説明

眼科用エマルジョン

本発明は眼科用エマルジョンに関する。本エマルジョンは、エマルジョン内の小さい油滴の安定性を促進する独特の成分の組み合わせを有する。また本エマルジョンは、脂質を眼球表面に送達するのに役立つ粘膜付着性ポリマーを含む。本発明は、以下のものを含む眼科用エマルジョンに関する:水相を形成する水、油相を形成する油、親水性界面活性剤、疎水性界面活性剤、荷電リン脂質、ボラート、および粘膜付着性ポリマー(例えば、ガラクトマンナンポリマー)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月3日に出願された米国仮特許出願第61/266,207号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は眼科用エマルジョンに関する。より具体的には、本発明は、エマルジョン内の小さい油滴の安定性を促進し、そしてエマルジョンの治療的送達能力を促進する独特の成分の組み合わせを有する眼科用エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0003】
眼科用組成物には、水溶液や水性懸濁液などの様々な種類がある。眼科用組成物は時にはエマルジョンとして処方されることもある。眼科用エマルジョンは、通常、単一の組成物中で互いに関して非混和性である2つ以上の成分を含み、従って、組成物内に2つの別々の相を形成することが望ましい状況下で使用される。このようなエマルジョンは、単一の組成物が両方の相に起因する利点(例えば、有利な送達特性)を提供できるようにし得る。例えば、エマルジョンは水相中の油滴から形成することができ、ここで、油滴は、水中での溶解性および/または安定性が低い治療薬(例えば、薬物)または賦形剤などの活性物質のためのキャリアとして使用され得る。
【0004】
エマルジョンの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5中に含まれている。これらの特許はそれぞれ、全ての目的のために参照によって本明細書中に援用される。
【0005】
通常、エマルジョンの一方の相は、他方の相内に実質的に均一に分散されることが非常に望ましい。このような分散系は、治療成分を送達するエマルジョンの能力を著しく生じさせることができる。さらにこのような分散系は、エマルジョン自体の安定性を示すことが多い。
【0006】
各相は他の相とではなくそれ自体で結び付く傾向があるので、エマルジョンの別々の相は組成物全体にわたって均一に分散するのが極めて困難であり得る。従って、一方の相(すなわち、分散相)の他方の相(すなわち、連続相)内での分布の維持は、極めて細心の注意を要し得る。さらに、多数の成分は、連続相全体にわたる分散相の分散および/または均一な分布を阻害するように作用し得るので、エマルジョン内に付加的な成分を含むことは困難であることが多い。
【0007】
本発明のエマルジョンは、水中に分散された油滴を含む2相系である。液滴サイズは通常1000nm未満であるが、通常10nmよりも大きい。エマルジョンは通常熱力学的または他の面で不安定であり、エマルジョンに安定性を付与するため、そして油滴が合体するのを防止するために1つまたは複数の賦形剤を必要とするので、このような液滴サイズの達成は困難である。エマルジョンの脱乳化は、特に、高い周囲温度におけるエマルジョンの貯蔵などの悪化した条件下で動力学的に妨害されることを必要とする(例えば、特に、熱帯性または中央大陸性または地中海性気候における夏季の倉庫、または製剤が循環的な加熱および冷却にさらされる温度サイクルによる)。さらに、水相中の高いイオン強度の存在は脱乳化をもたらし得る。
【0008】
小さい液滴サイズは単一のエマルジョンのために維持するのが困難であるが、エマルジョン中に付加的な成分が含まれる場合には、液滴サイズの維持は実質的により複雑であり得る(非特許文献1)。眼科用エマルジョンのために、エマルジョンの油滴サイズの望ましくない不安定性を引き起こすことなく粘膜付着性材料、特に粘膜付着性ポリマーをエマルジョン中に取り込むことは特に困難であり得る。小さい液滴を維持できるエマルジョンを提供することが望ましく、粘膜付着性ポリマーの存在下で小さい液滴を維持できることが特に望ましいであろう。
従って、粘膜付着性ポリマーを含有する安定なエマルジョンを生成することができる方法が必要とされている。付加的または代替的に、角膜を潤滑および保護するために有効であるせん断減粘性(shear thinning)特性を有する水性エマルジョンが依然として著しく切望されている(ドライアイ患者)。代替的または付加的に、抗菌化合物と共に保存される油滴の微細分散系を含むエマルジョンを生成するための方法または代替方法、そして特に、安定した保存エマルジョンを生成するための方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,914,088号明細書
【特許文献2】米国特許第5,278,151号明細書
【特許文献3】米国特許第5,294,607号明細書
【特許文献4】米国特許第5,371,108号明細書
