説明

眼科手術用コンタクトレンズ

【課題】支持部を強膜に縫着することなく光学部を安定して角膜上に保持できる眼科手術用コンタクトレンズを提供すること。
【解決手段】眼球内部を観察するための光学部11と、この光学部を角膜上に保持して支持する支持部12とを有し、光学部の裏面が角膜の形状に対応した曲面に形成され、支持部の裏面が角膜周囲の強膜の形状に対応した曲面に形成され、上記支持部12が、光学部11の直径方向外側へ延びる第1枝部14と、この第1枝部に連設して延びる1本または複数本の第2枝部15とを有し、この第2枝部が第1枝部の先端14Aから、当該第1枝部の長手方向に交わる方向に延びて構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜硝子体手術等の眼科手術に使用される眼科手術用コンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
網膜硝子体手術では、図8に示すように、仰向けに寝かされた患者の眼球上に所望の眼科手術用コンタクトレンズ100を保持し、手術用顕微鏡を介して眼球の眼底像を観察しながら処置を行っている。上記眼科手術用コンタクトレンズ100を眼球上に保持する手順は、次のようにしてなされる。
【0003】
まず、眼球の角膜(不図示)周囲の強膜101を露出させる。次に、金属製の固定用リング102を、上記角膜を中心として、強膜101に手術糸103を用いて縫着する。次に、強膜101における固定用リング102の周囲に、眼内照明用のライトガイド104、硝子体を切除するための硝子体カッター105、眼内灌流液を注入するためのインフュージョンチューブ106等の手術器具を眼球内へ挿入するための創口107を設ける。その後、上記固定用リング102に眼科手術用コンタクトレンズ100を装着して保持する。
【0004】
ところが、上述のような固定用リング102の強膜101への縫着は、強膜101の半層を掬うように縫う作業であるため熟練を要し、たとえ熟練した手術者にとっても、細心の注意と手間が必要とされる作業である。
【0005】
このような困難な作業を解消するものとして、固定用リング102を使用しない眼科手術用コンタクトレンズが近年開発されている。例えば、図9〜図11に示す眼科手術用コンタクトレンズ110では、レンズ部111の周辺部に固定用のフランジ112を設け、このフランジ112によってレンズ部111を眼球113の角膜114上に保持している(特許文献1、2、3)。
【0006】
尚、図10及び図11中の符号115は、フランジ112に形成された開口部115であり、眼球113の強膜116において、上記開口部115に対応する位置に手術器具を挿入するための創口が形成可能とされている。
【0007】
【特許文献1】特許第3623739号公報
【特許文献2】特開2003‐24366号公報
【特許文献3】欧州特許第1161705号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図9〜図11に示す従来の眼科手術用コンタクトレンズ110にあっては、眼球113の角膜114上への保持が不十分であり、眼球113を傾けたとき等に当該コンタクトレンズ110がずれてしまい、手術を中断しなければならない場合がある。
【0009】
また、フランジ112の開口部115に対応して強膜116に形成された創口に手術器具が挿入されている場合で、特にレンズ部111とフランジ112とが一体型の場合には、当該眼科手術用コンタクトレンズ110を回転させようとしても、上記手術器具とフランジ112とが干渉して、当該コンタクトレンズ110の回転が制限されることがある。この場合には、眼科手術用コンタクトレンズ110を回転して、眼球113の内部を十分に観察することができない。
【0010】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、支持部を強膜に縫着することなく光学部を安定して角膜上に保持できる眼科手術用コンタクトレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、眼球内部を観察するための光学部と、この光学部を角膜上に保持して支持する支持部とを有し、上記光学部の裏面が角膜の形状に対応した曲面に形成され、上記支持部の裏面が角膜周囲の強膜の形状に対応した曲面に形成され、上記支持部が、上記光学部の直径方向外側へ延びる第1枝部と、この第1枝部に連設して延びる1本または複数本の第2枝部と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記支持部は、第2枝部が第1枝部の先端から、当該第1枝部の長手方向に交わる方向に延びて構成されたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記支持部は、第2枝部が第1枝部の先端から、当該第1枝部の長手方向に交わる方向及び上記長手方向と同一の方向に複数本延びて構成されたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