説明

眼科撮影装置

【課題】 容易にコラージュ画像の取得を行うことができる。
【解決手段】 第1光源から発せられた照明光を被検眼の所定部位に対して局所的に照射し、所定部位からの反射光を受光素子により受光することによって所定部位における第1撮影画像を細胞レベルで得るための第1撮影光学系と、所定部位上における撮影位置を変更するため、第1光源から発せられた照明光を偏向させる光偏向手段と、光偏向手段の駆動を制御して第1撮影画像の撮影位置を変更し、各撮影位置において第1撮影光学系の駆動を制御して所定のフレームレートにて第1撮影画像の動画データを取得してモニタに出力すると共に、動画データを取得する際の所定のフレームレートより遅い時間間隔にて、動画データから静止画データを抽出して記憶部に記憶させる制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼の観察及び撮影を行う眼科撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者眼に対して2次元的にレーザ光を走査し、その反射光を受光して、患者眼の眼底を細胞レベルの高倍率で撮影することができる眼科撮影装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、被検者眼の眼底画像を撮影するための撮影ユニットと、撮影ユニットで撮影された眼底画像よりも高倍率な眼底画像を得るための高倍率撮影ユニットとを備え、高倍率撮影ユニットには被検者眼の収差を取り除くための波面補償部を設ける。これにより、高倍率撮影ユニットで撮影された高倍率の眼底画像から収差が好適に取り除かれて、細胞レベルでの眼底観察が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010‐259543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置によって撮影される高倍率の撮影画像は眼底の局所的な部位を撮影しているため、診断や検査等に必要な情報を得ようとする場合には眼底のある程度の広い範囲を撮影した画像が必要となる。被検者眼の局所的な部位を撮影した画像を接合させることによって、広い範囲を撮影した画像(コラージュ画像)を取得する。コラージュ画像の取得に必要とされる複数の局所的な部位の撮影画像を取得するために、検者は、撮影位置を変更させながら、各撮影位置において、撮影スイッチを操作し、複数枚の局所的な部位の撮影画像を取得していく。
【0005】
しかしながら、撮影位置毎に、撮影スイッチを操作することによって、1枚ずつ局所的な部位の撮影画像を取得していく必要があったため、検者にとって、手間であった。また、コラージュ画像を取得するまでに、時間がかかった。さらに、コラージュ画像を取得する際に、撮影位置を変更させて撮影する間、連続して動画を記憶させることを試みたが、膨大な記憶部の容量を必要とし、現実的では無いことがわかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、被検者眼の前眼部や眼底等における局所的な部位を撮影する眼科撮影装置において、容易にコラージュ画像の取得を行うことのできる眼科撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 第1光源から発せられた照明光を被検眼の所定部位に対して局所的に照射し、該所定部位からの反射光を受光素子により受光することによって前記所定部位における第1撮影画像を細胞レベルで得るための第1撮影光学系と、前記所定部位上における撮影位置を変更するため、前記第1光源から発せられた前記照明光を偏向させる光偏向手段と、前記光偏向手段の駆動を制御して前記第1撮影画像の撮影位置を変更し、各撮影位置において前記第1撮影光学系の駆動を制御して所定のフレームレートにて前記第1撮影画像の動画データを取得してモニタに出力すると共に、前記動画データを取得する際の前記所定のフレームレートより遅い時間間隔にて、前記動画データから静止画データを抽出して記憶部に記憶させる制御手段と、を備えることを特徴とする眼科撮影装置。
(2) 記憶部に記憶された各撮影位置での静止画データを画像処理により繋ぎ合わせて一枚のコラージュ画像を取得する画像処理手段と、を備える(1)の眼科撮影装置。
(3) 前記第1撮影光学系は、被検眼眼底からの反射光を受光して眼底像を撮像する眼底撮像光学系であって、前記眼底撮像光学系の光路中に配置され、入射光の波面を制御して被検眼の波面収差を補償する波面補償デバイスと、被検眼眼底に向けて測定光を投光し、その眼底からの反射光を波面センサにより検出する波面収差検出光学系と、を備え、前記制御手段は、前記波面収差検出光学系により検出される検出結果に基づいて、前記波面補償デバイスの波面を制御する(1)〜(2)のいずれかの眼科撮影装置。
(4) 前記動画データから静止画データを抽出する際の前記時間間隔は、各撮影位置において複数の第1撮影画像が記憶部に記憶されるように設定されている(1)〜(3)の眼科撮影装置。
(5) 前記動画データから静止画データを抽出する際の前記時間間隔は、前記第1撮影画像の撮影位置の変更に同期されるように設定されている(1)〜(3)のいずれかの眼科撮影装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑み、容易にコラージュ画像の取得を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態においては、眼科撮影装置の一例として被検者眼の眼底像を撮影するための眼底撮像光学系を備えた装置を挙げて説明する。図1は、本実施形態の眼底撮影装置の外観図を示しており、本装置は、基台510と、顔支持ユニット600と、撮影部500を備える。顔支持ユニット600は、基台510に取り付けられている。撮影部500には、後述する光学系が収納されており、基台510の上に設けられている。顔支持ユニット600には、顎台610が設けられている。顎台610は、図示無き顎台駆動手段の操作により、顔指示ユニット600の基部に対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(Z方向)に移動される。