【特許文献5】米国特許第5,578,586号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Surface properties and emulsification activity of galactomannans, Food Hydrocolloids,8巻,2号,1994年5月,155−173頁 Nissim Garti, Dov Reichmanを参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の少なくとも1つの態様の目的は、粘膜付着性ポリマーの存在下で小さい平均液滴を有する安定なエマルジョンを生成することができる方法を提供することである。
本発明の少なくとも1つの態様の目的は、相分離に耐性があり、特に、標準温度よりも高い温度での貯蔵中および加熱/冷却循環条件において相分離に対する耐性を提供するエマルジョンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のものを含む眼科用エマルジョンに関する:水相を形成する水、油相を形成する油、親水性界面活性剤、疎水性界面活性剤、荷電リン脂質、ボラート、および粘膜付着性ポリマー(例えば、ガラクトマンナンポリマー)。油相は水相内で液滴状であり、液滴は、約1500ナノメートル(nm)以下、より一般的には約1000nm以下、さらにより一般的には約500nm以下である平均または中間の直径を有する。またこれらの液滴は、一般的に、少なくとも2nm、より一般的には少なくとも10nm、さらにより一般的には少なくとも100nmである平均または中間の直径を有する。ボラートおよびガラクトマンナンポリマーは、エマルジョンを個人の眼の中に滴下注入したときに協同的に作用してゲルを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、エマルジョンが比較的小さい平均油滴サイズを有する眼科用水中油エマルジョンの提供に基づく。エマルジョンは通常水性であり、相当量の水を含むものである。またエマルジョンは通常アニオン性リン脂質、親水性界面活性剤(高HLB)および疎水性(低HLB)界面活性剤も含み得る。さらに、エマルジョンは通常、エマルジョンを眼の角膜表面に維持するのに役立ち、そして/あるいは1つまたは複数の親油性化合物を角膜表面に送達するのに役立つために、1つまたは複数の粘膜付着性成分(例えば、ガラクトマンナンポリマー)を含み得る。本発明のエマルジョンは、ドライアイ治療のために使用されるのが最も望ましい。しかしながら、限定されることなく、エマルジョンは、薬物の送達、ビタミンの送達、植物性薬品の送達、コンタクトレンズの湿潤およびコンタクトレンズの潤滑のために使用され得ることも考えられる。
【0014】
他に具体的に記載されない限り、全てのエマルジョン成分の量または割合は重量体積百分率(w/v%)である。
【0015】
エマルジョンの油は、実質的に別個であり分離した小さい液滴として、連続水相全体にわたって分散される。本明細書で使用される場合、別個であり分離した相とは、所与の任意の時点で液滴が別個であり分離していることを意味すると理解されるべきである。しかしながら、エマルジョンの液滴は、平均液滴サイズまたは直径を維持するために時間と共に結合および分離することができる。本発明のエマルジョンの液滴は、一般的には、約1500ナノメートル(nm)以下、より一般的には約1000nm以下、さらにより一般的には約600nm以下である平均または中間の直径を有する。また通常これらの液滴は、一般的には少なくとも2nm、より一般的には少なくとも10nm、さらにより一般的には少なくとも100nmである平均または中間の直径を有する。
【0016】
粒径または液滴サイズ分析器を用いてエマルジョンの油滴サイズを決定することができる。例えば、Microtrac S3500 Particle Size Analyzer(ソフトウェアバージョン10.3.1)は、エマルジョンの油滴サイズを測定するために使用可能なトリレーザー粒径分析器である。その特定の分析器では、流動ストリーム中で粒子(例えば、液滴)から回折(散乱)されるレーザー光が測定される。散乱光の強度および方向が2つの光検出器によって測定される。ソフトウェアによる回折パターンの数学的解析により、液滴サイズの体積分布が生成される。体積による積算篩下分布の90%に相当する液滴直径が使用される。
【0017】
本発明のエマルジョンは水中油エマルジョンである。油は、多数のミネラル、植物性、および合成物質、ならびに/または動物性および植物性脂肪、または油の任意の組み合わせのいずれかであり得る。油はエーテルなどの種々の有機溶媒中で可溶性であり得るが、水中では不溶性である。油相は、所望される場合には、鉱油、パラフィン油、ペトロラタムまたは炭化水素油などの液体炭化水素を含むことができる。鉱油が特に好ましい。シリコーン油も使用することができる。油相は、さらに、パラフィンワックス、水素化ヒマシ油、Synchrowax HRC、Carnabau、蜜ろう、変性蜜ろう、微結晶性ワックス、およびポリエチレンワックスなどのろう様炭化水素を含むことができる。油は、一般的には、エマルジョンの少なくとも0.01w/v%、より一般的には少なくとも0.1w/v%、さらにより一般的には0.8w/v%である。また油は、一般的には、エマルジョンの約20w/v%以下、より一般的には約5w/v%以下、さらにより一般的には約3またはさらに1.5w/v%以下でもある。
【0018】