、上記支持部には、第1枝部と第2枝部とにより、光学部の周方向に延びる隙間部が形成されたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記支持部の隙間部は、当該隙間部に対応して強膜に形成された創口に挿入される手術器具や、強膜に打ち込まれるトロカールに略接する寸法に設定されたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、上記支持部は、第1枝部から離れた第2枝部の先端が自由端であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、上記支持部は、光学部を着脱自在に嵌合する支持リングを備え、この支持リングに第1枝部の基端が接合して構成されたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、上記支持部が光学部と一体に構成され、上記支持部の第1枝部の基端が上記光学部に接合して構成されたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、上記支持部が、金属、シリコーンなどのゴム類、または軟質アクリルや硬質アクリル樹脂などの合成樹脂類のいずれか一つの材質にて構成されたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明において、上記光学部の表面が、平面、凸面、凹面、プリズムを有する平面、プリズムを有する凸面、またはプリズムを有する凹面のいずれか一つの形状にて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、2、9または10に記載の発明によれば、光学部の裏面が角膜の形状に対応した曲面に形成され、支持部の裏面が角膜周囲の強膜の形状に対応した曲面に形成され、この支持部が、光学部の直径方向外側へ延びる第1枝部と、この第1枝部に連設して延びる1本または複数本の第2枝部とを有することから、支持部は強膜に広い範囲で接触することができる。この結果、この支持部によって、光学部を角膜上に安定して保持し支持することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、支持部は、第2枝部が第1枝部の先端から、当該第1枝部の長手方向に交わる方向及び上記長手方向と同一の方向に複数本延びて構成されたことから、強膜に接触する範囲がより一層拡大するので、光学部を角膜上により一層安定して保持し支持することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、支持部には、第1枝部と第2枝部とにより、光学部の周方向に延びる隙間部が形成されたことから、強膜において上記隙間部に対応する位置に、眼科手術に用いられる手術器具を挿入するための創口を設けたり、手術器具を接続するためのトロカールを打ち込むことができる。
【0024】
また、支持部の上記隙間部が光学部の周方向に延びて形成されたことから、光学部と支持部とが一体構成の場合、あるいは、光学部と支持部とが別体ではあるが、光学部が支持部に対して摩擦力などの作用で動きにくい構成となっている場合で、且つ当該隙間部に対応して強膜に形成された創口に手術器具が挿入されたり、トロカールが打ち込まれている状態でも、光学部及び支持部を回転させることができる。このため、特に、表面がプリズム面である光学部の場合に操作性が向上し、この光学部を通して眼球内部を良好に観察することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、支持部の隙間部は、当該隙間部に対応して強膜に形成された創口に挿入される手術器具、あるいは強膜に打ち込まれたトロカールに略接する寸法に設定されたことから、手術器具やトロカールが支持部を押圧して支持部を固定する固定治具としても機能する。従って、支持部は、固定治具としての手術器具やトロカールによって、光学部をより安定して支持することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、支持部は、第1枝部から離れた第2枝部の先端が自由端であることから、強膜に接触する際の寸法許容度が増大し、その結果、寸法の異なる眼球に対しても光学部を安定して支持することができる。
【0027】
また、支持部における第2枝部の先端が自由端(特に開放した自由端)であることから、手術時における血液、粘弾性物質及び還流液などを速やかに排出することができる。このため、手術をスムーズに進行させることができ、患者及び手術者の負担を軽減できる。
【0028】
