリングを行った。完全に可溶化させた後、コポリマー溶液を、10%(v/v)のHClを用いてpH4まで酸性化し、激しく撹拌しながらメタノール(pH4)中で析出させた。析出させた-SHコポリマーを濾過し、真空の下で乾燥し、常に減圧の下に保管した。AB4N2SSから上で得られたチオール含有水溶性コポリマーをAB4N2SHと名づけた。
【0070】
AB4N2SHの5%(w/v)溶液を、元々は約pH4の水(N2で飽和させた)で調製し、完全に溶解した後、7μLの5MのNaOHを用いて、pHを7に調節した。次に、162μLの0.5MのDTDP(pH=7)を加えてハイドロゲルを再生成させた。組成物の全容積は3mlであった。同様に、AB4N2SHが、7%、9%、および11%(w/v)の溶液を調製し、ハイドロゲルの生成に用いた。これらのハイドロゲルを調べてモジュラスの値を求めた。ポリマー溶液(9%、11%)は、注射器により注入する時に「蜂蜜に似た」コンシステンシー、剪断による粘度低下(shear thinning)を示し、ブタの嚢内で、漏れることなく物理的ゲルとしてほとんど瞬時にゲルした。次に、この物理的ゲルを化学的ゲルに変換した。
【0071】
【表3】

【0072】
(実施例3)
代用硝子体としてのハイドロゲル
アクリルアミドと、4アクリルモル%のビスアクリロイルシスタミン(BAC)を重合することにより得たハイドロゲルから、コポリマー(AB4SH)を調製した。詳細な実験手順は実施例1に記載したものと同様であった。
【0073】
ABSH4の7%(w/v)溶液を、元々は約pH4の水(N2で飽和させた)で調製し、完全に溶解した後、15μLの1MのNaOHを用いて、pHを7に調節した。その後、62μLの0.5MのDTDP(pH=7)を加えた。組成物の全容積は1mlであり、ヒトの死体の目の、予め内用物を取り出した硝子体の腔に注入した。in-situでのゲルは硝子体の腔内の残留水と平衡に達するので、腔内でのゲルの最終組成は実質的に7%未満であった(図8)。しかし、一般に、BACをより高濃度で含むゲルは、ゲル化するのにより低濃度でよく、代用硝子体としては好ましい。
【0074】
この研究では、BACと共重合させるモノマーとしてアクリルアミドが用いられているが、他のアクリルアミド類もしくはビニルモノマーもまた使用され得る。ペンダントチオールをポリマーに導入するこの技術を、主ポリマーの適切な選択と併せて、具体的最終用途に合わせてゲルを設計するのに用いることができる。生体と共存し得るハイドロゲルを開発するために多大な努力が費やされてきたが、この可逆ハイドロゲル系は、in situでの治療用途にはこれまで研究されていなかった。総合的に、これらの情報は、この系に新規性があることを示している。
【0075】
(実施例4)
ナノゲル
実験方法
コポリマーハイドロゲルの調製
ポリアクリルアミド/BACのハイドロゲルを、上の実施例1のようにして調製した。得られたポリマーをAB6SHと名づけた。続く他のタイプのコポリマーハイドロゲルの調製において、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DA)、アクリル酸(AA)を、疎水性、正および負の特徴をもつチオールコポリマーを調製するために付加的に用いた。コポリマーの調製とそれらの組成を表4に報告する。
【0076】
【表4】

【0077】
可溶性コポリマーの特性評価
コポリマー中に存在するチオール(-SH)含量を、Ellman分析法(Ellman, Arch. Biochem. Biophys., 1959, 82:70-77)を用いて求めた。還元後のポリマー(ABSH)の分子量を、Viscotek HPLC-GPCシステム(ヒューストン、テキサス州、米国)を用い、G6000PWXLおよびG4000PWXL(Tosoh Biosep、Montgomery Ville、ペンシルベニア州、米国)の2つの直列に接続したカラムを用いて求めた。移動相は20mMのBis-Tris緩衝液(pH6.0、0.1%のアジ化ナトリウム)であった。試料を、0.5%(w/v)の濃度で、水(pH4、N2で飽和させた)で調製した。分子量(Mw)1000から950,000のポリエチレングリコール標準(Viscotek、ヒューストン、テキサス州、米国)を用いて較正した。
【0078】
ナノゲルの調製
大量の0.1% w/vのチオールコポリマー溶液を、pH4の水で調製した。少量の1MのNaOHを用いて、この溶液のpHを7に調節し、3日間空気でバブリングを行った。-SHのないことを、Ellman分析により確認し、溶液を25% w/wまで濃縮した。
【0079】
クリスタリン溶液の調製
