説明

眼科検査装置及びヘス検査装置

【課題】被験者の自然な状態で高い検査精度を得る眼科検査装置を提供する。
【解決手段】眼科検査装置1は、スクリーン11と、検査制御装置3と、視標映像を投影する第1映像投影部5と、ポインタ映像を投影する第2映像投影部7と、第1映像投影部5及び第2映像投影部7の投影を反射してスクリーン11へ投影する反射鏡9と、ポインタ位置を入力するポインタ操作入力部13とを備える。検査制御装置3は、視標映像を生成する第1映像生成部21と、視標映像をスクリーン11上で歪みのないように補正する映像補正部22と、ポインタ操作入力部13の入力からポインタ位置を計算し記録する計算記憶部24と、ポインタ映像を生成する第2映像生成部23と、視標映像及びポインタの位置を提示または出力する出力部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼位・眼球運動検査等の眼科検査を行う眼科検査装置及びヘス(Hess)検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼球運動に障害が生じると、右眼と左眼の視線が1つの固視点に合わなくなる斜視や物が二重に見える複視の状態となる。このような障害の検査として、従来よりヘス赤緑検査が用いられている(非特許文献1)。ヘス赤緑検査では、被験者の一眼に赤色レンズ、他眼に緑色レンズの眼鏡を装用させ、赤い碁盤目状のヘス・スクリーンを見せる。そして、スクリーン上の赤色の視標に、被験者が操作する緑色のスポットである指示用視標を順次指示させる。スクリーン上の赤色の視標は緑色のレンズを装用した眼のみに見え、緑色の指示用視標は赤色レンズを装用した眼のみに見える。このため被験者に斜視や複視があれば、視標と指示用視標とのずれである眼位ズレが生じる。検者は、この眼位ズレを例えばヘス・スクリーンと同じ碁盤目状の入力用テンプレートを用いて電子カルテ入力端末から入力する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−218563号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】書籍「現代の眼科学」(改訂第10版、第256頁、2009年4月、金原出版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した電子カルテ入力システムでは、ヘス・スクリーンは、従来と同じ広角の魚眼レンズ等を用いてスクリーン面に投影され、被験者は赤緑眼鏡をかけて検査を受けている。このため、グリッドに歪みがあること、赤緑眼鏡を用いた左右視界の分離が普段生活している実環境から離れたものであること、スクリーンが平面のため被験者の眼の位置からスクリーン面の各点まで等距離でないこと等、問題点があった。
【0006】
以上の問題点に鑑み、本発明の課題は、検査環境を実環境に近づけて、被験者の自然な状態で高い検査精度を得ることができる眼科検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するために、被験者の眼からの距離を一様に保持できるスクリーンと、視標映像を生成する第1映像生成部と、第1映像生成部が生成した視標映像を前記スクリーン上で被験者の目から見て歪みがないように補正する映像補正部と、該映像補正部が補正した視標映像を前記スクリーンへ投影する第1映像投影部と、前記被験者がポインタの位置操作を入力するポインタ操作入力部と、前記ポインタ操作部からの入力に応じて前記視標映像上の前記ポインタの位置を計算して記録する計算記憶部と、該計算記憶部が計算した前記視標映像上の位置に前記ポインタの映像を生成する第2映像生成部と、該第2映像生成部が生成した映像を前記スクリーンへ投影する第2映像投影部と、前記視標映像位置とともに前記ポインタ位置を提示または出力する出力部と、を備えたことを要旨とする眼科検査装置である。
【0008】
また本発明の眼科検査装置において、前記計算記憶部が計算した前記視標映像上の前記ポインタ位置を前記被験者の視点位置からのずれ角度に換算して前記出力部へ出力する眼位ずれ量計算部を備えることができる。
【0009】
また本発明の眼科検査装置においては、前記被験者の眼の位置を検者が入力することができる被験者視点位置入力部を備えることができる。
【0010】
また本発明の眼科検査装置においては、前記被験者を撮影して得られた画像に基づいて被験者の眼の位置を検出する視点位置検出部を備えることができる。
【0011】