更に、支持部における第2枝部の先端が自由端であることから、これらの第1枝部と第2枝部により形成される隙間部に手術器具が配置されている場合にも、当該手術用コンタクトレンズの取り付け及び取り外しを容易に実施できる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、支持部が、光学部を着脱自在に嵌合する支持リングを備え、この支持部と光学部とが分離して構成されたので、光学部のみを支持部に対して回転させ、または交換することができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、支持部が光学部と一体に構成されたことから、光学部と支持部のそれぞれの紛失等を防止できるので、当該手術用コンタクトレンズの取扱いを容易化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1の実施の形態(図1及び図2)
図1は、本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第1の実施の形態を示す正面図である。図2は、図1の眼科手術用コンタクトレンズが眼球に装着された状態を示す側断面図である。これらの図1及び図2に示す眼科手術用コンタクトレンズ10は、網膜硝子体手術等の眼科手術に使用されるものであり、光学部11及び支持部12を有して構成される。
【0032】
光学部11は、眼球1の内部を観察するためのものであり、ガラス、シリコーンなどのゴム類、硬質アクリルや軟質アクリルなどの合成樹脂類のいずれか一つの材質にて構成される。この光学部11の表面11Aは、図12に示すように、平面11AA、凸面11AB、凹面11AC、プリズムを有する平面11AD、プリズムを有する凸面11AE、またはプリズムを有する凹面11AFのいずれか一つの形状にて構成される。また、光学部11の裏面11Bは、眼球1の角膜2の形状に対応(適合)した曲面に形成されている。
【0033】
従って、眼科手術に際しては、光学部11の裏面11Bを患者の眼球1の角膜2に接触させ、光学部11の表面11Aが手術用顕微鏡側になるようにする。実際には、光学部11の裏面11Bと患者の角膜2との間に粘弾性物質が充填されて、両者の誤差が解消される。
【0034】
前記支持部12は、光学部11を眼球1の角膜2上に保持して支持するものであり、支持リング13、第1枝部14及び第2枝部15を有して構成される。この支持部12は、特に第1枝部14及び第2枝部15の裏面16が、眼球1の角膜2周囲の強膜3の形状に対応(適合)した曲面に形成されている。また、この支持部12は、金属、シリコーンなどのゴム類、または軟質アクリルや硬質アクリルなどの合成樹脂類のいずれか一つの材質にて構成される。
【0035】
上記支持リング13は、光学部11を着脱自在に嵌合するものであり、支持部12が光学部11と別体、つまり分離して構成されている場合に設けられるものである。この支持リング13の対向位置に一対の第1枝部14が配設される。つまり、各第1枝部14は、基端14Bが支持リング13に接合され、光学部11の直径方向外側へ直線状または曲線状(本実施の形態では直線状)に延在して構成される。そして、各第1枝部14の先端14Aに連設し、この先端14Aの両側から、第1枝部14の長手方向に交わる方向で、且つ光学部11の周方向に沿う方向にそれぞれ第2枝部15が延在する。これら4本の第2枝部15は、全体として正円形状に構成される。この第2枝部15の存在により、支持部12が眼球1の強膜3に接触する面積が広範囲となる。
【0036】
尚、上述の4本の第2枝部15の全体形状は、楕円形状、卵形形状、菱形形状、または多角形状であってもよい。また、第1枝部14は、1本〜10本の範囲で支持リング13から延在して構成されてもよい。また、第2枝部15は、第1枝部14の先端14Aから1本または3本以上延在してもよい。更に、支持部12は、光学部11と一体に構成されてもよい。この場合には、上記支持リング13が存在せず、第1枝部14の基端14Bは光学部11に直接接合されることになる。
【0037】
さて、前記一対の第1枝部14における先端14Aの両側から延びるそれぞれの第2枝部15の先端15Aは、以下のようになっている。すなわち、第2枝部15の先端15Aは、互いに、接触せずもしくは重ね合わされもせず、または、接触もしくは重ね合わされても接合はされず、または、より好ましくは互いに離間するように構成された自由端である。これにより、第1枝部14及び第2枝部15を有して構成される支持部12は、眼球1の強膜3に接触する際の寸法許容性が増大して、この強膜3に接触する際のフレキシビリティ(柔軟性)が高まる。
【0038】
支持部12には、第1枝部14、第2枝部15及び支持リング13に囲まれて、光学部11の周方向に沿って延びる隙間部17が形成されている。この隙間部17は、隣接する第2枝部15において、支持リング13及び光学部11の周方向に沿い略半円周の領域に亘って連続して形成されている。眼球1の強膜3には、上記隙間部17に対応する位置に手術器具を挿入する創口18が形成可能とされる。上記手術器具は、眼内照明用のライトガイド、硝子体を切除するための硝子体カッター、眼球1内へ眼内灌流液を注入するためのインフュージョンチューブなどである。
【0039】