【0011】
図2は、本実施形態の眼底撮影装置の光学系を示した模式図である。本実施形態の眼底撮影装置は、大別して、眼底撮像光学系(眼底撮影光学系)100と、波面収差検出光学系(以下、収差検出光学系と記載する。)110と、収差補償ユニット10,72と、第2撮影ユニット200と、トラッキング用ユニット(位置検出部)300、前眼部観察ユニット700を備える。
【0012】
眼底撮像光学系100は、被検眼Eの眼底からの反射光を受光して被検眼の眼底像を撮像する。収差検出光学系110は、波面センサ73を有し、被検眼眼底に測定光を投光し、その眼底からの反射光を波面センサ73にて指標パターン像として受光する。収差補償ユニット10,72は、被検眼の収差を補正するために眼底撮像光学系100に配置される。第2撮影ユニット200は、眼底撮像光学系100で得られる眼底画像(以下、第1撮影画像と記す)の撮影位置を指定するための眼底の観察画像(以下、第2撮影画像と記す)を得る。
【0013】
ここで、眼底撮像光学系100は、被検眼Eの眼底を高解像度(高分解能)・高倍率で撮影する。また、収差補償ユニットは、被検眼の低次収差(視度:例えば、球面度数)を補正するための視度補正部10と、被検眼の高次収差を補正するための高次収差補償部(波面補償デバイス)72と、に大別される。
【0014】
眼底撮像光学系100は、被検眼Eに照明光(照明光束)を照射し眼底を2次元的に照明する第1照明光学系100aと、眼底に照射された照明光の反射光(反射光束)を受光して第1撮影画像を得るための第1撮影光学系100bと、収差補償部72と、を備える。眼底撮像光学系100は、例えば、共焦点光学系を用いた走査型レーザ検眼鏡の構成とされる。
【0015】
第1照明光学系100aは、光源1、走査部15を有する。光源1は、被検眼に視認されにくい近赤外域の照明光が用いられ、眼底を照明するための照明光を出射する。本実施形態では光源1は、波長840nmのSLD(Super Luminescent Diode)光源が用いられる。なお、光源としては、収束性の高い特性を持つスポット光を出射するものであればよく、例えば、半導体レーザ等であってもよい。走査部15は、照明光(スポット光)を眼底上で水平方向(X方向)に走査する。
【0016】
はじめに、第1照明光学系100aを説明する。第1照明光学系100aは、光源1から眼底に到るまでの光路において、レンズ2、偏光ビームスプリッタ(PBS)4、凹面ミラー6、凹面ミラー7、平面ミラー8、波面補償デバイス72、凹面ミラー11、凹面ミラー12、走査部15、凹面ミラー16、凹面ミラー17を備える。そして、さらに、平面ミラー21、レンズ22、平面ミラー23、視度補正部10、平面ミラー25、凹面ミラー26、偏向部400、ダイクロイックミラー90、凹面ミラー31、平面ミラー32、平面ミラー33、凹面ミラー35が配置される。視度補正部10は、平面ミラーとレンズからなる。偏向部400は、光源1から出射された照明光を眼底上で垂直方向(Y方向)に走査する。さらに、偏向部400は、2次元状に走査される照明光の走査位置を補正する。ダイクロイックミラー90は、第2撮影ユニット200等の光路を第1照明光学系100aと略同軸にする。
【0017】
光源1から出射された照明光は、レンズ2により平行光とされた後、PBS4を介する。照明光は、本実施形態においては、PBS4によりS偏光成分のみの光束とされる。PBS4を経た照明光は、ビームスプリッタ(BS)71を介し、凹面ミラー6、凹面ミラー7及び平面ミラー8にて反射され、波面補償デバイス72に入射する。波面補償デバイス72にて反射した照明光は、BS75を介し、凹面ミラー11、凹面ミラー12にて反射され、走査部15に向かう。
【0018】
走査部15は、ここでは、眼底でX方向に照明光を走査する。本実施形態では、照明光を眼底にて水平方向(X方向)に偏向させ走査するための偏向部材となるレゾナントミラーと、ミラーを駆動する駆動部を備える。走査部15を経た照明光は、凹面ミラー16、凹面ミラー17、平面ミラー21で反射され、レンズ22にて集光される。そして、照明光は、平面ミラー23にて反射される。照明光は、視度補正部10を介して、平面ミラー25、凹面ミラー26、にて反射され、偏向部400に向かう。なお、視度補正部10は、駆動部10aを有し、平面ミラー及びレンズが図示する矢印方向に移動することにより、光路長を変えることができ、視度補正の役目を果たしている。なお、視度補正部10は、駆動部と、駆動部の駆動によって光軸方向に移動可能なプリズムからなる構成であってもよい。
【0019】
偏向部400は、所定部位上における撮影位置を変更するため、光源1から発せられた照明光を偏向させる。すなわち、偏向部400は、眼底でXY方向に照明光を走査する。本実施形態では、X走査用のガルバノミラーと、Y走査用のガルバノミラーからなる2枚のガルバノミラーにより構成されている。さらに、偏向部400は、走査部15を経た照明光をX方向及びY方向に対して所定量だけさらに偏向させる役目を持っている。偏向部400を経た照明光は、ダイクロイックミラー90、凹面ミラー31、平面ミラー32、平面ミラー33、及び凹面ミラー35にて反射され、被検眼Eの眼底に集光し、走査部15及び偏向部400によって眼底上を2次元的に走査することとなる。
【0020】
また、ダイクロイックミラー90は、後述する第2撮影ユニット200、トラッキング用ユニット300、及び前眼部観察ユニット700からの光束を透過させ、光源1及び後述する光源76からの光束を反射させる特性を持つ。なお、光源1及び光源76の出射端と被検眼Eの眼底とは共役とされている。このようにして、照明光を眼底に2次元的に照射する第1照明光学系100aが形成される。
【0021】