また本発明においては、前記被験者の位置を移動する駆動部と、前記視点位置検出部の検出結果に基づいて前記駆動部を制御して前記被験者の位置を操作する被験者位置制御部と、を備えることができる。
【0012】
更に本発明の眼科検査装置をヘス検査装置に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1映像生成部が生成した視標映像を映像補正部がスクリーン上で被験者の目から見て歪みがないように補正するので、従来の魚眼レンズから投影したグリッドの映像のような視標映像の歪みが無く、自然な視標映像を投影することができるという効果がある。
【0014】
また本発明によれば、映像補正部が補正した映像と、第2映像生成部が生成したポインタの映像を、従来の赤緑分離だけではなく、偏光子やカラーフィルタ、レンチキュラレンズなどの光学系により左右の眼に見える映像を分離することができるので、被験者が普段生活している自然な状態で眼科検査を行うことができるという効果がある。
【0015】
さらに本発明によれば、被験者がポインタの位置操作を入力するポインタ操作入力部と、このポインタ操作入力部からの入力に応じて視標映像上のポインタの位置を計算して記録する計算記憶部と、視標映像位置とともにポインタ位置を提示または出力する出力部と、を備えたことにより、検者が手作業で眼位のズレをチャート紙上に記入することなく、自動的に眼位のズレを記録することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る眼科検査装置の実施例1を説明する構成図である。
【図2】実施例1の動作を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1における検査結果チャート例を示す図である。
【図4】本発明に係る眼科検査装置の実施例2を説明する構成図である。
【図5】実施例2の動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施例2における検査結果チャート例を示す図である。
【図7】本発明に係る眼科検査装置の実施例3を説明する構成図である。
【図8】実施例3の動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明に係る眼科検査装置の実施例4を説明する構成図である。
【図10】実施例4の動作を説明する概略フローチャートである。
【図11】実施例4における視点位置の最適調整を説明する詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の各実施例に示す眼科検査装置は、「眼位・眼球運動検査」や「ヘス検査」に特に好適な眼科検査装置である。しかし、本発明の眼科検査装置は、両眼視機能検査や不等像視検査にも適用可能である。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明に係る眼科検査装置の実施例1の構成を説明する構成図である。図2は、実施例1の動作を説明するフローチャートである。図3は、実施例1における検査結果チャートの出力例を示す図である。
【0019】
図1において、眼科検査装置1は、被験者15の眼からの距離を一様に保持できるスクリーン11と、検査映像を生成するとともに検査全体を制御する検査制御装置3と、検査制御装置3の後述する映像補正部22が補正した視標映像をスクリーン11へ投影する第1映像投影部5と、被験者15がポインタの位置操作を入力するポインタ操作入力部13と、検査制御装置3の第2映像生成部23が生成したポインタの映像をスクリーン11へ投影する第2映像投影部7と、第1映像投影部5及び第2映像投影部7からの投影を反射してスクリーン11へ投影する反射鏡9とを備えている。
【0020】
スクリーン11の形状は、球面が好ましく、球の中心に被験者15の眼の位置が来るように、被験者15の顎を載せる台を設けてもよい。またスクリーン11は、少なくとも被験者15の眼の位置から、上下左右に各10度以上の範囲をカバーする大きさを備えることが好ましい。
【0021】
尚、第1映像投影部5と第2映像投影部7の映像は、偏光子(直線偏光、円偏光)、カラーフィルタ、レンチキュラレンズなどによって、被験者の左右眼へと分離して提示することができる。
【0022】
また、眼科検査装置1により、ヘス(Hess)検査を行う場合には、被験者15は、一方の眼に第1映像投影部5の映像のみ、及び他方の眼に第2映像投影部7の映像のみを分離して提示できるように、例えば、偏光眼鏡、カラーフィルタをレンズとした眼鏡等を着用する。
