眼科用薬物送達デバイス
眼の後区へ医薬活性剤を送達するために有用な眼科用の薬剤送達デバイスが開示される。そのデバイスは、そのデバイスを適正に配置しその移動を防止することを容易にするための、延長部および/または固定化構造および/または形態を含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医薬活性剤の身体組織への局所的送達のための生体適合性移植材料に関するものである。更に詳細には、限定されるものではないが、本発明は医薬活性剤の眼の後区への局所的送達のための生体適合性移植材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目の後区のいくつかの疾患と症状は、視覚に脅威を与える。いくつかの例には、加齢性黄班変性症(ARMD)、脈絡膜新生血管形成(CNV)、網膜症類(例えば、糖尿病性網膜症、硝子体網膜症)、網膜炎類(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎)、ブドウ膜炎、班状浮腫、緑内障およびニューロパシー類がある。
【0003】
加齢性黄班変性症(ARMD)は、初老の人における失明の主要な原因である。ARMDは、視覚の中心を攻撃して、それを曇らせ、そして読むこと、運転することおよび他の細かい作業を困難または不可能にする。米国だけで約200,000の新規なARMDの症例が毎年生じている。現状の推定では、75歳以上の人口のおよそ40%、および60歳以上の人口のおよそ20%がある程度の班状変性に悩んでいることが示されている。「湿潤」(wet)ARMDは、最も頻繁に失明を生じさせるタイプのARMDである。湿潤ARMDでは、新しく形成された脈絡膜血管(脈絡膜新生血管形成(CNV))が流体を漏出させ、そして網膜にさらなる打撃を生じさせる。
【0004】
ARMDにおけるCNVの特定の症例では、(a)光凝固、(b)脈管形成阻害剤および(c)光力学療法の三つの主な治療法が現在開発されつつある。光凝固は、CNVのための最も一般的な治療様式である。但し、光凝固は網膜に対して有害であり、CNVが窩に近いものである場合には実際的ではない。更に、時の経過とともに、光凝固は回帰性のCNVをしばしばもたらす。抗脈管形成化合物の経口または非経口(非眼科(non-ocular))の投薬も、ARMDのための全身系の治療として試験されつつある。しかしながら、薬剤特異性代謝の制限のために、全身系の投薬は通常目に対して低い治療薬レベルを提供することになる。それ故、有効な眼内薬剤濃度を達成するために、受け容れ難いほど高い投与量または通常の投与量の反復のいずれかが必要とされる。これらの化合物の眼周囲の注入では、その薬剤がすぐに流されて、眼周囲の脈管構造および軟組織を介して眼から通常の血行中に放出されることがしばしば生じる。反復的な眼内の注入は、網膜剥離および眼内炎のような厳しく、しばしば失明する合併症をもたらすかもしれない。光力学療法は、長期の有効性がまだほとんど知られていない新しい技術である。
【0005】
上記の治療に関する合併症を防止し、より良い眼の治療を提供するために、研究者は、眼に対して抗脈管形成化合物の局所的な送達を目的とした種々の移植材料を提案している。米国特許第5,824,072号明細書(Wong)は、医薬活性剤が配置された非‐生分解性のポリマー移植材料を開示している。その医薬活性剤は、移植材料のポリマー部を介して目的組織中へ拡散する。その医薬活性剤には、班状変性および糖尿病性網膜症の治療のための薬剤が含まれ得る。その移植材料は、無血管領域上の眼の外表面での涙中に実質上配置され、結膜または強膜に、強膜上にまたは強膜内に無血管領域上で;実質上毛様体輪のような無血管領域または外科的に誘発された無血管領域の脈絡膜上の空間内に;または硝子体との直接的な接合中に固定されても良い。
【0006】
米国特許第5,476,511号明細書(Gwonら)は、眼の結膜の下に配置するためのポリマー移植材料を開示している。その移植材料は、ARMDの治療用の新生血管形成抑制因子、並びに網膜症および網膜炎の治療薬を送達するために用いられ得る。その医薬活性剤は移植材料のポリマー部を介して拡散する。
【0007】
米国特許第5,773,019号明細書(Ashtonら)は、アンジオスタティック(angiostatic)ステロイドおよびブドウ膜炎の治療用シクロスポリンのような薬剤を含む特定の薬剤を送達するための非‐生体侵食性のポリマー移植材料を開示している。そこでも、その医薬活性剤は移植材料のポリマー部を介して拡散する。
【0008】
上記の全ての移植材料は、ポリマー部(即ちマトリックスデバイス)またはポリマー膜(即ち貯蔵デバイス)を介して所望の治療部位への医薬活性剤の制御された拡散を可能にするための注意深い設計と製造を要する。それらのデバイスからの薬剤の放出は、それぞれマトリックスまたは膜の多孔性および拡散特性に依存している。それらのパラメータは、それらのデバイスと共に使用される各薬剤部分用に調整されねばならない。その結果、それらの要求は、通常そのような移植材料の複雑性およびコストを増加させる。
【0009】
米国特許第5,824,073号明細書(Peyman)は、眼内での位置決めのための圧子(indentor)を開示している。その圧子は、眼の班状領域上で強膜をへこませるまたはそれに圧力をかけるために使用される、浮き彫りにされた部分を有する。この特許は、そのような圧力が網膜下の新生血管形成膜を介して脈絡膜うっ血および血流を低下させ、それが逆に出血および網膜下の流体蓄積を低下させることを開示する。
【0010】
従って、生体適合性移植材料の領域において、広範囲の医薬活性剤の安全で、有効な、速度制御された局所的送達が可能な、外科的に移植可能な眼科用薬剤送達デバイスについてのニーズが存在する。そのようなデバイスを移植するための外科的処置は、安全、簡単、迅速、そして外来患者の状況で実施可能でなければならない。理想的には、そのようなデバイスは、製造するのに簡単でそして経済的でなければならない。更に、その融通性および広範囲の医薬活性剤の送達可能性のために、そのような移植材料は、眼科用臨床的研究において、患者に特定の物理的状態を形成させる種々の物質を送達するために使用できるものでなければならない。そのような眼科用薬剤送達デバイスは、ARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫、緑内障およびニューロパシーと闘うために、眼の後区に医薬活性剤を局所的に送達するのに特に必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの側面は、眼への薬剤送達のデバイスである。その眼は強膜、斑紋および外眼筋を有する。そのデバイスは、医薬活性剤と、外眼筋に適応するための延長部を有する本体を含む。その延長部が外眼筋に適応するように、そのデバイスが強膜の外表面上に配置される場合、医薬活性剤は斑紋に隣接して配置される。
【0012】
本発明のもう一つの側面は、医薬活性剤と、外眼筋に適応するための延長部を有する本体を含む、眼への薬剤送達のデバイスである。その延長部が外眼筋に適応するように、そのデバイスが強膜の外表面上に配置される場合、その延長部はそのデバイスの固定および移動防止を助けるものである。
【0013】
本発明の更なる側面は、医薬活性剤と、外眼筋に適応するための延長部を有する本体を含む、眼への薬剤送達のデバイスである。その延長部は、外眼筋に適応するように本体から第1の場所で伸びることが可能である。その延長部は、そのデバイスの移植を容易にするように第2の位置でその本体の上方または下方で折り畳むことも可能である。
【0014】
本発明の更なる側面は、医薬活性剤、および強膜に接触するための強膜側表面(scleral surface)を有する本体を含む、眼のための薬剤送達デバイスである。その強膜側表面上には、固定化構造が配置されている。
【0015】
本発明の更なる側面は、眼のための薬剤送達デバイスであり、そのデバイスは、強膜側表面、その強膜側表面への開口を有するくぼみ、並びに強膜の外表面上で、上直筋および外側直筋の間で、外側直筋の下方で、そして斑紋に隣接して配置されたくぼみと共に、デバイスの移植を容易にする形態を含む本体を有している。そのデバイスは、そのくぼみ中に配置されて、且つ医薬活性剤を含む内部コアーをも有している。
【0016】
本発明の更なる側面は、眼へ医薬活性剤を送達する方法である。そこでは、医薬活性剤、並びに強膜の外表面上で、上直筋および外側直筋の間で、その外側直筋の下方で、そして斑紋に隣接して配置された医薬活性剤と共に、そのデバイスの移植を容易にする形態を有する本体を含む薬剤送達デバイスが提供される。そのデバイスは、次いで、強膜の外表面上で、上直筋および外側直筋の間で、外側直筋の下方で、そして斑紋に隣接して配置された医薬活性剤と共に、配置される。
【0017】
本発明のより完全な理解のために、そしてさらにその目的および利点について、添付の図面と共に、以下の記載がさらになされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい態様およびそれらの利点は、図1〜図15を参照することによって、使用されている数字および個々の図の適応する部分のように、最も良く理解される。
【0019】
図1〜図4は、本発明の理解を完全なものにするために重要な人間の眼の種々の部分を示す。先ず図1を参照すると、人間の眼90が模式的に示されている。眼90は、角膜92、水晶体93、硝子体95、強膜100、脈絡膜99、網膜97および視覚神経96を有する。眼90は一般的に前区89と後区88に分けられる。眼90の前区89は、一般的にオラセタラ(ora serata)11の前方の眼90の部分を含む。眼90の後区88は、一般的にオラセタラ11の後方の眼90の部分を含む。網膜97は、毛様体輪13に隣接して円周状に脈絡膜99に、後部で視神経円板19に物理的に付着される。網膜97は、視神経円板19に対して少し側面に位置した斑紋98を有する。眼科の分野においてよく知られているように、斑紋98は、主として網膜錐体からなり、網膜97における最大の視覚明瞭度の領域である。斑紋98の中心が、窩117である。テノン(Tenon)のカプセルまたはテノンの膜101が、強膜100上に配置されている。結膜94は、縁115(球状の結膜)後方の眼球90の短い領域を覆っており、そして上方で(上方盲嚢)または下方で(下方盲嚢)折り重なって、上方眼瞼78および下方眼瞼79の内部領域をそれぞれ覆っている。球状結膜94は、テノンのカプセル101の先端に配置されている。
