説明

眼科検査装置

【課題】 従来よりも正確な視野検査を可能とする。
【解決手段】 この発明に係る視野計10は、1つの光源12を有している。そして、この光源12から被検眼までの間には、偏光プリズム20および28と平面反射鏡32および34とによって、2つの光路が形成されている。さらに、一方の光路には、一部の領域52が遮断領域とされた液晶シャッタ20が設けられており、他方の光路には、当該液晶シャッタ20と相補関係にある別の液晶シャッタ28とチョッパ装置30とが設けられている。かかる構成により、被検眼には、光源12の輝度に応じた明るさの背景と、少なくとも当該背景以下の明るさの視標とが、呈示される。この結果、視標が呈示されることによる被検眼への刺激が抑制され、ひいては被検者による視標の点灯と点滅との誤認識が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科検査装置に関し、特に例えば視野計に適用され、検査用の視標を被検眼に呈示すると共に当該被検眼による視標の視認状況に基づいて当該被検眼の検査を行う眼科検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の眼科検査装置、特に視野計として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、微小ミラーの集合体から成るマイクロミラーデバイスに視標形成用の光束が照射される。そして、マイクロミラーデバイスに照射された光束は、被検眼に向けて反射される。このとき、個々の微小ミラーが偏光駆動されることで、反射光束が規制され、これによって、被検眼に検査視標が呈示される。被検者は、この視標を視認できたときに、例えば応答ボタンを操作することで、当該視標を視認できた旨を検者側に伝える。
【0003】
【特許文献1】特開2005−102946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような視野計は、例えば緑内障の検査に用いられるが、当該緑内障の検査においては、上述の視標が点滅呈示されることがある。これは、被検者(人間)の視覚に、周波数依存性があるからである。そして、この場合、被検者は、視標が点滅していることを視認できたときに、応答ボタンを操作することになる。
【0005】
しかし、上述の従来技術では、視標は、その周囲、言わば背景よりも、高い明るさ(輝度)で呈示される。従って、当該視標が被検眼に呈示されると、その瞬間に、被検眼への入射光量が増大する。そして、この入射光量の増大によって被検眼(網膜)が刺激され、ひいては、被検者が、当該入射光量の増大を視標が点滅しているものと誤認識することがある。つまり、視標が点滅する前に、応答ボタンが操作されることがあり、このため、信頼性の高い検査結果が得られない、という問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、従来よりも正確な眼科検査を行うことができる眼科検査装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、この発明は、検査用の視標を被検眼に呈示すると共に当該被検眼による視標の視認状況に基づいて被検眼の検査を行う眼科検査装置において、視標をその背景と同じ明るさの第1態様および当該背景よりも低い明るさの第2態様で交互に呈示することを特徴とするものである。
【0008】
即ち、この発明では、視標は、その背景と同じ明るさの第1態様および当該背景よりも暗い第2態様という2つの態様で交互に呈示され、言わば点滅呈示される。つまり、当該視標は、少なくとも背景以下の明るさで呈示される。従って、被検眼に視標が呈示されても、当該被検眼への入射光量は増大せず、刺激が抑制される。
【0009】
なお、この発明は、例えば、1つの光源手段と、この光源手段から被検眼までの間に2つの光路を形成する光路形成手段と、これら2つの光路の一方に設けられ当該一方の光路を進む光源手段からの第1光線によって背景を呈示する背景呈示手段と、他方の光路に設けられ当該他方の光路を進む光源手段からの第2光線によって視標を呈示する視標呈示手段と、を設けることによって、具現化される。
【0010】