【0023】
検査制御装置3は、視標映像(例えば、碁盤目状のグリッドの映像)を生成する第1映像生成部21と、第1映像生成部21が生成した視標映像をスクリーン11上で被験者15の目から見て歪みがないように(例えば、正方形状となるように)補正する映像補正部22と、ポインタ操作入力部13からの入力に応じて視標映像上のポインタの位置を計算して記録する計算記憶部24と、計算記憶部24が計算した視標映像上の位置にポインタの映像を生成する第2映像生成部23と、視標映像位置とともにポインタ位置を提示または出力する出力部25と、を備えている。
【0024】
検査制御装置3は、ハードウェアとしては、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションを用いて、眼科検査のための映像を生成し、かつ生成した映像と検査全体を制御するプログラムをインストールして構成される。
【0025】
被験者15がポインタの位置操作を入力するポインタ操作入力部13は、検査制御装置3に接続され、スクリーン11上での任意の点への移動操作を入力可能な、マウス、トラックボール、ジョイスティック等の入力装置である。またポインタ操作入力部13は、移動後のポインタ位置を確定させる位置確定入力を備えてもよい。このポインタ位置確定の入力は、例えば、ポインタ操作入力部13をマウスとした場合、左または右クリックボタンをクリックすることと定義することができる。
【0026】
また、検査制御装置3は、図示しない映像信号出力ポートを少なくとも2つ備え、一方の映像信号出力ポートは、映像補正部22から第1映像投影部5へ視標映像の映像信号を出力し、他方の映像信号出力ポートは、第2映像生成部23から第2映像投影部7へポインタの映像信号を出力するのに用いられる。
【0027】
映像補正部22は、第1映像投影部5から反射鏡9を介してスクリーン11へ投影した際に、被験者15から見てスクリーン11上の視標映像が歪みなく見えるように、第1映像生成部21が生成した視標映像を補正する。このため、第1映像投影部5と、反射鏡9と、スクリーン11とのそれぞれの形状と位置関係を示す関係式が映像補正部22に記憶されているとともに、視標映像を補正するためのアルゴリズムが記憶されているものとする。
【0028】
また、第2映像生成部23は、ポインタの位置を示す矢印の映像を生成する。被験者15がポインタ操作入力部13から、ポインタ位置を動かす操作を入力すると、計算記憶部24がスクリーン11上のポインタ位置が変わるようにポインタ位置を計算する。この計算結果は、計算記憶部24から第2映像生成部23へ出力され、第2映像生成部23は、記憶計算部24に出力に基づいて、ポインタ位置が更新された映像を生成する。これにより、被験者15がスクリーン11上のポインタ位置を制御可能となっている。そして、被験者15は、一方の眼でスクリーン11上の視標映像を固視し、他方の眼に映るポインタの位置が視標映像上の指定された点に重なるように見えたときに、ポインタ操作入力部13からポインタ位置確定を入力してもよい。あるいは、一定時間以上ポインタ位置が動かなかった場合に、ポインタ位置確定としてもよい。
【0029】
ポインタ操作入力部13にポインタ位置確定の入力を備える場合には、例えば、ポインタ操作入力部13をマウスとした場合、右クリックボタンとするように定義することができる。
【0030】
出力部25は、検査結果として、視標映像と、視標映像上の点を被験者がポインタで指示した位置とを含む検査結果チャートを出力するプリンタや、液晶表示装置等の画像、また、第1第2映像投影部に両眼の位置ずれのテキスト情報を出力できる装置である。
【0031】
次に、図2のフローチャートを参照して、眼科検査装置1の動作を説明する。最初に検査制御装置3は、ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、第1映像生成部21により視標映像を生成し、視標映像をスクリーン11へ投影したときに被験者15の目から見て歪みがないように、映像補正部22が視標映像を補正する。同時に、第2映像生成部23がポインタの映像として矢印などの映像を生成する。
【0032】
次いで、S12において、第1映像投影部5が補正された視標映像をスクリーン11へ投影し、第2映像投影部7がポインタの映像をスクリーン11へ投影する。
【0033】
次いでS14で、検者は、被験者15に、スクリーン11に投影された視標映像のいずれの点を固視するかを指示し、被験者15は、指示された点を一方の眼で固視しながら、他方の眼で見えるポインタの位置が指示された点に重なるように、ポインタ操作入力部13を操作する。このポインタ操作入力部13の操作信号は、計算記憶部24へ取り込まれる。