【0020】
図1および図2に示されるように、そして以下にさらに詳細に記載されるように、眼科用薬剤送達デバイス200は、好ましくは、最も後区の病気または症状の治療のために、テノンのカプセル101の下方で、強膜100の外表面上に直接配置される。加えて、人間におけるARMDおよびCNVの治療のために、そのデバイス200は、好ましくは、斑紋98に隣接したデバイス200の内部コアーと共に、テノンのカプセル101の下で、強膜100の外表面上に直接配置される。デバイス200は特に人間における使用のためにデザインされるが、一方では動物においても使用され得る。
【0021】
図3は、角膜92、視覚神経96、斑紋98、強膜100、上直筋103、外側直筋105、下斜筋107および窩117を備えた、人間の右眼90の局所解剖学的側面図を模式的に示している。上直筋103は、強膜100中への挿入部109を有する。外側直筋105は、強膜100中への挿入部111を有する。下斜筋107は、強膜100中への挿入部113を有する。図4は、その筋肉によって隠された強膜100の部分を見えるようにするために、長軸に対して直角に切断された外側直筋105の部分を備えた、人間の右眼90の局所解剖学的後方側面図を模式的に示している。
【0022】
図5〜図10は、本発明の第1の好ましい態様に従って、人間の右眼のための眼科用薬剤送達デバイス200を模式的に示したものである。デバイス200の鏡像である眼科用薬剤送達デバイスが、人間の左眼用に利用され得る。眼への局所的な医薬活性剤送達が必要とされるような場合に、デバイス200が使用され得る。眼の後区への局所的な医薬活性剤送達のために、デバイス200が特に有用である。デバイス200についての好ましい用途は、ARMD、脈絡膜新生血管形成(CNV)、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫およびニューロパシーの治療のための、斑紋近傍の網膜への医薬活性剤の送達である。
【0023】
デバイス200は、一般的に、凸状でドーム型の眼窩側表面(orbital surface)204と、凹状でドーム型の強膜側表面206を有する本体202を含んでいる。強膜側表面206は、強膜100との直接的な接触を容易にするような半径の湾曲を備えて設計される。最も好ましくは、強膜側表面206は、平均的な人間の眼90の湾曲の半径に等しい半径の湾曲を備えてデザインされる(図1参照)。眼窩側表面204は、好ましくはテノンのカプセル101に下への移植を容易にするような半径の湾曲を備えてデザインされる。デバイス200は、近位端部208、末端部210、本体202から伸びる延長部212、および強膜側表面206上の固定化構造213を有している。延長部212は、好ましくは、本体202と一体化して形成される。延長部212は、好ましくは、その延長部212全体がデバイス200の本体202の下方に折り重ねられ得るように、線214に沿って折り畳まれ得る。或いは、その延長部212全体が本体202の上方に折り重ねられ得るように、デバイス200がデザインされても良い。以下にさらに詳細に記載されるように、延長部212は、移植中に下斜筋107の挿入部113に適応するために設計される。固定化構造213は、好ましくは吸引カップであり、そして好ましくは強膜側表面206上に一体的に形成される。或いは所望に応じて、固定化構造213が、生体接着性コーティングもしくは一つ以上の鋭くとがった先の領域であっても良い。以下にさらに詳細に記載されるように、固定化構造213は、移植後にデバイス200の移動の防止を助けるために強膜100と結合する。さらにその代わりに、デバイス200は、移植後にそのデバイスを固定しその移動の防止を助けるために、好ましくはその近位端部208の近くで強膜100に縫い合わされても良い。
【0024】
デバイス200は、強膜側表面206に対して開口218を有するくぼみまたはキャビティ216をも有する。内部コアー220は、好ましくはくぼみ216中に配置されている。図5〜図10に示されるように、内部コアー220は、好ましくは1種以上の医薬活性剤を含有するタブレットである。或いは、内部コアー220は、そこに配置された1種以上の医薬活性剤を有する、通常のヒドロゲル、ゲル、ペーストまたは他の半固体の投薬形状を含み得る。図5〜図10には示されないが、内部コアー220は、1種以上の医薬活性剤を含有する、サスペンション、溶液、粉末またはそれらの組み合わせを含んでも良い。この態様においては、強膜側表面206が開口218無しで形成されており、そして強膜側表面206の比較的薄い延長部、または内部コアー220の下の他の膜を介して、サスペンション、溶液、粉末またはそれらの組み合わせが拡散する。さらにその代わりに、デバイス200がくぼみ216または内部コアー220無しで形成されても良く、そしてサスペンション、溶液、粉末またはそれらの組み合わせの形の医薬活性剤がデバイス200の本体202全体に分散されても良い。この態様においては、その医薬活性剤がその本体202を介して目標組織中に拡散する。くぼみ216および内部コアー220の構造は、言及することでその全体がここに取り入れられる、米国特許第6,413,540号明細書により十分に記載されている。
【0025】
デバイス200の形態および寸法は、内部コアー220の医薬活性剤と強膜側表面206の下の組織との間の連絡(communication)を最大にする。強膜側表面206は、好ましくは強膜100の外表面と物理的に接触している。もしくは、強膜側表面206は強膜100の外表面に隣接して配置されても良い。例として、デバイス200が、強膜100の外表面のすぐ上の眼周囲組織中に、または強膜100内にラメラ内のように(intra-lamellarly)配置されても良い。
【0026】
本体202は、好ましくは生体適合性で非‐生分解性の材料を含むものである。本体202は、さらに好ましくは生体適合性で非‐生分解性のポリマー組成物を含むものである。そのポリマー組成物は、最も好ましくはシリコーンを含む。勿論、そのポリマー組成物は、多孔性、くねり性、透過性、剛性、硬度および平滑性を非限定的に含む物理的特性を付与する他の通常の物質をも含み得る。本体202は、好ましくは内部コアー220の医薬活性剤に対して不透過性である。ポリマー組成物、および本体202に適した物理的特性を付与する通常の物質は、言及することでその全体がここに取り入れられる、米国特許第6,416,777号明細書により十分に記載されている。
【0027】
内部コアー220は、局所的な送達に適した、眼科用に許容可能ないかなる医薬活性剤をも含み得る。内部コアー220用に適した医薬活性剤の例は、米国特許第6,416,777号明細書に開示されている。一つの好ましい医薬活性剤は、ARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫および緑内障を非限定的に含む、眼の後区の病気または症状の予防または治療のためのアンジオスタティックステロイドである。そのようなアンジオスタティックステロイドは、言及することでその全体がここに取り入れられる、米国特許第5,679,666号明細書および第5,770,592号明細書により十分に記載されている。そのようなアンジオスタティックステロイドの好ましいものには、4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン、および4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン‐21‐アセテートが含まれる。加えて、内部コアー220には、医薬活性剤としてグルココルチコイドおよびアンジオスタティックステロイドの組み合わせが含まれ得る。この組み合わせのための好ましいグルココルチコイド類には、デキサメタゾン、フルオロメトロン、メドリゾン(medrysone)、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニソン、プレドニソロン、ヒドロコルチゾン、リメクソロン(rimexolone)および医薬として許容可能なそれらの塩が含まれ、好ましいアンジオスタティックステロイド類には、4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン、および4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン‐21‐アセテートが含まれる。内部コアー220は、その活性剤または薬剤コアーの安定性、溶解性、浸透性および他の特性を強めるための従来の非活性賦形剤をも含み得る。内部コアー220がタブレットの場合、それはさらに充填剤および減摩剤のようなタブレット化のために必要な通常の賦形剤を含み得る。そのようなタブレットは、通常のタブレット化方法を用いて製造され得る。医薬活性剤は、好ましくはそのタブレット全体に均一に分布される。通常のタブレットに加えて、内部コアー220が、医薬活性剤を放出しながら制御された速度で生物破壊(bioerode)する特定のタブレットを含んでも良い。例として、そのような生物破壊は加水分解または酵素開裂によって生じ得る。内部コアー220がヒドロゲルまたは他のゲルの場合、そのようなゲルは医薬活性剤を放出しながら制御された速度で生物破壊し得る。或いは、そのようなゲルは非生物破壊性であっても良いが、医薬活性剤の拡散を可能にするものである。
【0028】
デバイス200は、射出成形、押出成形、トランスファー成形および圧縮成形を非限定的に含む従来のポリマー加工方法によって形成され得る。好ましくは、デバイス200が通常の射出成形技術を使用して形成される。内部コアー220は、好ましくはデバイス200の本体202の形成後にくぼみ216中に配置される。
【0029】