この構成によれば、第1光線によって背景が呈示され、これとは別に、第2光線によって視標が呈示される。ただし、第1光線および第2光線は、同一の光源手段から発せられる。つまり、背景を呈示するための光源手段と、視標を呈示するための光源手段とが、共通化されている。従って、背景の明るさと、視標の最高の明るさ、つまり第1態様における明るさとは、必然的に同じになる。
【0011】
そして、この場合、背景呈示手段は、第1光線が入射される第1入射面を有し当該第1入射面に入射された第1光線を第1制御信号に従って被検眼に投射する第1投射手段と、この第1投射手段の第1入射面のうち背景に対応する部分に入射された第1光線が被検眼に投射され、視標に対応する部分に入射された第1光線については非投射とされるように第1制御信号を生成する第1制御手段と、を備えるものであってもよい。また、視標呈示手段は、第2光線が入射される第2入射面を有し当該第2入射面に入射された第2光線を第2制御信号に従って被検眼に投射する第2投射手段と、この第2投射手段の第2入射面のうち視標に対応する部分に入射された第2光線が被検眼に投射され、背景に対応する部分に入射された第2光線については非投射とされるように第2制御信号を生成する第2制御手段と、第2投射手段による被検眼への第2光線の投射を間欠的に無効化する無効化手段と、を備えるものであってもよい。
【0012】
この構成によれば、第1投射手段の第1入射面は、背景に対応する部分と視標に対応する部分とを有する。そして、この第1入射面に、第1光線が入射される。ここで、第1入射面のうち背景に対応する部分に入射された第1光線は、言わば背景光として被検眼に投射される。一方、第1入射面のうち視標に対応する部分に入射された第1光線については、被検眼に投射されない。このようにして被検眼に背景光を投射するという第1投射手段の動作は、第1制御手段(第1制御信号)によって制御される。そして、第2投射手段の第2入射面もまた、背景に対応する部分と視標に対応する部分とを有する。そして、この第2入射面には、第2光線が入射される。ここで、第2入射面のうち視標に対応する部分に入射された第2光線は、言わば視標光として被検眼に投射される。一方、第2入射面のうち背景に対応する部分に入射された第2光線については、被検眼に投射されない。このようにして被検眼に視標光を投射するという第2投射手段の動作は、第2制御手段(第2制御信号)によって制御される。さらに、この第2投射手段による被検眼への視標光の投射は、無効化手段によって間欠的に無効化される。このように被検眼への視標光の投射が間欠的に無効化されることによって、視標の点滅呈示が実現される。
【0013】
ここで言う、無効化手段は、視標光を間欠的に遮断する遮断手段を含むものであってもよい。
【0014】
また、この発明は、互いに同仕様の2つの光源手段と、これら2つの光源手段の一方から被検眼までの第1光路に設けられ当該一方の光源手段が発する第1光線によって背景を呈示する背景呈示手段と、他方の光源手段から被検眼までの第2光路に設けられ当該他方の光源手段が発する第2光線によって視標を呈示する視標呈示手段と、を設けることによっても、具現化される。
【0015】
この構成によれば、一方の光源手段から発せられる第1光線によって背景が呈示され、他方の光源手段から発せられる第2光線によって視標が呈示される。ただし、各光源手段は、互いに同仕様のものである。換言すれば、第1光線および第2光線は、互いに略同等の光線である。従って、背景の明るさと、第1態様における視標の明るさとは、必然的に同じになる。
【0016】
そして、この場合、上述と同様に、背景呈示手段は、第1光線が入射される第1入射面を有し当該第1入射面に入射された第1光線を第1制御信号に従って被検眼に投射する第1投射手段と、この第1投射手段の第1入射面のうち背景に対応する部分に入射された第1光線が被検眼に投射され、視標に対応する部分に入射された第1光線については非投射とされるように第1制御信号を生成する第1制御手段と、を備えるものであってもよい。また、視標呈示手段は、第2光線が入射される第2入射面を有し当該第2入射面に入射された第2光線を第2制御信号に従って被検眼に投射する第2投射手段と、この第2投射手段の第2入射面のうち視標に対応する部分に入射された第2光線が被検眼に投射され、背景に対応する部分に入射された第2光線については非投射とされるように第2制御信号を生成する第2制御手段と、第2投射手段による被検眼への第2光線の投射を間欠的に無効化する無効化手段と、を備えるものであってもよい。