トラッキング用ユニット300は、撮影される被検眼Eの固視微動等による位置ずれの経時変化を検出し、移動位置情報を得る。トラッキング用ユニット300では、トラッキング開始時に得られた受光結果を基準情報として制御部80に送っておき、その後、1走査毎に得られる受光結果(受光情報)を逐次、制御部80に送信する。制御部80は基準情報に対してその後に得られた受光情報を比較し、基準情報と同じ受光情報が得られるように、移動位置情報を演算により求める。制御部80は求めた移動位置情報に基づいて偏向部400を駆動させる。このようなトラッキングを行うことにより、被検眼Eが微動してもその動きが相殺されるように偏向部400の駆動が行われるため、モニタ70に表示される眼底画像の動きは抑制されることとなる。また、ダイクロイックミラー91は、第2撮影ユニット200からの光束を透過させ、トラッキング用ユニット300からの光束を反射させる特性を持つ。
【0022】
前眼部観察ユニット700は、被検眼前眼部を可視光にて照明し、前眼部正面像を撮像する。また、ダイクロイックミラー95は、第2撮影ユニット200及びトラッキング用ユニット300からの光束を透過させ、前眼部観察ユニット700からの光束を反射させる特性を持つ。
【0023】
次に、第1撮影光学系100bを説明する。第1撮影光学系100は、第1照明光学系100aにて説明したダイクロイックミラー90からBS71までの光路を共通とし、さらに平面ミラー51、PBS52、レンズ53、ピンホール板54、レンズ55、受光素子56を含む。なお、本実施形態では、受光素子56はAPD(アバランシェフォトダイオード)が用いられている。ピンホール板54は、眼底と共役な位置に置かれる。
【0024】
光源1から出射された照明光における眼底からの反射光は、前述した第1照明光学系100aを逆に辿り、BS71、平面ミラー51で反射され、PBS52にてS偏光の光だけ透過される。この透過光は、レンズ53を介してピンホール板54のピンホールに焦点を結ぶ。ピンホールにて焦点を結んだ反射光は、レンズ55を経て受光素子56に受光される。なお、照明光の一部は角膜上で反射されるが、ピンホール板54により大部分が除去され、角膜反射の画像への悪影響が低減される。このため、受光素子56は、角膜反射の影響を抑えて、眼底からの反射光を受光できる。
【0025】
このようにして、第1撮影光学系100bが形成される。第1撮影光学系100bで受光された処理された画像が第1撮影画像(第1眼底画像)となる。1フレームの第1撮影画像は、走査部15の主走査と、偏向部400に設けられたY走査用のガルバノミラーの副走査によって形成される。なお、第1撮影ユニット100で取得する眼底画像(眼底像)の画角が所定の角度となるように走査部15及び偏向部400におけるミラーの振れ角(揺動角度)を定める。ここでは、眼底の所定の範囲を高倍率で観察、撮影する(ここでは、細胞レベルでの観察等をする)ために、画角を1度〜5度程度とする。本実施形態では、1.5度とする。被検眼の視度等にもよるが、第1撮影画像の撮影範囲は、500μm角程度とされる。
【0026】
さらに、偏向部400に設けられたX走査用のガルバノミラーとY走査用のガルバノミラーの反射角度が第1眼底眼底像の撮像画角より大きく移動されることによって、眼底上における第1撮影画像の撮像位置が変更される。
【0027】
次に、第2撮影ユニット200を説明する。第2撮影ユニットは、第1撮影ユニットの画角よりも広画角の眼底画像(第2撮影画像)を取得するためのユニットであり、取得される第2撮影画像(第2眼底画像)は、前述した狭画角の第1撮影画像を得るための位置指定、及び位置確認用の画像として用いられる。このような第2撮影画像を取得するための第2撮影ユニット200は、被検眼Eの眼底画像を観察用として広画角(例えば20度〜60度程度)でリアルタイムに取得できればよい。したがって第2撮影ユニット200は、既存の眼底カメラの観察・撮影光学系や走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)の光学系、及び制御系を用いることができる。
【0028】
次に、収差検出光学系110について説明する。前述のように、収差検出光学系110は、一部の光学素子を第1照明光学系100aの光路上に持ち、第1照明光学系100aと光路を一部共用している。収差検出光学系110は、光源76、レンズ77、PBS78、BS75、BS71、ダイクロイックミラー86、PBS85、レンズ84、平面ミラー83、レンズ82、波面センサ73を含む。そして、収差検出光学系110は、第1照明光学系100aの光路上に置かれるBS71から凹面ミラー35までの光学部材を共用することにより構成されている。なお、波面センサ73は、例えば、多数のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイを透過した光束を受光させるための二次元撮像素子73a(2次元受光素子)からなる。また、収差検出用光源(第3光源)である光源76は、光源1と異なる赤外域の光を発する光源とされる。本実施形態では光源76は波長780nmのレーザ光を出射するレーザダイオードを用いている。
【0029】
光源76から出射したレーザ光は、レンズ77により平行光束とされ、PBS78により光源1からの照明光と直交する偏光方向(P偏光)とされ、BS75により第1照明光学系の光路に導かれる。なお、光源76の出射端はこの眼底共役位置と共役な関係とされる。PBS78は、光源76から出射された光を所定の偏光方向とする役割を持ち、波面補償部が備える第1偏光手段の役割を持つ。
【0030】
BS75により反射したレーザ光は、第1照明光学系100aの光路を経て被検眼Eの眼底に集光される。眼底で反射されたレーザ光は、第1照明光学系100aの各光学部材を経て波面補償デバイス72にて反射し、BS71により第1照明光学系100aの光路から外れ、ダイクロイックミラー86によって反射され、PBS85、レンズ84、平面ミラー83、レンズ82を経て波面センサ73へと導かれる。
【0031】