図11に示されるように、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、デバイス200がテノンのカプセル101の下の強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、斑紋98の中心である窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。延長部212は、下斜筋107の挿入部109に隣接してまたは接触して、強膜100の外表面上で且つ下斜筋107の下に配置される。デバイス200のその形態によって、延長部212の下斜筋107へのこのような固定が、斑紋98および窩117上に内部コアー220を自動的に配置する。このような延長部212の下斜筋107への固定は、移植後のデバイス200を固定しその移動を防止することをも助ける。吸引カップ213も強膜100にゆるやかに適用されて、移植後のデバイス200を固定しその移動を防止することをさらに助ける。
【0030】
図12A〜図12Eに関しては、外来患者の状況で実施可能である以下の技術が、好ましくは図11に示された場所にデバイス200を移植するのに利用される。外科医が先ず眼90の四分円の一つにおいて円周包皮切除を実施する。好ましくは、外科医は眼90の縁115の後方約3mmのスペロ‐テンポラル(supero-temporal)四分円において包皮切除を実施する。この切開がいったんなされれば、外科医はテノンのカプセル101を強膜100から離すために切れ味の鈍い解体(blunt dissection)を行なう。はさみでの切断と切れ味の鈍い解体を利用することによって、外側直筋105の上部境界306(図3)をなぞって強膜100の外表面に沿って前後のトンネルが形成される。外側直筋105、そして次いで下斜筋107が、ジャミソン(Jamison)筋フック300および302でそれぞれ引っ掛けられて、そして図12Aに示されるように操作される。それらのフック300および302は、筋肉105および107と強膜100間の結合組織をゆるやかに破り、さらにデバイス200のためのトンネルを画定するために使用される。フック300を除去した後、図12Bに示されるように、外科医はナゲット(Nuggett)鉗子304でデバイス200をつかむ。延長部212は、好ましくは本体202の下に折り畳まれて、鉗子304と共にその位置に保持される。線214に沿って折り畳まれた延長部212を備えるデバイス200の使用が、デバイス200のために必要な包皮切除とトンネルの大きさを最小にする。もしくは、折り畳まれていない延長部212を備えるデバイス200が、所望により利用されても良い。外科医から離れて強膜100と末端部210を対面させる強膜側表面206を使って、外科医は、図12C〜図12Eに示されるように、一般的に円の動作でデバイス200をトンネル中に導入する。折り畳まれた延長部212が外側直筋105の挿入部111を通過したことを外科医が視覚化したときに、外科医は鉗子304をほぐす。図12Dに示されるように、この鉗子304をほぐすことが延長部212を解放し、そしてそれを折り畳まれていない状態にする。図12Eに示されるように、延長部212が下斜筋107の下にフックのように止まるまで、外科医はそのトンネル内で通常の円の動作でデバイス200をさらに動かし続ける。好ましくは、延長部212の前方エッジ218(図5)が、下斜筋107の前方境界308(図3)および/または挿入部113と接触する。折り畳まれていない延長部212が使用される場合、延長部212は同様な方法で下斜筋107の前方境界308の下に単純に移動される。図12Eに示されないが、延長部212はフック302と下斜筋107の挿入部113の間に据えられても良い。次いで、外科医はフック302を取り外す。かくして、デバイス200は図11に示されるような位置に配置される。外科医は鉗子304を使用して、近位端部208近くの眼窩側表面204を緩やかに押さえて、吸引カップ213を強膜100へしっかり止める。或いは、外科医は鉗子304を使用して、近位端部208近くの眼窩側表面204を緩やかに押さえて、生体接着性コーティング213または一つ以上の鋭くとがった先の領域213を強膜100へしっかり止めても良い。さらにそれ以外にも、外科医はデバイス200の近位端部208を強膜100へ縫い合わせても良い。外科医は、次いでテノンのカプセル101と結膜94を強膜100へ縫い合わせることによって、包皮切除部を閉じる。閉じた後、外科医はその外科的創傷の上にストリップ状の抗生物質軟膏を据える。
【0031】
凹状でドーム型の強膜側表面206を含むデバイス200の本体202の形態;延長部212、くぼみ216、開口218および内部コアー220の形と位置;吸引カップ、生体接着性コーティングまたはとがった先の領域213の存在;および延長部212の折り畳み特性の全てが、内部コアー220から、強膜100と脈絡膜99を介して、網膜97中へ、さらに詳細には斑紋98および窩117中への、医薬として有効な量の医薬活性剤の送達を助長する。内部コアー220と強膜100の間のポリマー層または膜の不存在も、活性剤の網膜97への送達を大きく強め、単純化する。
【0032】
使用される医薬活性剤の特定の物理化学的な特性にもよるが、デバイス200が医薬として有効な量の医薬活性剤を送達するために多年に渡って使用され得ると考えられる。重要な物理化学的な特性には、疎水性、溶解性、溶解速度、拡散係数、分配係数および組織親和性が含まれる。内部コアー220がもはや活性剤を含有しなくなった後、外科医はデバイス200を簡単に取り外すことが出来る。加えて、外科医は、その「予備形成された」トンネルを、次のデバイス200で古いデバイス200を置き換えるために使用しても良い。
【0033】
図13〜図15は、人間の眼におけるその位置での、本発明の第2、第3および第4の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイス400、500および600をそれぞれ模式的に示す。デバイス400、500および600の各々は、各デバイスの本体がその眼窩側表面から見て異なる形態を有し、そしていくつかのデバイスがデバイス200の延長部212より異なる外眼筋に適応するためにデザインされた異なる延長部を有することを除いて、構造、操作および使用においてデバイス200と実質上類似している。
【0034】
図13に示されるように、デバイス400は、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、テノンのカプセル101の下で強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。デバイス400は、その眼窩側表面204から見て一般的に不等辺四辺形の形態を有する。デバイス400は、また外側直筋105の上部境界408と下部境界410に適応するようにデザインされた第1の延長部404と第2の延長部406をも有する。デバイス400のその形態によって、このように延長部404および406を外側直筋105の挿入部111へ固定することが、斑紋98および窩117上に内部コアー220を自動的に配置する。このような外側直筋105の挿入部111への延長部404および406の固定は、移植後のデバイス400を固定しその移動を防止することをも助ける。
【0035】
図14に示されるように、デバイス500は、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、テノンのカプセル101の下で強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。デバイス500は、その眼窩側表面204から見て一般的にクラブ(club)形状またはアーク(arc)形状をした形態を有し、上直筋103の挿入部109と外側直筋105の上部境界502の間への移植を容易にするようにデザインされている。
【0036】
図15に示されるように、デバイス600は、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、テノンのカプセル101の下で強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。デバイス600は、その眼窩側表面204から見て一般的に楕円形または矩形の形態を有する。デバイス600は、また本体602から伸びる延長部604をも有する。延長部604は、強膜100の外表面上で、且つ上直筋103の挿入部109に隣接または接触して上直筋103の下に配置される。デバイス600のその形態によって、このように延長部604を上直筋103の挿入部109へ固定することが、斑紋98および窩117上に内部コアー220を自動的に配置する。このような上直筋103の挿入部109への延長部604の固定は、移植後のデバイス600を固定しその移動を防止することをも助ける。
【0037】
上記のことから、本発明が、ARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫、緑内障およびニューロパシーと戦うために、眼への、特に眼の後区への種々の医薬活性剤の、安全で、有効な、速度制御された局所的送達のための、改良されたデバイスおよび方法を提供することが理解され得る。そのようなデバイスを移植するための外科的処置は、安全で、簡単で、迅速でそして外来患者の状況で実施可能である。そのようなデバイスは、製造が簡単で経済的である。さらに、広範囲の医薬活性剤の送達が可能であるため、そのようなデバイスは、臨床的な研究において患者に特定の物理的状態を形成させる種々の眼科用物質を送達するのに有用である。
【0038】
本発明の作用および構成は、前述の記載から明らかであろうと考えられる。上記の装置および方法は好ましいものとして特徴付けられており、付随される特許請求の範囲において特定される本発明の精神および範囲から離れること無く、種々の変更および修正がそこで成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】人間の眼、および本発明に従ってその眼の後区に移植された眼科用薬剤送達デバイスを模式的に示した側面断面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った眼の詳細な横断面図である。
【図3】人間の眼の外眼筋の局所解剖学的構造の側面の模式図である。
【図4】図示されていない外側直筋の部分と共に人間の眼の外眼筋の局所解剖学的構造の後方側面図である。
【図5】本発明の第1の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの眼窩側表面の透視図である。