【0017】
なお、この場合における無効化手段は、他の光源手段による第2光線の発生を間欠的に停止する(つまり当該他の光源手段を点滅させる)停止手段を、含むものとしてもよい。
【0018】
そしてさらに、この発明においては、第1態様および第2態様を切り換える周期、言わば点滅周期を、任意に変更する周期変更手段を、設けてもよい。
【0019】
また、視標の形状を任意に変更する形状変更手段を、さらに設けてもよい。
【0020】
そして、背景および視標のそれぞれの色を任意に変更する色変更手段を、設けてもよい。
【0021】
さらに、背景および第1態様における視標の明るさを任意に変更する明るさ変更手段を、設けてもよい。
【0022】
かかる発明は、被検眼の視野を測定するための視野計に、特に好適である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、視標は、少なくとも背景以下の明るさで呈示される。従って、視標が背景よりも光輝度で呈示されるという上述の従来技術と比べて、当該視標が呈示されることによる被検眼への刺激が抑制される。よって、視標が呈示された瞬間を当該視標の点滅であるとする被検者による誤認識を低減することができ、ひいては従来よりも信頼性の高い検査結果を得ることができる。このことは、例えば視野検査のように、被験者の主観に基づいて検査が進められるいわゆる自覚的検査において、極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明が適用された視野計の第1実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
【0025】
この第1実施形態に係る視野計10は、いわゆる静的視野計と呼ばれるものであり、図1に示すように、1つの光源12を備えている。この光源12は、例えば発光ダイオード(LED)またはハロゲンランプを含み、概略白色の光を出力する。また、当該光源12の明るさ(輝度)は、輝度コントローラ14によって任意に調整可能とされている。
【0026】
光源12から出力された光は、コリメータレンズ16によって平行光に補正された後、分離手段としての偏光プリズム(ビームスプリッタ)18に入射される。偏光プリズム18は、可視光領域において図2に示すような光学特性(反射率特性および透過率特性)を有しており、入射された光をP(Parallel)偏光とS(Senkrecht)偏光とに分離する。そして、このうちのP偏光(実線の矢印)は、偏光プリズム18への光の入射方向と同じ方向に向かって進行し、第1投射手段としての液晶(LED)シャッタ20の入射面(図1において左側の面)に入射される。
【0027】
液晶シャッタ20は、液晶コントローラ22から与えられる第1制御信号に従って、例えば図3に示すようなシャッタパターンを形成する。具体的には、方形の有効エリア50のうち、当該有効エリア50に比べて十分に小さい円形部分52のみを遮蔽領域とし、これ以外の部分54を透過領域とする。従って、かかる液晶シャッタ20の入射面に入射されたP偏光のうち、透過領域54に入射された光については、当該液晶シャッタ20を透過して、出射面(図1において右側の面)から真っ直ぐに出射される。一方、遮蔽領域52に入射されたP偏光は、出射されない。なお、遮蔽領域52の位置は、有効エリア50内において任意に変更可能とされている。
【0028】
液晶シャッタ20を透過した(液晶シャッタ20の出射面から出射された)P偏光は、上述の偏光プリズム18とは別個に設けられた合成手段としての偏光プリズム24に入射される。この偏光プリズム24は、上述の偏光プリズム18と同様、図2に示すような光学特性を有している。従って、偏光プリズム24に入射されたP偏光は、そのまま当該偏光プリズム24を透過して、真っ直ぐに進行する。そして、この偏光プリズム24を透過したP偏光は、拡大光学系26を通って、図示しない被検者の被検眼に投射される。なお、図には詳しく示さないが、拡大光学系26は、フォーカス調整用のレンズを含んでおり、このレンズが光軸方向に沿って移動することで、被検眼(網膜)と液晶シャッタ20の出射面とが共役になるように、つまり当該被検眼の焦点が液晶シャッタ20の出射面に合うように、フォーカス調整が成される。