【0034】
次いでS16で、計算記憶部24は、ポインタ操作入力部13から入力した操作信号に基づいて、ポインタの移動方向と移動距離を算出して、視標映像上の新たなポインタ位置を計算する。次いでS18で、計算記憶部24は、S16で計算したポインタ位置を記憶する。次いで、ポインタ位置が確定された否かを判定する。この判定は、ポインタ操作入力部13にポインタ位置確定の入力を備える場合には、位置確定の入力が有るか否かで判定する。ポインタ操作入力部13にポインタ位置確定の入力を備えない場合には、ポインタ位置が一定の位置で所定時間(例えば、10秒)以上留まっていれば、位置確定とする。S20の判定で、ポインタ位置確定でなければ、S22へ進む。S20の判定で、ポインタ位置確定であれば、S24へ進む。
【0035】
S22では、S16で計算記憶部24が計算した新しいポインタ位置で、第2映像生成部23がポインタの映像を生成し、S12へ戻る。こうして、被験者15がポインタ操作入力部13を操作した入力に応じて、ポインタ位置が更新された映像が生成され、視標映像と更新後のポインタとが投影されることになる。
【0036】
S24では、検査用の点が全て終了したか否かを判定する。通常のヘス検査では、例えば、図3(a)に示す視標映像が表示され、中央の点を1番、その15゜上方の点を2番、以下、時計回りに9番までの合計9個の点を用いて検査を行う。S24の判定で、全ての点で検査が終了していなければ、新たな点を用いて検査するために、S12へ戻る。S24の判定で、全ての点が終了していれば、S30へ進み、検査結果チャートをモニタ画面に表示出力したり、プリンタへ印刷出力して終了する。この検査結果チャートの出力例が図3(a)である。図3(a)中の9個の黒点は、1番〜9番の視標映像上の各点(固視用視標)に対して、被験者15が指示したポインタ(指示用視標)の位置である。尚、図3(b)に示すように、被験者が指示したポインタの位置を線分で結んで表示してもよい。
【0037】
以上説明した実施例1によれば、第1映像生成部が生成した視標映像を映像補正部がスクリーン上で被験者の目から見て歪みなくなるように補正するので、従来の魚眼レンズから投影したグリッドの映像のような視標映像の歪みが無く、自然な視標映像を投影することができるという効果がある。
【0038】
また実施例1によれば、第1映像投影部と第2映像投影部の映像は、偏光子などによって、被験者の左右眼へと分離して提示することができるようになり、被験者が普段生活している自然な状態で眼科検査を行うことができるという効果がある。
【0039】
さらに実施例1によれば、出力部が視標映像位置とともに被験者が指示したポインタ位置を提示または出力するので、検者が手作業で眼位のズレをチャート紙上に転記する際のような誤差が混入することなく、自動的に眼位のズレを正確に記録できるという効果がある。
【実施例2】
【0040】
図4は、本発明に係る眼科検査装置の実施例2の構成を説明する構成図である。図5は、実施例2の動作を説明するフローチャートである。
【0041】
図4の実施例2の眼科検査装置1は、図1に示した実施例1の構成に対して、検査制御装置3の内部に眼位ずれ量計算部26が追加されている。その他の構成は、図1と同様であるので、同じ構成要素には、同じ符号を付与して重複する説明を省略する。
【0042】
眼位ずれ量計算部26は、記憶計算部24が計算して記憶したポインタ位置に基づいて、各検査点における被験者15の眼位ずれ量を計算するものである。
【0043】
図5のフローチャートは、図2に示した実施例1のフローチャートに対して、S29が追加されている。その他の各ステップは、図2と同様であるので、S29のみ説明する。S24の判定で、全ての点が終了していれば、S29へ進む。S29では、眼位ずれ量計算部26が、視標映像上の点(固視用視標)の位置に対する被験者が指示したポインタ(指示用視標)の位置のずれ量を被験者の視点位置からの角度として計算し、出力部25へ出力する。
【0044】
図6は、眼位ずれ量計算部26の計算結果の出力例を示す図である。5番の視標映像上の点(固視用視標)の位置に対して、被験者が指示したポインタ(指示用視標)の位置のずれ量が被験者の視点位置からの角度として、右に12度、上に2度であることを示している。この計算結果の出力には、予め左右方向のずれに対しては右が+、左が−、上下方向のずれに対しては、上が+、下が−などと設定しておくことで、座標表示や、数値だけの結果を出力することもできる。