【0040】
【図6】図5の眼科用薬剤送達デバイスの強膜側表面の透視図である。
【図7】図5の眼科用薬剤送達デバイスの第1の側面の透視図である。
【図8】図5の眼科用薬剤送達デバイスの第2の側面の透視図である。
【図9】図5の眼科用薬剤送達デバイスの末端部の透視図である。
【図10】図5の眼科用薬剤送達デバイスの近位端部の透視図である。
【図11】人間の眼におけるその位置での図5の眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【0041】
【図12A】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12B】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12C】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12D】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12E】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【0042】
【図13】人間の眼におけるその位置での、本発明の第2の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【図14】人間の眼におけるその位置での、本発明の第3の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【図15】人間の眼におけるその位置での、本発明の第4の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医薬活性剤の身体組織への局所的送達のための生体適合性移植材料に関するものである。更に詳細には、限定されるものではないが、本発明は医薬活性剤の眼の後区への局所的送達のための生体適合性移植材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目の後区のいくつかの疾患と症状は、視覚に脅威を与える。いくつかの例には、加齢性黄班変性症(ARMD)、脈絡膜新生血管形成(CNV)、網膜症類(例えば、糖尿病性網膜症、硝子体網膜症)、網膜炎類(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎)、ブドウ膜炎、班状浮腫、緑内障およびニューロパシー類がある。
【0003】
加齢性黄班変性症(ARMD)は、初老の人における失明の主要な原因である。ARMDは、視覚の中心を攻撃して、それを曇らせ、そして読むこと、運転することおよび他の細かい作業を困難または不可能にする。米国だけで約200,000の新規なARMDの症例が毎年生じている。現状の推定では、75歳以上の人口のおよそ40%、および60歳以上の人口のおよそ20%がある程度の班状変性に悩んでいることが示されている。「湿潤」(wet)ARMDは、最も頻繁に失明を生じさせるタイプのARMDである。湿潤ARMDでは、新しく形成された脈絡膜血管(脈絡膜新生血管形成(CNV))が流体を漏出させ、そして網膜にさらなる打撃を生じさせる。
【0004】
ARMDにおけるCNVの特定の症例では、(a)光凝固、(b)脈管形成阻害剤および(c)光力学療法の三つの主な治療法が現在開発されつつある。光凝固は、CNVのための最も一般的な治療様式である。但し、光凝固は網膜に対して有害であり、CNVが窩に近いものである場合には実際的ではない。更に、時の経過とともに、光凝固は回帰性のCNVをしばしばもたらす。抗脈管形成化合物の経口または非経口(非眼科(non-ocular))の投薬も、ARMDのための全身系の治療として試験されつつある。しかしながら、薬剤特異性代謝の制限のために、全身系の投薬は通常目に対して低い治療薬レベルを提供することになる。それ故、有効な眼内薬剤濃度を達成するために、受け容れ難いほど高い投与量または通常の投与量の反復のいずれかが必要とされる。これらの化合物の眼周囲の注入では、その薬剤がすぐに流されて、眼周囲の脈管構造および軟組織を介して眼から通常の血行中に放出されることがしばしば生じる。反復的な眼内の注入は、網膜剥離および眼内炎のような厳しく、しばしば失明する合併症をもたらすかもしれない。光力学療法は、長期の有効性がまだほとんど知られていない新しい技術である。
【0005】
上記の治療に関する合併症を防止し、より良い眼の治療を提供するために、研究者は、眼に対して抗脈管形成化合物の局所的な送達を目的とした種々の移植材料を提案している。米国特許第5,824,072号明細書(Wong)は、医薬活性剤が配置された非‐生分解性のポリマー移植材料を開示している。その医薬活性剤は、移植材料のポリマー部を介して目的組織中へ拡散する。その医薬活性剤には、班状変性および糖尿病性網膜症の治療のための薬剤が含まれ得る。その移植材料は、無血管領域上の眼の外表面での涙中に実質上配置され、結膜または強膜に、強膜上にまたは強膜内に無血管領域上で;実質上毛様体輪のような無血管領域または外科的に誘発された無血管領域の脈絡膜上の空間内に;または硝子体との直接的な接合中に固定されても良い。
【0006】
米国特許第5,476,511号明細書(Gwonら)は、眼の結膜の下に配置するためのポリマー移植材料を開示している。その移植材料は、ARMDの治療用の新生血管形成抑制因子、並びに網膜症および網膜炎の治療薬を送達するために用いられ得る。その医薬活性剤は移植材料のポリマー部を介して拡散する。
【0007】
米国特許第5,773,019号明細書(Ashtonら)は、アンジオスタティック(angiostatic)ステロイドおよびブドウ膜炎の治療用シクロスポリンのような薬剤を含む特定の薬剤を送達するための非‐生体侵食性のポリマー移植材料を開示している。そこでも、その医薬活性剤は移植材料のポリマー部を介して拡散する。
【0008】
上記の全ての移植材料は、ポリマー部(即ちマトリックスデバイス)またはポリマー膜(即ち貯蔵デバイス)を介して所望の治療部位への医薬活性剤の制御された拡散を可能にするための注意深い設計と製造を要する。それらのデバイスからの薬剤の放出は、それぞれマトリックスまたは膜の多孔性および拡散特性に依存している。それらのパラメータは、それらのデバイスと共に使用される各薬剤部分用に調整されねばならない。その結果、それらの要求は、通常そのような移植材料の複雑性およびコストを増加させる。
【0009】
米国特許第5,824,073号明細書(Peyman)は、眼内での位置決めのための圧子(indentor)を開示している。その圧子は、眼の班状領域上で強膜をへこませるまたはそれに圧力をかけるために使用される、浮き彫りにされた部分を有する。この特許は、そのような圧力が網膜下の新生血管形成膜を介して脈絡膜うっ血および血流を低下させ、それが逆に出血および網膜下の流体蓄積を低下させることを開示する。
【0010】
従って、生体適合性移植材料の領域において、広範囲の医薬活性剤の安全で、有効な、速度制御された局所的送達が可能な、外科的に移植可能な眼科用薬剤送達デバイスについてのニーズが存在する。そのようなデバイスを移植するための外科的処置は、安全、簡単、迅速、そして外来患者の状況で実施可能でなければならない。理想的には、そのようなデバイスは、製造するのに簡単でそして経済的でなければならない。更に、その融通性および広範囲の医薬活性剤の送達可能性のために、そのような移植材料は、眼科用臨床的研究において、患者に特定の物理的状態を形成させる種々の物質を送達するために使用できるものでなければならない。そのような眼科用薬剤送達デバイスは、ARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫、緑内障およびニューロパシーと闘うために、眼の後区に医薬活性剤を局所的に送達するのに特に必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの側面は、眼への薬剤送達のデバイスである。その眼は強膜、斑紋および外眼筋を有する。そのデバイスは、医薬活性剤と、外眼筋に適応するための延長部を有する本体を含む。その延長部が外眼筋に適応するように、そのデバイスが強膜の外表面上に配置される場合、医薬活性剤は斑紋に隣接して配置される。
【0012】
本発明のもう一つの側面は、医薬活性剤と、外眼筋に適応するための延長部を有する本体を含む、眼への薬剤送達のデバイスである。その延長部が外眼筋に適応するように、そのデバイスが強膜の外表面上に配置される場合、その延長部はそのデバイスの固定および移動防止を助けるものである。
【0013】
本発明の更なる側面は、医薬活性剤と、外眼筋に適応するための延長部を有する本体を含む、眼への薬剤送達のデバイスである。その延長部は、外眼筋に適応するように本体から第1の場所で伸びることが可能である。その延長部は、そのデバイスの移植を容易にするように第2の位置でその本体の上方または下方で折り畳むことも可能である。
【0014】
本発明の更なる側面は、医薬活性剤、および強膜に接触するための強膜側表面(scleral surface)を有する本体を含む、眼のための薬剤送達デバイスである。その強膜側表面上には、固定化構造が配置されている。
【0015】
本発明の更なる側面は、眼のための薬剤送達デバイスであり、そのデバイスは、強膜側表面、その強膜側表面への開口を有するくぼみ、並びに強膜の外表面上で、上直筋および外側直筋の間で、外側直筋の下方で、そして斑紋に隣接して配置されたくぼみと共に、デバイスの移植を容易にする形態を含む本体を有している。そのデバイスは、そのくぼみ中に配置されて、且つ医薬活性剤を含む内部コアーをも有している。
【0016】
本発明の更なる側面は、眼へ医薬活性剤を送達する方法である。そこでは、医薬活性剤、並びに強膜の外表面上で、上直筋および外側直筋の間で、その外側直筋の下方で、そして斑紋に隣接して配置された医薬活性剤と共に、そのデバイスの移植を容易にする形態を有する本体を含む薬剤送達デバイスが提供される。そのデバイスは、次いで、強膜の外表面上で、上直筋および外側直筋の間で、外側直筋の下方で、そして斑紋に隣接して配置された医薬活性剤と共に、配置される。
【0017】