【0029】
かかるP偏光の軌道に対して、上述の偏光プリズム18によって分離されたS偏光(点線の矢印)は、当該偏光プリズム18への光の入射方向に対して直角な方向に向かって進行する。そして、このS偏光は、遮断手段としてのチョッパ装置(厳密にはチョッパ板)30を介して、平面反射鏡32に入射される。なお、チョッパ装置30は、平面反射鏡32へのS偏光の入射を間欠的に遮断(チョッピング)するためのものであり、その遮断周波数fは、チョッパコントローラ33によって例えばf=数[Hz]〜200[Hz]の範囲内で任意に変更可能とされている。
【0030】
平面反射鏡32に入射されたS偏光は、当該平面反射鏡32によって反射され、さらに別の平面反射鏡34によって反射された後、上述の液晶シャッタ20とは別個に設けられた第2投射手段としての液晶シャッタ28の入射面(図1において下方側の面)に入射される。なお、この液晶シャッタ28は、上述の液晶シャッタ20と同仕様のものであり、この液晶シャッタ28には、上述の液晶コントローラ22から第2制御信号が与えられる。そして、この第2制御信号が与えられることによって、液晶シャッタ28は、上述の液晶シャッタ20とは全く正反対のシャッタパターン、具体的には、図4に示すように、方形の有効エリア60のうち、液晶シャッタ20側(図3)の遮蔽領域52に対応する部分62のみを透過領域とし、これ以外の部分64を遮蔽領域とするシャッタパターンを、形成する。
【0031】
従って、かかる液晶シャッタ28の入射面に入射されたS偏光のうち、透過領域62に入射された光のみが、当該液晶シャッタ28を透過して、出射面(図1において上方側の面)から真っ直ぐに出射される。一方、遮蔽領域64に入射された光は、出射されない。なお、液晶シャッタ20側の遮蔽領域52の位置が変更されたとき、これに連動して、当該液晶シャッタ28側の透過領域62の位置も変更される。
【0032】
液晶シャッタ28を透過した(液晶シャッタ28の出射面から出射された)S偏光は、上述の合成手段としての偏光プリズム24に入射される。ここで、この偏光プリズム24に対するS偏光の入射角は、当該偏光プリズム24に対するP偏光の入射角に対して直角とされている。従って、偏光プリズム24に入射されたS偏光は、当該偏光プリズム24に入射されたP偏光と言わば合成された状態で、当該偏光プリズム24から出射され、ひいては拡大光学系26を通って、被検眼に投射される。なお、被検眼から液晶シャッタ28の出射面までの距離は、当該被検眼から上述の液晶シャッタ20の出射面までの距離と同等とされている。従って、上述の如く被検眼と液晶シャッタ20の出射面とが共役になるようにフォーカス調整が成されたときは、当然に、当該被検眼は液晶シャッタ28の出射面との間でも共役になる。
【0033】
このようにして液晶シャッタ20を透過したP偏光と液晶シャッタ20を透過したS偏光とが合成された状態で被検眼に投射されることによって、当該被検眼には、次のような映像が呈示される。即ち、上述のチョッパ装置30によってS偏光が遮断されていないときは、図5(a)に示すように、全面にわたって光源12の輝度に応じた明るさの方形の映像が、呈示される。一方、チョッパ装置30によってS偏光が遮断されると、図5(b)に示すように、当該方形の映像の中に上述の遮断領域52および透過領域62に対応する円形の視標70が現れ、換言すれば当該視標70の部分のみが言わば抜け落ちたような映像が呈示される。そして、これら図5(a)および図5(b)に示す映像が、チョッパ装置30による遮断周波数fに応じた周期で交互に呈示され、この結果、視標70が点滅呈示される。
【0034】
視野検査においては、このように視標70が点滅呈示されている状態において、これを被検眼によって視認することができるか否かが、調べられる。このとき、上述の遮断周波数fの調整によって視標70の点滅周期が適宜変更され、或いは光源12の輝度調整によって当該視標70の周囲である背景72の明るさ(換言すれば視標70の非点灯時の明るさと背景72の明るさとの相対差)が適宜変更されることで、より詳細な視野検査が行われる。なお、図には示さないが、この視野検査においては、視標70の他に、被検眼を固定させておくための固視用の視標(注視点)も呈示される。
【0035】