ブタの目球を地元の畜殺場から得て、水晶体を切って取り出した。嚢から出した水晶体を緩衝液(50mMのTris、50mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTTおよび、0.1%のアジ化Na)に入れ、、ホモジナイズ後、12,000RPMで30分間遠心した。約1.2gの可溶性画分を、5X90cmのSephacryl S-300カラム(Pharmacia)に供して、1.3mL/分の流量で10分毎に画分を捕集した。ISCOのモデルUA-5モニターを用いて、吸光度を280nmで測定した。画分を、α、βhigh、βlow、およびγクリスタリンのそれぞれのピークに集め、Amicon DC2濃縮装置を用いて濃縮した。分離し、濃縮した物質を蒸留水に対して透析し、凍結乾燥して、使用するまで-20℃で保存した。試料を再懸濁させるために用いた標準緩衝液は、20mMのTris、0.1%のアジ化ナトリウム、pH7.6であった。
【0080】
レオロジーの実験
Vilastic-3 Rheometer(Vilastic Scientific、オースチン、テキサス州)を用いて、βhigh-クリスタリン(CBH)およびNP-AB6SSの4% w/wの溶液の粘弾性挙動を調べた。直径が0.04953cmで長さが6.278cmの円柱管中、22℃で、2Hzの振動数で各試料を測定した。流体試料では2/秒から900/秒、ゲル試料では、0.2/秒から40/秒の剪断速度範囲に渡って、測定を実施した。各試料で、測定管を最初に充填した時と、測定管を2回目に充填した後で、測定を実施した。
【0081】
屈折率測定
アッベの屈折計(ATAGOのアッベ屈折計1T/4T、Kirkland、ワシントン州、米国)を用いて、25℃で、様々な濃度で全てのナノ粒子ならびにクリスタリン溶液の屈折率を測定した。
【0082】
結果と考察
チオールコポリマーの調製と特性評価
AAmおよびBACの共重合によりハイドロゲルを得た。架橋ゲル(AB6SS)から望みの水溶性コポリマー(AB6SH)を得る際の重要なステップは、図2に示すように、ゲル中の全てのジスフフィド結合(-S-S-)の、-SH基への完全な還元を含んでいる。AB6SHの調製と同様に、他のポリマーを、表4に挙げた様々なモノマーを用いて調製した。
【0083】
-SHの測定により明白に示されるように、DTTによるゲルの還元によってジスルフィド結合はほぼ完全に還元された。Ellman分析により、BACが4および6アクリルモル%含まれるポリマーで、-SH含量が、それぞれ、5.1×10-4および7.9×10-4モル/gであることが示された。計算値は、5.4×10-4および8.0×10-4モル/gである。一般に、ポリマーの分子量分布は広い分布であった。重量平均分子量(Mw)は、AB6SH、AB4N4SH、AB4N4AA2SHおよびAB4N4DA2SHでそれぞれ、9.1、3.0、4.3、および1.75×105Daであった。
【0084】
ナノゲルの調製
ペンダント-SH基を含むポリマー(AB6SH)を用いて、非常に希薄な濃度で、-SH基の間の分子内架橋により、ナノ粒子(NP-AB6SS)を調製した。非常に希薄な濃度は、分子内架橋だけによるナノ粒子の生成には有利であったが、本実験において調べられた濃度(0.1% w/v)では、依然としていくらかのナノ粒子が分子間で形成されたことが示された。超希薄な濃度とポリマーの分子量分布の制御により、十分に規定されたナノ粒子が調製されるであろう。分子内架橋によるナノ粒子の生成を図9に示した。同様に、他のチオールポリマーからナノゲルを調製した。
【0085】
ナノゲルおよび水晶体クリスタリンの屈折率
ジスルフィド含有ナノゲルと水晶体クリスタリンのタンパク質分子について、屈折率(RI)の値を図10に示す。ナノゲルのRI値は、クリスタリンのものに似ている。
【0086】
ナノゲルおよびクリスタリンのレオロジー測定
3種のポリマー試料の粘弾性特性を、同じ濃度(4% w/w)で、βhighクリスタリン(CBH)試料のそれと比較した。3つの全ての試料(AB6SH、RAB6SH、NPAB6SS)は同じポリマーに由来していた。
【0087】
AB6SHは、アクリルアミドとBACを94/6のアクリルモル比で重合することにより調製したハイドロゲルから得られるコポリマーチオールである。RAB6SSは、AB6SHポリマーからの再ゲル化ハイドロゲル試料である。NP-AB6SSは、実験のセクションにおいて記載したように、同じAB6SHポリマーから調製されたナノゲル試料である。ナノゲル(NP-AB6SS)の粘弾性特性は、図11において認められるように、クリスタリンのそれに非常に似ていた。
【0088】
結論
ジスルフィド含有架橋剤であるビスアクリルシスタミンを用い、アクリルアミドおよび他のモノマーの重合により得たハイドロゲルから、チオール含有ポリアクリルアミドコポリマーを調製した。これらのチオールポリマーを用いて、チオール基の間の分子内架橋によりナノゲルを調製した。これらのナノゲルの屈折率および粘弾性は、βhigh水晶体クリスタリンのそれに類似していた。粘度の微妙な相違は、ナノゲルのより大きな流体力学的体積とそれらの大きさの多分散性に起因すると考えられる。