本発明のより完全な理解のために、そしてさらにその目的および利点について、添付の図面と共に、以下の記載がさらになされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい態様およびそれらの利点は、図1〜図15を参照することによって、使用されている数字および個々の図の適応する部分のように、最も良く理解される。
【0019】
図1〜図4は、本発明の理解を完全なものにするために重要な人間の眼の種々の部分を示す。先ず図1を参照すると、人間の眼90が模式的に示されている。眼90は、角膜92、水晶体93、硝子体95、強膜100、脈絡膜99、網膜97および視覚神経96を有する。眼90は一般的に前区89と後区88に分けられる。眼90の前区89は、一般的にオラセタラ(ora serata)11の前方の眼90の部分を含む。眼90の後区88は、一般的にオラセタラ11の後方の眼90の部分を含む。網膜97は、毛様体輪13に隣接して円周状に脈絡膜99に、後部で視神経円板19に物理的に付着される。網膜97は、視神経円板19に対して少し側面に位置した斑紋98を有する。眼科の分野においてよく知られているように、斑紋98は、主として網膜錐体からなり、網膜97における最大の視覚明瞭度の領域である。斑紋98の中心が、窩117である。テノン(Tenon)のカプセルまたはテノンの膜101が、強膜100上に配置されている。結膜94は、縁115(球状の結膜)後方の眼球90の短い領域を覆っており、そして上方で(上方盲嚢)または下方で(下方盲嚢)折り重なって、上方眼瞼78および下方眼瞼79の内部領域をそれぞれ覆っている。球状結膜94は、テノンのカプセル101の先端に配置されている。
【0020】
図1および図2に示されるように、そして以下にさらに詳細に記載されるように、眼科用薬剤送達デバイス200は、好ましくは、最も後区の病気または症状の治療のために、テノンのカプセル101の下方で、強膜100の外表面上に直接配置される。加えて、人間におけるARMDおよびCNVの治療のために、そのデバイス200は、好ましくは、斑紋98に隣接したデバイス200の内部コアーと共に、テノンのカプセル101の下で、強膜100の外表面上に直接配置される。デバイス200は特に人間における使用のためにデザインされるが、一方では動物においても使用され得る。
【0021】
図3は、角膜92、視覚神経96、斑紋98、強膜100、上直筋103、外側直筋105、下斜筋107および窩117を備えた、人間の右眼90の局所解剖学的側面図を模式的に示している。上直筋103は、強膜100中への挿入部109を有する。外側直筋105は、強膜100中への挿入部111を有する。下斜筋107は、強膜100中への挿入部113を有する。図4は、その筋肉によって隠された強膜100の部分を見えるようにするために、長軸に対して直角に切断された外側直筋105の部分を備えた、人間の右眼90の局所解剖学的後方側面図を模式的に示している。
【0022】
図5〜図10は、本発明の第1の好ましい態様に従って、人間の右眼のための眼科用薬剤送達デバイス200を模式的に示したものである。デバイス200の鏡像である眼科用薬剤送達デバイスが、人間の左眼用に利用され得る。眼への局所的な医薬活性剤送達が必要とされるような場合に、デバイス200が使用され得る。眼の後区への局所的な医薬活性剤送達のために、デバイス200が特に有用である。デバイス200についての好ましい用途は、ARMD、脈絡膜新生血管形成(CNV)、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫およびニューロパシーの治療のための、斑紋近傍の網膜への医薬活性剤の送達である。
【0023】
デバイス200は、一般的に、凸状でドーム型の眼窩側表面(orbital surface)204と、凹状でドーム型の強膜側表面206を有する本体202を含んでいる。強膜側表面206は、強膜100との直接的な接触を容易にするような半径の湾曲を備えて設計される。最も好ましくは、強膜側表面206は、平均的な人間の眼90の湾曲の半径に等しい半径の湾曲を備えてデザインされる(図1参照)。眼窩側表面204は、好ましくはテノンのカプセル101に下への移植を容易にするような半径の湾曲を備えてデザインされる。デバイス200は、近位端部208、末端部210、本体202から伸びる延長部212、および強膜側表面206上の固定化構造213を有している。延長部212は、好ましくは、本体202と一体化して形成される。延長部212は、好ましくは、その延長部212全体がデバイス200の本体202の下方に折り重ねられ得るように、線214に沿って折り畳まれ得る。或いは、その延長部212全体が本体202の上方に折り重ねられ得るように、デバイス200がデザインされても良い。以下にさらに詳細に記載されるように、延長部212は、移植中に下斜筋107の挿入部113に適応するために設計される。固定化構造213は、好ましくは吸引カップであり、そして好ましくは強膜側表面206上に一体的に形成される。或いは所望に応じて、固定化構造213が、生体接着性コーティングもしくは一つ以上の鋭くとがった先の領域であっても良い。以下にさらに詳細に記載されるように、固定化構造213は、移植後にデバイス200の移動の防止を助けるために強膜100と結合する。さらにその代わりに、デバイス200は、移植後にそのデバイスを固定しその移動の防止を助けるために、好ましくはその近位端部208の近くで強膜100に縫い合わされても良い。
【0024】
デバイス200は、強膜側表面206に対して開口218を有するくぼみまたはキャビティ216をも有する。内部コアー220は、好ましくはくぼみ216中に配置されている。図5〜図10に示されるように、内部コアー220は、好ましくは1種以上の医薬活性剤を含有するタブレットである。或いは、内部コアー220は、そこに配置された1種以上の医薬活性剤を有する、通常のヒドロゲル、ゲル、ペーストまたは他の半固体の投薬形状を含み得る。図5〜図10には示されないが、内部コアー220は、1種以上の医薬活性剤を含有する、サスペンション、溶液、粉末またはそれらの組み合わせを含んでも良い。この態様においては、強膜側表面206が開口218無しで形成されており、そして強膜側表面206の比較的薄い延長部、または内部コアー220の下の他の膜を介して、サスペンション、溶液、粉末またはそれらの組み合わせが拡散する。さらにその代わりに、デバイス200がくぼみ216または内部コアー220無しで形成されても良く、そしてサスペンション、溶液、粉末またはそれらの組み合わせの形の医薬活性剤がデバイス200の本体202全体に分散されても良い。この態様においては、その医薬活性剤がその本体202を介して目標組織中に拡散する。くぼみ216および内部コアー220の構造は、言及することでその全体がここに取り入れられる、米国特許第6,413,540号明細書により十分に記載されている。
【0025】
デバイス200の形態および寸法は、内部コアー220の医薬活性剤と強膜側表面206の下の組織との間の連絡(communication)を最大にする。強膜側表面206は、好ましくは強膜100の外表面と物理的に接触している。もしくは、強膜側表面206は強膜100の外表面に隣接して配置されても良い。例として、デバイス200が、強膜100の外表面のすぐ上の眼周囲組織中に、または強膜100内にラメラ内のように(intra-lamellarly)配置されても良い。
【0026】
本体202は、好ましくは生体適合性で非‐生分解性の材料を含むものである。本体202は、さらに好ましくは生体適合性で非‐生分解性のポリマー組成物を含むものである。そのポリマー組成物は、最も好ましくはシリコーンを含む。勿論、そのポリマー組成物は、多孔性、くねり性、透過性、剛性、硬度および平滑性を非限定的に含む物理的特性を付与する他の通常の物質をも含み得る。本体202は、好ましくは内部コアー220の医薬活性剤に対して不透過性である。ポリマー組成物、および本体202に適した物理的特性を付与する通常の物質は、言及することでその全体がここに取り入れられる、米国特許第6,416,777号明細書により十分に記載されている。
【0027】
内部コアー220は、局所的な送達に適した、眼科用に許容可能ないかなる医薬活性剤をも含み得る。内部コアー220用に適した医薬活性剤の例は、米国特許第6,416,777号明細書に開示されている。一つの好ましい医薬活性剤は、ARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫および緑内障を非限定的に含む、眼の後区の病気または症状の予防または治療のためのアンジオスタティックステロイドである。そのようなアンジオスタティックステロイドは、言及することでその全体がここに取り入れられる、米国特許第5,679,666号明細書および第5,770,592号明細書により十分に記載されている。そのようなアンジオスタティックステロイドの好ましいものには、4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン、および4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン‐21‐アセテートが含まれる。加えて、内部コアー220には、医薬活性剤としてグルココルチコイドおよびアンジオスタティックステロイドの組み合わせが含まれ得る。この組み合わせのための好ましいグルココルチコイド類には、デキサメタゾン、フルオロメトロン、メドリゾン(medrysone)、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニソン、プレドニソロン、ヒドロコルチゾン、リメクソロン(rimexolone)および医薬として許容可能なそれらの塩が含まれ、好ましいアンジオスタティックステロイド類には、4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン、および4,9(11)‐プレグナジエン‐17α,21‐ジオール‐3,20‐ジオン‐21‐アセテートが含まれる。内部コアー220は、その活性剤または薬剤コアーの安定性、溶解性、浸透性および他の特性を強めるための従来の非活性賦形剤をも含み得る。内部コアー220がタブレットの場合、それはさらに充填剤および減摩剤のようなタブレット化のために必要な通常の賦形剤を含み得る。そのようなタブレットは、通常のタブレット化方法を用いて製造され得る。医薬活性剤は、好ましくはそのタブレット全体に均一に分布される。通常のタブレットに加えて、内部コアー220が、医薬活性剤を放出しながら制御された速度で生物破壊(bioerode)する特定のタブレットを含んでも良い。例として、そのような生物破壊は加水分解または酵素開裂によって生じ得る。内部コアー220がヒドロゲルまたは他のゲルの場合、そのようなゲルは医薬活性剤を放出しながら制御された速度で生物破壊し得る。或いは、そのようなゲルは非生物破壊性であっても良いが、医薬活性剤の拡散を可能にするものである。