また、上記隙間部17は、上記創口18に挿入される手術器具に略接する寸法(幅)、つまり手術器具に接するか、または若干小さな寸法(幅)に設定されてもよい。この場合、手術器具は、隙間部17の周囲の支持部12に接してこの支持部12を押圧することにより、当該支持部12を強膜3に固定するための固定器具としても機能する。また、上記隙間部17を通した強膜3上に、手術器具の代わりに、手術器具を接続するためのトロカールを打ち込み、このトロカールが支持部12を押圧して固定器具として機能するものでもよい。
【0040】
以上のように構成されたことから、上記実施の形態によれば、次の効果(1)〜(9)を奏する。
(1)眼科手術用コンタクトレンズ10における光学部11の裏面11Bが眼球1の角膜2の形状に対応(適合)した曲面に形成され、支持部12の裏面16が眼球1の角膜周囲の強膜3の形状に対応(適合)した曲面に形成され、この支持部12が、光学部11の直径方向外側へ延びる第1枝部14と、この第1枝部14の先端14Aの両側からそれぞれ延びる第2枝部15とを有している。この結果、支持部12は、強膜3に広い範囲で接触することができ、光学部11を角膜2上に安定して保持し支持することができる。
【0041】
(2)眼科手術用コンタクトレンズ10における支持部12には、支持リング13、第1枝部14及び第2枝部15に囲まれて、光学部11の周方向に延びる隙間部17が形成されたことから、眼球1の強膜3において上記隙間部17に対応する位置に、眼科手術に用いられる手術器具を挿入するための創口18を設けたり、手術器具を接続するためのトロカールを打ち込むことができる。
【0042】
(3)眼科手術用コンタクトレンズ10における支持部12の隙間17が光学部11の周方向に延びて形成されたことから、光学部11と支持部12とが一体構成の場合、あるいは、光学部11と支持部12とが別体ではあるが、光学部11が支持部12に対して摩擦力などの作用で動きにくい構成となっている場合で、且つ当該隙間部17に対応して強膜3に形成された創口18に手術器具が挿入されたり、トロカールが打ち込まれている状態でも、光学部11及び支持部12を必要に応じて回転させることができる。このため、特に、表面11Aがプリズム面である光学部11の場合に当該コンタクトレンズ10の操作性が向上し、このコンタクトレンズ10の光学部11を通して眼球内部を良好に観察することができる。
【0043】
(4)眼科手術用コンタクトレンズ10における支持部12の隙間部17は、当該隙間部17に対応して強膜3に形成された創口18に挿入される手術器具、あるいは強膜3に打ち込まれるトロカールに接するか、または若干小さな寸法に設定されてもよい。この場合、手術器具やトロカールは隙間部17に接して、この隙間部17周囲の支持部12を押圧し、この支持部12を固定する固定治具としても機能する。従って、支持部12は、固定治具としての手術器具によって、光学部11をより安定して支持することができる。特に、トロカールを打ち込んだ場合には、光学部11の安定性はさらに増すと同時に、強膜3に創口18を設ける必要がないため術後の治癒も早い。
【0044】
(5)眼科手術用コンタクトレンズ10における支持部12は、第1枝部14の先端14Aから離れた第2枝部15の先端15Aが自由端に構成されたことから、眼球1の強膜3に接触する際の寸法許容度が増大し、フレキシビリティーが向上する。その結果、支持部12は、寸法の異なる眼球1に対しても光学部11を安定して保持し支持することができる。
【0045】
(6)支持部12における第2枝部15の先端15Aを自由端、特に互いに離間した自由端としたことから、手術時における血液、粘弾性物質及び灌流液等を速やかに排出することが可能となる。このため、手術をスムーズに進行させることができ、患者及び手術者の負担を軽減できる。
【0046】
(7)支持部12における第2枝部15の先端15Aが自由端であることから、第1枝部14、第2枝部15及び支持リング13に囲まれて形成される隙間部17に手術器具やトロカールが配置されている場合にも、当該眼科手術用コンタクトレンズ10の取り付け取り外しを容易に実施できる。
【0047】
(8)眼科手術用コンタクトレンズ10における支持部12が、光学部11を着脱自在に嵌合する支持リング13を備え、この支持部12と光学部11とが分離して構成されたので、光学部11のみを支持部12に対し回転させ、または他の光学部11と交換することができる。
【0048】
(9)眼科手術用コンタクトレンズ10における支持部12が光学部11と一体に構成された場合には、光学部11と支持部12のそれぞれの紛失を防止できるので、当該コンタクトレンズ10の取扱いを容易化できる。
【0049】
[B]第2〜第6の実施の形態(図3〜図7)
次に、第2〜第6の実施の形態を図面に基づいて説明する。これらの各実施形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0050】
図3に示す第2の実施の形態の眼科手術用コンタクトレンズ20では、支持リング13の対向位置から一対の第1枝部14が延在し、これらの各第1枝部14の先端14Aからそれぞれ1本の第2枝部15が、当該第1枝部14の長手方向に交わり、且つ光学部11の周方向に沿う方向に延在して構成されている。従って、このコンタクトレンズ20においても、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(9)と同様な効果を奏する。その他、この眼科手術用コンタクトレンズ20では、次の効果を奏する。