PBS85は、波面補償部に備えられた第2偏光手段であり、光源76から眼Eに照射された光の偏光方向(P偏光光)を遮断し、この偏光方向に直交する偏光方向(S偏光光)を透過し、波面センサ73へと導光する役割を持つ。なお、ダイクロイックミラー86は、光源1の波長の光(840nm)を透過し、収差検出用の光源76の波長の光(780nm)を反射する特性とされる。従って、波面センサ73では、照射したレーザ光の眼底での散乱光のうちS偏光成分を持つ光が検出される。このようにして、角膜や光学素子で反射される光が波面センサ73に検出されることを抑制している。また、走査部15、波面補償デバイス72の反射面、及び波面センサ73のマイクロレンズアレイは、被検眼の瞳と略共役とされる。また、波面センサ73の受光面は被検眼Eの眼底と略共役とされる。波面センサ73には、低次収差及び高次収差を含む波面収差が検出できる素子、例えば、ハルトマンシャック検出器や光強度の変化を検出する波面曲率センサ等を用いる。
【0032】
また、波面補償デバイス72は、例えば、液晶空間光変調器とし、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を用いるものとしている。そして、波面補償デバイス72は、眼底撮像光学系100の光路中に配置され、入射光の波面を制御して被検眼の波面収差を補償する。なお、波面補償デバイス72は、光源1からの照明光(S偏光光)、照明光の眼底での反射光(S偏光光)、波面収差検出用光の反射光(S偏光成分)等の所定の直線偏光(S偏光)に対して収差を補償することが可能な向きに配置される。これにより、波面補償デバイス72は、入射する光のS偏光成分を変調できる。また、波面補償デバイス72は、その液晶層内の液晶分子の配列方向が入射する反射光の偏光面と略平行であり、さらに、液晶分子が液晶層への印加電圧の変化に応じて回転する所定の面が、波面補償デバイス72に対する眼底からの反射光の入射光軸及び反射光軸と、波面補償デバイス72が持つミラー層の法線と、を含む平面に対して略平行になるように、配置されている。
【0033】
なお、本実施例においては、波面補償デバイス72は、液晶変調素子とし、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を用いるものとしているが、これに限るものではない。反射型の波面補償デバイスであればよい。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一形態であるデフォーマブルミラーを用いてもよい。また、反射型の波面補償デバイスではなく、眼底からの反射光を透過させて波面収差を補償するような透過型の波面補償デバイスを用いることもできる。
【0034】
なお、以上の説明では、収差検出用光源として、第1光源とは異なる波長の照明光を出射する光源を用いたが、第1光源を収差検出用光源として用いてもよい。
【0035】
なお、以上説明した本実施形態では、波面センサ及び波面補償デバイスを被検眼の瞳共役としたが、被検眼の前眼部の所定部位と略共役な位置であればよく、例えば、角膜共役であってもよい。
【0036】
次に、眼底撮影装置の制御系を説明する。図3は、本実施形態の眼底撮影装置の制御系を示したブロック図である。装置全体の制御を行う制御部80には、光源1、駆動機構505、走査部15、受光素子56、波面補償デバイス72、波面センサ73、光源76、第2撮影ユニット200、トラッキング用ユニット300、偏向部400、前眼部観察ユニット700、駆動部10a、が接続される。また、記憶部81、コントロール部92、画像処理部93、モニタ70、が接続される。
【0037】
画像処理部93は受光素子56、第2撮影ユニット200にて受光した信号に基づきモニタ70に画角の異なる被検眼眼底の画像、つまり、第1撮影画像及び第2撮影画像を形成する。また、画像処理部93は、観察画像となる第2撮影画像上で第1撮影画像の撮影位置に対応する位置を示すマーク810(図4(a)参照)を表示させる。なお、表示されるマーク810は、その内側領域が第1撮影画像の撮影範囲とされる形状で形成されている。本実施形態では撮影領域を示す所定の大きさを有した矩形状をマーク810の形状として表示している。更に、画像処理部93は、眼底上の異なる位置で撮影された複数の第1撮影画像同士を張り合わせる画像処理を行い、広画角のコラージュ画像を構築する役目を果たす。
【0038】
記憶部81には種々の設定情報が予め記憶されている。例えば、本実施形態では撮影条件として、第1撮影画像を個々に撮影して表示する通常モードと、連続して撮影された複数の第1撮影画像を張り合わせて同時に確認できるようにした(高倍率の眼底画像を繋ぎ合わせて一枚の広い範囲の撮影画像(コラージュ画像)として確認できる)コラージュモード(手動コラージュモード、自動コラージュモード)とが選択可能に用意されている。また、記憶部81には、撮影された第1撮影画像と第2撮影画像(静止画)が記憶される。なお、第1撮影画像は撮影位置情報と関連付けて記憶される。このように、第1撮影画像が撮影位置情報と共に保存されることで、モニタ70上での複数の第1撮影画像の表示位置が好適に特定される。又は、モニタ70に表示された第2撮影画像上における第1撮影画像の撮影位置に第1撮影画像が好適に張り合わせられるようになる等、複数の第1撮影画像同士の関連付けが好適に行われるようになる。
【0039】
なお、コラージュモードでは、制御部80は、偏向部400の駆動を制御して第1撮影画像の撮影位置を変更し、各撮影位置において、眼底撮像光学系の駆動を制御して所定のフレームレートにて第1撮影画像の動画データを取得してモニタ70に出力する。そして、それと共に、動画データを取得する際の所定のフレームレートより遅い時間間隔にて、動画データから静止画データを抽出して記憶部81に記憶させる。すなわち、コラージュモードでは、第1撮影画像の記憶を開始させるためのトリガ信号の出力タイミングは、第1撮影画像の動画像を取得する際のフレームレートより遅い時間間隔にて出力されるように設定されている(図6(b)参照)。
【0040】