【0028】
デバイス200は、射出成形、押出成形、トランスファー成形および圧縮成形を非限定的に含む従来のポリマー加工方法によって形成され得る。好ましくは、デバイス200が通常の射出成形技術を使用して形成される。内部コアー220は、好ましくはデバイス200の本体202の形成後にくぼみ216中に配置される。
【0029】
図11に示されるように、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、デバイス200がテノンのカプセル101の下の強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、斑紋98の中心である窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。延長部212は、下斜筋107の挿入部109に隣接してまたは接触して、強膜100の外表面上で且つ下斜筋107の下に配置される。デバイス200のその形態によって、延長部212の下斜筋107へのこのような固定が、斑紋98および窩117上に内部コアー220を自動的に配置する。このような延長部212の下斜筋107への固定は、移植後のデバイス200を固定しその移動を防止することをも助ける。吸引カップ213も強膜100にゆるやかに適用されて、移植後のデバイス200を固定しその移動を防止することをさらに助ける。
【0030】
図12A〜図12Eに関しては、外来患者の状況で実施可能である以下の技術が、好ましくは図11に示された場所にデバイス200を移植するのに利用される。外科医が先ず眼90の四分円の一つにおいて円周包皮切除を実施する。好ましくは、外科医は眼90の縁115の後方約3mmのスペロ‐テンポラル(supero-temporal)四分円において包皮切除を実施する。この切開がいったんなされれば、外科医はテノンのカプセル101を強膜100から離すために切れ味の鈍い解体(blunt dissection)を行なう。はさみでの切断と切れ味の鈍い解体を利用することによって、外側直筋105の上部境界306(図3)をなぞって強膜100の外表面に沿って前後のトンネルが形成される。外側直筋105、そして次いで下斜筋107が、ジャミソン(Jamison)筋フック300および302でそれぞれ引っ掛けられて、そして図12Aに示されるように操作される。それらのフック300および302は、筋肉105および107と強膜100間の結合組織をゆるやかに破り、さらにデバイス200のためのトンネルを画定するために使用される。フック300を除去した後、図12Bに示されるように、外科医はナゲット(Nuggett)鉗子304でデバイス200をつかむ。延長部212は、好ましくは本体202の下に折り畳まれて、鉗子304と共にその位置に保持される。線214に沿って折り畳まれた延長部212を備えるデバイス200の使用が、デバイス200のために必要な包皮切除とトンネルの大きさを最小にする。もしくは、折り畳まれていない延長部212を備えるデバイス200が、所望により利用されても良い。外科医から離れて強膜100と末端部210を対面させる強膜側表面206を使って、外科医は、図12C〜図12Eに示されるように、一般的に円の動作でデバイス200をトンネル中に導入する。折り畳まれた延長部212が外側直筋105の挿入部111を通過したことを外科医が視覚化したときに、外科医は鉗子304をほぐす。図12Dに示されるように、この鉗子304をほぐすことが延長部212を解放し、そしてそれを折り畳まれていない状態にする。図12Eに示されるように、延長部212が下斜筋107の下にフックのように止まるまで、外科医はそのトンネル内で通常の円の動作でデバイス200をさらに動かし続ける。好ましくは、延長部212の前方エッジ218(図5)が、下斜筋107の前方境界308(図3)および/または挿入部113と接触する。折り畳まれていない延長部212が使用される場合、延長部212は同様な方法で下斜筋107の前方境界308の下に単純に移動される。図12Eに示されないが、延長部212はフック302と下斜筋107の挿入部113の間に据えられても良い。次いで、外科医はフック302を取り外す。かくして、デバイス200は図11に示されるような位置に配置される。外科医は鉗子304を使用して、近位端部208近くの眼窩側表面204を緩やかに押さえて、吸引カップ213を強膜100へしっかり止める。或いは、外科医は鉗子304を使用して、近位端部208近くの眼窩側表面204を緩やかに押さえて、生体接着性コーティング213または一つ以上の鋭くとがった先の領域213を強膜100へしっかり止めても良い。さらにそれ以外にも、外科医はデバイス200の近位端部208を強膜100へ縫い合わせても良い。外科医は、次いでテノンのカプセル101と結膜94を強膜100へ縫い合わせることによって、包皮切除部を閉じる。閉じた後、外科医はその外科的創傷の上にストリップ状の抗生物質軟膏を据える。
【0031】
凹状でドーム型の強膜側表面206を含むデバイス200の本体202の形態;延長部212、くぼみ216、開口218および内部コアー220の形と位置;吸引カップ、生体接着性コーティングまたはとがった先の領域213の存在;および延長部212の折り畳み特性の全てが、内部コアー220から、強膜100と脈絡膜99を介して、網膜97中へ、さらに詳細には斑紋98および窩117中への、医薬として有効な量の医薬活性剤の送達を助長する。内部コアー220と強膜100の間のポリマー層または膜の不存在も、活性剤の網膜97への送達を大きく強め、単純化する。
【0032】
使用される医薬活性剤の特定の物理化学的な特性にもよるが、デバイス200が医薬として有効な量の医薬活性剤を送達するために多年に渡って使用され得ると考えられる。重要な物理化学的な特性には、疎水性、溶解性、溶解速度、拡散係数、分配係数および組織親和性が含まれる。内部コアー220がもはや活性剤を含有しなくなった後、外科医はデバイス200を簡単に取り外すことが出来る。加えて、外科医は、その「予備形成された」トンネルを、次のデバイス200で古いデバイス200を置き換えるために使用しても良い。
【0033】
図13〜図15は、人間の眼におけるその位置での、本発明の第2、第3および第4の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイス400、500および600をそれぞれ模式的に示す。デバイス400、500および600の各々は、各デバイスの本体がその眼窩側表面から見て異なる形態を有し、そしていくつかのデバイスがデバイス200の延長部212より異なる外眼筋に適応するためにデザインされた異なる延長部を有することを除いて、構造、操作および使用においてデバイス200と実質上類似している。
【0034】
図13に示されるように、デバイス400は、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、テノンのカプセル101の下で強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。デバイス400は、その眼窩側表面204から見て一般的に不等辺四辺形の形態を有する。デバイス400は、また外側直筋105の上部境界408と下部境界410に適応するようにデザインされた第1の延長部404と第2の延長部406をも有する。デバイス400のその形態によって、このように延長部404および406を外側直筋105の挿入部111へ固定することが、斑紋98および窩117上に内部コアー220を自動的に配置する。このような外側直筋105の挿入部111への延長部404および406の固定は、移植後のデバイス400を固定しその移動を防止することをも助ける。
【0035】
図14に示されるように、デバイス500は、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、テノンのカプセル101の下で強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。デバイス500は、その眼窩側表面204から見て一般的にクラブ(club)形状またはアーク(arc)形状をした形態を有し、上直筋103の挿入部109と外側直筋105の上部境界502の間への移植を容易にするようにデザインされている。
【0036】
図15に示されるように、デバイス600は、好ましくはくぼみ216および内部コアー220が斑紋98の上の強膜100の領域に直接位置するように、テノンのカプセル101の下で強膜100の外表面上に外科的に直接据えられる。最も好ましくは、内部コアー220は、窩117の上の強膜100の領域上に直接位置する。デバイス600は、その眼窩側表面204から見て一般的に楕円形または矩形の形態を有する。デバイス600は、また本体602から伸びる延長部604をも有する。延長部604は、強膜100の外表面上で、且つ上直筋103の挿入部109に隣接または接触して上直筋103の下に配置される。デバイス600のその形態によって、このように延長部604を上直筋103の挿入部109へ固定することが、斑紋98および窩117上に内部コアー220を自動的に配置する。このような上直筋103の挿入部109への延長部604の固定は、移植後のデバイス600を固定しその移動を防止することをも助ける。
【0037】