また本発明のエマルジョンは、一般的に、エマルジョンの乳化に役立つ乳化剤の機能を果たす2つ以上の界面活性剤を取り込む。通常、これらの界面活性剤は非イオン性である。エマルジョン中の乳化界面活性剤の濃度は、0.1〜10%w/vの範囲、多くの場合は0.5〜5%w/vの範囲で選択されることが多い。親水性であり、少なくとも8、多くの場合は少なくとも10(例えば、10〜18)のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤/界面活性剤を選択するのが好ましい。さらに、疎水性であり、8未満、特に1〜6のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤/界面活性剤を選択するのが好ましい。2つの界面活性剤/乳化剤を適切な割合で一緒に使用することによって、エマルジョンの形成を促進する加重平均HLB値の達成が容易に実現可能である。本発明に従うほとんどのエマルジョンの場合、平均HLB値は約6〜12の範囲で選択され、多くの場合は7〜11で選択される。
【0019】
例えば:
例えば、例示的な界面活性剤および鉱油のためのHLB値は次の通りである:疎水性界面活性剤(2.1)、親水性界面活性剤(16.9)および鉱油(10.5)。例示的なエマルジョンにおける疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の使用濃度は、これらの計算に基づいて、0.38%および0.29%であった。
【数1】

【0020】
疎水性界面活性剤と親水性界面活性剤との間の比率は1.32に等しく、これは、2つの界面活性剤について使用される濃度の適切な比率を選択するために使用することができる。例示的なエマルジョンにおける疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の使用濃度は、これらの計算に基づいて、0.38%および0.29%であった。
【0021】
親水性界面活性剤は一般的に少なくとも約0.01w/v%、より一般的には少なくとも約0.08w/v%、さらにより一般的には少なくとも約0.14w/v%の量でエマルジョン中に存在する。親水性界面活性剤は一般的に約1.5w/v%以下、より一般的には約0.8w/v%以下、さらにより一般的には約0.44w/v%以下の量でエマルジョン中に存在する。
【0022】
親水性界面活性剤は、脂肪酸、エステル、エーテル、酸またはこれらの任意の組み合わせであり得る。親水性界面活性剤はイオン性でも非イオン性でもよいが、好ましくは非イオン性である。多くの適切な界面活性剤/乳化剤は、ポリオキシアルキレン部分、特にポリオキシエチレン部分(約2〜80、特に5〜60のオキシエチレン単位を含有することが多い)を含む非イオン性エステルまたはエーテル乳化剤であり、そして/あるいは親水性部分としてグリセロールまたはソルビトールまたは他のアルジトールなどのポリヒドロキシ化合物を含有する。親水性部分はポリオキシプロピレンを含有することができる。乳化剤は、さらに、通常約8〜50個の炭素、特に10〜30個の炭素を含有する疎水性アルキル、アルケニルまたはアラルキル部分を含有する。親水性界面活性剤/乳化剤の例としては、セテアレス−10〜−25、セテス−10−25、ステアレス−10−25、およびステアリン酸またはジステアリン酸PEG−15−25が挙げられる。他の適切な例としては、C10〜C20脂肪酸モノ、ジまたはトリグリセリドが挙げられる。さらなる例としては、ポリエチレンオキシド(8〜12のEO)のC18〜C22脂肪アルコールエーテルが挙げられる。1つの特定の好ましい親水性界面活性剤は、商標名MYRJ−52で販売されているポリオキシエチレン−40−ステアラートであり、日光ケミカルズ(Nikko Chemicals)から市販されている。
【0023】
疎水性界面活性剤は一般的に少なくとも約0.01w/v%、より一般的には少なくとも約0.11w/v%、さらにより一般的には少なくとも約0.16w/v%の量でエマルジョン中に存在する。疎水性界面活性剤は一般的に約10.0w/v%以下、より一般的には約2.0w/v%以下、さらにより一般的には約0.62w/v%以下の量でエマルジョン中に存在する。
【0024】
疎水性界面活性剤は、脂肪酸、エステル、エーテル、酸またはこれらの任意の組み合わせであり得る。疎水性界面活性剤はイオン性でも非イオン性でもよいが、好ましくは非イオン性である。疎水性界面活性剤は通常疎水性部分を含むものである。疎水性部分は線状または分枝状のいずれかでよく、多くの場合は飽和しているが、不飽和であってもよく、場合によりフッ素化されていてもよい。疎水性部分は、鎖長の混合物、例えば、獣脂、ラード、ヤシ油、ヒマワリ種子油または大豆油に由来するものを含むことができる。このような非イオン性界面活性剤は、グリセロールまたはソルビトールまたは他のアルジトールなどのポリヒドロキシ化合物に由来することもできる。疎水性界面活性剤の例としては、限定されることなく、モノレイン酸ソルビタン(sorbitan monoleate)、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、これらの組み合わせなどのソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。1つの特定の好ましい疎水性界面活性剤は、商標名SPAN−65で販売されているトリステアリン酸ソルビタンであり、Croda Worldwideから市販されている。