本実施形態では、動画データから静止画データを抽出する際の時間間隔は、各撮影位置において複数の第1撮影画像が記憶部81に記憶されるように設定されている。例えば、ある撮影位置において、所定のフレームレートにて、複数の第1撮影画像が取得されると、取得された複数の第1撮影画像の中で、第1撮影画像の取得枚数よりも少ない枚数の第1撮影画像が記憶される。同様にして、他の撮影位置において、複数の第1撮影画像が取得され、第1撮影画像の取得枚数よりも少ない枚数の第1撮影画像が記憶される。このようにして、コラージュ画像を形成するための各撮影位置での撮影画像が取得されると、記憶部81に記憶された各撮影位置での静止画データ(第1撮影画像)を画像処理により繋ぎ合わせて一枚のコラージュ画像が取得される。(詳しくは後述する)。
【0041】
モニタ70には、例えば、外部のパ−ソナルコンピューターのモニタや装置に備えられているモニタが考えられる。モニタ70には、観察画像としての第2撮影画像が動画表示される(図4の70a参照)。また、モニタ70には、観察画像とは別に記憶部81に記憶された第2撮影画像の静止画が表示される(図4の70b参照)。さらに、モニタ70には、前述の所定のフレームレートに合わせて(例えば、10〜100Hz程度)で更新される第1撮影画像の動画が表示される(図4の70c参照)。なお、モニタ70表示される画像が上記に限定されない。前眼部画像等を表示するようにしてもよい。もちろん、上記の70a、70b、70cの画像をすべて表示しないようにしてもよい。また、検者が表示画像を任意に設定できる構成としてもよい。
【0042】
コントロール部92は、モニタ70に表示される観察画像としての第2撮影画像上に形成されるマーク810の表示位置を移動させることで、コラージュ画像として眼底撮像光学系100で撮影される眼底の撮影領域を設定する第1撮影位置設定手段として用いられる他、眼科撮影装置で撮影を行うための各種条件設定を行う入力手段として用いられる。
【0043】
なお、波面補償デバイス72を制御する場合、波面センサ73で検出された波面収差に基づいて、波面補償デバイス72が制御され、光源76の反射光のS偏光成分と共に、光源1から出射される照明光とその反射光の高次収差が取り除かれる。このようにして、光源1から出射された照明光とその反射光が持つ収差が取り除かれる。言い換えると、被検眼Eの高次収差が取り除かれた(波面補償された)高解像度の第1撮影画像が得られることとなる。この場合、視度補正部10によって低次収差が補正される。
【0044】
図4は本実施形態のモニタ70の表示画面の例である。モニタ70には3つの表示欄70aと70bと70cが設けられており、左側の表示欄70aには、観察画像である第2撮影画像820、コラージュ画像の撮影位置を示すマーク810、第1撮影画像の現在の撮影位置を示すマーク830が表示される。一方、中央の表示欄70bには、予め記憶部81に記憶された第2撮影画像820a(静止画)が表示される。また、第2撮影画像820aと共に、第2撮影画像820a上に複数の第1撮影画像830aの複合によって形成されたコラージュ画像810aが縮小画像として重畳(スーパーインポーズ)されて表示されるようになっている。右側の表示欄70cには、マーク830で選択されている第1撮影画像の観察画像(リアルタイムで撮影されている動画)が表示されるようになっている。マーク830は、第1撮影画像の撮影位置に対応しており、第1撮影画像の撮影位置が変更されるとともに、移動される。なお、表示欄70cには、本来の大きさのコラージュ画像810aが表示されるようにしてもよい。
【0045】
第2撮影画像820a上に重畳されるコラージュ画像810aの表示位置は、上述した撮影位置情報に基づき決定される。なお、本実施形態では、コラージュモードで中央の表示欄70bに表示される第2撮影画像820aは、最初に撮影された静止画が継続して表示されるものとしているが、これに限るものではなく、第2撮影画像820aの観察画像(動画)が表示されるようにしても良い。この場合、制御部80は撮影位置情報に基づき、第2撮影画像(動画)に対するコラージュ画像810aの位置を演算で求めるようにする。
【0046】
以上のような構成を備える眼科撮影装置の制御動作を説明する。ここでは、第2撮影画像の撮影を行うと共に、眼底上の異なる局所領域(撮影箇所)を撮影して、狭画角の撮影画像(細胞レベルの高倍率で撮影された眼底画像)である第1撮影画像を得る。そして、眼底撮像光学系100で撮影される眼底の局所的な撮影位置を順次変更し、各撮影位置での第1撮影画像を得る。そして、画像処理で複数の第1撮影画像を張り合わせることで、高倍率の眼底画像を広画角で確認出来るようにする(コラージュモード(手動コラージュモード)。
【0047】
図5は、コラージュモードにおけるコラージュ画像を取得するまでの流れを説明するフローチャートである。コラージュモードでは、まず、図無き固視標呈示光学系の固視標を点灯させて被検眼Eを固視させた状態で、検者はジョイスティック等の操作部(図示を省略する)を操作して、装置と眼Eとのアライメントを行う。このとき、コントロール部92の操作によって視度補正部10が駆動されて、被検眼Eの視度補正が行われる。アライメントでは、図4に示すように、第2撮影ユニット200による第2撮影画像820の動画がモニタ70の表示欄70aに表示されており、検者はモニタ70の観察画面枠に表示される観察画像(第2撮影画像820)を見ながら、アライメントを完了させる。アライメント完了後、検者はコントロール部92を用いてトラッキング用ユニット300を動作させる。
【0048】
トラッキングを行うことにより、被検眼Eが微動してもその動きが相殺されるように偏向部400の駆動が行われるため、モニタ70に表示される眼底画像の動きは抑制されることとなる。なお、トラッキング用ユニット300による被検者眼の固視微動による位置ずれの検出結果に基づき、画像処理部93の表示制御で、コラージュ画像の撮影位置を定めるマーク810の表示位置が若干補正されても良い。
【0049】
次に、検者は表示欄70aに表示される第2撮影画像820と、マーク810で指定された眼底領域上のコラージュ画像の取得を行う。制御部80は、マーク810で指定された領域におけるコラージュ画像を取得するために、複数の撮影位置にて第1撮影画像830aを取得し、それらの画像を画像処理によって複合し、コラージュ画像を810a取得する。