上記のことから、本発明が、ARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、班状浮腫、緑内障およびニューロパシーと戦うために、眼への、特に眼の後区への種々の医薬活性剤の、安全で、有効な、速度制御された局所的送達のための、改良されたデバイスおよび方法を提供することが理解され得る。そのようなデバイスを移植するための外科的処置は、安全で、簡単で、迅速でそして外来患者の状況で実施可能である。そのようなデバイスは、製造が簡単で経済的である。さらに、広範囲の医薬活性剤の送達が可能であるため、そのようなデバイスは、臨床的な研究において患者に特定の物理的状態を形成させる種々の眼科用物質を送達するのに有用である。
【0038】
本発明の作用および構成は、前述の記載から明らかであろうと考えられる。上記の装置および方法は好ましいものとして特徴付けられており、付随される特許請求の範囲において特定される本発明の精神および範囲から離れること無く、種々の変更および修正がそこで成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】人間の眼、および本発明に従ってその眼の後区に移植された眼科用薬剤送達デバイスを模式的に示した側面断面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った眼の詳細な横断面図である。
【図3】人間の眼の外眼筋の局所解剖学的構造の側面の模式図である。
【図4】図示されていない外側直筋の部分と共に人間の眼の外眼筋の局所解剖学的構造の後方側面図である。
【図5】本発明の第1の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの眼窩側表面の透視図である。
【0040】
【図6】図5の眼科用薬剤送達デバイスの強膜側表面の透視図である。
【図7】図5の眼科用薬剤送達デバイスの第1の側面の透視図である。
【図8】図5の眼科用薬剤送達デバイスの第2の側面の透視図である。
【図9】図5の眼科用薬剤送達デバイスの末端部の透視図である。
【図10】図5の眼科用薬剤送達デバイスの近位端部の透視図である。
【図11】人間の眼におけるその位置での図5の眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【0041】
【図12A】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12B】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12C】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12D】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【図12E】本発明の好ましい方法に従った、人間の眼における図5の眼科用薬剤送達デバイスの移植を模式的に示した図である。
【0042】
【図13】人間の眼におけるその位置での、本発明の第2の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【図14】人間の眼におけるその位置での、本発明の第3の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【図15】人間の眼におけるその位置での、本発明の第4の好ましい態様に従った眼科用薬剤送達デバイスの模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強膜、斑紋および外眼筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該外眼筋に適応するための延長部を有する本体
を含み、
該デバイスが、該延長部が該外眼筋に適応するように該強膜の外表面上に配置されるときに、該医薬活性剤が該斑紋に隣接して配置される、薬剤送達デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、前記延長部が前記外眼筋に適応するように前記強膜の外表面上に配置されるときに、前記医薬活性剤が前記斑紋の上に配置される、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
前記外眼筋が下斜筋である、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記外眼筋が外側直筋である、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記外眼筋が上直筋である、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
強膜および外眼筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該外眼筋に適応するための延長部を有する本体
を含み、
該デバイスが、該延長部が該外眼筋に適応するように該強膜の外表面上に配置されるときに、該延長部が該デバイスの固定および移動防止を助けるものである、薬剤送達デバイス。
【請求項7】
前記外眼筋が下斜筋である、請求項6に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
前記外眼筋が外側直筋である、請求項6に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
前記外眼筋が上直筋である、請求項6に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
外眼筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該外眼筋に適応するための延長部を有する本体であって、該延長部が該外眼筋に適応するように第1の位置で該本体から伸びることが可能であり、そして該延長部が該デバイスの移植を容易にするように第2の位置で該本体の上方または下方で折り畳むことが可能である該本体
を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項11】
強膜を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該強膜に接触するための強膜側表面、および該強膜側表面上に配置された固定化構造を有する本体
を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項12】
前記固定化構造が吸引カップである、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
前記固定化構造が生体接着性コーティングである、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項14】
前記固定化構造が鋭くとがった先を含む領域である、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
強膜、斑紋、上直筋および外側直筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
本体であって、
強膜側表面、
該強膜側表面への開口を有するくぼみ、および
該強膜の外表面上で、該上直筋および該外側直筋の間で、該外側直筋の下で、そして該斑紋に隣接して配置された該くぼみと共に、該デバイスの移植を容易にする形態を有する該本体、および
該くぼみ中に配置されて、且つ医薬活性剤を含む内部コアー
を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項16】
前記内部コアーがタブレットである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
前記眼がテノンのカプセルを含み、前記形態が該テノンのカプセルの下で該デバイスの移植を容易にするものである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項18】
前記形態が前記斑紋の上に配置された前記くぼみを有する該デバイスの移植を容易にするものである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項19】
前記斑紋が窩を含み、そして前記形態が該窩の上に配置された前記くぼみを有する該デバイスの移植を容易にするものである、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項20】
前記本体が眼窩側表面を含み、そして前記強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にクラブ形状をした形態である、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項21】
前記本体が眼窩側表面を含み、そして前記強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にアーク形状をした形態である、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項22】
前記強膜側表面が該強膜との接触を容易にする半径の湾曲を有するものである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項23】
強膜、斑紋、上直筋および外側直筋を含む眼へ医薬活性剤を送達する方法であって、
薬剤送達デバイスを提供する工程であって、
医薬活性剤;および
該強膜の外表面上で、該上直筋および該外側直筋の間で、該外側直筋の下で、そして該斑紋に隣接して配置される該医薬活性剤と共に、該デバイスの移植を容易にする形態を有する本体を含む該薬剤送達デバイスを提供する工程;および
該強膜の外表面上で、該上直筋および該外側直筋の間で、該外側直筋の下で、そして該斑紋に隣接して配置される該医薬活性剤と共に、該デバイスを配置する工程を含む、
方法。
【請求項24】