【0025】
本発明において使用され得るガラクトマンナンの種類は、通常、グアーガム、ローカストビーンガムおよびタラガムに由来する。本明細書で使用される場合、「ガラクトマンナン」という用語は、上記の天然ガム、あるいは主要構造成分としてマンノースもしくはガラクトース部分または両方の基を含有する同様の天然または合成ガムに由来する多糖類を指す。本発明の好ましいガラクトマンナンは、(1−6)結合によってα−D−ガラクトピラノシル単位が結合された(1−4)−β−D−マンノピラノシル単位の線状鎖で構成される。好ましいガラクトマンナンでは、D−マンノースに対するD−ガラクトースの比率は様々であるが、通常は約1:2〜1:4である。D−ガラクトース:D−マンノース比が約1:2であるガラクトマンナンが最も好ましい。さらに、その他の化学修飾された多糖類の変化形も「ガラクトマンナン」の定義に含まれる。例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよびカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換を本発明のガラクトマンナンに対して行うことができる。アルコキシおよびアルキル(C1〜C6)基を含有するものなど、ガラクトマンナンの非イオン性の変化形は、ソフトゲルが所望される場合に特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。非シスヒドロキシル位置における置換が最も好ましい。本発明のガラクトマンナンの非イオン性置換の例は、約0.4のモル置換のヒドロキシプロピルグアーである。アニオン性置換がガラクトマンナンに対して行われてもよい。アニオン性置換は、強い応答性のゲルが所望される場合に特に好ましい。ガラクトマンナンは、一般的には、少なくとも約0.005w/v%、より一般的には少なくとも約0.01w/v%、さらにより一般的には少なくとも約0.03w/v%の濃度であるが、一般的には約5w/v%以下、より一般的には約1.0w/v%以下、さらにより一般的には約0.3w/v%以下、さらになおより一般的には約0.08w/v%以下の濃度で本発明の製剤中に存在する。本発明の好ましいガラクトマンナンはグアーおよびヒドロキシプロピルグアーである。
【0026】
エマルジョンは、付加的または代替的な高分子成分および/または粘性剤を含んでいてもよい。例としては、限定されることなく、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒアルロン酸、これらの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0027】
本発明のエマルジョンは、エマルジョンの安定性の維持に役立つため、そして油の液滴サイズを小さくするために、少なくとも1つのリン脂質を含む。複合リン脂質は、その分子構造の一方の端部に極性基を、そしてその分子構造の他方の端部に非極性基を含有可能であることが知られている。リン脂質についての議論は、Lehninger,Biochemistry,第2版,Worth Publishers,New York,279−306頁(全ての目的のために参照によって本明細書中に援用される)に見出すことができる。
【0028】
多くの複合リン脂質が当該技術分野において知られている。これらは、その極性ヘッド基のサイズ、形状および電荷が異なる。ホスホグリセリドは、グリセロールの1つの第1級ヒドロキシル基がリン酸でエステル化されており、他の2つのヒドロキシル基が脂肪酸でエステル化されている化合物である。従って、このシリーズの親化合物はグリセロールのリン酸エステルである。この化合物は不斉炭素原子を有し、従って、ホスホグリセリドという用語は立体異性体を含む。全てのホスホグリセリドはpH7でリン酸基において負電荷を有し、この基のpKは1〜2の範囲である。ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール(慣用名カルジオリピンを有する)を含むホスファチジルグリセロール、およびホスファチジル糖のヘッド基は電荷を有さず、その高いヒドロキシル基含量のために、全て極性である。リン酸基の負電荷およびヘッド基の電荷の不在のために、これらの材料のそれぞれの正味の電荷は負であり、これらの材料は本発明の範囲内にある。適切なリン脂質は、使用条件下で正味の正または負電荷を有するものである。負に帯電した材料は負に帯電した眼球表面によって反発され、それにより、眼に適用したときに比較的厚い水層の維持を可能にし得るので、好ましい材料は正味の負電荷を有するものである。最も好ましいリン脂質は、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)という名前のアニオン性リン脂質であり、正味の負電荷を有するポリオールである。ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルイノシトールはその他の例である。適切なリン脂質添加剤は、上記の米国特許第4,914,088号明細書(全ての目的のために参照によって本明細書中に完全に援用される)において開示されている。
【0029】