【0051】
図4に示す第3の実施の形態の眼科手術用コンタクトレンズ30では、支持リング13の一箇所から1本の第1枝部14が延び、この第1枝部14の先端14Aの両側から、第1枝部14の長手方向に交わる方向で、且つ光学部11の周方向に沿う方向にそれぞれ第2枝部15が延在して構成されたものである。従って、このコンタクトレンズ30においても、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(9)と同様な効果を奏する。
その他、この眼科手術用コンタクトレンズ30では、次の効果を奏する。つまり、第1枝部14が1つで隙間部17が略一円周長に形成されているため、手術器具やトロカールが隙間部17に対応して強膜3に配置されている場合にも、当該コンタクトレンズ30を必要に応じて回転させるときの自由度が増大する。
【0052】
図5(A)に示す第4の実施の形態の眼科手術用コンタクトレンズ40では、一対の第1枝部14における各先端14Aの両側からそれぞれ延びる合計4本の第2枝部15は、全体として楕円形状に形成されている。従って、このコンタクトレンズ40においても、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(9)と同様な効果を奏する。その他、この眼科手術用コンタクトレンズ40では、次の効果を奏する。つまり、このコンタクトレンズ40の第2枝部15は、全体として楕円形状に形成されて眼球1の強膜3に接触する範囲が拡大するので、光学部11をより一層安定して角膜2上に保持することができる。
【0053】
図5(B)に示す第4の実施の形態における変形例の眼科手術用コンタクトレンズ41では、支持部43における合計4本の第2枝部42は、それらの外縁44の形状が全体として楕円形状に形成されると共に、それらの内縁45の形状が全体として正円形状に形成されている。従って、当該コンタクトレンズ41では、上記コンタクトレンズ40よりも、第2枝部42の強膜3に接触する面積が増大するので、光学部11をより一層安定して角膜2上に保持することができる。
更に、当該コンタクトレンズ41では、第2枝部42の内縁45が全体として正円形状に形成されて、隙間部17の幅(支持リング13と第2枝部42の内縁45との距離)が隙間部17の周方向に一定となっている。このため、この隙間部17に手術器具やトロカールを配置した状態で、コンタクトレンズ41を強膜3上で回転させた場合であっても、これらの手術器具等は常に隙間部17に接し、隙間部17周囲の支持部43を押圧するので、固定器具としても充分に機能できる。この結果、支持部43を介して、光学部11を安定して角膜2上に支持することができる。
【0054】
図6に示す第5の実施の形態の眼科手術用コンタクトレンズ50では、支持リング13の対向位置から一対の第1枝部14が延在する。これらの各第1枝部14の先端14Aの両側を起点にして第2支持部15が設けられる。すなわち、第2支持部15は、第1枝部14の長手方向に交わる方向で、且つ光学部11の周方向に沿う方向に、上記各先端14Aの両側を起点にしてこれを延長して設けられる。さらに、上記各先端14Aから、第1枝部14の長手方向と同一方向に他の第2枝部51が延在して形成される。従って、このコンタクトレンズ50においても、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(9)と同様な効果を奏する。
その他、この眼科手術用コンタクトレンズ50では、次の効果を奏する。つまり、このコンタクトレンズ50では、一対の第1枝部14の各先端14Aから、2本の第2枝部15と1本の第1枝部51とが延在して構成されたので、支持部12は、眼球1の強膜3に接する接触面積がより一層拡大され、この結果、光学部11を角膜2上により一層安定して保持することができる。
【0055】
図7に示す第6の実施の形態の眼科手術用コンタクトレンズ60では、支持リング13の互いに対向する4箇所から幅広形状の第1枝部14が光学部11の直径方向に延びる。そして、これら各第1枝部14の先端14Aの両側から、第1枝部14の長手方向に交わり、且つ光学部11の周方向に沿う方向に延びる第2枝部15がそれぞれ延在して構成される。従って、このコンタクトレンズ60においても、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(9)と同様な効果を奏する。その他、この眼科手術用コンタクトレンズ60では、次の効果を奏する。つまり、支持部12の第1枝部14の面積が大きいため、この第1枝部14により光学部11を、眼球1の角膜2上により一層安定させることができる。