ここで、視標70の明るさは、背景72の明るさと同等か、若しくは当該背景72の明るさよりも低い。つまり、当該視標70は、少なくとも背景72以下の明るさで呈示される。従って、被検眼に視標70が呈示されても、当該被検眼への入射光量が増大することはなく、この点で、被検眼に視標が呈示された瞬間に当該被検眼への入射光量が増大するという上述の従来技術に比べて、被検眼への刺激が抑制される。
【0036】
このように、第1実施形態によれば、被検眼に視標70が呈示されることによる当該被検眼への刺激が抑制されるので、例えば視標70が呈示された瞬間が当該視標70の点滅であると誤認識される確率が低くなり、ひいては従来よりも信頼性の高い検査結果を得ることができる。特に、視野検査は、被験者の主観に基づいて検査が進められるいわゆる自覚的検査であるので、このような視野検査において、被検者による誤認識を低減することは、極めて有効である。また、言わば背景72呈示用の液晶シャッタ20と視標70呈示用の液晶シャッタ28とが互いに相補関係にあり、これら2つの液晶シャッタ20および28に対して光源12が1つとされているので、視標70および背景72の明るさを調整する必要もない。
【0037】
なお、この第1実施形態における検査対象視野(つまり被検眼に呈示される図5の映像の画角)は、例えば水平方向および垂直方向のそれぞれにおいて約60度とされている。また、各液晶シャッタ20および28の出射面(つまり被検眼に呈示される映像の虚像面)から被検眼までの距離は、例えば約300[mm](いわゆる読書距離)とされている。さらに、上述した固視用の視標は、検査用の視標70と同様に、液晶シャッタ20および28によって形成してもよいし、他の手段によって別途形成してもよい。また、液晶シャッタ20および28に限らず、例えば従来技術におけるマイクロミラーデバイスと同様の手段を利用することで、当該視標70および固視用の視標を形成してもよい。
【0038】
そして、分離手段としての偏光プリズム18と平面反射鏡32との間にチョッパ装置30を配置したが、これに限らない。例えば、各平面反射鏡32および34の間、或いは平面反射鏡34と液晶シャッタ28との間、さらには液晶シャッタ28と合成手段としての偏光プリズム24との間に、当該チョッパ装置30を配置してもよい。
【0039】
そしてさらに、チョッパ装置30に代えて、例えば液晶シャッタ28の透過領域62を間欠的に遮断領域とする、つまり当該透過領域62と遮断領域とを交互に形成することで、S偏光を遮断し、ひいては視標70を点滅させてもよい。このようにすれば、チョッパ装置30およびチョッパコントローラ33を、図1の構成から排除することができる。
【0040】
また、例えばコリメータレンズ16と偏光プリズム18との間に、着色された色フィルタを挿入してもよい。このようにすれば、被検眼に呈示される視標70および背景72の色を変更することができ、より詳細な検査を行うことができる。この場合、任意の色のフィルタを容易に切り換えられるようにするのが、望ましい。また、当該色フィルタの挿入場所は、コリメータレンズ16と偏光プリズム18との間に限らず、例えば光源12とコリメータレンズ16との間でもよい。ただし、かかる色フィルタ(光学フィルタ)は、平行光とされている場所に挿入するのが、望ましい。さらに、当該色フィルタに代えて、液晶シャッタ20および28をいわゆるカラータイプの液晶シャッタとすることによっても、視標70および背景72の色を任意に変更することができる。
【0041】
そして、視標70(遮断領域52および透過領域62)の形状は、円形に限らない。例えば、楕円形や四角形、三角形、星形等のように、当該円形以外の形状としてもよい。また、この視標70の大きさも任意に変更可能としてもよい。
【0042】
さらに、この第1実施形態では、視野計10を例に挙げて説明したが、当該視野計10以外の検査装置(網膜疾患装置等)にも、この発明を適用することができる。この場合、検査目的(検査装置の種類)に応じて、例えば、図6に示すように、複数の視標70を呈示してもよい。また、図7に示すように、線状の視標70を呈示してもよい。そして、かかる線状の視標70については、その長さや太さ、線種(点線や一点鎖線等)、本数、延伸方向(角度)、種類(直線や曲線等)等を、任意に変更可能としてもよい。
【0043】