【0045】
以上説明した実施例2によれば、第1映像生成部が生成した視標映像を映像補正部がスクリーン上で被験者の目から見て歪みがないように補正するので、従来の魚眼レンズから投影したグリッドの映像のような視標映像の歪みが無く、自然な視標映像を投影することができるという効果がある。
【0046】
また実施例2によれば、第1映像投影部と第2映像投影部の映像は、偏光子などによって、被験者の左右眼へと分離して提示することができるようになり、被験者が普段生活している自然な状態で眼科検査を行うことができるという効果がある。
【0047】
また実施例2によれば、出力部が視標映像位置とともに被験者が指示したポインタ位置を提示または出力するので、検者が手作業で眼位のズレをチャート紙上に転記する際のような誤差が混入することなく、自動的に眼位のズレを正確に記録できるという効果がある。
【0048】
さらに実施例2によれば、眼位ずれ量計算部が、視標映像上の点(固視用視標)の位置に対して、被験者が指示したポインタ(指示用視標)の位置のずれ量を被験者の視点位置からの角度として自動的に計算するので、正確な定量的なずれ量を検出することができるという効果がある。
【実施例3】
【0049】
図7は、本発明に係る眼科検査装置の実施例3の構成を説明する構成図である。図8は、実施例3の動作を説明するフローチャートである。
【0050】
図7の実施例3の眼科検査装置1は、図4に示した実施例2の構成に対して、検者が被験者の視点位置を入力する被験者視点位置入力部27が追加されている。被験者視点位置入力部27は、検者が被験者の視点位置を手動で入力するもの以外に、被験者が顎を載せる顎載せ台や被験者が着席する椅子などにセンサを設けて、これらのセンサから視点位置を入力するようにしてもよい。
【0051】
その他の構成は、図4と同様であるので、同じ構成要素には、同じ符号を付与して重複する説明を省略する。被験者視点位置入力部27は、被験者15の視点位置がスクリーン11に対して所定の位置に設置できない場合に特に有効となる。スクリーン11が球面の場合、スクリーン11に対して所定の位置とは、球面の球の中心位置である。
【0052】
図8のフローチャートは、図2に示した実施例1のフローチャートに対して、S25,S26,S29が追加されている。その他の各ステップは、図2と同様であるので、追加したステップのみ説明する。S24の判定で、全ての点が終了していれば、S25へ進む。S25では、被験者視点位置入力部27からの被験者視点位置の入力が有るか否かを判定する。被験者視点位置の入力が有れば、S26へ進み、被験者視点位置の入力が無ければ、S29へ進む。
【0053】
S26では、被験者視点位置入力部27からの被験者視点位置の入力と、検査結果とに基づいて、眼位ずれ量計算部26が眼位ずれ量を計算し、出力部25へ出力する。S29では、実施例2と同様に、眼位ずれ量計算部26が、視標映像上の点(固視用視標)の位置に対する被験者が指示したポインタ(指示用視標)の位置のずれ量を被験者の視点位置からの角度として計算し、出力部25へ出力する。
【0054】
以上説明した実施例3によれば、第1映像生成部が生成した視標映像を映像補正部がスクリーン上で被験者の目から見て歪みがないように補正するので、従来の魚眼レンズから投影したグリッドの映像のような視標映像の歪みが無く、自然な視標映像を投影することができるという効果がある。
【0055】
また実施例3によれば、第1映像投影部と第2映像投影部の映像は、偏光子などによって、被験者の左右眼へと分離して提示することができるようになり、被験者が普段生活している自然な状態で眼科検査を行うことができるという効果がある。
【0056】
また実施例3によれば、出力部が視標映像位置とともに被験者が指示したポインタ位置を提示または出力するので、検者が手作業で眼位のズレをチャート紙上に転記する際のような誤差が混入することなく、自動的に眼位のズレを正確に記録できるという効果がある。
【0057】
また実施例3によれば、眼位ずれ量計算部が、視標映像の点(固視用視標)の位置に対して、被験者が指示したポインタ(指示用視標)の位置のずれ量を被験者の視点位置からの角度として自動的に計算するので、正確な定量的なずれ量を検出することができるという効果がある。
【0058】
さらに実施例3によれば、被験者15の視点位置をスクリーン11に対して所定位置に配置できない場合であっても、検者が被験者の視点位置を入力することにより、定量的に正しい検査結果を得ることができるという効果がある。