ほとんどのリン脂質は水に不溶性である。しかしながら、眼への適用のために、リン脂質は水性媒体全体にわたって均一に分布していることが望ましい。治療組成物として使用するために有用な濃度範囲内で溶解性を有する少数のリン脂質については、生理食塩水中のリン脂質の単純な水溶液で十分である。本質的に水に不溶性であるリン脂質については、エマルジョンの形態の水性組成物が使用され得る。エマルジョンは、リン脂質成分を含有する相が水性媒体全体にわたって均一に分布している治療組成物を提供する。
【0030】
治療組成物中のリン脂質の濃度は広い範囲内で様々であり得る。複合リン脂質を0.01重量パーセントという少ない量で含有する治療組成物はいくらかの利益を提供する。治療組成物がエマルジョンの形態である場合、エマルジョンが別々の水相およびリン脂質相への崩壊に近づく高濃度で、リン脂質を含有する組成物が可能である。その媒体中のリン脂質の臨床的に実用的な濃度範囲は、重量によるリン脂質約0.05〜7.0w/v%で様々であり、より好ましくは、約0.1〜5.0w/v%で様々である。水性組成物中のリン脂質の最も所望される濃度は、被験者によって異なり得ることに注意すべきである。
【0031】
リン脂質治療組成物中に、1つまたは複数のトリグリセリドなどの中性脂質、コレステロールエステル、天然ワックスおよびコレステロールと、より高分子量のイソプレノイドと、安定剤と、保存料と、好ましくは約6〜8の間のpH、より好ましくは約7.0〜7.4の間のpHを有する組成物を提供するためのpH調整剤と、等張組成物を形成するために十分な濃度の塩と、薬剤などとを含むその他の添加剤が存在していてもよい。
【0032】
上記のように、本発明のエマルジョンは、ボラートまたはボラート/ポリオール緩衝系を含むことができる。本明細書で使用される場合、「ボラート」という用語は、ホウ酸、ホウ酸の塩、他の薬学的に許容可能なボラート、およびこれらの組み合わせを含む。以下のボラートが特に好ましい:ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン、および他のこのようなホウ酸塩。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ポリオール」という用語は、互いに関してトランス配置ではない2つの隣接する炭素原子のそれぞれに少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意の化合物を含む。ポリオールは、得られる複合体が水溶性および薬学的に許容可能である限り、線状もしくは環状、置換もしくは非置換、またはこれらの混合物であり得る。このような化合物の例としては、糖、糖アルコール、糖酸およびウロン酸が挙げられる。好ましいポリオールは、マンニトール、グリセリン、キシリトールおよびソルビトールを含むがこれらに限定されない糖、糖アルコールおよび糖酸である。特に好ましいポリオールはマンニトールおよびソルビトールであり、最も好ましいのはソルビトールである。
【0034】
眼科用組成物におけるボラート−ポリオール複合体の使用は米国特許第6,503,497号明細書(Chowhan)に記載されており、その全体の内容はここに参照によって本明細書中に援用される。本発明のエマルジョンは、好ましくは、少なくとも約0.01%w/v、より一般的には少なくとも約0.3%w/v、さらにより一般的には少なくとも約0.8%w/vであるが、一般的には約5.0%w/v以下、より一般的には約2.0%w/v以下、さらにより一般的には約1.2%w/v以下の濃度の1つまたは複数のボラートを含有する。通常、1つまたは複数のボラートの量は、ボラート/ポリオール複合体の形成を可能にするために、そして所望される場合には、エマルジョンを眼に適用したときにガラクトマンナンポリマーのゲル化に役立つために十分であることが望ましい。
【0035】
本発明の組成物は通常保存料を含む。可能性のある保存料としては、限定されることなく、過酸化水素や、塩化ベンザルコニウムなどの塩素含有保存料などが挙げられる。しかしながら、好ましい態様によると、本発明の眼科用組成物は実質的にどの塩化物含有保存料も含まず、特に、実質的に塩化ベンザルコニウムを含まない。眼科用組成物中に含まれる最も好ましい保存料は、高分子第4級アンモニウム化合物である。
【0036】
本明細書で使用される場合、眼科用組成物の成分に言及するときの「実質的に含まない」という語句は、眼科用溶液がその特定の成分を完全に欠いているか、あるいはその特定の成分をわずかな量しか含まないかのいずれかであり得ると考えられることを意味する。
【0037】
本発明の組成物において有用な高分子第4級アンモニウム化合物は、抗菌効果を有すると共に眼科的に許容可能なものである。この種類の好ましい化合物は、米国特許第3,931,319号明細書、米国特許第4,027,020号明細書、米国特許第4,407,791号明細書、米国特許第4,525,346号明細書、米国特許第4,836,986号明細書、米国特許第5,037,647号明細書および米国特許第5,300,287号明細書、ならびにPCT出願国際公開第91/09523号パンフレット(Dziaboら)に記載されている。最も好ましい高分子アンモニウム化合物は、別名POLYQUAD.RTM.またはONAMERM.RTMとして知られているポリクオタニウム1であり、2,000〜30,000の間の数平均分子量を有する。好ましくは、数平均分子量は3,000〜14,000の間である。