また、例えば図1における偏光プリズム18と液晶シャッタ20との間、或いは液晶シャッタ20と変更プリズム24との間に、P偏光を低減するための減光(ND:Neutral Density)フィルタを設けることによって、背景72のみの明るさを適宜低減してもよい。このようにすれば、視標70が点灯しているとき(図5(a)の状態)と、視標70が点灯していないとき(図5(b)の状態)との、映像全体の輝度差を低減することができ、ひいては被検眼への刺激をより緩和することができる。
【0044】
次に、この発明の第2実施形態について、図8を参照しながら説明する。
【0045】
同図に示すように、この第2実施形態に係る視野計100は、上述した図1の構成において、チョッパ装置30およびチョッパコントローラ33を排除すると共に、光源102、コリメータレンズ104、2つの偏光板106、108、1/2波長板110および点滅コントローラ112を、設けたものである。なお、これ以外の構成は、図1と同様であるので、これら同様な部分には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
この第2実施形態において新たに設けた光源102は、別の光源12と同一仕様(規格)のものであり、言わば背景72呈示用のものである。即ち、この光源102から出力された光は、コリメータレンズ104によって平行光に補正された後、偏光板106に入射される。偏光板106は、入射された光のうち、S偏光(二点鎖線の矢印)のみを透過させる。そして、この偏光板106を透過したS偏光は、偏光プリズム18に入射される。
【0047】
偏光プリズム18は、上述した図2のような光学特性(特に図2(a)に示す反射特性)を有しているので、当該偏光プリズム18に入射されたS偏光は、その入射方向に対して直角な方向に向けて反射される。そして、この反射されたS偏光は、液晶シャッタ20(透過領域54)を透過した後、1/2波長板110に入射される。
【0048】
1/2波長板110は、入射されたS偏光をP偏光(実線の矢印)に変換する。そして、この1/2波長板110によって変換されたP偏光は、これ以降、図1と同様の要領で、偏光プリズム24および拡大光学系26を通って、被検眼に投射される。
【0049】
一方、別の光源12は、言わば視標70呈示用のものである。即ち、この光源12から出力された光は、コリメータレンズ16によって平行光に補正された後、偏光板108に入射される。偏光板108は、上述の偏光板106と同様、入射された光のうち、S偏光(点線の矢印)のみを透過させる。そして、この偏光板108を透過したS偏光は、偏光プリズム18に入射される。
【0050】
偏光プリズム18は、偏光板108から入射されたS偏光を、その入射方向に対して直角な方向に向けて反射する。そして、この反射されたS偏光は、平面反射鏡32に入射され、これ以降、図1と同様の要領で、平面反射鏡34および液晶シャッタ28を経て偏光プリズム24に入射され、さらにP偏光と合成された状態で拡大光学系26を経て被検眼に投射される。
【0051】
なお、2つの光源12および102の明るさは、それぞれに共通の輝度コントローラ14によって調整される。ただし、視標70呈示用の光源12と輝度コントローラ14との間には、当該視標70を点滅呈示させるために、点滅コントローラ112が設けられている。即ち、この点滅コントローラ112は、輝度コントローラ14から光源12への電力の供給を間欠的に停止することで、当該光源12を点滅させ、ひいては視標70を点滅呈示させる。そして、この視標70の点滅周期は、点滅コントローラ112による制御によって、第1実施形態と同程度の範囲で任意に変更可能とされている。
【0052】
このように構成された第2実施形態の視野計100によっても、第1実施形態の視野計10と同様の作用および効果を奏することは、容易に理解できよう。つまり、この第2実施形態によっても、正確な視野検査を行うことができる。
【0053】
また、この第2実施形態においては、視標70呈示用の光源12と背景72呈示用の光源102とが別個に設けられているが、これらの光源12および102は互いに同一仕様のものであり、しかも共通の輝度コントローラ112によって輝度調整が成される。従って、基本的には、第1実施形態と同様、視標70および背景72の明るさを調整する必要はない。
【0054】