【0089】
(実施例5)
ハイドロゲルナノコンポジット
実験方法
ポリ(AAm-co-BAC)ハイドロゲルの調製とその還元
ポリアクリルアミド/BACのハイドロゲルを、上の実施例1のようにして調製した。得たポリマーをAB4SHと名づけた。
【0090】
可溶性ポリマーの特性評価
コポリマー(AB4SH)に存在するチオール(-SH)の含量を、Ellman分析を用いて求めた。還元ポリマー(AB4SH)の分子量を、Viscotek HPLC-GPCシステム(ヒューストン、テキサス州、米国)を用い、G6000PWXLおよびG4000PWXL(Tosoh Biosep、Montgomery Ville、ペンシルベニア州、米国)の2つの直列に接続したカラムを用いて求めた。移動相は20mMのBis-Tris緩衝液(pH6.0、0.1%のアジ化ナトリウム)であった。試料を、0.5%(w/v)の濃度で、水(pH4、N2で飽和させた)で調製した。分子量(Mw)1000から950,000のポリエチレングリコール標準(Viscotek、ヒューストン、テキサス州、米国)を用いて較正した。
【0091】
ナノ粒子の調製
a)AB4SHチオールポリマーから:0.1% w/vの大量のAB4SHポリマー溶液を、pH4の水で調製した。少量の1MのNaOHを用いて、溶液のpHを7に調節し、3日間空気でバブリングを行った。Ellman分析によって、-SHのないことを確認した上で、溶液を25% w/wに濃縮した。ナノ粒子(溶液)をNP-AB4SSと名づけた。
b)シリカから:水可溶性シリカナノ粒子を、Mori等(J. Am. Chem. Soc., 2003, 125:3712)により報告されたようにして調製した。粒径は直径で約3nmと報告されており、この報告ではここでさらに特性評価しなかった。65% w/wの保存溶液を調製し、様々な濃度で、ナノコンポジットに用いた。
c)ウシ血清アルブミン(BSA)から:緩衝液(20mMのBis-Tris、pH6.0、0.1%のNaN3)中のBSAの30% w/w溶液を調製した。この溶液を、様々な濃度で、ハイドロゲルナノコンポジット材料に用いた。
【0092】
ナノコンポジットの調製
最初に、pH4で、窒素で飽和した水でAB4SHの15% w/w溶液を調製した。この溶液を、様々な濃度の様々なナノ粒子溶液と混合した。AB4SHの濃度は、全ての組成物において、5% w/wで一定に保った。ナノ粒子の濃度を、表5に示すように、0から36% w/wまで変えた。コンポジットのpHを、ゲル化の直前に少量の1MのNaOHを用いて、約7に調節した。ナノコンポジットを、AB4SHポリマーのチオール含量と等モル量でジチオプロピオン酸(DTDP)を用いてゲル化させた。ポリマーおよびナノ粒子の組成と濃度を表5に示す。
【0093】
ナノコンポジットの屈折率およびモジュラスの測定
コンポジット材料の再ゲル化を、円柱状のテフロン(登録商標)枠(直径が10mmで、高さが5mm)で実施した。これらの円柱状試料の機械的性質を、動的粘弾性分析装置(DMA7e、Perkin Elmer、Norwalk、コネチカット州、米国)を用いて平行平板の間で圧縮することによって求めた。再ゲル化コンポジット材料の屈折率を、アッベ屈折計(ATAGOのアッベ屈折計1T/4T、Kirkland、ワシントン州、米国)を用いて求めた。
【0094】
結果と考察
AB4SHコポリマーの調製と特性評価
AAmとBACの共重合によりハイドロゲルを得た。架橋ゲル(AB4SS)から望みの水溶性コポリマー(AB4SH)を得る際の鍵となるステップは、図2に示されるように、ゲル中の全てのジスフフィド結合(-S-S-)の、-SH基への完全な還元を含んでいる。
【0095】
-SHの測定により明白に示されるように、DTTによるゲルの還元によってジスルフィド結合はほぼ完全に還元された。Ellman分析により、-SH含量が、5.1×10-4モル/gであることが示された。計算値は5.4×10-4モル/gである。AB4SHの分子量分布分析により、多分散度が3.4で広い分布であること、重量平均分子量(Mw)が3.8×105Daであることが示された。
【0096】
ナノ粒子の調製
ペンダント-SH基を含むポリマー(AB4SH)を用いて、非常に希薄な濃度で、-SH基の間の分子内架橋によってナノ粒子を調製した。非常に希薄な濃度は、分子内架橋だけによるナノ粒子の生成には有利であったが、本実験において調べられた濃度(0.1% w/v)では、いくらかのナノ粒子が分子間で形成されたことが示された。超希薄な濃度とポリマーの分子量分布の制御により、十分に規定されたナノ粒子が調製されるであろう。分子内架橋によるナノ粒子の生成を図9に示した。濃厚なナノ粒子溶液(25% w/v)を、様々な濃度でナノコンポジットを調製するのに用いた。