【0038】
高分子第4級アンモニウム化合物は、通常、眼科用組成物の約0.00001w/v%よりも多い、より一般的には約0.0003w/v%よりも多い、さらにより一般的には約0.0007w/v%よりも多い量で本発明の組成物中で使用される。さらに、高分子第4級アンモニウム化合物は、通常、眼科用組成物の約3w/v%未満、より一般的には約0.003w/v%未満、さらにより一般的には約0.0015w/v%未満の量で本発明の組成物中で使用される。
【0039】
本発明のエマルジョンは、多数の眼科用治療薬のいずれかを含むことができる。可能性のある本発明の眼科用治療薬の非限定的な例としては、抗緑内障薬、抗血管新生薬、抗感染症薬、抗炎症薬、成長因子、免疫抑制薬、および抗アレルギー薬が挙げられる。抗緑内障薬としては、ベタキソロールおよびレボベタキソロールなどのβ遮断薬と、ブリンゾラミドおよびドルゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬と、トラボプロスト、ビマトプロスト、およびラタノプロストなどのプロスタグランジンと、セレトニン作動薬(seretonergics)と、ムスカリン薬(muscarinics)と、ドーパミン作動薬とが挙げられる。抗血管新生薬としては、酢酸アネコルタブ(RETAANETM,AlconTM Laboratories,Inc.(Fort Worth,Tex.))および受容体チロシンキナーゼ阻害薬(RTKi)が挙げられる。抗炎症薬としては、トリアムシノロンアクチニド、スプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク、ネパフェナク、リメキソロン、およびテトラヒドロコルチゾールなどの非ステロイド性およびステロイド性抗炎症薬が挙げられる。成長因子としては、EGFまたはVEGFが挙げられる。抗アレルギー薬としては、オロパタジンおよびエピナスチンが挙げられる。眼科用薬は、薬学的に許容可能な塩の形態で存在してもよい。
【0040】
本発明は、ドライアイ状態の症状を軽減する治療薬を送達するために特に有用であり得る。例としては、限定されることなく、ステロイド性および/または非ステロイド性抗炎症薬、シロミラスト、シクロスポリンなどの選択的PDE IV阻害薬、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。本発明のエマルジョンは、冷却材の送達、酸化防止剤(ω−3およびω−6脂肪酸)、および眼科使用のための他の生理活性物質(bioactivies)の送達などの他の分野において使用することもできる。例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE、トコフェロール、ビタミンK(キノン)、β−カロテン(プロビタミン−A) およびこれらの組み合わせなどの栄養補助剤である。
【0041】
通常、治療薬の量は、使用される場合には、使用される薬剤に応じてかなり様々であり得る。従って、治療薬の濃度は、少なくとも約0.005w/v%、より一般的には少なくとも約0.01w/v%、さらにより一般的には少なくとも約0.1w/v%であるが、一般的には約10w/v%以下、より一般的には約4.0w/v%以下、さらにより一般的には約2.0w/v%以下であり得る。
【0042】
本発明のエマルジョンは、場合により、1つまたは複数の付加的な賦形剤および/または1つまたは複数の付加的な活性成分を含んでいてもよい。眼科用エマルジョンにおいて潜在的に使用される賦形剤としては、粘滑薬、等張化剤、保存料、キレート剤、緩衝剤、および界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の賦形剤は、可溶化剤、安定剤、快適さを高める薬剤(comfort−enhancing agent)、ポリマー、皮膚軟化薬、pH調整剤、および/または潤滑剤を含む。
【0043】
エマルジョンは通常水性であり、従って、相当量の水(通常は精製される)を含む。エマルジョンは、一般的に、少なくとも約50w/v%、より一般的には少なくとも約85w/v%、さらにより一般的には少なくとも約93w/v%であるが、一般的に約99.99w/v%以下、より一般的には約99.0w/v%以下、さらにより一般的には約0.3w/v%以下、さらになおより一般的には約98w/v%以下である濃度の水を含む。
【0044】
本発明のエマルジョンは、当業者に知られている様々な結合および混合プロトコールおよび技術を用いて形成することができる。しかしながら、1つの好ましい実施形態によると、成分は特定のプロトコールに従って混合および結合される。このようなプロトコールでは、多数の混合物が形成され、これらの混合物が結合されて、エマルジョンが形成される。第1の混合物は、油および界面活性剤を高温で混合して油相混合物を形成することによって形成される。第2の混合物は、アニオン性リン脂質を高温で精製水中に混合して水相混合物を形成することによって形成される。その後、油相混合物および水相混合物は高温で混合され、続いてホモジナイザーを用いて均質化されて、初期エマルジョンが形成される。第3の混合物は、ガラクトマンナンポリマーを水と混合し、必要に応じてpHを調整してガラクトマンナンポリマースラリーを形成することによって形成される。次に、ガラクトマンナンポリマースラリーは初期エマルジョンと混合され、ポリマー強化エマルジョンが形成される。第4の混合物は、以下のもの:ボラート、ポリオール、保存料および他の任意の成分の任意の組み合わせを混合して塩溶液を形成することによって形成される。次に、塩溶液および強化エマルジョンが混合された後、十分な量(Q.S.)の水が添加され、pHが調整される。