なお、この第2実施形態の構成を示す図2と、第1実施形態の構成を示す図1とを比較すると、第2実施形態の方が構成的に複雑であるように見受けられる。しかしながら、第2実施形態においては、チョッパ装置30という(チョッパ板やモータ等を含むために)比較的に大型な構成要素が排除されているので、視野計100全体を小型化する上では、第1実施形態に比べて当該第2実施形態の方が有利である。
【0055】
続いて、この発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。
【0056】
同図に示すように、この第3実施形態に係る視野計200は、上述の図8の構成において、一方の偏光プリズム18と、2つの平面反射鏡32,34、および1/2波長板110を排除すると共に、S偏光抽出用の偏光板106に代えてP偏光抽出用の偏光板202を設けたものである。
【0057】
即ち、この第3実施形態においては、背景72呈示用の光源102から出力された光は、コリメータレンズ104によって平行光に補正された後、偏光板202に入射される。偏光板202は、入射された光のうち、P偏光(実線の矢印)のみを透過させる。そして、この偏光板202を透過したP偏光は、液晶シャッタ20を経て、偏光プリズム18に入射され、これ以降、図8と同じ要領で、当該偏光プリズム18および拡大光学系26を経て被検眼に投射される。
【0058】
一方、視標70呈示用の光源12から出力された光(点滅光)は、コリメータレンズ16によって平行光に補正された後、偏光板108に入射される。偏光板108は、入射された光のうち、S偏光(点線の矢印)のみを透過させる。そして、この偏光板108を透過したS偏光は、液晶シャッタ28を経て偏光プリズム24に入射され、これ以降、図8と同じ要領で、P偏光と合成され、ひいては拡大光学系26を経て被検眼に投射される。
【0059】
なお、各光源12および102の制御は、図8の場合と同様である。即ち、視標70呈示用の光源12については、点滅制御される。そして、背景72呈示用の光源102については、点灯制御される。
【0060】
このように構成された第3実施形態の視野計200によっても、上述した第1実施形態の視野計10および第2実施形態の視野計100と同様の作用および効果を奏することは、容易に理解できよう。しかも、この第3実施形態の視野計200は、第2実施形態の視野計100よりもさらに構成が簡素であるので、当該視野計200全体のより一層の小型化および低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】同第1実施形態における偏光プリズムの光学特性を示す図である。
【図3】同第1実施形態における背景呈示用の液晶シャッタの状態を示す図解図である。
【図4】同第1実施形態における視標呈示用の液晶シャッタの状態を示す図解図である。
【図5】同第1実施形態において被検眼に呈示される映像例を示す図解図である。
【図6】同第1実施形態における視標の別の例を示す図解図である。
【図7】同第1実施形態における視標のさらに別の例を示す図解図である。
【図8】この発明の第2実施形態の概略構成を示す図である。
【図9】この発明の第3実施形態の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 視野計
12 光源
14 輝度コントローラ
18、24 偏光プリズム
20、28 液晶シャッタ
22 液晶コントローラ
30 チョッパ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査用の視標を被検眼に呈示すると共に該被検眼による該視標の視認状況に基づいて該被検眼の検査を行う眼科検査装置において、
上記視標を該視標の背景と同じ明るさの第1態様および該背景よりも低い明るさの第2態様で交互に呈示することを特徴とする、眼科検査装置。
【請求項2】
1つの光源手段と、
上記光源手段から上記被検眼までの間に2つの光路を形成する光路形成手段と、
上記2つの光路の一方に設けられ該一方の光路を進む上記光源手段からの第1光線によって上記背景を上記被検眼に呈示する背景呈示手段と、
上記2つの光路の他方に設けられ該他方の光路を進む上記光源手段からの第2光線によって上記視標を上記被検眼に呈示する視標呈示手段と、
を具備する、請求項1に記載の眼科検査装置。