【0050】
例えば、検者は、設定部としてのコントロール部92の操作で、表示欄70aに表示されたマーク810を第2撮影画像820上で移動させて、コラージュ画像を取得したい位置(撮影部位の範囲)に合わせる。なお、マーク810は、例えば、マウスでマーク810をドラッグして移動させる他、タッチパネルの操作でマーク810の位置を直接指定しても良い。
【0051】
そして、コントロール部82の操作で撮影信号を入力させる。制御部80は、撮影信号に基づき、マーク810で指定された眼底上の走査範囲での撮影が行われるように、走査部15及び偏向部400の駆動制御をする。
【0052】
例えば、制御部80は、前述の眼底上の走査範囲を形成する各撮影位置での画像を得るため、偏向部400に設けられたX走査用とY走査用のガルバノミラーを制御して撮影位置を変更する。なお、撮影位置を変更する際の偏向部400に設けられたガルバノミラーの駆動速度を、一枚の画像を取得する時間より高速化させれば、各撮影位置から次の撮影位置への変更時において、第1撮影画像は取得されない。
【0053】
制御部80は、各撮影位置において、走査部15のレゾナントスキャナと、偏向部400に設けられたY走査用のガルバノミラーとを所定のフレームレートにて制御して、第1撮影画像を動画取得する。このとき、制御部80は、波面補償デバイス72の駆動を前述の所定のフレームレートで制御し、波面センサ73で得られる光学的な分布(受光信号)の検出結果に基づいて波面補償デバイス72の波面を動的に制御することで、眼Eの波面収差を補正する。また、制御部80は、取得された第1撮影画像と撮影位置情報(マーク810の位置情報)とを関連付けて記憶部81に第1撮影画像の静止画を記憶させる。
【0054】
その後、記憶部81に記憶された各撮影位置での第1撮影画像の静止画は、コラージュ画像の作成に用いられる。コラージュ画像を取得するために、記憶部81に複数の第1撮影画像を記憶させる必要があるが、コラージュ画像を取得する際に、所定のフレームレートにて取得されている全ての第1撮影画像を記憶させる場合には、膨大な記憶部81の容量を必要とする。このため、記億部の許容容量をすぐに超えてしまい、画像が保存できなくなることがある。また、コラージュ画像が取得できなくなることがある。
【0055】
このため、第1撮影画像を動画にて取得する動画フレームレート(前述の所定のフレームレート)を遅くする手法が考えられる。しかしながら、この手法の場合、一枚の第1撮影画像を取得する時間が長くなるため、眼の固視微動等の影響により、動画及び静止画にて取得される画像の質が低下する。また、モニタ70に表示される観察画像の更新間隔が遅くなり、検者は、細胞画像の時間的な変化や撮影中の異常等を視認しづらくなる。また、画像を圧縮させる手法のみでは、記憶部の使用容量を十分に抑えることは困難である。
【0056】
このため、これらのような課題を解決し、記憶部の容量が少なくても好適に容易にコラージュ画像の取得を行う必要がある。本実施形態においては、記憶部81への記憶を行う間隔を制御することによって、記憶部81へ画像データを効率よく記憶させ、記億部81の使用容量を少なくする。
【0057】
以下、記憶部81への記憶を行う際の制御について説明する。図6は、第1撮影画像の取得タイミングと第1撮影画像を記憶させるためのトリガ信号を出力するタイミングを示すタイミングチャートである。図6(a)は、従来のように、撮影画像の取得タイミングと第1撮影画像を記憶させるためのトリガ信号を出力するタイミングを同期させた場合のチャートを示す。図6(b)は、撮影画像の取得タイミングに対して第1撮影画像を記憶させるためのトリガ信号を遅い時間間隔で出力した場合のチャートを示す。
【0058】
ガルバノミラーの駆動位置を示す図において、ガルバノミラーの駆動開始位置より駆動が開始され駆動停止位置までガルバノミラーが駆動されると、ガルバノミラーの駆動が停止される。そして、ガルバノミラーを駆動開始位置より駆動停止位置まで駆動させることによって1フレームの第1撮影画像が取得される。
【0059】
図6(a)においては、第1撮影画像の記憶を開始させるトリガ信号の出力タイミングは、画像取得開始に対応するガルバノの駆動が開始されるに合わせて逐次出力される。そして、ガルバノミラーの駆動とともに1フレームの第1撮影画像が逐次記億部81に記憶される。このようにして、1フレームの第1撮影画像を取得する度に、逐次、第1撮影画像を記億部81に記憶させるため、記億部81の容量が多く必要となる。
【0060】
図6(b)においては、第1撮影画像の記憶を開始させるトリガ信号の出力タイミングは、ガルバノミラーの駆動によって画像が取得される際の周期の5周期(フレーム)に1度だけ出力される。すなわち、第1撮影画像は、5フレーム取得される毎に1フレームだけ記億部81に記憶される。このため、第1撮影画像の記憶を開始させるトリガ信号の出力タイミングを、画像を取得するレートより遅い間隔に設定することによって、記憶部81に記憶される画像が少なくなり、記憶部81に使用容量を少なくすることができる。
【0061】
以下、記憶部81の使用容量を少なくする制御について、より具体的に説明する。例えば、本実施形態において、第1撮影画像の取得は、所定のフレームレート(本実施例では、10Hz)にて行われる。また、本実施形態では、コラージュ画像を取得するための撮影範囲のサイズは、所定のサイズ(本実施例では、第1撮影画像を5×5フレーム並べて複合させた範囲)で設定されているものとする。すなわち、眼底上の撮影する走査範囲を示すマーク810は、予め、所定サイズで設定されている。なお、5×5フレームとは、コラージュ画像が第1撮影画像を縦に5枚、横に5枚ずつ並べて、複合したものを示している。
【0062】
図7は、コラージュ画像撮影時の動作を説明する図である。コラージュ画像を取得するために、5×5フレームの第1撮影画像の取得について説明する。なお、本実施形態においては、各撮影位置にて1s毎に撮影を行った場合を例として説明する。
【0063】