【0097】
シリカナノ粒子を、Mori等によって報告されたゾル−ゲル法により、グリシドールとアミノプロピルトリエトキシシランとの間の付加反応と、それに続く、付加生成物の酸性での縮合によって調製した。粒径は約3nmと報告されていた。各ケイ素原子のヒドロキシル基の比較的大きな反応性と、非常に小さい径のために、これらの粒子は、よく分散し、水に溶けた分子のような挙動をする。非常に高い濃度(65% w/w)の溶液を調製し、様々な濃度で、ナノコンポジットハイドロゲル組成物に用いた。シリカナノ粒子の調製を図12に示す。
【0098】
非常に高い濃度の生体分子溶液により本発明の考え方を比較し、確認するために、BSA(30% w/w)を、ナノコンポジットにナノ粒子溶液として用いた。
【0099】
ナノコンポジットの屈折率とモジュラス
屈折率(RI)とモジュラスの値を、全てのナノコンポジットについて表に示す。ナノ粒子の濃度が増すにつれて、全てのコンポジットでRIは大きくなる。NP-AB4SSを含むコンポジットでは、モジュラスの値もまた大きくなる。NP-AB4SSをAB4SHから調製し、NP-AB4SSは還元性雰囲気に置かれなかれば安定であった。しかし、コンポジット中でAB4SHと混ざると、チオール-ジスルフィドの交換反応が起こるので、NP-AB4SSのジスルフィド結合は壊され、ゲル化の際にAB4SHの網目に組み込まれ、その結果、モジュラスの値が大きくなった。他の2つのナノコンポジットでは、BSAもシリカナノ粒子もAB4SHポリマーと反応しない代わりに、網目の欠陥が増え、したがってモジュラスの値はより小さかった。
【0100】
【表5】

【0101】
結論
ポリアクリルアミド/BACのハイドロゲルを調製し、還元して、ペンダントチオール(-SH)基をもつ水溶性コポリマーを得た。このポリマーを用いて、異なる3つのタイプのナノ粒子でハイドロゲルナノコンポジットを調製し、チオール-ジスルフィドの交換反応により再ゲル化させた。チオールポリマーと反応しないナノ粒子を含むナノコンポジットは、屈折率が高くモジュラスが小さいハイドロゲルナノコンポジットを生じた。ナノ粒子とハイドロゲルが異なる機構により活性化される系がこの問題を解決するであろうと思われる。例えば、ナノ粒子が光で活性化され、ハイドロゲルがpHで活性化されるか、あるいはこの逆であるような系は、ハイドロゲルとナノ粒子の間のチオール反応を起こさないであろう。
【0102】
現時点で好ましい本発明の特定の実施形態が本明細書において詳細に説明されたが、本明細書において示され説明された様々な実施形態の変形および修正が本発明の精神と範囲から逸脱することなくなされ得ることが、本発明に関連する分野における技術者には明らかであろう。このように、本発明は、添付の請求範囲および適用可能な法の規則によって求められる範囲でのみ限定されるべきであると見なされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子がその中に分散したハイドロゲルを含むハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項2】
前記ハイドロゲルが可逆ハイドロゲルである請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、ナノゲル、タンパク質、シリカ、金、銀、TiO2、遷移金属、セラミック、またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項4】
前記ナノ粒子が可視光を分散または散乱させない請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項5】
前記ナノ粒子が約150nm未満の粒径をもつ請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項6】
前記ナノ粒子が約3〜20nmの粒径をもつ請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項7】
前記ハイドロゲルが可逆性であり、コポリマー(酸化状態ではハイドロゲルであり、還元状態では溶液である)を含む請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項8】
前記コポリマーが、モノマーと架橋剤の重合により生成するか、あるいは、可逆性の架橋を含むように誘導されたポリマーである請求項7に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項9】