【請求項3】
上記背景呈示手段は、上記第1光線が入射される第1入射面を有し該第1入射面に入射された該第1光線を第1制御信号に従って上記被検眼に投射する第1投射手段と、上記第1入射面のうち上記背景に対応する部分に入射された上記第1光線が上記被検眼に投射され上記視標に対応する部分に入射された該第1光線は非投射とされるように上記第1制御信号を生成する第1制御手段と、を備え、
上記視標呈示手段は、上記第2光線が入射される第2入射面を有し該第2入射面に入射された該第2光線を第2制御信号に従って上記被検眼に投射する第2投射手段と、上記第2入射面のうち上記視標に対応する部分に入射された上記第2光線が上記被検眼に投射され上記背景に対応する部分に入射された該第2光線は非投射とされるように上記第2制御信号を生成する第2制御手段と、上記第2投射手段による上記被検眼への上記第2光線の投射を間欠的に無効化する無効化手段と、を備える、
請求項2に記載の眼科検査装置。
【請求項4】
上記無効化手段は上記第2投射手段によって上記被検眼に投射される上記第2光線を間欠的に遮断する遮断手段を含む、請求項3に記載の眼科検査装置。
【請求項5】
互いに同仕様の2つの光源手段と、
上記2つの光源手段の一方から上記被検眼までの第1光路に設けられ該一方の光源手段が発する第1光線によって上記背景を上記被検眼に呈示する背景呈示手段と、
上記2つの光源手段の他方から上記被検眼までの第2光路に設けられ該他方の光源手段が発する第2光線によって上記視標を上記被検眼に呈示する視標呈示手段と、
を具備する、請求項1に記載の眼科検査装置。
【請求項6】
上記背景呈示手段は、上記第1光線が入射される第1入射面を有し該第1入射面に入射された該第1光線を第1制御信号に従って上記被検眼に投射する第1投射手段と、上記第1入射面のうち上記背景に対応する部分に入射された上記第1光線が上記被検眼に投射され上記視標に対応する部分に入射された該第1光線は非投射とされるように上記第1制御信号を生成する第1制御手段と、を備え、
上記視標呈示手段は、上記第2光線が入射される第2入射面を有し該第2入射面に入射された該第2光線を第2制御信号に従って上記被検眼に投射する第2投射手段と、上記第2入射面のうち上記視標に対応する部分に入射された上記第2光線が上記被検眼に投射され上記背景に対応する部分に入射された該第2光線は非投射とされるように上記第2制御信号を生成する第2制御手段と、上記第2投射手段による上記被検眼への上記第2光線の投射を間欠的に無効化する無効化手段と、を備える、
請求項5に記載の眼科検査装置。
【請求項7】
上記無効化手段は上記他の光源手段による上記第2光線の発生を間欠的に停止する停止手段を含む、請求項6に記載の眼科検査装置。
【請求項8】
上記第1態様および第2態様を切り換える周期を任意に変更する周期変更手段をさらに備える、請求項1ないし7のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項9】
上記視標の形状を任意に変更する形状変更手段をさらに備える、請求項1ないし8のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項10】
上記背景および上記視標のそれぞれの色を任意に変更する色変更手段をさらに備える、請求項1ないし9のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項11】
上記背景および上記第1態様における上記視標のそれぞれの明るさを任意に変更する明るさ変更手段をさらに備える、請求項1ないし10のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項12】
上記被検眼の視野を測定するための視野計である、請求項1ないし11のいずれかに記載の眼科検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−340755(P2006−340755A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166608(P2005−166608)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【出願人】(505212348)