【0056】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第1の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1の眼科手術用コンタクトレンズが眼球に装着された状態を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第2の実施の形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第3の実施の形態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第4の実施の形態を示す正面図である。
【図6】本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第5の実施の形態を示す正面図である。
【図7】本発明に係る眼科手術用コンタクトレンズの第6の実施の形態を示す正面図である。
【図8】従来の第1の眼科手術用コンタクトレンズの使用状態を示す斜視図である。
【図9】従来の第2の眼科手術用コンタクトレンズを示し、(A)が正面図、(B)が図9 (A)の眼科手術用コンタクトレンズを眼球に装着した状態を示す側断面図である。
【図10】従来の第3の眼科手術用コンタクトレンズを示す正面図である。
【図11】従来の第4の眼科手術用コンタクトレンズを示す正面図である。
【図12】図1に示す眼科手術用コンタクトレンズの光学部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 眼球
2 角膜
3 強膜
10 眼科手術用コンタクトレンズ
11 光学部
11A 表面
11B 裏面
12 支持部
13 支持リング
14 第1枝部
14A 先端
14B 基端
15 第2枝部
16 裏面
17 隙間部
18 創口
20 眼科手術用コンタクトレンズ
30 眼科手術用コンタクトレンズ
40 眼科手術用コンタクトレンズ
41 眼科手術用コンタクトレンズ
50 眼科手術用コンタクトレンズ
51 第2枝部
60 眼科手術用コンタクトレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球内部を観察するための光学部と、この光学部を角膜上に保持して支持する支持部とを有し、
上記光学部の裏面が角膜の形状に対応した曲面に形成され、上記支持部の裏面が角膜周囲の強膜の形状に対応した曲面に形成され、
上記支持部が、上記光学部の直径方向外側へ延びる第1枝部と、この第1枝部に連設して延びる1本または複数本の第2枝部と、を有して構成されたことを特徴とする眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項2】
上記支持部は、第2枝部が第1枝部の先端から、当該第1枝部の長手方向に交わる方向に延びて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項3】
上記支持部は、第2枝部が第1枝部の先端から、当該第1枝部の長手方向に交わる方向及び上記長手方向と同一の方向に複数本延びて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項4】
上記支持部には、第1枝部と第2枝部とにより、光学部の周方向に延びる隙間部が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項5】
上記支持部の隙間部は、当該隙間部に対応して強膜に形成された創口に挿入される手術器具や、強膜に打ち込まれるトロカールに略接する寸法に設定されたことを特徴とする請求項4に記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項6】
上記支持部は、第1枝部から離れた第2枝部の先端が自由端であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項7】
上記支持部は、光学部を着脱自在に嵌合する支持リングを備え、この支持リングに第1枝部の基端が接合して構成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項8】
上記支持部が光学部と一体に構成され、上記支持部の第1枝部の基端が上記光学部に接合して構成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項9】
上記支持部が、金属、シリコーンなどのゴム類、または軟質アクリルや硬質アクリルなどの合成樹脂類のいずれか一つの材質にて構成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の眼科手術用コンタクトレンズ。
【請求項10】
上記光学部の表面が、平面、凸面、凹面、プリズムを有する平面、プリズムを有する凸面、またはプリズムを有する凹面のいずれか一つの形状にて構成されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の眼科手術用コンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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