コラージュモードにおいて、検者によって、第2撮影画像上で、コラージュ画像の撮影位置が選択され、コントロール部82の操作で撮影信号が入力されると、制御部80は、コラージュ画像の取得を開始する。図7に示されるように、制御部80は、コラージュ画像900を取得するために、第5×5フレームの各撮影位置における第1撮影画像の取得を開始する。
【0064】
初めに、制御部80は、第1の撮影位置910a(例えば、全5×5フレームを撮影するために設定された各撮影位置の内、左上隅の第1撮影画像を取得するための撮影位置)における第1撮影画像920aの取得を行い、その撮影位置情報とともに記億部81に記憶させる。第1の撮影位置910aにおいて、第1撮影画像920aの取得を1s間行った後、制御部80は、偏向部400を駆動させることによって、第2の撮影位置910b(例えば、第1撮影位置の隣の撮影位置)へ撮影位置を変更させる。制御部80は、第2の撮影位置910bにおいて、第1撮影画像920bの取得を1s間行い、画像をその撮影位置情報とともに記憶させる。第2の撮影位置910bにおける第1撮影画像920bの取得完了後、次の撮影位置へと変更を行い、変更後、第1撮影画像の取得を行い、その撮影位置情報とともに記憶させる。このような制御動作を繰り返し行い、コラージュ画像900を取得するための、5×5フレームの第1撮影画像をその撮影位置情報とともに記憶部81に蓄積させていく。
【0065】
ここで、第1撮影画像を記憶させるタイミングによる記憶部81の使用容量の変化について、具体的に説明する。なお、本実施形態においては、第1撮影画像1フレームあたりの画素は、512×512ピクセルとする。このとき、第1撮影画像1フレームあたりの画像データ容量は、約2.6MBとなる。
【0066】
例えば、本実施形態において、各撮影位置にて1sの間取得を行い、取得した第1撮影画像を全て記憶させていく場合、1つの撮影位置おいて、10フレームの第1撮影画像が記憶される。そして、各撮影位置にて、10フレームの第1撮影画像をそれぞれ取得し、記憶した場合に、約26MBのデータ容量となる。さらに、コラージュ画像取得のために、5×5フレームの第1撮影画像を記憶させた場合には、約650MBのデータ容量となる。このため、複数回のコラージュ画像の取得を行った場合に、記憶部81の許容の容量を超えてしまい、多くのコラージュ画像を取得することができなくなる。
【0067】
一方、本実施形態において、所定の間隔(例えば、0.5s)にて、画像記憶を開始させるトリガ信号を出力する場合、1s間に2回の第1撮影画像の記憶が行われる。すなわち、一つの撮影位置において、1s間に取得される全10フレームの内、2フレームの第1撮影画像が記億部81に記憶される。そして、各撮影位置にて、2フレームの第1撮影画像をそれぞれ取得し、記憶した場合に、データ容量は、約5.2MBの容量となる。さらに、コラージュ画像取得のために、5×5フレームの第1撮影画像を記憶させた場合には、データ容量は、約130MBの容量となる。このため、記億部81の使用容量が、全ての画像を記憶させる場合の使用容量よりも少なくすむため、記憶部81の容量が少なくても効率よく、より多くのコラージュ画像の取得を行うことのできる。
【0068】
なお、上記記載においては、5×5フレームにてコラージュ画像を形成するような構成としたがこれに限定されない。例えば、10×10フレーム、6×6フレーム、5×6フレーム等でもかまわない。もちろん、検者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0069】
以上のようにして、制御部80は、指定された眼底上の走査範囲に対応する各第1撮影画像が記憶部81に記憶されると、それらの撮影位置情報を用いて各第1撮影画像を画像処理によって複合し、コラージュ画像を取得する。より、具体的には、例えば、制御部80は、各撮影位置において記憶された第1撮影画像とともに記億部81に記憶されている撮影位置情報に基づいて、第1撮影画像間の複合処理を行っていく。
【0070】
なお、本実施形態においては、同一の撮影位置において、複数フレームの(2フレーム)の第1撮影画像が取得されている。このため、コラージュ画像の取得を行う際に用いる第1撮影画像として、2フレームの第1撮影画像から1フレームを選択するか又は2フレームの画像を平均化して用いる等の処理が考えられる。1フレームを選択する場合には、例えば、周辺の第1撮影画像との相関値によって選択をする方法や画像の輝度値を検出し、輝度値によって画像の選択をする方法が考えられる。
【0071】
制御部80は、コラージュ画像を取得するとともに、第2撮影ユニット200によって、第2撮影画像の静止画を得て、記憶部81に記憶させる処理を行う。一方、画像処理部93は、記憶部81に記憶された第2撮影画像820aの表示制御を行うと共に、表示された第2撮影画像820a上に、高倍率の撮影画像であるコラージュを重畳させる処理を行う。もちろん、取得したコラージュ画像を第2撮影画像に重畳することなく、表示するようにしてもよい。
【0072】
以上のように、本発明によれば、検者は、複数枚の局所的な部位の撮影画像を取得していく際に、各撮影位置にて、撮影スイッチを操作して、複数枚の局所的な部位の撮影画像を取得していく必要がなくなる。このため、検者は、時間をかけることなく、容易にコラージュ画像を取得することができる。さらに、コラージュ画像の取得の際に、記憶部81の使用容量を少なくすることによって、効率よく多くの画像を記憶することができる。また、画像を記憶させる際の圧縮等の処理が必要となくなるため、コラージュ画像を取得するまでの時間が短縮できる。また、コラージュ画像の取得中においても、第1撮影画像の観察画像が素早く更新されるため、撮影中の異常や細胞画像の時間的変化を正確に確認することができる。これらのことから、本発明を用いることによって、効率よく容易にコラージュ画像を取得することができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、各撮影位置にて第1撮影画像を取得する際の撮影位置の移動において、高速で移動させることによって、撮影位置の移動中は、第1撮影画像の取得が行われない構成としたがこれに限定されない。例えば、撮影位置の移動が高速でない場合には、移動中に第1撮影画像が取得される場合があるが、移動中には、第1撮影画像の取得を停止させるようにすればよい。