前記眼がテノンのカプセルを含み、前記配置工程が該テノンのカプセルの下で該デバイスを配置することを含むものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記配置工程が前記斑紋の上に前記医薬活性剤を配置することを含むものである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記配置工程が前記窩の上に前記医薬活性剤を配置することを含むものである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記本体が強膜側表面および眼窩側表面を含み、そして該強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にクラブ形状をした形態である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記本体が強膜側表面および眼窩側表面を含み、そして該強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にアーク形状をした形態である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記デバイスが前記医薬活性剤を有する内部コアーを含み、そして前記本体が強膜側表面、および該内部コアーを受けるための該強膜側表面への開口を有するくぼみを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記内部コアーがタブレットである、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
強膜、斑紋および外眼筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該外眼筋に適応するための延長部を有する本体
を含み、
該デバイスが、該延長部が該外眼筋に適応するように該強膜の外表面上に配置されるときに、該医薬活性剤が該斑紋に隣接して配置される、薬剤送達デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、前記延長部が前記外眼筋に適応するように前記強膜の外表面上に配置されるときに、前記医薬活性剤が前記斑紋の上に配置される、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
前記外眼筋が下斜筋である、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記外眼筋が外側直筋である、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記外眼筋が上直筋である、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
強膜および外眼筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該外眼筋に適応するための延長部を有する本体
を含み、
該デバイスが、該延長部が該外眼筋に適応するように該強膜の外表面上に配置されるときに、該延長部が該デバイスの固定および移動防止を助けるものである、薬剤送達デバイス。
【請求項7】
前記外眼筋が下斜筋である、請求項6に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
前記外眼筋が外側直筋である、請求項6に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
前記外眼筋が上直筋である、請求項6に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
外眼筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該外眼筋に適応するための延長部を有する本体であって、該延長部が該外眼筋に適応するように第1の位置で該本体から伸びることが可能であり、そして該延長部が該デバイスの移植を容易にするように第2の位置で該本体の上方または下方で折り畳むことが可能である該本体
を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項11】
強膜を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
医薬活性剤、および
該強膜に接触するための強膜側表面、および該強膜側表面上に配置された固定化構造を有する本体
を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項12】
前記固定化構造が吸引カップである、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
前記固定化構造が生体接着性コーティングである、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項14】
前記固定化構造が鋭くとがった先を含む領域である、請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
強膜、斑紋、上直筋および外側直筋を含む眼のための薬剤送達デバイスであって、
本体であって、
強膜側表面、
該強膜側表面への開口を有するくぼみ、および
該強膜の外表面上で、該上直筋および該外側直筋の間で、該外側直筋の下で、そして該斑紋に隣接して配置された該くぼみと共に、該デバイスの移植を容易にする形態を有する該本体、および
該くぼみ中に配置されて、且つ医薬活性剤を含む内部コアー
を含む、薬剤送達デバイス。
【請求項16】
前記内部コアーがタブレットである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
前記眼がテノンのカプセルを含み、前記形態が該テノンのカプセルの下で該デバイスの移植を容易にするものである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項18】
前記形態が前記斑紋の上に配置された前記くぼみを有する該デバイスの移植を容易にするものである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項19】
前記斑紋が窩を含み、そして前記形態が該窩の上に配置された前記くぼみを有する該デバイスの移植を容易にするものである、請求項18に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項20】
前記本体が眼窩側表面を含み、そして前記強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にクラブ形状をした形態である、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項21】
前記本体が眼窩側表面を含み、そして前記強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にアーク形状をした形態である、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項22】
前記強膜側表面が該強膜との接触を容易にする半径の湾曲を有するものである、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項23】
強膜、斑紋、上直筋および外側直筋を含む眼へ医薬活性剤を送達する方法であって、
薬剤送達デバイスを提供する工程であって、
医薬活性剤;および
該強膜の外表面上で、該上直筋および該外側直筋の間で、該外側直筋の下で、そして該斑紋に隣接して配置される該医薬活性剤と共に、該デバイスの移植を容易にする形態を有する本体を含む該薬剤送達デバイスを提供する工程;および
該強膜の外表面上で、該上直筋および該外側直筋の間で、該外側直筋の下で、そして該斑紋に隣接して配置される該医薬活性剤と共に、該デバイスを配置する工程を含む、
方法。
【請求項24】
前記眼がテノンのカプセルを含み、前記配置工程が該テノンのカプセルの下で該デバイスを配置することを含むものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記配置工程が前記斑紋の上に前記医薬活性剤を配置することを含むものである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記配置工程が前記窩の上に前記医薬活性剤を配置することを含むものである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記本体が強膜側表面および眼窩側表面を含み、そして該強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にクラブ形状をした形態である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記本体が強膜側表面および眼窩側表面を含み、そして該強膜側表面または該眼窩側表面から見た場合に、前記形態が一般的にアーク形状をした形態である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記デバイスが前記医薬活性剤を有する内部コアーを含み、そして前記本体が強膜側表面、および該内部コアーを受けるための該強膜側表面への開口を有するくぼみを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記内部コアーがタブレットである、請求項29に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−526019(P2007−526019A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518670(P2006−518670)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020087
【国際公開番号】WO2005/009297
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020087
【国際公開番号】WO2005/009297
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(501449322)アルコン,インコーポレイティド (140)
【Fターム(参考)】
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