【実施例4】
【0059】
図9は、本発明に係る眼科検査装置の実施例4の構成を説明する構成図である。図10,11は、実施例4の動作を説明するフローチャートである。
【0060】
図9の実施例4の眼科検査装置1は、図4に示した実施例2の構成に対して、被験者15の顔を撮影するカメラ28と、カメラ28が撮影した顔画像に基づいて被験者15の眼の位置を検出することにより視点位置を検出する視点位置検出部29と、被験者の位置を移動する駆動部30と、視点位置検出部29の検出結果に基づいて駆動部30を制御して被験者15の位置を操作する被験者位置制御部31とが追加されている。尚、視点位置検出部29と、被験者位置制御部31とは、検査制御装置3の内部に設けられている。その他の構成は、図4と同様であるので、同じ構成要素には、同じ符号を付与して重複する説明を省略する。
【0061】
カメラ28は、可視光カメラや赤外線カメラ等の被験者15の顔画像を撮影するカメラである。カメラ28が撮影した顔画像から被験者15の視点位置を検出するために、複数台のカメラ28を設けたり、スクリーン11の周縁部に設けたレールに沿ってカメラ28を移動可能として、複数の方向から被験者15の顔を撮影するのが好ましい。視点位置検出部29は、カメラ28が撮影した被験者15の顔画像に基づいて被験者15の視点位置を検出する。
【0062】
駆動部30は、被験者15が顎を載せる顎載せ台を駆動したり、被験者15の椅子を駆動することにより被験者15の位置を操作する。あるいは、被験者15は移動させずに、第1映像投影部5,第2映像投影部7,反射鏡9、スクリーン11、及びカメラ28を含む眼科検査装置1の部分を駆動部30が駆動するようにしてもよい。
【0063】
駆動制御部31は、視点位置検出部29が検出した被験者15の視点位置に基づいて、駆動部30を制御することにより、スクリーン11に対して常に被験者15の位置を最適に制御する。
【0064】
図10のフローチャートは、図2に示した実施例1のフローチャートに対して、S26,S40が追加されている。図11は、S40の詳細を説明する詳細フローチャートである。その他の各ステップは、図2と同様であるので、追加したステップのみ説明する。S24の判定で、全ての点が終了していれば、S26へ進む。S24の判定で、全ての点が終了していなければ、S40へ進む。
【0065】
S26では、視点位置検出部29が検出した被験者15の視点位置情報に基づいて、眼位ずれ量計算部26が検査結果の眼位ずれ量を計算し、出力部25へ出力する。
【0066】
S40では、被験者位置制御部31が駆動部30を制御して、被験者15の眼の位置が最適になるように調整する。
【0067】
次に、図11を参照して、S40における被験者15の視点位置の最適調整を詳細に説明する。
【0068】
S24で検査用の点が終了していなければ、S40に進んで、視点位置の最適調整を開始する。まずS42で、カメラ28にて被験者15の顔画像を撮影する。次いでS44で、視点位置検出部29が被験者15の顔画像から眼の位置を検出することにより視点位置を検出する。次いでS46で、被験者位置制御部31が、視点位置検出部29が検出した視点位置と所定の最適視点位置(通常は、スクリーン中心だがそれ以外でもよい)との差である視点位置調整量を算出する。次いでS48で、視点位置調整量が0であるか否かを判定する。視点位置調整量が0であれば、終了する。
【0069】
S48の判定で、視点位置調整量が0でなければ、S50へ進み、被験者15の椅子を上下左右前後に駆動する。この椅子の駆動量は、例えば、予め記憶した視点位置調整量に対する椅子の駆動量の制御マップを参照することにより求めることができる。S50の駆動が終わると、S42へ戻り、再度被験者15をカメラ28で撮影する。こうして、被験者15の撮影と駆動を繰り返して、S48の調整量が0となると、視点位置の最適調整を終了する。
【0070】
以上説明した実施例4によれば、第1映像生成部が生成した視標映像を映像補正部がスクリーン上で被験者の目から見て歪みがないように補正するので、従来の魚眼レンズから投影したグリッドの映像のような視標映像の歪みが無く、自然な視標映像を投影することができるという効果がある。
【0071】
また実施例4によれば、第1映像投影部と第2映像投影部の映像は、偏光子などによって、被験者の左右眼へと分離して提示することができるようになり、被験者が普段生活している自然な状態で眼科検査を行うことができるという効果がある。
【0072】