【0045】
エマルジョンは、眼球潤滑剤や薬物送達媒体などとして使用することができる。しかしながら、ドライアイ治療としての使用が特に望ましいことが分かっている。従って、ドライアイ症状であると診断されたかまたはドライアイ症状を経験している個人は、これらのドライアイ症状を軽減するためにエマルジョンをその個人の眼に投与することができる。通常、エマルジョンは、個人が定期的または必要に応じてその片眼または両眼に1滴、2滴またはそれ以上を滴下注入できるように点眼器中で提供される。滴下注入の際、エマルジョンは通常眼の角膜表面でゲル化し、眼球表面への脂質の送達に役立つなど、より顕著な治療効果を可能にできる。
【0046】
有利に、本発明の水中油エマルジョンの安定性は、潤滑および/または脂質(例えば、脂質治療薬)の眼球表面への送達を容易にすることができる。これらの脂質は涙膜の安定化に役立つことができ、そして/あるいは代替的な治療の利点を眼に提供することができる。さらに、粘膜付着性ポリマーは、エマルジョンがより有効であり得るように、エマルジョンの眼の上での滞留時間を支援することができる。
【実施例】
【0047】
【表1】

【0048】
上記の表1は、本発明に従う1つの典型的なエマルジョンの処方である。表Iにおける重量/体積パーセントはこれらの重量/体積パーセントの±10%、±20%、±30%、±90%だけまたはそれ以上変動し得ること、そしてこれらの変動は特に本発明の成分の範囲を作成するために使用され得ることが理解される。例えば、±20%の変動を有する10%の成分重量/体積パーセントは、その成分が8〜12w/v%の重量/体積パーセント範囲を有し得ることを意味する。
【0049】
【表2】

【0050】
上記の表2は、本発明に従う1つの典型的なエマルジョンの処方である。表Iにおける重量/体積パーセントはこれらの重量/体積パーセントの±10%、±20%、±30%、±90%だけまたはそれ以上変動し得ること、そしてこれらの変動は特に本発明の成分の範囲を作成するために使用され得ることが理解される。例えば、±20%の変動を有する10%の成分重量/体積パーセントは、その成分が8〜12w/v%の重量/体積パーセント範囲を有し得ることを意味する。
【0051】
本出願人らは、本開示において全ての引用文献の内容全体を具体的に援用する。さらに、量、濃度、または他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられる場合、これは、範囲が別箇に開示されているかどうかに関係なく、任意の範囲の上限または好ましい値と、任意の範囲の下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書中で列挙される場合、他に記載されない限り、その範囲は、その端点、ならびに範囲内の全ての整数および有理数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に列挙される特定の値に限定されることは意図されない。
【0052】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書中に開示される本発明の実施から当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単なる例示であると考えられ、本は発明の真の範囲および趣旨は特許請求の範囲およびその等価物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相を形成する水と、
油相を形成する油と、
親水性界面活性剤と、
疎水性界面活性剤と、
荷電リン脂質と、
ボラートと、
粘膜付着性ガラクトマンナンポリマーと
を含む眼科用エマルジョンであって、
i.前記油相が前記水相内で液滴状であり、前記液滴が、約1000nm以下であるが少なくとも10nmである平均直径を有し、
ii.前記エマルジョンを個人の眼の中に滴下注入したときに、前記ボラートおよびガラクトマンナンポリマーが協同的に作用してゲルを形成する
眼科用エマルジョン。
【請求項2】
前記油が、鉱油、パラフィン油およびペトロラタムから選択される炭化水素である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記油が少なくとも0.1w/v%であり、かつ約5w/v%以下である、請求項1または2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記油が前記エマルジョンの少なくとも0.8w/v%であり、かつまた前記エマルジョンの1.5w/v%以下である、請求項3に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記親水性界面活性剤が前記エマルジョン中に少なくとも約0.08w/v%の量で存在し、かつ前記エマルジョン中に約0.8w/v%以下の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