前記モノマーが、アクリルアミド、N-オルニチンアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、ヒドロキシ-エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸、ベンジルメタクリルアミド、およびメチルチオエチルアクリルアミドからなる群から選択される請求項7に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項10】
前記架橋剤が、N,N'-ビス(アクリロイル)シスタミン、ビニル基、アリル基、シンナメート、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノ-またはポリカルボン酸とポリオールのエステル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリル化合物、ビニル化合物、スチルベン誘導体、アゾ誘導体、シンナモイル誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択される請求項7に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項11】
前記架橋剤がジスルフィドリンカーである請求項7に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項12】
前記ハイドロゲルが還元されて溶液を生成することが可能である請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項13】
前記ハイドロゲルが還元剤の添加により還元されることが可能である請求項12に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項14】
前記溶液が酸化されて前記ハイドロゲルを再生することが可能である請求項12に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項15】
前記溶液が大気中の酸素、または光およびリボフラビンにより酸化されることが可能である請求項14に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項16】
前記ハイドロゲルが、第1の波長の光に曝された場合にハイドロゲルを生成し、また第2の波長の光に曝された場合に溶液を生成するコポリマーを含む請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項17】
前記ハイドロゲルナノコンポジットの屈折率を、前記ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度を変えることによって変えることができる請求項1に記載のハイドロゲルナノコンポジット。
【請求項18】
a)液体状態の可逆ハイドロゲルを用意するステップ;
b)前記の液体状態の可逆ハイドロゲルにナノ粒子を添加して分散体を生成させるステップ;および
c)前記分散体をゲル化させるステップ;
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のハイドロゲルナノコンポジット製造方法。
【請求項19】
前記架橋剤がN,N'-ビス(アクリロイル)シスタミンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に記載のハイドロゲルナノコンポジットのin situでのゲル化により生成される調節可能眼内レンズ。
【請求項21】
屈折率を、前記ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度を変えることによって変えることができる請求項20に記載の調節可能眼内レンズ。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載のハイドロゲルナノコンポジットを含む人工水晶体。
【請求項23】
屈折率を、前記ハイドロゲル中のナノ粒子の濃度を変えることによって変えることができる請求項22に記載の人工水晶体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−63816(P2011−63816A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281920(P2010−281920)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【分割の表示】特願2006−525445(P2006−525445)の分割
【原出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(307014119)
【出願人】(507149866)ワシントン・ユニバーシティ・イン・セント・ルイス (1)
【Fターム(参考)】