また実施例4によれば、出力部が視標映像位置とともに被験者が指示したポインタ位置を提示または出力するので、検者が手作業で眼位のズレをチャート紙上に転記する際のような誤差が混入することなく、自動的に眼位のズレを正確に記録できるという効果がある。
【0073】
また実施例4によれば、眼位ずれ量計算部が、視標映像上の点(固視用視標)の位置に対して、被験者が指示したポインタ(指示用視標)の位置のずれ量を被験者の視点位置からの角度として自動的に計算するので、正確な定量的なずれ量を検出することができるという効果がある。
【0074】
さらに実施例4によれば、視点位置検出部が検出した被験者の視点位置が最適となるように、駆動部が駆動することができるので、検査対象となる領域を最大となるように維持することができるという効果がある。
【0075】
尚、実施例4の変形例として、実施例2に対して、カメラ28及び視点位置検出部29を追加するだけでも、実施例2の効果に加えて、被験者15の視点位置をスクリーン11に対して所定位置に配置できない場合であっても、視点位置検出部が検出した被験者の視点位置に基づいて、定量的に正しい検査結果を得ることができるという効果がある。
【0076】
以上、好ましい実施形態を説明したが、これらは、本発明を限定するものではない。これらの実施例以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1 眼科検査装置
3 検査制御装置
5 第1映像投影部
7 第2映像投影部
9 反射鏡
11 スクリーン
13 ポインタ操作入力部
15 被験者
21 第1映像生成部
22 映像補正部
23 第2映像生成部
24 計算記憶部
25 出力部
26 眼位ずれ量計算部
27 被験者視点位置入力部
28 カメラ
29 視点位置検出部
30 駆動部
31 被験者位置制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の眼からの距離を一様に保持できるスクリーンと、
視標映像を生成する第1映像生成部と、
第1映像生成部が生成した視標映像を前記スクリーン上で被験者の目から見て歪みがないように補正する映像補正部と、
該映像補正部が補正した視標映像を前記スクリーンへ投影する第1映像投影部と、
前記被験者がポインタの位置操作を入力するポインタ操作入力部と、
前記ポインタ操作部からの入力に応じて前記視標映像上の前記ポインタの位置を計算して記録する計算記憶部と、
該計算記憶部が計算した前記視標映像上の位置に前記ポインタの映像を生成する第2映像生成部と、
該第2映像生成部が生成した映像を前記スクリーンへ投影する第2映像投影部と、
前記視標映像位置とともに前記ポインタ位置を提示または出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする眼科検査装置。
【請求項2】
前記計算記憶部が計算した前記視標映像上の前記ポインタ位置を前記被験者の視点位置からのずれ角度に換算して前記出力部へ出力する眼位ずれ量計算部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の眼科検査装置。
【請求項3】
前記被験者の眼の位置を検者が入力することができる被験者視点位置入力部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の眼科検査装置。
【請求項4】
前記被験者を撮影して得られた画像に基づいて被験者の眼の位置を検出する被験者視点位置検出部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の眼科検査装置。
【請求項5】
前記被験者の位置を移動する駆動部と、
前記被験者視点位置検出部の検出結果に基づいて前記駆動部を制御して前記被験者の前記スクリーンに対する位置を操作する被験者位置制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の眼科検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の眼科検査装置を用いたことを特徴とするヘス検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−4930(P2011−4930A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150887(P2009−150887)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)