記親水性界面活性剤が前記エマルジョン中に少なくとも約0.14w/v%の量で存在し、かつ前記エマルジョン中に約0.44w/v%以下の量で存在する、請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記親水性界面活性剤がポリオキシエチレン−40−ステアラートである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記疎水性界面活性剤が前記エマルジョン中に少なくとも約0.11w/v%の量で存在し、かつ前記エマルジョン中に約2.0w/v%以下の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記疎水性界面活性剤が前記エマルジョン中に少なくとも約0.16w/v%の量で存在し、かつ前記エマルジョン中に約0.62w/v%以下の量で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記疎水性界面活性剤がトリステアリン酸ソルビタンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記粘膜付着性ガラクトマンナンポリマーが、グアーおよびヒドロキシプロピルグアーからなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項12】
前記粘膜付着性ガラクトマンナンポリマーが前記エマルジョン中に少なくとも約0.01w/v%であるが、約1.0w/v%以下である濃度で存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項13】
前記粘膜付着性ガラクトマンナンポリマーが前記エマルジョン中に少なくとも約0.01w/v%であるが、約0.08w/v%以下である濃度で存在する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項14】
前記荷電リン脂質が、ジミリストイルホスファチジルグリセロールという名前のアニオン性リン脂質である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項15】
前記リン脂質が前記エマルジョン中に約0.05〜7.0重量パーセントの濃度で存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項16】
ボラート/ポリオール緩衝系をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項17】
抗菌保存料として高分子第4級アンモニウム化合物をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項18】
前記油相が前記水相内で液滴状であり、前記液滴が、500nm以下であるが少なくとも100nmである平均直径を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項19】
前記エマルジョンを哺乳類の眼の中に滴下注入することを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のエマルジョンの使用方法。
【請求項20】
前記哺乳類がヒトであり、前記エマルジョンが点眼器から液滴として滴下注入される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記油および前記界面活性剤を高温で混合して油相混合物を形成することによって、第1の混合物を形成するステップと、
前記アニオン性リン脂質を高温で精製水中に混合して水相混合物を形成することによって、第2の混合物を形成するステップと、
前記油相混合物および前記水相混合物を高温で混合し、続いて前記油相混合物を前記水相混合物と均質化させて初期エマルジョンを形成するステップと、
前記ガラクトマンナンポリマーを水と混合し、必要に応じてpHを調製してガラクトマンナンポリマースラリーを形成することによって、第3の混合物を形成するステップと、
前記ガラクトマンナンポリマースラリーを前記初期エマルジョンと混合して、ポリマー強化エマルジョンを形成するステップと
を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のエマルジョンの形成方法。
【請求項22】
以下のもの:ボラート、ポリオール、保存料および他の任意の成分の任意の組み合わせを混合して塩溶液を形成することによって、第4の混合物を形成するステップと、
前記塩溶液を前記強化エマルジョンと混合した後、十分な量(Q.S.)の水を添加し、pHを調整するステップと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2013−512917(P2013−512917A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542182(P2012−542182)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058703
【国際公開番号】WO2011/068955
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】