【0074】
なお、本実施形態は、第1光源から発せられた照明光を被検眼の所定部位に対して局所的に照射し、該所定部位からの反射光を受光素子により受光することによって前記所定部位における第1の撮影画像を細胞レベルで得る第1撮像光学系として、被検者眼の眼底像を撮影するための眼底撮像光学系について説明したがこれに限定されない。例えば、被検者眼の角膜の角膜内皮細胞を確認できるような高倍率の撮影を行うための光学系を備える角膜内皮用顕微鏡において、本発明の構成を適用することができる。また、被検者眼の前眼部撮影において、高倍率の撮影画像として角膜内皮細胞の撮影を行う場合にも、本発明の構成が適用されることで、前眼部の観察が好適に行われるようになる。
【0075】
なお、本実施形態において、画像を記憶させるトリガ信号を出力するタイミングを第1撮影画像の取得よりも遅くし、所定の時間間隔にて記憶をさせていく構成としたがこれに限定されない。前記動画データから静止画データを抽出する際の前記時間間隔は、前記第1撮影画像の撮影位置の変更に同期されるように設定してもよい。この場合、トリガ信号を出力するタイミングが撮影位置の移動のタイミングに合わせされる。例えば、撮影位置の移動が開始され、移動終了後に、トリガ信号を出力し、第1撮影画像を取得していく構成が挙げられる。この場合、各撮影位置において、1フレームの第1撮影画像が記憶されることになるため、記憶部81の使用容量がより少なくてすむ。
【0076】
なお、以上の説明においては、眼底撮像光学系100として、被検眼眼底と略共役な位置に配置された共焦点開口を介して被検眼眼底で反射した光束を受光して被検眼眼底の共焦点正面画像を撮影する共焦点光学系(SLO光学系)を用いるものとしたが、これに限るものではない(例えば、特表2001−507258号公報参照)。
【0077】
例えば、被検眼眼底で反射した光束を二次元撮像素子により受光して被検眼の眼底正面画像を撮影する眼底カメラ光学系であってもよい。また、被検眼眼底で反射した光束と参照光による干渉光を受光して被検眼の断層画像を撮影する光断層干渉光学系(OCT光学系)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態の眼底撮影装置の外観図を示した図である。
【図2】本実施形態の眼底撮影装置の光学系を示した模式図である。
【図3】本実施形態の眼底撮影装置の制御系を示したブロック図である。
【図4】本実施形態のモニタの表示画面の例である
【図5】コラージュモードにおけるコラージュ画像を取得するまでの流れを説明するフローチャートである。
【図6】第1撮影画像の取得タイミングと第1撮影画像を記憶させるためのトリガ信号を出力するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】コラージュ画像撮影時の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0079】
1 光源
10 視度補正部
15 走査部
56 受光素子
72 波面補償デバイス
73 波面センサ
76 光源
70 モニタ
80 制御部
81 記憶部
100 眼底撮像光学系
110 波面収差検出光学系
200 第2撮影ユニット
300 トラッキング用ユニット
400 偏向部
700 前眼部観察ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源から発せられた照明光を被検眼の所定部位に対して局所的に照射し、該所定部位からの反射光を受光素子により受光することによって前記所定部位における第1撮影画像を細胞レベルで得るための第1撮影光学系と、
前記所定部位上における撮影位置を変更するため、前記第1光源から発せられた前記照明光を偏向させる光偏向手段と、
前記光偏向手段の駆動を制御して前記第1撮影画像の撮影位置を変更し、各撮影位置において前記第1撮影光学系の駆動を制御して所定のフレームレートにて前記第1撮影画像の動画データを取得してモニタに出力すると共に、前記動画データを取得する際の前記所定のフレームレートより遅い時間間隔にて、前記動画データから静止画データを抽出して記憶部に記憶させる制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】
記憶部に記憶された各撮影位置での静止画データを画像処理により繋ぎ合わせて一枚のコラージュ画像を取得する画像処理手段と、
を備える請求項1の眼科撮影装置。
【請求項3】
前記第1撮影光学系は、被検眼眼底からの反射光を受光して眼底像を撮像する眼底撮像光学系であって、
前記眼底撮像光学系の光路中に配置され、入射光の波面を制御して被検眼の波面収差を補償する波面補償デバイスと、
被検眼眼底に向けて測定光を投光し、その眼底からの反射光を波面センサにより検出する波面収差検出光学系と、を備え、
前記制御手段は、前記波面収差検出光学系により検出される検出結果に基づいて、前記波面補償デバイスの波面を制御する請求項1〜2のいずれかの眼科撮影装置。
【請求項4】
前記動画データから静止画データを抽出する際の前記時間間隔は、各撮影位置において複数の第1撮影画像が記憶部に記憶されるように設定されている請求項1〜3の眼科撮影装置。
【請求項5】
前記動画データから静止画データを抽出する際の前記時間間隔は、前記第1撮影画像の撮影位置の変更に同期されるように設定されている請求項1〜3のいずれかの眼科撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−70941(P2013−70941A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214234(P2011−214234)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)